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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07C |
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管理番号 | 1317772 |
審判番号 | 不服2014-17206 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-08-29 |
確定日 | 2016-08-04 |
事件の表示 | 特願2011-524287「不飽和アルデヒド又はカルボン酸を製造するための酸化反応器における発泡体の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月 4日国際公開、WO2010/023053、平成24年 1月12日国内公表、特表2012-500820〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は、2009年7月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年8月29日 ドイツ(DE))を国際出願日とする出願であって、平成23年4月5日に手続補正書が提出され、平成25年9月6日付けで拒絶理由が通知され、同年12月6日に意見書および手続補正書が提出され、平成26年6月12日付けで拒絶査定がされ、同年8月29日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成27年10月26日付け補正の却下の決定により、平成26年8月29日付けの手続補正が却下されるとともに、平成27年10月26日付けで、拒絶理由が通知され、平成28年1月26日付けで意見書および手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 この出願の請求項1?22に係る発明は、明細書の記載からみて、平成28年1月26日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 不飽和又は飽和炭化水素の不均一系接触気相酸化によって不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を製造するための方法であって、 i)飽和炭化水素を少なくとも含む気体混合物を用意し、脱水素触媒材料を備える脱水素反応器内において、前記少なくとも1種の飽和炭化水素の気相中での接触脱水素を行って不飽和炭化水素を含む気体混合物を得る工程と、 ii)酸素と、少なくとも1種の不飽和炭化水素と、を少なくとも含む気体混合物を用意する工程と、 iii)第1の酸化触媒材料を有する第1の酸化反応器内において、前記工程i)で得られた不飽和炭化水素又は前記工程ii)で用意した不飽和炭化水素の気相中での接触酸化を行って不飽和アルデヒドを含む気体混合物を得る工程と、 iv)必要に応じて、第2の酸化触媒材料を備える第2の酸化反応器内において、前記工程iii)で得られた不飽和アルデヒドの気相中での接触酸化を行って不飽和カルボン酸を含む気体混合物を得る工程と、 を含み、又は飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への直接酸化のための反応器内において、前記工程i)、前記iii)及び前記iv)が同一の反応器内で同時に進行するように、飽和炭化水素を直接酸化によって不飽和カルボン酸に転化させる工程を含み、 前記脱水素反応器、前記第1の酸化反応器、前記第2の酸化反応器及び飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への直接酸化のための反応器の少なくとも1つの反応器は少なくとも1つの連続気泡発泡体を含み、前記発泡体は1?40ppiの気泡幅を有し、前記発泡体は、ランダム充填物又はブロックの形状で設けられており、 前記ランダム充填物は、反応器が管束反応器の場合には反応管の直径の50%以下且つ少なくとも5%の直径を有し、反応器が壁反応器の場合には2つの隣接するプレート間の距離の50%以下且つ少なくとも5%の直径を有し、 前記ブロックは、反応器が管束反応器の場合には反応管の直径の少なくとも90%の直径を有し、反応器が壁反応器の場合には2つの隣接するプレート間の距離の少なくとも90%の直径を有すること、 と特徴とする方法。」 第3 審判合議体が通知した拒絶の理由 平成27年10月26日付けで審判合議体が通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という)は概略以下のとおりである。 理由:この出願の請求項1?22に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1?7に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1)引用刊行物およびその記載 ア 引用刊行物 刊行物1:特表2006-525334号公報 刊行物2:特開2005-305438号公報 刊行物3:特表2003-520674号公報 刊行物4:特表2005-511776号公報 刊行物5:特開2005-144432号公報 刊行物6:特開2003-201260号公報 刊行物7:西村陽一,高橋武重 著「工業触媒-技術革新を生む触媒-」(2002年9月9日)培風館 p.8?12 第4 当審の判断 当審は、当審拒絶理由のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1?7に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 引用刊行物およびその記載 (1)刊行物 刊行物1:特表2006-525334号公報(原審における引用文献2) 刊行物2:特開2005-305438号公報(原審における引用文献3) 刊行物3:特表2003-520674号公報(原審における引用文献7) 刊行物4:特表2005-511776号公報(原審における引用文献1) 刊行物5:特開2005-144432号公報(原審における引用文献4) 刊行物6:特開2003-201260号公報(原審における引用文献5) 刊行物7:西村陽一,高橋武重 著「工業触媒-技術革新を生む触媒-」培風館,(2002年9月9日)培風館 p.8?12(原審における引用文献6) 刊行物4?7は、優先日時点での技術常識を示すためのものである。 (2)刊行物の記載事項 ア 刊行物1:特表2006-525334号公報 (1a)「【請求項1】 炭化水素反応物を、オキシジェネート・・・を含む生成物に転化させるための方法であって、 (A)前記炭化水素反応物と、酸素または酸素源と、・・・とを含む反応物組成物を、触媒と接触したマイクロチャネル反応器の中に流して、前記炭化水素反応物を前記生成物に転化させること を含み、前記炭化水素反応物が、前記マイクロチャネル反応器の中で発熱反応を受け、さらに、 (B)ステップ(A)の間、前記マイクロチャネル反応器から熱交換器へ熱を移動させること、および (C)ステップ(A)による前記生成物をクエンチすること からなる方法。」 (1b)「【請求項20】 前記炭化水素反応物が、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、またはこれらのうちの2種以上の物質の混合物を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項21】 前記炭化水素反応物が、2から約20個の炭素原子を含むアルケンを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項22】 前記炭化水素反応物が、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、2-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、1-ヘキセン、2,3-ジメチル-2-ブテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノナン、1-デセン、またはこれらのうちの2種以上の物質の混合物を含む、請求項1に記載の方法。」 (1c)「【請求項25】 前記炭化水素反応物が、1から約20個の炭素原子を含むアルデヒドを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項26】 前記炭化水素反応物が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、カプロアルデヒド、アクロレイン、trans-2-cis-6-ノナジエナール、n-ヘプチルアルデヒド、trans-2-ヘキセナール、ヘキサデコナール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、m-トルアルデヒド、p-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、またはこれらのうちの2種以上の物質の混合物を含む、請求項1に記載の方法。」 (1d)「 【請求項47】 前記触媒が、Mo、W、V、Nb、Sb、Sn、Pt、Pd、Cs、Zr、Cr、Mg、Mn、Ni、Co、Ce、およびこれらのうちの2種以上の金属の混合物からなるグループから選択された少なくとも1種の金属、金属酸化物または混合金属酸化物を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項48】 前記触媒がさらに、アルカリまたはアルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属、ランタニド、あるいはこれらのうちの2種以上の金属の混合物の金属、酸化物または混合金属酸化物を含む、請求項47に記載の方法。 【請求項49】 前記触媒がさらにP、Biまたはこれらの混合物を含む、請求項45に記載の方法。 【請求項50】 前記触媒が、金属酸化物、シリカ、メソ細孔質材料、耐火材料またはこれらのうちの2種以上の材料の組合せを含む担体を含む、請求項1に記載の方法。」 (1e)「【請求項59】 前記生成物がアルデヒドを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項60】 前記生成物が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、カプロアルデヒド、アクロレイン、trans-2-cis-6-ノナジエナール、n-ヘプチルアルデヒド、trans-2-ヘキセナール、ヘキサデコナール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、m-トルアルデヒド、p-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、またはこれらのうちの2種以上の物質の混合物を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項61】 前記生成物がカルボン酸、無水カルボン酸、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項62】 前記生成物が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、安息香酸、トルイル酸、フタル酸、サリチル酸、無水酢酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水安息香酸、またはこれらのうちの2種以上の物質の混合物を含む、請求項1に記載の方法。」 (1f)「【請求項70】 前記流体炭化水素反応物がプロパンを含み、前記生成物が、酸化プロピレン、アクリル酸、アクロレイン、アクリロニトリル、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項71】 前記流体炭化水素反応物がプロピレンを含み、前記生成物が、酸化プロピレン、アクリル酸、アクロレイン、アクリロニトリル、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。 ・・・ 【請求項74】 前記流体炭化水素反応物がイソブタンを含み、前記生成物が、イソブタノール、メタクリル酸、メタクリロニトリル、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項75】 前記流体炭化水素反応物がイソブチレンを含み、前記生成物が、イソブタノール、メタクリル酸、メタクリロニトリル、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。」 (1g)「【0002】 酸化反応は一般に、触媒の存在下で炭化水素を酸素と反応させて、オキシジェネートを生成することを含む。例としては、メタンのメタノールまたはホルムアルデヒドへの転化、エタンまたはエチレンのエタノール、エチレンオキシド、酢酸または酢酸ビニルへの転化、プロピレンのアクリル酸またはアクロレインへの転化などがある。アンモ酸化反応は一般に、触媒の存在下で炭化水素を酸素およびアンモニアと反応させて、ニトリルを生成することを含む。例としては、プロパンまたはプロピレンのアクリロニトリルへの転化、イソブタンまたはイソブチレンのメタクリロニトリルへの転化などがある。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 これらの反応の問題点は、これらの反応が発熱反応であり、一般に、ホットスポットが生じやすい固定層型反応器内で実施されることである。ホットスポットの形成は、酸化炭素(すなわちCO、CO_(2))などの望まれていない生成物を生成する並発反応に有利に働いて、所望の主要生成物の選択率(selectivity)を低下させる。本発明は、ホットスポットを形成する傾向が低減され、所望の生成物の選択率が増大されるマイクロチャネル反応器内でこの反応を実施することによって、この問題の解決法を提供する。本発明の方法における選択率の増大は、少なくとも一つには、マイクロチャネル反応器が、高い熱移動特性および滞留時間のより正確な制御を提供することによると考えられる。さらに、マイクロチャネル反応器の内部寸法を、求められていない反応のクエンチ直径(quench diameter)以下のレベルに設定することができる。」 (1h)「本明細書では用語「発泡体」が、構造全体に細孔を画定する連続壁を有する構造を指すために使用される。」(【0086】) (1i)「【0091】 触媒は、水銀細孔計法によって測定された少なくとも約5%の空隙率および約1から約1000μmの平均細孔径(細孔径の和を細孔数で割ったもの)を有する多孔質基板上に保持することができる。多孔質担体は、多孔質セラミックまたは金属発泡体とすることができる。使用することができる他の多孔質担体には炭化物、窒化物および複合材料が含まれる。多孔質担体は、約30%から約99%、一実施形態では約60%から約98%の空隙率を有することができる。多孔質担体は発泡体、フェルト、ワッドまたはこれらの組合せの形態をとることができる。金属発泡体の開放セルの数は、約20ppi(pores per inch)から約3000ppi、一実施形態では約20から約1000ppi、一実施形態では約40から約120ppiとすることができる。用語「ppi」は、1インチあたりの細孔の最大数を指す(等方性物質では測定方向は無関係だが、異方性物質では細孔数が最大になる方向に測定される)。」 (1j)「【実施例5】 【0140】 反応物組成物はプロパンおよび水蒸気を体積比25:65で含む。酸素源は酸素である。酸素は反応物組成物と多段添加を使用して混合され、十分に混合されたときの酸素と反応物組成物の体積比は10:90である。触媒は酸化触媒である。熱交換流体は水蒸気である。反応物組成物および酸素は200℃まで予熱される。反応物組成物は、ヘッダ302を通って、プロセスマイクロチャネル340および350のそれぞれの反応ゾーン342および352に流入する。酸素は、ヘッダ304を通って、酸化剤マイクロチャネル360に流入する。酸素は、酸化剤マイクロチャネル360を通ってオリフィス370に流入し、オリフィス370を通って反応ゾーン342および352に入り、そこで反応物組成物と混ざり合う。反応物組成物および酸素は触媒と接触し、反応を受けて、アクリル酸を含む生成物を生成する。触媒接触時間は50msである。生成物は400℃で反応ゾーン342および352を出る。生成物は、レキュペレータ308の中で50ミリ秒のうちに210℃までクエンチされる。生成物は、クエンチング装置314の中で50ミリ秒のうちに50℃までクエンチされる。」 イ 刊行物2:特開2005-305438号公報 (2a)「【請求項11】 C2?C8不飽和カルボン酸などのC2?C8酸素化物の製造方法であって、 a)1以上の混合金属酸化物を含む構造化触媒を、1以上の化学的処理、1以上の物理的処理、および化学的処理と物理的処理との1以上の組み合わせを使用して改質するステップと、 b)対応するアルカン、アルケン、または対応するアルカンとアルケンとの混合物を、気相接触酸化反応において、前記改質された構造化触媒と接触させるステップとを含み; 前記1以上の改質された構造化触媒を使用することで、不飽和カルボン酸などの前記酸素化物の収率および選択性が、1以上の対応する未改質の構造化触媒と比較して改善される、製造方法。」 (2b)「【0001】 本発明は、アルカン、アルケン、およびそれらの混合物を、それらの対応する酸素化物、たとえばそれらの不飽和カルボン酸およびエステルに、気相酸化によって接触転化するための構造化触媒の調製および使用に関する。特に、本発明は、改善された熱安定性、改善された熱一体性(thermal integration)、ならびにアルカン、アルケン、およびそれらの混合物の特定の接触転化中の圧力低下の軽減を伴う改善された物質移動が得られる、三次元形状のかかる触媒の調製に関する。さらに、本発明は、構造化触媒の1以上の化学的および/または物理的改質を含み、これによってこれらの触媒の、アルカン、アルケン、およびそれらの混合物から、それらの対応する酸素化物への転化の効率および選択性が改善される。本発明はさらに、構造化触媒の調製方法、およびその構造化触媒を使用したアルカン、アルケン、およびそれらの混合物の接触酸化を含む気相接触方法に関する。 