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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1317687
審判番号 不服2014-22037  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-30 
確定日 2016-08-03 
事件の表示 特願2009-546480「頭上ケーブル終端装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月24日国際公開、WO2008/089192、平成22年 5月20日国内公表、特表2010-517077〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年1月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年1月19日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成20年 1月15日 国際出願
平成21年 7月21日 手続補正書
平成24年 3月28日 拒絶理由通知(平成24年 4月 3日発送)
平成24年 8月 3日 意見書・手続補正書
平成25年 6月 4日 拒絶理由通知(平成25年 6月11日発送)
平成25年12月11日 意見書・手続補正書
平成26年 6月23日 拒絶査定(平成26年 7月 1日謄本送達)
平成26年10月30日 本件審判請求
平成27年 5月28日 拒絶理由通知(平成27年 6月 2日発送)
平成27年12月 2日 意見書・手続補正書

第2 本願発明について
1 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成27年12月 2日付けの手続補正による特許請求の範囲の請求項1?43に記載されている事項により特定されるものであるところ、その請求項18に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項18】
a)頭上ケーブル経路構造物と、
b)該頭上ケーブル経路構造物に搭載されるケーブル終端デバイスであって、
i)複数のアダプタと、
ii)該頭上ケーブル経路構造物から該複数のアダプタまでケーブルを導く曲面を有するケーブル経路出口を含むケーブル終端デバイスと、を備える、頭上ケーブル管理システムであって、
前記曲面は、ケーブルが最小限の曲げ半径を越えてしまうのを防ぐ半径を有する、
頭上ケーブル管理システム。」

第3 当審拒絶理由通知書の理由1について
1 引用文献1の記載事項、及び引用発明1
(1) 当審による平成27年5月28日付け拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書」という。)で引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2004/0228599号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図とともに、次の記載がある(当審注:下線は、当審が付与した。)。

ア 「 FIELD OF THE INVENTION
[0001] The invention pertains to a system for the management and routing of optical fiber cables.」

(日本語訳:
発明の分野
[0001] 本発明は、光ファイバケーブルの管理とルーティングのためのシステムに関する。)

イ 「SUMMARY OF THE INVENTION
[0006] According to preferred embodiments of the present invention, a cable routing system is disclosed for routing optical fiber cables between optical transmission equipment. The system includes a lateral trough section configured for defining a cable pathway. An exit trough is mountable to the lateral trough section to provide a cable exit pathway from the lateral trough section. The exit trough includes a bracket portion mountable to a top edge of the lateral trough section. Two curved lead-ins on opposite ends of the bracket portion each define a cable pathway leading to an exit trough portion extending from a middle of the bracket portion in a direction away from the lateral trough section. The exit trough portion includes a convexly curved bottom trough surface, and two convexly curved upstanding sides on opposite sides of the bottom trough surface. The exit trough defines a cable pathway leading upwardly and away from the lateral trough section. The exit trough is mountable to the lateral trough section without modification to the lateral trough section. The exit trough can be placed generally at any location along the lateral trough section, and can be placed during initial system setup, or at a later time as the need arises for an exit pathway from the lateral trough section, such as when new optical transmission equipment is added to the system. At least one fastener secures the bracket portion to the lateral trough section. The exit trough may include a downspout portion defining a downwardly directed cable pathway, or a horizontal portion defining a horizontally directed cable pathway, or other directional pathway as desired.」

(日本語訳:
発明の要約
[0006] 本発明の好適な実施形態によれば、ケーブルルーティングシステムは、光伝送装置間で光ファイバケーブルを配線するために開示されています。システムは、ケーブル経路を定義するために構成された横トラフセクションを含みます。出口トラフは、横トラフセクションからケーブル出口経路を提供するために、横トラフ部分に装着可能です。出口トラフは、横トラフセクションの上端に装着ブラケット部を含んでいます。ブラケット部の両端にある2つの湾曲したリードインが、横トラフセクションから離れる方向に、ブラケット部の中央から延びる出口トラフ部分までのケーブル経路を、それぞれ定義します。出口トラフ部分は、凸状に湾曲した底部トラフ面、及び底部トラフ面の反対側にある2つの凸状に湾曲した直立側部を含みます。出口トラフは、横トラフセクションから上方に離れるケーブル経路を定義します。出口トラフは、横トラフセクションに変更することなく、横トラフセクションに装着可能です。出口トラフは、横トラフセクションに沿った任意の位置で一般的に配置することができ、システムの初期セットアップ中に配置することができ、または、新しい光伝送装置がシステムに追加されるときなど、横トラフセクションからの出口経路の必要性が生じた後で配置することができる。少なくとも1つの締結具は、横トラフセクションにブラケット部を保護します。出口トラフは、下向きケーブル経路を規定する縦樋部分、または水平方向のケーブルの経路を規定する水平部、または必要に応じて他の方向の経路を規定する部分を含むことができます。)

