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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E05F
管理番号 1317358
審判番号 不服2015-11929  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-24 
確定日 2016-07-21 
事件の表示 特願2011- 10059「引き戸のアシスト装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 9日出願公開、特開2012-149459〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成23年1月20日の出願であって、平成27年3月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月24日に拒絶査定不服審判が請求されたものであって、その後当審において、平成28年1月8日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月14日に手続補正書並びに意見書が提出されたものである。


2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成28年3月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
戸枠と前記戸枠に相対的にスライド移動する引き戸とのいずれか一方側に設けられる一対の当受体と、
前記戸枠と前記引き戸とのいずれか他方側に設けられた基体と、前記基体に設けられ、前記一対の当受体とそれぞれ係合及び係合解除可能であり前記当受体と係合した状態で前記基体に対して前記スライド方向に移動可能に構成された一対の当接体と、前記一対の当接体のうち前記スライド方向一方側の当接体を前記基体に対して前記スライド方向他方側に向かって付勢する付勢機構と、前記一対の当接体の移動に抵抗力を付与する制動機構と、を備え、
前記制動機構は、前記一対の当接体にそれぞれ連結されるシリンダとピストンロッドを有するピストンダンパであって、前記シリンダに対するピストンロッドの押し込み及び引っ張り動作に対してシリンダ内の流体の抵抗力を付与するとともに、
前記シリンダもしくはロッドの押し込み動作に抵抗するとともにシリンダもしくはロッドが押し込まれた状態から復元する方向に付勢力を作用させる第2の付勢手段としての圧縮コイルばねが設けられ、
スライド方向における開き側の終了位置から閉じ側に向かって前記引き戸を前記戸枠に対して復動させる際には、前記付勢機構により前記引き戸を閉じ側の終了位置に向かって付勢する付勢力が作用し、
スライド方向における閉じ側の終了位置から開き側に向かって前記引き戸を前記戸枠に対して復動させる際には、開き側の終了位置に向かう前記付勢機構の付勢力は作用せず、閉じ側の終了位置への移動時には付勢力及び制動力が作用し、開き側の終了位置への移動時には付勢力は作用せずに制動力のみが作用する、ことを特徴とする引き戸のアシスト装置。」


3 刊行物の記載
(1)刊行物1に記載された発明
ア 当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願日前に頒布された刊行物である国際公開第2010/092697号(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある(下線は審決で付した。以下同じ。)。
(ア)「[0001] 本発明は、引き戸などの移動体の移動装置に関するものである。
[0002] 引き戸によって開口を閉鎖させる移動機構において、特許文献1では、例えば、枠体にストライカが設けられ、移動体にキャッチャー(保持機構)が設けられている。キャッチャーは、移動体の閉鎖方向又は開放方向へ向って付勢する付勢機構の付勢力に抗して待機位置に保持されるようになっている。」

(イ)「[0031] 次に、本発明の実施の形態に係る移動体の移動装置について説明する。
図1A及び図1Bには、移動体としての引き戸10が示されており、枠体としての戸枠12の上下に設けられたレール(図示省略)に沿って水平移動可能としている。この引き戸10の移動によって、戸枠12内の開口14が閉鎖又は開放される。ここでは、この引き戸10の上端部中央に、移動装置16が設けられている。
[0032](移動装置の構成)
ここで、移動装置の構成について説明する。
図2及び図3に示すように、移動装置16は、略箱状のケース18を備えている。このケース18の長手方向の両端部には、ケース18の高さ方向の下部に取付部20、22が設けられており、取付部20、22の中央部には、図示しない固定ネジを挿通可能な挿通穴20A、22Aがそれぞれ形成されている。
[0033] 引き戸10(図1参照)の上端面に設けられた収容穴24(図1参照)にケース18を収容し、挿通穴20A、22Aに固定ネジを挿通させ、収容穴24の底部に固定ネジをねじ込みケース18を引き戸10に固定する。
[0034] また、ケース18の高さ方向の中央部には、ケース18の内壁面に、ケース18の長手方向に沿って一対のレール26が設けられている。このレール26には、ケース18の長手方向の両端に配置されるラッチユニット28、30が載置されている。
[0035] ラッチユニット28、30は、ケース18内をレール26に沿ってスライドするスライダー36、38と、スライダー36、38の端部に設けられたラッチケース(保持機構)66と、を含んで構成されている。
[0036] また、スライダー36、38の下部には、レール26の下部から露出しケース18の高さ方向の下部に位置して、スライダー36、38の抜け止めを行う抜け止め片32、34がそれぞれ設けられており、スライダー36、38と抜け止め片32、34との間でレール26を挟持可能としている。そして、ラッチユニット28、30がケース18内を移動するとき、このスライダー36、38を介してケース18内を移動することで、ラッチユニット28、30がガタ付かないようにしている。
[0037] また、スライダー36とスライダー38の間には、ダンパ(減衰機構)40が設けられている。ダンパ40はシリンダ42を備えており、シリンダ42内には、粘性流体が充填されている。また、シリンダ42内には、ピストン(図示省略)が設けられており、シリンダ42内を往復移動可能としている。このピストンによって粘性流体の体積を圧縮して、ピストンに設けられたピストンロッド44に減衰力が作用するようになっている。
[0038] このピストンロッド44がスライダー36に連結され、シリンダ42がスライダー38に連結されて、スライダー36(ラッチユニット28)又はスライダー38(ラッチユニット30)の移動時に、その移動速度が減衰される。
[0039] なお、ここでは、シリンダ42及びピストンを含んで構成されるダンパ40を例に挙げたが、スライダー36(ラッチユニット28)又はスライダー38(ラッチユニット30)の移動速度を減衰させることができれば良いため、ダンパは特に限定されるものではない。例えば、ラックとダンパギアを含んで構成されるダンパであっても良い。」

