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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1317611 |
審判番号 | 不服2015-17707 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-09-29 |
確定日 | 2016-07-28 |
事件の表示 | 特願2013-553273「電子機器及び電子機器の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月18日国際公開、WO2013/105516〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2013年1月11日を国際出願日とする出願(優先権主張2012年1月13日)であって、平成27年1月14日付けで拒絶理由が通知され、同年3月20日に手続補正がされるとともに意見書が提出され、平成27年6月25日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同月30日)、これに対して平成27年9月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年3月20日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 「パネルに接触している接触物に触感を呈示する触感呈示部と、 前記パネルに対する押圧に基づく電圧と当該電圧に対応する電圧閾値とに基づいて前記触感呈示部を制御する制御部と、を備え、 前記制御部は、前記触感呈示部が触感を呈示した後、前記パネルに対する押圧に基づく電圧に応じて前記電圧閾値を変更する、ことを特徴とする電子機器。」 3.引用例、引用発明について 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に公開された、国際公開第2011/24457号(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審において付与。以下同様。)。 ア 段落[0002](「技術分野」) 「本発明は、入力装置に関するものであり、特に、押圧面積に応じて、入力を複数段階で受け付ける入力装置に関するものである。」 イ 段落[0003]-[0012](「背景技術」) 「従来、携帯電話機やゲーム機、デジタルカメラ等をはじめとする各種の電子機器には、一般的に、操作者が操作入力を行うための入力装置として、タクトスイッチやメンブレンスイッチ等のメカスイッチ(メカニカルスイッチ)が使用されている。特に、最近では、小型の端末機器に種々の多彩な機能が搭載されていることが多く、そのような端末機器の筐体表面には、各種のスイッチで構成されるキーやボタンなどが配設されている。 ・・・(中略)・・・ 以上のような問題に対処し得るものとして、1つのスイッチに対する入力の態様に応じて、複数の動作を割り当てることができる入力装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。 この特許文献1に記載の入力装置は、操作を行う際の入力にかかる操作力(押圧力)に応じて、入力を2段階で受け付けることができる。 ・・・(中略)・・・ このような入力装置は、操作者の入力の押圧力に応じて入力を2段階で受け付けることにより、これらの各段階に異なる動作を割り当てることができる。このような入力装置を用いることにより、操作者は、1つのスイッチ(入力装置)を用いて、このスイッチに対して押圧入力を行うという1つの動作を行う際の押圧力を調整することにより、複数の入力を区別して行うことができる。 すなわち、このような2段階の入力を受け付ける入力装置によれば、操作者が弱い押圧力によってボタンを押圧する状態を保つことにより、1段目の入力を行うことができる。このような入力状態は、「半押し」とも称され、以下、「第1段階の入力」と記す。また、このような入力装置によれば、操作者が第1段階の入力よりも強い押圧力によってボタンを押し込むことにより、2段目の入力を行うことができる。このような入力状態は、「全押し」とも称され、以下、「第2段階の入力」と記す。 ・・・(中略)・・・ なお、押圧力に応じて複数段階の入力を受け付ける入力装置は、メカスイッチに限定されるものではない。例えば、表示装置と位置入力装置とを組み合わせて構成したタッチパネル式の入力装置においても、ソフトウェアによる処理を行うことにより、押圧力に応じて複数段階の入力を受け付ける入力装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。」 ウ 段落[0024]-[0026](「発明が解決しようとする課題」) 「例えば、上記した入力装置をカメラのシャッターボタンに適用した場合、操作者の押圧力の調整が適切になされずに、第1段階の入力を超えて一気に第2段階の入力まで受け付けてしまうと、AE、AF機能が適切に動作する前にシャッターを切ってしまう。この場合、AE、AF機能が適切に動作せずに、ピント外れの画像が撮影されたりする恐れがある。また、上述したような、入力装置が検知する押圧力に応じて何かの量などを調整する処理を行う場合や、押圧力に応じた段階的な処理を割り当てる場合も、一気に第2段階の入力まで受け付けてしまうと、操作者の意図しない動作が行われる不都合が想定される。 このように、各段階の入力を受け付ける閾値を固定値としてしまうと、操作者の意図しない入力がされてしまうという問題が残る。操作者の意図しない入力がなされてしまうと、このような操作入力は、入力装置にとっては正当な処理手順にしたがって動作を行っているだけであるが、操作者にとっては誤動作でしかない。 したがって、かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、押圧力に基づく押圧面積に応じた複数段階の入力を、操作者の操作ごとに異なる押圧力にて受け付けることができる入力装置を提供することにある。」 エ 段落[0037](「発明の効果」) 「本発明の入力装置によれば、面積検出部が、第1段階の入力を受け付ける第1の基準を満たす押圧面積を検出する毎に、第2段階の入力を受け付ける第2の基準が設定される。