• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1317728
審判番号 不服2016-304  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-07 
確定日 2016-08-29 
事件の表示 特願2013-506069「携帯端末機のテキスト情報表示方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月27日国際公開、WO2011/132889、平成25年 6月20日国内公表、特表2013-525899、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2011年4月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年4月22日 韓国)を国際出願日とする出願であって、平成27年3月19日付けで拒絶理由が通知され、同年6月30日付けで手続補正がなされ、同年9月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年1月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1-8に係る発明は、平成27年6月30日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
テキスト情報表示方法において、
テキスト情報を構成する文字列のうち一部文字列で構成された少なくとも一つのテキスト情報アイテムが配列されたテキスト情報リストを表示するテキスト情報リストの表示ステップと、
特定キーの入力時、前記少なくとも一つのテキスト情報アイテムをそれぞれ該当テキスト情報を構成する文字列の全体で構成して表示する変更表示ステップと、
を含み、
前記テキスト情報リストは、前記特定キーである第1アイコンを含み、
前記変更表示ステップの表示は、前記第1アイコンを前記テキスト情報リストの表示をさせる第2アイコンに変更し、かつ、前記少なくとも一つのテキスト情報アイテムのそれぞれが、該当テキスト情報を構成する文字列のうち一部文字列で構成された表示をさせる個別アイコンを含む、表示であって、それらの個別アイコンのいずれかが入力されれば、前記第2アイコンを前記第1アイコンに変更する
ことを特徴とするテキスト情報表示方法。」


第3 原査定の理由の概要

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1,8
・引用文献等 1-3
引用文献1の35?44段落、図6A?6Dには、
メッセージ(テキスト情報)の表示方法において(35?44段落)、
メッセージを構成する文字列のうち、最初の数語の抜粋(一部文字列)で構成された少なくとも一つのメッセージサブフォーム(テキスト情報アイテム)が配列されたメッセージリスト(テキスト情報リスト)を表示するメッセージリストの短縮モードの表示のステップと(39?40段落、図6B)、
サブフォームのクリック時、少なくとも一つのメッセージサブフォームをそれぞれ該当メッセージを構成する文字列の全体で構成して表示する拡張モードの表示ステップと(41段落、図6C)、 を含み、
メッセージリストは、特定ボタン(キー)である、「すべてのメッセージを拡張」ボタン634(第1アイコン)を含み(43段落、図6D)、
短縮モードでの表示では、「すべてのメッセージを短縮」ボタン634を、メッセージリストの表示をさせる「すべてのメッセージを拡張」ボタン634(第2アイコン)に変更し(43段落の説明及び図6D→図6Bから自明)、かつ、少なくとも一つのメッセージサブフォームのそれぞれが、メッセージを構成する文字列のうち最初の数語の抜粋で構成された表示をさせる表示であって、いずれかのメッセージサブフォームが短縮モードの表示になれば、「すべてのメッセー-ジを短縮」ボタン634を「すべてのメッセージを拡張」ボタン634に変更する(43段落の説明及び図6B?図6Dから自明)メッセージ表示方法が開示されている。

上記請求項に係る発明と、引用文献1に開示された発明とを対比すると、各メッセージサブフォームを拡張モード又は短縮モードの表示にする個別アイコンが開示されていない点で相違するが、例えば、引用文献2の3?4段落、図9や、引用文献3の77段落、図10A?図10B等に開示されるように、アイコンやタイトル行をクリックすることで、それぞれの個別ウインドウを拡大、縮小させることは、一般的に採用されている周知慣用技術にほかならないから、いずれも当業者が適宜選択し得る設計事項に含まれることである。

<引用文献等一覧>
1.特表2007-531165号公報
2.特開2004-118550号公報(周知技術を示す文献)
3.米国特許出願公開第2009/0307188号明細書(周知技術を示す文献)


第4 当審の判断
1.刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された特表2007-531165号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審において付加した。)


