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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1317786
審判番号 不服2015-11242  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-16 
確定日 2016-08-04 
事件の表示 特願2013-529108「コンテンツ配信における制御とインタラクションのためのモバイル機器ユーザの識別情報/存在の特定方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月22日国際公開、WO2012/036656、平成25年10月31日国内公表、特表2013-540307〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2010年9月17日を国際出願日とする出願であって,平成25年9月13日に手続補正がなされ,平成26年4月3日付けで拒絶理由通知がなされ,同年10月7日に手続補正がなされたが,平成27年2月10日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月16日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成27年6月16日の手続補正の補正却下の決定について

[補正却下の決定の結論]
平成27年6月16日の手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の目的

平成27年6月16日の手続補正(以下,「本件補正」という。)により,請求項1は,次のとおりに補正された(下線は,審判請求人が補正箇所を示すために付与したものである。)。

<本件補正後の請求項1>
「コンテンツ配信環境における通信のための方法であって,
前記コンテンツ配信環境内に存在するモバイル機器がモバイル・キャリアに識別されることを意図して該モバイル機器によって送信されたブロードキャスト信号をリッスンすることによって該モバイル機器のモバイル機器識別子を検出するステップと,
前記検出されたモバイル機器識別子を用いて,前記モバイル機器のユーザに関するデモグラフィック情報を特定するステップと,
前記特定されたデモグラフィック情報を用いて,前記ユーザに対して表示するコンテンツを選択するステップと,
前記選択されたコンテンツを表示する,前記モバイル機器の近傍にある少なくとも1つのディスプレイ装置を,前記モバイル機器識別子が検出された場所を用いて,識別するステップと,
を含む,前記方法。」

本件補正前の請求項1は,次のとおりである。

<本件補正前の請求項1>
「コンテンツ配信環境における通信のための方法であって,
前記コンテンツ配信環境内に存在するモバイル機器のモバイル機器識別子を検出するステップと,
前記検出されたモバイル機器識別子を用いて,前記モバイル機器のユーザに関するデモグラフィック情報を特定するステップと,
前記特定されたデモグラフィック情報を用いて,前記ユーザに対して表示するコンテンツを選択するステップと,
前記選択されたコンテンツを表示する,前記モバイル機器の近傍にある少なくとも1つのディスプレイ装置を,前記モバイル機器識別子が検出された場所を用いて,識別するステップと,
を含む,前記方法。」

本件補正は,請求項1において,「前記コンテンツ配信環境内に存在するモバイル機器のモバイル機器識別子を検出するステップ」を,「モバイル機器がモバイル・キャリアに識別されることを意図して該モバイル機器によって送信されたブロードキャスト信号をリッスンすることによって」検出するものに限定するものである。
したがって,請求項1に係る本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とする。

2.独立特許要件違反について

そこで,請求項1に係る本件補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすか否か,すなわち,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて検討する。

