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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1317354
審判番号 不服2015-9816  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-27 
確定日 2016-07-21 
事件の表示 特願2013-267209号「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月 7日出願公開、特開2014-140659号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月25日の出願であって、平成26年11月28日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年1月26日付けで手続補正がなされたが、平成27年3月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成27年5月27日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年5月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年5月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の概要
平成27年5月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含む補正であり、特許請求の範囲の請求項1は、
補正前(平成27年1月26日付け手続補正)の
「【請求項1】
正面側に開口する正面開口部を有する箱形の筐体と、
正面開口部を閉塞可能な前扉と、
筐体の内部に設けられ、表面に複数個の図柄が付された複数個の回転リールと、
前扉に設けられ、各回転リールの一部の図柄を視認可能にする図柄表示窓と、
各回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
各回転リールに対応して設けられ、対応する回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、
スタートスイッチの操作を契機に、当選か又はハズレかの抽選を行うための当選抽選手段と、
ストップスイッチの操作を契機に、対応する回転リールの回転位置及び当選抽選手段の抽選結果に基づいて、当該回転リールの停止制御を行うための停止制御手段とを備え、
当選抽選手段の抽選結果に関する情報を報知するアシストタイムを実行可能なスロットマシンであって、
当選抽選手段の抽選で所定の抽選結果が得られたゲームにおいて所定の一の操作態様でストップスイッチが操作されたことに基づいて、アシストタイムを開始するか否かの抽選を行うアシストタイム開始抽選手段を備え、
アシストタイム開始抽選手段の抽選で当選したことを契機に、アシストタイムを開始することを特徴とするスロットマシン。」
から、
補正後(本件補正:平成27年5月27日付けの手続補正)の
「【請求項1】
正面側に開口する正面開口部を有する箱形の筐体と、
正面開口部を閉塞可能な前扉と、
筐体の内部に設けられ、表面に複数個の図柄が付された複数個の回転リールと、
前扉に設けられ、各回転リールの一部の図柄を視認可能にする図柄表示窓と、
各回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
各回転リールに対応して設けられ、対応する回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、
スタートスイッチの操作を契機に、当選か又はハズレかの抽選を行うための当選抽選手段と、
ストップスイッチの操作を契機に、対応する回転リールの回転位置及び当選抽選手段の抽選結果に基づいて、当該回転リールの停止制御を行うための停止制御手段とを備え、
当選抽選手段の抽選結果に関する情報を報知するアシストタイムを実行可能なスロットマシンであって、
当選抽選手段の抽選で所定の抽選結果が得られたゲームにおいて予め定められた操作順序の内の一の操作順序でストップスイッチが操作されたことのみを契機として、アシストタイムを開始するか否かの抽選を行うアシストタイム開始抽選手段を備え、
アシストタイム開始抽選手段の抽選で当選したことを契機に、アシストタイムを開始することを特徴とするスロットマシン。」
へ補正された(下線部は補正箇所を示す)。

2.補正の適否
(1)補正目的
本件補正は、アシストタイムを開始するか否かの抽選の実行について、「当選抽選手段の抽選で所定の抽選結果が得られたゲームにおいて所定の一の操作態様でストップスイッチが操作されたことに基づいて」を「当選抽選手段の抽選で所定の抽選結果が得られたゲームにおいて予め定められた操作順序の内の一の操作順序でストップスイッチが操作されたことのみを契機として」とするものである。
本件補正により、ストップスイッチの操作について、「所定の一の」操作を「予め定められた操作順序の内の一の」操作に限定すると共に、「操作態様」を「操作順序」に限定している。また、ストップスイッチが操作されたこと「に基づいて」を「のみを契機として」に限定している。したがって、本件補正は特許請求の範囲の減縮に相当する。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)新規事項
ア 本件補正後の「予め定められた操作順序の内の一の操作順序で」ストップスイッチが操作されたことをアシストタイムを開始するか否かの抽選を行うための1つの条件とする点は、出願当初の明細書の段落【0132】の「具体的には、操作順序判定手段は、当選抽選手段130の抽選結果が「重複チェリー当選」となったゲームにおいて、入賞判定手段170が「チェリー当選役の入賞」と判定したことを契機に、操作順序記憶手段の記憶する順序が「順押し」、「挟み押し」または「逆挟み押し」のいずれかに該当するか否かの判定を行う。」との記載、及び段落【0133】の「また、第5の実施の形態では、アシストタイム開始抽選手段360は、当選抽選手段130の抽選結果が「重複チェリー当選」となったゲームにおいて、入賞判定手段170が「チェリー当選役の入賞」と判定し、且つ操作順序判定手段が「複数のストップスイッチ54が所定の順序で操作された」と判定したときに、AT開始抽選を行う。」との記載より、新規事項を追加するものではない。
イ 次に、ストップスイッチが操作されたこと「のみを契機として」との補正事項について検討する。
請求人は、審判請求書の「3-2.補正の根拠」において、当該補正の根拠として、出願当初の明細書の段落【0134】の「具体的には、操作順序記憶手段の記憶する順序が「順押し」、「挟み押し」または「逆挟み押し」のいずれかに該当すると、操作順序判定手段が判定したときには、アシストタイム開始抽選手段360がAT開始抽選を行う。」との記載を挙げている。
しかしながら、段落【0134】は、段落【0133】を「具体的には」として補足するものであり、段落【0133】の「また、第5の実施の形態では、アシストタイム開始抽選手段360は、当選抽選手段130の抽選結果が「重複チェリー当選」となったゲームにおいて、入賞判定手段170が「チェリー当選役の入賞」と判定し、且つ操作順序判定手段が「複数のストップスイッチ54が所定の順序で操作された」と判定したときに、AT開始抽選を行う。」との記載に鑑みれば、これらの段落では、「チェリー当選役の入賞」及び「複数のストップスイッチ54が所定の順序で操作された」との判定の2点を契機として、AT(アシストタイム)開始抽選を行う旨説明していることは明らかである。
また、当初明細書等の他の箇所を参照しても、予め定められた操作順序の内の一の操作順序でストップスイッチが操作されたこと「のみを契機として」、アシストタイムを開始するか否かの抽選を行うことは記載も示唆もされていない。
ウ したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術事項を導入するものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(3)小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.独立特許要件
上記のとおり、本件補正は新規事項を追加するものであるが、仮に、本件補正が当初明細書等の記載の範囲内においてなされたものとし、本件補正後の発明が独立して特許を受けることができるか否か(特許法第17の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に補足的に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1に記載したとおりのものである。