すなわち、本発明の入力装置は、操作者がその都度操作を行う際に、第2段階の入力を受け付ける面積の基準値を設定する。したがって、本発明によれば、押圧面積に応じた複数段階の入力を、操作者の操作ごとに異なる押圧力にて受け付けることができる。これにより、操作者が入力装置に押圧面積を加え過ぎてしまい、第1段階の入力で留めたいにもかかわらず、意図せずに第2段階の入力までしてしまうという問題は解消される。」 オ 段落[0039](「発明を実施するための形態」) 「以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の各実施の形態においては、本発明の入力装置の一例として、携帯電話やPDAなどのような携帯端末であってタッチパネルを備えているものを想定して説明する。しかしながら、本発明の入力装置は、これらの携帯端末に限定されるものではなく、例えば、デジタルカメラ、ポータブルオーディオプレーヤ、ノートPC、ミニノートPC、ゲーム機などの、入力装置を備える種々の端末とすることができる。また、本発明の入力装置は、携帯端末に限定されるものでもなく、銀行のATMや駅の乗車券販売機など、入力装置を備える任意の端末とすることもできる。さらに、本発明の入力装置は、後述するように、タッチパネルを有する端末に限定されるものでもない。本発明は、操作者の操作入力を受け付けるタッチパネルまたは押しボタン(あるいはキー)などのスイッチと、そのスイッチにかかる押圧面積を検出できる機能を有するものであれば、任意の入力装置に適用することができる。」 カ 段落[0040]-[0077](「第1実施の形態」) 「図1は、本実施の形態に係る入力装置10の内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。図1に示すように、入力装置10は、制御部20と、タッチパネル30と、面積検出部40と、振動部50と、記憶部60と、音声出力部70と、を備えている。 制御部20は、入力装置10の各機能ブロックをはじめとして入力装置10の全体を制御および管理する。なお、この制御部20は、面積検出部40が検出する押圧面積の時間的な変化率を演算処理により算出する面積変化率算出部22を備えている。 本実施の形態では、タッチパネル30は、表示部32と、入力部34とを備えている。このタッチパネル30は、操作者の入力を受け付ける入力部34を、表示部32の前面に重畳させて配設することにより構成する。 ・・・(中略)・・・ 面積検出部40は、タッチパネル30(または入力部34)に対する押圧面積を検出するもので、例えば、マトリクススイッチで構成する。この面積検出部40は、操作者が操作入力を行う際の押圧による入力の押圧面積を検出する。例えば、操作者が指を使って押圧入力を行った場合、タッチパネル30(または入力部34)と指との接触面の面積を押圧面積として検出する。面積検出部40は必ずしも、正確な押圧面積の数値を検出する必要はない。例えば、時間経過と共に押圧面積がどのように変化していくのか検出できればよく、マトリクススイッチにより、検出される入力が始めは1点のみであったのが、2点、3点と円環状に内側から外側へと順次検出されていくことにより押圧面積が増加していると、分かるものであれば良い。なお、入力部34が光学式である場合は、面積検出部40は、入力部34上の赤外線が指やスタイラスペンで遮られた範囲を検出することにより、押圧面積の範囲を検出することができる。 このように、本願では、操作者が押圧入力をする際に使用する指やスタイラスペンなどの物体と、タッチパネル30(または入力部34)とが接触した面の面積を「押圧面積」と称する。 なお、入力部34および面積検出部40を、マトリクススイッチを用いて構成する場合は、マトリクススイッチを共用して、入力部34および面積検出部40を構成することができる。 振動部50は、タッチパネル30(または入力部34)に振動を伝えるもので、例えば、圧電素子または超音波振動子などを用いて構成する。この振動部50が振動することにより、入力部34を押圧している操作者の指などに対して振動を伝えることができる。この振動により、操作者の所定の入力がタッチパネル30に対して行われた際に、当該所定の入力が正常に受け付けられたことを操作者に報知することができる。したがって、本実施の形態では、振動部50が報知情報発生部を構成する。なお、報知情報発生部である振動部50が振動を発生することにより、ユーザに報知することができる所定の情報(振動による合図など)を、以下、「報知情報」と称する。 ・・・(中略)・・・ 次に、本実施の形態に係る入力装置10による入力受付処理について説明する。図3は、本実施の形態に係る入力装置10による入力受付処理の流れを説明するフローチャートである。なお、本実施の形態において、入力装置10を用いた入力受付処理を行うに際し、この入力装置10の操作者は、入力装置10が押圧面積に応じて少なくとも2段階の複数段階の入力を受け付ける入力装置であることを認識しているものとする。 入力装置10において、制御部20は、入力部34に対して操作者の押圧入力がなされたことにより、面積検出部40が押圧面積を検出したか否かを監視している。入力装置10による入力受付処理は、面積検出部40が押圧面積を検出した時点から開始する。入力装置10による入力受付処理が開始すると、制御部20は、操作者の押圧入力による押圧面積が増すことにより、面積検出部40が、第1段階の入力を受け付ける第1の面積基準を満たす押圧面積を検出したか否かを判定する(ステップS11)。 なお、第1段階の入力を受け付ける第1の面積基準とは、基準となる所定の押圧面積の閾値である。この閾値を超える押圧面積を面積検出部40が検出した場合、制御部20は、入力装置10において規定された第1段階の入力が受け付けられたものとして処理する。また、この第1段階の入力を受け付ける第1の面積基準は、予め設定された所定の押圧面積を閾値とするが、後から操作者の好みに応じて変更できるようにしてもよい。 ステップS11において、第1段階の入力を受け付ける第1の面積基準を満たす押圧面積が検出されない場合は待ち状態となる。一方、ステップS11において第1段階の入力を受け付ける第1の面積基準を満たす押圧面積が検出された場合、制御部20は、報知情報発生部が所定の報知情報を発生するように制御する(ステップS12)。