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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09F
管理番号 1317756
審判番号 不服2015-20447  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-16 
確定日 2016-08-29 
事件の表示 特願2012-252361「デュアルグラフィックディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月 6日出願公開、特開2013-109348、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の概要
本願は、平成24年11月16日(パリ条約による優先権主張2011年11月18日、英国)の出願であって、平成25年10月3日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月7日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、同年8月22日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成27年2月26日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたが、同年7月9日付けで平成27年2月26日付けの手続補正の補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされた。
本件は、これに対して、平成27年11月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成28年2月17日付けで前置報告がなされ、同年5月13日付けで上申書(以下、単に「上申書」という。)が提出された。


第2 本願発明
本願の請求項1?13に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明13」という。)は、平成27年11月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1?13は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
第1のグラフィックの画像及び第2のグラフィックの画像を個別或いは一緒に選択的にユーザに表示するための表示装置であって、
偏光フィルタアセンブリと、
前記アセンブリを背面照射して前記画像を生成するための偏光照射源と、
前記第1のグラフィック画像を生成するための第1の偏光及び前記第2のグラフィック画像を生成するための第2の偏光を個別或いは一緒に選択的に提供するために前記偏光照射源を起動する手段と、を備え、
前記偏光フィルタアセンブリが第1の表示要素と第2の表示要素とを備え、前記第1及び第2の表示要素が互いに結合されており、前記第1の表示要素が第1の偏光パターンを有し、前記第2の表示要素が第2の偏光パターンを有し、前記第1及び第2の偏光パターンが、前記第1及び第2の偏光でそれぞれ照射されると前記第1及び第2のグラフィック画像を生成し、
- 前記第1の表示要素が第1の基板層を備え、前記第1の基板層には、前記第1の偏光パターンを提供する第1の偏光層を備え、
- 前記第2の表示要素が第2の基板層を備え、前記第2の基板層には、前記第2の偏光パターンを提供する第2の偏光層を備え、
- 前記第1及び第2の基板層の各々が、前記偏光された照射の両方の偏光に対して実質的に透明又は半透明であり、
- 前記第1の表示要素が、前記偏光フィルタアセンブリを形成するために、前記第1の偏光層と前記第2の偏光層との間にあるインターフェースに沿って前記第2の表示要素に結合されており、
前記偏光照射源は、第1の光源及び第2の光源を有し、前記第1の光源及び前記第2の光源は、異なる偏光の特性を有する、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1の表示要素は、前記インターフェースに沿って前記第2の表示要素に接合されている、請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記偏光フィルタアセンブリは、前記第1の表示要素を前記第2の表示要素に接合するために前記インターフェースに沿って延在する接着層を備える、請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記偏光層の両方の屈折率に前記接着層が屈折率整合した、請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記接着層が、前記偏光された照射に対して実質的に透明又は半透明である、請求項3又は4記載の表示装置。
【請求項6】
前記偏光照射源の前記第1の偏光と前記第2の偏光とが異なる色を有し、その結果前記第1及び第2の表示グラフィックが対応する異なる色を有する、請求項1?5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記偏光パターンのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの無偏光性領域及び少なくとも1つの偏光性領域から成る、請求項1?6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の偏光パターンの両方は、少なくとも1つの無偏光性領域と少なくとも1つの偏光性領域とから成り、前記第1及び第2の偏光パターンの前記無偏光性領域は、互いに重複している、請求項1?6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示装置は、作動したときに前記表示されたグラフィックの変化をもたらす制御ボタンの一部である、請求項1?8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記表示装置は、作動したときに表示されたグラフィックの変化をもたらす接触感知式制御領域の一部である、請求項1?8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
第1のグラフィックの画像及び第2のグラフィックを個別に、又は一緒にのいずれかでユーザに選択的に表示するための表示装置を組み立てる方法であって、前記表示装置が、偏光フィルタアセンブリと、前記第1のグラフィック画像を生成するための第1の偏光及び前記第2のグラフィック画像を生成するための第2の偏光を個別或いは一緒に選択的に提供するように起動される偏光照射源と、を備え、前記偏光フィルタアセンブリが、第1の表示要素と第2の表示要素とを備え、
i)第1の表示要素を形成するために、第1の偏光パターンを、実質的に透明又は半透明である第1の基板層上の第1の偏光層にプリントすることによって前記第1の表示要素を形成するステップであって、前記第1の基板層は前記第1の偏光層を支持し、前記第1の偏光パターンは前記第1のグラフィックを保持する、前記第1の表示要素を形成するステップと、
ii)第2の表示要素を形成するために、第2の偏光パターンを、実質的に透明又は半透明である第2の基板層上の第2の偏光層にプリントすることによって前記第2の表示要素を形成するステップであって、前記第2の基板層は前記第2の偏光層を支持し、前記第2の偏光パターンは前記第2のグラフィックを保持する、前記第2の表示要素を形成するステップと、
iii)前記第1の偏光層と前記第2の偏光層との間にあるインターフェースに沿って前記第1の表示要素と前記第2の表示要素とを結合することによって前記偏光フィルタアセンブリを組み立てるステップと、
iv)偏光照射源を前記偏光フィルタアセンブリの一方の側に配置して前記アセンブリを背面照射するステップと、
を含み、
前記偏光照射源は、第1の光源及び第2の光源を有し、前記第1の光源及び前記第2の光源は、異なる偏光の特性を有する、
方法。
【請求項12】
前記ステップiiiは、前記インターフェースに沿って前記第1の表示要素を前記第2の表示要素に接合するステップを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ステップiiiは、前記インターフェースに沿って接着層を塗布し、前記接着層を硬化させて前記第1の表示要素を前記第2の表示要素に接合するステップを含む、請求項12記載の方法。」


