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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1317411 |
審判番号 | 不服2015-5597 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-03-25 |
確定日 | 2016-07-20 |
事件の表示 | 特願2013-543231「牛にワクチン接種するための組成物および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月14日国際公開、WO2012/078484、平成25年12月19日国内公表、特表2013-544886〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成23年12月5日(パリ条約による優先権主張 2010年12月9日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成26年11月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年3月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1?12に係る発明は、平成27年3月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 被験体における、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョ(遺伝子型ハージョボビス)による感染に対して防御し、その罹患率を減少させ、かつ/またはその重症度を減少させる、ための、レプトスピラ・インターロガンス血清型ハージョ(遺伝子型ハージョプラジトノ)を含み、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョ(遺伝子型ハージョボビス)を含まない、免疫原性組成物。」 3.引用例に記載された事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物であるVACCINE,2003年10月 1日,V21,P4448-4458(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(引用例1は英語で記載されているので、訳文で示す。) (ア)「レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョに対する1型免疫応答の誘導のための、3つの異なるレプトスピラワクチンの比較」(4448ページ冒頭のタイトル) (イ)「2.材料と方法 2.1.動物とワクチン接種 レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョに対する・・・検出可能な血清抗体のない5-8ヶ月齢の雑種若雌ウシが使用された。ウシは、4つの群に分けられ、一価レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョワクチン(スピロバック・・・)・・・、一価レプトスピラ・インターロガンス血清型ハージョワクチン、(レプタボイド・・・)・・・、典型的なUSの五価ワクチン(レプトシールド5・・・)・・・またはコントロールとしてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を、ワクチン接種された。スピロバックとレプタボイドは、各々、・・・不活化全菌体ワクチンであって、一価1、一価2と参照されるものである。・・・ワクチンまたはPBSの2ml投与が2回、4週間間隔で・・・行われた。」(4449ページ左欄の9?30行) (ウ)「2.2.末梢血単核球の単離 ・・・末梢血単核球(PBMC)は・・・単離された。」(4449ページ左欄の31?38行) (エ)「3.結果 3.1.インビトロでの抗原に対するPBMCの反応 ワクチン接種前(0月時点)には、すべての動物からのPBMCは、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョ抗原との培養に反応した増殖はできなかった(図1A)。ワクチン接種後は、抗原とともに培養されたとき、培地中での対照培養における反応と比較して、いずれの一価ワクチンでワクチン接種されたウシからのPBMCでも、有意な増殖反応があった(図1B)・・・。 ・・・いずれの一価ワクチンでワクチン接種されたウシからのPBMCも、抗原との培養時に、培地での培養に比較して、有意により高い量のIFN-γを産生した・・・(図1C)。 図1。ワクチン接種(一価1または一価2または五価)されたウシ及び(PBS注射された)対照ウシのワクチン接種1週間前(A)及びワクチンの最初の投与の4ヶ月後(B)におけるPBMCの増殖。それは、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョ抗原、培地、または最適以下の濃度のコンカナバリンAとの培養に対する反応における[^(3)H]チミジン取り込みにより決定されたものである。(C)ワクチン接種されたウシまたは対照のウシからのPBMCによる、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョ抗原または培地との培養に対する反応におけるIFN-γ産生。それは、ワクチンの最初の投与の4ヶ月後における培養上清のELISAにより決定されたものである。」(4450ページ右欄の13行?4451ページ左欄の16行) (オ)「3.3.