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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
管理番号 1317392
審判番号 不服2014-11774  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-20 
確定日 2016-07-20 
事件の表示 特願2011-532727号「ポンプ機能不全検出用の一体型圧力センサを有する微小電気機械流体ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月29日国際公開、WO2010/046728、平成24年 3月15日国内公表、特表2012-506279号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成20年10月22日を国際出願日とする出願であって、平成26年2月18日付けの拒絶査定に対し、同年6月20日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての手続補正がされ、その後、当審において、平成27年6月10日付けで拒絶理由が通知され、同年11月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


II.本願発明
本願の請求項1ないし34に係る発明は、平成27年11月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし34に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
ポンプ(1)を有するポンプ装置において、
前記ポンプ(1)は、
可変容積を有するポンプ室(11)と、
前記ポンプ室(11)と連通しておりかつ入口弁を備えている入口(2)と、
前記ポンプ室(11)と連通しておりかつ出口弁を備えている出口(5)と、
作動サイクルに依って前記ポンプ室の前記可変容積を変えるのに適しているアクチュエータと、
前記入口(2)と、前記ポンプ室(11)と、前記出口(5)と、前記出口弁の下流に位置する下流ライン(7)とを備えた流体通路と、
前記流体通路の前記入口弁と前記出口弁の間の圧力を計測するための圧力センサ(4)と、
前記圧力センサ(4)から受け取った圧力データを処理するための処理手段とを備え、
前記作動サイクルの各々は、逆の圧力の頂点によって隔てられている2つの圧力の頂点であって、前記2つの圧力の頂点の各々が前記アクチュエータによって生成される超高圧に対応する、2つの圧力の頂点と、実質的に安定した圧力に対応する、少なくとも一つの水平域とを有する、圧力の輪郭を生成し、
前記処理手段は、
圧力の正の頂点の直後の水平域の位置、及び/又は、
圧力の負の頂点の直後の水平域の位置、及び/又は、
圧力の各頂点の後の圧力の時間の遅れ、及び/又は、
前記圧力の正の頂点の直後の水平域と前記圧力の正の頂点の直後の水平域の相対位置、及び/又は、
前記圧力の正の頂点及び前記圧力の負の頂点の高さ及び幅、の中の少なくとも一つをさらに分析する、ポンプ(1)を有するポンプ装置。」


III.刊行物の記載事項
(1)刊行物1
当審における拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である特表2004-505212号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
1a:「【0001】
本願発明は、流体流装置およびその製造方法に関する。本願発明は、また、液体入口を制御するための、例えばノンリターン逆止弁を形成するための部材、または、液圧を検知するための部材を構成する特定の形態の流体流装置に関する。
【0002】
本願発明は、また、流体流装置を構成するマイクロポンプに関し、限定的ではないが、特に、制御された量の液状薬を規則的に配送するための医療用マイクロポンプを形成するマイクロポンプに関する。
【0003】
このような流体流装置、特に、このようなマイクロポンプの製造は、シリコン、または、マイクロ加工可能な他の任意の材料をマイクロ加工するための技術に基づいており、特に、化学エッチング、レーザ切除、マイクロ複製などを伴うフォトリソグラフィ技術を用いて行われる。
【0004】
上記の特定の用途のために、また他の場合にも、マイクロポンプが自吸式(セルフ・プライミング)であることを可能にする入口制御部材を提供することが必要である。マイクロポンプは、ポンプチャンバの容積を変える(ポンプチャンバの容積を交互に増減させる)ことにより駆動され、これは、例えば、圧電アクチュエータから駆動を伝達することにより行われる。」

1b「【0022】
本願発明の流体流装置の第3の態様において、マイクロポンプが提供される。このマイクロポンプは、クロージャウェハに覆われたスタック含み、前記スタックは、好ましくはシリコンからつくられた支持ウェハと、前記支持ウェハの少なくとも一部を覆う、好ましくは酸化シリコンからつくられた絶縁材料の層と、前記絶縁材料の層を覆いかつ前記クロージャウェハにより覆われた単結晶シリコンまたは多結晶シリコンの層と、を含む。前記クロージャウェハおよび/または前記シリコン層は、前記クロージャウェハと前記シリコン層の間にキャビティを画成するように加工され、このキャビティは液体が充填されるためのものであり、かつポンプチャンバを含む。前記支持ウェハは、支持ウェハ内を真直に通りかつ前記キャビティに面して(対向して)配置された少なくとも第1ダクトを含み、前記絶縁材料の層は、材料を全く有さない少なくとも1つの第1ゾーンを有し、第1ゾーンは、前記キャビティと協働して前記シリコン層内に第1の移動部材を画成するように、前記第1ダクトと少なくとも位置合わせして配置される。第1移動部材は、前記ポンプチャンバ内の液圧の下で前記支持ウェハに向って可逆的に移動するのに適しており、前記第1移動部材は液体入口制御部材のフラップの一部を形成する。前記マイクロポンプは、さらに、ポンプダイヤフラムに取り付けられてポンプチャンバの容積を周期的に変化させる制御手段を含むポンプ部と、液体出口制御部材と、を含む。」