すなわち、本実施の形態においては、制御部20は、振動部50が所定の態様の振動を発生するように制御する。振動部50が振動を発生させる際、制御部20は、予め記憶部60に記憶してある波形などの情報を読み出すことにより、振動部50が発生する振動の態様を制御する。これにより、操作者は、振動が発生した時点で、第1段階の入力が入力装置10に正常に受け付けられたことを認識することができる。 また、このような処理とともに、制御部20は、第1段階の入力を受け付けたことに応じて、入力装置10において規定された第1段階の入力に対応する動作を行うように処理を行う(ステップS13)。例えば、入力装置10がカメラのシャッターボタンに適用されている場合、ステップS13の処理は、入力装置10が「半押し」された場合の動作、すなわちAEやAFを調整する機能をオンにする動作を行うことに相当する。 図4は、面積検出部40によって検出される、操作者の押圧入力の押圧面積が変化する様子を表したグラフである。X軸方向は時間の推移を表し、Y軸方向は面積検出部40が検出する押圧面積を表す。図4(A)において、操作者がタッチパネル30の入力部34に触れた時点がP0であり、そのときの押圧面積がAr0であることを示している。この後、操作者が入力する押圧力を増大させたため、面積検出部40が検出する押圧面積は徐々増大し、ある時点P1において、第1段階の入力を受け付けるべく予め定めた第1の面積基準Ar1に達した様子を表している。 この時、振動の発生により第1段階の入力が正常に受け付けられたことを認識した操作者は、一気に第2段階の入力まで行われないようにしようとする意識が働くため、入力を行う押圧力を維持する(つまり押圧力の増大を抑制する)動作を行う。ここで、第1段階の入力が正常に受け付けられたことは、振動の発生により、どのような操作者であっても認識できる。しかしながら、第1段階の入力が受け付けられたと操作者が認識した後、その入力の押圧力を維持する際の押圧力は、操作者によってかなりの個人差がある。 例えば、図4(A)に示す押圧面積のグラフにおいては、押圧面積がAr1に達したP1の時点からも、操作者は押圧力を抑制させずにそのまま増大させてから、Psの時点で押圧力を(増大させずに)維持させている。普段からボタンなどを強く押圧する傾向のある操作者の場合、第1段階の入力が受け付けられて振動部50による振動が発生してすぐに押圧力を維持させたつもりでも、比較的大きな押圧力で押圧入力を維持することが想定される。 一方、図4(B)に示す押圧面積のグラフにおいては、操作者は、押圧面積がAr1に達したP1の時点から比較的すぐに押圧力の増大を抑制し、Psの時点で押圧力を維持させている。普段からボタンなどを弱く押圧する傾向のある操作者の場合、第1段階の入力が受け付けられて振動部50による振動が発生すると、すぐに押圧力を維持させることが想定される。 図4(A)に示すPsの時点における押圧面積Arsと、図4(B)に示すPsの時点における押圧面積Arsとを比較すると、図4(B)の押圧面積Arsの方がかなり小さな値であることがわかる。このように、第1段階の入力が受け付けられたと認識した後、操作者がその入力の押圧力を維持する際の押圧力は、かなり個人差があることがわかる。また、同じ操作者においても、操作の度に、第1段階の入力の押圧力を維持する際の押圧力は変動することが想定される。 そこで、本実施の形態では、第1段階の入力が受け付けられたと操作者が認識した後、操作者が入力の押圧力を維持する時点Psにおける押圧面積Arsを基準として、第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準Ar2を設定する。すなわち、制御部20は、第1段階の入力を受け付ける第1の面積基準を満たす押圧面積Ar1を面積検出部40が検出する毎に、第1の面積基準が満たされた後に面積検出部40が検出する押圧面積Arsに基づいて、第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準Ar2を設定する。この時、第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準Ar2は、第1段階の入力を受け付ける第1の面積基準Ar1より大きい値とする。 このような処理を行うために、制御部20は、操作者が入力の押圧力を維持する時点Psにおける押圧面積Arsの決定を行う(ステップS14)。本実施の形態において、面積変化率算出部22は、面積検出部40が検出する押圧面積の時間的な変化率を算出する。そこで、面積検出部40が第1の面積基準を満たす押圧面積を検出した後であるステップS14において、制御部20は、面積変化率算出部22が算出する押圧面積の変化率が最初に所定値以下に減少した際の押圧面積を、押圧面積Arsとして決定する。したがって、制御部20は、面積検出部40が第1の面積基準を満たす押圧面積Ar1を検出した後、面積変化率算出部22が算出する押圧面積の変化率が最初に所定値以下に減少した際の押圧面積Arsに基づいて、第2の面積基準Ar2を設定する。 ここで、押圧面積の変化率が所定値以下に減少する場合の「所定値」とは、例えばゼロに近い小さな値などにして、操作者が入力の押圧力の増大を抑制して押圧力を維持している時点Psを特定できるようにするのが好適である。なお、図4のグラフに示した曲線の接線の傾きは、面積検出部40が検出する押圧面積の時間的な変化率を表している。したがって、本実施の形態では、図4において、面積検出部40が押圧面積Ar1を検出した時点P1の後、最初にグラフの接線の傾きがゼロに近くなる、すなわちY軸とほぼ平行になるような時点Psにおける押圧面積を押圧面積Arsとして決定する。 ステップS14において、押圧面積Arsが決定されたら、制御部20は、押圧面積Arsに所定の加算幅の値を加えたものを、第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準Ar2として設定する(ステップS15)。このようにして設定された第2の面積基準Ar2は、図4(A)および(B)を対比すれば明らかなように、同じ加算幅の値を付加しても、操作者が入力の押圧力を維持した時点Psにおける押圧面積Arsに応じて異なるものになる。 