第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要

理由1
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



本願の請求項1に記載の「前記第1の表示要素が、前記偏光フィルタアセンブリを形成するために、前記第1の偏光層と前記第2の偏光層との間にあるインターフェースに沿って前記第2の表示要素に結合されている」について、当該「前記第1の偏光層と前記第2の偏光層との間にあるインターフェース」というものがどのようなものであるのか不明であることから、「インターフェースに沿って」「結合されている」ということがどのように「結合されている」ことを表しているのか不明確である。
本願の請求項11に記載の「前記第1の偏光層と前記第2の偏光層との間にあるインターフェースに沿って前記第1の表示要素と前記第2の表示要素とを結合することによって前記偏光フィルタアセンブリを組み立てるステップ」についても同様である。
よって、請求項1、11と、請求項1、11のいずれかを直接又は間接的に引用する請求項2-10、12-13、に係る発明は明確でない。

理由2
本願発明1?13は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:実願昭56-44704号(実開昭57-157987号)のマイクロフィルム
引用文献2:特開平11-352900号公報
引用文献3:特開2006-260003号公報

・本願発明1-2、7-8、11-12
引用文献1に記載された発明は、光源3、4を同時に点灯する構成を有さないが、必要に応じて同時に点灯するように設計変更することは、当業者が容易に想到し得ることである。

・本願発明3-5、13

接着剤を用いて光学部材を一体化することは本願出願前周知であって、当該周知技術を引用文献1に記載された発明に適用する際に、引用文献2の【0074】や【0077】に記載のように、接着剤の色や屈折率を考慮して、本願発明3-5、13とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

・本願発明6

引用文献3の【0064】?【0065】に記載のように、緑色、赤色、青色の3色を選択的に発光させるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

・本願発明9-10

引用文献3の【0069】に記載のように、ボタンの表示部に用いることは当業者であれば容易に想到し得たことである。また、「接触感知式」のボタンは、本願出願前周知であることから、当該周知技術を適用することは当業者であれば容易に想到し得たことである。