ア.「【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施形態の説明
本発明は、ユーザに対しておよびユーザによって送信されるメッセージを編成して表示する、クライアント-サーバシステムと、対応する方法とに関する。
【0008】
図1は、クライアント-サーバシステムの一実施形態を概略的に示す。システムは、会話管理システム102と、通信ネットワーク106と、複数のクライアント104とを含む。会話は、1つの会話トピックを扱う1つまたは複数の関連するメッセージを含む。以下に記載するように、いずれのメッセージが、それぞれの別個の会話の部分であるかを判定するために、会話トピックを超えた、追加の基準が使用されてもよい。メッセージの送信者および受信者は、会話の参加者である。会話管理システム102のユーザに宛てられたすべてのメッセージは、複数の会話に分類され、会話ベースのフォーマットで、個別に、または一緒に、ユーザに提示される。会話管理システム102の実装に関するより詳細な説明は、後に記載する。
【0009】
クライアント104は、ブラウザ108および会話アシスタント110を含む。ブラウザ108は、会話を表示するために使用されるブラウザウィンドウを有する、汎用のインターネットブラウザ(Webブラウザと呼ばれることもある)であってもよく、または、会話を表示するためのウィンドウを有する、専用のブラウザアプリケーションであってもよい。会話、および会話内のメッセージは、ハイパーテキストマークアップ言語(HTML)を使用して、またはその他の任意の適切な描画方法を使用して、ブラウザ108によって描画されてもよい。ユーザが、自分の個人アカウント内に記憶されたメッセージにアクセスするために、ブラウザ108を介して、会話管理システム102に要求を発行した後、会話管理システム102は、ユーザの要求に従って、ユーザの個人アカウント内の複数の会話を識別し、それらの会話と、1組の表示命令とを、クライアント104に返送する。会話アシスタント110は、それに対応して、表示命令に従った1つまたは複数のフォームを生成する(各フォームは、会話のうちのいくつかの情報を含む)。フォームは、次に、ブラウザ108に発行され、ブラウザ108によって描画される。別の実施形態では、会話アシスタント110は、別法として、会話管理システム102内において存在し動作してもよい。
【0010】
図2は、会話管理システム102によって提供された会話を表示するためのさまざまなフォームを、会話アシスタント110が生成する方法を説明する概要フローチャートである。ステップ202において、複数の会話および関連する表示命令を受信した後、会話アシスタント110は、ステップ204において、ユーザが複数の会話を要求したか、または個別の会話を要求したかを判定する。ユーザが複数の会話を要求する場合、会話アシスタント110は、ステップ206において、会話リストのホストとなる(hosts a list of conversations)フォームを生成する(各会話はフォーム内の1つの行を占める)。フォーム内の各行について、会話アシスタント110は、ステップ208において、表示命令に従って、1組の列と、表示されるべき関連する特徴とをさらに生成する。列内の情報および関連する特徴が描画される方法についてのさらなる詳細は、図3Aおよび図3Bと組み合わせて、後に記載する。
【0011】
ユーザが個別の会話を要求する場合、会話アシスタント110は、ステップ210において、会話に関連付けられた一連のメッセージのホストとなる、別個のフォームを生成する。ステップ212において、会話アシスタント110は、各メッセージについて、対応する表示命令に従って、サブフォームと、表示されるべき関連する特徴の組とを生成する。そのようなサブフォームおよび関連する特徴を会話アシスタントが描画する方法についてのさらなる詳細は、図6A?図6Dと組み合わせて、後に記載する。」(9頁2行?10頁1行)

