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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1317648
審判番号 不服2015-11380  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-17 
確定日 2016-08-25 
事件の表示 特願2013-182021「画像処理装置および方法、記録媒体、並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月 9日出願公開、特開2014- 3695、請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年7月31日に出願した特願2009-179395号の一部を、数次の分割を経て平成25年9月3日に新たな特許出願としたものであって、平成26年6月23日(起案日)付けで拒絶の理由が通知され、それに応答して平成26年8月18日付けで手続補正がなされたが、平成27年3月12日(起案日)付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成27年6月17日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたが、その後当審において、平成28年4月26日(起案日)付けで最初の拒絶理由が通知され、それに応答して平成28年6月27日付けで手続補正がなされたものである。

第2.本願の特許請求の範囲に係る発明
本願の請求項1ないし24に係る発明は、平成27年6月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし24(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)を、平成28年6月27日付けの手続補正で補正した特許請求の範囲の請求項1ないし24(以下、「補正後の特許請求の範囲」という。)に記載された事項により特定されるものであり、その補正前及び補正後の特許請求の範囲は、それぞれ以下のとおりのものである(アンダーラインは補正箇所)。

(補正前の特許請求の範囲)
「 【請求項1】
画像データに対するフィルタ処理の実行制御において用いられる、クアッドツリー構造の画素ブロック毎に前記フィルタ処理を行うかを制御するブロック制御データと、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行うか、前記処理対象のスライスの境界を超えないで前記フィルタ処理を行うかを制御するスライス制御データとを生成する生成部と、
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成する符号化部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データは、所定のシンタックスとして前記符号化ストリームに含まれる
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記スライス制御データは、前記符号化ストリームのスライスヘッダに含まれる
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成部により生成された前記ブロック制御データと前記スライス制御データとに応じて、前記画素ブロックに前記フィルタ処理を行うフィルタ部をさらに備え、
前記フィルタ部は、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行う場合、前記画素ブロックに含まれる全ての画素に対して前記フィルタ処理を行うように構成される
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成部により生成された前記ブロック制御データと前記スライス制御データとに応じて、前記画素ブロックに前記フィルタ処理を行うフィルタ部をさらに備え、
前記フィルタ部は、処理対象のスライスの境界を越えないで前記フィルタ処理を行う場合、前記画素ブロックに含まれる境界以外の画素に対して前記フィルタ処理を行うように構成される
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記生成部により生成された前記ブロック制御データと前記スライス制御データとに応じて、前記画素ブロックに前記フィルタ処理を行うフィルタ部をさらに備え、
前記フィルタ部により前記フィルタ処理された画像をディスプレイに表示させるディスプレイ制御部
をさらに備える請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成する符号化部と、
前記符号化部により生成された符号化ストリームをスペクトラム拡散処理する変調部と
をさらに備える請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
ユーザの操作により終話および電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各処理部に対して電力を供給することにより動作可能な状態に起動する電源部
をさらに備える請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
被写体を撮像して得られた画像信号を、Y,Cr,Cbの画像データに変換する信号処理部をさらに備え、
前記生成部は、前記信号処理部により生成されたY,Cr,Cbの画像データについて、前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを生成するように構成される
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記生成部が生成した、前記信号処理部により生成されたY,Cr,Cbの画像データについての前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成する符号化部と、
前記信号処理部により生成されたY,Cr,Cbの画像データ、または、前記符号化部により生成された符号化ストリームを記憶する記憶部と
をさらに備える請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記記憶部から読み出された前記符号化データを伝送する伝送部
をさらに備える請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
画像データに対するフィルタ処理の実行制御において用いられる、クアッドツリー構造の画素ブロック毎に前記フィルタ処理を行うかを制御するブロック制御データと、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行うか、前記処理対象のスライスの境界を超えないで前記フィルタ処理を行うかを制御するスライス制御データとを生成し、
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームをさらに生成する
画像処理方法。
【請求項13】
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを、所定のシンタックスとして前記符号化ストリームに含める
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項14】
前記スライス制御データを、前記符号化ストリームのスライスヘッダに含める
請求項13に記載の画像処理方法。
【請求項15】
生成された前記ブロック制御データと前記スライス制御データとに応じて、前記画素ブロックに前記フィルタ処理を行い、
処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行う場合、前記画素ブロックに含まれる全ての画素に対して前記フィルタ処理を行う
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項16】
生成された前記ブロック制御データと前記スライス制御データとに応じて、前記画素ブロックに前記フィルタ処理を行い、
処理対象のスライスの境界を越えないで前記フィルタ処理を行う場合、前記画素ブロックに含まれる境界以外の画素に対して前記フィルタ処理を行う
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項17】
生成された前記ブロック制御データと前記スライス制御データとに応じて、前記画素ブロックに前記フィルタ処理を行い、
前記フィルタ処理された画像をディスプレイに表示させる
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項18】
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成し、
生成された符号化ストリームをスペクトラム拡散処理する
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項19】
ユーザの操作により終話および電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各処理部に対して電力を供給することにより動作可能な状態に起動する
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項20】
被写体を撮像して得られた画像信号を、Y,Cr,Cbの画像データに変換し、
生成されたY,Cr,Cbの画像データについて、前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを生成する
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項21】
生成されたY,Cr,Cbの画像データについての前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成し、
生成されたY,Cr,Cbの画像データ、または、生成された符号化ストリームを記憶する
請求項20に記載の画像処理方法。
【請求項22】
記憶された前記符号化データを読み出して伝送する
請求項21に記載の画像処理方法。
【請求項23】
コンピュータを、
画像データに対するフィルタ処理の実行制御において用いられる、クアッドツリー構造の画素ブロック毎に前記フィルタ処理を行うかを制御するブロック制御データと、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行うか、前記処理対象のスライスの境界を超えないで前記フィルタ処理を行うかを制御するスライス制御データとを生成する生成部と、
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成する符号化部
として機能させるプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【請求項24】
コンピュータを、
画像データに対するフィルタ処理の実行制御において用いられる、クアッドツリー構造の画素ブロック毎に前記フィルタ処理を行うかを制御するブロック制御データと、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行うか、前記処理対象のスライスの境界を超えないで前記フィルタ処理を行うかを制御するスライス制御データとを生成する生成部と、
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成する符号化部
として機能させるプログラム。」