ワクチン接種に対する抗体反応 ・・・ワクチン接種されたウシ及び対照のウシの血清中におけるIgG_(1)及びIgG_(2)抗原特異的抗体の存在が、ワクチンによって誘導される免疫反応のさらなる評価のためにELISAを用いて測定された。一価ワクチン接種された動物からの血清は、ワクチンの最初の接種の2ヶ月後までに、IgG_(1)(図5A)及びIgG_(2)(図5B)の両方の実質的に増加したレベルを示した・・・(図5A及びB)。 ・・・ 図5。ワクチン投与後の示された諸時点における血清型ハージョ特異的IgG_(1)(A)及びIgG_(2)(B)・・・。」(4452ページ左欄の3行?4454ページ図5の説明の1行) (カ)「4.議論 ・・・ いずれの一価ワクチンでワクチン接種されたウシからのPBMCによる全体的な免疫反応の大きさも同様で、抗体のレベル、PBMCの増殖、IFN-γ産生・・・における一般的な違いがなかったことは、特筆に値する。」(4456ページ右欄の6行?4457ページ左欄の8行) (2)引用例1の記載事項(ア)によれば、引用例1は、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョに対する1型免疫応答の誘導のための、3つの異なるレプトスピラワクチンの比較を行った研究に関するものである。 そして、記載事項(イ)によれば、該研究の具体的な方法として、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョに対する検出可能な血清抗体のない5-8ヶ月齢の雑種若雌ウシが使用され、該ウシが4つの群に分けられ、一価レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョワクチン、一価レプトスピラ・インターロガンス血清型ハージョワクチン、典型的なUSの五価ワクチンまたはコントロールとしてリン酸緩衝生理食塩水を、ワクチン接種されたこと、が記載されている。 また、記載事項(ウ)及び(エ)によれば、上記研究の一つの結果として、インビトロでの抗原に対する末梢血単核球(PBMC)の反応に関するものが記載され、ワクチン接種前のPBMCは、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョ抗原との培養に反応した増殖はできなかった(図1A)ところ、ワクチン接種後は、抗原とともに培養されたとき、培地中での対照培養における反応と比較して、いずれの一価ワクチンでワクチン接種されたウシからのPBMCでも、有意な増殖反応があったこと(図1B)、いずれの一価ワクチンでワクチン接種されたウシからのPBMCも、抗原との培養時に、培地での培養に比較して、有意により高い量のIFN-γを産生したこと(図1C)、が記載されている。 また、記載事項(オ)によれば、上記研究の別の結果として、ワクチン接種に対する抗体反応に関するものが記載され、ワクチン接種されたウシ及び対照のウシの血清中におけるIgG_(1)及びIgG_(2)抗原特異的抗体の存在が、ワクチンによって誘導される免疫反応のさらなる評価のために測定されたところ、一価ワクチン接種された動物からの血清は、ワクチンの最初の接種の2ヶ月後までに、血清型ハージョ特異的IgG_(1)(図5A)及びIgG_(2)(図5B)の両方の実質的に増加したレベルを示したこと、が記載されている。 そうすると、これら引用例1の記載を総合すれば、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「一価レプトスピラ・インターロガンス血清型ハージョワクチンであって、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョに対する検出可能な血清抗体のない5-8ヶ月齢の雑種若雌ウシにおいて、ワクチン接種前の末梢血単核球はレプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョ抗原との培養に反応した増殖はできなかったところ、ワクチン接種後は、対照と比較して有意な増殖反応があり、また、有意により高い量のIFN-γを産生し、さらに、血清型ハージョ特異的IgG_(1)及びIgG_(2)が実質的に増加したレベルを示した、上記ワクチン。」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明にいう「一価レプトスピラ・インターロガンス血清型ハージョワクチン」は、その名称からみて、有効成分としてレプトスピラ・インターロガンス血清型ハージョのみを含むワクチンであると認められるから、本願発明にいう「レプトスピラ・インターロガンス血清型ハージョ(遺伝子型ハージョプラジトノ)を含み、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョ(遺伝子型ハージョボビス)を含まない、免疫原性組成物」に該当するものである。 したがって、両者は、 「レプトスピラ・インターロガンス血清型ハージョ(遺伝子型ハージョプラジトノ)を含み、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョ(遺伝子型ハージョボビス)を含まない、免疫原性組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 ・免疫原性組成物が、引用発明では「レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョに対する検出可能な血清抗体のない5-8ヶ月齢の雑種若雌ウシにおいて、ワクチン接種前の末梢血単核球はレプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョ抗原との培養に反応した増殖はできなかったところ、ワクチン接種後は、対照と比較して有意な増殖反応があり、また、有意により高い量のIFN-γを産生し、さらに、血清型ハージョ特異的IgG_(1)及びIgG_(2)が実質的に増加したレベルを示した、」ものであるのに対し、本願発明では「被験体における、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョ(遺伝子型ハージョボビス)による感染に対して防御し、その罹患率を減少させ、かつ/またはその重症度を減少させる、ための、」ものである点(以下、「相違点」という。)