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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1317688
審判番号 不服2014-25084  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-05 
確定日 2016-08-03 
事件の表示 特願2012-103717「ページング負荷の均衡化およびトラッキングエリアの更新」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月26日出願公開、特開2012-143013〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件特許出願は、平成20年3月7日(パリ条約による優先権主張 平成19年3月8日 米国)を国際出願日とする特願2009-552755号の一部を平成24年4月27日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成24年 4月27日 :上申書
平成25年 3月15日付け:拒絶理由の通知
平成25年 6月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成25年11月22日付け:拒絶理由の通知
平成26年 2月26日 :意見書の提出
平成26年 7月28日付け:拒絶査定
平成26年12月 5日 :審判請求書の提出
平成27年 9月28日付け:拒絶理由の通知
平成28年 1月29日 :意見書、手続補正書の提出


第2.本件発明について

本件特許出願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、平成28年1月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。

「無線送信/受信ユニット(WTRU)において実行される方法であって、
前記WTRUが、ブロードキャストされたシステム情報を受信するステップと、
前記WTRUが、アイドルモードに突入するステップと、
前記WTRUが、前記アイドルモードにあるとき、
前記WTRUが、セル再選択の回数の計数をカウントするステップと、
前記WTRUが、セル再選択の回数の前記計数と前記ブロードキャストされたシステム情報とに基づいて、前記WTRUのモビリティ状態を設定するステップと
を含み、セル再選択の回数の前記計数が第1の閾値より小さい場合、前記モビリティ状態は静止モビリティ状態に設定され、セル再選択の回数の前記計数が前記第1の閾値より大きいが第2の閾値より小さい場合、前記モビリティ状態は低モビリティ状態に設定され、セル再選択の回数の前記計数が前記第2の閾値より大きい場合、前記モビリティ状態は高モビリティ状態に設定される、方法。」