(2)刊行物
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-299771号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下、同じ。)。

ア 「【0015】スロットマシン10は、筐体11の前面扉12に4個の表示窓13が設けられ、各々の表示窓13の奥に第1リール14a、第2リール14b、第3リール14c及びサブリール15が回転自在に組み込まれている。周知のように、第1?第3リール14a?14cの外周には複数種類の絵柄が一定ピッチで配列され、リールが停止した状態では表示窓13を通して1リール当たり3個の絵柄が観察可能になる。これにより、各リールの絵柄を1個ずつ組み合わせた直線状の入賞有効ラインが横3本斜め2本の合計5本が設定される。
・・・
【0018】ストップボタン19a?19cは、これらを操作することにより、各ボタンに対応した第1?第3リール14a?14cが個別に停止される。ストップボタン19a?19cの上方の操作パネルには、メダルがクレジットされた状態でゲームを行うときに操作される1ベットボタン、MAXベットボタン、ペイアウトボタンなどの各種の操作ボタンが設けられている。これらの操作ボタンの機能はいずれも周知であるのでその詳細については省略する。」

イ 「【0024】スタート信号センサ33は1?3枚のメダルが投入された後、スタートレバー18が操作されたときにゲームスタート信号を制御部30aに入力する。ゲームスタート信号を受けて、制御部30aはメモリ31のROM領域に格納されたゲーム実行プログラムに基づいて第1?第3リール14a?14cを回転させるとともにゲームの処理を開始する。ゲームの実行プログラムには、通常モードの他にBBモードに移行させてゲームの処理を実行するものやATモードに移行させてゲームの処理を実行するものが含まれている。なお、ATモードのゲームでは、第1?第3リール14a?14cの回転と同時にサブリール15も回転される。結果的に制御部30aは特別モード実行手段として機能する。
・・・
【0029】ストップボタンセンサ38a?38cは、ストップボタン19a?19cが操作されたときに制御部30aにリールごとのストップ信号を入力する。スタートレバー18を操作して全リールの回転が始まり、これらの回転が定常速度に達した時点でストップボタン19a?19cの操作が有効化される。その後、これらを操作することによってそれぞれ対応する第1?第3リール14a?14cの停止制御が開始される。なお、プラム及びベルについては、ストップボタン19a?19cが特定の順序で操作された場合にのみ入賞されるように第1?第3リール14a?14cの停止制御が行われる。
【0030】第1?第3リール14a?14cの停止制御は、当選絵柄4個分の範囲(引き込み範囲)内で行われ、例えばストップボタン19a?19cが操作されたときに、入賞有効ライン上に位置している当選絵柄から連続する4個の当選絵柄の中に、抽選で当選された当選役を構成する当選絵柄が含まれている場合には、第1?第3リール14a?14cが停止するまでの時間が遅らせられ、当選役を構成する当選絵柄が入賞有効ライン上に停止される。プラム及びベルを構成するプラム絵柄及びベル絵柄は、それぞれの絵柄同士の間隔が当選絵柄4個分以内となるように配列されており、ストップボタン19a?19cの操作順序が正しければ、操作タイミングに関係なく入賞されるように第1?第3リール14a?14cの停止制御が行われる。以上のように制御部30a及びリール駆動コントローラ34はリール停止制御手段として機能する。」

ウ 「【0032】制御部30aは、ゲームスタート信号を受けて電子抽選部39を作動させる。電子抽選部39は乱数発生器と乱数値サンプリング回路とを含み、ゲームが開始されるごとに1つの乱数値を抽選する。抽選された乱数値は当選役決定部40に入力される。当選役決定部40では、入力された値に応じて現在実行されたゲームでどのような当選役を与えるかを決定する。このように電子抽選部39及び当選役決定部40は当選役決定手段として機能する。」