3.引用文献

(1)米国特許出願公開第2008/109307号明細書

原査定の拒絶の理由において引用された米国特許出願公開第2008/109307号明細書(以下,「引用文献1」という。)には,次の事項が記載されている。

ア.「[0007] One embodiment of the methods and systems disclosed herein relates to television content and advertising. In certain such embodiments a user profile may be derived from an individual's usage of a range of different types of network-connected devices, and the profile may be used to target television content, including advertisements, to the user. The network-connected devices from which usage profiles are derived may include mobile phones, computers, Internet-connected entertainment devices (such as Internet-connected televisions and radios) and other devices. Capabilities of mobile handset technologies may be used to unify a profile of a user across various network-connected devices. In embodiments, a device-specific identifier (DSI) of a mobile device owned by a user, such as a MAC address of the user's mobile phone, may be associated with user names that the user enters when interacting with network content, such as web sites, using that mobile device. Once the DSI is associated with one or more user names, activities associated with those user names can be tracked and used to generate a profile for that user, regardless of what network-connected device is used to undertake the activities. ・・・(中略)・・・ Once a usage profile is generated, targeting techniques, such as hand targeting, demographic targeting, geographic targeting, psychographic targeting, collaborative filtering, neural network-based targeting, hierarchical targeting, and the like may be used to target content, including advertisements, to be directed to the television of the user. ・・・(中略)・・・Thus, the methods and systems disclosed herein allow for user-specific control of content delivered to the screen the user is watching, based on proximity of the user's mobile handset to the screen.」
(当審訳:
[0007] 本明細書に開示する方法及びシステムの一実施形態は,テレビコンテンツと広告に関するものである。いくらかのこのような実施形態では,ユーザプロファイルは,異なるタイプのネットワーク接続機器にわたる個々の使用から得ることができ,このプロファイルは,ユーザに対して,広告を含むテレビコンテンツをターゲットするために使用される。使用プロファイルが得られるネットワーク接続機器は,携帯電話機,コンピュータ,インターネット接続された娯楽機器(インターネット接続テレビやラジオのような)および他のデバイスを含む。携帯ハンドセット技術の能力は,様々なネットワーク接続機器にわたるユーザのプロファイルを統合するために使用できる。実施形態において,ユーザの携帯電話機のMACアドレスにような,ユーザにより所有されるモバイル機器の機器固有識別(DSI)は,そのモバイル機器を使用してウェブサイトのようなネットワークコンテンツと相互作用したときに,ユーザが入力したユーザ名と関連づけることができる。DSIが,1またはそれ以上のユーザ名と関連付けられると,そのユーザ名に関連する活動は,どのネットワーク接続機器が活動に使用されるかとは関係なく,追跡され,そのユーザのプロファイルを作成するために使用される。 ・・・(中略)・・・ 使用プロファイルが生成されると,ハンドターゲッティング,デモグラフィック(人口統計学的)ターゲティング,地理的ターゲティング,心理学的特性ターゲティング,協調フィルタリング,ニューラルネットワークに基づくターゲティング,階級組織ターゲティング等のような,ターゲティング技術が,ユーザのテレビに向けて,広告を含むコンテンツをターゲットするために使用できる。・・・(中略)・・・このように,この方法とシステムは,ユーザの携帯ハンドセットが画面に接近したことに基づいて,ユーザが見ている画面に配信されるコンテンツのユーザ別制御を可能にする。」