(ウ)「[0040] 一方、ラッチユニット28側の抜け止め片32の下部には、連結部46が設けられており、引張りばね(付勢機構)48の一端部が連結されている。ケース18の取付部22側には、連結部50が設けられており、この連結部50に引張りばね48の他端部が連結されている。
[0041] そして、ラッチユニット28がケース18の取付部20側に配置されている状態(図3参照)で、引張りばね48には弾性エネルギ(付勢力)が蓄積された状態となる。このため、ダンパ40による減衰力がラッチユニット28に作用しても、引張りばね48に蓄積された弾性エネルギによって引き戸10(後述する)は最後まで引き込まれる。
[0042] ところで、ケース18の高さ方向の上部に位置する、ケース18の長手方向の両端部は開口となっており、戸枠12に設けられたピン部材(ストライカ)52、54が進入可能とされている。ケース18の長手方向の両端部には、一対のガイド片56、58がそれぞれ設けられており、ケース18内へ行くに従ってお互いが徐々に近接する傾斜面となっている。このガイド片56、58によってピン部材52、54がそれぞれラッチユニット28、30内へ確実にガイドされることとなる。
[0043] また、ケース18の高さ方向の上部には、ガイド片56、58に隣接して、矩形状の窓穴60がそれぞれ形成されており、後述するが、ラッチユニット28、30がケース18に対して移動規制された状態(いわゆるロック状態)で、ラッチユニット28、30に備えられた保持部材64が該窓穴60を通じて外側へ張出可能とされている。
[0044] さらに、ケース18の高さ方向の上部中央には、ケース18の長手方向に沿って一対の係合凹部82が形成されており、係合凹部82の表面には、ケース18の長手方向に沿って所定の間隔で複数の爪部84が設けられている。この係合凹部82には、断面が略逆U字状のカバー86が係合可能となっている。
[0045] このカバー86の側壁には、爪部84が係止される矩形穴88が形成されており、カバー86を係合凹部82の上方から嵌め込み、矩形穴88に爪部84が係止する。この状態で、ダンパ40が抜け止めされると共に、ダンパ40の上方への浮き上がりが抑えられる。そして、カバー86の上面には、長手方向の両端部に係合片90がそれぞれ設けられており、この係合片90が戸枠12に設けられたレール(図示省略)と係合する。」