【0002】 アルケンの、不飽和カルボン酸およびそれらの対応するエステルへの選択的部分酸化は、重要な商業的プロセスである。しかし、従来の固定床反応器を使用するアルカンから、生成物、たとえばオレフィン、不飽和カルボン酸、および不飽和カルボン酸のエステルへの選択的および効率的な部分酸化/脱水素化は、重大な欠点、たとえば触媒床中の大きな圧力低下、触媒反応中の不十分な物質移動、および触媒の熱不安定性を有し、これらすべてが、結果として反応物の触媒に対する不均一な到達、触媒表面の不均一性、および最適化されない局所的工程条件の原因となる。この結果、不十分な生成物の分布が生じる。」 (2c)「【0024】 好適な構造化触媒としては、たとえば、細孔、セル、チャネル、およびその他の狭い通路から選択される多数の開口部を含む連続単位構造を含むモノリス触媒、開口部以外にも透過性である壁構造を有する膜触媒、アレイおよびその他のパターンに配列した単位構造を含む配列された触媒、ならびにそれらの組み合わせから調製およびまたは製造された複合構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。モノリス触媒では、開口部は均一であり、それらは規則的パターン、直線パターン、角のあるパターン、ジグザグパターン、および不規則なパターンで配列している。モノリス触媒の開口部の断面からは、限定するものではないがハニカム構造などの規則的なパターンが見られる。触媒は、モノリスの全体的な繰り返し構造上に均一に分散し、開口部構造の壁を構成する材料層の内部に堆積している。モノリスは、金属酸化物と非金属酸化物の両方のセラミックを含むセラミックと、金属との両方を含む。膜触媒では、壁構造が、壁に透過性を付与する特徴の均一および不均一な配列を含む。触媒は、壁構造の上または壁構造内部に均一に分散している。配列された触媒は、反応物および生成物の流れの方向、たとえば反応物/生成物の流れの方向に対して垂直方向に配列している。」 (2d)「【0065】 本発明の特に好ましい一態様では、セラミック担体構造は、連続気泡または独立気泡のセラミックフォーム、またはモノリスである。より好ましくは、セラミックは、コーディエライト、アルミナ、ジルコニア、部分安定化ジルコニア(PSZ)、ニオブ、それらの混合物からなる群より選択される材料でできている。当然ながら、他の類似の材料を使用することもできる。フォーム構造は、好ましくは1インチ当たり30?150個の細孔を有する。モノリスは1インチ当たり200?800個のセルを有することができる。 【0066】 担体のこれらの形態によって、比較的最小限の圧力低下で高い空間速度を得ることができる。」 (2e)「【0147】 本発明は、アルカン、アルケン、またはアルカンとアルケンとの混合物(「アルカン/アルケン」)について、前述の促進された混合金属酸化物を含有する触媒の存在下で気相接触酸化反応を行うことによって、不飽和カルボン酸を生成するステップを含む、不飽和カルボン酸の生成方法を提供する。 【0148】 このような不飽和カルボン酸の生成においては、水蒸気を含有する出発物質ガスを使用するのが好ましい。このような場合、反応系に供給される出発物質ガスとしては、水蒸気を含有するアルカン、または水蒸気を含有するアルカンとアルケンとの混合物と、酸素含有ガスとを含むガス混合物が通常使用される。しかし、水蒸気を含有するアルカン、または水蒸気を含有するアルカンとアルケンとの混合物と、酸素含有ガスとは、反応系に交互に供給することができる。使用される水蒸気は反応系中に水蒸気ガスとして存在することができ、その導入方法は特に限定されない。」 ウ 刊行物3:特表2003-520674号公報 (3a)「【0017】 熱的化学反応では、定常状態での生成速度(速度論的反応速度)は、その反応部位への(吸熱反応)または反応部位からの(発熱反応)熱伝達の速度により制約される。発熱反応の場合には、熱の除去速度が小さいと望ましくない副反応を促進することがあり、または、その反応器内での熱的ホットスポットの発生または熱的暴走の原因になる。工業的な発熱反応器は、ホットスポットおよび熱的暴走を避けるために、ワンパス当たり(per pass)低い転化率で操業されることが多い。熱除去性が向上すると、単位反応器設備の容積当たりの生産速度をより大きくして安全に操業することが可能であろう。向上した熱伝達速度と、それにより向上した生産速度を得るために、この反応チャンバーは、反応チャンバー容積中に多孔性の挿入体(示されていない)を含んでいるのが望ましく、その場合、反応チャンバー容積中の多孔性の挿入体の平均多孔度は 1より小さく、触媒部位までの反応物(一種または複数)の輸送距離は 3mmより大きくなく、そして高さ(熱源から熱溜めまでの熱的伝達距離)は 2インチより大きくなく、それによりその多孔性の挿入体を通して、向上した熱伝達速度で反応熱が伝達される。 【0018】 この多孔性の挿入体は、粉末、多孔性モノリス(金属またはセラミック発泡体、フェルト、ハニカム構造体、チューブバンク(tube bank)、積層マイクロチャネル集合体およびそれらの組合せ、を含むがそれらに限定はされない)、繊維、ワッド(wad)(例えば、スチール・ウール)または、それらの組合せであってもよい。触媒反応器用の、使用済み触媒の取換えコストの観点から、この多孔性挿入体は、その反応チャンバーから除去できることが望ましい。この多孔性挿入体は、その反応チャンバー容積を通しての反応物のために単一またはマルチ・フロー通路を提供するように配置されてもよい。」 (3b)「金属発泡体のオープンセルは、インチ当たり約20個(ppi:pores per inch)から約3000ppi そしてより望ましくは約20?約1000ppi さらにより望ましくは約40?約120ppiである。ppi は、インチ当たりの孔の最大数として定義される(等方性の材料では、測定の方向は重要でないが、異方性の材料では、孔の数が最大になる方向で測定される)。本発明では、ppi は走査型電子顕微鏡で測定される。本発明での多孔性支持体は、小さい圧力低下、常用のセラミック・ペレット支持体より改善された熱伝導性、および化学反応器中への装填/取出しの容易さを含む幾つかの利点を提供することが見いだされた。」