イ.「[0057] FIG. 2 depicts using a mobile handset DSI to facilitate delivery of targeted television advertising 218. A mobile handset 202 may be in communication with a set-top box 204 or other Internet-connected device that is controlling a television 208. The mobile handset 202 may be in communication with the set-top box 204 through a wireless interface 214, such as short distance wireless interfaces including WiFi, Bluetooth, WUSB, UWB and the like. The mobile handset 202 may include location technology such as a GPS receiver/cellular/radio wave triangulation to further assist locating the relative position of the handset user and the television 208. The set-top box 204 may be connected to one or more host servers 210, such as through the internet, to communicate content related to functions of the set-top box 204. The host server 210 may include functionality to support the identification and selection of content, such as advertisements 218, based the mobile handset 202 device-specific identification (DSI).
・・・(中略)・・・
[0059] To deliver targeted advertising 218 to a user of the mobile handset 202 who may be viewing the television 208, the set-top box 204 may extract the mobile handset DSI 212 by employing a short-distance wireless technology (WiFi, Bluetooth, WUSB, UWB, and the like) to locate mobile handsets within viewing proximity of the television 208. The mobile handset DSI 212 (also known as mobile DSI or just DSI) may then be uploaded from the set-top box 204 over the internet to the host 210 for matching to a user-specific authentication/identification profile (a user profile) that corresponds to the uploaded DSI 212. The servers 210 may be servers associated with the DSI platform 100, or may be associated with partners or affiliates of the platform 100. The server 210 may mine data across an uploaded user authentication/identification profile that corresponds to the extracted mobile DSI 212 and use the information for precision advertisement targeting. By using location based technology such as GPS/cellular/radio wave triangulation, a more precise location for the user may be determined so that advertising for a user viewing the television may be presented on the television 208. The location based technology information may be retrieved from the mobile handset 202, such as by querying the mobile handset 202 or the location information may be included in the initial extraction of the DSI 212 by the set-top box 204. The host server(s) 210 may then find the most appropriate advertisement 218 and distribute the advertisement back to the set-top box 204 for display on the television 208. In an example, advertisements 218 may come in the form of dynamic, embedded content advertisements 218. Interactivity during the period of display of the advertisement can be monitored and recorded by the servers 210 for the purposes of adding more data to the corresponding user authentication/identification profile.」
(当審訳:
[0057] 図2は,ターゲットテレビ広告218の配信を容易にするために携帯ハンドセットDSIを用いることを示している。携帯ハンドセット202は,テレビ208を制御するセットトップボックス204又は他のインターネット接続機器と通信することができる。携帯ハンドセット202は,WiFi,Bluetooth,WUSB,UWB等の近距離無線インタフェースのような無線インタフェース214を介して,セットトップボックス204と通信することができる。携帯ハンドセット202は,ハンドセットのユーザとテレビ208の相対的な位置を特定することをさらに助けるために,GPS受信機/セルラー/電波三角測量などの位置技術を含むことができる。セットトップボックス204は,セットトップボックス204の機能に関連するコンテンツを通信するために,インターネット等を介して,1つまたは複数のホストサーバ210に接続することができる。ホスト・サーバ210は,携帯ハンドセット202の機器固有識別(DSI)に基づいて,広告のようなコンテンツの識別および選択を支援する機能を含む。
・・・(中略)・・・
[0059] ターゲット広告218を,テレビ208を視聴している携帯ハンドセット202のユーザに配信するために,セットトップボックス204は,テレビ208の視聴近傍内に位置する携帯ハンドセットに対して近距離無線技術(WiFi,Bluetooth,WUSB,UWBなど)を用いて,携帯ハンドセットのDSI212を取り出してもよい。携帯ハンドセットDSI212(モバイルDSIまたはDSIとしても知られている)は,セットトップボックス204からインターネットを介してホスト210にアップロードされ,アップロードされたDSI212に対応するユーザ別の認証/識別プロファイル(ユーザプロファイル)とマッチングされる。サーバ210は,DSIプラットフォーム100に関連するサーバ群であってもよいし,プラットフォーム100のパートナーやアフィリエートに関連してもよい。サーバ210は,取り出されたモバイルDSI212に対応するアップロードされたユーザ認証/識別プロファイルからデータをマイニングして,その情報を正確な広告ターゲティングに使用することができる。GPS/セルラー/電波三角測量のような技術に基づく位置を用いることで,ユーザのより正確な位置が決定され,テレビを視聴しているユーザに対する広告がテレビ208上に提供されてもよい。技術情報に基づいた位置は,携帯ハンドセット202に問い合わせるなどして,携帯ハンドセット202から取得されてもよく,または,位置情報は,セットトップボックス204によるDSI212の最初の取得に含まれてもよい。ホストサーバ(群)210は,最も適切な広告218を見つけてテレビ208上に表示するためにセットトップボックス204に広告を配信することができる。例えば,広告218は,動的に,埋め込まれたコンテンツ広告218の形をとることができる。広告の表示中における相互作用は,対応するユーザの認証/識別プロファイルにさらなるデータを追加する目的のために,サーバ210によってモニター及び記録されてもよい。)

ウ.「[0066] Referring to FIG. 6, after establishing unique mobile handsets or personal devices as determined by the presence and distance of their mobile handsets from a nearby a television or other electronic display as described in reference to FIGS. 4 and 5, the set-top box 204 or the television 208 uploads the detected mobile device DSIs to host servers 210. The servers 210 compare the extracted Mobile DSI 212 across a database of user-specific authentication/identification profiles 602 to find the profiles which correspond to the extracted mobile DSIs (resulting in a corresponding profile 604). Using information from the corresponding user-specific authentication/identification profiles 604, servers 210 may make demographic assumptions.」
(当審訳:
[0066] 図6を参照すると,図4,図5を参照して述べたように,近くにあるテレビまたはその他の電子ディスプレイからの携帯ハンドセットの配置や距離によって決定された単一の携帯ハンドセットや個人機器を確認した後,セットトップボックス204またはテレビ208は,検出されたモバイル機器DSIsをホストサーバ210にアップロードする。サーバは,取り出されたモバイルDSI212をユーザ別の認証/識別プロファイル602のデータベースと比較し,取り出されたモバイルDSIsに対応するプロファイルを求める(対応するプロファイル604が得られる)。対応するユーザ別の認証/識別プロファイル604からの情報を使用して,サーバ210は,デモグラフィックの推定を行うことができる。)