(補正後の特許請求の範囲)
「 【請求項1】
画像データに対するフィルタ処理の実行制御において用いられる、クアッドツリー構造の画素ブロック毎に前記フィルタ処理を行うかを制御するブロック制御データと、処理対象画素がスライス境界付近の場合に、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行うか、前記処理対象のスライスのデータのみで前記フィルタ処理を行うかを制御するスライス制御データとを生成する生成部と、
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成する符号化部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データは、所定のシンタックスとして前記符号化ストリームに含まれる
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記スライス制御データは、前記符号化ストリームのスライスヘッダに含まれる
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成部により生成された前記ブロック制御データと前記スライス制御データとに応じて、前記画素ブロックに前記フィルタ処理を行うフィルタ部をさらに備え、
前記フィルタ部は、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行う場合、前記画素ブロックに含まれる全ての画素に対して前記フィルタ処理を行うように構成される
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成部により生成された前記ブロック制御データと前記スライス制御データとに応じて、前記画素ブロックに前記フィルタ処理を行うフィルタ部をさらに備え、
前記フィルタ部は、処理対象のスライスの境界を越えないで前記フィルタ処理を行う場合、前記画素ブロックに含まれる境界以外の画素に対して前記フィルタ処理を行うように構成される
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記生成部により生成された前記ブロック制御データと前記スライス制御データとに応じて、前記画素ブロックに前記フィルタ処理を行うフィルタ部をさらに備え、
前記フィルタ部により前記フィルタ処理された画像をディスプレイに表示させるディスプレイ制御部
をさらに備える請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成する符号化部と、
前記符号化部により生成された符号化ストリームをスペクトラム拡散処理する変調部と
をさらに備える請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
ユーザの操作により終話および電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各処理部に対して電力を供給することにより動作可能な状態に起動する電源部
をさらに備える請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
被写体を撮像して得られた画像信号を、Y,Cr,Cbの画像データに変換する信号処理部をさらに備え、
前記生成部は、前記信号処理部により生成されたY,Cr,Cbの画像データについて、前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを生成するように構成される
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記生成部が生成した、前記信号処理部により生成されたY,Cr,Cbの画像データについての前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成する符号化部と、
前記信号処理部により生成されたY,Cr,Cbの画像データ、または、前記符号化部により生成された符号化ストリームを記憶する記憶部と
をさらに備える請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記記憶部から読み出された前記符号化データを伝送する伝送部
をさらに備える請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
画像データに対するフィルタ処理の実行制御において用いられる、クアッドツリー構造の画素ブロック毎に前記フィルタ処理を行うかを制御するブロック制御データと、処理対象画素がスライス境界付近の場合に、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行うか、前記処理対象のスライスのデータのみで前記フィルタ処理を行うかを制御するスライス制御データとを生成し、
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームをさらに生成する
画像処理方法。
【請求項13】
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを、所定のシンタックスとして前記符号化ストリームに含める
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項14】
前記スライス制御データを、前記符号化ストリームのスライスヘッダに含める
請求項13に記載の画像処理方法。
【請求項15】
生成された前記ブロック制御データと前記スライス制御データとに応じて、前記画素ブロックに前記フィルタ処理を行い、
処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行う場合、前記画素ブロックに含まれる全ての画素に対して前記フィルタ処理を行う
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項16】
生成された前記ブロック制御データと前記スライス制御データとに応じて、前記画素ブロックに前記フィルタ処理を行い、
処理対象のスライスの境界を越えないで前記フィルタ処理を行う場合、前記画素ブロックに含まれる境界以外の画素に対して前記フィルタ処理を行う
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項17】
生成された前記ブロック制御データと前記スライス制御データとに応じて、前記画素ブロックに前記フィルタ処理を行い、
前記フィルタ処理された画像をディスプレイに表示させる
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項18】
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成し、
生成された符号化ストリームをスペクトラム拡散処理する
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項19】
ユーザの操作により終話および電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各処理部に対して電力を供給することにより動作可能な状態に起動する
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項20】
被写体を撮像して得られた画像信号を、Y,Cr,Cbの画像データに変換し、
生成されたY,Cr,Cbの画像データについて、前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを生成する
請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項21】
生成されたY,Cr,Cbの画像データについての前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成し、
生成されたY,Cr,Cbの画像データ、または、生成された符号化ストリームを記憶する
請求項20に記載の画像処理方法。
【請求項22】
記憶された前記符号化データを読み出して伝送する
請求項21に記載の画像処理方法。
【請求項23】
コンピュータを、
画像データに対するフィルタ処理の実行制御において用いられる、クアッドツリー構造の画素ブロック毎に前記フィルタ処理を行うかを制御するブロック制御データと、処理対象画素がスライス境界付近の場合に、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行うか、前記処理対象のスライスのデータのみで前記フィルタ処理を行うかを制御するスライス制御データとを生成する生成部と、
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成する符号化部
として機能させるプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【請求項24】
コンピュータを、
画像データに対するフィルタ処理の実行制御において用いられる、クアッドツリー構造の画素ブロック毎に前記フィルタ処理を行うかを制御するブロック制御データと、処理対象画素がスライス境界付近の場合に、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行うか、前記処理対象のスライスのデータのみで前記フィルタ処理を行うかを制御するスライス制御データとを生成する生成部と、
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成する符号化部
として機能させるプログラム。」

