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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1317596
審判番号 不服2014-22227  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-31 
確定日 2016-07-28 
事件の表示 特願2012- 89797「描画方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月12日出願公開、特開2012-134570〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年5月28日に出願した特願2007-139819号の一部を平成24年4月11日に新たな特許出願としたものであって、平成25年11月27日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月31日に手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年7月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月31日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成27年10月19日付けで拒絶理由が通知され、同年12月24日に手続補正がなされるとともに意見書が提出され、当審において平成28年2月23日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年4月25日に手続補正がなされる(以下、「本件補正」という。)とともに意見書が提出されたものである。

第2 本件補正についての却下の決定
1 [結論]
本件補正を却下する。

2 [補正の内容]
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1につき、本件補正前(平成27年12月24日付けの手続補正後のもの。)において、
「【請求項1】
設計データから電子線描画装置またはレーザ描画装置の描画データを作成し所定の基板上に描画する描画方法において、
前記設計データのパターン図形を複数の四角形状の描画基本図形の単位に分解し、該基本図形の外周を線分と頂点で表現した閉図形として定義し、
前記線分を基準に前記閉図形の外側か内側のいずれかに、または外側と内側の両方に、前記線分に沿った任意の幅(W1)の帯状の輪郭部を前記幅(W1)で定義し、かつ前記輪郭部の内側を内側部として定義し、
前記内側部の外郭の頂点の一つの座標(x1、y1)と高さ(H)と幅(W)で定義される前記内側部の描画データ(x1、y1、H、W)に、
前記輪郭部が有する幅(W1)に係るデータを加えることで、
前記輪郭部および前記内側部を1つの描画データ(x1、y1、H、W、W1)とし、
前記輪郭部を照射面積の小さい可変成形電子線の小ショットまたは微小スポットの電子線で描画し、前記内側部を照射面積の大きいレーザまたは可変成形電子線の大ショットで描画することを特徴とする描画方法。」
とあったものを、
「【請求項1】
設計データから電子線描画装置またはレーザ描画装置の描画データを作成し所定の基板上に描画する描画方法において、
前記設計データのパターン図形を複数の四角形状の描画基本図形の単位に分解し、該基本図形の外周を線分と頂点で表現した閉図形として定義し、
前記線分を基準に前記閉図形の外側か内側のいずれかに、または外側と内側の両方に、前記線分に沿った任意の幅(W1)の帯状の輪郭部を前記幅(W1)で定義し、かつ前記輪郭部の内側を内側部として定義し、
前記内側部の外郭の頂点の一つの座標(x1、y1)と高さ(H)と幅(W)で定義される前記内側部の描画データに、
前記輪郭部が有する幅(W1)に係るデータを加えることで、
前記輪郭部および前記内側部を1つの描画データとし、
前記輪郭部を照射面積の小さい可変成形電子線の小ショットまたは微小スポットの電子線で描画し、前記内側部を照射面積の大きいレーザまたは可変成形電子線の大ショットで描画することを特徴とする描画方法。」(以下、「本件補正発明」という。)
に補正する内容を含むものである(下線は請求人が付したとおりである)。

3 [理由](目的外補正)
特許法第17条の2第5項について
(1)本件補正は、請求項1に関して、補正前に「前記内側部の外郭の頂点の一つの座標(x1、y1)と高さ(H)と幅(W)で定義される前記内側部の描画データ(x1、y1、H、W)」及び「前記輪郭部が有する幅(W1)に係るデータを加えることで、前記輪郭部および前記内側部を1つの描画データ(x1、y1、H、W、W1)」とあったものを「前記内側部の外郭の頂点の一つの座標(x1、y1)と高さ(H)と幅(W)で定義される前記内側部の描画データ」及び「前記輪郭部が有する幅(W1)に係るデータを加えることで、前記輪郭部および前記内側部を1つの描画データ」と補正し、描画データの括弧書きを各々削除する内容を含むものである。