1c:「【0045】
図1において、入口弁を形成する部材100は、その静止位置、すなわち、部分的に開放された位置にて示されている。液体が入口ダクト102を介して到着すると、移動部材40は液体の圧力により持ち上げられる。次いで、入口ダクト102内の液圧がキャビティ38内の液圧よりも高くなり、これにより弁の位置は開放位置となり、液体がゾーン35内に侵入し、ギャップ104を通過してキャビティ38に到達することを可能にする。
【0046】
この部材100は、より複雑な流体流組立体に挿入されることができ、この装置において、部材100は上流の液体入口要素を構成する。キャビティ38内にある液体が、液体入口ダクト102内の液体の圧力よりも高い圧力で存在し得て、これが部材100の閉鎖を可能にすることが理解されるであろう。閉鎖は、移動部材が下方に移動して、シリコン支持ウェハ36の、シリコン層に面した面に対する耐漏洩性の接触を、ダクト102の第2端部102bの周囲全体にてもたらすことにより行われる。
・・・
【0048】
この部材100が入口弁を形成することが理解されるであろう。この弁において、弁本体(弁胴)は、移動部材40の、シリコン支持ウェハ36に面する面により構成され、弁座は、シリコン支持ウェハ36の面の、ダクト102の第2端部102bを取り囲むシリコン層32に面する領域により構成される。
【0049】
図2,2A,2Bに示した第2の実施形態においては、移動部材40がその静止位置にあるときに液体入口制御部材100’をその閉鎖位置に配置するプレストレス(予備応力)を設定することも可能である。」

1d:「【0121】
ここで図7?9を参照する。図7?9は、液体入口制御部材100、ポンプ部502、液圧検知部材400および液体出口制御部材200を統合した流体流組立体を形成するマイクロポンプ500を示す。
【0122】
好ましくは、マイクロポンプには、ガラスクロージャウェハ20およびスタック30だけでなく、追加のクロージャウェハ20’が、支持ウェハ36の、クロージャウェハ20を有する面と反対側の面、すなわち、図7および8の下部に接着されて設けられる。
【0123】
したがって、クロージャウェハ20が第1のガラスクロージャウェハを構成し、追加のクロージャウェハ20’が、支持ウェハ36の、第1のガラスクロージャウェハ20を有する面と反対の側の面に固定された第2のガラスクロージャウェハを構成することが理解されるであろう。
【0124】
以下にさらに詳細に説明するように、ガラスクロージャウェハ20は、マイクロポンプの液体充填空間を、耐漏洩性を有して閉鎖するように働くだけでなく、ポンプダイヤフラム506の上り行程(アップストローク)における接触部としても働く。ポンプダイヤフラムとガラスクロージャウェハ20の間の付着または吸盤作用を防止するために、耐付着材料からつくられた要素510が、クロージャウェハ20の、スタックに面した面20a上に配置されている。
【0125】
これらの要素510は、好ましくは、クロージャウェハ20の上記面20aに配置されたチタン層に由来する。これらの要素510は、これらの要素間を液体が流れることを可能にし、かつポンプダイヤフラム506がクロージャウェハ20に付着することを防止する、互いに離れた突出部を形成する。
【0126】
これらの要素510をシリコン層32上に、すなわち、特にダイヤフラム506の自由面上にも同様に良好に配置し得ることを理解されたい。
【0127】
クロージャウェハ20’もまた接触要素として働く。この場合は、ダイヤフラム506のダウンストロークに関して、ウェハ20’と移動ポンプ部514とが接触することによる。これらの2つの接触部(ウェハ20と20’)を組合せることは、ポンプダイヤフラム506の鉛直方向のストローク幅の制御を可能にし、かつ、汲み上げられる容量が正確なことを保証する。」

1e:「【0132】
マイクロポンプ500の上流部に液体入口制御部材100が見られる。液体入口ダクト102が液体入口ダクト102’により延長されて追加のクロージャウェハ20’内を通り、マイクロポンプ500により配送されるべき液体が到達する入口を有する。
【0133】
この液体入口制御部材100は、酸化シリコン層34の材料を有さないゾーン351、キャビティ381、および、移動部材401を画成するギャップ104を含む。液体入口制御部材100は、図7および8に、その静止位置にて示されている。
【0134】
マイクロポンプ500は、液体入口制御部材100と液圧検知部材400の間に、ポンプチャンバ504を備えたポンプ部502を含む。ポンプチャンバ504はキャビティ381の延長上に位置し、かつ、ガラスクロージャウェハ20とシリコン層32の間に画成されている。シリコン層32の、ガラスクロージャウェハ20に面した面は加工されている。
【0135】
ディスク状のポンプダイヤフラム506が、シリコン層32内に、第1にポンプチャンバ504に面し、第2に、支持ウェハ36内に加工された、材料を有さない環状容積508に面して位置している。材料を有さない前記環状容積508は、材料を有さないゾーン535によりシリコン層34内に延長されている。
【0136】
この容積508は、シリコン支持ウェハ36の残りの部分を、円形の断面を有する中実のシリンダの形態の移動ポンプ部514から分離するように働く。移動ポンプ部514はポンプダイヤフラム506に面して配置され、ポンプダイヤフラム506に、酸化シリコン層34の、無傷のまま残された部分516により連結されている。」