第3.原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
本願の請求項1ないし26に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(引用文献)
引用文献1.Takeshi Chujoh et al., “Specification and experimental results of Quadtree-based Adaptive Loop Filter”, ITU - Telecommunications Standardization Sector STUDY GROUP 16 Question 6 Video Coding Experts Group (VCEG) VCEG-AK22(r1), ITU-T, 2009年4月18日, p.1-11
引用文献2.特開2005-033336号公報
引用文献3.国際公開第2008/060127号
引用文献4.特開2007-235886号公報
引用文献5.国際公開第2009/044475号
引用文献6.特開2005-039633号公報
引用文献7.特開2009-077454号公報

(1)請求項1について
引用文献1には、QALFによりフィルタリングを行うことが開示されている。
一方、引用文献2-4には、いずれにも、スライス境界を越えてフィルタリングを行うか否かをシグナリングすることが開示されている。
引用文献1-4に記載の発明のいくつかを、適宜組み合わせて、請求項1に係る発明をなすことは、当業者であれば容易になし得たことである。

(2)請求項2ないし12について
スライスヘッダにより、フィルタに関する情報(例えば、フィルタのON/OFFを示す情報等)をシグナリングすることは、引用文献1、引用文献2、引用文献3、引用文献4等に開示・示唆されているし、また、当業者にとってよく用いられる周知技術でもある。
全ての画素に対してフィルタリングを行うことは、引用文献2、引用文献3、引用文献4に開示又は示唆されているし、また、一般に、当業者にとって、よく用いられる周知技術でもある。
境界以外の画素に対してフィルタリングを行うことは、引用文献2、引用文献3、引用文献4、引用文献5に開示又は示唆されているし、また、一般に、当業者にとって、よく用いられる周知技術でもある。
フィルタリングした画像をディスプレイに表示させることは、一般に、当業者にとって、よく用いられる周知技術である。
符号化ストリームをスペクトラム拡散処理する変調部を設けることは、引用文献6に開示されているし、また、一般に、当業者にとって、よく用いられる周知技術でもある。
終話及び電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給することは、引用文献7に記載されている。
Y,Cb,Crの画像データに変換することは、引用文献1に開示・示唆されているし、また、一般に、当業者にとって、よく用いられる周知技術でもある。
符号化ストリームを記憶したり伝送することは、引用文献2に開示・示唆されているし、また、一般に、当業者にとって、よく用いられる周知技術でもある。
ブロックやスライスに関連する制御データを符号化ストリームに含めることは、当業者にとって、よく用いられる周知技術である。

(3)請求項13ないし26について
請求項1ないし12と同様である。

2.原査定の理由の判断
(1)請求項1に係る発明について
(1-1)請求項1に係る発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、上記第2の(補正後の特許請求の範囲)の請求項1に記載した事項により特定される次のとおりのものである。

(本願発明1)
画像データに対するフィルタ処理の実行制御において用いられる、クアッドツリー構造の画素ブロック毎に前記フィルタ処理を行うかを制御するブロック制御データと、処理対象画素がスライス境界付近の場合に、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行うか、前記処理対象のスライスのデータのみで前記フィルタ処理を行うかを制御するスライス制御データとを生成する生成部と、
前記ブロック制御データおよび前記スライス制御データを含む符号化ストリームを生成する符号化部と
を備える画像処理装置。

(1-2)引用文献の記載事項
a.原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である「Specification and experimental results of Quadtree-based Adaptive Loop Filter」(四分木ベースの適用ループフィルタの仕様と実験結果)の「1. Introduction」と「2. Quadtree-based Adaptive Loop Filter」の「2.1. Overview of QALF」(「1.序論」と「2.四分木ベースの適応ループフィルタ」の「2.1.QALFの概要」)及びFigure1ないしFigure3には、次に掲げる事項が記載されている(なお、括弧内に当審で作成した日本語仮訳を添付する)。

「1. Introduction
At several previous VCEG meetings, we have proposed adaptive loop filters based on Weiner filter [1]-[4]. QALF (Quadtree-based Adaptive Loop Filter) applies a filter to variable-size blocks in the decoded picture in order to reduce coding error, and provides a signaling scheme to indicate whether the variable-size block is filtered by using a quadtree data structure. In this contribution, we present the detailed specification of QALF for the implementation of KTA Software version 2.3 and report the experimental results.
Our simulation results show an average of 7.27% bitrate reduction for the VCEG common test conditions [5] and an average of 8.75% bitrate reduction for HD VCEG sequences.

2. Quadtree-based Adaptive Loop Filter
2.1. Overview of QALF
Figure 1 depicts the block diagram of codec with QALF. The encoding process of QALF restores the decoded image to the original image based on Weiner filter slice by slice. The filter Information is encoded in the slice header. Syntax, semantics and decoding process to support QALF are described in Annex A.
Although Weiner filter can restore the decoded image to the original image globally, there are degraded pixels locally. Since the degraded areas reduce the predictive efficiency, if these areas are not filtered, the capabilities of image restoration and loop filtering are improved. QALF introduces a signaling scheme to indicate whether the luminance variable-size block is filtered by using a quadtree data structure. There is a well-known binary representation for the quadtree data structure as shown in Figure 2. Each leaf indicates a block and each node has four branches. Each leaf is coded “0” and each node is coded “1”. Each leaf has a filter block flag whether filtering process is applied the block. Figure 3 shows an example of filter on-off pattern.