(【0022】) (3c)「【0049】 第2多孔性挿入体は、0.5 から 2.5cmの範囲の長さの、内径 7mmの石英チューブに適合するように機械的に加工された80孔/inch(ppi)のNi金属発泡体で調製された。」 エ 刊行物4:特表2005-511776号公報 (4a)「【請求項1】 アクリル酸(AA)の製造プロセスであって、 (a)プロピレン、酸素、不活性ガス、および水蒸気を含む第一ガス混合物を第一接触酸化反応段階(102)に送り、触媒の存在下で、前記プロピレンを、主として前記第一接触酸化反応からの第二ガス混合物に含まれるアクロレインに転化させる工程と、 (b)前記第一接触酸化反応段階からの前記第二ガス混合物を第二接触酸化反応段階(103)に送り、触媒の存在下で、前記アクロレインを、主として生成ガスに含まれるAAに転化させる工程と、 (c)前記生成ガスを急冷塔(105)に送り、前記AAをプロセス水中に含まれる前記AAを含む水溶液として回収し、前記急冷塔の上部からプロセスベントガスを取り出す工程と、を含み、 前記第一ガス混合物の水蒸気/プロピレンの比が0.3超え、2未満であり、 前記プロセス水の量が、前記急冷塔から取り出された前記水溶液中の水の量以下であることを特徴とするプロセス。 【請求項2】 工程(d)において、前記プロセス水を次の分離装置で分離し、前記急冷塔に戻すことによって、気化した前記プロセス水の大部分を前記急冷塔の上部から排出される前記プロセスベントガスと混合し、前記次の熱または接触燃焼装置において前記プロセスベントガスとともに処理することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。 【請求項3】 前記第一接触酸化の前記触媒がMo-Co-Bi系触媒であることを特徴とする請求項1または2に記載のプロセス。 【請求項4】 前記第二接触酸化の前記触媒がMo-V-W系触媒であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のプロセス。」 (4b)「【0037】 プロピレンからアクロレインへの第一段階接触酸化反応用の触媒としては、通常Mo-Bi系触媒が使用される。Mo-Co-Bi系触媒がより好ましい触媒である。アクロレインからAAへの第二段階接触酸化反応においては、通常Mo-V系触媒が使用され、Mo-V-Bi系触媒がより好ましい触媒である。さらに、触媒は複合酸化物型であることが好ましい。」 (4c)「【実施例1】 【0059】 図1に示す二段階酸化反応装置において、プロピレン0.990kg/h(SVp=166h-1、第二反応段階)と水0.220kg/hを含む加湿空気4.890kg/hとを含有するガス混合物(供給ガス)を第一段階反応装置に導入した(プロピレン10.1モル%、酸素(気体として)15.5モル%、水6.0モル%)。さらに、乾燥空気1.650kg/hを第二段階反応装置に導入した。第一段階酸化反応装置には市販のMo-Co-Bi系触媒、第二段階酸化反応装置にはMo-V-W系触媒を充填した。 【0060】 以下の条件において、AAの収率は86.36モル%、プロピレンの転化率は97.54モル%、アクロレインの転化率は97.57モル%であった。 【0061】 高温塩浴温度(第一段階):335.4℃ 高温塩浴温度(第二段階):296.3℃ 【0062】 急冷塔の上部にヒドロキノン0.005kg/hを含むプロセス水0.939kg/hを導入し、上部の温度を52.6℃とした。この条件により、急冷塔の下部のAA濃度は83.9重量%となった(AAダイマー1.18重量%を含む)。 【0063】 急冷塔のトレー5とトレー6の間から取り出される側流(1.164kg/h)には、AA5.89重量%と酢酸0.83重量%が含まれており、側流から分離後のプロセス水0.939kg/hは急冷塔の上部に戻される。 【0064】 プロセスベントガスの接触燃焼を完了するために、乾燥空気0.585kg/hを接触燃焼装置に加えた。燃焼排ガスの組成は、酸素4.27容量%、窒素80.9容量%、二酸化炭素3.72容量%、水11.1容量%である。この燃焼排ガス流から、0.729kg/hがリサイクルガスとして第一反応段階に送られた。リサイクルガス流の供給ガス流に対するモル比は0.16であり、従って第一および第二反応装置入口における供給ガス組成は以下のモル比で示された。 【0065】 第一および第二反応装置入口における供給ガス組成 酸素(第一段階)/プロピレン:1.51 酸素(第二段階)/プロピレン:0.51 水(第一段階)/プロピレン:0.52 リサイクルガス流(第一段階)/供給ガス流:0.16 【0066】 AAについて得られた空時収量は0.230kg/(lRh)注(1)であった。炭素収支は0.7モル%であった。 【0067】 注(1)はR=第一および第二段階反応装置の総反応容量を示す。」 オ 刊行物5:特開2005-144432号公報 (5a)「【0016】 別の実施形態として、本発明は、不飽和カルボン酸を対応するアルカンから調製する方法であって、 アルカンと分子酸素とを含む気体流を、金属酸化物担体上に含浸させた触媒系を含む第1の触媒帯域を含む短接触時間反応器に通すステップであって、前記触媒系は、(a)Ag、Au、Ir、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、それらの合金、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種類の金属と、(b)Bi、In、Mg、P、Sb、Zr、1?3族金属、ランタニド金属、およびそれらの組み合わせの金属を含む金属酸化物の群から選択される少なくとも1種類の改質剤とを含み、(c)Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Nb、Ta、V、Zn、それらの2成分の組み合わせ、それらの3成分の組み合わせ、およびそれらのより多成分の組み合わせの金属を含む少なくとも1種類の金属酸化物を含む場合も含まない場合もあり、前記触媒は前記気体アルカンを、対応する気体不飽和カルボン酸および飽和カルボン酸を含む気体流に転化するステップと、 