エ 「【0039】当選役決定部40でプラムが決定された場合、特定の操作順序でストップボタン19a?19cが操作されるとプラム絵柄が入賞有効ライン上に停止しやすいように第1?第3リール14a?14cの停止制御が行われ、プラムが入賞される。プラムが入賞されるとメダルホッパー42が駆動され、配当メダルの払い出しが行われる。
【0040】特定の操作順序でストップボタン19a?19cが操作されなかった場合、プラム絵柄が入賞有効ライン上に停止しないように第1?第3リール14a?14cの停止制御が行われる。この場合、制御部30aはATモード移行抽選部41を作動させる。
【0041】ATモード移行抽選部41では、ATモードへ移行させるか否かの抽選が行われる。この抽選に当選した場合は、制御部30aによりメモリ31のROM領域からATモードでのゲームの実行プログラムが読み出され、次回のゲームよりATモードに移行される。
【0042】ATモードではベルに当選したゲームで、第1?第3リール14a?14cとともにサブリール15も同時に回転される。そして、ストップボタン19a?19cの操作が有効化される前にサブリール15が停止され、当選したベルを入賞させることができるストップボタン19a?19cの操作順序が表示される。遊技者は、表示された操作順序に従ってストップボタン19a?19cを操作するとベルを入賞させることができる。」

オ 上記アの段落【0015】の記載事項、図1及び図2より、刊行物1には、「筐体11は正面側に開口する正面開口部を有する箱形であり、前面扉12は正面開口部を閉塞可能であり、第1?第3リール14a?cは筐体11の内部に設けられ、表示窓13は前面扉12に設けられていること」が記載されているといえる。

カ 上記ア?エの記載事項及び上記オの認定事項から、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「正面側に開口する正面開口部を有する箱形の筐体11と、
正面開口部を閉塞可能な前面扉12と、
筐体の内部に設けられ、外周に複数種類の絵柄が一定ピッチで配列された第1リール14a、第2リール14b、第3リール14cと、
前面扉12に設けられ、1リール当たり3個の絵柄が観察可能な表示窓13と、
全リールの回転を始めるスタートレバー18と、
第1?第3リール14a?14cに対応し、各リールを個別に停止するストップボタン19a?19cと、
スタートレバー18が操作されたときに入力されるゲームスタート信号を受けて作動し、ゲームが開始されるごとに1つの乱数値を抽選する電子抽選部39及び入力された乱数値に応じて当選役を決定する当選役決定部40と、
ストップボタン19a?19cの操作により対応する第1?第3リール14a?14cの停止制御を開始し、当選絵柄4個分の範囲(引き込み範囲)内で停止制御を行う制御部30a及びリール駆動コントローラ34とを備え、
当選したベルを入賞させることができるストップボタン19a?19cの操作順序を表示するATモードを実行可能なスロットマシンであって、
当選役決定部40でプラムが決定され、特定の操作手順でストップボタン19a?19cが操作されなかった場合、プラム絵柄が入賞有効ラインに停止しないように停止制御され、ATモードへ移行させるか否かの抽選を行うATモード移行抽選部41を備え、
ATモード移行抽選部41の抽選に当選した場合は、次回のゲームよりATモードに移行される、スロットマシン。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1の「前面扉12」、「外周に複数種類の絵柄が一定ピッチで配列された第1?第3リール14a?14c」、「絵柄が観察可能な表示窓13」、「スタートレバー18」及び「ストップボタン19a?19c」は、本件補正発明の「前扉」、「表面に複数個の図柄が付された複数個の回転リール」、「図柄を視認可能にする図柄表示窓」、「スタートスイッチ」及び「ストップスイッチ」にそれぞれ相当する。

したがって、引用発明1の
「正面側に開口する正面開口部を有する箱形の筐体11と、
正面開口部を閉塞可能な前面扉12と、
筐体の内部に設けられ、外周に複数種類の絵柄が一定ピッチで配列された第1リール14a、第2リール14b、第3リール14cと、
前面扉12に設けられ、1リール当たり3個の絵柄が観察可能な表示窓13と、
全リールの回転を始めるスタートレバー18と、
第1?第3リール14a?14cに対応し、各リールを個別に停止するストップボタン19a?19c」は、
本件補正発明の
「正面側に開口する正面開口部を有する箱形の筐体と、
正面開口部を閉塞可能な前扉と、
筐体の内部に設けられ、表面に複数個の図柄が付された複数個の回転リールと、
前扉に設けられ、各回転リールの一部の図柄を視認可能にする図柄表示窓と、
各回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
各回転リールに対応して設けられ、対応する回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチ」に相当する。

イ 引用発明1の「電子抽選部39」と「当選役決定部40」は、「乱数値を抽選」し、その乱数値に応じて「当選役を決定」するものであるが、当選役に当選しない場合にはハズレとすることを決定していることは明らかであるので、当該「電子抽選部39」及び「当選役決定部40」は、本件補正発明の「当選抽選手段」に相当する。

したがって、引用発明1の「スタートレバー18が操作されたときに入力されるゲームスタート信号を受けて作動し、ゲームが開始されるごとに1つの乱数値を抽選する電子抽選部39及び入力された乱数値に応じて当選役を決定する当選役決定部40」は、本件補正発明の「スタートスイッチの操作を契機に、当選か又はハズレかの抽選を行うための当選抽選手段」に相当する。

ウ 引用発明1は、「当選絵柄4個分の範囲(引き込み範囲)内で停止制御を行う」ものであり、このような引き込みが「回転リールの回転位置」と「当選抽選手段の抽選結果」に基づいて行われることは明らかである。

したがって、引用発明1の「ストップボタン19a?19cの操作により対応する第1?第3リール14a?14cの停止制御を開始し、当選絵柄4個分の範囲(引き込み範囲)内で停止制御を行う制御部30a及びリール駆動コントローラ34」は、本件補正発明の「ストップスイッチの操作を契機に、対応する回転リールの回転位置及び当選抽選手段の抽選結果に基づいて、当該回転リールの停止制御を行うための停止制御手段」に相当する。