ウ 「DETAILED DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENTS
[0023] Referring now to FIGS. 1-8 , a first embodiment of an exit trough 100 is shown mounted to a lateral trough section 20 . Lateral trough section 20 defines a cable pathway 22 for routing optical fiber cables between locations. Lateral trough section 20 and exit trough 100 can be part of a cable routing system typically within a structure, such as a building having optical fiber signal transmitting equipment. Lateral trough section 20 typically is suspended from a ceiling structure by any suitable means (not shown). U.S. Pat. Nos. 5,067,678 and 5,316,243 disclose various cable routing systems, including lateral trough sections like lateral trough section 20 illustrated in FIGS. 1-8 . Exit trough 100 is not only usable with lateral trough section 20 shown in FIGS. 1-8 , but also with other cable routing systems disclosed in U.S. Pat. Nos. 5,067,678 and 5,316,243, the disclosures of which are hereby incorporated by reference, and other cable routing systems.
[0024]
・・・
[0028] Exit trough 100 includes an exit trough portion 144 extending from bracket portion 102 at middle 120 away from lateral trough section 20 . Exit trough portion 144 includes a bottom trough surface 146 and upstanding sides 148 , 150 on opposite sides of bottom trough surface 146 . Generally bottom trough surface 146 extends upwardly and away from top edge 30 of lateral trough section 20 , and includes a convex shape. Upstanding sides 148 , 150 extend from each respective lead-in 124 , 134 , and also define convex shapes. Exit trough portion 144 defines a cable pathway 152 linked to cable pathway 22 of lateral trough section 20 via cable pathways 130 , 140 of lead-ins 124 , 134 .
[0029] In exit trough 100 , exit trough portion 144 links lateral trough section 20 to a downspout 160 . Downspout 160 generally provides a cable pathway for cable exiting in a downward direction relative to lateral trough section 20 . Downspout 160 is supported by two side ribs 164 and a center rib 166 connected to bracket portion 104 b.
[0030] With exit trough 100 mounted to lateral trough section 20 , cable extending generally horizontally to the ground through lateral trough section 20 is allowed to route upwardly and away from lateral trough section 20 , and then to route downwardly through downspout 160 for connection to optical transmission equipment, or other uses. Downspout 160 is connectable via any suitable means to other cable routing components, such as vertical troughs or conduit, as desired. The various curves provided with exit trough 100 help protect the optical fiber cables from being bent beyond a minimum radius of curvature. 」

(日本語訳:
好ましい実施形態の詳細な説明
[0023] 図1-8を参照します。出口トラフ100の第1の実施形態は、横トラフセクション20に取り付けられて示されています。横トラフセクション20は、光ファイバケーブルを場所間に配線するためのケーブル経路22を定義します。横トラフセクション20と出口トラフ100は、光ファイバの信号伝送装置を有する建物のように、典型的には、構造内のケーブルルーティングシステムの一部とすることができます。横トラフセクション20は、典型的には、任意の適切な手段(図示せず)によって天井構造から吊り下げられています。米国特許番号5067678および5316243は、図1-8に示す横トラフセクション20のような横トラフセクションを含む様々なケーブルルーティングシステムを開示しています。出口トラフ100は、図1-8に示す横トラフセクション20だけではなく、本明細書中で参考として開示が援用される米国特許番号5067678及び5316243に開示されている他のケーブルルーティングシステムや、他のケーブルルーティングシステムにも使用可能です。
[0024]
・・・
[0028] 出口トラフ100は、横トラフセクション20から離れて、中央120でブラケット部102から延びる出口トラフ部分144を含みます。出口トラフ部分144は、底部トラフ面146と、底部トラフ面146の対向する側部に直立側面148、150を含みます。一般的に底部トラフ面146は、横トラフセクション20の上端30から離れて上向きに延びており、凸形状を有しています。直立側面148、150は、それぞれのリードイン124、134から延び、また、凸形状を定義します。出口トラフ部分144は、リードイン124、134のケーブル経路130、140によって、横トラフセクション20のケーブル経路22に連結されたケーブル経路152を定義します。
[0029] 出口トラフ100において、出口トラフ部分144は、横トラフセクション20と縦樋160とを連結します。縦樋160は、一般的に横トラフセクション20に対して下方向に出たケーブル用のケーブルの経路を提供します。縦樋160は、両側のリブ164とブラケット部104bに接続された中央リブ166によって支持されています。
[0030] 横トラフセクション20に搭載された出口トラフ100によって、一般的に横トラフセクション20を介してグランドに水平に延びるケーブルは、横トラフセクション20から離れて上向きに配線することができ、光伝送装置との接続のために縦樋160を介して下方に配線することができ、または他の使用ができる。必要に応じて、縦樋160は、任意の適切な手段を介して、垂直トラフまたは導管のような他のケーブルルーティング要素に接続可能です。出口トラフ100の様々な湾曲部は、光ファイバケーブルが最小曲率半径を超えて曲げられることから保護するのに役立ちます。)