(2)しかしながら、上記(1)の補正を行っても、「前記内側部の外郭の頂点の一つの座標(x1、y1)と高さ(H)と幅(W)で定義される前記内側部の描画データ」が、「座標(x1、y1)と高さ(H)と幅(W)で定義される」以上、「描画データ(x1、y1、H、W)」であることに変わりはなく、また、「前記輪郭部が有する幅(W1)に係るデータを加えることで、前記輪郭部および前記内側部を1つの描画データ」が、「座標(x1、y1)と高さ(H)と幅(W)」及び「幅(W1)」「で定義される」以上、「描画データ(x1、y1、H、W、W1)」であることに変わりはないから、上記補正によっても、「前記内側部の外郭の頂点の一つの座標(x1、y1)と高さ(H)と幅(W)で定義される前記内側部の描画データ」は実体的に「描画データ(x1、y1、H、W)」であって、また、「前記輪郭部が有する幅(W1)に係るデータを加えることで、前記輪郭部および前記内側部を1つの描画データ」は実体的に「描画データ(x1、y1、H、W、W1)」であって、補正の前後で何も変わることはないから、上記(1)の補正を含む本件補正は、請求項1に関して、特許法第17条の2第5項に定める、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明のいずれにも該当しない。

(3)小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反する。

4 補正却下の決定のむすび
以上の検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、平成27年12月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、前記第2、2 [補正の内容]において、本件補正前のものとして示したとおりのものである。

第4 平成28年2月23日付け最後の拒絶理由通知の概要
当審が、平成28年2月23日付けで通知した最後の拒絶理由通知の概要は、以下のとおりである。
「[理由1]
平成27年12月24日付けでした手続補正(以下「本件補正」という。)は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



(1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1において、「前記内側部の外郭の頂点の一つの座標(x1、y1)と高さ(H)と幅(W)で定義される前記内側部の描画データ(x1、y1、H、W)に、前記輪郭部が有する幅(W1)に係るデータを加えることで、前記輪郭部および前記内側部を1つの描画データ(x1、y1、H、W、W1)と」するとの事項が追加された。

(2)上記(1)によれば、本件補正により、請求項1の発明は
ア 「内側部の描画データ(x1、y1、H、W)」は、「内側部の外郭の頂点の一つの座標(x1、y1)と高さ(H)と幅(W)で定義される」点、
イ 「輪郭部」の「描画データ」は、「輪郭部が有する幅(W1)に係るデータを加えることで」、「描画データ(x1、y1、H、W、W1)」とする点、及び、
ウ 「前記輪郭部および前記内側部を1つの描画データ(x1、y1、H、W、W1)と」する点
を含むものとなった。

(3)上記(1)の補正に関して、本願の分割当初明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)には、下記の記載がある。
ア 「【0006】
従来の描画装置では、描画データとしては、例えば図9に示すように、矩形パターン図形の外郭の頂点の一つの座標(x1,y1)を基に、矩形の高さ(H)と幅(W)を定義する処理を基本として図形表現がされていた。あるいは、パターン図形の外郭を線分と頂点で表現し、その線分の始点と終点は必ず一致するように定義して、その線分に囲まれた内側を一つの描画領域として、パターン描画する方法が主であった。
・・・途中省略・・・
【0011】
上記の特許文献1?特許文献3に記載された従来の方法は、いずれの方法もパターンの輪郭部とその内側部を別々な領域と考えて、図8に示すように、輪郭部のみのパターン83とその内側部のみのパターン84との別々の描画データを作成し、さらに別々に描画していた。図8において、描画装置1(85)は、例えば、微小スポットの電子線描画に優れた高精度描画が可能な装置であり、描画装置2(86)は、スループットの高い可変成形電子線描画装置あるいはレーザ描画装置であり、描画データ83の輪郭部のみのパターンは描画装置1(85)で描画し、描画データ84の内側部のみのパターンは描画装置1(85)でショット当たりの寸法を大きくして描画したり、あるいは描画装置2(86)で描画するものである。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記の特許文献1?特許文献3に記載されたような従来の方法は、図8に示すように、いずれの方法もパターンの輪郭部とその内側部を別々な領域と考えて、輪郭部のみのパターンとその内側部のみのパターンとの別々の描画データを作成し、さらに別々に描画する方法を採っているものである。そのために、描画データ作成のための時間が増加して作業負荷が増え、描画データのデータ量が増大し、描画時間が増加して、生産性が低下するという問題があった。
【0014】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電子線やレーザ描画用の描画データのデータ量を低減させ、描画データ作成時間や描画時間を短縮する描画方法を提供することにある。」