前記気体流を、金属酸化物担体上に含浸させた触媒を含む第2の触媒帯域に通すステップであって、前記触媒はMo、Fe、P、V、およびそれらの組み合わせの金属を含む少なくとも1種類の金属酸化物を含み、前記触媒帯域は、前記気体飽和カルボン酸をその対応する気体不飽和カルボン酸に転化する場合に累積的に効果的であるステップとを含み、 前記第1の触媒帯域は、前記反応器を通過する前記気体流の流れる方向に対して、前記第2の触媒帯域の上流にあり、 前記第1の触媒帯域は500℃?1000℃の温度で操作され、第1の反応帯域の滞留時間は100ミリ秒以内であり、 前記第2の触媒帯域は300℃?400℃の温度で操作され、第2の反応帯域の滞留時間は100ミリ秒以内であり、 前記アルカンの前記気体流は、前記反応器を1回通過するか、あるいは、不飽和カルボン酸の全体の収率を増加させるために、未反応アルカンは、前記反応器に入る前記アルカンの気体流中に再循環され、さらに飽和カルボン酸は前記第2の触媒帯域中に再循環されるかである方法を提供する。」 カ 刊行物6:特開2003-201260号公報 (6a)「【0021】第二の態様において、本発明は不飽和カルボン酸を製造する方法を提供し、該方法は:反応領域において、アルカンを含むフィードガス流れを第一触媒成分および第二触媒成分を含む触媒系と接触させることを含み、前記第一触媒成分がアルカンの対応する生成物アルケンおよび未反応アルカンを含む生成物ガスへの転化を触媒することができ、前記第二触媒成分がアルカンの対応する不飽和カルボン酸を含む生成物ガスへの転化を触媒することができ、アルケンの対応する生成物不飽和カルボン酸を含む生成物ガスへの転化を触媒することができ、ここで前記第一触媒成分が前記第二触媒成分と異なるものである。 【0022】第三の態様において、本発明は不飽和カルボン酸を製造する方法を提供し、該方法は:反応領域において、アルカンを含むフィードガス流れを、アルカンの対応する不飽和カルボン酸、対応するアルケンおよび未反応アルカンを含む生成物ガスへの転化を触媒でき、アルケンの対応する不飽和カルボン酸を含む生成物ガスへの転化を触媒できる触媒系と接触させることを含み;前記反応領域は、少なくとも二つのサブ領域を含み、前記サブ領域は逐次的に配置され、前記サブ領域の少なくとも一つは、前記の対応するアルケン生成物の製造に最も好ましい反応条件に維持され;少なくとも一つの他のサブ領域は前記の対応する不飽和カルボン酸生成物の製造に最も好ましい反応条件に維持され;前記フィードガス流れは逐次的に前記サブ領域を通過する。」 (6b)「【0076】プロパンの酸化反応を本発明の方法により行う場合、アクリル酸に加えて、一酸化炭素、二酸化炭素、酢酸などが副生成物として生じる。さらに、本発明の方法において、反応条件によって不飽和アルデヒドが形成される場合がある。例えば、出発物質混合物中にプロパンが存在する場合、アクロレインが形成され;イソブタンが出発物質混合物中に存在する場合、メタクロレインが形成される。かかる場合において、かかる不飽和アルデヒドを再び本発明の混合金属酸化物含湯触媒を用いて気相接触酸化に付すか、または不飽和アルデヒドの公知酸化反応触媒を用いた気相接触酸化反応に付すことにより、所望の不飽和カルボン酸に転化することができる。 【0077】本発明の第二の態様の第一例の第一法として、第一触媒成分と第二触媒成分の相対比が反応物質の流れの経路に沿って反応領域中で変化するような方法で触媒混合物を調製することができる。例えば、第二触媒成分の濃度は、反応領域の入り口から反応領域の出口へ向かって増大する。かかる増大は反応領域の長さにわたって連続的であってもよいし、リアクターの長さに沿って段階的に起こってもよいし、リアクターの入り口は第二触媒成分の割合が低く、リアクターの後尾は第二触媒成分の割合が高く、リアクターの中間部分は逐次的に、または段階的に低い割合から高い割合への移行部であってもよい。 【0078】本発明の第二の態様の第一例の第二法として、反応領域を2またはそれ以上のサブ領域に再分することができ、反応混合物は逐次的にサブ領域を通過する。サブ領域のそれぞれは、他のサブ領域と比較して異なる割合の第一および第二触媒成分を含む。さらに、各サブ領域内で、第一および第二触媒成分の相対比は、第一例の第一法における全反応領域に関してすでに記載したように変化し得る。例えば、第二触媒成分の濃度は各サブ領域において逐次的に増大する。」 キ 刊行物7:西村陽一,高橋武重 著「工業触媒-技術革新を生む触媒-」(2002年9月9日)培風館 p.8?12 (7a)「担体の役割を要約すると,以下のようになる。 ・・・(3)触媒反応の運転性を向上させる。 ・細孔構造の制御により,反応物,生成物の拡散性を向上させる。 ・反応に必要な熱,あるいは発生する熱を拡散させる媒体。 ・大きな工業装置で使用するうえで必要な触媒の形状,寸法,耐摩耗性,耐衝撃強度などマクロ物理特性の維持。・・・」(11頁16行?12頁12行) 2 刊行物1に記載された発明 刊行物1の摘記(1j)には、プロパンおよび水蒸気の反応組成物が酸素と酸化触媒の下で反応ゾーンにおいて混ざり合い、接触し反応してアクリル酸を含む生成物を生成することが記載され、用いる酸化触媒に関しては、摘記(1h)に、本明細書での「発泡体」の用語の定義として、「構造全体に細孔を画定する連続壁を有する構造を指す」との記載があり、摘記(1i)には、摘記(1a)?摘記(1e)に記載される炭化水素の酸化生成物製造に用いるための触媒形態の一つとして、触媒を保持する多孔質担体である金属発泡体の開放セルの数は、約20から約1000ppiとすることができることが明確に記載されているのであるから、刊行物1には、以下の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。) 「プロパンの不均一系接触気相酸化によってアクリル酸を製造するための方法であって、 プロセスマイクロチャンネル内の反応ゾーンにおいて、酸化触媒を用いて、チャンネル反応器内でプロパンを酸化によってアクリル酸にするもので、反応器は構造全体に細孔を画定する連続壁を有する構造の触媒担体としての発泡体を有し、前記発泡体は20?1000ppiの開放セル数をもつ方法。」 