イ.「【0035】
会話の表示
図6Aは、会話アシスタントが、会話管理システムの表示命令に応答して、会話表示(conversational view)を生成する方法を示すフローチャートである。一部の実施形態では、表示されるべき会話情報をフォーマットするための動作などの、図6Aに示す動作のいくつかは、クライアント内の会話アシスタントに会話情報を送信する前に、会話管理システムによって実行される。
【0036】
会話アシスタントは、最初に、ステップ602において、特定の会話に属する一連のメッセージ、および関連する表示命令の組を受信する。会話アシスタントは、ステップ604において、会話のトピックを識別し、会話に関連付けられたシステム定義カテゴリおよびユーザ定義ラベルがあればそれらも識別する。カテゴリおよびラベルに基づいて、会話は、ユーザ選択可能な操作のリスト、およびユーザ選択可能なラベルのリストを、それぞれ生成する。これらの2つのリストは、図3Bに示す2つのプルダウンリスト344および345に類似している。一実施形態では、ユーザ選択可能な操作のリストは、特定の会話(すなわち、表示される会話)に適用できる操作のみを含む。したがって、すでに「ゴミ箱」カテゴリ内にある会話は、再び「ゴミ箱」カテゴリに関連付けられることはできない。同様に、ユーザ選択可能なラベルのリストは、特定の会話にまだ関連付けられていないラベルのみを含む。
【0037】
ステップ608から、会話アシスタントは、会話内のそれぞれの個別のメッセージについてのサブフォームの生成を開始する。サブフォームは、少なくとも、詳細メッセージヘッダとメッセージボディとを含む。本明細書で使用される場合、メッセージボディは、件名参照を含み、メッセージングソフトウェアによってメッセージに追加されるすべてのシステム情報を除く、ユーザによって作成されるメッセージを意味する。それぞれの詳細メッセージヘッダは、送信者の名前および/またはアドレスと、すべての一次および二次受信者と、メッセージの件名と、メッセージレベルの操作の組と、日付/時刻値とを含む。メッセージレベルの操作のうちの1つは、経路選択情報、およびメッセージングシステムにより提供されるその他の情報(「マイムバージョン(Mime-Version)」や「内容タイプ(Content-Type)」など)を含む、元のフォーマットでメッセージを表示するためのオプションを含む。会話アシスタントは、さらに、ステップ610において、詳細メッセージヘッダから、簡略メッセージヘッダを作成する。簡略メッセージヘッダは、送信者および受信者の識別子を含む。一部の実施形態では、受信者は簡略メッセージヘッダから除外される。ユーザが受信者リスト内にある場合、会話アシスタントは、ステップ610において、送信者リスト内のユーザの識別子に類似した、固有の文字列またはアイコンをユーザの識別子として利用する。例えば、英語の代名詞「me」が、簡略メッセージヘッダ内でユーザを表すために使用されてもよい。メッセージが、この会話内で特定の受信者を識別する(すなわち、メッセージヘッダの一次または二次受信者フィールド内で識別する)最初のメッセージである場合、会話アシスタントは、ステップ614において、簡略メッセージヘッダ内の受信者の識別子をハイライトする。他方、一部の実施形態では、受信者リストに以前に含まれていた受信者が、もはや含まれていない場合、会話アシスタントは受信者の識別子を、例えば「ゴースト(ghost)」フォントなどの、視覚的に識別される方法で表示する。他の実施形態では、簡略メッセージヘッダは、送信者識別子と、メッセージの部分と、メッセージの日付/時刻表示とを含む。
【0038】
次に、会話アシスタントは、ステップ616において、サブフォームの表示方法を決定する。サブフォームに関連付けられたメッセージが、まだ表示されていないか、またはユーザによって既読の印を付けられていない場合は、ステップ618において、サブフォームは拡張モードで表示される、すなわち、簡略メッセージヘッダと完全なメッセージボディとの両方が表示される。メッセージがすでに表示された場合、または既読の印が付けられている場合は、ステップ620において、サブフォームは、デフォルトで、簡略メッセージヘッダとメッセージボディの一部分(例えば、メッセージの最初の数行)とのみを含む短縮モードで表示される。ユーザは、その後、短縮されたサブフォームを、クリックすることによって拡張してもよい。同様に、サブフォームは、詳細メッセージヘッダを表示しないが、ステップ622においてユーザが詳細メッセージヘッダを見たい場合に選択するためのオプションを含む。最後に、会話アシスタントは、ステップ624において、例えば、「返信」、「全員へ返信」、「転送」などの、1組の返信オプションをサブフォームの下部に作成する。一部の実施形態では、上述の操作のサブセットが、会話内の各メッセージについて実行される。一部の実施形態では、1つまたは複数の追加のフォーマット操作が実行される。」(17頁7行?18頁16行)