ウ 「【0025】
本発明の描画データの作成方法では、図1に示す描画データ変換12において、設計データ11としてのポリゴンパターンは、描画基本図形である複数の四角形あるいは三角形の単位に分解され、図2に示すように、基本図形の外周を線分(破線のライン)と4点あるいは3点の頂点(xn,yn)(n=1?4)で表現した閉図形として定義される。
【0026】
次に、上記の線分を基準にして、閉図形の外側か内側のいずれかに、または閉図形の外側と内側の両方に、線分に沿った任意の幅の帯状の輪郭部を定義し、かつこの輪郭部の内側を内側部として定義する。基本図形の大きさにも依存するが、輪郭部の帯状の幅は、描画されたパターンのエッジに影響しない範囲で狭い方が内側部の面積が大きくなり、全体の描画速度を上げることができるのでより好ましい。」

エ 「【0030】
(第1の実施形態)
図3は、本発明の描画データの作成方法、および描画方法の第1の実施形態を示す説明図であり、閉図形の一例として四角形の内側に輪郭部を設けた場合である。
先ず、図3(a)に示すように、設計データのパターン図形を描画基本図形に分解し、四角形状の描画基本図形の外周を線分(破線のライン)と4点((Xa,Ya)?(Xd,Yd))で表現した閉図形として定義する。
【0031】
次に、図3(b)に示すように、上記の線分を基準にして閉図形の内側に、パターン領域Aとして、線分に沿った任意の幅W1の帯状の輪郭部(斜線部)を定義する。この輪郭部が高精細描画部となる。
・・・途中省略・・・
【0034】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の描画データの作成方法、および描画方法の第2の実施形態を示す説明図であり、閉図形の外側に輪郭部を設けた場合である。
先ず、図4(a)に示すように、設計データのパターン図形を描画基本図形に分解し、四角形状の描画基本図形の外周を線分(破線のライン)と4点((Xa,Ya)?(Xd,Yd))で表現した閉図形として定義する。
【0035】
次に、図4(b)に示すように、上記の線分を基準にして閉図形の外側に、パターン領域Cとして、線分に沿った任意の幅W2の帯状の輪郭部(斜線部)を定義する。この輪郭部が高精細描画部となる。
・・・途中省略・・・
【0038】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の描画データの作成方法、および描画方法の第3の実施形態を説明するためのフローチャートである。フォトマスクの設計データ51としては、実施形態1および2と同じく、通常、レイアウトデータを多角形(ポリゴン)で表現したGDSIIデータが用いられる。図5に示す描画データ変換52において、設計データ51としてのポリゴンパターンは、基本図形である複数の四角形あるいは三角形の単位に分解される。
本実施形態はサイジングを行う場合であって、2つの場合について以下に説明する。
【0039】
図6は、本実施形態の第1の場合を示す説明図であり、閉図形の一例として四角形の外側に輪郭部を設けた場合である。図6(a)に示すように、基本図形の外周を線分(破線のライン)と、例えば、4点の頂点(Xa,Ya)?(Xd,Yd)で表現した閉図形として定義する。
【0040】
次に、図6(b)に示すように、上記の線分を基準にして、閉図形の外側に、パターン領域Eとして、線分に沿った任意の幅W3の帯状の輪郭部(斜線部)を固定、または可変と定義し、かつ図6(c)に示すように、パターン領域Fとして、この帯状の輪郭部の内側を内側部(斜線部)として定義する。
・・・途中省略・・・
【0042】
次に、本実施形態の第2の場合について説明する。
図7は、本実施形態の第2の場合を示す説明図であり、閉図形の一例として四角形の内側に輪郭部を設けた場合である。図7(a)に示すように、基本図形の外周を線分(破線のライン)と、例えば、4点の頂点(Xa,Ya)?(Xd,Yd)で表現した閉図形として定義する。
【0043】
次に、図7(b)に示すように、図6(b)とは逆に、閉図形の内側に、線分に沿った任意の幅W4の帯状の輪郭部を固定、または可変と定義し、さらにその内側部をパターン領域G(斜線部)と定義する。輪郭部は描画されない領域となる。 図7(b)に示すように、パターン領域Gをもって、図形処理することなしに、上記の帯状の輪郭部の幅W4に相当するサイジング量を固定、または可変と定義し、図5に示すように、サイジング量定義つきパターンを有する描画データ53とする。」