1f:「【0142】
また、ポンプダイヤフラム506に面して配置され、一般にアクチュエータと称されるマイクロポンプ制御手段をマイクロポンプ内に直接に統合することができることを理解されたい。これは、マイクロポンプ制御手段を、ガラスウェハ20’の、スタックと反対側の面に固定し、かつ移動ポンプ部514に固定することにより行われる。あるいは、マイクロポンプ制御手段はマイクロポンプの外部にあり、ポンプダイヤフラム506に対して間接的に連結されることもできる。
【0143】
これらの制御手段は、詳細には、圧電により、電磁気により、または空気圧により動作するタイプの制御手段であり得る。
【0144】
図7および8に示されたマイクロポンプ500は、ポンプ部502の下流に、図5,5A,5Bを参照しつつ説明した液圧検知器400を含み、通路412は、追加のガラスクロージャウェハ20’を貫通するダクト413’を介して外圧に連通している。さらに、液圧検知部材400の他の構成要素、詳細には、酸化シリコン層34の、材料を有さないゾーン354と、液体入口402と液体出口404の間に移動部材404を画成するキャビティ384と、が見られる。
【0145】
図7および8において、液圧検知部材400は、その静止位置、すなわち、移動部材404がベアリング部414と接触していない開放位置にて示されている。ベアリング部414およびシリコン層32との電気的連結は示されてないことを理解されたい。
【0146】
このように、液圧検知器が、マイクロポンプが適切に動作することを保証するように働くことが理解されるであろう。これは、ポンプダイヤフラム506の撓みにより生じるポンプの各ストロークにおける液圧の一時的な増大を検知することにより行われる(ダイヤフラム506が、図7および8における上側へ移動すると圧力が増大し、下側に移動にすると圧力が減少する)。圧力の増加が生じていないのでポンプが動作していないと検知すること、または、異常に長時間にわたって高圧状態が続くことから下流に障害物があると検知することが可能である。」

1g:「【0147】
マイクロポンプ500のさらに下流部分に、図17に拡大して示されている液体出口制御部材200がある。
【0148】
この液体出口制御部材200は、液体を、液体出口ダクト204を介して配送させるノンリターン逆止弁を形成する。出口ダクト204はシリコン支持ウェハ36内を通り、液体出口ダクト204’により延長されて、追加のガラスクロージャウェハ20’内を通っている。
・・・
【0156】
弁座は、好ましくはチタンからつくられた耐付着性要素210により構成され、ガラスクロージャウェハ20の、移動部材402に面する面20a上に配置される。この耐付着性要素210は部分206と形状が類似であり、したがって、好ましくは環状である。耐付着性要素210を、部分206の第2端部206b上に配置することもでき、また、他の幾つかの耐付着性材料、例えば、金、酸化シリコン、または窒化シリコンから同様に良好につくることもできる。
【0157】
弁本体は、環状の部分206の第2端部206bにより構成され、部分206の第1端部206aはシリコン支持ウェハ36に面し、かつ液体出口ダクト204に隣接している。
【0158】
弁の接触領域を最小にするためには、環状の部分206の第2端部206bの厚さは小さく、オリフィス208はこの高さにおいてより大きくなっている。
【0159】
図17において、液体出口制御部材200は、閉鎖位置に対応する静止位置にて示されており、入口202を通って到達した液体は、オリフィス208への侵入を、部分206により防止される。このとき、部分206の第2端部206bは前記耐付着性要素210と耐漏洩性の接触をしている。
【0160】
液体入口202における十分な液圧は、出口ダクト204内の液圧が液体入口の圧力よりも小さければ移動部材に力を加えて、移動部材402をシリコン支持ウェハ36に向って移動させることにより弁を開く(相対的配置は図示せず)ことを可能にする。この開放位置において、液体は、前記耐付着性要素210およびクロージャウェハ20から遠ざけられた部分206の第2端部206b上を通過することができ、それにより、液体出口ダクト204と直接に流体連通しているオリフィス208内に侵入する。
【0161】
前記耐付着性要素210が、部分206の第2端部206bにより形成された弁本体が弁座(前記耐付着性要素210の、スタック30に面する面)に付着するのを防止することを可能にすることもまた理解されよう。
【0162】
さらに、前記耐付着性要素210が、移動部材402の初期弾性移動により液体出口制御部材200内にプレテンションをもたらすことを可能にし、それにより弁がその静止位置にて、予め決められた閾値を超えない液圧で閉じたまま維持されることが理解されよう。
【0163】
また、弾性の戻り現象によって、入口202における液圧が出口ダクト204における液圧以下である場合には、制御部材200が、図17に示したその閉鎖位置に戻り、部分206の第2端部206bと前記耐付着性要素210の間の耐漏洩性の接触が、液体入口202からオリフィス208へのその後のいかなる液体の流入をも防止する。」