第3.引用文献

1.平成27年9月28日付けの拒絶理由通知書に引用された、特開2003-244741号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ア)「【0002】
【従来の技術】例えば携帯電話機といった移動体通信端末は、複数の基地局それぞれが形成するセルのうちから自局となるものを選択し、無線信号を送受信することで通信する。ここで、W-CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式に対応した移動体通信端末は、例えば待受け中において、自局及び周辺セルにおける無線信号の品質を定期的に測定する。この際、無線信号の品質を測定する対象となる周辺セルの指定などといった、品質測定に関する設定は、自局から報知されたシステム情報に基づいて規定する。
【0003】こうした移動体通信端末は、品質測定の結果を予め定めたセル再選択基準に照らし合わせ、セルの再選択を自律的に行って在圏ゾーンを移行し(ゾーン移行)、自局を切り替えることができる。ここで、セル再選択基準を規定するためのパラメータ群は、自局からのシステム情報により移動体通信端末に報知される。
【0004】ここで、移動体通信ネットワークは、階層的セル構造(HCS;HierarchicalCell Structure)と称されるアルゴリズムを適用して、移動体通信端末がゾーン移行を行う際の基準を規定することがある。このアルゴリズムを適用する際の設定値は、自局からのシステム情報により移動体通信端末に報知される。
【0005】このHCSは、自局からのシステム情報にて、自局及び周辺セルに対してHCS優先度を示す値を割り当て、移動体通信端末が自局を切り替えてゾーン移行する際のセルを再選択する処理にて、このHCS優先度を使用する。HCS優先度は、移動体通信端末がゾーン移行する際に、周辺セルを自局に切り替えるための選択基準を、周辺セルごとに設定するためのものである。すなわち、例えば、移動体通信ネットワークの側で、移動体通信端末によるゾーン移行の際に、優先的な選択が望ましいと判別した周辺セルに対しては、現在の自局よりも高いHCS優先度を割り当てる。一方、劣後的な選択が望ましいと判別した周辺セルに対しては、現在の自局よりも低いHCS優先度を割り当てる。
【0006】また、このHCSを適用する場合には、移動体通信端末が高速で移動しているか否かを判別するための処理を実行することがある。この判別処理に用いるパラメータ群も、自局からのシステム情報により移動体通信端末に報知される。
【0007】この判別処理は、所定の測定満了時間T_CR_MAXが経過するまでの間にセルを再選択してゾーン移行した回数が所定の閾値N_CRを越えたか否かを判別し、越えたと判別した場合に、高速移動状態であるとして、セル再選択基準を変更する。例えば、通常の(非高速移動状態での)セル再選択基準では、HCS優先度がより高いセルをより優先的に選択する。一方で、高速移動状態でのセル再選択基準では、HCS優先度がより低いセルをより優先的に選択する。この場合、移動体通信ネットワークは、移動体通信端末が非高速移動状態にあるときはHCS優先度が高いセルを優先的に選択し、高速移動状態にあるときはHCS優先度が低いセルを優先的に選択するように規定したことになる。
【0008】例えば、図8は、従来の移動体通信端末が高速で移動していることを検出する処理の一例を説明するためのフローチャートである。移動体通信端末は、所定の測定満了時間T_CR_MAXが経過するまでの間にセルを再選択した回数を示す変数V_CRを0として初期化する(ステップS20)。次に、移動体通信端末は、セルの再選択回数を測定する時間を計測するための測定区間タイマを起動し、所定の測定満了時間T_CR_MAXが経過したことを検出可能とする(ステップS21)。
【0009】移動体通信端末は、セル再選択が発生したか否かを判別し(ステップS22)、発生したと判別すると(ステップS22にてYES)、変数V_CRを1だけインクリメントする(ステップS23)。一方、移動体通信端末は、セルの再選択が発生していないと判別すると(ステップS22にてNO)、タイマにより計測された時間が測定満了時間T_CR_MAXを経過したか否かを判別する(ステップS24)。
【0010】移動体通信端末は、測定満了時間T_CR_MAXを経過していないと判別すると(ステップS24にてNO)、処理を上記ステップS22にリターンして、セルの再選択の発生を検出する。一方、移動体通信端末は、測定満了時間T_CR_MAXを経過したと判別すると(ステップS24にてYES)、変数V_CRに示される再選択回数が、所定の閾値N_CRを越えたか否かを判別する(ステップS25)。
【0011】移動体通信端末は、閾値N_CRを越えていないと判別すると(ステップS25にてNO)、処理を上記ステップS20にリターンして、高速での移動を検出する処理を継続する。一方、移動体通信端末は、閾値N_CRを越えたと判別すると(ステップS25にてYES)、高速で移動していることを検出したとして、セル再選択基準を変更するなどの高速移動状態に遷移するための処理を実行する(ステップS26)。」(【0002】?【0011】)

上記(ア)の記載から引用文献1には、

「W-CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式に対応した移動体通信端末は、例えば待受け中において、自局及び周辺セルにおける無線信号の品質を定期的に測定し、移動体通信端末は、品質測定の結果を予め定めたセル再選択基準に照らし合わせ、セルの再選択を自律的に行って在圏ゾーンを移行し(ゾーン移行)、自局を切り替えることができ、移動体通信ネットワークは、階層的セル構造(HCS;HierarchicalCell Structure)と称されるアルゴリズムを適用して、移動体通信端末がゾーン移行を行う際の基準を規定することがあり、このHCSを適用する場合には、移動体通信端末が高速で移動しているか否かを判別するための処理を実行し、この判別処理に用いるパラメータ群は、自局からのシステム情報により移動体通信端末に報知され、この判別処理は、所定の測定満了時間T_CR_MAXが経過するまでの間にセルを再選択してゾーン移行した回数が所定の閾値N_CRを越えたか否かを判別し、越えたと判別した場合に、高速移動状態であるとする、方法。」

が記載されている。(以下「引用発明」という。)