(4)上記(3)によれば、「従来の描画装置では、描画データとして」、「矩形パターン図形の外郭の頂点の一つの座標(x1,y1)を基に、矩形の高さ(H)と幅(W)を定義する処理を基本として図形表現がされていた」が(上記(3)ア)、「従来の方法は、」「描画データ作成のための時間が増加して作業負荷が増え、描画データのデータ量が増大し、描画時間が増加して、生産性が低下するという問題があった」ため、「本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電子線やレーザ描画用の描画データのデータ量を低減させ、描画データ作成時間や描画時間を短縮する描画方法を提供することにある」(上記(3)イ)とされ、「本発明の描画データの作成方法」は、「基本図形の外周を線分と4点あるいは3点の頂点(xn,yn)(n=1?4)で表現した閉図形として定義」し、「次に、上記の線分を基準にして、」「線分に沿った任意の幅の帯状の輪郭部を定義」するものとされる(上記(3)ウ、エ)。

(5)そうすると、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に追加された、「前記内側部の外郭の頂点の一つの座標(x1、y1)と高さ(H)と幅(W)で定義される前記内側部の描画データ(x1、y1、H、W)に、前記輪郭部が有する幅(W1)に係るデータを加えることで、前記輪郭部および前記内側部を1つの描画データ(x1、y1、H、W、W1)と」するとの事項は、「基本図形の外周を線分と4点あるいは3点の頂点(xn,yn)(n=1?4)で表現した閉図形として定義」し、「次に、上記の線分を基準にして、」「線分に沿った任意の幅の帯状の輪郭部を定義」する「本発明の描画データの作成方法」(上記(3)ウ、エ)ではなく、「描画データとして」、「矩形パターン図形の外郭の頂点の一つの座標(x1,y1)を基に、矩形の高さ(H)と幅(W)を定義する処理を基本として図形表現」(上記(3)ア)する「従来の方法」としてのみ記載されたものであると認められる。

(6)そして、上記「前記輪郭部および前記内側部を1つの描画データ(x1、y1、H、W、W1)と」することが、発明の詳細な説明において、本願における発明の実施の形態を説明した【0023】?【0045】のどこにも記載されていないことは明らかである。
よって、当該「前記内側部の外郭の頂点の一つの座標(x1、y1)と高さ(H)と幅(W)で定義される前記内側部の描画データ(x1、y1、H、W)に、前記輪郭部が有する幅(W1)に係るデータを加えることで、前記輪郭部および前記内側部を1つの描画データ(x1、y1、H、W、W1)と」する特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本願発明として記載されていたものではない。
したがって、上記補正事項を含む本件補正は、当初明細書等の範囲内のものとはいえない。
請求項2についても同様である。

(7)小括
以上によれば、上記(1)の内容を含む本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

[理由2]この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



(1)上記[理由1]で述べた通り、本件補正により、本願請求項1に係る発明は、従来は、「描画データ作成のための時間が増加して作業負荷が増え、描画データのデータ量が増大し、描画時間が増加して、生産性が低下するという問題があった」ため、「本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電子線やレーザ描画用の描画データのデータ量を低減させ、描画データ作成時間や描画時間を短縮する描画方法を提供することにある」(上記(3)イ)とされる、「本発明の描画データの作成方法」ではなく、上記本願発明の解決すべき課題を解決できない「従来の方法」の発明を含むものであると認められる。

(2)しかるところ、当該本願発明の解決すべき課題を解決できない「従来の方法」の発明が本願明細書等でいうところの本願発明であるとの説明はないから、請求項1に係る発明は本願明細書等に記載されたものではない。
請求項2についても同様である。

(3)したがって、請求項1及び2は本願明細書等に記載されたものではない。」

第5 請求人の主張
平成28年4月25日付け意見書において、請求人は概要以下のとおり主張する。
「(3)補正の根拠
上記補正は、平成27年12月24日付けで提出した手続補正書における請求項1、2(以下、「直前請求項1、2」と呼びます)の記載から、「(x1、y1、H、W)」及び「(x1、y1、H、W、W1)」の記載を削除したものです。