1h:「【0169】
マイクロポンプ500は、多くの用途に、特に、液状薬を連続的に配送するための医療用ポンプとして用いられることができる。
【0170】
このようなポンプは寸法が非常に小さいため、「移植可能な(埋め込み型、はめ込み型)」タイプのポンプであり得る。すなわち、このポンプは患者の皮膚下に配置され得る。あるいは、このポンプは、外付けタイプであってもよく、患者の血液循環系に、ポンプの入口制御部材100により、皮膚を通る入口ポートを介して連結され得る。」

続いて上記の各記載について検討する。
A)上記摘記事項1hの「マイクロポンプ500は、多くの用途に、特に、液状薬を連続的に配送するための医療用ポンプとして用いられることができる。」の記載から、医療用ポンプはマイクロポンプ500を有しているものといえる。

B)上記摘記事項1dの「図7?9は、液体入口制御部材100、ポンプ部502、液圧検知部材400および液体出口制御部材200を統合した流体流組立体を形成するマイクロポンプ500を示す。」の記載から、マイクロポンプ500は、少なくとも、液体入口制御部材100、ポンプ部502、液圧検知部材400および液体出口制御部材200を備えているものといえる。

C)上記摘記事項1bの「このマイクロポンプは、・・・ポンプチャンバを含む。」、「前記マイクロポンプは、さらに、ポンプダイヤフラムに取り付けられてポンプチャンバの容積を周期的に変化させる制御手段を含むポンプ部と、液体出口制御部材と、を含む。」の各記載から、上記B)の「マイクロポンプ500」が備える「ポンプ部502」は、容積が周期的に変化するポンプチャンバを備えるものであり、また、周期的にポンプチャンバの容積を変化させる制御手段も備えているものといえる。

D)上記摘記事項1cの「図1において、入口弁を形成する部材100は、その静止位置、すなわち、部分的に開放された位置にて示されている。液体が入口ダクト102を介して到着すると、移動部材40は液体の圧力により持ち上げられる。次いで、・・・液体がゾーン35内に侵入し、ギャップ104を通過してキャビティ38に到達することを可能にする。」、「この部材100が入口弁を形成することが理解されるであろう。この弁において、弁本体(弁胴)は、移動部材40の、シリコン支持ウェハ36に面する面により構成され、弁座は、シリコン支持ウェハ36の面の、ダクト102の第2端部102bを取り囲むシリコン層32に面する領域により構成される。」の各記載によれば、上記B)の「マイクロポンプ500」が備える「液体入口制御部材100」は、入口ダクト102を備え、この入口ダクト102は、その端部に弁胴及び弁座が形成されているものといえる。
また、上記摘記事項1eの「マイクロポンプ500の上流部に液体入口制御部材100が見られる。液体入口ダクト102が液体入口ダクト102’により延長されて追加のクロージャウェハ20’内を通り、マイクロポンプ500により配送されるべき液体が到達する入口を有する。」の記載及び図7の図示内容からみて、入口ダクト102が上記C)の「ポンプチャンバ」と連通していることも分かる。

E)上記摘記事項1gの「この液体出口制御部材200は、液体を、液体出口ダクト204を介して配送させるノンリターン逆止弁を形成する。」、「弁座は、好ましくはチタンからつくられた耐付着性要素210により構成され、・・・耐付着性要素210を、部分206の第2端部206b上に配置することもでき、」、「弁本体は、環状の部分206の第2端部206bにより構成され、部分206の第1端部206aはシリコン支持ウェハ36に面し、かつ液体出口ダクト204に隣接している。」等の記載によれば、上記B)の「マイクロポンプ500」が備える「液体出口制御部材200」は、液体出口ダクト204を備え、このダクト204に隣接して弁本体及び弁座が形成されているものといえる。
また、上記摘記事項1gの「マイクロポンプ500のさらに下流部分に、図17に拡大して示されている液体出口制御部材200がある。」の記載及び図7の図示内容を併せみれば、液体出口ダクト204が上記C)の「ポンプチャンバ」と連通していることも分かる。