2 原査定の理由の判断
(1)理由1について
請求人が、上申書で主張するとおり、「一般的に「インターフェース」との用語は、幅広い技術分野において、接続部、界面、接触面の意味として用いられており」、これを踏まえて、本願の明細書及び図面の記載を参照すれば、請求人が、上申書で主張するとおり、請求項1の
「- 前記第1の表示要素が第1の基板層を備え、前記第1の基板層には、前記第1の偏光パターンを提供する第1の偏光層を備え、
- 前記第2の表示要素が第2の基板層を備え、前記第2の基板層には、前記第2の偏光パターンを提供する第2の偏光層を備え、
- 前記第1及び第2の基板層の各々が、前記偏光された照射の両方の偏光に対して実質的に透明又は半透明であり、
- 前記第1の表示要素が、前記偏光フィルタアセンブリを形成するために、前記第1の偏光層と前記第2の偏光層との間にあるインターフェースに沿って前記第2の表示要素に結合されており、」
と記載される構成が、
「偏向フィルタアセンブリが、一方から他方に向かって、第1の基板層、第1の偏光層、インターフェース、第2の偏光層、第2の基板層の順序で積層されている」構成となることは、当業者であれば当然に理解できると認められる。
したがって、請求項1の「前記第1の表示要素が、前記偏光フィルタアセンブリを形成するために、前記第1の偏光層と前記第2の偏光層との間にあるインターフェースに沿って前記第2の表示要素に結合されている」が示す構成が明確でないということはできない。
また、本願の請求項11に記載の「前記第1の偏光層と前記第2の偏光層との間にあるインターフェースに沿って前記第1の表示要素と前記第2の表示要素とを結合することによって前記偏光フィルタアセンブリを組み立てるステップ」についても同様である。
よって、請求項1、11と、請求項1、11のいずれかを直接又は間接的に引用する請求項2-10、12-13、に係る発明は明確でないということはできない。