(4)本願が特許されるべき理由
(4-1)理由1(特許法第17条の2第3項)について
上記のように、本願請求項1、2においては、「直前請求項1、2」と呼びます)の記載から、「(x1、y1、H、W)」及び「(x1、y1、H、W、W1)」の記載を削除しました。

これにより、「そして、上記「前記輪郭部および前記内側部を1つの描画データ(x1、y1、H、W、W1)と」することが、発明の詳細な説明において、本願における発明の実施の形態を説明した[0023]?[0045]のどこにも記載されていないことは明らかである。よって、当該「前記内側部の外郭の頂点の一つの座標(x1、y1)と高さ(H)と幅(W)で定義される前記内側部の描画データ(x1、y1、H、W)に、前記輪郭部が有する幅(W1)に係るデータを加えることで、前記輪郭部および前記内側部を1つの描画データ(x1、y1、H、W、W1)と」する特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本願発明として記載されていたものではない。したがって、上記補正事項を含む本件補正は、当初明細書等の範囲内のものとはいえない。請求項2についても同様である。」(拒絶理由通知の[理由1](6))との、ご指摘については、解消したものと思料いたします。

従いまして、本願請求項1、2に係る発明は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものでは無くなったものと、思料いたします。

(4-2)理由2(特許法第36条第6項第1号)について
上記のように、本願請求項1、2においては、「直前請求項1、2」と呼びます)の記載から、「(x1、y1、H、W)」及び「(x1、y1、H、W、W1)」の記載を削除し、本願請求項1、2に係る発明は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものでは無くなったものと、思料いたします。すなわち、本願請求項1、2に係る記載は、新規事項の追加に該当するものでは無く、当初明細書等の範囲内のものと、思料いたします。

そして、本願請求項1に係る発明においては、輪郭部および内側部を1つの描画データとしています。
この「1つの描画データ」のみを作成することにより、「描画データのデータ量を低減させ、描画データ作成の負荷軽減と、その作成時間を短縮することが可能」(本願明細書の段落[0019])となり、この「1つの描画データ」のみを用いるため、「描画のジョブ作成などの描画段取りも1回にできるなど描画作業負荷が軽減できる。」(本願明細書の段落[0021]、[0029])という優れた効果を奏するものであります。
これに対し、引用文献1に記載の描画データの作成方法は、従来の図形フォーマット表現のままであり、輪郭部と内側部とで5図形(5つの描画データ)となります。そのため、引用文献1の発明は、描画データのデータ量が増大し、描画データ作成のための時間が増加して作業負荷が増え、生産性が低下するという課題を有するものであります。
また、引用文献1に記載の「郭部図形4の輪郭幅Wを、描画図形のデータ量に応じて、適宜設定」(引用文献1の段落[0062])したとしても、引用文献1に記載の方法では、図形数が減るわけではなく、上記同様に、作業負荷が増える等の課題を有するものであります。

従いまして、本願請求項1に係る発明は、課題を解決できない「従来の方法」の発明を含むものでは無く、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものでは無くなったものと、思料いたします。
また、本願請求項2に係る発明についても、同様に、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものでは無くなったものと、思料いたします。」

第6 当審の判断
1 請求人の主張について
しかしながら、「平成27年12月24日付けで提出した手続補正書における請求項1、2の記載から、『(x1、y1、H、W)』及び『(x1、y1、H、W、W1)』の記載を削除した」(上記3)ものである本件補正が、補正の前後で実体的に変わらないことは上記第2、3(2)で述べたとおりであって、本件補正は上記第2のとおり却下された。
したがって、平成28年4月25日付け意見書での請求人の主張は採用できない。

2 当審の拒絶理由に関する判断
(1)[理由1]特許法第17条の2第3項について
上記第2のとおり、本件補正は却下されたため、本件発明は、上記第4、[理由1]で述べた理由により、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(2)[理由2]特許法第36条第6項第1号について
上記第2のとおり、本件補正は却下されたため、本件発明は、上記第4、[理由2]で述べた理由により、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第7 むすび
以上の検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-26 
結審通知日 2016-05-31 
審決日 2016-06-13 
出願番号 特願2012-89797(P2012-89797)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H01L)
P 1 8・ 561- WZ (H01L)
P 1 8・ 572- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松岡 智也久保田 創  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 松川 直樹
伊藤 昌哉
発明の名称 描画方法  
代理人 藤枡 裕実  

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