(エ)「[0046](ラッチユニット)
ここで、ラッチユニット28、30について説明する。なお、ラッチユニット28とラッチユニット30は、抜け止め片32の下部に設けられた連結部46の有無による違いだけであり、他の構成は同じであるため、代表してラッチユニット28について説明する。
[0047] 図2、図4A及び図4Bに示すように、ラッチユニット28を構成するスライダー36の一端部(ケース18のガイド片56側)には、略箱状のラッチケース66が備えられている。
[0048] ラッチケース66の一端部(ケース18のガイド片56側)に位置する、幅方向の両端部には、ラッチケース66の高さ方向に沿って支持部68が設けられており、該支持部68に保持部材64の略中央部が支持され、保持部材64が揺動可能となっている。
[0049] 一方、図5A及び図5Bに示すように、保持部材64は、一端側にピン部材52を保持する保持部70が設けられており、他端側には後述するカム部(被当接部)72が設けられている。また、保持部材64と保持部材64の間には、ラッチケース66を貫通するロッド74が設けられている。
[0050] このロッド74はラッチケース66内から突出可能となっており、ロッド74の外周面に形成されたストッパ75とラッチケース66との間に設けられたラッチバネ(付勢部材)76によって、ラッチケース66から突出させる方向へ付勢されている。
[0051] また、ロッド74の外周面からは、保持部材64のカム部72に当接する当接部74Aが突出している。図5Aに示すように、保持部材64が開いた状態では、保持部70は支持部68から離間する方向へ行くにしたがって互いに離間する方向へ向かっている。一方、カム部72は、支持部68から離間する方向へ行くにしたがって、互いに近接する方向へ向かっている。
[0052] このため、図5Bに示すように、ロッド74がラッチバネ76の付勢力の抗する方向へ移動すると、当接部74Aのカム部72に当接する位置がずれ、当接部74Aがカム部72の先端部に行くにしたがって、カム部72同士が離間する。これにより、支持部68を中心に保持部材64が回転して、保持部70同士が互いに近接する方向へ移動する。
[0053] つまり、保持部材64の他端側にカム部72を設け、ロッド74の移動量を保持部材64を回転させる回転力に変換して、保持部70を近接させるようにしている。これにより、ロッド74が軸方向へ押圧されると、保持部70が近接して、ピン部材52が保持される。
[0054] 以上のように、保持部材64の支持部68を基準として、保持部材64の一端側に保持部70を設け、保持部材64の他端側にカム部72を設けて、ロッド74を介してカム部72同士を離間させることで、保持部70同士を近接させるようにしている。
[0055] すなわち、ロッド74の移動によってカム部72に作用する外力の大きさを変えることができるため、支持部68を支点として、保持部70による保持力を変えることができる。つまり、ロッド74のストローク、保持部材64の支持部68の位置を変え、支持部68からカム部72に当接部74Aが当たる部分までの距離よりも支持部68から保持部70までの距離を長くすることで、てこの原理を利用して小さな力で大きな保持力が得られるようにしている。
[0056] ここで、図4Aに示すように、保持部70の上面側には、内面がくり抜かれた状態で係合凹部70Aが形成されており、図4Bに示すように、保持部材64が閉じた状態で、保持部70と保持部70の間には、隙間が設けられるようになっている。この隙間内にピン部材52が係合可能とされている。
[0057] 一方、保持部70の下面側は、保持部材64が閉じた状態で、ほとんど隙間が設けられないようにしている。保持部70内にピン部材52が係合された状態で、ピン部材52の先端部を保持部70の下面部が受けるようにしており、ピン部材52と保持部材64との間でガタ付かないようにしている。
[0058] また、図5A及び図5Bに示すように、カム部72の先端部には、互いに外側へ向かって突出する突出部72Aが設けられている。一方、図4A及び図4Bに示すように、ラッチケース66の側壁には、挿通穴(孔部)66Aが形成されており、保持部材64が閉じた状態で、突出部72Aが挿通穴66Aへ挿通され、保持部材64がピン部材52を保持した状態で、保持部材64がガタ付かないようにしている。
[0059] ところで、保持部材64の下部には、レール26の下部から露出しケース18の高さ方向の下部に位置する係止片78が設けられている。レール26は取付部20(図3参照)との間に隙間を設けており、図4Aに示すように、保持部材64が開いた状態で、係止片78がレール26の先端部に係止される。このとき、保持部材64は窓穴60を通じて外側へ張出す。
[0060] ここで、図2に示すように、ケース18には、窓穴60の下部に係止孔80が形成されており、係止片78がレール26の先端部に係止された状態で、係止片78の先端部が該係止孔80内へ挿入される。この状態で、ラッチユニット28はロックされる。
[0061] そして、ラッチユニット28のロッド74にピン部材52が当接して、ロッド74がラッチバネ76の付勢力の抗する方向へ押圧されると、図4Bに示すように、保持部材64は閉じるが、このとき、係止片78の先端部が係止孔80から抜けると共に、係止片78はレール26の先端部との係止状態が解除される(いわゆるロック解除)。」