2.平成27年9月28日付けの拒絶理由通知書に引用された、特開平11-298945号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(イ)「(2)移動局の移動速度と位置登録周期との関係は高速(時速50km以上)の移動中は、1分ごと、中速(時速30km以上50km未満)の移動中は、3分ごと、低速(時速10km以上30km未満)の移動中は、5分ごと、であり、さらに、静止(時速10km未満)状態の場合は、10分ごとから、段階的に時間を伸ばしていくものとする。」(【0043】)


第4.本件発明と引用発明の対比

1.引用発明における「移動体通信端末」は、本件発明に係る『無線送信/受信ユニット(WTRU)』に対応する。

2.引用発明においては「移動体通信端末が高速で移動しているか否かを判別するための処理を実行し、この判別処理に用いるパラメータ群は、自局からのシステム情報により移動体通信端末に報知され、」るのであるから、引用発明は「移動体端末は報知されたシステム情報を受信する」ことを備えているといえ、そして、当該「報知」は本件発明でいうところの『ブロードキャスト』に対応する。
してみると、引用発明は本件発明でいうところの『WTRUが、ブロードキャストされたシステム情報を受信するステップ』を備えているといえる。

3.引用発明においては「W-CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式に対応した移動体通信端末は、例えば待受け中において、自局及び周辺セルにおける無線信号の品質を定期的に測定し、移動体通信端末は、品質測定の結果を予め定めたセル再選択基準に照らし合わせ、セルの再選択を自律的に行って在圏ゾーンを移行し(ゾーン移行)、自局を切り替えることができ」るのであるから、「移動体通信端末は待受け中にセルの再選択を自立的に行っている」といえる。

また、引用発明においては「HCSを適用する場合には、移動体通信端末が高速で移動しているか否かを判別するための処理を実行し、この判別処理は、所定の測定満了時間T_CR_MAXが経過するまでの間にセルを再選択してゾーン移行した回数が所定の閾値N_CRを越えたか否かを判別」するのであるから、「移動体通信端末はセルを再選択した回数をカウントしている」といえる。

してみると、引用発明は本件発明でいうところの『WTRUが、前記アイドルモードにあるとき、前記WTRUが、セル再選択の回数の計数をカウントするステップ』を備えているといえる。

4.引用発明における「移動状態」は、本件発明に係る『モビリティ状態』に対応する。

5.引用発明においては「このHCSを適用する場合には、移動体通信端末が高速で移動しているか否かを判別するための処理を実行し、この判別処理に用いるパラメータ群は、自局からのシステム情報により移動体通信端末に報知され、この判別処理は、所定の測定満了時間T_CR_MAXが経過するまでの間にセルを再選択してゾーン移行した回数が所定の閾値N_CRを越えたか否かを判別し、越えたと判別した場合に、高速移動状態であるとする、」のであり、当該「判別処理」は移動体通信端末が行う処理であることは自明であるから、引用発明は「移動体通信端末はセルの再選択の回数と報知されたシステム情報とに基づいて、前記移動体通信端末の移動状態を設定する」ことを備えているといえる。
してみると、引用発明は本件発明でいうところの『WTRUが、セル再選択の回数の前記計数と前記ブロードキャストされたシステム情報とに基づいて、前記WTRUのモビリティ状態を設定するステップ』を備えているといえる。

6.引用発明においては、「セルの再選択回数が所定の閾値N_CRを越えた場合、高速移動状態とする」のであり、これを換言すれば、移動体通信端末は「セルの再選択回数が所定の閾値より大きい場合、高速状態に設定され、前記所定の閾値より小さい場合、非高速状態に設定される」ということが出来る。
してみると、本件発明と引用発明とは『セルの再選択の回数が所定の閾値を超えるか否かによってモビリティ状態が設定される』という上位の概念で一致しているといえる。

上記1.?6.の事項を踏まえると、本件発明と引用発明とは、

「無線送信/受信ユニット(WTRU)において実行される方法であって、
前記WTRUが、ブロードキャストされたシステム情報を受信するステップと、
前記WTRUが、前記アイドルモードにあるとき、
前記WTRUが、セル再選択の回数の計数をカウントするステップと、
前記WTRUが、セル再選択の回数の前記計数と前記ブロードキャストされたシステム情報とに基づいて、前記WTRUのモビリティ状態を設定するステップと
を含み、セルの再選択の回数が所定の閾値を超えるか否かによってモビリティ状態が設定される、方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