Figure 1 Block diagram of codec with QALF

Figure 2 An example of quadtree data structure for block partitioning.

Figure 3 An example of filter on-off pattern, where blue blocks are filter-on.」


(1.序論
以前の数回のVCEGの会議において、私たちはウィナーフィルタに基づく適応ループフィルタを提案している[1]-[4]。符号化誤差を低減するために、復号画像における可変サイズのブロックのフィルタにQALF(四分木ベースの適応ループフィルタ)を適用し、可変サイズのブロックが、四分木データ構造を用いてフィルタリングされるかどうかを示すシグナリング方式を提供します。この寄稿では、我々はKTAソフトウェアバージョン2.3の実装のためQALFの詳細な仕様を提示し、実験結果を報告します。
我々のシミュレーション結果は、VCEG共通試験条件[5]について平均7.27パーセントのビットレート削減と、HD VCEGシーケンスについて平均8.75パーセントのビットレート削減を示します。

2.四分木ベースの適応ループフィルタ
2.1.QALFの概要
図1はQALFを有する符号化器のブロック図を示します。QALFの符号化プロセスは、スライス毎に、ウィナーフィルタに基づいて、復号画像を原画像に復元します。フィルタ情報は、スライスヘッダに符号化されます。QALFをサポートするための、構文、意味および復号化処理は、附属書Aに記載されています。
ウィナーフィルタは、グローバルに復号画像を原画像に復元することができますが、劣化したピクセルが局所的に存在します。劣化した領域は予測効率を低下させるので、これらの領域がフィルタリングされない場合には、画像復元とループフィルタリングの機能は改善されます。QALFは、輝度可変サイズブロックが四分木データ構造を用いてフィルタリングされるかどうかを示すシグナリング方式を導入します。図2に示すように、四分木データ構造のための周知のバイナリ表現が存在します。各リーフはブロックを示し、各ノードは4つの分岐を有します。各リーフは「0」を符号化し、各ノードは「1」を符号化します。各リーフは、フィルタリング処理をブロックに適用するか否かのフィルタブロックフラグを持っています。図3は、フィルタのオン/オフパターンの一例を示す図です。

図1 QALFを有する符号化器のブロック図。

図2 ブロック分割のための四分木データ構造の一例。

図3 フィルタのオン/オフパターンの例、青色のブロックは、フィルタはオンされている。)

b.同じく、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2である特開2005-33336号公報には、「動画像符号化装置、動画像符号化方法及び動画像符号化プログラム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0006】
図2に示すようにH.264では1つまたは複数のマクロブロックから構成されるスライス単位に独立して符号化する機能が備えられている(図2において、フレーム画像201には、4つのスライス201?205が含まれる)。各スライスはスライスヘッダおよび1つまたは複数のマクロブロックから構成されており、スライス内のマクロブロックは他のスライスに属するマクロブロックの情報を用いた予測を行わずに符号化される。したがって、あるフレームの圧縮符号化データにエラーが混入した場合でも、当該フレームにおいて次に検出されるスライスヘッダから始まるスライス以降のマクロブロックはエラーの影響を受けずに正常に復号することができる。」

「【0012】
また、ループ内フィルタについては、エラーが混入したことによって正しく復号できなかった第一のスライスとそれに隣接するエラーのない第二スライスにおいて、スライス間のループ内フィルタの処理により、正常に復号されるべき第二のスライスの画像もフィルタリングの結果に歪が生じてしまう。したがって、ループ内フィルタを用いると、エラー耐性能力は低下してしまうため、ループフィルタとスライス構造を同時に用いる場合には、スライス構造を用いることによるエラー耐性能力向上というメリットが低下してしまう。このように、複数の符号化手段が存在する場合、それらを組み合わせて使用する場合には、適切な組み合わせでなければエラー耐性能力や画質、符号化効率などが不必要に低下してしまう。」

「【0040】
図9は本実施の形態におけるループ内フィルタの模式図を示す。ループ内フィルタは、後続する画像を符号化するための参照画像としてフレームメモリに格納する前に再生された現時刻の画像にフィルタをかけることをいう。ループ内フィルタはブロックの境界にかけてブロック歪を軽減する。画質向上するには、スライスの境界をまたがってフィルタをかけることが望ましい。図9の画像901は4つのスライス902?905に分割されている。円形領域920を拡大したものが拡大円形領域906である。マクロブロック909にある画素907に垂直方向にフィルタをかけるにはマクロブロック909内にある画素913に加えて隣のスライスにある画素912をも用いる。同様に画素908に水平方向にフィルタをかけるには画素914に加えて隣のスライスにある画素915をも用いる。このような処理はスライス境界をまたがるフィルタという。一方、スライス境界をまたがらないフィルタは、スライス内にある画素だけでフィルタを行うことをいう。ここでは、処理の対象となる画素を含めて7つのタップのフィルタを用いるが、これに限ることではない。また一次元の分離フィルタを用いているが、2次元のフィルタを用いてもよい。
【0041】
このようにして符号化された画像データは、次の特徴を有する。すなわち、エラー強化ツールを示すシンタクスが「オン」(本実施の形態では、ITU-T勧告H.264のシンタクスであるnum_slice_groups_minus1は0以外の値をとる)のときは、スライスをまたがるフィルタリングを示すシンタクスが「オフ」(本実施の形態では、ITU-T勧告H.264のシンタクスであるdisable_deblocking_filter_idcは0以外の値をとる)となる。また、スライスをまたがるフィルタリングを示すシンタクスが「オン」(本実施の形態では、ITU-T勧告H.264のシンタクスであるdisable_deblocking_filter_idcは0の値をとる)となるときは、エラー強化ツールを示すシンタクスが「オフ」(本実施の形態では、ITU-T勧告H.264のシンタクスであるnum_slice_groups_minus1は0の値をとる)となる。なお、本実施の形態では、エラー強化ツールを示すシンタクスが「オフ」のときに、スライスをまたがるフィルタリングを示すシンタクスが「オフ」または「オン」であってもよい。同様に、スライスをまたがるフィルタリングを示すシンタクスが「オフ」のときに、エラー強化ツールを示すシンタクスが「オフ」または「オン」であってもよい。」