F)上記D)、E)の検討に加え、上記摘記事項1gの「出口ダクト204はシリコン支持ウェハ36内を通り、液体出口ダクト204’により延長されて、追加のガラスクロージャウェハ20’内を通っている。」の記載を参酌しつつ、図7?8をみれば、同図からは、入口ダクト102と、ポンプチャンバと、液体出口ダクト204と、液体出口ダクト204に隣接して形成された弁本体及び弁座の下流に位置する液体出口ダクト204’を含む一続きの液体通路が看取される。
そうすると、上記B)の「マイクロポンプ500」は、該「液体通路」をも備えるものといえる。

G)上記摘記事項1fの「液圧検知器が、マイクロポンプが適切に動作することを保証するように働くことが理解されるであろう。これは、ポンプダイヤフラム506の撓みにより生じるポンプの各ストロークにおける液圧の一時的な増大を検知することにより行われる(ダイヤフラム506が、図7および8における上側へ移動すると圧力が増大し、下側に移動にすると圧力が減少する)。圧力の増加が生じていないのでポンプが動作していないと検知すること、または、異常に長時間にわたって高圧状態が続くことから下流に障害物があると検知することが可能である。」の記載及び図7?8の図示内容からみて、上記B)の「液圧検知部材400」は液圧を検知するための部材であって、かつ、上記F)の「液体通路」における入口ダクト102と液体出口ダクト204との間に設けられているものであり、さらに、マイクロポンプが適切に動作することを保証するように働いて、ポンプが動作していないと検知すること、または、異常に長時間にわたって高圧状態が続くことから下流に障害物があると検知することが可能なものといえる。

よって、以上の記載事項及び図面の図示内容を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「マイクロポンプ500を有する医療用ポンプ装置において、
前記マイクロポンプ500は、
容積が周期的に変化するポンプチャンバと、
前記ポンプチャンバと連通しておりかつ弁胴及び弁座が端部に形成されている入口ダクト102と、
前記ポンプチャンバと連通しておりかつ弁本体及び弁座が隣接して形成されている液体出口ダクト204と、
周期的に前記ポンプチャンバの容積を変化させる制御手段と、
前記入口ダクト102と、前記ポンプチャンバと、前記液体出口ダクト204と、前記液体出口ダクト204に隣接して形成された前記弁本体及び弁座の下流に位置する液体出口ダクト204’とを含む液体通路と、
前記液体通路における前記入口ダクト102と前記液体出口ダクト204との間に設けられ、液圧を検知するための液圧検知部材400とを備え、
前記液圧検知部材400は、マイクロポンプが適切に動作することを保証するように働いて、ポンプが動作していないと検知すること、または、異常に長時間にわたって高圧状態が続くことから下流に障害物があると検知することが可能である、マイクロポンプ500を有する医療用ポンプ装置。」

(2)刊行物2
当審における拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2008/0190176号明細書(以下「刊行物2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている(括弧内に付記した邦訳は、当審による。)。
2a:「[0042] FIGS. 4 to 7 show indicator diagrams (pressure distribution diagrams for the pressure over the stroke), the stroke position with pressure 0 being the maximum dosing chamber size position in which the diaphragm in FIG. 1 is drawn furthest to the left by the motor, whereas the stroke value 100% is the furthest right position of the diagram and therefore the greatest reduction of the dosing chamber, where the suction stroke commences.」
(図4から7は、インジケータ線図(行程に対する流体圧の圧力分布図)であり、圧力0の行程位置は、投薬チャンバ容積が最大となる位置であって、図1のダイヤフラムがモータにより左端まで引き込まれる位置であり、他方、100%で示される行程位置は、図の右端位置であって、投薬チャンバ容積が最大限に減少し、吸引行程が開始される位置である。)

2b:「[0043] FIGS. 4 to 7 show in broken line form the normal pressure distribution in the dosing chamber without any fault arising, i.e. a standard indictor diagram. A continuous line in FIG. 4 shows the pressure distribution when cavitation occurs, i.e. the formation of vapour bubbles at low pressure, during the suction stroke in the liquid delivery medium. The relative pressure during the suction stroke is negative and is below the pressure in the troublefree case. The pressure rise is also significantly delayed compared with the normal situation, i.e. in the initial pressure stroke phase is lower than the normal situation. At the beginning of the pressure stroke the actual pressure value remains in the vacuum range, so that in this way a dosing fault as a result of cavitation can be established.」
(図4から7では、投薬チャンバ内の圧力分布であって、何ら問題の生じていない正常の圧力分布が、標準のインジケータ線図として、破線形式で示されている。図4の実線は、キャビテーション発生時、即ち、液体供給手段の吸引行程であって、低圧下で蒸気泡が形成される際の圧力分布を示す。吸引行程中の相対圧は負であり、問題の生じていない場合の圧力よりも低圧である。圧力上昇も正常時に比べると特に遅れ、圧縮行程初期の圧力は正常時よりも低圧である。圧縮行程開始時における圧力の実測値は真空域のままであり、このようにして、キャビテーションの結果、投薬ミスが生じる。)