ウ.「【0039】
図6Bは、本発明の一実施形態による、図3B内の2つ目の会話の概略スクリーンショットである。スクリーンショットの上および左部分は、図3Bと同じである。ただし、会話リスト360は、メッセージリスト640に置き換えられている。メッセージリストの上には、会話のトピック「トピック2」630と、会話に関連付けられたすべてのユーザ定義ラベル632と、「すべてのメッセージを拡張」ボタン634とがある。4つのメッセージは、すでに表示されたか、またはユーザによって既読の印を付けられているため、リスト内の上の3つのメッセージは短縮モードで表示され、最後(かつ、最新)のメッセージのみが拡張モードで表示されている。一部の実施形態では、未読メッセージ(すなわち、まだ表示されていないか、またはユーザによって既読の印を付けられていないメッセージ)がない場合、スターありの印が付けられている会話内のメッセージも拡張モードで表示される。これは、会話内のすべてのメッセージが積み重ねられているという視覚効果を提供する。それぞれの短縮サブフォームは、簡略メッセージヘッダ641と、メッセージボディの最初の数語などの、抜粋643とを表示する。一部の実施形態では、簡略メッセージヘッダ内の送信者は色で識別され、それにより、各送信者のテキスト表現は異なる色で提示される。これは、表示されている会話内で送信者を識別するために役立つ。一部の実施形態では、送信者に関連付ける色をシステムが使い切ってしまうまで、色はシステムによって生成される。一部の実施形態では、色は会話ごとに関連付けられ、それにより、同じ送信者に、表示される会話によって、異なる色が関連付けられてもよいようになる。簡略メッセージヘッダ641内ですべての受信者がハイライトされているのは、これが会話の最初のメッセージであるためであることに留意されたい。対照的に、2つ目の短縮サブフォーム内で1つの識別子「S1」のみがハイライトされているのは、これが、S1が会話内の参加者となる最初のメッセージであるためである。拡張サブフォームは、完全なメッセージボディ645と、選択された場合に詳細メッセージヘッダが表示されるようにする「詳細オプション」リンク647と、返信オプションのリスト649とを含む。最後のメッセージはS4によって送信されたため、返信オプションのうちの1つは「S4へ返信」となっており、これは、返信がS4に宛てられることをユーザに警告する。」(18頁17?43行)

エ.「【0041】
図6Cの概略スクリーンショットは、(1)最初のサブフォーム650は、ユーザがサブフォームをクリックした後で、拡張モードで表示されている、(2)最後のサブフォームは、詳細メッセージヘッダ660を含む、(3)メッセージ返信フォーム670が、ユーザが「S4へ返信」リンクをクリックした後で、最後のサブフォームに添付されている、という点を除き、図6Bに示したものに類似している。一実施形態では、会話内のメッセージ(例えば、最後のメッセージ)に返信するためのテキストボックスは、ユーザが会話の内容を見ている場合に、そのメッセージに関連して永続的に表示されてもよい。言い換えると、ユーザが「S4へ返信」リンクをクリックする必要なしに、メッセージ返信フォーム670が表示され、それに関連付けられた返信テキストボックスに、ユーザはアクセスすることが可能である。他の実施形態では、メッセージ返信フォームは、会話内のすべてのメッセージについて、または拡張モードで表示されているすべてのメッセージについて、永続的に表示されてもよい。」(19頁10?22行)

オ.「【0043】
図6Dは、「すべてのメッセージを拡張」ボタン634をユーザがクリックした後の、図6Bに示す会話の概略スクリーンショットである。結果として、4つのメッセージ608がすべて拡張モードで表示されている。ボタン634内のテキストは、「すべてのメッセージを短縮」に変化することに留意されたい。ユーザがボタン634を再びクリックした後は、会話の表示は、図6Bに示すフォーマットに戻る。」(19頁37-42行)


刊行物1の上記記載事項を刊行物1の関連図面と技術常識に照らせば次のことがいえる。

a.上記ア.の段落【0011】、及び上記イ.の段落【0035】の記載によれば、刊行物1には、会話アシスタント110が、各メッセージについて、対応する表示命令に従って、サブフォームと、表示されるべき関連する特徴の組とを生成し、そのようなサブフォームおよび関連する特徴を描画する方法が記載されている。