エ 本発明の好ましい一実施形態における、横トラフセクション及びそれに取り付けられた出口トラフの上面、前面、及び左側面斜視図を示す図1は、次のものである。


オ 第一の実施形態における、底面、後面、及び右側斜視図を示す図2は、次のものである。


(2) 引用発明1

ア 上記(1)ア及び上記(1)ウの記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているといえる。

「天井構造から吊り下げられ、ケーブル経路22を定義する横トラフセクション20と、
前記横トラフセクション20に取り付けられる出口トラフ100と、を備え、
前記出口トラフ100は、前記横トラフセクション20の前記ケーブル経路22に連結されたケーブル経路152を定義する出口トラフ部分144を含み、
前記出口トラフ部分144は、底部トラフ面146を含み、
前記出口トラフ100の様々な湾曲部は、光ファイバケーブルが最小曲率半径を超えて曲げられることから保護するのに役立つ、
光ファイバケーブルの管理とルーティングのためのシステム。」

イ 上記(1)イの記載から、上記アの「底部トラフ面146」は、「凸状に湾曲した底部トラフ面146」であるといえる。

ウ 以上より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「天井構造から吊り下げられ、ケーブル経路22を定義する横トラフセクション20と、
前記横トラフセクション20に取り付けられる出口トラフ100と、を備え、
前記出口トラフ100は、前記横トラフセクション20の前記ケーブル経路22に連結されたケーブル経路152を定義する出口トラフ部分144を含み、
前記出口トラフ部分144は、凸状に湾曲した底部トラフ面146を含み、
前記出口トラフ100の様々な湾曲部は、光ファイバケーブルが最小曲率半径を超えて曲げられることから保護するのに役立つ、
光ファイバケーブルの管理とルーティングのためのシステム。」

2 対比
(1) 本願発明と引用発明1を対比する。

ア 引用発明1の「天井構造から吊り下げられ、ケーブル経路22を定義する横トラフセクション20」と、
本願発明の「a)頭上ケーブル経路構造物」とを対比する。
(ア) 引用発明1の「横トラフセクション20」は、「天井構造から吊り下げられ」るものであるから、「頭上」の「構造物」であるといえる。
(イ) また、引用発明1の「横トラフセクション20」は、「ケーブル経路22を定義する」ものである。
(ウ) してみれば、引用発明1の「横トラフセクション20」は、本願発明の「頭上ケーブル経路構造物」に相当する。

イ 引用発明1の「前記横トラフセクション20に取り付けられる出口トラフ100」と、
本願発明の「b)該頭上ケーブル経路構造物に搭載されるケーブル終端デバイス」とを対比すると、
両者は、「該頭上ケーブル経路構造物に搭載されるデバイス」である点で一致する。