2c:「[0046] FIG. 7 shows in continuous line form the diagram for an outflowing leak in the suction valve and/or to the exterior. Here the leak not only causes a slow pressure rise, but the pressure can be lower than in the normal situation. There is also a premature pressure drop at the end of the pressure stroke.」
(図7には、吸引バルブでの及び/又は外部への流出漏れが、実線により図示されている。ここでは、漏れにより、圧力上昇速度が低下するだけでなく、圧力値は正常時よりも低くなり得る。また、圧縮行程の終期では、圧力降下が早期に始まる。)

2d:「21. Device for monitoring a fluid flow delivered by means of a pump, wherein a mechanism is provided for determining piston positions from the angular positions of a motor driving the piston, at least one pressure sensor is provided for the continuous or quasi-continuous measurement of the pressure of the fluid over the determined piston position of the pump at least in partial areas of the stroke thereof and a comparator is provided for comparing the measured actual values of the pressure with the desired values over the piston position.
22. Device according to claim 21 , wherein a comparator is provided for comparing the measured actual values of the pressure with desired values as a function of the position of the piston or diaphragm of the pump.
・・・
28. Device according to claim 21 , wherein at least one pressure sensor is located in the dosing chamber.」
(請求項21
ポンプによって供給される流体の流れを監視するための装置であって、
ピストンを駆動するモータの回転角に基づいてピストンの位置を確定する機器と、
ピストン行程の少なくとも一部の範囲において、ピストンの確定した位置に対応させて連続的に又はほぼ連続的に流体圧を計測する少なくとも一つの圧力センサと、
ピストン位置に対応して、流体圧の実測値を正常値と比較する比較器と
を備える装置。
請求項22
比較器は、ポンプのピストン又はダイヤフラムの位置の関数として、流体圧の実測値を正常値と比較する比較器である、請求項21の装置。
・・・
請求項28
少なくとも一つの圧力センサが、投薬チャンバに設けられる、請求項21の装置。)

2e:図4には、正常時の投薬チャンバ内の圧力分布が閉じた破線図として図示されており、上記摘記事項2a、2bの記載を参酌すれば、この閉じた破線図は、ポンプの1サイクルにおける圧力分布線図であることは明らかである。
また、この閉じた破線図から、正常時の投薬チャンバ内の流体圧には、ポンプの圧縮行程で圧力の正の頂点があること、この正の頂点に続いて圧縮行程の終わりまで実質的に安定した圧力の水平域があること、ポンプの吸引行程で圧力の負の頂点があること、この負の頂点に続いて吸引行程の終わりまで実質的に安定した圧力の水平域があること、が看取できる。

よって、以上の記載事項及び図面の図示内容を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「ポンプによって供給される流体の流れを監視するための装置であって、
ピストンを駆動するモータの回転角に基づいてピストンの位置を確定する機器と
連続的に又はほぼ連続的に流体圧を計測する少なくとも一つの圧力センサと、
流体圧の実測値を正常値と比較する比較器と
を備え、
少なくとも一つの圧力センサが、投薬チャンバに設けられ、
前記比較器は、ポンプのピストン又はダイヤフラムの位置の関数として、流体圧の実測値を正常値と比較する比較器であり、
正常時の投薬チャンバ内の1サイクルの流体圧には、圧力の正の頂点、圧力の正の頂点に続いて圧縮行程の終わりまで実質的に安定した圧力の水平域、圧力の負の頂点、圧力の負の頂点に続いて実質的に安定した圧力の水平域がある、
装置。」