(2)理由2について
ア 刊行物の記載事項
(ア)引用文献1には、以下の事項が記載されている。

a 「1.考案の名称
表示装置
2.実用新案登録請求の範囲
透光板上に透過軸(または吸収軸)を互いに直交させるとともにそれぞれ異なる表示パターンを有する2つの偏光膜を配置し、かつ、その後方に上記各表示パターンの偏光膜の透過軸(または吸収軸)とそれぞれ同軸の2つの偏光板を区画して配置するとともに、これらの各偏光板の背部にそれぞれ光源を互いに遮光状態に隔離して設け、これら各光源を交互に切換え照明させるように構成したことを特徴とする表示装置。
3.考案の詳細な説明
この考案は、例えばステレオ再生装置やラジオ受信機などの表示で、2種類の異なる表示パターン(例えばFMとAM、あるいは文字と絵など)を同一面上に交互に照明表示できる表示装置を提供することを目的とする。
従来、この種の表示装置は、2枚の透明板にそれぞれの表示パターンを彫刻し、この透明板の側面よりランプで個々に照明していたものであるが、この場合、表示パターンが明確に出にくく、また、2つの表示パターンがだぶって見えるなどの欠点があった。
この考案は、このような従来の欠点を除去したもので、以下、図の実施例によって説明する。
第1図はこの考案の表示装置の側断面を表わしたもので、1は透光板であり、その表面には第2図に示すような表示パターンを有する偏光膜1aを配置してある。また、2は他の透光板であり、同様にその表面には第3図に示すような別の表示パターンを有する偏光膜2aを配置してある。
この各表示パターンの偏光膜1a,2aは、例えば一方の表示パターンの偏光膜1aの透過軸を横方向とし、他方の表示パターンの偏光軸2aの透過軸を縦方向とし、それぞれの表示パターン(図では文字Aと文字B)の部分は偏光性のない透明あるいは着色などを施こした半透明にしてある。
また、これらの透光板1,2の後方には2つの光源(以下、ランプという)3,4が互いに遮光状態に隔離して設けられ、さらに、これらのランプ3,4のそれぞれの前方には、前記一方の表示パターンの偏光膜1aの透過軸と同軸の偏光板5と、他方の表示パターン2の偏光膜2aの透過軸と同軸の偏光板6が配置されており、これらの透光板1,2と、ランプ3,4および偏光板5,6はケース7により保持されている。
今、例えばランプ3が点灯した時の照明光は、偏光板5を通過する際、偏光板5の透過軸は横方向であるため、照明光のうち縦方向に振動している光波は吸収され、横方向に振動している光波のみ通過する。この透過光が透光板2を通る時、表示パターンの偏光膜2aの透過軸は縦方向であるため、横方向の光波の透過光は偏光性のない部分(図の場合は文字B)のみ通過し、他の光は全て吸収される。この文字Bの部分のみ透過した横方向の光波が次の透過板1を通る時、表示パターンの偏光膜1aの透過軸は横方向であるため、吸収される光はなく、表示パターンの偏光膜1aからも、文字Aの透明部からも光は透過し、その結果、表面からは文字Bのみが表示されることになる。
次に、ランプ3を消し、ランプ4を点灯した場合、上記と逆に偏光板6を通過した光は縦方向に振動する光波のみとなり、透光板2を通る時は偏光膜2aの透過軸は縦方向であるため吸収される光はなく、全て透過し、透光板1を通る際、表示パターンの偏光膜1aの透過軸は横方向であるため、偏光性のない部分(図の場合は文字A)のみ通過し、他の光は吸収され、その結果、文字Aが表示される。
なお、以上の実施例では2つの透光板1,2をそれぞれ設けたが、2枚用いずに、1枚の透光板の表裏面にそれぞれ一方の表示パターンの偏光膜1aと他方の表示パターンの偏光膜2aを配置しても、同様の効果が得られる。
この考案は、以上のように、透光板上に透過軸(または吸収軸)を互いに直交させるとともにそれぞれ異なる表示パターンを有する2つの偏向膜を配置し、かつ、その後方に上記各表示パターンの偏光膜の透過軸(または吸収軸)とそれぞれ同軸の2つの偏光板を区画して配置するとともに、これらの各偏光板の背部にそれぞれ光源を互いに遮光状態に隔離して設け、これら各光源を交互に切換え照明させるように構成した表示装置を提供することによって、2種類の異なる表示パターンを同一面上に交互に照明表示させることができ、しかも、その表示パターンが、だぶって見えるようなことがなく、明確に表われるなどの特長がある。
4.図面の簡単な説明
第1図はこの考案になる表示装置の実施例を示す側断面図、第2図はその一方の表示パターンを有する偏向膜の正面図、第3図はその他方の表示パターンを有する偏向膜の正面図である。
1,2・・・透光板、1a,2a・・・それぞれの表示パターンを有する偏向膜、3,4・・・ランプ、5,6・・・偏光板、7・・・ケース。