ウ 引用発明1の「凸状に湾曲した底部トラフ面146を含」む、「前記横トラフセクション20の前記ケーブル経路22に連結されたケーブル経路152を定義する出口トラフ部分144」と、
本願発明の「該頭上ケーブル経路構造物から該複数のアダプタまでケーブルを導く曲面を有するケーブル経路出口」とを対比する。
(ア) 引用発明1の「出口トラフ部分144」は、「ケーブル経路152を定義する」ものであるから、本願発明の「ケーブル経路出口」に相当する。
(イ) 引用発明1の「凸状に湾曲した底部トラフ面146」は、「ケーブル経路152を定義する出口トラフ部分144」に含まれるものであるから、本願発明の「ケーブルを導く曲面」に相当する。
(ウ) してみれば、両者は、「該頭上ケーブル経路構造物からケーブルを導く曲面を有するケーブル経路出口」である点で一致する。

エ 引用発明1の「光ファイバケーブルの管理とルーティングのためのシステム」と、
本願発明の「頭上ケーブル管理システム」とを対比する。
(ア) 引用発明1の「光ファイバケーブルの管理・・・システム」は、「天井構造から吊り下げられ・・・る横トラフセクション20」を備えるものであるから、「頭上」の「光ファイバケーブルの管理・・・システム」であるといえる。
(イ) してみれば、両者は相当関係にある。

(2) 以上のことから、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

一致点:
「a)頭上ケーブル経路構造物と、
b)該頭上ケーブル経路構造物に搭載されるデバイスであって、
該頭上ケーブル経路構造物からケーブルを導く曲面を有するケーブル経路出口を含むデバイスと、を備える、
頭上ケーブル管理システム。」

相違点1-1:
「頭上ケーブル経路構造物に搭載されるデバイス」は、
本願発明では、「複数のアダプタ」と、「頭上ケーブル経路構造物から該複数のアダプタまでケーブルを導く曲面を有するケーブル経路出口」を含む「ケーブル終端デバイス」であるのに対し、
引用発明1の「出口トラフ100」は、複数のアダプタを備えず、「横トラフセクション20の前記ケーブル経路22に連結されたケーブル経路152を定義する出口トラフ部分144」を含み、「出口トラフ部分144は、凸状に湾曲した底部トラフ面146」を含むものの、「凸状に湾曲した底部トラフ面146」は、複数のアダプタまでケーブルを導くものではない点。

相違点1-2:
「曲面」は、
本願発明では、「ケーブルが最小限の曲げ半径を越えてしまうのを防ぐ半径を有する」のに対し、
引用発明1では、そのようなものであるのか否か明らかでない点。

3 判断
以下、上記相違点1-1?1-2について検討する。

(1) 相違点1-1について検討する。
ア 一般に、光ファイバケーブルを、コネクタやアダプタを用いて、他の光ファイバケーブルと接続することは、本願優先日時点で技術常識であって、引用発明1の「光ファイバケーブル」も、必要に応じて、他の光ファイバケーブルと接続するものであるといえる。

イ ケーブル経路構造物に搭載されるデバイスであって、複数のコネクタを備えるデバイスは、本願優先日時点で周知の技術(必要ならば、当審拒絶理由通知書で引用した、米国特許第5271585号明細書(特に第4欄第58行?第5欄第26行、Fig.15-18)、米国特許第2209560号明細書(特に明細書第1頁左欄第33?35行、同頁第49?54行、Fig. 1)、実願平2-60660号(実開平4-21121号)のマイクロフィルム(特に第6図)、特開2005-218265号公報(特に【0034】、図1、10)参照。)(以下「周知技術1」という。)である。

ウ してみれば、引用発明1の「光ファイバケーブル」を、他の光ファイバケーブルと接続するために、上記周知技術1を採用することに、困難性はない。
そして、このとき、コネクタとして、異なる種類のコネクタを互いに接続するための「変換コネクタ」である「アダプタ」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%82%BF)を用いることは、当業者が適宜選択しうる程度の事項にすぎない。
そうすると、引用発明1において、上記周知技術1を採用し、上記相違点1-1に係る本願発明1の発明特定事項となすことに、格別の困難性はない。

(2) 相違点1-2について検討する。
ア 引用発明1の「前記出口トラフ100の様々な湾曲部」は、「光ファイバケーブルが最小曲率半径を超えて曲げられることから保護するのに役立つ」ものである。

イ そして、引用発明1の「凸状に湾曲した底部トラフ面146」は、「出口トラフ100の・・・湾曲部」であるから、「光ファイバケーブルが最小曲率半径を超えて曲げられることから保護するのに役立つ」ものであるところ、「光ファイバケーブルが最小曲率半径を超えて曲げられることから保護する」半径を有するものであるといえる。