c.同じく、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3である国際公開第2008/060127号には、「METHOD AND APPARATUS FOR DECODING/ENCODING A VIDEO SIGNAL」(発明の名称:ビデオ信号のデコーディング/エンコーディング方法及び装置)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(なお、括弧内に当審で作成した日本語仮訳を添付する)。

「 First of all, according to an embodiment of the present invention, an encoder may not transfer information associated with inter-layer prediction by checking configuration information of the scalable-video-coded bit stream. The configuration information of the scalable- video-coded bit stream can be obtained from an extension area of NAL header. For instance, information associated with an operation of a deblocking filter can be obtained in accordance ith information (no_inter_layer_pred_flag) indicating whether inter-layer prediction is used and quality identification information (quality_id) (810) . As examples of the information associated with the operation of the deblocking filter, there may exist information (disable_deblocking_filter_idc) indicating an operational method of the deblocking filter, offset information (slice_alpha_cO_offset_div2, slice_beta_offset_div2) required for deblocking filtering, and the like.
First of all, it is able to obtain the information indicating the operational method of the deblocking filter based on information for controlling characteristics of the deblocking filter. In this case, as mentioned in the description of FIG. 2, the information for controlling characteristics of the deblocking filter can be obtained from the extension area of the sequence parameter set. For instance, as the information for controlling characteristics of the deblocking filter, there may exist flag information (inter_layer_deblocking_filter_control_present_ flag) indicating whether there exists the information for controlling characteristics of the deblocking filter for inter-layer prediction (820) . Hence, the information indicating the operational method of the deblocking filter is able to be obtained in accordance with the flag information (830).
In particular, if disable_deblocking_filter_idc = 0, filtering can be carried out on all block edges of luminance and chrominance signals of a current picture. If disable_deblocking_filter_idc = 1, filtering may not be carried out on all block edges of a current picture. disable_deblocking_filter_idc = 2, filtering can be carried out on all block edges except block edges having slice boundary overlapped. If disable_deblocking_filter_idc = 3, filtering is carried out on a block edge having a slice boundary not overlapped and then filtering is carried out on block edges having a slice boundary overlapped. If disable_deblocking_filter_idc = 4, filtering is carried out on a block edge of a luminance signal only but may not be carried out on a block edge of a chrominance signal. If disable_deblocking_filter_idc = 5, filtering is carried out on all block edges of luminance signal except block edges having a slice boundary overlapped and may not be carried out on a block edge of a chrominance signal. If disable_deblocking_filter_idc = 6, filtering is not carried out on a block edge of a chrominance signal but may be carried out on a block edge of a luminance signal only. After filtering has been carried out on a block edge of a luminance signal having a slice boundary not overlapped, filtering can be carried out on block edges of a luminance signal having a slice boundary overlapped.」(第38頁第22行?第41頁第8行)
(まず、本発明の実施例では、スケーラブルビデオコーディングされたビットストリームの属性情報を確認することによって、エンコーダはレイヤ間予測に関連した情報を転送しなくてもよい。スケーラブルビデオコーディングされたビットストリームの属性情報は、NALヘッダの拡張領域から得ることができる。例えば、レイヤ間予測が用いられるか否かを示す情報(no_inter_layer_pred_flag)とクオリティ識別情報(quality_id)(810)によって、デブロッキングフィルタの動作に関連した情報を得ることができる。デブロッキングフィルタの動作に関連した情報の例としては、デブロッキングフィルタの動作方法を示す情報(disable_deblocking_filter_idc)、デブロッキングフィルタリング時に必要なオフセット情報(slice_alpha_c0_offset_div2,slice_beta_offset_div2)などがある。
まず、デブロッキングフィルタの動作方法を示す情報は、デブロッキングフィルタの特性を制御する情報に基づいて得ることができる。この場合、図2で説明したように、デブロッキングフィルタの特性を制御する情報は、シーケンスパラメータセットの拡張領域から得ることができる。例えば、デブロッキングフィルタの特性を制御する情報として、レイヤ間予測のためのデブロッキングフィルタの特性を制御する情報が存在するか否かを示すフラグ情報(inter_layer_deblocking_filter_Control_present_flag)(820)がある。ゆえに、このフラグ情報(830)によってデブロッキングフィルタの動作方法を示す情報を得ることができることとなる。
具体的には、disable_deblocking_filter_idc=0の場合、現在ピクチャの全ての輝度信号と色差信号のブロックエッジに対してフィルタリングを行うことができる。disable_deblocking_filter_idc=1の場合には、現在ピクチャの全てのブロックエッジに対してフィルタリングを行わなくても良い。また、disable_deblocking_filter_idc=2の場合には、スライス境界が重なるブロックエッジを除外した全てのブロックエッジに対してフィルタリングを行うことができる。disable_deblocking_filter_idc=3の場合には、まず、スライス境界が重ならないブロックエッジに対してフィルタリングを行った後、続いてスライス境界が重なるブロックエッジに対してフィルタリングを行うことができる。disable_deblocking_filter_idc=4の場合には、輝度信号のブロックエッジに対してのみフィルタリングを行い、色差信号のブロックエッジに対してはフィルタリングを行わなくても良い。disable_deblocking_filter_idc=5の場合には、スライス境界が重なるブロックエッジを除外した全ての輝度信号のブロックエッジに対してフィルタリングを行い、色差信号のブロックエッジに対してはフィルタリングを行わなくても良い。disable_deblocking_filter_idc=6の場合には、色差信号のブロックエッジに対してはフィルタリングを行わずに輝度信号のブロックエッジに対してのみフィルタリングを行うことができる。まず、スライス境界が重ならない輝度信号のブロックエッジに対してフィルタリングを行った後、続いてスライス境界が重なる輝度信号のブロックエッジに対してフィルタリングを行うことができる。)