。 5.判断 上記相違点について検討する。 上述のとおり、引用発明のワクチンは、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョに対する検出可能な血清抗体のない5-8ヶ月齢の雑種若雌ウシにおいて、ワクチン接種前の末梢血単核球はレプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョ抗原との培養に反応した増殖はできなかったところ、ワクチン接種後は、対照と比較して有意な増殖反応があり、また、有意により高い量のIFN-γを産生したものであるから、上記ウシに対し、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョに対する、末梢血単核球による免疫応答を誘導したものといえる。さらに、引用発明のワクチンは、上記ウシに対し、血清型ハージョ特異的IgG_(1)及びIgG_(2)の実質的に増加したレベルをもたらしたのであるから、上記ウシに対し、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョに対する、特異的抗体による免疫応答を誘導したものといえる。 そうすると、かかる引用発明のワクチンを、上記ウシその他の被験体における、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョ(遺伝子型ハージョボビス)による感染に対して防御し、その罹患率を減少させ、かつ/またはその重症度を減少させる、ための、ものとして用いることに、当業者が格別の創意を要したものとはいえない。 続いて、本願発明の効果について検討するに、引用例1の記載事項(エ)の図1(B)及び(C)のグラフによれば、Monovalent1すなわち一価1と参照される一価レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョワクチンと、Monovalent2すなわち一価2と参照される一価レプトスピラ・インターロガンス血清型ハージョワクチンが、典型的なUSの五価ワクチンやコントロールに比較して、同様に、末梢血単核球の有意な増殖や有意により高い量のIFN-γの産生をもたらしていることが読み取れる。また、記載事項(オ)の図5(A)及び(B)のグラフによれば、上記両ワクチンが、典型的なUSの五価ワクチンやコントロールに比較して、同様に、血清型ハージョ特異的IgG_(1)及びIgG_(2)の実質的な増加をもたらしていることが読み取れる。さらに、記載事項(カ)によれば、上記研究の議論として、いずれの一価ワクチンでワクチン接種されたウシからのPBMCによる全体的な免疫反応の大きさも同様で、抗体のレベル、PBMCの増殖、IFN-γ産生における一般的な違いがなかったことが記載されている。 そして、一価レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョワクチンは、その有効成分である不活化全菌体の元となったレプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョによる感染に対して防御し、その罹患率を減少させ、かつ/またはその重症度を減少させることが当然に期待されるものであるから、上記ワクチンと同様に、抗体のレベル、PBMCの増殖、IFN-γ産生を誘導することができるとされる一価レプトスピラ・インターロガンス血清型ハージョワクチンもまた、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョによる感染に対して防御し、その罹患率を減少させ、かつ/またはその重症度を減少させることができることは、引用例1の記載に基づき当業者が容易に予測し得たことである。本願発明の効果について、本願明細書には、チャレンジ実験及びその結果が記載され、本願発明のワクチンがレプトスピラ・ボルグペテルセニイ血清型ハージョによるチャレンジに対して有効であったことが記載されているが、このことが引用例1の記載に基づき当業者が予測し得ない優れた効果であるとはいえない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-02-17 |
結審通知日 | 2016-02-22 |
審決日 | 2016-03-07 |
出願番号 | 特願2013-543231(P2013-543231) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 安居 拓哉、▲高▼岡 裕美 |
特許庁審判長 |
大宅 郁治 |
特許庁審判官 |
齋藤 恵 内藤 伸一 |
発明の名称 | 牛にワクチン接種するための組成物および方法 |
代理人 | 浅井 賢治 |
代理人 | 辻居 幸一 |
代理人 | 山崎 一夫 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 滝澤 敏雄 |
代理人 | 市川 さつき |
代理人 | 箱田 篤 |