b 「



すると、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「2種類の異なる表示パターンを同一面上に交互に照明表示できる表示装置であって、
透光板1の表面には表示パターンを有する偏光膜1aを配置してあり、また、他の透光板2の表面には別の表示パターンを有する偏光膜2aを配置してあり、
この各表示パターンの偏光膜1a,2aは、一方の表示パターンの偏光膜1aの透過軸を横方向とし、他方の表示パターンの偏光軸2aの透過軸を縦方向とし、それぞれの表示パターンの部分は偏光性のない透明あるいは着色などを施こした半透明にしてあり、
また、これらの透光板1,2の後方には2つのランプ3,4が互いに遮光状態に隔離して設けられ、さらに、これらのランプ3,4のそれぞれの前方には、前記一方の表示パターンの偏光膜1aの透過軸と同軸の偏光板5と、他方の表示パターン2の偏光膜2aの透過軸と同軸の偏光板6が配置されており、
ランプ3が点灯した時の照明光は、偏光板5を通過する際、偏光板5の透過軸は横方向であるため、照明光のうち縦方向に振動している光波は吸収され、横方向に振動している光波のみ通過し、この透過光が透光板2を通る時、表示パターンの偏光膜2aの透過軸は縦方向であるため、横方向の光波の透過光は偏光性のない部分(文字B)のみ通過し、他の光は全て吸収され、この文字Bの部分のみ透過した横方向の光波が次の透過板1を通る時、表示パターンの偏光膜1aの透過軸は横方向であるため、吸収される光はなく、表示パターンの偏光膜1aからも、文字Aの透明部からも光は透過し、その結果、表面からは文字Bのみが表示されることになり、
ランプ4を点灯した場合、上記と逆に偏光板6を通過した光は縦方向に振動する光波のみとなり、透光板2を通る時は偏光膜2aの透過軸は縦方向であるため吸収される光はなく、全て透過し、透光板1を通る際、表示パターンの偏光膜1aの透過軸は横方向であるため、偏光性のない部分(文字A)のみ通過し、他の光は吸収され、その結果、文字Aが表示される、
表示装置。」

(イ)引用文献2には、以下の事項が記載されている。

a 「【0074】図7は、前記第1の光拡散手段21の第4の例を示すハッチングを省略した拡大断面図であり、この光拡散手段21は、図5に示した散乱物質混入膜25の両面にそれぞれ透明な粘着剤27a,27bを塗布したものである。
【0075】この光拡散手段21は、その一方の面をその面の粘着剤27aにより前記液晶表示素子1の背面側偏光板6の外表面に貼り付けることにより前記偏光板6の外表面に一体に設けられ、他方の面をその面の粘着剤27bにより前記照明手段10の第2の導光体18の前面に貼り付けられる。
【0076】なお、この例においても、前記光拡散手段21の前記第2の導光体18に貼り付ける面の粘着剤27bは、前記散乱物質混入膜25の基材25aおよび前記第2の導光体18との屈折率の差ができるだけ小さいものを用いるのが好ましい。
【0077】また、前記光拡散手段21の前記偏光板6に貼り付ける面の粘着剤27aは、前記散乱物質混入膜25の基材25aおよび前記偏光板6との屈折率の差ができるだけ小さいものを用いるのが好ましく、それにより、前記接着剤と前記光拡散手段21との界面および前記接着剤と偏光板6との界面での光の屈折および反射をほとんど無くし、前記散乱物質混入膜25と前記偏光板6の一方から他方に光を効率良く入射させることができる。」

b 「【図7】



(ウ)引用文献3には、以下の事項が記載されている。

a 「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、照明光を出射する光源と、前記照明光を第1の方向に偏光軸を有する偏光光とする偏光板と、前記偏光光の偏光軸を前記第1の方向とは異なる第2の方向に切替え可能な透過型液晶パネルと、前記透過型液晶パネルの出力側の光軸上に設けられ、前記第1の方向に偏光軸を有する偏光光を透過させる第1の偏光パターンが形成された第1の透明板、および前記第2の方向に偏光軸を有する偏光光を透過させる第2の偏光パターンが形成された第2の透明板とを備えたことを特徴とする自動販売機用表示装置を提供する。
【0008】
前記第1の偏光パターンは、偏光方向が前記第1の偏光方向と異なる光に対してはそのまま透過させ、偏光方向が前記第1の偏光方向と同一の光に対しては所定の色の光のみを透過させる第1のカラー偏光パターンであり、前記第2の偏光パターンは、偏光方向が前記第2の偏光方向と異なる光に対してはそのまま透過させ、偏光方向が前記第2の偏光方向と同一の光に対しては所定の色の光のみを透過させる第2のカラー偏光パターンである構成としてもよい。
【0009】
前記照明光は、所定の波長の光を取り出すために白色光であることが好ましい。
【0010】
前記光源は、LEDまたはLEDと蛍光体との組合せからから構成してもよい。これにより種々の方法により白色光を取り出すことができる。
【0011】
前記第1および第2の偏光パターンは、金額、HOT、COLD、売切れ、新発売等を示す文字、記号、図形等からなる複数の表示パターンのうち2つの組合せから構成してもよい。」