IV.対比
本願発明と引用発明1を対比する。
(ア)引用発明1の「マイクロポンプ500」は、文言の意味、形状又は機能等からみて本願発明の「ポンプ(1)」に相当し、以下同様に、「医療用ポンプ装置」は「ポンプ装置」に、「容積が周期的に変化するポンプチャンバ」は「可変容積を有するポンプ室(11)」に、「弁胴及び弁座が端部に形成されている入口ダクト102」は「入口弁を備えている入口(2)」に、「弁本体及び弁座が隣接して形成されている液体出口ダクト204」は「出口弁を備えている出口(5)」に、「前記入口ダクト102と、前記ポンプチャンバと、前記液体出口ダクト204と、前記液体出口ダクト204に隣接して形成された前記弁本体及び弁座の下流に位置する液体出口ダクト204’とを含む液体通路」は「前記入口(2)と、前記ポンプ室(11)と、前記出口(5)と、前記出口弁の下流に位置する下流ライン(7)とを備えた流体通路」に、それぞれ相当する。
(イ)刊行物1における「ポンプダイヤフラム506に面して配置され、一般にアクチュエータと称されるマイクロポンプ制御手段をマイクロポンプ内に直接に統合することができることを理解されたい。・・・これらの制御手段は、詳細には、圧電により、電磁気により、または空気圧により動作するタイプの制御手段であり得る。」(摘記事項1f)の記載を参酌すれば、引用発明1の「制御手段」は、本願発明の「アクチュエータ」に相当する。
また、引用発明1の「制御手段」は、「周期的にポンプチャンバの容積を変化させる」のであるから、ポンプチャンバにおける一周期分の容積変化工程を周期的に繰り返すように作動するものであるところ、この「一周期分の容積変化工程」は、“作動サイクル”といい得るものである。
よって、引用発明1は、「作動サイクルに依って前記ポンプ室の前記可変容積を変えるのに適しているアクチュエータ」を具備する点で、本願発明と一致する。
(ウ)引用発明1の「液圧検知部材400」は、「液体通路における入口ダクト102と液体出口ダクト204との間に設けられ」て、「液圧を検知する」のであるから、入口ダクト102と液体出口ダクト204との間の液体の圧力を計測していることは明らかである。
よって、引用発明1の「液体通路における前記入口ダクト102と前記液体出口ダクト204との間に設けられ、液圧を検知するための液圧検知部材400」は、本願発明の「流体通路の前記入口弁と前記出口弁の間の圧力を計測するための圧力センサ(4)」に相当する。
(エ)引用発明1では、「液圧検知部材400」が、「マイクロポンプが適切に動作することを保証するように働いて、ポンプが動作していないと検知すること、または、異常に長時間にわたって高圧状態が続くことから下流に障害物があると検知する」ところ、これらの「ポンプが動作していないと検知」する処理や「下流に障害物があると検知する」処理が、液圧検知部材400から出力された液圧に関する信号に基づいて行われる処理であることは、技術的にみて明らかである。
そうすると、引用発明1は、「圧力センサ(4)から受け取った圧力データを処理するための処理手段」を実質的に具備するものといえる。
(オ)刊行物1に「マイクロポンプは、ポンプチャンバの容積を変える(ポンプチャンバの容積を交互に増減させる)ことにより駆動され、・・・」(摘記事項1a)、「ダイヤフラム506が、図7および8における上側へ移動すると圧力が増大し、下側に移動にすると圧力が減少する」(摘記事項1f)と記載されるように、引用発明1の「制御手段」は、上記(イ)の「一周期分の容積変化工程」なる“作動サイクル”を行うことで、ポンプチャンバ内に、容積変化に伴う圧力の増減を生じさせるものであるところ、一の周期において圧力が増減する過程中には、圧力の最大となる箇所及び最小となる箇所が存在することは、往復動式の容積型ポンプの特性からみて明らかである。
ここで、この「一の周期において圧力が増減する過程」、「圧力の最大となる箇所及び最小となる箇所」は、それぞれ“圧力の輪郭”、“2つの圧力の頂点”とそれぞれいい得るものである。
そうすると、引用発明1は、“作動サイクルの各々は、逆の圧力の頂点によって隔てられている2つの圧力の頂点であって、前記2つの圧力の頂点の各々が前記アクチュエータによって生成される超高圧に対応する、2つの圧力の頂点を有する、圧力の輪郭を生成し”なる事項を具備する点で本願発明と共通する。

以上の(ア)?(オ)によれば、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
ポンプを有するポンプ装置において、
前記ポンプは、
可変容積を有するポンプ室と、
前記ポンプ室と連通しておりかつ入口弁を備えている入口と、
前記ポンプ室と連通しておりかつ出口弁を備えている出口と、
作動サイクルに依って前記ポンプ室の前記可変容積を変えるのに適しているアクチュエータと、
前記入口と、前記ポンプ室と、前記出口と、前記出口弁の下流に位置する下流ラインとを備えた流体通路と、
前記流体通路の前記入口弁と前記出口弁の間の圧力を計測するための圧力センサと、
前記圧力センサから受け取った圧力データを処理するための処理手段とを備え、
前記作動サイクルの各々は、逆の圧力の頂点によって隔てられている2つの圧力の頂点であって、前記2つの圧力の頂点の各々が前記アクチュエータによって生成される超高圧に対応する、2つの圧力の頂点を有する、圧力の輪郭を生成する、ポンプを有するポンプ装置。

(相違点)本願発明では、生成される圧力の輪郭が、「実質的に安定した圧力に対応する、少なくとも一つの水平域」をも有する輪郭であり、また、この輪郭に基づき、「処理手段は、圧力の正の頂点の直後の水平域の位置、及び/又は、圧力の負の頂点の直後の水平域の位置、及び/又は、圧力の各頂点の後の圧力の時間の遅れ、及び/又は、前記圧力の正の頂点の直後の水平域と前記圧力の正の頂点の直後の水平域の相対位置、及び/又は、前記圧力の正の頂点及び前記圧力の負の頂点の高さ及び幅、の中の少なくとも一つをさらに分析する」のに対し、引用発明1では、生成される圧力の輪郭が、「実質的に安定した圧力に対応する、少なくとも一つの水平域」を有するのか否か不明であり、また、処理手段が具体的にどのような分析を行うのかも明らかでない点。