b.上記イ.の記載によれば、上記描画する方法には、会話内のそれぞれの個別のメッセージについて、少なくとも、詳細メッセージヘッダとメッセージボディとを含むサブフォームの生成を開始するステップ608と、詳細メッセージヘッダから、簡略メッセージヘッダを作成するステップ610と、サブフォームに関連付けられたメッセージが、すでに表示されたか否か、またはユーザによって既読の印を付けられているか否かに基づいて、サブフォームの表示方法を決定するステップ616と、サブフォームに関連付けられたメッセージが、まだ表示されていないか、またはユーザによって既読の印を付けられていない場合は、サブフォームは、簡略メッセージヘッダと完全なメッセージボディとの両方が表示される拡張モードで表示させるステップ618と、メッセージがすでに表示された場合、または既読の印が付けられている場合は、サブフォームは、デフォルトで、簡略メッセージヘッダとメッセージボディの一部分(例えば、メッセージの最初の数行)とのみを含む短縮モードで表示させるステップ620と、を有するものである。

c.上記ア.の段落【0011】の記載によれば、図6B?図6Dの表示画面は、上記描画する方法によって、会話アシスタント110が表示したものと認められ、上記描画する方法は、図6B?図6Dの表示画面を作成するものであるといえる。

d.上記ウ.、及び図6Bによれば、図6Bの表示画面には、メッセージリストと、「すべてのメッセージを拡張」ボタン634とがあること、および、メッセージリストには4つのメッセージがすでに表示され、メッセージリスト内の上の3つのメッセージは短縮モードで表示され、最後(かつ、最新)のメッセージのみが拡張モードで表示されていることが記載されている。
したがって、上記描画する方法は、4つのメッセージがすでに表示されたメッセージリストと、「すべてのメッセージを拡張」ボタン634と、および、メッセージリスト内の上の3つのメッセージは短縮モードで表示し、最後(かつ、最新)のメッセージのみが拡張モードで表示した図6Bの表示画面を表示するものであるといえる。

e.上記エ.、及び図6Cによれば、図6Cの表示画面は、図6Bの表示画面の最初のサブフォーム650を、ユーザがクリックし、拡張モードで表示したものであり、ここで、図6Bの表示画面の最初のメッセージのサブフォームは上記c.に記したように、短縮モードで表示されたものである。
したがって、上記描画する方法は、前記図6Bの表示画面の短縮モードで表示されるメッセージの1つをクリックすると、該メッセージの1つを拡張モードで表示するものであるといえる。

f.上記オ.、及び図6Dによれば、図6Bの「すべてのメッセージを拡張」ボタン634をユーザがクリックすると、4つのメッセージがすべて拡張モードで表示され、ボタン634を「すべてのメッセージを短縮」ボタンに変化させ、更に、「すべてのメッセージを短縮」ボタンをクリックすると、図6Bの表示画面の表示に戻るものであるといえる。
したがって、上記描画する方法は、前記図6Bの表示画面の「すべてのメッセージを拡張」ボタン634をユーザがクリックすると、4つのメッセージをすべて拡張モードで表示し、ボタン634を「すべてのメッセージを短縮」ボタンに変化させて表示し、更に、「すべてのメッセージを短縮」ボタンをクリックすると、前記図6Bの表示画面の表示に戻すものであるといえる。

以上総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

〈引用発明〉

「会話アシスタント110が、各メッセージについて、対応する表示命令に従って、サブフォームと、表示されるべき関連する特徴の組とを生成し、そのような前記サブフォームおよび前記関連する特徴を描画する方法であって、
会話内のそれぞれの個別のメッセージについて、少なくとも、詳細メッセージヘッダとメッセージボディとを含む前記サブフォームの生成を開始するステップ608と、
前記詳細メッセージヘッダから、簡略メッセージヘッダを作成するステップ610と、
前記サブフォームに関連付けられたメッセージが、すでに表示されたか否か、またはユーザによって既読の印を付けられているか否かに基づいて、前記サブフォームの表示方法を決定するステップ616と、
前記サブフォームに関連付けられた前記メッセージが、まだ表示されていないか、またはユーザによって既読の印を付けられていない場合は、前記サブフォームは、前記簡略メッセージヘッダと完全なメッセージボディとの両方が表示される拡張モードで表示させるステップ618と、
前記メッセージがすでに表示された場合、または既読の印が付けられている場合は、前記サブフォームは、デフォルトで、前記簡略メッセージヘッダとメッセージボディの一部分(例えば、メッセージの最初の数行)とのみを含む短縮モードで表示させるステップ620と、を有する描画する方法であって、
4つのメッセージがすでに表示されたメッセージリストと、「すべてのメッセージを拡張」ボタン634と、および、前記メッセージリスト内の上の3つのメッセージは前記短縮モードで表示し、最後(かつ、最新)のメッセージのみを前記拡張モードで表示した図6Bの表示画面を表示し、
前記図6Bの表示画面の前記短縮モードで表示されるメッセージの1つをクリックすると、該メッセージの1つを前記拡張モードで表示し、
前記図6Bの表示画面の「すべてのメッセージを拡張」ボタン634をユーザがクリックすると、4つのメッセージをすべて拡張モードで表示し、ボタン634を「すべてのメッセージを短縮」ボタンに変化させて表示し、更に、前記「すべてのメッセージを短縮」ボタンをクリックすると、前記図6Bの表示画面の表示に戻す、
サブフォームおよび関連する特徴を描画する方法。」