(オ)「[0062] (移動体の移動装置の作用)
次に、本実施形態に係る移動装置の作用について説明する。
図1A、図6A及び図6Bに示すように、引き戸10を閉鎖方向(矢印A方向)へ移動させる。なお、図6Aは、ケース18の上部を示す、図1Aに対応する概略平面図であり、図6Bは、ケース18の下部を示す、図1Aに対応する概略断面図である。
[0063] 移動装置16のガイド片56(図2参照)がピン部材52を通過し、図5A及び図5Bに示すように、ピン部材52がラッチユニット28のロッド74に当接して、ラッチバネ76の付勢力の抗する方向へロッド74が押圧されると、ロッド74に設けられた当接部74Aの移動によって保持部材64のカム部72同士が押し広げられ、互いに離間する。これにより、支持部68を中心に保持部材64が回転し、保持部材64が閉じて、保持部70同士が互いに近接してピン部材52を保持する。
[0064] このとき、図4Aに示す係止片78の先端部が、係止孔80(図2参照)から抜けると共に、係止片78はレール26の先端部との係止状態が解除される(ロック解除される)。ラッチユニット28がロックされた状態では、図6Bに示すように、引張りばね48による弾性エネルギ(付勢力)が蓄積された状態であるため、ラッチユニット28がロック解除されると、引張りばね48の付勢力が作用する。
[0065] ラッチユニット28はピン部材52によってその移動が規制されているため、図1B、図7A及び図7Bに示すように、引張りばね48の付勢力はケース18に作用することとなる。つまり、ラッチユニット28を基準に、ケース18が矢印A方向へ移動し、該ケース18を介して、引き戸10が閉鎖方向へ移動する。なお、図7Aは、ケース18の上部を示す、図1Bに対応する概略平面図であり、図7Bは、ケース18の下部を示す、図1Bに対応する概略断面図である。
[0066] ここで、ラッチユニット28を基準に、ケース18が矢印A方向へ移動する際、図6A及び図7Aに示すように、ピストンロッド44がシリンダ42内に押込まれる。このため、ケース18にはダンパ40による減衰力が作用することとなる。したがって、引き戸10は静かに閉鎖方向へ移動する。引き戸10が完全に閉鎖されるとき、引き戸10が戸枠12に接触するが、そのときの衝撃音が防止される。
[0067] 一方、図7A及び図7Bに示す状態から、引き戸10を開放方向(矢印A方向と逆方向)へ移動させる。このとき、引き戸10及びピン部材52を介して、ラッチユニット28を移動させるが、引張りばね48の付勢力の抗する方向(矢印A方向)へラッチユニット28を移動させるため、引き戸10はその分の荷重を受けることとなる。これにより、引き戸10が無闇に開放されたりすることがないようにしている。
[0068] また、ラッチユニット28が移動することで、ピストンロッド44はシリンダ42から引出されることとなる。このため、ラッチユニット28にはピストンがシリンダ42内を移動するときに発生する、いわゆる抗力(<減衰力)が作用することとなる。
[0069] そして、ピン部材52を介してラッチユニット28を移動させ、保持部材64の係止片78がレール26の先端部に到達すると、係止片78がレール26の先端部に係止され、係止片78の先端部が該係止孔80内へ挿入されて、保持部材64は窓穴60を通じて外側へ張出す。この状態で、ラッチユニット28は移動規制される(ロック状態)。」
[0070] そして、図9Aに示すように、ピン部材52は保持部材64との係合状態が解除されるが、この状態では、図9Bに示すように、引張りばね48による弾性エネルギ(付勢力)が蓄積された状態である。なお、図9Aは、ケース18の上部を示す、図8Aに対応する概略平面図であり、図9Bは、ケース18の下部を示す、図8Aに対応する概略断面図である。」

(カ)「[0072] そして、さらに引き戸10を開放方向(矢印B方向)へ移動させ、移動装置16のガイド片58(図2参照)がピン部材54を通過し、図5A及び図5Bに示すように、ピン部材54がラッチユニット30のロッド74に当接して、ラッチバネ76の付勢力の抗する方向へロッド74が押圧される。
[0073] そして、ロッド74に設けられた当接部74Aの移動によって保持部材64のカム部72同士が押し広げられ、互いに離間する。これにより、支持部68を中心に保持部材64が回転し、保持部材64が閉じて、保持部70同士が互いに近接しピン部材54を保持する。
[0074] このとき、図4Aに示す係止片78の先端部が、係止孔80(図2参照)から抜けると共に、係止片78はレール26の先端部との係止状態が解除される(ロック解除される)。そして、図10A及び図11Aに示すように、ラッチユニット30を介してケース18が移動することで、ピストンロッド44がシリンダ42内に押込まれる。
[0075] このため、ラッチユニット30を介して、ケース18にはダンパ40による減衰力が作用する。なお、図10Aは、ケース18の上部を示す、図8Bに対応する概略平面図であり、図11Aは、ケース18の上部を示す、図8Cに対応する概略平面図である。
[0076] ここで、図10B及び図11Bに示すように、引張りばね48はラッチユニット28とケース18に連結されているため、ラッチユニット30がロック解除されても、引張りばね48による付勢力はラッチユニット30には作用しない。なお、図10Bは、ケース18の下部を示す、図8Bに対応する概略断面図であり、図11Bは、ケース18の下部を示す、図8Cに対応する概略断面図である。」

(キ)上記(オ)を踏まえて図6A、図6B、図7A、図7Bをみると、引張りばね48は、閉鎖方向側のラッチユニット28をケース18に対して開放方向側に向かって付勢することがみてとれる。