V.判断
上記相違点の判断に先立ち、まず、引用発明2について検討する。
(1)「圧力の輪郭」について
引用発明2における「正常時の投薬チャンバ内の1サイクルの流体圧」は、「圧力の正の頂点、圧力の正の頂点に続いて圧縮行程の終わりまで実質的に安定した圧力の水平域、圧力の負の頂点、圧力の負の頂点に続いて実質的に安定した圧力の水平域があ」るのであるから、「逆の圧力の頂点によって隔てられている2つの圧力の頂点であって、前記2つの圧力の頂点の各々が前記アクチュエータによって生成される超高圧に対応する、2つの圧力の頂点と、実質的に安定した圧力に対応する、少なくとも一つの水平域とを有する、圧力の輪郭」を有するものといえる。
ここで、引用発明2における「モータ」、「投薬チャンバ」は、それぞれ“アクチュエータ”、“ポンプ室”と言い換えることができるものである。
してみると、引用発明2の「ポンプ」は、“作動サイクルの各々は、ポンプ室において、逆の圧力の頂点によって隔てられている2つの圧力の頂点であって、前記2つの圧力の頂点の各々が前記アクチュエータによって生成される超高圧に対応する、2つの圧力の頂点と、実質的に安定した圧力に対応する、少なくとも一つの水平域とを有する、圧力の輪郭を生成する”事項を具備する発明といえる。

(2)「処理手段の分析」について
引用発明2の「比較器」は、「ポンプのピストン又はダイヤフラムの位置の関数として、流体圧の実測値を正常値と比較する」のであるから、流体圧の実測値を正常値と比較して分析する“処理手段”といえるし、また、引用発明の「流体圧の実測値」は“圧力センサから受け取った圧力データ”といえるものである。
よって、引用発明2の「ポンプ」は、“ポンプ室の圧力を計測するための圧力センサと、圧力センサから受け取った圧力データを、ダイヤフラムの位置の関数として、正常値と比較し分析する処理手段”を具備する発明である。
そして、処理手段の行うこのような比較・分析に関連し、刊行物2には、「図4の実線は、キャビテーション発生時、即ち、液体供給手段の吸引行程であって、低圧下で蒸気泡が形成される際の圧力分布を示す。吸引行程中の相対圧は負であり、問題の生じていない場合の圧力よりも低圧である。」(摘記事項2b)と、圧力データにおける圧力の負の頂点の直後の水平域の位置を分析することにより、ポンプにキャビテーションが生じたことを検知できることが示唆されている。
同様に、刊行物2には、「漏れにより、圧力上昇速度が低下するだけでなく、圧力値は正常時よりも低くなり得る。」(摘記事項2c)と、圧力データにおける圧力の正の頂点の直後の水平域の位置を分析することにより、ポンプに漏れが生じたことを検知できることも示唆されている。

(3)相違点の判断
引用発明1及び引用発明2は、医療用ポンプという技術分野においても、ポンプ異常の検知という課題においても共通することから、引用発明2を引用発明1に適用し、引用発明1における「圧力の輪郭」を、「逆の圧力の頂点によって隔てられている2つの圧力の頂点であって、前記2つの圧力の頂点の各々が前記アクチュエータによって生成される超高圧に対応する、2つの圧力の頂点」だけでなく、「実質的に安定した圧力に対応する、少なくとも一つの水平域」をも有する、「圧力の輪郭」とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、引用発明1への引用発明2の適用に当たり、計測した圧力データの分析についても、上記(2)の示唆を踏まえ、キャビテーションの有無に関連して「圧力の負の頂点の直後の圧力の水平域の位置」や漏れに関連して「圧力の正の頂点の直後の圧力の水平域の位置」をそれぞれ分析対象とすること、即ち「処理手段は、圧力の正の頂点の直後の水平域の位置、及び/又は、圧力の負の頂点の直後の水平域の位置、及び/又は、圧力の各頂点の後の圧力の時間の遅れ、及び/又は、前記圧力の正の頂点の直後の水平域と前記圧力の正の頂点の直後の水平域の相対位置、及び/又は、前記圧力の正の頂点及び前記圧力の負の頂点の高さ及び幅、の中の少なくとも一つをさらに分析する」ようにすることも、当業者であれば適宜になし得た程度のことである。
そして、本願発明による効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとはいえない。


VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-18 
結審通知日 2016-02-23 
審決日 2016-03-07 
出願番号 特願2011-532727(P2011-532727)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永冨 宏之金丸 治之  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 関谷 一夫
熊倉 強
発明の名称 ポンプ機能不全検出用の一体型圧力センサを有する微小電気機械流体ポンプ  
代理人 三橋 真二  
代理人 青木 篤  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 大橋 康史  
代理人 前島 一夫  
代理人 島田 哲郎  

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