ウ してみれば、引用発明1は、上記相違点1-2に係る本願発明の発明特定事項を実質的に備えているといえる。
よって、上記相違点1-2は実質的な相違点ではない。

(3) 作用効果について
本願明細書の【0014】、【0015】には、ケーブル終端は、ラック内ではなく、ラックより上の位置の空きスペースで行うことによって、貴重なラック・スペースを、より多くの機器に割り当てることができる旨が記載されている。
この点について検討するに、当審拒絶理由通知書で引用した、実願昭62-36243号(実開昭63-142878号)のマイクロフィルム(特に明細書第2頁下から第7行?第4頁第13行、第1?3図)には、キャビネット11裏面に配設されたコネクタパネル17の受けコネクタ17aを介して、電子回路パッケージの架内ケーブル13とケーブルダクト18内のMDFケーブル14と接続すると、キャビネットの占める床面積が大きくなるという問題点が指摘されており、当該問題点を解決するために、架内ケーブル13とMDFケーブル14をキャビネット天井面で直接接続することにより、床面積を縮小できる旨が記載されている。
そして、上記周知技術1は、ケーブル経路構造物に搭載されるデバイスが、複数のコネクタを備えるものであるから、電子回路パッケージと直接接続できる構造であり、床面積を縮小できるという効果を奏することは、明らかである。
してみれば、本願発明の奏する作用効果が格別のものであるとはいえない。

4 小括
以上によれば、本願発明は、当業者が引用発明1及び上記周知技術1に基いて容易に発明をすることができたものである。

第4 当審拒絶理由通知書の理由2について
1 引用文献2の記載事項、及び引用発明2
(1) 当審拒絶理由通知書で引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第5271585号明細書(以下「引用文献2」という。)には、図とともに、次の記載がある(当審注:下線は、当審が付与した。)。

ア 「DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Raceway 1, used to carry fiber optics cables 3, consists of three principal elements, channel members 5, telescope members 15, and a support means. Channel member 5 includes a base 7, sides 9 rising vertically from the base, and inwardly-extending lips 11 along the top edges of the sides. It may also include a series of notches 13 in the sides. It has a generally rectangular, U-shaped cross-section.」(明細書第2欄第45?55行)

(日本語訳:
発明の詳細な説明
光ファイバケーブル3を搬送するために使用される軌道1は、三つの主要素、チャネル部材5、はめ込み部材15と、支持手段からなります。チャンネル部材5は、ベース7と、ベースから垂直に上昇する側面9と、側面の上端部に沿って内向きに延びる縁11とを含んでいます。また、側面に一連のノッチ13を含むことができます。一般的に矩形、U字形の断面を有しています。)

イ 「My raceway can also be suspended from a dropped ceiling 81, as shown in FIGS. 15 and 17. In this instance the channel members 5 and telescope members 15 are assembled as before and are then hung on hangers 85.」(明細書第4欄第58?61行)

(日本語訳:
図15、17に示すように、私の軌道も、吊り天井81から懸架されます。この例では、チャネル部材5と、はめ込み部材15は、以前のように組み立てられ、その後、ハンガー85に掛けられます。)

ウ 「As an additional feature of my invention, a connection box 97 can be attached on one side of the raceway (FIG. 18). The box would have an opening 102 to receive cables 3 and be internally connected to external fiber optic connectors 103 or through FDDI connector mounting slots. The box could have a mounting bracket 99 extending from its base such that it could be clipped to lip 11 with a locking clip 25.」(明細書第5欄第19?26行)

(日本語訳:
私の発明の追加の特徴として、接続ボックス97は、軌道の一方の側に取り付けることができます(図18)。ボックスは、ケーブル3を受け入れる開口部102を有し、外部光ファイバコネクタ103に、またはFDDIコネクタ取付スロットを介して内部接続されます。ボックスは、その基部から延びる取付ブラケット99を有し、ロッククリップ25で縁11に留めることができます。)

エ 「Thus, as can be seen, I have provided a modular system which allows for simple, rapid installation. It is also a system which is flexible in that its configuration can be readily varied from time to time if desired.」(明細書第5欄第47?50行)

(日本語訳:
見てきたように、私は単純、迅速なインストールを可能にするモジュールシステムを提供してきました。また、その構成は、所望であれば容易に随時変更することができるという点で柔軟性のあるシステムです。)