2.対比

本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明の「サブフォームおよび関連する特徴を描画する方法」の「サブフォーム」は、「メッセージボディ」を含むものであり、「メッセージボディ」がテキストからなる情報であることは明らかであるから、引用発明の「メッセージボディ」が、本願発明の「テキスト情報」に相当し、そして、引用発明の「サブフォームおよび関連する特徴を描画する方法」は、本願発明の「テキスト情報表示方法」に相当する。

イ.引用発明の「短縮モード」は、メッセージの「サブフォーム」を「メッセージボディの一部分(例えば、メッセージの最初の数行)」を含む形で表示することである。
そして、引用発明の「図6Bの表示画面を表示」することは、「3つのメッセージ」を「前記短縮モード」で「メッセージリスト」に表示することである。
してみれば、引用発明の「サブフォーム」が、本願発明の「テキスト情報を構成する文字列のうち一部文字列で構成された少なくとも一つのテキスト情報アイテム」に相当し、また、引用発明の「メッセージリスト」が、本願発明の「テキスト情報リスト」に相当し、そして、引用発明の「図6Bの表示画面を表示し」は、本願発明の「テキスト情報を構成する文字列のうち一部文字列で構成された少なくとも一つのテキスト情報アイテムが配列されたテキスト情報リストを表示するテキスト情報リストの表示ステップ」に相当する。

ウ.引用発明の「前記図6Bの表示画面の表示に戻す」ことは、「前記図6Bの表示画面の「すべてのメッセージを拡張」ボタン634をユーザがクリックする」と、前記図6Bの表示画面の「4つのメッセージをすべて拡張モードで表示」するものであり、ここで、引用発明の「拡張モード」は、「サブフォーム」を「完全なメッセージボディ」を含む形で表示するものであるから、引用発明の「「すべてのメッセージを拡張」ボタン634」は、本願発明の「特定キー」に相当し、引用発明の「前記図6Bの表示画面の表示に戻す」は、本願発明の「特定キーの入力時、前記少なくとも一つのテキスト情報アイテムをそれぞれ該当テキスト情報を構成する文字列の全体で構成して表示する変更表示ステップ」に相当する。
また、引用発明の「「すべてのメッセージを拡張」ボタン634」、及び「「すべてのメッセージを短縮」ボタン」を、それぞれ「第1のアイコン」、及び「第2のアイコン」と称することは任意であり、さらに、引用発明の「前記図6Bの表示画面の表示に戻す」ことは、「更に、前記「すべてのメッセージを短縮」ボタンをクリックすると、「前記図6Bの表示画面の表示に戻す」ことであるから、引用発明の「前記図6Bの表示画面の表示に戻す」と、本願発明の「前記変更表示ステップの表示は、前記第1アイコンを前記テキスト情報リストの表示をさせる第2アイコンに変更し、かつ、前記少なくとも一つのテキスト情報アイテムのそれぞれが、該当テキスト情報を構成する文字列のうち一部文字列で構成された表示をさせる個別アイコンを含む、表示であって、それらの個別アイコンのいずれかが入力されれば、前記第2アイコンを前記第1アイコンに変更する」は、「前記変更表示ステップの表示は、前記第1アイコンを前記テキスト情報リストの表示をさせる第2アイコンに変更する」の点で共通する。

よって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致、ないし相違している。

(一致点)