b 「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
・・・
【0017】
この表示装置7は、図2(a)に示すように、上面で商品見本6を支持する筐体21を有し、「¥120」、「売切」を示す価格/売切表示部22と、「COLD」、「HOT」を示す冷温表示部23とを備える。また、表示装置7は、図2(b)および図3に示すように、価格/売切表示部22と示す冷温表示部23とに対応して、光源32からの光に指向性を与えるリフレクタ31と、光を発光する光源32と、拡散シート33と、表示の無い無地の第1の偏光板34と、光の透過方向を制御する液晶パネル35と、「売切」、「HOT」の表示を行う第2の偏光板36と、「¥120」、「COLD」の表示を行う第3の偏光板37と、外光による視認性の低下を抑える反射防止シート38とを備える。したがって、この表示装置7は、1つの商品見本6に対して価格/売切表示および冷温表示をそれぞれに対応する光源32a,32bにより行うようになっている。」

c 「【0064】
[第4の実施の形態]
図14は、本発明の第4の実施の形態に係る自動販売機の表示装置を示し、図2(b)の拡散シート33より前方の構成品を取り除いた正面図を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態に係る表示装置7において、上側光源32Aの緑色LED41G、赤色LED41R、および青色LED41Bを、1つのLEDチップによって緑色、赤色、青色の3色を選択的に発光可能なRGBLED91に代え、さらに、下側光源32Bの緑色LED41G、赤色LED41R、および青色LED41BをRGBLED91に代えた構成としたものであり、その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0065】
第4の実施の形態によれば、単色のLED3個分を1個のRGBLEDで代用できるため、3個分の設置スペースを1個分にすることができ、LEDの使用個数の低減、および省スペース化を図ることができる。その他の効果は、第1の実施の形態と同様である。」

d 「



イ 対比
本願発明1と引用発明を対比すると、
「第1のグラフィックの画像及び第2のグラフィックの画像を個別にユーザに表示するための表示装置であって、
偏光フィルタアセンブリと、
前記アセンブリを背面照射して前記画像を生成するための偏光照射源と、
前記第1のグラフィック画像を生成するための第1の偏光及び前記第2のグラフィック画像を生成するための第2の偏光を個別に提供するために前記偏光照射源を起動する手段と、を備え、
前記偏光フィルタアセンブリが第1の表示要素と第2の表示要素とを備え、前記第1の表示要素が第1の偏光パターンを有し、前記第2の表示要素が第2の偏光パターンを有し、前記第1及び第2の偏光パターンが、前記第1及び第2の偏光でそれぞれ照射されると前記第1及び第2のグラフィック画像を生成し、
- 前記第1の表示要素が第1の基板層を備え、前記第1の基板層には、前記第1の偏光パターンを提供する第1の偏光層を備え、
- 前記第2の表示要素が第2の基板層を備え、前記第2の基板層には、前記第2の偏光パターンを提供する第2の偏光層を備え、
- 前記第1及び第2の基板層の各々が、前記偏光された照射の両方の偏光に対して実質的に透明又は半透明であり、
前記偏光照射源は、第1の光源及び第2の光源を有し、前記第1の光源及び前記第2の光源は、異なる偏光の特性を有する、
表示装置。」
で一致し、次の各点で相違する。

