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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21C |
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管理番号 | 1317418 |
審判番号 | 不服2015-16873 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-09-14 |
確定日 | 2016-07-20 |
事件の表示 | 特願2013-550763「管内側輪郭を測定する光源を備える自動化された管成形プレス」拒絶査定不服審判事件〔平成24年8月2日国際公開、WO2012/100802、平成26年4月3日国内公表、特表2014-508042〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、2011(平成23)年12月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011(平成23)年1月27日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成26年6月16日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月22日に意見書及び補正書が提出されたが、平成27年5月11日付けで拒絶の査定がなされた。そして、当該拒絶の査定を不服として、平成27年9月14日に本件審判の請求がなされたものである。 第2 本件出願に係る発明 本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし20に係る発明は、平成26年12月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、以下のとおりのものである。 「形成したいスリット管又は管一次製品(2)の横断面の半径方向で板状製品(1)を少なくとも段階的に変形加工する少なくとも1つの内側変形加工工具(3)と、 板状製品(1)を外側から変形加工する少なくとも1つの外側変形加工工具(4)と、を備える、板状製品(1)を変形加工してスリット管又は管一次製品(2)を形成する装置であって、 少なくともスリット管又は管一次製品(2)の内側輪郭を測定する少なくとも1つの光源(7)及び少なくとも1つの受信器(8)が、少なくとも1つの内側変形加工工具(3)に結合されており、 前記内側変形加工工具(3)が管成形プレスの変形加工ブレード(3)であることを特徴とする、板状製品を変形加工してスリット管又は管一次製品を形成する装置。」 第3 引用文献及びその記載事項 1 引用文献1 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-166059号公報(以下「引用文献1」という)には、図1ないし図5とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与、以下同じ) (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、板の曲げ加工方法に関し、特に、厚板を曲折して圧力容器などのような産業機器の容器の胴板の成形に適用すると有効な方法である。」 (2)「【0023】 【発明の実施の形態】本発明による板の曲げ加工方法の実施に使用するプレス機械の概略構造を表す外観を図1に示す。図1に示すように、プレスベース3の上方には、昇降可能なプレススライド4が配備されている。プレススライド4の下面には、先端の平坦なポンチ1がロードセル5を介して取り付けられており、当該ポンチ1は、その肩部に丸み(アール)がつけられている。プレスベース3の上面には、対をなすダイス2a,2bが上記ポンチ1を中心にして等間隔で互いに接近離反移動できるように配設されており、当該ダイス2a,2bは、その肩部に丸み(アール)がつけられている。」 (3)「【0025】図1に示すように、プレスベース3上には、ダイス2a,2b上に載せられた板10の表面に向けてレーザスリット光を照射する光源8および当該板10から反射する上記レーザスリット光を撮影するカメラ9が配設されている。 【0026】また、前記プレススライド4は、図示しないリニアスケールにより位置が測定され、図示しない演算制御装置によりその位置が制御されるようになっている。」 (4)「【0028】まず、前記演算制御装置に上記データを入力し、当該演算制御装置を作動させると、当該演算制御装置は、ハンドリング装置6から板10をダイス2a,2b上に送給してセットした後、プレススライド4を下降させて、ポンチ1による曲げ加工を開始する。」 (5)「【0031】このようにして板10を曲げ加工していき、目的とする曲率に対して、算出した上記仮曲率が所定の割合(80%程度)となったら、前記演算制御装置は、プレススライド4を上昇させて板10の曲げ加工を一旦中断した後、光源8から板10の表面へ向けてレーザスリット光を照射して、板10からの反射光をカメラ9で撮影し、画像処理を行うことにより、そのときの板10のスプリングバック後の曲率を計測し、計測した当該曲率と算出した前記仮曲率との比を補正係数として算出する。」 (6)「【0034】続いて、前記演算制御装置は、ポンチ1の先端幅の大きさ(40mm)分だけ板10を移動させるようにハンドリング装置6を制御し、上述した加工を再び行う。以上の工程を板10の全長にわたって実施することにより、半径200mmの円筒型に板10が曲げ加工される。」 (7)引用文献1記載の発明 上記摘記事項(1)ないし(6)の事項を、技術常識を考慮しながら整理すると、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。 