(ク)図7A、図7Bには、引き戸10が閉鎖された状態が示されている。


イ 上記ア(ア)?(ク)によると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「戸枠12に設けられたピン部材52、54と、
戸枠12の上下に設けられたレールに沿って水平移動可能な引き戸10の上端部中央に設けられた移動装置16とを備えた引き戸によって開口を閉鎖させる移動機構であって、
移動装置16は、ケース18と、ケース18の内壁面に設けられたレール26に載置されているスライダー36、38とロッド74と保持部材64を含んで構成されているラッチユニット28、30と、一端部がラッチユニット28に設けられた連結部46に連結され、他端部がケース18に設けられた連結部50に連結され、閉鎖方向側のラッチユニット28をケース18に対して開放方向側に向かって付勢する引張りばね48と、シリンダ42及びピストンロッド44が設けられたピストンを含んで構成され、シリンダ42内には、粘性流体が充填されているダンパ40とを備え、
引き戸10を閉鎖方向へ移動させると、ピン部材52がラッチユニット28のロッド74に当接して、ロッド74が押圧され、保持部材64が閉じて、ピン部材52を保持し、このとき、保持部材64の下部に設けられている係止片78の先端部が、ケース18に形成されている係止孔80から抜け、係止片78はレール26との係止状態が解除され、引張りばね48の付勢力が作用し、ラッチユニット28を基準にケース18が閉鎖方向へ移動し、該ケース18を介して、引き戸10が閉鎖方向へ移動し、移動する際、スライダー36に連結されたピストンロッド44がスライダー38に連結されたシリンダ42内に押込まれ、ケース18にはダンパ40による減衰力が作用し、
引き戸10が閉鎖された状態から引き戸10を開放方向へ移動させると、ラッチユニット28が移動することで、ピストンロッド44はシリンダ42から引出され、ラッチユニット28にはピストンがシリンダ42内を移動するときに発生する抗力が作用し、そして、保持部材64の係止片78がレール26の先端部に到達すると、係止片78の先端部が係止孔80内へ挿入されてラッチユニット28は移動規制され、ピン部材52は保持部材64との係合状態が解除されるが、この状態では、引張りばね48による付勢力が蓄積された状態であり、
さらに引き戸10を開放方向へ移動させると、ピン部材54がラッチユニット30のロッド74に当接して、ロッド74が押圧され、保持部材64が閉じて、ピン部材54を保持し、このとき、係止片78の先端部が、係止孔80から抜けると共に、係止片78はレール26の先端部との係止状態が解除され、ラッチユニット30を介してケース18が移動することで、ピストンロッド44がシリンダ42内に押込まれ、ラッチユニット30を介して、ケース18にはダンパ40による減衰力が作用し、ここで、引張りばね48はラッチユニット28とケース18に連結されているため、引張りばね48による付勢力はラッチユニット30には作用しない、
引き戸によって開口を閉鎖させる移動機構。」


(2)周知例1に記載された事項
ア 当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-127293号公報(以下「周知例1」という。)には、以下の記載がある。

(ア)「【0001】
本発明は、食器棚,本棚,陳列棚等の種々の収納家具,キャビネット又は部屋の間仕切りにおける引戸において、特に引戸の戸閉側端部付近に急速に近接させたとしても、その戸閉終了間際における引戸の速度が適正に減速されつつ良好な戸閉動作を行なうことができる戸閉具及び引戸の戸閉装置に関する。」

(イ)「【0005】
このため、本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的等)は、戸閉終了間際における引戸の速度を適正に減速させて、引戸開閉時における動作を良質なものとし、さらにその戸閉装置の取付けスペースを僅かなものとし、装置の組付けも極めて簡単にすることを実現することである。」

(ウ)「【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず本発明における戸閉具は、図1,図3,図4及び図5等に示すように、主に、棒状ケーシング1と、ガイド部材2と、緩衝ダンパ3と、フック部材4と、引張り弾性体5とから構成されている。前記棒状ケーシング1は、長手方向に比較的長さの長いケーシング本体11と、端部材12,12とからなり、該端部材12には、溝状の係止溝12a,12aが形成されている。具体的には、端部材12の断面両側に同一の溝として、弧状の係止溝12a,12aが形成されている。前記引張り弾性体5には、金属性のコイルバネは勿論包含されるが、合成ゴムなどの弾性体も包含されるものである。
【0018】
前記ガイド部材2は、図2(D)に示すように、上部に筒状のガイド部21が形成され、該ガイド部21の下側に取付片22,22が形成されている。該取付片22,22を介して前記棒状ケーシング1の前後の辺に取付られている。また、図2(E)に示すように、断面U状のU状ガイド23として形成されることもある。前記緩衝ダンパ3は、図1等に示すように、シリンダ部31とピストンロッド32と圧力調整部33と液体又は気体(空気)とから構成されている。該液体としては、オイル又はジェル状のグリスなどの液体、或いはエア(空気)である。液体の場合、粘性のある液体であれば、前記材質,物質に限定されない。
【0019】
前記緩衝ダンパ3は、エアダンパ30として構成されることが多い。そのシリンダ部31は、これらの液体が漏れることのないように密封性を有している。液体内の該シリンダ部31内には、必要に応じて復帰スプリングが装着されて、前記ピストンロッド32がシリンダ部31から常時突出した状態に維持されるように弾性的に付勢されることがある。前記棒状ケーシング1の中間にガイド部材2が固着され、該ガイド部材2のガイド部21に前記シリンダ部31が遊挿されて該シリンダ部31は前記ガイド部材2に対して摺動自在に構成されている。」