3 対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「プロパンの不均一系接触気相酸化によってアクリル酸を製造するための方法」とは、本願発明の「不飽和又は飽和炭化水素の不均一系接触気相酸化によって不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を製造するための方法」に該当し、引用発明の「反応ゾーン」を有する「チャンネル反応器」は、大きさや形状の特定のない本願発明の「反応器」に該当する。 そして、引用発明の「構造全体に細孔を画定する連続壁を有する構造の触媒担体としての発泡体」は、本願発明の「連続気泡発泡体」に相当し、引用発明の「発泡体は20?1000ppiの開放セル数をもつ」は、摘記(1i)から、用語「ppi」(pores per inch)が、1インチあたりの細孔を指すことから、本願発明の定義と同じであるといえ、本願発明の「発泡体は1?40ppiの気泡幅を有し」と少なくとも発泡体が「ppiとして一定範囲の気泡幅を有する」という限りにおいて一致している。 したがって、両者は、「不飽和又は飽和炭化水素の不均一系接触気相酸化によって不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を製造するための方法であって、 飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への直接酸化のための反応器内において、触媒を用いて、飽和炭化水素を直接酸化によって不飽和カルボン酸に転化させる工程を含み、 飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への直接酸化のための反応器は、少なくとも1つの触媒担体としての連続気泡発泡体を含み、前記発泡体はppiとして一定範囲の気泡幅を有する方法。」である点で一致しており、以下の点で相違している。 相違点1:本願発明は、「飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への直接酸化のための反応器内において、前記工程i)、前記iii)及び前記iv)が同一の反応器内で同時に進行するように、飽和炭化水素を直接酸化によって不飽和カルボン酸に転化させる工程を含み」と特定されているのに対して、引用発明においては、「チャンネル反応器内でプロパンを酸化によってアクリル酸にするもの」である点 相違点2:発泡体のppiの数値範囲について、 本願発明が、「1?40ppi」と特定されているのに対して、引用発明においては、「20?1000ppi」と特定されている点 相違点3:発泡体の形状や反応器の形状との関係について、 本願発明が、「前記発泡体は、ランダム充填物又はブロックの形状で設けられており、 前記ランダム充填物は、反応器が管束反応器の場合には反応管の直径の50%以下且つ少なくとも5%の直径を有し、反応器が壁反応器の場合には2つの隣接するプレート間の距離の50%以下且つ少なくとも5%の直径を有し、 前記ブロックは、反応器が管束反応器の場合には反応管の直径の少なくとも90%の直径を有し、反応器が壁反応器の場合には2つの隣接するプレート間の距離の少なくとも90%の直径を有する」ことが特定されているのに対して、引用発明では、そのような特定のない点 (2)相違点の判断 ア 相違点1について 引用発明のチャンネル反応器内では、同一の反応器内でプロパンをアクリル酸に変化させている以上、不飽和又は飽和炭化水素から不均一系接触気相酸化によって不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を製造するための方法として、触媒を用いて接触脱水素や接触酸化することで、一つの反応器内、別々の反応器内いずれにおいても不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を形成することは技術常識である(摘記(4a)?摘記(4c)、摘記(5a)、摘記(6a)?摘記(6b)参照)ことも考慮すると、飽和炭化水素の気相中での接触脱水素を行って不飽和炭化水素を含む気体混合物を得る工程である工程i)、前記工程i)で得られた不飽和炭化水素の気相中での接触酸化を行って不飽和アルデヒドを含む気体混合物を得る工程iii)及び前記工程iii)で得られた不飽和アルデヒドの気相中での接触酸化を行って不飽和カルボン酸を含む気体混合物を得る工程iv)は、引用発明のチャンネル反応器内でも同時に並行して生じているはずであり、同一の反応器内で同時に各工程を並行して行っていることに他ならない。 したがって、引用発明の「酸化触媒を用いて、チャンネル反応器内でプロパンを酸化によってアクリル酸にする」とは、本願発明の飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への直接酸化のための反応器内において、前記工程i)、前記iii)及び前記iv)が同一の反応器内で同時に進行するように、飽和炭化水素を直接酸化によって不飽和カルボン酸に転化させる工程のことであり、相違点1は実質的な相違点とはいえない。 イ 相違点2について 刊行物1の摘記(1i)には、「金属発泡体の開放セルの数は、約20ppi(pores per inch)から約3000ppi、一実施形態では約20から約1000ppi、一実施形態では約40から約120ppiとすることができる。」(下線は当審にて追加)と記載され、刊行物2には、アルカンから不飽和カルボン酸を製造するための触媒の構造として、摘記(2d)に、「セラミック担体構造は、連続気泡または独立気泡のセラミックフォーム、またはモノリスである。より好ましくは、セラミックは、コーディエライト、アルミナ、ジルコニア、部分安定化ジルコニア(PSZ)、ニオブ、それらの混合物からなる群より選択される材料でできている。当然ながら、他の類似の材料を使用することもできる。フォーム構造は、好ましくは1インチ当たり30?150個の細孔を有する。」(下線は当審にて追加)と記載され、刊行物3の摘記(3b)には、「金属発泡体のオープンセルは、インチ当たり約20個(ppi:pores per inch)から約3000ppi そしてより望ましくは約20?約1000ppi さらにより望ましくは約40?約120ppiである。」