d.同じく、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4である特開2007-235886号公報には、「動画像符号化方法、動画像復号方法、動画像符号化装置、動画像復号装置、フィルタ装置及びプログラム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0034】
MPEG-2/4等の動画像符号化では、特に、低ビットレートで符号化する場合に復号画像にブロック歪が発生する場合がある。以降の画像の符号化の際には、このブロック歪を含んだ復号画像を動き補償で参照するため、以降の画像にもブロック歪の影響による画質劣化が伝播してしまう問題があった。
【0035】
そこで、H.264では、復号画像を動き補償で参照するために、フレームメモリに格納する前に、符号化によって発生したブロック歪等の歪を低減するフィルタ(「ループ内フィルタ」という)を適用する技術が採用された。」

「【0041】
ループ内フィルタの動作は、スライス単位で切り替えることが可能である。ここで、スライスとは、整数個数のMBの集合である。
【0042】
フィルタ処理の動作を制御するため、H.264ビットストリームには、スライス毎にパラメータdisable_deblocking_filter_idcを記録出来る。
【0043】
disable_deblocking_filter_idcが記録されていない場合には、disable_deblocking_filter_idcの値は0として扱う。
【0044】
disable_deblocking_filter_idcが0の場合には、該当スライス内の全てのブロック境界に対してフィルタ処理を適用する。
【0045】
disable_deblocking_filter_idcが1の場合には、該当スライス内のブロック境界に対してはフィルタ処理を行わない。
【0046】
また、disable_deblocking_filter_idcが2の場合には該当スライス内の、スライス境界を除く全てのブロック境界に対してフィルタ処理を適用する。」

e.同じく、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5である国際公開第2009/044475号には、「動画像符号化方法、動画像復号方法、動画像符号化装置、動画像復号装置、フィルタ装置及びプログラム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「[0017] このような漏れこみを防止するために、図22に示した例では、スライス分割機能を、リフレッシュ領域と未リフレッシュ領域との境界に適用して、スライス境界に対してのみデブロッキングフィルタ処理を行わないようにする。例えば、フレーム11の場合、マクロブロックライン11aとマクロブロックライン群11bとの境界をスライス分割し、スライス境界11sに対してのみデブロッキングフィルタ処理を行わない。同様にして、フレーム12の場合、スライス境界12sに対してのみデブロッキングフィルタ処理を行わない。」

f.同じく、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6である特開2005-039633号公報には、「無線親機及び無線子機」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0004】
図5の無線親機10Aの動作について説明する。無線親機10Aは、外部からの映像信号を入力する。入力された映像信号は、映像信号エンコード部400Aにおいて所定の形式に圧縮され符号化される。通常、映像信号を伝送する際には、データ伝送量の削減、クロック情報の伝送等の目的でMPEG2-TS形式(Moving Picture Experts Group 2 - Transport Stream)を用いてエンコードする。ここでエンコードされた映像信号はMPEG2-TSパケットの形式でパケット化される。
MPEG2-TSパケットは、時間情報生成部900Aに入力され所定のタイムスタンプを付加される。タイムスタンプが付加されたMPEG2-TSパケットは、通信プロトコル処理部600Aに入力され、所定の通信プロトコルに基づいてさらにパケット化され伝送に必要なヘッダが付加される。ここでの通信プロトコルには、信頼性のあるデータ伝送を実現するTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)や、ストリームデータの伝送に適したUDP/IP(User Datagram Protocol/Internet Protocol)等が用いられ、MPEG2-TSパケットは、IPパケット(Internet Protocol)の形式にパケット化される。
【0005】
IPパケットは、MAC処理部700Aに入力され、所定の無線通信方式に基づいたMACパケットとして組み立てられる。MACパケットの構成はIEEE802.11等の無線LAN規格で規定された方式が用いられる。
MACパケット形式に組み立てられたデータは、RF部800Aに入力される。RF部800Aでは所定の変調を行い、所定の周波数の電波としてアンテナ30Aを介してデータを送出する。ここでの変調方式は、直交変調とスペクトラム拡散あるいはOFDM等が用いられる。周波数は2.4GHz帯や5GHz帯等が用いられる。このようにして入力された映像信号は所定の方式で無線通信回線上に送出される。」

g.同じく、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7である特開2009-077454号公報には、「動画像復号化方法、動画像復号化装置および記録媒体」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0125】
電源回路部ex310は、ユーザの操作により終話及び電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給することによりカメラ付ディジタル携帯電話ex115を動作可能な状態に起動する。」