イ 上記ア(ア)?(ウ)によると、周知例1には次の技術事項が記載されていると認められる。

「引戸の戸閉側端部付近に急速に近接させたとしても、その戸閉終了間際における引戸の速度が適正に減速されつつ良好な戸閉動作を行なうことができる戸閉具に関し、戸閉具を構成するシリンダ部31とピストンロッド32等よりなる緩衝ダンパ3において、シリンダ部31内に復帰スプリングが装着されて、ピストンロッド32がシリンダ部31から常時突出した状態に維持されるように弾性的に付勢されること。」

(3)周知例2に記載された事項
ア 当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2010-276075号公報(以下「周知例2」という。)には、以下の記載がある。

(ア)「【0009】
本発明のダンパーにあっては、特にリードがシリンダーの底部側に急激に相対移動した際、より高い緩衝効果を発揮するので、例えばリードが取り付けられる扉や抽斗などの移動体の急激な閉動作に対してより良好に緩衝効果を発揮し、移動体の急激な閉動作に伴う騒音や、繰り返しの衝撃による損傷を防止することができる。」

(イ)「【0012】
まず、本発明に係るダンパーが好適に用いられるスライドユニットの一例について説明する。図1(a)、(b)、図2(a)、(b)、図3(a)、(b)は、本発明に係るダンパーを用いたスライドユニットの一例を示す図であり、これらの図において符号1はスライドユニットである。このスライドユニット1は、家具等の収納具(後述するように、車や各種事務機器、各種電化製品等における収納部等も含む)からなる固定体(図示せず)と、該固定体の抽斗や扉等(前記収納部の引き出しや扉等を含む)からなる移動体(図示せず)とのうちの一方に設けられるもので、本例では特に固定体に設けられるように構成されている。」

(ウ)「【0013】
このスライドユニト1は、前記移動体に着脱可能に係合し、該移動体の移動に伴ってスライド移動するスライダー本体2と、該スライダー本体2の所定方向への移動に抗してその移動エネルギーを減衰させるダンパー3と、を備えて構成されている。ここで、このダンパー3が、後述するように本発明の一実施形態となるものである。
スライダー本体2は、ベース4(固定部)と、該ベース4に対してスライド可能に取り付けられ、かつ前記移動体の係合ピン(図示せず)に着脱可能に係合するスライダー(可動部)5と、前記ベース4と前記スライダー5との間に取り付けられたバネ材からなる一対の反転バネ6、6と、を有して構成されている。」

(エ)「【0027】
ダンパー3は、本発明のダンパーの一実施形態となるもので、図4に示したように外形状が円柱状のシリンダー30と、このシリンダー30内に移動可能に内挿され、かつその一端側が引き出されてなるリード31とを備え、リード31が前記スライダー5の連結部17(連結片17a)に連結したものである。そして、このスライダー5(スライダー本体2)の後退移動(所定方向への移動)に抗して、その移動エネルギーを減衰させるものである。
【0028】
すなわち、このダンパー3は、図5に示すように有底筒状のシリンダー30と、該シリンダー30内にその軸方向に沿って移動可能に収容されたヘッド32と、シリンダー30の開口側を閉塞する蓋部33と、該蓋部33に設けられた貫通孔33aを通ってヘッド32に連結するリード31と、ヘッド32とリード31との間に配設されたバルブ34と、を備え、さらにシリンダー30内に、コイルスプリング(付勢部材)35と粘性流体36とを有したものである。」

(オ)「【0035】
図5に示したようにコイルスプリング35は、前記シリンダー30内において、該シリンダー30の底部30aと前記ヘッド32との間に配設されたもので、該ヘッド32を前記底部と反対の側に付勢するものである。このようにヘッド32に対して付勢することにより、コイルスプリング35はヘッド32の後退移動(シリンダー30の底部30a側への移動)に対して抵抗力を付与し、緩衝効果を発揮するようになっている。」

(カ)「【0047】
また、このように抽斗51が閉じられた状態から、これを引き出した場合には、スライダー5は前記と逆に動作し、図3(a)、(b)に示した状態から図2(a)、(b)に示した状態を経て、図1(a)、(b)に示した状態になる。その際、ダンパー3では、スライダー5の前進に対して抵抗する力が粘性流体36によって発揮されるものの、コイルスプリング35による付勢力はスライダー5を前進させる方向に作用するため、これらの力はほぼ相殺される。したがって、抽斗51を引き出す際には、ダンパー3はその緩衝機能をほとんど発揮しないものとなる。」