「形成したい円筒型板の横断面の半径方向で板10を内側から段階的に曲げ加工する1つのポンチ1と、 板10を外側から曲げ加工するダイス2a,2bと、を備える、板10を曲げ加工して円筒型板を形成するプレス機械であって、 円筒型板の曲率を測定する、板10の表面へ向けてレーザスリット光を照射する1つの光源8及び板10からの反射光を撮影する1つのカメラ9が、プレスベース3上に配設されており、 板10を曲げ加工して円筒型板を形成するプレス機械。」(以下「引用発明」という) 2 引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本件出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2002-59217号公報(以下「引用文献2」という)には、図1ないし図12とともに、以下の事項が記載されている。 「【0026】図7は板材折曲げ加工機における折曲げ角度検出装置の第二の実施の形態を示したものであり、折曲げ角度検出装置3としての直線摺動型のポテンショメータ7に代えてレーザビームスキャナを使用するものである。 【0027】折曲げ辺4(f,r)をレーザビームスキャナでスキャニングし、その反射光の強度が最大になる位置のスキャナの回転角度(α_(1) ,α_(2) )を検出し、前後の折曲げ角度(θ_(1),θ_(2))を前記数式(2)、(3)により算出し、折曲げ角度θを、θ=θ_(1)+θ_(2) として求めるものである。 【0028】図7に示す如く、前記上型1aの内部の下端部近傍には、V字形の先端を通る中心線15(=Y軸)に直交するZ軸上に回転軸を有する回転ミラー31を備えたレーザビームスキャナ30が回転可能に設けてある。 【0029】レーザビームスキャナ30は、例えばガラス製円柱の端部を45°にカットしてレーザビームを反射させる鏡面に形成した回転ミラー31と、この回転ミラー31を回転駆動するサーボモータ33と、サーボモータ33の回転角度を検出するロータリーエンコーダ35、サーボモータ33の回転を回転ミラー31へ伝達るプーリーおよびベルトなどの回転伝達手段37などからなっている。 【0030】また、上述の上型1aの内部には、回転ミラー31へレーザビームを入射するためのレーザ発振器39と回転ミラー31からの反射光を検出する受光センサ41が設けてある。 【0031】レーザ発振器39から出たレーザビームLBは、前記回転ミラー31の回転軸に同軸に設けた光軸43上に配置した全反射ミラー45を介して回転ミラー31へ入射されるように設けてある。 【0032】また、被加工材Wの曲げ辺4(f,r)からの反射光LB’は、回転ミラー31で直角に反射されて、光軸43を戻って前記光軸43上に配置した半透過ミラー(ハーフミラー)47を介して受光センサ41に入射されるよう設けてある。なお、前記上型1aの下端部には、レーザビームスキャナ30からのレーザビームLBが被加工材Wの曲げ辺に照射可能な開口(図示省略)が設けてある。 【0033】上記構成において、レーザビームスキャナ30を回転させることにより、回転ミラー31に入射されたレーザビームLBは、X-Y平面内を360°の全方位に偏向されるので、この偏向されたレーザビームLBで前後の折曲げ辺4(f,r)をスキャニングし、その反射光LB’の強度が最大になる位置のレーザビームスキャナ30の回転角度(α_(1) ,α_(2) )を受光センサ41により検出し、前後の折曲げ角度(θ_(1),θ_(2))を前記数式(2)、(3)により算出し、折曲げ角度θを、θ=θ_(1)+θ_(2) として求めることができる。」 3 引用文献3 また、同じく原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用され、本件出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平3-268818号公報(以下「引用文献3」という)には、第1図ないし第15図とともに、以下の事項が記載されている。 「一方、本例の折曲機1では、前記バンチ8の中心に角度計測のための撮像装置11が設けられ、地上に置かれた画像処理装置12と電源線13及び信号線14を介して接続されている。 画像処理装置12の盤面には角度表示器15と適宜の操作キーか配置されている。この画像処理装置12は前記NC操作盤内のNC装置と接続されている。 前記撮像装置11の詳細を第1図に示した。 (a)図は正面断面図、(b)図は(a)図の中央右側面断面図である。 図示のように、撮像装置11は、パンチ8内に設けた孔部15に曲げ加工されるワークの上面に向けて面状光としてのスリット光SLを照射するレーザダイオード16と、これら面状光によりワーク上面上で曲げ線前後に現われる線状の光線パターンを撮像するレンズ17及びCCDエリアセンサ18を備えた視覚センサ19を備えて成る。」(4頁右下欄9行?5頁左上欄6行) 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「板10」は、本願発明の「板状製品」に相当することは自明である。また、曲げ加工は変形加工の一種であるから、引用発明の「曲げ加工」は本願発明の「変形加工」に含まれるものである。そうすると、引用発明の「板10を外側から曲げ加工するダイス2a,2b」が、本願発明の「板状製品を外側から変形加工する少なくとも1つの外側変形加工工具」に相当することも明らかである。 さらに、引用発明の「円筒型板」と本願発明の「スリット管又は管一次製品」とは、「円筒型物品」という限りでは共通すると言える。そうすると、引用発明の「板10を曲げ加工して円筒型板を形成するプレス機械」と本願発明の「板状製品(1)を変形加工してスリット管又は管一次製品(2)を形成する装置」とは、「板状製品を変形加工して円筒型物品を形成する装置」という限りで共通する。