エ.「[0131] Mobile handsets provide a variety of device-specific identification types on which a DSI may be based. A mobile handset that is WiFi or WiMax enabled will have a MAC address, this MAC address may serve as a DSI. ・・・(中略)・・・ GSM phones use the International Mobile Equipment Identity or IMEI that may serve as a DSI. CDMA phones use Mobile Equipment Identifiers or MEIDs that may serve as a DSI. Other similar device-specific identifications that are unique to a single physical mobile handset may serve as a mobile DSI.」
(当審訳:
携帯ハンドセットは,DSIが基づく,多様な機器固有識別のタイプを提供する。WiFiやWiMAXを可能とする携帯ハンドセットはMACアドレスを有し,このMACアドレスはDSIとして役立つ。・・・(中略)・・・GSM電話機は,DSIとして役立つ国際モバイル機器識別すなわちIMEIを使用する。CDMA電話機は,DSIとして役立つモバイル機器識別子すなわちMEIDsを使用する。一つの物理的な携帯ハンドセットに固有の他の同様の装置固有の識別子は,モバイルDSIとして役立つ。)

オ.「[0137]・・・(中略)・・・Advertisement targeting may be improved through the use of mobile DSI device detection within proximity of a front of a television. Mobile DSI, as herein described, may uniquely identify an individual through an association of a user profile with the Mobile DSI. By detecting a mobile device (through Mobile DSI detection) that is positioned within viewing distance of a television and identifying advertisements targeted to the user of the detected mobile device, the targeted advertisement may be presented to the television, or a set-top box controlling the television, and displayed for the user. The advertisement may be targeted based on a variety of factors associated with the mobile DSI including a user profile associated with the mobile DSI.

[0138] Advertisements may be targeted to and presented to a user based on the user's mobile DSI through a process that includes: gathering the device identifier or device-specific identification (DSI) from the user's mobile device, associating the gathered DSI with a user identity to provide a usage profile that may include usage tracking of content interaction through the mobile device and other internet enabled devices, using the usage profile to identify an advertisement or offer, determining which screen provides a good proximity to the user based on the relative distance of the user's mobile DSI device from a screen, and displaying the advertisement or offer on the screen.」
(当審訳:
[0137] ・・・(中略)・・・広告ターゲティングは,テレビの正面近傍内のモバイルDSIデバイス検出を用いて改善することができる。本明細書で説明したように,モバイルDSIとユーザプロファイルの関連付けに基づいて,モバイルDSIは個人を一意に識別することができる。テレビの視聴距離内に位置しているモバイル機器を(モバイルDSIの検出を通して)検出し,検出されたモバイル機器のユーザにターゲットされる広告を識別することにより,ターゲットされた広告は,テレビに,または,テレビを制御するセットトップボックスに提供され,ユーザに対して表示される。広告は,モバイルDSIに関連づけられたユーザプロファイルを含んだモバイルDSIに関連付けられた種々の要素に基づいてターゲットされる。

[0138] 広告は,次のことを含んだプロセスを通して,ユーザのモバイルDSIに基づいて,ユーザにターゲットされ,提供される。:ユーザのモバイル機器から機器識別子または機器固有識別(DSI)を収集すること,モバイル機器および他のインターネット可能機器を介したコンテンツ相互作用の使用の追跡を含んでもよい使用プロファイルを提供するために,収集されたDSIをユーザ識別に関連づけること,広告またはオファーを識別するために使用プロファイルを用いること,画面からユーザのモバイルDSI機器の相対距離に基づいて,どの画面がユーザにかなり接近しているかを決定すること,その画面にその広告またはオファーを表示すること。)

前記ア.?オ.によれば,引用文献1には次の事項が記載されているといえる。

(全体の手順について)

・前記オ.の「広告ターゲティングは,テレビの正面近傍内のモバイルDSIデバイス検出を用いて改善することができる。本明細書で説明したように,モバイルDSIとユーザプロファイルの関連付けに基づいて,モバイルDSIは個人を一意に識別することができる。テレビの視聴距離内に位置しているモバイル機器を(モバイルDSIの検出を通して)検出し,検出されたモバイル機器のユーザにターゲットされる広告を識別することにより,ターゲットされた広告は,テレビに,または,テレビを制御するセットトップボックスに提供され,ユーザに対して表示される。広告は,モバイルDSIに関連づけられたユーザプロファイルを含んだモバイルDSIに関連付けられた種々の要素に基づいてターゲットされる。」によれば,
引用文献1には,「広告をターゲティングする方法」が記載され,その方法は,次の手順を有するといえる。
「テレビの視聴距離内に位置しているモバイル機器のモバイルDSIを検出するステップ,
モバイルDSIに関連づけられたユーザプロファイルに基づいて,ユーザにターゲットされる広告を識別するステップ,
ターゲットされた広告を,テレビに,または,テレビを制御するセットトップボックスに提供して,ユーザに対して表示するステップ。」