イ 上記ア(ア)?(カ)によると、周知例2には次の技術事項が記載されていると認められる。

「扉等からなる移動体に設けられるスライドユニット1が備える移動体の急激な閉動作に伴う騒音や、繰り返しの衝撃による損傷を防止するダンパ3であって、シリンダー30と、該シリンダー30内にその軸方向に沿って移動可能に収容されたヘッド32とを有したものにおいて、さらにシリンダー30内に、ヘッド32をシリンダー30の底部30aと反対の側に付勢するコイルスプリング35を有すること。」

4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

ア 刊行物1発明の「戸枠12」は、本願発明の「戸枠」に相当し、同様に、「ピン部材52、54」は「一対の当受体」に相当し、「戸枠12に設けられたピン部材52、54」は、「戸枠」「に設けられる一対の当受体」に相当する。

イ 刊行物1発明の「引き戸10」は、本願発明の「引き戸」に相当し、同様に、「ケース18」は「基体」に相当し、「戸枠12の上下に設けられたレールに沿って水平移動可能な引き戸10の上端部中央に設けられた移動装置16が備えるケース18」は、「戸枠に相対的にスライド移動する」「引き戸」「に設けられた基体」に相当する。

ウ 刊行物1発明の「ラッチユニット28、30」は、本願発明の「一対の当接体」に相当し、同様に、「閉鎖方向」又は「開放方向」は「スライド方向」に相当する。

エ 刊行物1発明の「ラッチユニット28、30」は、(「ラッチユニット28、30」を構成する)「保持部材64が閉じて、ピン部材52を保持し」たり、「ピン部材52は保持部材64との係合状態が解除され」たりするので、「一対の当受体とそれぞれ係合及び係合解除可能であ」るといえ、さらに、「保持部材64が閉じて、ピン部材52を保持し」「ラッチユニット28を基準にケース18が閉鎖方向へ移動」するので、「当受体と係合した状態で前記基体に対して前記スライド方向に移動可能に構成され」ていることは明らかである。

オ 刊行物1発明の「ラッチユニット28」は、本願発明の「一対の当接体のうち前記スライド方向一方側の当接体」に相当し、同様に、「引張りばね48」は「付勢機構」に、「閉鎖方向側のラッチユニット28をケース18に対して開放方向側に向かって付勢する」は、「スライド方向一方側の当接体を前記基体に対して前記スライド方向他方側に向かって付勢する」に相当する。

カ 刊行物1発明の「ダンパ40」は本願発明の「制動機構」に相当し、同様に、「シリンダ42」は「シリンダ」に、「ピストンロッド44」は「ピストンロッド」に、「粘性流体」は「流体」に相当する。

キ 刊行物1発明の「ダンパ40」は、「ピストンロッド44」と「シリンダ42」「が設けられた」ものなので、ピストンダンパである。そして、「ピストンロッド44」、「シリンダ42」は、(「ラッチユニット28、30」を構成する)「スライダー36」、「スライダー38」と、それぞれ「連結され」ているので、「ダンパ40」は、「ラッチユニット28、30」にそれぞれ連結される「シリンダ42」と「ピストンロッド44」を有するピストンダンパといえる。さらに、「ダンパ40」は、「ピストンロッド44が」「シリンダ42内に押込まれ」「減衰力が作用」し、「ピストンロッド44はシリンダ42から引出され」「抗力が作用」するものなので、「シリンダ42」に対する「ピストンロッド44」の押し込み及び引っ張り動作に対してシリンダ内の流体の抵抗力を付与するものであることは明らかである。
したがって、刊行物1発明は、本願発明の「一対の当接体にそれぞれ連結されるシリンダとピストンロッドを有するピストンダンパであって、シリンダに対するピストンロッドの押し込み及び引っ張り動作に対してシリンダ内の流体の抵抗力を付与する」との事項を備えている。

ク 刊行物1発明の「引き戸10を閉鎖方向へ移動させると」は、本願発明の「スライド方向における開き側の終了位置から閉じ側に向かって前記引き戸を前記戸枠に対して復動させる際には」に相当し、同様に、「引張りばね48の付勢力が作用し、ラッチユニット28を基準にケース18が閉鎖方向へ移動し、該ケース18を介して、引き戸10が閉鎖方向へ移動し」は、「前記付勢機構により前記引き戸を閉じ側の終了位置に向かって付勢する付勢力が作用し」に相当する。