エ 引用発明1の「当選したベルを入賞させることができるストップボタン19a?19cの操作順序」は、本件補正発明の「当選抽選手段の抽選結果に関する情報」に相当するので、引用発明1の「ATモード」は、本件補正発明の「アシストタイム」に相当する。

したがって、引用発明1の「当選したベルを入賞させることができるストップボタン19a?19cの操作順序を表示するATモードを実行可能」なスロットマシンは、本件補正発明の「当選抽選手段の抽選結果に関する情報を報知するアシストタイムを実行可能」なスロットマシンに相当する。

オ 引用発明1の「当選役決定部40でプラムが決定され、特定の操作手順でストップボタン19a?19cが操作されなかった場合、プラム絵柄が入賞有効ラインに停止しないように停止制御され、ATモードへ移行させるか否かの抽選を行うATモード移行抽選部41を備え」と本件補正発明の「当選抽選手段の抽選で所定の抽選結果が得られたゲームにおいて予め定められた操作順序の内の一の操作順序でストップスイッチが操作されたことのみを契機として、アシストタイムを開始するか否かの抽選を行うアシストタイム開始抽選手段を備え」とを対比する。

引用発明1の「プラム」は、本件補正発明の「所定の抽選結果」に相当し、当選役の決定はゲーム毎に行われるので、引用発明1の「当選役決定部40でプラムが決定され」は、本件補正発明の「当選抽選手段の抽選で所定の抽選結果が得られたゲームにおいて」に相当する。
また、スロットマシンにおいて3つのストップボタンの操作手順は全部で6通りであり、引用発明1において「特定の操作手順」は予め定められているので、当該「特定の操作手順」以外の操作手順も予め定められることになる。すると、引用発明1の「特定の操作手順でストップボタン19a?19cが操作されなかった」は、「「特定の操作手順」以外の操作手順の内の一の操作順序で操作された」と同じことであるので、本件補正発明の「予め定められた操作順序の内の一の操作順序でストップスイッチが操作された」に相当する。
ここで、刊行物1の段落【0030】の「プラム及びベルを構成するプラム絵柄及びベル絵柄は、それぞれの絵柄同士の間隔が当選絵柄4個分以内となるように配列されており、ストップボタン19a?19cの操作順序が正しければ、操作タイミングに関係なく入賞されるように第1?第3リール14a?14cの停止制御が行われる。」との記載、及び段落【0040】の「特定の操作順序でストップボタン19a?19cが操作されなかった場合、プラム絵柄が入賞有効ライン上に停止しないように第1?第3リール14a?14cの停止制御が行われる。この場合、制御部30aはATモード移行抽選部41を作動させる。」との記載を合わせて参照すれば、引用発明1において、プラムが入賞した場合、「特定の操作順序でストップボタン19a?19cが操作されなかった」場合のみにおいて(すなわち、「予め定められた操作順序の内の一の操作順序でストップスイッチが操作された」場合のみにおいて)プラムが入賞せず、ATモード移行抽選部41が作動されるといえる。
さらに、引用発明1の「ATモードへ移行させるか否かの抽選を行うATモード移行抽選部41」は、本件補正発明の「アシストタイムを開始するか否かの抽選を行うアシストタイム開始抽選手段」に相当する。

以上より、引用発明1の「当選役決定部40でプラムが決定され、特定の操作手順でストップボタン19a?19cが操作されなかった場合、プラム絵柄が入賞有効ラインに停止しないように停止制御され、ATモードへ移行させるか否かの抽選を行うATモード移行抽選部41を備え」は、本件補正発明の「当選抽選手段の抽選で所定の抽選結果が得られたゲームにおいて予め定められた操作順序の内の一の操作順序でストップスイッチが操作されたことのみを契機として、アシストタイムを開始するか否かの抽選を行うアシストタイム開始抽選手段を備え」に相当する。

カ 引用発明1では、「ATモード移行抽選部41の抽選に当選した場合は、次回のゲームよりATモードに移行」するので、「ATモード移行抽選部41の抽選に当選」したことを契機にATモードに移行している。

したがって、引用発明1の「ATモード移行抽選部41の抽選に当選した場合は、次回のゲームよりATモードに移行される」は、本件補正発明の「アシストタイム開始抽選手段の抽選で当選したことを契機に、アシストタイムを開始する」に相当する。

上記ア?カより、引用発明1は、「正面側に開口する正面開口部を有する箱形の筐体と、
正面開口部を閉塞可能な前扉と、
筐体の内部に設けられ、表面に複数個の図柄が付された複数個の回転リールと、
前扉に設けられ、各回転リールの一部の図柄を視認可能にする図柄表示窓と、
各回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
各回転リールに対応して設けられ、対応する回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、
スタートスイッチの操作を契機に、当選か又はハズレかの抽選を行うための当選抽選手段と、
ストップスイッチの操作を契機に、対応する回転リールの回転位置及び当選抽選手段の抽選結果に基づいて、当該回転リールの停止制御を行うための停止制御手段とを備え、
当選抽選手段の抽選結果に関する情報を報知するアシストタイムを実行可能なスロットマシンであって、
当選抽選手段の抽選で所定の抽選結果が得られたゲームにおいて予め定められた操作順序の内の一の操作順序でストップスイッチが操作されたことのみを契機として、アシストタイムを開始するか否かの抽選を行うアシストタイム開始抽選手段を備え、
アシストタイム開始抽選手段の抽選で当選したことを契機に、アシストタイムを開始することを特徴とするスロットマシン。」である。