・本願発明1は、
「第1のグラフィックの画像及び第2のグラフィックの画像を個別或いは一緒に選択的にユーザに表示するための表示装置であって、」
「前記第1のグラフィック画像を生成するための第1の偏光及び前記第2のグラフィック画像を生成するための第2の偏光を個別或いは一緒に選択的に提供するために前記偏光照射源を起動する手段と、を備え」(特に、下線部)るのに対して、
引用発明は、
「2種類の異なる表示パターンを同一面上に交互に照明表示できる表示装置であって、」
「2種類の異なる表示パターン」を同一面上に同時に表示するための手段を備えない点。(以下、「相違点(ア)」という。)

・本願発明1では、
「前記第1及び第2の表示要素が互いに結合されており、」
「- 前記第1の表示要素が、前記偏光フィルタアセンブリを形成するために、前記第1の偏光層と前記第2の偏光層との間にあるインターフェースに沿って前記第2の表示要素に結合されて」いるのに対して、
引用発明では、「表面には表示パターンを有する偏光膜1aを配置してあ」る「透光板1」と「表面には表示パターンを有する偏光膜2aを配置してあ」る「透光板2」は互いに結合されておらず、また、「透光板1」が、「偏光膜1a」と「偏光膜2a」との間にあるインターフェースに沿って「透光板2」に結合されていない点。(以下、「相違点(イ)」という。)

ウ 判断
上記相違点(ア)について検討する。
引用発明は、「2種類の異なる表示パターンを同一面上に交互に照明表示できる表示装置」であり、さらに、引用文献1の全記載を参照しても、「2種類の異なる表示パターン」を同一面上に同時に表示することを示唆する記載もないから、「2種類の異なる表示パターン」を同一面上に同時に表示する動機付けがなく、「2つのランプ3,4」を同時に点灯するように設計変更することは、当業者であっても、容易に想到し得ることであるとはいえない。

なお、引用文献2には、粘着剤を用いて光学部材を一体化すること、及び、その際、粘着剤と光学部材の屈折率の差をできるだけ小さくすることが記載されるのみであり、「2種類の異なる表示パターン」についての記載はない。
また、引用文献3にも、透過型液晶パネルにより、2つの異なる偏光光を切り替えて、2つの偏光パターンを同一面に切り替えて表示することを可能にした表示装置が記載されているが、2つの偏光パターンを同一面に同時に表示することは記載されていない。(そもそも、引用文献3に記載された、透過型液晶パネルにより2つの異なる偏光光を切り替える構成では、2つの異なる偏光光を同時に生じることはできない。)
さらに、引用文献2及び3の他に、2種類の異なる表示パターンを同一面上に同時に表示するために、2つの光源を同時に点灯するように設計変更することを開示又は示唆する証拠もない。

すると、上記相違点(ア)は、引用発明を設計変更することにより、あるいは、引用発明に引用文献2?3に記載された事項を採用することにより当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。

したがって、本願発明1は、少なくとも、上記相違点(ア)において、当業者が引用発明に基づいて、あるいは、引用発明及び引用文献2?3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。

オ 本願発明2?9について
本願発明2?10は、本願発明1をさらに限定するものであるから、本願発明1と同様、当業者が引用発明に基づいて、あるいは、引用発明及び引用文献2?3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、本願発明11は、本願発明1の「表示装置」を組み立てる方法であるから、本願発明1と同様、当業者が引用発明に基づいて、あるいは、引用発明及び引用文献2?3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、本願発明12?13は、本願発明11をさらに限定するものであるから、本願発明11と同様、当業者が引用発明に基づいて、あるいは、引用発明及び引用文献2?3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)小括
上記(1)及び(2)で検討したとおり、原査定の理由1及び理由2のいずれによっても、本願を拒絶することはできない。


第4 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-16 
出願番号 特願2012-252361(P2012-252361)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09F)
P 1 8・ 537- WY (G09F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 請園 信博  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 伊藤 昌哉
森林 克郎
発明の名称 デュアルグラフィックディスプレイ  
代理人 西島 孝喜  
代理人 弟子丸 健  
代理人 松下 満  
代理人 井野 砂里  
代理人 倉澤 伊知郎  

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