ケ 刊行物1発明の「引き戸10が閉鎖された状態から引き戸10を開放方向へ移動させると」又は「さらに引き戸10を開放方向へ移動させると」は、本願発明の「スライド方向における閉じ側の終了位置から開き側に向かって前記引き戸を前記戸枠に対して復動させる際には」に相当し、「引張りばね48による付勢力が蓄積された状態」又は「引張りばね48による付勢力はラッチユニット30には作用しない」は、共に、「引き戸10を開放方向へ移動させる」際に付勢力が作用しないことを指すので、「開き側の終了位置に向かう前記付勢機構の付勢力は作用せず」に相当する。

コ 上記ク、ケに加えて、刊行物1発明は、「引き戸10を閉鎖方向へ移動させると、」「ダンパ40による減衰力が作用し」、「引き戸10が閉鎖された状態から引き戸10を開放方向へ移動させると、ラッチユニット28が移動することで、ピストンロッド44はシリンダ42から引出され、ラッチユニット28にはピストンがシリンダ42内を移動するときに発生する抗力が作用」するので、「閉じ側の終了位置への移動時には付勢力及び制動力が作用し、開き側の終了位置への移動時には付勢力は作用せずに制動力のみが作用する」ことになる。

サ したがって、本願発明と刊行物1発明とは、
「戸枠に設けられる一対の当受体と、戸枠に相対的にスライド移動する引き戸に設けられた基体と、前記基体に設けられ、前記一対の当受体とそれぞれ係合及び係合解除可能であり前記当受体と係合した状態で前記基体に対して前記スライド方向に移動可能に構成された一対の当接体と、前記一対の当接体のうち前記スライド方向一方側の当接体を前記基体に対して前記スライド方向他方側に向かって付勢する付勢機構と、前記一対の当接体の移動に抵抗力を付与する制動機構と、を備え、
前記制動機構は、前記一対の当接体にそれぞれ連結されるシリンダとピストンロッドを有するピストンダンパであって、前記シリンダに対するピストンロッドの押し込み及び引っ張り動作に対してシリンダ内の流体の抵抗力を付与し、
スライド方向における開き側の終了位置から閉じ側に向かって前記引き戸を前記戸枠に対して復動させる際には、前記付勢機構により前記引き戸を閉じ側の終了位置に向かって付勢する付勢力が作用し、
スライド方向における閉じ側の終了位置から開き側に向かって前記引き戸を前記戸枠に対して復動させる際には、開き側の終了位置に向かう前記付勢機構の付勢力は作用せず、閉じ側の終了位置への移動時には付勢力及び制動力が作用し、開き側の終了位置への移動時には付勢力は作用せずに制動力のみが作用する、引き戸のアシスト装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]:「制動機構」に関して、
本願発明は、「シリンダもしくはロッドの押し込み動作に抵抗するとともにシリンダもしくはロッドが押し込まれた状態から復元する方向に付勢力を作用させる第2の付勢手段としての圧縮コイルばねが設けられ」ているのに対し、
刊行物1発明は、そのような構成を有しない点。


5 判断

(1)相違点について
ア 引戸や扉等からなる移動体において用いられ、移動体の急激な閉動作に対して移動体を減速させるためのダンパであって、シリンダ及びピストンロッドを備えるダンパにおいて、シリンダもしくはロッドの押し込み動作に抵抗するとともにシリンダもしくはロッドが押し込まれた状態から復元する方向に付勢力を作用させる圧縮コイルバネを設けることは、周知技術である(上記3(2)イ、3(3)イを参照のこと。)。

イ 刊行物1発明及び上記周知技術とは、共に引戸や扉等の移動体の急激な閉動作に対して移動体を減速させるダンパに関する点で共通している上、刊行物1発明が、引き戸の開放、閉鎖時における引き戸と戸枠の衝突による衝撃を防止する課題や引き戸の閉鎖状態から開放方向又は解放状態から閉鎖方向へ移動させるのに必要な力を低減する課題、すなわち、ダンパ40の緩衝効果を高める課題や、ダンパ40を初期状態に復帰させるのに必要な力を低減する課題を内包することは当業者にとって明らかであることから、刊行物1発明において、上記周知技術を適用して、シリンダ42もしくはピストンロッド44の押し込み動作に抵抗するとともにシリンダ42もしくはピストンロッド44が押し込まれた状態から復元する方向に付勢力を作用させる圧縮コイルバネを設けることは、当業者であれば容易に着想したことといえる。


(2)本願発明の効果について
本願発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明及び上記周知技術から予測し得る程度のものであって、格別のものとは認められない。


6 むすび
以上の検討によれば、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は、当業者が刊行物1発明及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-10 
結審通知日 2016-05-17 
審決日 2016-06-07 
出願番号 特願2011-10059(P2011-10059)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E05F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川島 陵司  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 谷垣 圭二
小野 忠悦
発明の名称 引き戸のアシスト装置  
代理人 砂川 克  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 佐藤 立志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 河野 直樹  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  
代理人 岡田 貴志  

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