「テキスト情報表示方法において、
テキスト情報を構成する文字列のうち一部文字列で構成された少なくとも一つのテキスト情報アイテムが配列されたテキスト情報リストを表示するテキスト情報リストの表示ステップと、
特定キーの入力時、前記少なくとも一つのテキスト情報アイテムをそれぞれ該当テキスト情報を構成する文字列の全体で構成して表示する変更表示ステップと、
を含み、
前記テキスト情報リストは、前記特定キーである第1アイコンを含み、
前記変更表示ステップの表示は、前記第1アイコンを前記テキスト情報リストの表示をさせる第2アイコンに変更する、
テキスト情報表示方法。」

(相違点1)
本願発明では、「前記テキスト情報リストは、前記特定キーである第1アイコンを含」むのに対して、引用発明では、「メッセージリスト」に「「すべてのメッセージを拡張」ボタン634」が含まれるとは特定されていない点。

(相違点2)
本願発明では、「前記変更表示ステップの表示は」、「前記少なくとも一つのテキスト情報アイテムのそれぞれが、該当テキスト情報を構成する文字列のうち一部文字列で構成された表示をさせる個別アイコンを含む、表示であって、それらの個別アイコンのいずれかが入力されれば、前記第2アイコンを前記第1アイコンに変更する」のに対して、引用発明では、「前記図6Bの表示画面の表示に戻す」ことは、そのような「個別アイコン」の表示は行っておらず、そのため、「個別アイコン」の入力と、「「すべてのメッセージを短縮」ボタン」及び「「すべてのメッセージを拡張」ボタン」との関係も特定されていない点。


3.判断

当審は次のとおり判断する。

ア.引用発明を開示する刊行物1には、引用発明において上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することについての記載も、それを示唆する記載もない。

イ.原査定で引用された特開2004-118550号公報(特に、段落【0003】、【0004】、図9等参照。以下、「刊行物2」という。)、米国特許出願公開第2009/0307188号明細書(特に、段落[0077]、FIG.10A、FIG.10B等参照。以下、「刊行物3」という。)に記載されているように、メッセージのサブフォームを拡張モード又は短縮モードでの表示に切り替えるための個別アイコンを、各メッセージ毎に設けることは周知の技術である。
また、引用発明は、短縮モードで表示される個々のメッセージをクリックすると拡張モードの表示に切り替えるものである。
してみれば、引用発明の個々のメッセージの「短縮モード」と「拡張モード」での表示の切り替えに上記周知の技術を適用して、個々のメッセージ毎に個別アイコンを設けることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
しかしながら、上記刊行物1には、図6Bの「「すべてのメッセージを拡張」ボタン」が表示されている状態で、短縮モードのメッセージの1つをクリックすると、図6Cの状態となり、クリックしたメッセージが拡張モードで表示されるが、「「すべてのメッセージを拡張」ボタン」の表示は切り替わらないことが記載されており、また、上記刊行物1には、全てのメッセージが「拡張モード」で表示されている図6Dの状態で、個々のメッセージ毎の個別のアイコンをクリックすることに関しては記載されておらず、そのため、その際の「「すべてのメッセージを短縮」ボタン」の表示に関しても記載されていない。
したがって、引用発明に個々のメッセージ毎に個別のアイコンを設ける上記の周知の技術を適用したとしても、個別のアイコンを入力したときに、「「すべてのメッセージを短縮」ボタン」を「「すべてのメッセージを拡張」ボタン」に切り替える上記相違点2に係る構成は想到し得ない。

したがって、上記刊行物2?3に記載される技術の存在をもっては、引用発明において上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったとはいえない。

エ.ほかに引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったといえる根拠は見当たらない。

したがって、その他の点について判断するまでもなく、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

本願の請求項2-7に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであり、請求項8に係る発明は、本願発明の「テキスト情報表示方法」を「携帯端末機」の観点から記載したものであるから、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたとはいえない。


第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-8に係る発明は、いずれも、当業者が引用発明及び周知の技術に基づいて容易に発明することができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-15 
出願番号 特願2013-506069(P2013-506069)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 猪瀬 隆広桜井 茂行  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 稲葉 和生
山澤 宏
発明の名称 携帯端末機のテキスト情報表示方法及び装置  
代理人 崔 允辰  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
代理人 木内 敬二  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