この後、制御部20は、操作者の押圧入力による押圧面積が増すことにより、面積検出部40が、第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準を満たす押圧面積を検出したか否かを判定する(ステップS16)。 第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準とは、上述の処理により設定した所定の押圧面積の閾値である。このように第2の面積基準が設定された後、この閾値を超える押圧面積を面積検出部40が検出した場合、制御部20は、入力装置10において規定された第2段階の入力が受け付けられたものとして処理する。 ステップS16において、第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準を満たす押圧面積が検出されない場合は待ち状態となる。一方、ステップS16において第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準を満たす押圧面積が検出された場合、制御部20は、報知情報発生部が所定の報知情報を発生するように制御する(ステップS17)。すなわち、制御部20は、振動部50が所定の態様の振動を発生するように制御する。これにより、操作者は、振動が発生した時点で、第2段階の入力が入力装置10に正常に受け付けられたことを認識することができる。なお、この第2段階の入力を受け付けた際の報知情報は、上述した第1段階の入力を受け付けた際の報知情報と異なる態様の振動にすれば、操作者は入力の段階を容易に区別することができる。 また、このような処理とともに、制御部20は、第2段階の入力を受け付けたことに応じて、入力装置10において規定された第2段階の入力に対応する動作を行うように処理を行う(ステップS18)。例えば、入力装置10がカメラのシャッターボタンに適用されている場合、ステップS18の処理は、入力装置10が「全押し」された場合の動作、すなわちAE、AF機能が適切に動作した後にシャッターを切る動作を行うことに相当する。 このように、本実施の形態によれば、入力装置10は、第1の面積基準が満たされた後の押圧面積に基づいて、第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準を設定する。したがって、操作者が初めて入力装置10を操作する場合でも、押圧力の加減がわからずに、いきなり「全押し」をしてしまうリスクはない。また、複数の異なる操作者が同じ入力装置10を用いても、入力装置10が、それぞれの操作者の入力操作時の押圧力に順応して、適切な押圧面積の第2の面積基準を設定する。したがって、それぞれの操作者が入力装置10の要求する押圧面積に合わせて操作を行う必要はない。 また、本実施の形態の入力装置10では、操作者が一旦押圧力を維持する動作を行わないと(すなわちPsの時点における押圧面積Arsが決定されないと)、第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準が設定されない。そのため、入力装置10は、第1段階の入力の処理を開始してから終了するまでに、すなわち第2段階の入力を受け付けるまでに、十分な時間を取ることが可能である。したがって、操作者がいきなり「全押し」の操作を行ったために、第1段階の入力に係る処理が正常に完了する前に第2段階の入力に係る処理が開始してしまう、という不都合を回避することもできる。」 よって、引用例には、特に「第1実施の形態」(上記カ)を参照すると、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 「携帯電話機やゲーム機、デジタルカメラ等をはじめとする各種の電子機器に使用されている、操作者が操作入力を行うための入力装置において、 入力の態様に応じて、複数の動作を割り当てることができ、 操作者の入力の押圧力に応じて入力を2段階で受け付けることにより、これらの各段階に異なる動作を割り当てることができ、 操作者が弱い押圧力によってボタンを押圧する状態を保つことにより、1段目の入力を行うことができ、このような入力状態は、「半押し」とも称され、以下、「第1段階の入力」と記され、 操作者が第1段階の入力よりも強い押圧力によってボタンを押し込むことにより、2段目の入力を行うことができ、このような入力状態は、「全押し」とも称され、以下、「第2段階の入力」と記され、 入力装置10の内部構成においては、 タッチパネル30は、表示部32と、入力部34とを備え、 面積検出部40は、タッチパネル30に対する押圧面積を検出するもので、例えば、マトリクススイッチで構成し、面積検出部40は必ずしも、正確な押圧面積の数値を検出する必要はなく、時間経過と共に押圧面積がどのように変化していくのか検出できればよく、マトリクススイッチにより、検出される入力が始めは1点のみであったのが、2点、3点と円環状に内側から外側へと順次検出されていくことにより押圧面積が増加していると、分かるものであれば良く、 入力部34が光学式である場合は、面積検出部40は、入力部34上の赤外線が指やスタイラスペンで遮られた範囲を検出することにより、押圧面積の範囲を検出することができ、 操作者が押圧入力をする際に使用する指やスタイラスペンなどの物体と、タッチパネル30とが接触した面の面積を「押圧面積」と称し、 入力部34および面積検出部40を、マトリクススイッチを用いて構成する場合は、マトリクススイッチを共用して、入力部34および面積検出部40を構成することができ、 振動部50は、タッチパネル30に振動を伝えるもので、圧電素子または超音波振動子などを用いて構成し、この振動部50が振動することにより、入力部34を押圧している操作者の指などに対して振動を伝えることができ、振動部50が報知情報発生部を構成し、 入力装置10による入力受付処理の流れは、 制御部20は、操作者の押圧入力による押圧面積が増すことにより、面積検出部40が、第1段階の入力を受け付ける第1の面積基準を満たす押圧面積を検出したか否かを判定するステップS11、 ステップS11において第1段階の入力を受け付ける第1の面積基準を満たす押圧面積が検出された場合、制御部20は、報知情報発生部が所定の報知情報を発生するように制御するステップS12、 