(1-3)引用文献に記載された発明及び技術事項
a.引用文献1に記載された発明
引用文献1の上記記載によれば、引用文献1には、ウィナーフィルタに基づく可変サイズのブロックのQALF(四分木ベースの適応ループフィルタ)を、デブロッキングフィルタに加えて設けた符号化器に関する発明が記載されている。
QALFの符号化プロセスは、スライス毎に行われ、フィルタ情報はスライスヘッダに符号化される。
そして、可変サイズのブロックがフィルタリングされるかどうかを示す情報が、四分木データ構造を用いてシグナリングされる。
すなわち、四分木データ構造を用いた可変サイズのブロックがフィルタリングされるかどうかを示す情報が、スライスヘッダに符号化される。

以上のことから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明1)
ウィナーフィルタに基づく可変サイズのブロックのQALF(四分木ベースの適応ループフィルタ)を、デブロッキングフィルタに加えて設けた符号化器であって、
QALFの符号化プロセスはスライス毎に行われ、
四分木データ構造を用いた可変サイズのブロックがフィルタリングされるかどうかを示す情報がスライスヘッダに符号化される
符号化器。

b.引用文献2に記載された技術事項
引用文献2の上記記載によれば、引用文献2には、『スライス毎に復号化処理を行うことでエラー耐性能力を強化するものにおいて、ブロックの境界の歪みを軽減するループ内フィルタのフィルタリングを制御する技術であって、マクロブロック内にある画素に加えて隣のスライスにある画素をも用いるスライスの境界をまたがるフィルタリングを行うか、スライス内にある画素だけでフィルタリングを行うかを示すシンタックス(disable_deblocking_filter_idc)を設定する技術』が記載されている。

c.引用文献3に記載された技術事項
引用文献3の上記記載によれば、引用文献3には、『全てのブロックエッジに対してフィルタリングを行うか、スライス境界が重なるブロックエッジを除外した全てのブロックエッジに対してフィルタリングを行うかを示すデブロッキングフィルタの動作を示す情報(disable_deblocking_filter_idc)を設定する技術』が記載されている。

d.引用文献4に記載された技術事項
引用文献4の上記記載によれば、引用文献4には、『スライス単位で切り替えることが可能なブロック歪等の歪を低減するループ内フィルタの動作を制御するためのパラメータであって、スライス内の全てのブロック境界に対してフィルタ処理を適用するか、スライス境界を除く全てのブロック境界に対してフィルタ処理を適用するかを示すパラメータ(disable_deblocking_filter_idc)を設定する技術』が記載されている。

e.引用文献5に記載された技術事項
引用文献5の上記記載によれば、引用文献5には、『スライス境界に対してのみデブロッキングフィルタ処理を行わない技術』が記載されている。

f.引用文献6に記載された技術事項
引用文献6の上記記載によれば、引用文献6には、『映像信号を圧縮、符号化しパケット化した後、スペクトラム拡散により変調して送信する技術』が記載されている。

g.引用文献7に記載された技術事項
引用文献7の上記記載によれば、引用文献7には、『終話及び電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給するカメラ付ディジタル携帯電話』が記載されている。

(1-4)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「ウィナーフィルタに基づく可変サイズのブロックのQALF(四分木ベースの適応ループフィルタ)」に関する「四分木データ構造を用いた可変サイズのブロックがフィルタリングされるかどうかを示す情報」は、『画像データに対するフィルタ処理の実行制御において用いられる』情報といえる。
したがって、引用発明1の「四分木データ構造を用いた可変サイズのブロックがフィルタリングされるかどうかを示す情報」は、本願発明1の「画像データに対するフィルタ処理の実行制御において用いられる、クアッドツリー構造の画素ブロック毎に前記フィルタ処理を行うかを制御するブロック制御データ」に相当するものである。
そして、引用発明1の符号化器は、当該情報を生成するものであることは明らかであるから、当該情報を生成する生成部を有しているものといる。

引用発明1の符号化器は、当該情報をスライスヘッダに符号化するものである。
当該情報をスライスヘッダに符号化するということは、画像符号化の技術分野における慣用技術を鑑みれば、当該情報を有するスライスヘッダを含む符号化ストリームを生成していることは明らかであり、符号化器はそのための符号化部を有しているものといえる。

また、引用発明1の符号化器は、本願発明1の「画像処理装置」に相当する。

以上のことから、引用発明1は、「画像データに対するフィルタ処理の実行制御において用いられる、クアッドツリー構造の画素ブロック毎に前記フィルタ処理を行うかを制御するブロック制御データを生成する生成部と、前記ブロック制御データを含む符号化ストリームを生成する符号化部とを備える画像処理装置」という点において本願発明1と一致する。

ただし、「生成部」に関し、本願発明1は「ブロック制御データ」の他に「処理対象画素がスライス境界付近の場合に、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行うか、前記処理対象のスライスのデータのみで前記フィルタ処理を行うかを制御するスライス制御データ」を生成するものであるのに対し、引用発明1は、そのような構成を有していない点、及び、「符号化部」に関し、本願発明1は「ブロック制御データ」の他に「スライス制御データ」含む符号化ストリームを生成するものであるのに対し、引用発明1は、そのような構成を有していない点において、両者は相違する。