また、同様に、引用発明の「形成したい円筒型板の横断面の半径方向で板10を内側から段階的に曲げ加工する1つのポンチ1」と本願発明の「形成したいスリット管又は管一次製品(2)の横断面の半径方向で板状製品(1)を少なくとも段階的に変形加工する少なくとも1つの内側変形加工工具(3)」とは、「形成したい円筒型物品の横断面の半径方向で板状製品を少なくとも段階的に変形加工する少なくとも1つの内側変形加工工具」という限りで共通している。 また、引用発明の「円筒型板の曲率を測定する」ことと本願発明の「少なくともスリット管又は管一次製品(2)の内側輪郭を測定する」こととは、「少なくとも円筒型物品の内側輪郭を測定する」という限りで共通する。そして、引用発明の「板10の表面へ向けてレーザスリット光を照射する1つの光源8及び板10からの反射光を撮影する1つのカメラ9」が、本願発明の「少なくとも1つの光源及び少なくとも1つの受信器」に相当し、これらの光源及び受信機を装置が「有している」点で両者は共通していることも明らかである。 したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致している。 <一致点> 「形成したい円筒型物品の横断面の半径方向で板状製品を少なくとも段階的に変形加工する少なくとも1つの内側変形加工工具と、 板状製品を外側から変形加工する少なくとも1つの外側変形加工工具と、を備える、板状製品を変形加工して円筒型物品を形成する装置であって、 少なくとも円筒型物品の内側輪郭を測定する少なくとも1つの光源及び少なくとも1つの受信器を有している、 板状製品を変形加工して円筒型物品を形成する装置。」 そして、本願発明と引用発明とは、以下の2点で相違している。 <相違点1> 本願発明では、円筒型物品が「スリット管又は管一次製品」であるとともに、「内側変形加工工具が管成形プレスの変形加工ブレードである」のに対して、引用発明では、円筒型物品がスリット管又は管一次製品かは明らかでなく、また、内側変形加工工具であるポンチが管成形プレスの変形加工ブレードであるかも不明である点。 <相違点2> 本願発明では、光源及び受信器が「少なくとも1つの内側変形加工工具に結合されて」いるのに対して、引用発明では、光源8及びカメラ9がプレスベース3上に配設されている点。 第5 相違点についての検討 1 相違点1について 内側変形加工工具と外側変形加工工具とによって、プレス成形により板状製品を変形加工して管を形成することは、例えば、本件出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2004-82219号公報(図1の「管成形プレス機1」の構造を参照)や、同じく特開昭51-18253号公報(第1図?第7図に示された「鋼管成形用プレス装置」の構造を参照)に記載されているように従来周知の事項である。 そうすると、引用発明のプレス機械によって板10を円筒型状に曲げ加工する構造を見た当業者が、上記従来周知の事項を勘案すれば、曲げ加工により形成される円筒型物品としてスリット管又は管一次製品を選択することに格別の困難性は見当たらないというべきである。そして、引用発明においてスリット管又は管一次製品を形成する場合に、内側変形加工工具であるポンチが、管成形プレスの変形加工ブレードに相当するものになることも、当業者には自明の事項に過ぎない。 2 相違点2について 引用文献2には、板状製品を折曲げ加工する内側変形加工工具である上型1aと外側変形加工工具である下型とを備える折曲げ加工機の折曲げ角度検出装置において、折曲げ角度を測定する光源であるレーザー発信器39と受信器である受光センサ41とを、前記内側変形加工工具である上型1aの内部に結合して設けることが記載されている。 また、引用文献3には、板状製品を折曲げ加工する内側変形加工工具であるパンチ8と外側変形加工工具であるダイとを備える折曲機の角度計測装置において、折曲げ角度を測定する光源であるレーザーダイオード16と受信器である視覚センサ19とを、前記内側変形加工工具であるパンチ8内に設けた孔部15に結合して設けることが記載されている。 そして、このように内側変形加工工具に光源及びセンサを設けることが、当業者であれば当然認識している程度の事項に過ぎないので、引用発明において、測定用の光源及び受信器であるカメラの配置構造として、引用発明と同様にプレス成形時に被加工材の加工形状を計測する技術である引用文献2及び3記載の上記光源及び受信機の配置構造を適用して、相違点2に係る本願発明の特定事項のように構成することは、当業者であれば容易に想到するものと認められる。 3 本願発明の効果について 本願発明が奏する効果も、引用発明、引用文献2及び3記載の事項並びに上記従来周知の事項から、当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。 第6 むすび したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2及び3記載の事項並びに上記従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-02-19 |
結審通知日 | 2016-02-22 |
審決日 | 2016-03-04 |
出願番号 | 特願2013-550763(P2013-550763) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B21C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石黒 雄一 |
特許庁審判長 |
平岩 正一 |
特許庁審判官 |
栗田 雅弘 刈間 宏信 |
発明の名称 | 管内側輪郭を測定する光源を備える自動化された管成形プレス |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 久野 琢也 |