制御部20は、第1段階の入力を受け付けたことに応じて、入力装置10において規定された第1段階の入力に対応する動作を行うように処理を行うステップS13、 ここで、入力装置10がカメラのシャッターボタンに適用されている場合、ステップS13の処理は、入力装置10が「半押し」された場合の動作、すなわちAEやAFを調整する機能をオンにする動作を行うことに相当し、 制御部20は、操作者が入力の押圧力を維持する時点Psにおける押圧面積Arsの決定を行うステップS14、 制御部20は、押圧面積Arsに所定の加算幅の値を加えたものを、第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準Ar2として設定するステップS15、 このようにして設定された第2の面積基準Ar2は、同じ加算幅の値を付加しても、操作者が入力の押圧力を維持した時点Psにおける押圧面積Arsに応じて異なるものになり、 制御部20は、操作者の押圧入力による押圧面積が増すことにより、面積検出部40が、第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準を満たす押圧面積を検出したか否かを判定するステップS16、 第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準を満たす押圧面積が検出された場合、制御部20は、報知情報発生部が所定の報知情報を発生するように制御するステップS17、 ここで、第2段階の入力を受け付けた際の報知情報は、第1段階の入力を受け付けた際の報知情報と異なる態様の振動であり、 制御部20は、第2段階の入力を受け付けたことに応じて、入力装置10において規定された第2段階の入力に対応する動作を行うように処理を行うステップS18、であって、 ここで、入力装置10がカメラのシャッターボタンに適用されている場合、ステップS18の処理は、入力装置10が「全押し」された場合の動作、すなわちAE、AF機能が適切に動作した後にシャッターを切る動作を行うことに相当する、 入力装置。」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1) 引用発明の「表示部32と、入力部34とを備え」る、「タッチパネル30」は、本願発明の「パネル」に相当する。 引用発明の「操作者が押圧入力をする際に使用する指やスタイラスペンなどの物体」は、本願発明の「接触物」に相当する。 よって、引用発明における「振動部50は、タッチパネル30に振動を伝えるもので、圧電素子または超音波振動子などを用いて構成し、この振動部50が振動することにより、入力部34を押圧している操作者の指などに対して振動を伝えることができ、振動部50が報知情報発生部を構成し」ている、引用発明の「振動部50」(「報知情報発生部」)は、本願発明の「パネルに接触している接触物に触感を呈示する触感呈示部」に相当する。 (2) 引用発明の「押圧面積」は、「操作者が押圧入力をする際に使用する指やスタイラスペンなどの物体と、タッチパネル30とが接触した面の面積を『押圧面積』と称し」ているから、引用発明の「押圧面積」と、本願発明の「パネルに対する押圧に基づく電圧」とは、「パネルに対する押圧に基づくデータ」である点で共通するといえる。 また、引用発明の「面積基準」と、本願発明の「電圧閾値」とは、「データ閾値」である点で共通するといえる。 よって、引用発明の「制御部20」は、「入力装置10による入力受付処理の流れ」において、「ステップS11において第1段階の入力を受け付ける第1の面積基準を満たす押圧面積が検出された場合、制御部20は、報知情報発生部が所定の報知情報を発生するように制御するステップS12」を実行するものである点で、本願発明の「前記パネルに対する押圧に基づく電圧と当該電圧に対応する電圧閾値とに基づいて前記触感呈示部を制御する制御部」と、「前記パネルに対する押圧に基づくデータと当該データに対応するデータ閾値とに基づいて前記触感呈示部を制御する制御部」である点で共通するといえる。 (3) 引用発明の「制御部20」が、「入力装置10による入力受付処理の流れ」において、「制御部20は、報知情報発生部が所定の報知情報を発生するように制御するステップS12」を実行した後に、「制御部20は、操作者が入力の押圧力を維持する時点Psにおける押圧面積Arsの決定を行うステップS14」、「制御部20は、押圧面積Arsに所定の加算幅の値を加えたものを、第2段階の入力を受け付ける第2の面積基準Ar2として設定するステップS15」を実行するものであって、「このようにして設定された第2の面積基準Ar2は、同じ加算幅の値を付加しても、操作者が入力の押圧力を維持した時点Psにおける押圧面積Arsに応じて異なるものにな」ることは、本願発明の「前記制御部は、前記触感呈示部が触感を呈示した後、前記パネルに対する押圧に基づく電圧に応じて前記電圧閾値を変更する」ことと、「前記制御部は、前記触感呈示部が触感を呈示した後、前記パネルに対する押圧に基づくデータに応じて前記データ閾値を変更する」点で共通するといえる。 (4) 引用発明の「入力装置」は、「携帯電話機やゲーム機、デジタルカメラ等をはじめとする各種の電子機器に使用されている、操作者が操作入力を行うための入力装置」であるから、引用発明の「入力装置」を含んでいる「電子機器」は、本願発明の「電子機器」に相当するといえる。 したがって、本願発明と引用発明との一致点・相違点は次のとおりである。 <一致点> 「パネルに接触している接触物に触感を呈示する触感呈示部と、 前記パネルに対する押圧に基づくデータと当該データに対応するデータ閾値とに基づいて前記触感呈示部を制御する制御部と、を備え、 前記制御部は、前記触感呈示部が触感を呈示した後、前記パネルに対する押圧に基づくデータに応じて前記データ閾値を変更する、ことを特徴とする電子機器。」である点。 <相違点> 本願発明の制御部は、「前記パネルに対する押圧に基づく電圧と当該電圧に対応する電圧閾値とに基づいて前記触感呈示部を制御する制御部」であって、制御部は、「前記制御部は、前記触感呈示部が触感を呈示した後、前記パネルに対する押圧に基づく電圧に応じて前記電圧閾値を変更する」ものであるのに対して、引用発明の制御部は、押圧に基づく「押圧面積」を用いるものであって、押圧に基づく「電圧」を用いることは、特定がなされていない点。 5.