したがって、本件補正発明と引用発明1との間に差異はない。

よって、本件補正発明は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1に記載された発明である。

(4)請求人の主張
請求人は、審判請求書において、「引用文献1記載の発明は、解決課題が「プラムの取りこぼしの保証が行われるので、慣れていない遊技者にとっても楽しめ、かつ慣れている遊技者との間での獲得メダル数に差がつきにくい。」にあり、本願発明のような「遊技者にとって、ストップスイッチの操作順序を選択することにワクワクする。」との解決課題はない。」(第7頁第7?11行)と主張している。
しかしながら、本件補正発明と引用発明1とで、発明の解決しようとする課題が異なるとしても、上記(3)のとおり、本件補正発明と引用発明1とは同一であり、本件補正発明は本願の出願前に頒布された刊行物1に照らして新規性を有していないため、拒絶されるべきものである。
したがって、請求人の主張は採用することができない。

(5)小括
上記のとおり、本件補正発明は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1に記載された発明である。

4.むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。また、仮に、本件補正が当初明細書等の記載の範囲内においてなされたものとしても、本件補正は、同法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明
本件補正(平成27年5月27日付け手続補正)は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年1月26日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1において特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

1.刊行物
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-121710号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下、同じ。)。

ア 「【0016】
このスロットマシン2は、筐体3の前面扉4に3個の表示窓5?7が設けられ、各々の表示窓5?7の奥に第1リール9a,第2リール9b,第3リール9cが回転自在に組み込まれている。周知のように、第1?第3リール9a?9cの外周には様々な絵柄が一定ピッチで配列され、リールが停止した状態では対応する表示窓を通して1リール当たり3個の絵柄が観察される。これにより、各リールの絵柄を1個ずつ組み合わせた直線状の入賞ラインが横3本斜め2本の合計5本設定されている。
・・・
【0023】
スタートスイッチセンサ24は、1?3枚のメダルが投入された後のスタートレバー13の操作によりオンとなり、ゲームスタート信号をCPU21に入力する。ゲームスタート信号を受けて、CPU21はメモリ22のROM領域に格納されたゲーム実行プログラムに基づいて第1?第3リール9a?9cを回転させるとともにゲームの処理を開始する。各リールの駆動及び停止制御は、絵柄部駆動制御部27を介して行われる。なお、絵柄部駆動制御部27として、例えばリール駆動コントローラが挙げられる。それぞれのリールは個別のステッピングモータ28a?28cの駆動軸に固着され、各ステッピングモータ28a?28cの駆動を制御することにより各リールの制御が行われる。なお、メモリ21のRAM領域はワーキングエリアとなっており、毎回のゲームごとに利用されるフラグやデータなどの一時的保管や書き換えなどに用いられる。
・・・
【0027】
ストップボタン14a?14cの内部にはストップスイッチセンサ32a?32cがそれぞれ設けられている。これらストップスイッチセンサ32a?32cは、ストップボタン14a?14cが押圧されたときにそれぞれオンとなり、CPU21に向けてリールごとのストップ信号を入力する。スタートレバー13を操作して全リールの回転が始まり、これらの回転が定常速度に達した時点でストップボタン14a?14cの操作が有効化される。その後、これらを押圧操作することによってそれぞれ対応する第1?第3リール9a?9cの停止制御が開始される。以上のように、ストップボタン14a?14cはリール停止操作手段として機能する。なお、複数のストップボタン14a?14cを操作したときにはタイミングの早い方のリールだけが停止し、完全に同時操作したときにはいずれのリールも停止しないようになっている。」

イ 「【0028】
CPU21は、ゲームスタート信号を受けて電子抽選部32を作動させる。電子抽選部32はゲームが開始されるごとに一つの乱数値をサンプリングし当選役決定部33に出力する。これを受けて、当選役決定部33ではそのゲームにおいての当選役又はハズレのいずれかを決定する。このように、CPU21、電子抽選部32及び当選役決定部33は当選役決定手段として機能する。」

ウ 「【0035】
操作順序判定部53は、小役「リプレイ」が当選したときに作動し、遊技者によるストップボタン14a?14cの操作順序の判定を行う。操作順序判定部53での操作順序の判定を受けて、CPU21ではメモリ22のROM領域に記憶された第1?第4停止制御テーブル56?59から1つを選択して、メモリ22のRAM領域に記憶された乱数値と選択され停止制御テーブルとから、リールの停止制御を引き込み制御で行うか蹴飛ばし制御で行うかを決定し、第1?第3リール9a?9cの停止制御を、決定されたリールの停止制御で行う。これにより、CPU21はリール停止制御テーブル選択手段、及びリール停止制御手段として、第1?第4停止制御テーブル56?59は複数のリール停止制御テーブルとしてそれぞれ機能する。」