オ 吊り天井の下に取り付けられた軌道の斜視図を示す図15は、次のものである。


カ 軌道に取り付けられたコネクタボックスの斜視図を示す図18は、次のものである。


(2) 引用発明2
ア 上記(1)イ、上記(1)エの記載から、引用文献2には、次の技術事項が記載されているといえる。

「吊り天井81から懸架される軌道1、を備える
モジュールシステム。」

イ 上記(1)アの記載から、上記アの「軌道1」は、「光ファイバケーブル3を搬送するために使用される軌道1」であるといえる。

ウ 上記(1)ウの記載に照らして、上記(1)カの図18を見ると、上記アの「モジュールシステム」は、「軌道の一方の側に取り付け」られ、「複数」の「外部光ファイバコネクタ103」または「FDDIコネクタ取付スロット」を含む「接続ボックス97」を備えるものであるといえる。

エ 以上より、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

「吊り天井81から懸架され、光ファイバケーブル3を搬送するために使用される軌道1と、
前記軌道の一方の側に取り付けられ、複数の外部光ファイバコネクタ103またはFDDIコネクタ取付スロットを含む接続ボックス97と、を備える
モジュールシステム。」

2 対比
(1) 本願発明と引用発明2を対比する。

ア 引用発明2の「吊り天井81から懸架され、光ファイバケーブル3を搬送するために使用される軌道1」と、
本願発明の「a)頭上ケーブル経路構造物」とを対比する。
(ア) 引用発明2の「軌道1」は、「吊り天井81から懸架され」るものであるから、「頭上」の「構造物」であるといえる。
(イ) また、引用発明2の「軌道1」は、「光ファイバケーブル3を搬送するために使用される」ものである。
(ウ) してみれば、引用発明2の「軌道1」は、本願発明の「頭上ケーブル経路構造物」に相当する。

イ 引用発明2の「前記軌道の一方の側に取り付けられ、複数の外部光ファイバコネクタ103またはFDDIコネクタ取付スロットを含む接続ボックス97」と、
本願発明の「b)該頭上ケーブル経路構造物に搭載されるケーブル終端デバイス」とを対比する。
(ア) 引用発明2の「接続ボックス97」は、「複数の外部光ファイバコネクタ103またはFDDIコネクタ取付スロットを含む」ものであるところ、「光ファイバケーブル3」は、「複数の外部光ファイバコネクタ103またはFDDIコネクタ取付スロット」に接続されて終端するものであるといえる。
(イ) してみれば、両者は、相当関係にある。

ウ 引用発明2の「複数の外部光ファイバコネクタ103またはFDDIコネクタ取付スロット」と、
本願発明の「複数のアダプタ」とを対比する。
(ア) 一般に、「アダプタ」とは、異なる種類のコネクタを互いに接続するための「変換コネクタ」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%82%BF)である。
(イ) してみれば、両者は、「複数のコネクタ」である点で一致する。

エ 引用発明2の「モジュールシステム」と、
本願発明の「頭上ケーブル管理システム」とを対比する。
(ア) 引用発明2の「モジュールシステム」は、「吊り天井81から懸架され、光ファイバケーブル3を搬送するために使用される軌道1」を備えるものであるから、「頭上」の「光ファイバケーブル3」を搬送する「モジュールシステム」であるとえいる。
(イ) してみれば、両者は相当関係にある。

(2) 以上のことから、本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。

一致点:
「a)頭上ケーブル経路構造物と、
b)該頭上ケーブル経路構造物に搭載されるケーブル終端デバイスであって、
複数のコネクタを含むケーブル終端デバイスと、を備える、
頭上ケーブル管理システム。」

相違点2-1:
「複数のコネクタ」は、
本願発明では、「複数のアダプタ」であるのに対し、
引用発明2の「複数の外部光ファイバコネクタ103またはFDDIコネクタ取付スロット」は、そのような特定がされるものではない点。

相違点2-2:
「ケーブル終端デバイス」は、
本願発明では、「該頭上ケーブル経路構造物から該複数のアダプタまでケーブルを導く曲面を有するケーブル経路出口を含」み、「前記曲面は、ケーブルが最小限の曲げ半径を越えてしまうのを防ぐ半径を有する」のに対し、
引用発明2の「接続ボックス97」は、そのような「ケーブルを導く曲面を有するケーブル経路出口」を備えるものではない点。