上述した対比結果をまとめると、本願発明1と引用発明1との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
画像データに対するフィルタ処理の実行制御において用いられる、クアッドツリー構造の画素ブロック毎に前記フィルタ処理を行うかを制御するブロック制御データを生成する生成部と、
前記ブロック制御データを含む符号化ストリームを生成する符号化部と
を備える画像処理装置。

[相違点]
「生成部」に関し、本願発明1は「ブロック制御データ」の他に「処理対象画素がスライス境界付近の場合に、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行うか、前記処理対象のスライスのデータのみで前記フィルタ処理を行うかを制御するスライス制御データ」を生成するものであるのに対し、引用発明1は、そのような構成を有していない点、及び、「符号化部」に関し、本願発明1は「ブロック制御データ」の他に「スライス制御データ」含む符号化ストリームを生成するものであるのに対し、引用発明1は、そのような構成を有していない点。

(1-5)相違点についての判断
引用文献2には、上記(3)b.において示したように、ブロックの境界の歪みを軽減するループ内フィルタ、すなわち、デブロッキングフィルタの制御に関し、マクロブロック内にある画素に加えて隣のスライスにある画素をも用いるスライスの境界をまたがるフィルタリングを行うか、スライス内にある画素だけでフィルタリングを行うかを示す制御データを設定する技術が記載されている。

一方、引用発明1の「ウィナーフィルタに基づく可変サイズのブロックのQALF(四分木ベースの適応ループフィルタ)」は、「デブロッキングフィルタ」に加えて設けられた雑音除去を主な目的とするフィルタであって、隣接するブロック間の境界において生じる歪みを除去するためのフィルタであり、一般的には隣接するブロックの画素のデータを用いてフィルタリングを行う「デブロッキングフィルタ」とは性質の異なるフィルタである。

そして、引用発明1は、スライス毎に「QALF(四分木ベースの適応ループフィルタ)」のフィルタ処理を行うものであるが、引用文献1の記載をみても、「QALF(四分木ベースの適応ループフィルタ)」のスライスの境界付近の画素のフィルタ処理に注目した記載はなく、スライスの境界付近の画素に対して、どのようなフィルタ処理をすべきであるかという技術的な課題は、記載も示唆もされていない。

以上のことを総合すると、引用文献2に記載される技術を当業者が知っていたとしても、引用発明1が備える「デブロッキングフィルタ」に、引用文献2記載の「デブロッキングフィルタ」についての技術を適用することは当業者が容易に想到し得ることであるものの、引用発明1の「デブロッキングフィルタ」とは異なる「QALF(四分木ベースの適応ループフィルタ)」に対し、引用文献2記載の「デブロッキングフィルタ」についての技術を適用することは、当業者が容易に想到し得るものではない。
すなわち、引用発明1において、相違点に係る「生成部」で「処理対象画素がスライス境界付近の場合に、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行うか、前記処理対象のスライスのデータのみで前記フィルタ処理を行うかを制御するスライス制御データ」を生成し、「符号化部」で「スライス制御データ」含む符号化ストリームを生成するものとすることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。

また、上記(3)c.ないしg.において示したように、引用文献3及び4には、全てのブロック境界に対してフィルタリングを行うか、スライス境界が重なるブロック境界を除外した全てのブロック境界に対してフィルタリングを行うかを示すデブロッキングフィルタの動作を示す情報を設定すること、引用文献5には、スライス境界に対してのみデブロッキングフィルタ処理を行わないこと、引用文献6には、映像信号を圧縮、符号化しパケット化した後、スペクトラム拡散により変調して送信すること、引用文献7には、終話及び電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給するカメラ付ディジタル携帯電話が記載されているのみであり、上述した引用発明1及び引用文献2記載の技術に基づく本願発明1の進歩性の判断に影響を及ぼすものではない。

(1-6)小括
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)請求項2ないし24に係る発明について
本願の請求項2ないし11に係る発明は請求項1を直接的または間接的に引用する発明であり、請求項12に係る発明は、請求項1の装置の発明と同様の構成を有する方法の発明であり、請求項13ないし22に係る発明は請求項12を直接的または間接的に引用する発明である。そして、請求項23に係る発明は、請求項1の装置の発明と同様の構成を有するコンピュータが読み取り可能な記録媒体の発明であり、請求項24に係る発明は、請求項1の装置の発明と同様の構成を有するプログラムの発明である。
したがって、本願の請求項2ないし24に係る発明は、本願発明1と同様に、引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第4.当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。



請求項1の記載における「処理対象のスライスの境界を越えてフィルタ処理を行う」、及び「処理対象のスライスの境界を超えないでフィルタ処理を行う」という処理は、発明の詳細な説明に記載のない表現であり、その処理の定義は明確でない。
請求項1と同等の記載がある請求項12,23,24、請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2?11、及び請求項12を直接的または間接的に引用する請求項13?22にも、同様の不備が存在する。

2.当審拒絶理由の判断
平成28年6月27日付けの手続補正書によって、請求項1,12,23及び24は「処理対象画素がスライス境界付近の場合に、処理対象のスライスの境界を越えて前記フィルタ処理を行うか、前記処理対象のスライスのデータのみで前記フィルタ処理を行うかを制御する」と補正され、請求項1ないし24は、発明の詳細な説明に記載されたものとなり、明確となった。
よって、当審拒絶理由は解消した。

第5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし24に係る発明は、原査定の拒絶理由によっては拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-15 
出願番号 特願2013-182021(P2013-182021)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04N)
P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長谷川 素直堀井 啓明  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 清水 正一
渡辺 努
発明の名称 画像処理装置および方法、記録媒体、並びにプログラム  
代理人 西川 孝  
代理人 稲本 義雄  

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