エ 「【0054】
また、第1RTモード中のゲームでの当選役が小役「リプレイ」である場合に、入賞許可決定部60での決定が小役「リプレイ」を入賞させないことが決定されることがある。この場合、停止絵柄決定部65でチャンス目の表示の有無が決定される。このチャンス目の表示の有無の決定でチャンス目を表示させることが決定された場合に、CPU21はメモリ22のROM領域に記憶された複数個のチャンス目のデータと第3停止制御テーブル58とを参照し、各ストップボタンの押圧タイミングに合わせたチャンス目を各表示窓から表示させるように各リールの停止制御を行う。そして、CPU21は各リール用に対応して設けられたパルスカウンタのカウント値と、メモリ22のROM領域の絵柄テーブルとから、各表示窓から表示された停止絵柄の組み合わせがチャンス目であるか否かを判定し、各表示窓から表示された停止絵柄の組み合わせがチャンス目である場合にAT移行決定部66を作動させる。なお、ストップボタンの操作順序が逆押し及び順押し以外の場合には、CPU21はメモリ22のROM領域から第4停止制御テーブル59を参照して、小役「リプレイ」を構成する絵柄組み合わせ「リプレイ-リプレイ-リプレイ」を同一の入賞有効ライン上に揃えないように各リールの停止制御を行う。
【0055】
各表示窓に表示された絵柄の組み合わせがチャンス目となる場合、AT移行決定部66では、メモリ22のRAM領域に記憶された乱数値と第1AT移行テーブル67とからATモードに移行させるか否かを決定し、ATモードに移行させることが決定された場合にAT移行回数決定部70及びATゲーム回数決定部73をそれぞれ作動させ、ATモードへの移行回数とATモード中のゲーム回数の決定を行う。これにより、次のゲームからATモードが発動し、ARTモードへと移行する。なお、停止絵柄決定部60でチャンス目を表示させないことが決定された場合には、各表示窓から表示される停止絵柄がチャンス目にならないように各リールの停止制御が行われる。この場合は、引き続き第1RTモードのゲームが行われる。なお、第1RTモード中のゲーム回数がRTゲーム回数決定部50で決定されたゲーム回数に到達した場合に第1RTモードが終了し、通常モードへと移行する。また、第1RTモード中にATモードが発動してARTモードに移行し、ATゲーム回数決定部73で決定されたゲーム回数が全て消化され、第1RTモード中のゲーム回数が全て消化されていない場合には、ARTモードから第1RTモードに移行する。この場合には、第1RTモードのゲーム回数を消化すると、第1RTモードから通常モードのゲームへと移行する。また、ARTモード中の第1RTモードのゲーム回数が規定回数に到達した場合には、ARTモードが終了し、ATモードへと移行する。これにより、ATモードを発動させる契機が増えることにより、ATモードへの期待感を遊技者に与えることができる。」

オ 「【0056】
ATモードが発動すると、各ゲームでLCDパネル10による、例えばストップボタンの操作順序等のアシスト表示が行われるので、遊技者はLCDパネル10によるアシスト表示に従ってストップボタンを操作するだけで、小役の入賞を得ることができる。これによりATモード中及びARTモード中のゲームでは、通常モード中のゲームよりも多くのメダルを獲得することができる。なお、ARTモードからATモードに移行し、且つゲーム数カウンタ42のカウント値がATゲーム回数決定部73で決定されたゲーム回数に到達した場合はATモードが終了し、通常モードへと移行する。」

カ 「【0059】
第2RTモード中のゲームは、第1RTモードと同様に小役「リプレイ」が当選した場合に、入賞許可決定部60では第3入賞許可テーブル63を用いて小役「リプレイ」を入賞させ得るか否かの決定を行う。また、入賞許可決定部60で小役「リプレイ」を入賞させ得ることが決定され、且つ操作順序判定部53による遊技者のストップボタンの操作順序が順押しとなった場合に、CPU21では、第2停止制御テーブル57を用いて、小役「リプレイ」を構成する絵柄「リプレイ」を同一の入賞有効ライン上に停止させ得るようにリールの停止制御を行う。そして、小役「リプレイ」の入賞を受けて、ATモード中のゲーム回数の決定とATモードの移行回数とがそれぞれ決定される。これにより、第2RTモード中のゲームでは、第1RTモード中のゲームと同様に、ストップボタンの操作順序を順押しで行うことがATモードを発動させるための前提条件となる。
【0060】
また、入賞許可決定部60で、小役「リプレイ」を入賞させないことが決定され、且つ停止絵柄決定部65でチャンス目を表示させることが決定された場合には、遊技者の各ストップボタンの操作順序が順押しであると判定された場合にのみ、チャンス目を表示させるように各リールの停止制御が行われる。そして、ATモードへと移行させるか否かを決定し、ATモードへと移行させることが決定された場合に、ATモード中のゲーム回数とATモードの移行回数とがそれぞれ決定される。これにより、次のゲームからATモードが発動し、ARTモードのゲームとなる。なお、ATモードのゲーム数が所定ゲーム回数に到達すると、ATモードが終了し、第2RTモードが終了条件に到達していない場合には、第2RTモードへ移行する。また、ARTモード中に第2RTモードが終了条件を満たした場合にはATモードへ移行し、ATモードのゲーム回数を消化した場合に通常モードへ移行する。そして、未消化分のATモードがある場合には、AT移行抽選部でATモードへの移行が決定された場合に、通常モードからATモードへと移行する。これにより、未消化分のATモードが消化されるので、ATモードが連荘しやすくなり、ATモードのゲームを消化することにより大量のメダルを獲得することが可能となる。」

キ 上記アの段落【0016】の記載事項、図1及び図2より、刊行物2には、「筐体3は正面側に開口する正面開口部を有する箱形であり、前面扉4は正面開口部を閉塞可能であり、第1?第3リール9a?9cは筐体の内部に設けられ、表示窓5?7は前面扉4に設けられていること」が記載されているといえる。