(下線は当審にて追加)及び「本発明での多孔性支持体は、小さい圧力低下、常用のセラミック・ペレット支持体より改善された熱伝導性、および化学反応器中への装填/取出しの容易さを含む幾つかの利点を提供する」との記載があるように、発泡体のppiの数値範囲としては、本願発明の「発泡体は1?40ppiの気泡幅を有し」と、数値範囲が重複するとともに、下限数値が、本願発明の数値範囲に該当するものが周知であるし、刊行物7摘記(7a)に記載されるように触媒担体の役割が反応熱の拡散や触媒形状の確保等であることが技術常識であることも考慮すると、発泡体の単位長さあたりの孔の数は、発泡体自体の強度や熱伝導性の確保、流体の流通量の確保等の観点から当業者が適宜設定できる設計的事項であるともいえる。 したがって、相違点2は、実質的な相違点でないか、仮に相違点であるとしても引用発明において当業者が容易になし得る技術的事項であるといえる。 ウ 相違点3について 刊行物3の摘記(3a)には、「ホットスポットおよび熱的暴走を避けるために、ワンパス当たり(per pass)低い転化率で操業されることが多い。熱除去性が向上すると、単位反応器設備の容積当たりの生産速度をより大きくして安全に操業することが可能であろう。向上した熱伝達速度と、それにより向上した生産速度を得るために、この反応チャンバーは、反応チャンバー容積中に多孔性の挿入体(示されていない)を含んでいるのが望ましく 」(下線は当審にて追加)との記載があり、摘記(3c)には、「第2多孔性挿入体は、0.5 から 2.5cmの範囲の長さの、内径 7mmの石英チューブに適合するように機械的に加工された80孔/inch(ppi)のNi金属発泡体で調製された 」(下線は当審にて追加)との記載があるように、ホットスポットを抑制し、生産速度を向上するために、反応チャンバーに相当するチューブに適合するように金属多孔性の挿入体を設けることが望ましいとされているから、この挿入体は、チューブに適合するように加工されていると記載されていることからブロック状といえ、引用発明において、反応器に設ける発泡体として、ブロック状であるといえる、反応管の形状に適合するよう加工された反応管直径の90%以上の直径を有するブロック体を、反応管内に設けることは、当業者が容易になしうるといえる。 エ 効果について 本願発明の効果は、連続気泡発泡体を反応器に設けることによって、熱伝導性を高めてホットスポットを解消できることにあるのだから、刊行物1摘記(1g)刊行物2摘記(2b)刊行物3摘記(3a)摘記(3b)にも記載されるとおり、当業者が刊行物1?3記載の発明および優先日の技術常識から予測可能なものである。 また、本願明細書においては、効果の具体的記載としては、【0076】?【0080】において、触媒発泡体担体の使用の有無によって熱媒体と触媒材料との間の温度差が有意に低かったこと、つまり熱伝導性が向上したことを定性的に述べているだけであって、この観点からも、本願発明の効果は、引用発明及び刊行物1?3に記載された技術的事項から予測可能なものにすぎない。 オ 請求人の主張について 審判請求人は、平成28年1月26日付け意見書において、刊行物1の20ppi?3000ppiという孔数を最適化することはあり得ない旨の主張、及び本願発明は非常に大きな管径を有する管束反応器を使用するものであるのに対して、刊行物1が小径のマイクロチャンネルを用いるものである点で相違しており刊行物3と組み合わせられない旨の主張をしているので検討する。 まず、孔数の最適化は、前記のとおり、発泡体自体の強度や熱伝導性の確保、流体の流通量の確保等の観点から当業者が適宜設定できる設計的事項であるといえるし、もともと刊行物1?3に記載されるように、重複する範囲が示されている。 そして、1?40ppiという数値範囲については、上限下限の臨界的意義はもちろんのこと、技術的意義についての説明もなされておらず、本願明細書には、異なる数値範囲に関し好ましいとの記載(【0044】)があるだけである。 このことは、請求人が、本願発明がサポート要件を満たしていることを説明するために、孔数を制御することは出願時の技術常識であると述べていることとも整合するものである。 次に、管束反応器の管径に関する主張は、本願発明において、管束反応器の管径は発明特定事項とされておらず、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。 そして、本願明細書【0053】においても、管束反応器の各管は、3cmが好ましいとの記載もあることや、【0054】では壁反応器やプレート反応器も対象としており、本願発明が、管径が非常に大きなもののみを対象とした発明であるとはいえない。 唯一の実施例においても、どのような反応器にどのように設置したのか、管束反応器であるとしても、その反応管の直径が示されているわけでもないことを考慮すると、本願発明も引用発明も刊行物3に記載された技術的事項も、連続気泡を有する発泡体を反応器内に設置することで、ホットスポットの解消を試みている点で共通する技術を記載したものであり、引用発明に刊行物3記載の技術的事項を適用することは当業者が容易になし得ることである。 したがって、請求人の上記主張はいずれも採用できない。 4 まとめ 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物1?3に記載された技術的事項、及び優先日当時の技術常識に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-03-11 |
結審通知日 | 2016-03-14 |
審決日 | 2016-03-25 |
出願番号 | 特願2011-524287(P2011-524287) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C07C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 新留 素子、瀬下 浩一 |
特許庁審判長 |
佐藤 健史 |
特許庁審判官 |
齊藤 真由美 瀬良 聡機 |
発明の名称 | 不飽和アルデヒド又はカルボン酸を製造するための酸化反応器における発泡体の使用 |
代理人 | 赤塚 賢次 |