当審の判断 <相違点>について 本願発明の「押圧に基づく電圧と当該電圧に対応する電圧閾値とに基づいて前記触感呈示部を制御する」という文言で表される技術的事項は、その文言から、「『押圧に基づく電圧』といい得る電圧とこれに対応する電圧閾値とに何らかの形で基づいて前記触感呈示部を制御する」こと全般を含むと解する他はないから、「『押圧に基づく電圧』といい得る電圧とこれに対応する電圧閾値とに間接的に基づいて触感呈示部を制御する」ことも当然に含み、例えば、「『押圧に基づく電圧により推定される面積』と『押圧に基づく電圧閾値により推定される面積基準(面積閾値)』に何らかの形で基づいて前記触感呈示部を制御する」といった事項も当然に含んでいると解される。 また、同様に、「押圧に基づく電圧に応じて前記電圧閾値を変更する」という文言で表される技術的事項についても、「『押圧に基づく電圧により推定される面積』に応じて『押圧に基づく電圧閾値により推定される面積基準(面積閾値)』を変更する」といった事項も当然に含んでいると解される。 以上を前提に、引用発明において上記相違点に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったか否かを以下に検討する。 引用例において、面積検出部40に「例えば、マトリクススイッチ」を用いるのは、例示であって、光学式の入力部を用いる場合、赤外線により押圧面積を検出できるという異なる例示があることや、「正確な押圧面積の数値を検出する必要はなく、…押圧面積がどのように変化していくのか検出できれば」よいという、面積検出検出部の選定条件も記載されることから、引用例には、押圧面積を検出するために、2つの例示されたもの以外の、各種の検出手段を採用する示唆があるといえる。 一般に、押圧に基づく電圧から、押圧面積を求めることは、周知技術である(下記<拒絶査定で引用された引用文献3:特開2005-196310号公報>、<拒絶査定で引用された引用文献4:特開2011-129091号公報>、<特開2001-236162号公報>を参照。))。 <引用文献3:特開2005-196310号公報> (段落【0009】 「【0009】 しかしながら、従来のタッチパネルにおいては、タッチパネルが押されている位置を検知することは可能であるが、タッチパネルが押されている領域の長さ、面積、即ち第1抵抗膜1aと第2抵抗膜1bとが接触している領域の、電位勾配方向(X方向、又はY方向)の長さ、面積等を検知することができないという問題があった。また、第1及び第2抵抗膜1a、1bが押されている圧力の強さを検知することができないという問題があった。更に、タッチパネルが押されている状態、例えば、斜め方向から押されているか否かを検知することができないという問題があった。」、 段落【0082】-【0083】 「【0082】 このように構成されるタッチパネルにあっては、タッチパネルが押されている領域の長さ、面積を検知することが可能となる。従って、例えばペン入力を受け付け、ペン入力に応じて液晶ディスプレイに曲線、図形等を表示する装置に、本発明に係るタッチパネルを適用した場合、ペン先の太さに応じて、細書き、又は太書き等を判断し、液晶ディスプレイにペン先の大きさに相当する太さの線分を表示するような装置を構成することが可能となる。 【0083】 また、タッチパネルが押されている圧力の強さを特定することが可能であるため、例えば、ビデオカメラの操作を受け付ける操作部として、圧力を特定するタッチパネルを用いた場合、タッチパネルに加わる圧力の大きさに応じて動作するビデオカメラを構成することが可能となる。タッチパネルが押される強さに応じて、撮像している被写体画像のズーム・イン、ズーム・アウト等の動作を行うビデオカメラ、或は、タッチパネルが押される強さに応じて、再生画像の早送り再生の速度調節を行うビデオカメラ等を構成することが可能となる。」、 段落【0122】-【0127】 「【0122】 (実施の形態4) 図13は、実施の形態4に係るタッチパネルシステムを模式的に示した構成図である。タッチパネルシステムは、実施の形態1で示したタッチパネルと、タッチパネルに略平行に配置されている表示板7aと、表示板7a及びタッチパネルの間に配置されている圧電膜8aとから構成されている。 【0123】 タッチパネルシステムは、従来のタッチパネルが備える2つの抵抗膜、出力部(不図示)及び接続経路502を備えるタッチパネルと、タッチパネルの下層に対向配置され、圧力に応じて電圧を発生する圧電膜8aと、圧電膜8aの電圧を出力する電圧出力部8bと、圧電膜8aの下層に対向配置されている表示板7aと、LCDコントローラ7bと、タッチパネル及びLCDコントローラ7bの動作を制御する制御部304とを備えている。また、制御部304は、圧電膜8aから電圧出力部8bに出力される電圧の値を検出する電圧検出手段を備えている。制御部304が備える位置検知手段等の手段、及び内部構成は、実施の形態1及び従来技術の説明で示した制御部と同様であり、制御部304が備えるバスに、接続経路502、及びLCDコントローラ7bが接続している。 【0124】 タッチパネルは、接触可能に対向配置されている第1及び第2抵抗膜1a、1bを備えている。第1抵抗膜1aは、第2抵抗膜1bと対向しない面にPET製の第1絶縁膜5aを備え、第2抵抗膜1bは、第1抵抗膜1aと対向しない面にガラス基板6を備えている。 【0125】 このように構成されるタッチパネルシステムにおいては、タッチパネルが押された場合、タッチパネルにより、タッチパネルが押されている位置を検知することができ、圧電膜8aにより、タッチパネルが押されている圧力を検知することができる。従って、タッチパネルが押されている状態を、タッチパネル単体に比べ、より詳細に検知することが可能となる。 【0126】 例えば、タッチパネルが押された場合、圧電膜8aに発生した電圧の値を、電圧出力部8bを介して検出することにより、タッチパネルが押されている圧力の強さを特定することができるが、圧力の強さと、タッチパネルが押される領域の面積との対応関係を制御部304が記憶している場合、タッチパネルが押され、第1及び第2抵抗膜1a、1bが互いに接触している領域の長さを検知することが可能となる。また、タッチパネルの位置検知手段により、前記領域の中心位置を検知することが可能となる。 