ク 上記ア?カの記載事項及び上記キの認定事項から、刊行物2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「正面側に開口する正面開口部を有する箱形の筐体3と、
正面開口部を閉塞可能な前面扉4と、
筐体3の内部に設けられ、外周に様々な絵柄が一定ピッチで配列された第1リール9a、第2リール9b、第3リール9cと、
前面扉4に設けられ、1リール当たり3個の絵柄が観察される3個の表示窓5?7と、
操作すると全リールの回転が始まるスタートレバー13と、
押圧操作することでそれぞれ対応する第1?第3リール9a?9cの停止制御が開始されるストップボタン14a?14cと、
スタートレバー13の操作により入力されるゲームスタート信号を受けて作動し、ゲームが開始されるごとに一つの乱数値をサンプリングする電子抽選部32と、これを受けて、そのゲームにおいての当選役又はハズレのいずれかを決定する当選役決定部33と、
ストップボタン14a?14cを押圧操作することによってそれぞれ対応する第1?第3リール9a?9cの停止制御を開始し、リールの停止制御を引き込み制御で行うか蹴飛ばし制御で行うかを決定し、第1?第3リール9a?9cの停止制御を、決定されたリールの停止制御で行うCPU21とを備え、
ATモードが発動すると、各ゲームでLCDパネル10による、例えばストップボタンの操作順序等のアシスト表示が行われるATモード発動するスロットマシンであって、
小役「リプレイ」が当選した場合に、小役「リプレイ」を入賞させないことが決定され、且つチャンス目を表示させることが決定された場合には、遊技者の各ストップボタンの操作順序が順押しであると判定された場合にのみ、チャンス目を表示させるように各リールの停止制御が行われ、各表示窓に表示された絵柄の組み合わせがチャンス目となる場合、AT移行決定部66では、メモリ22のRAM領域に記憶された乱数値と第1AT移行テーブル67とからATモードに移行させるか否かを決定し、
AT移行決定部66でATモードへと移行させることが決定された場合に、次のゲームからATモードが発動する、スロットマシン。」

2.対比・判断
本願発明と引用発明2とを対比する。

ア 引用発明2の「前面扉4」、「外周に様々な絵柄が一定ピッチで配列された第1?第3リール9a?9c」、「絵柄が観察される表示窓5?7」、「スタートレバー13」及び「ストップボタン14a?14c」は、本願発明の「前扉」、「表面に複数個の図柄が付された複数個の回転リール」、「図柄を視認可能にする図柄表示窓」、「スタートスイッチ」及び「ストップスイッチ」にそれぞれ相当する。

したがって、引用発明2の
「正面側に開口する正面開口部を有する箱形の筐体3と、
正面開口部を閉塞可能な前面扉4と、
筐体3の内部に設けられ、外周に様々な絵柄が一定ピッチで配列された第1リール9a、第2リール9b、第3リール9cと、
前面扉4に設けられ、1リール当たり3個の絵柄が観察される3個の表示窓5?7と、
操作すると全リールの回転が始まるスタートレバー13と、
押圧操作することでそれぞれ対応する第1?第3リール9a?9cの停止制御が開始されるストップボタン14a?14c」は、
本願発明の
「正面側に開口する正面開口部を有する箱形の筐体と、
正面開口部を閉塞可能な前扉と、
筐体の内部に設けられ、表面に複数個の図柄が付された複数個の回転リールと、
前扉に設けられ、各回転リールの一部の図柄を視認可能にする図柄表示窓と、
各回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
各回転リールに対応して設けられ、対応する回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチ」に相当する。

イ 引用発明2の「電子抽選部32」及び「当選役決定部33」は、「乱数値をサンプリング」し、それにより「当選役又はハズレのいずれかを決定する」ので、本願発明の「当選抽選手段」に相当する。

したがって、引用発明2の「スタートレバー13の操作により入力されるゲームスタート信号を受けて作動し、ゲームが開始されるごとに一つの乱数値をサンプリングする電子抽選部32と、これを受けて、そのゲームにおいての当選役又はハズレのいずれかを決定する当選役決定部33」は、本願発明の「スタートスイッチの操作を契機に、当選か又はハズレかの抽選を行うための当選抽選手段」に相当する。

ウ 引用発明2は、「リールの停止制御を引き込み制御で行うか蹴飛ばし制御で行うかを決定」するもので、「引き込み制御」と「蹴飛ばし制御」のいずれであっても、「回転リールの回転位置」及び「当選抽選手段の抽選結果」に基づいて、リールの停止制御を行うことになる。

したがって、引用発明2の「ストップボタン14a?14cを押圧操作することによってそれぞれ対応する第1?第3リール9a?9cの停止制御を開始し、リールの停止制御を引き込み制御で行うか蹴飛ばし制御で行うかを決定し、第1?第3リール9a?9cの停止制御を、決定されたリールの停止制御で行うCPU21」は、本願発明の「ストップスイッチの操作を契機に、対応する回転リールの回転位置及び当選抽選手段の抽選結果に基づいて、当該回転リールの停止制御を行うための停止制御手段」に相当する。

エ 引用発明2の「ストップボタンの操作順序等のアシスト表示」は、本願発明の「抽選結果に関する情報」に相当するので、引用発明2の「ATモード」は、本願発明の「アシストタイム」に相当する。