さらに,引用文献1には,前記各ステップについて次の事項が記載されている。

(DSIの検出について)

・前記イ.の「携帯ハンドセット202の機器固有識別(DSI)」の記載,
前記イ.の「セットトップボックス204は,テレビ208の視聴近傍内に位置する携帯ハンドセットに対して近距離無線技術(WiFi,Bluetooth,WUSB,UWBなど)を用いて,携帯ハンドセットのDSI212を取り出してもよい。」の記載によれば,
セットトップボックス204は,テレビ208の視聴近傍内に位置する携帯ハンドセットに対して近距離無線技術を用いて,携帯ハンドセットの機器固有識別(DSI)を検出する。

・前記エ.の「携帯ハンドセットは,DSIが基づく,多様な機器固有識別のタイプを提供する。・・・(中略)・・・GSM電話機は,DSIとして役立つ国際モバイル機器識別すなわちIMEIを使用する。CDMA電話機は,DSIとして役立つモバイル機器識別子すなわちMEIDsを使用する。一つの物理的な携帯ハンドセットに固有の他の同様の装置固有の識別子は,モバイルDSIとして役立つ。」によれば,
機器固有識別(DSI)は,GSM電話機の国際モバイル機器識別(IMEI)や,CDMA電話のモバイル機器識別子(MEIDs)等を含む。

(広告の識別について)

前記イ.の「携帯ハンドセットDSI212(モバイルDSIまたはDSIとしても知られている)は,セットトップボックス204からインターネットを介してホスト210にアップロードされ,アップロードされたDSI212に対応するユーザ別の認証/識別プロファイル(ユーザプロファイル)とマッチングされる。サーバ210は,DSIプラットフォーム100に関連するサーバ群であってもよいし,プラットフォーム100のパートナーやアフィリエートに関連してもよい。サーバ210は,取り出されたモバイルDSI212に対応するアップロードされたユーザ認証/識別プロファイルからデータをマイニングして,その情報を正確な広告ターゲティングに使用することができる。」の記載,
前記ア.の「使用プロファイルが生成されると,ハンドターゲッティング,デモグラフィック(人口統計学)ターゲティング,・・・(中略)・・・のような,ターゲティング技術が,ユーザのテレビに向けて,広告を含むコンテンツをターゲットするために使用できる。」の記載,
前記ウ.の「サーバは,取り出されたモバイルDSI212をユーザ別の認証/識別プロファイル602のデータベースと比較し,取り出されたモバイルDSIsに対応するプロファイルを求める(対応するプロファイル604が得られる)。対応するユーザ別の認証/識別プロファイル604からの情報を使用して,サーバ210は,デモグラフィックの推定を行うことができる。」によれば,
セットトップボックス204は,検出した機器固有識別(DSI)をサーバにアップロードし,サーバは,機器固有識別(DSI)に関連づけられたユーザプロファイルを特定し,そのユーザプロファイルの情報を使用してデモグラフィックの推定を行う。
また,サーバは,当該デモグラフィックをターゲットとする広告を決定する。

(広告の表示について)

前記イ.「ホストサーバ(群)210は,最も適切な広告218を見つけてテレビ208上に表示するためにセットトップボックス204に広告を配信することができる。」によれば,
サーバは,決定された広告をセットトップボックス204に配信して,テレビ208上に表示させる。

したがって,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

<引用発明>
「広告ターゲティングの方法であって,
セットトップボックス204は,テレビ208の視聴近傍内に位置する携帯ハンドセットに対して近距離無線技術を用いて,携帯ハンドセットの機器固有識別(DSI)を検出し,
当該機器固有識別(DSI)は,GSM電話機の国際モバイル機器識別(IMEI)や,CDMA電話のモバイル機器識別子(MEIDs)等を含み,
セットトップボックス204は,検出した機器固有識別(DSI)をサーバにアップロードし,
サーバは,機器固有識別(DSI)に関連づけられたユーザプロファイルを特定し,そのユーザプロファイルの情報を使用してデモグラフィックの推定を行い,当該デモグラフィックをターゲットとする広告を決定し,
サーバは,決定された広告をセットトップボックス204に配信して,テレビ208上に表示させる,方法。」