[相違点1]
本件発明は『WTRUが、アイドルモードに突入するステップ』との発明特定事項を備えているのに対し、引用発明にはその旨明示されていない点。

[相違点2]
本件発明は『セル再選択の回数の計数が第1の閾値より小さい場合、モビリティ状態は静止モビリティ状態に設定され、セル再選択の回数の計数が前記第1の閾値より大きいが第2の閾値より小さい場合、前記モビリティ状態は低モビリティ状態に設定され、セル再選択の回数の計数が前記第2の閾値より大きい場合、前記モビリティ状態は高モビリティ状態に設定される』のに対し、引用発明においては、移動体通信端末の状態は1種類の閾値を用い、その閾値を超えるか否かによって高速状態又は非高速状態のいずれかに設定される点。


第5.当審の判断

上記相違点について検討する。

[相違点1]について
まず、本件発明でいうところの『WTRUが、アイドルモードに突入するステップ』の意図する内容について検討する。

(1)「WTRU」の状態、モードとして、「待受け状態」を意味する「アイドルモード」と通話中等の「通信中状態」を意味する「アクティブモード」との2つのモードを有することは、例を挙げるまでもなく周知である。
ここで、本件発明においては、WTRUが「アイドルモードに突入するステップを経て「アイドルモード」になると解される。
してみると、上記『WTRUが、アイドルモードに突入するステップ』とは、「WTRUがアクティブモードからアイドルモードになる」ことを意図していると解される。

一方、上記「第4.本件発明と引用発明の対比」の「3.」、「5.」、「6.」で言及したように、引用発明は、
(a)移動体通信端末は待受け中にセルの再選択を自立的に行っており、
(b)移動体通信端末はセルを再選択した回数をカウントし、
(c)移動体通信端末はセルの再選択の回数と報知されたシステム情報と に基づいて、前記移動体通信端末の移動状態を設定し、
(d)移動体通信端末はセルの再選択回数が所定の閾値N_CRを越えた場合 、高速移動状態とする
のであり、移動体通信端末が実行する上記(a)?(d)の処理は「待受け中」、即ち「アイドルモード」でなされるものである。
そして、WTRUのモードとしては、上述したように「アイドルモード」と「アクティブモード」との2つのモードしかないこと、とを考えると引用発明においても移動体通信端末が「待受け中」(即ち「アイドルモード」)の状態になるためには、「アクティブモードからアイドルモードに突入するステップを経てアイドルモードになっている」と解するのが自然である。

してみると、引用発明には、本件発明でいうところの『WTRUが、アイドルモードに突入するステップ』が備わっているといえるので、上記[相違点1]は実質的な相違点とはいえない。

(2) 本件特許出願の発明の詳細な説明中には前記『WTRUが、アイドルモードに突入するステップ』との文言は存在しないものの、「アイドルモード」や「LTE_IDLE状態」との文言は以下の段落に記載されている。