3 判断
以下、上記相違点2-1?2-2について検討する。

(1) 相違点2-1について検討する。
引用発明2の「外部光ファイバコネクタ103またはFDDIコネクタ取付スロット」として、異なる種類のコネクタを互いに接続するための「変換コネクタ」である「アダプタ」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%82%BF)を用いることは、当業者が適宜選択しうる程度の事項にすぎない。

(2) 相違点2-2について検討する。
ア 引用文献2の図18から、「軌道1」に搬送される「光ファイバケーブル3」の方向(軌道1に沿う方向)と、「外部光ファイバコネクタ103」の方向(軌道1から外側に向かう方向)とは、異なることが見てとれるところ、引用発明2の「光ファイバケーブル3」は、「接続ボックス97」の内部で曲げ部を有しているといえる。

イ 光ファイバケーブルが最小曲率半径を超えて曲げられることから保護する湾曲部であって、頭上ケーブル経路構造物からケーブルを導く湾曲部を有するケーブル経路出口を含むデバイスは、本願優先日時点で周知の技術(必要ならば、当審拒絶理由通知書で引用した、引用文献1(特に[0030]、Fig. 1-2)、国際公開第02/042098号(特に明細書第4頁第18?21行、第4頁第38行?第5頁第2行、第5頁第24?26行、Fig. 1-2)、米国特許出願公開第2002/0126977号明細書(特に[0033]、Fig. 1-2)参照。)(以下「周知技術2」という。)であるところ、「光ファイバケーブルが最小曲率半径を超えて曲げられることから保護する湾曲部」は、「光ファイバケーブルが最小曲率半径を超えて曲げられることから保護する」半径を有するものであるといえる。

ウ してみれば、引用発明2において、「光ファイバケーブル3」が、「最小曲率半径を超えて曲げられることから保護する」ために、「接続ボックス97」の「開口部102」から「外部光ファイバコネクタ103」まで「光ファイバケーブル3」を導く間に、上記周知技術2の湾曲部を適用することに、格別の困難性はない。

(3) 相違点2-1、相違点2-2について、まとめて検討する。
引用発明2の「外部光ファイバコネクタ103またはFDDIコネクタ取付スロット」として、「アダプタ」を用いるとともに、
「光ファイバケーブル3」が、「最小曲率半径を超えて曲げられることから保護する」ために、上記周知技術2の湾曲部を適用し、
上記相違点2-1及び上記相違点2-2に係る本願発明の発明特定事項となすことに格別の困難性はない。

(4) 作用効果について
本願明細書の【0014】、【0015】には、ケーブル終端は、ラック内ではなく、ラックより上の位置の空きスペースで行うことによって、貴重なラック・スペースを、より多くの機器に割り当てることができる旨が記載されている。
この点について検討するに、当審拒絶理由通知書で引用した、実願昭62-36243号(実開昭63-142878号)のマイクロフィルム(特に明細書第2頁下から第7行?第4頁第13行、第1?3図)には、キャビネット11裏面に配設されたコネクタパネル17の受けコネクタ17aを介して、電子回路パッケージの架内ケーブル13とケーブルダクト18内のMDFケーブル14と接続すると、キャビネットの占める床面積が大きくなるという問題点が指摘されており、当該問題点を解決するために、架内ケーブル13とMDFケーブル14をキャビネット天井面で直接接続することにより、床面積を縮小できる旨が記載されている。
そして、引用発明2の「軌道の一方の側に取り付けられ」る「接続ボックス97」は、「複数の外部光ファイバコネクタ103」を含んでいることから、電子回路パッケージと直接接続できる構造であり、床面積を縮小できるという効果を奏することは、明らかである。
してみれば、本願発明の奏する作用効果が格別のものであるとはいえない。

4 小括
以上によれば、本願発明は、当業者が引用発明2及び上記周知技術2に基いて容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2016-03-04 
結審通知日 2016-03-08 
審決日 2016-03-22 
出願番号 特願2009-546480(P2009-546480)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼ 芳徳  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 星野 浩一
山口 裕之
発明の名称 頭上ケーブル終端装置  
代理人 鶴田 準一  
代理人 森 啓  
代理人 榎原 正巳  
代理人 青木 篤  

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