したがって、引用発明2の「ATモードが発動すると、各ゲームでLCDパネル10による、例えばストップボタンの操作順序等のアシスト表示が行われるATモード発動する」スロットマシンは、本願発明の「当選抽選手段の抽選結果に関する情報を報知するアシストタイムを実行可能な」スロットマシンに相当する。

オ 引用発明2の「小役「リプレイ」が当選した場合に、小役「リプレイ」を入賞させないことが決定され、且つチャンス目を表示させることが決定された場合には、遊技者の各ストップボタンの操作順序が順押しであると判定された場合にのみ、チャンス目を表示させるように各リールの停止制御が行われ、各表示窓に表示された絵柄の組み合わせがチャンス目となる場合、AT移行決定部66では、メモリ22のRAM領域に記憶された乱数値と第1AT移行テーブル67とからATモードに移行させるか否かを決定し」と本願発明の「当選抽選手段の抽選で所定の抽選結果が得られたゲームにおいて所定の一の操作態様でストップスイッチが操作されたことに基づいて、アシストタイムを開始するか否かの抽選を行うアシストタイム開始抽選手段」とを対比する。

引用発明2の「リプレイ」、「順押し」、「AT移行決定部66」は、本願発明の「所定の抽選結果」、「所定の一の操作態様」、「アシストタイム開始抽選手段」にそれぞれ相当する。ここで、引用発明2は、「操作順序が所定の一の操作態様(順押し)であると判定された場合にのみ、チャンス目を表示させるように各リールの停止制御が行われ、各表示窓に表示された絵柄の組み合わせがチャンス目となる場合、AT移行決定部66では、・・・ATモードに移行させるか否かを決定」するものであり、「所定の一の操作態様(順押し)」でない場合には、「アシストタイム開始抽選手段(AT移行決定部66)」は作動しないものと認められる(この点について、段落【0059】の「これにより、第2RTモード中のゲームでは、第1RTモード中のゲームと同様に、ストップボタンの操作順序を順押しで行うことがATモードを発動させるための前提条件となる。」との記載や図4のフローチャートを参照されたい。)。したがって、引用発明2では、「所定の一の操作態様(順押し)」を行うことが、「アシストタイム開始抽選手段(AT移行決定部66)」が作動するのに必要な条件となっているので、「所定の一の操作態様(順押し)」「に基づいて、」「アシストタイム開始抽選手段(AT移行決定部66)」による抽選を行うものといえる。

以上より、引用発明2の「小役「リプレイ」が当選した場合に、小役「リプレイ」を入賞させないことが決定され、且つチャンス目を表示させることが決定された場合には、遊技者の各ストップボタンの操作順序が順押しであると判定された場合にのみ、チャンス目を表示させるように各リールの停止制御が行われ、各表示窓に表示された絵柄の組み合わせがチャンス目となる場合、AT移行決定部66では、メモリ22のRAM領域に記憶された乱数値と第1AT移行テーブル67とからATモードに移行させるか否かを決定し」は、本願発明の「当選抽選手段の抽選で所定の抽選結果が得られたゲームにおいて所定の一の操作態様でストップスイッチが操作されたことに基づいて、アシストタイムを開始するか否かの抽選を行うアシストタイム開始抽選手段を備え」に相当する。

カ 引用発明2の「AT移行決定部66でATモードへと移行させることが決定され」ること、「ATモードが発動する」ことは、本願発明の「アシストタイム開始抽選手段の抽選で当選」すること、「アシストタイムを開始する」ことにそれぞれ相当する。

したがって、引用発明2の「AT移行決定部66でATモードへと移行させることが決定された場合に、次のゲームからATモードが発動する」は、本願発明の「アシストタイム開始抽選手段の抽選で当選したことを契機に、アシストタイムを開始する」に相当する。

上記ア?カより、引用発明2は、「正面側に開口する正面開口部を有する箱形の筐体と、
正面開口部を閉塞可能な前扉と、
筐体の内部に設けられ、表面に複数個の図柄が付された複数個の回転リールと、
前扉に設けられ、各回転リールの一部の図柄を視認可能にする図柄表示窓と、
各回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
各回転リールに対応して設けられ、対応する回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、
スタートスイッチの操作を契機に、当選か又はハズレかの抽選を行うための当選抽選手段と、
ストップスイッチの操作を契機に、対応する回転リールの回転位置及び当選抽選手段の抽選結果に基づいて、当該回転リールの停止制御を行うための停止制御手段とを備え、
当選抽選手段の抽選結果に関する情報を報知するアシストタイムを実行可能なスロットマシンであって、
当選抽選手段の抽選で所定の抽選結果が得られたゲームにおいて所定の一の操作態様でストップスイッチが操作されたことに基づいて、アシストタイムを開始するか否かの抽選を行うアシストタイム開始抽選手段を備え、
アシストタイム開始抽選手段の抽選で当選したことを契機に、アシストタイムを開始することを特徴とするスロットマシン。」である。

したがって、本願発明と引用発明2との間に差異はない。

よって、本件補正発明は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物2に記載された発明である。

3.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。したがって、その余の請求項については検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-12 
結審通知日 2016-05-17 
審決日 2016-06-03 
出願番号 特願2013-267209(P2013-267209)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大澤 元成  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 齋藤 智也
本郷 徹
発明の名称 スロットマシン  
代理人 黒田 博道  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  

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