●「許容CSGセルTA IDのTA IDリストには含まれているTA IDであるが、(シグナリングフリーのモビリティの)TA IDのTA ID許容リストには含まれていないTA IDを有するCSGセルを、アイドルモードにあるWTRUが検出した場合には、そのWTRUがこのCSGセルにアクセスしても、このCSGセルに対してアイドルモードセルの選択/再選択を行う際にTAU手順がトリガされる必要があると云える。」(【0027】)
●「CSGセルTA内のすべてのWTRUは、静止または低モビリティと見なされる。したがって、WTRUがLTE_IDLE状態にある場合には、非周期のTAU(no periodic TAU)、または長周期TAU(long periodic TAU)を提案する。」(【0030】)
●「2.セル再選択判定の回数。高モビリティ状態にあるWTRUが、(幹線道路から出る場合のように)その速度を低下しているときには、LTE_IDLE状態におけるモビリティ減少の1つの計測(measurement)は、WTRUによって行われたセル再選択の回数である。」(【0033】)
●「静止状態にあるLTE WTRUは、セル再選択を経てセル境界を越えるという点に関して、動いていないかまたはほとんど動いていない場合には、LTE_IDLE状態における静止である。」(【0038】)
●「低モビリティ状態におけるWTRUは、1つまたは少数のTA(複数TA)もしくは重複するTAのセルに割り当てることができ、LTE_IDLE状態WTRUのTAU負荷および着信コールページング負荷が均衡化されているTAは小さい(つまり、1つのTAが多数のセルをカバーする)。」(【0039】)
●「TAタイマー管理
ほとんどの場合、WTRUがLTE_Active状態にあるとき、ネットワークは、WTRUが実行したに違いないセルアップデート(セル更新)手順を通じてWTRUの位置を認識するであろう。したがって、ネットワークが定期的なアップデートを望まない限り、(タイマーを介して)TAを定期的にアップデートする必要がない場合もありうる。アップデートは、明示的または黙示的のいずれで行われてもよい。代替として、ネットワークは、タイマーに信号を送り、LTE_IDLE状態に遷移するときに、そのタイマーを始動するようWTRUに指示することもできる。」(【0045】)
●「LTE_IDLE状態において、ネットワークにとって、ページング負荷を最小にするために、WTRUの正確なTAレベル情報を持つことが必要となる場合もある。WTRUは、静止、低モビリティ、および高モビリティという異なるモビリティのシナリオにあってもよい。」(【0046】)

これらの記載内容を参酌すると『「セルの検出」、「セルの再選択」、「TAのアップデート」は、いずれも、WTRUがアイドルモード(LTE_IDLE状態)の時に行われる』という以上のことは把握できないといわざるを得ない。

したがって、本件発明において『WTRUが、アイドルモードに突入するステップ』が意図する内容は、「セル再選択の回数の計数をカウントするステップやセル再選択の回数の前記計数と前記ブロードキャストされたシステム情報とに基づいて、前記WTRUのモビリティ状態を設定するステップは、WTRUがアイドルモードの時に実行される」ことを意図しているものと解するのが妥当である。

してみると、上記「第4.本件発明と引用発明の対比」で言及したように引用発明においても「セル再選択の回数の計数をカウントするステップやセル再選択の回数の前記計数と前記ブロードキャストされたシステム情報とに基づいて、前記WTRUのモビリティ状態を設定するステップ」は、本件発明でいうところの「アイドルモード」の時に実行されているのであるから、[相違点1]は実質的な相違点とはいえない。

以上、上記(1)及び(2)のとおり、請求項1の記載からみても、更に、本件特許出願の明細書における記載を参酌してみても[相違点1]は実質的な相違点とはいえない。

[相違点2]について
引用文献2には、上記「第3.引用文献」の2.(イ)で摘記した様に、移動局の位置登録周期を「「高速の移動中」、「中速の移動中」、「低速の移動中」及び「静止状態」という2より多くの種類に区分して、」段階的に伸ばしていく、ことが記載されており、引用発明において、より正確な制御を行うために、「モビリティ状態」に、引用文献2に記載されたように、2よりの多くの区分を設け、その具体的な種類数として3種類を選択することにより、本件発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。また、この際、閾値との比較が複数回必要となり、閾値も2種類必要となることは、当然のことである。
したがって、本件発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本件発明のように構成したことによる効果も引用発明及び引用文献2から予測できる範囲のものである。


第6.むすび

以上のとおり、本件発明は、引用発明及び引用文献2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-07 
結審通知日 2016-03-08 
審決日 2016-03-23 
出願番号 特願2012-103717(P2012-103717)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桑原 聡一  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 吉田 隆之
佐藤 智康
発明の名称 ページング負荷の均衡化およびトラッキングエリアの更新  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 濱中 淳宏  
復代理人 藤木 依子  

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