【0127】 なお、このようなタッチパネルシステムを具体的に実現するためには、電圧検出手段により検出した、圧電膜8aの電圧値と、第1及び第2抵抗膜1a、1bが接触している領域の面積との対向関係を記憶している記憶手段と、前記対応関係と、圧電膜8aの電圧値とから前記領域の面積を特定する面積特定手段とを、タッチパネルシステムに備えると良い。」、の記載を参照。) <引用文献4:特開2011-129091号公報> (段落【0018】-【0024】 「【0018】 抵抗膜方式のセンサは、複数の透明電極が一定間隔でマトリックス状に大綱配置された電極シートを有しており、操作者がカバーパネル11の表面を指で押圧すると、対向する電極同士が接触して導通し、その接触位置によって電極シートのX方向及びY方向の抵抗値が変化する。この抵抗値の変化により、抵抗膜方式のセンサから出力されるX方向及びY方向に対応する電圧値が変化する。この電圧値の変化により、押圧された操作位置の座標が特定される。 ・・・(中略)・・・ 【0020】 振動子17A,17Bは、積層された負数の薄板状の圧電素子を電極板で挟んで樹脂製の筐体に収納したパッケージ型の駆動素子である。振動子17A,17Bは、図1に示すように、基板1とカバーパネル11との間に挟まれた状態で、表示パネル15及びタッチセンサ10の両側に対をなすように、一つずつ配設される。振動子17A,17Bは、実際には、基板1及びカバーパネル11の紙面を貫く方向の辺と略同じ長さを有する細長い駆動素子である。振動子17A,17Bは、電圧が印加されると、積層方向に歪んで変位するため、カバーパネル11に振動を生成するための振動生成部として用いられる。また、振動子17としては、圧電素子やボイスコイルや振動モータなどを用いてもよく、振動子17の数も1つあるいは2つ以上の何れでもよい。 【0021】 接触状態検出部12は、タッチセンサ10から出力される操作位置の座標を表す電圧値に信号処理を行う回路である。この信号処理により、操作位置の座標を表す電圧値は、増幅、ノイズ除去、及び、デジタル変換が行われ、デジタル電圧値として出力される。このように信号処理を行うため、タッチセンサ10から出力される電圧値が微小であっても、操作位置を正確に検出することができる。また、上述のように複数の透明電極をマトリクス状に配列した抵抗膜方式のタッチセンサ10を用いている場合には、押圧によって接触が生じた電極の数から接触面積を求めることができるとともに、接触面の中心位置を算出して操作位置(接触位置)を正確に導出できる。さらに、接触状態検出部12は、操作位置や接触面積の時間変化量を検出することもできる。 【0022】 また、タッチセンサ10及び接触状態検出部12は、座標入力面上でなされた操作入力の押圧度合を検出する押圧度合検出部としての機能も有する。 【0023】 接触状態検出部12は、操作位置の座標を表す電圧値に上述の信号処理を行い、操作入力のあった位置を表す入力座情報と、接触面積を表す面積情報を出力する。入力座標情報は、例えば、入力操作が行われた領域の中心位置の座標を表し、面積情報は接触面積の大きさを示す。操作者による押圧度合が高くなると、対向配置されたタッチセンサ10の電極シートが接触する接触面積が増えるため、電極シート間の抵抗値が下がり、接触状態検出部12から出力される面積情報を表す電圧値は低くなる。一方、押圧度合が低い場合は、前記接触面積が減るため、面積情報を表す電圧値は高くなる。面積情報の変化は、操作者によるカバーパネル11の押圧度合の変化を表す情報として利用することができる。入力座標情報と面積情報とは、操作者の操作入力の内容を表す情報として、情報処理部13に入力される。 【0024】 上述したことから接触状態検出部12において、タッチセンサ10からの信号をもとに、指とカバーパネル11との接触判定、指とカバーパネル11との間の接触領域の圧力分布、重心座標などの算出がなされる。」、の記載を参照。) <特開2001-236162号公報> (段落【0027】 「【0027】図6は抵抗体40の出力端子から出力されるアナログ信号(電圧)の特性を示す図である。電源投入時には、抵抗体40に電圧が印加されるため、操作ボタン221が押されていなくとも、出力端子からは一定のアナログ信号(電圧)Vminが出力される(図中aの位置)。次いで、操作ボタン221が押圧操作されても、導電部材50が抵抗体40に接触するまでは、該抵抗体40の抵抗値が変化しないため、抵抗体40からの出力はVminのまま変化しない。さらに操作ボタン221が押圧されて、導電部材50が抵抗体40に接触すると(図中bの押圧位置)、その後は操作ボタン221の押圧力に対応して抵抗体40に対する導電部材50の接触面積が増加するため、抵抗体40の抵抗値が減少し、出力端子から出力されるアナログ信号(電圧)が増加する。そして、導電部材50が最も変形したところで、出力端子から出力されるアナログ信号(電圧)が最大Vmaxとなる(図中cの押圧位置)。」、の記載を参照。) したがって、タッチパネルに対する押圧面積と面積基準(面積閾値)との対比に基づいて制御を行う引用発明に、押圧に基づく電圧から、押圧面積を求める、上記周知技術を適用することによって、パネルに対する押圧に基づく電圧と当該電圧に対応する電圧閾値とに基づいて前記触感呈示部を制御するとともに、前記パネルに対する押圧に基づく電圧に応じて前記電圧閾値を変更する、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 さらに、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。 なお、請求人は、審判請求書において、 「本願発明は、「パネルに対する押圧に基づく電圧と当該電圧に対応する電圧閾値とに基づいて触感呈示部を制御する」、「パネルに対する押圧に基づく電圧に応じて前記電圧閾値を変更する」ことに特徴があります。これに対し、審査官殿も御認識の通り、引用発明1は、タッチパネルに対する押圧面積に基づくものであって、タッチパネルに対する電圧に基づくものではなく、上述した本願発明の構成に対応する直接的な記載やこれを示唆する記載ではありません。また、審査官殿は、拒絶査定の備考欄において、『・・・(中略)・・・』と説示されておられます。しかしながら、周知の技術とは、電圧から押圧面積を求めることであって、電圧に基づいて触感呈示部を制御することではありません。また、引用発明3、4にも、上述した本願発明の構成に対応する直接的な記載やこれを示唆する記載はありません。」(審判請求書、3ページ18行-4ページ4行。下線は当審付与。)、 旨を主張している。 しかし、引用発明も、押圧力を求めるために押圧面積を求めているものである(上記「3.引用例、引用発明について」、「ウ」(発明が解決しようとする課題、段落[0026])の「したがって、かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、押圧力に基づく押圧面積に応じた複数段階の入力を、操作者の操作ごとに異なる押圧力にて受け付けることができる入力装置を提供することにある。」の記載を参照。)。そして、上述のとおり、引用例には、押圧面積を検出するために、各種の検出手段を採用する示唆があるといえ、タッチパネルに対する押圧面積に基づいて制御を行う引用発明に、押圧に基づく電圧から、押圧面積を求める周知技術を適用することによって、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 請求人は、「圧電素子等を押圧検出素子として機能させて、適切に触感を呈示することができるという顕著な効果」について主張する(審判請求書、4ページ11-16行)が、上述のとおり、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。 仮に、これが、「触覚呈示部」の圧電素子等を、押圧検出素子に共用する効果の主張であれば、本願の請求項に、「押圧検出素子」を共用する記載はないから、請求項の記載に基づかない主張である。 また、仮に、これが、押圧力を電圧に変換できるという「圧電素子」を用いたという主張であれば、上記<引用文献3:特開2005-196310号公報>も、上記摘記のとおり、同様に、「圧電素子」(圧電膜)を利用するものである。そもそも、本願の請求項に「押圧検出素子」も、その機能、特性も記載はないから、請求項の記載に基づかない主張である。 (なお、念のため、たとえ、本願発明の「制御部」が、「面積」を介さず、触感呈示部を制御し、電圧閾値を変更するものであるという主張であるとしても、押圧力を電圧に変換できる点は、慣用される「圧電素子」等が本来備える機能であって(必要ならば、<特開平11-212725号公報>の段落【0016】「…圧電素子などが、力学的作用と電気信号とを双方向で変換可能な機能手段(以下、「双方向機能手段」)であることに着目する。すなわち、このような双方向機能手段においては、電気信号を印加すれば振動などの力学的反応を生じる一方、この双方向機能手段に押圧力を加えると電圧などの電気的反応を生じる。」、段落【0140】「…圧電素子E1?E4の出力電圧からはトータルな操作力Fだけを演算すればよい。」、段落【0159】-【0160】「…単位機能手段としては、(1)圧電素子、(2)電磁ソレノイドとプランジャーとの組合せ、(3)電磁石と永久磁石の組合せ、など種々のものが使用可能である。……圧電素子を利用する場合においてもセラミック系の圧電素子のほか、圧電フィルムなどを使用してもよい。…」、<国際公開第2011/99361号>の段落[0034]「…荷重検出部12は、例えば、歪みゲージセンサや圧電素子等の荷重に対して反応する素子を用いて構成する。触感呈示部13は、タッチセンサ11を振動させるもので、例えば、圧電素子を用いて構成する。」、段落[0055]「第2実施の形態において、制御部16は、第1段階の入力受け付けた後、荷重検出部12が、第1の入力解除荷重基準Fr1を満たし、かつ、第2の入力受付荷重基準Fa2を満たしていない押圧荷重を所定時間連続して検出すると、t2の時点で検出している押圧荷重Aと、第1の入力解除荷重基準Fr1から第2の入力受付荷重基準Fa2までの間隔をBから、新たに第1の入力解除荷重基準(変更後の第1の入力解除荷重基準)Fr’1(Fr’1=A-B/2)を設定すると共に、新たに第2の入力受付荷重基準(変更後の第2の入力受付荷重基準)Fa’2(Fa’2=A+B/2)設定する。このように、第1の入力解除荷重基準および第2の入力受付荷重基準をt2の時点において荷重検出部12が検出している押圧荷重に基づき新たに設定することにより、t3の時点で、荷重検出部12により変更前の第1の入力解除荷重基準Fr1に達する押圧荷重が検出されたとしても、第1段階の入力の受け付けが解除されることはない。」、<国際公開第2012/1860号>の段落[0032]-[0033]「…その後、触感呈示制御部14は、圧電素子13の出力電圧を定期的に取得して、タッチセンサ11にかかる押下荷重を検出する(S201)。そして、触感呈示制御部14は、押下荷重がパラメータテーブルに設定されている押下閾値に達したのを検知すると(S203)、圧電素子13に対してパラメータテーブルに設定されている押下振動パターンを出力する(S205)。…また、触感呈示制御部14は、振動通知後、引き続き圧電素子13の出力電圧を監視して、タッチセンサ11にかかる押下荷重を検出する。…」、の記載を参照。)、引用発明は「押圧面積」を検出するものであるが、引用例は、一貫して、「押圧面積」によって、「弱い押圧力」、「強い押圧力」などの「押圧力に基づく押圧面積に応じた複数段階の入力を、操作者の操作ごとに異なる押圧力にて受け付けることができる入力装置を提供すること」を課題としていることを考慮すれば、「押圧面積」により「押圧力」を検出する引用発明に、慣用される押圧力を電圧に変換できる「圧電素子」等を採用する点に、格別の困難性は認められない。) 6.むすび したがって、本願発明は、引用発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-05-26 |
結審通知日 | 2016-05-31 |
審決日 | 2016-06-13 |
出願番号 | 特願2013-553273(P2013-553273) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩橋 龍太郎 |
特許庁審判長 |
高瀬 勤 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 山澤 宏 |
発明の名称 | 電子機器及び電子機器の制御方法 |
代理人 | 杉村 憲司 |