(2)国際公開第01/61612号

原査定の拒絶の理由において引用された国際公開第01/61612号(以下,「引用文献2」という。)には,次の事項が記載されている。

カ.「The term "advertising range" is intended to refer to the area in which the advertising device effectively communicates the advertisements. A display on the back of the front seat of a taxicab, which is one embodiment of the invention, would have a more limited advertising range than a large billboard on the side of a building, which is another embodiment of the invention. 」(第8ページ18行?22行)
(当審訳: ”広告範囲”の用語は,広告装置が,広告を効果的に伝達するエリアを指すものとする。本発明の一実施形態であるタクシーの前席のシート背面等にあるディスプレイは,本発明の他の実施形態である建物の側面にある大きな広告板よりも,より限定された広告範囲を有することになる。)

キ.「According to one embodiment, the identifying signals are electromagnetic signals such as those emitted by cellular telephones. Most of the data handled by the cellular telephone network relates to the operation of the cellular telephone network, such as information to provide cellular registrations, calling processing, and hand-off procedures. For example, when a cellular phone is turned on, every six to eight seconds it outposts is electronic serial number (ESN). For each carrier, when a cellular phone is activated, the carrier assigns a Mobile Identification Number (MIN). When the SEND key on the unit is depressed, the phone sends out both the ESN and the MIN. Thereafter, the carrier's switch verifies that the MIN is associated with the ESN for billing purposes. See U.S. Pat. No. 6,014,555 to Tendler. One embodiment of the invention relates to a device which identifies the individuals based on the ESN emitted by the cellular telephone. 」(10ページ22行?11ページ9行)
(当審訳:一実施形態によれば,識別信号は,セルラー電話機から放射されたもののような電磁信号である。セルラー電話機ネットワークで扱うデータの大部分は,セルラ登録を提供する情報,発呼処理,ハンドオフ手順のような,セルラー電話機ネットワークのオペレーションに関するものである。例えば,セルラー電話機がオンになると,6秒から8秒ごとに,その電子シリアル番号(ESN)を出力する。通信事業者ごとに,セルラー電話機が認証されると,その通信事業者はモバイル識別番号(MIN)を割り当てる。ユニット上の送信キーが押下されると,電話機は,ESNとMINの両方を送信する。その後,通信時事業者の交換機は,,MINが課金目的のESNと関連していることを確認する。tendlerの米国特許第6,014,555号を参照されたい。本発明の一実施形態は,セルラー電話機から放射されたESNに基づいて個人を識別する機器に関するものである。)

ク.「FIG. 1 illustrates an advertising device 100 according to one embodiment of the invention which includes receiver 101, ad/consumer association processor 102, consumer profile database 103, advertisement database 104 and communication element 105. Receiver 101 receives or "listens" for identifying signals emitted by one or more individuals. Using the received identifying signal receiver 101 communicates, preferably via ad/consumer association processor 102, with consumer profile database 103 to retrieve consumer profile information using the identifying signal. According, to one embodiment processor 102 may be omitted and the remaining components directly linked. The consumer profile information, in turn, is used to select a target advertisement from advertisement database 104, which targeted advertisement is transmitted to communication element 105 which delivers the targeted advertisement to targeted individuals within the advertising range of device 100.
Receiver 101 can include any suitable electronic device capable of receiving identifying signals emitted from devices such as cellular telephones and the like. Such devices are well known in the art of cellular communications, for example. Preferably, receiver 101 can sense or receive a variety of different types of identifying signals such as signals emitted by cellphones, beepers, handheld computers and also signals emitted by devices made by different manufacturers. For example, receiver 101 preferably can receive signals emitted by a first cellular device with service provided by a first long distance carrier (e.g., Sprint) and signals emitted by a second cellular device with service provided by a second long distance carrier (e.g., AT&T). 」(14ページ19行?15ページ13行)
(当審訳:図1は,受信機101,広告/消費者関連付け処理手段102,消費者プロファイルデータベース103と,広告データベース104および伝達要素105を含む,本発明の一実施形態に係る広告装置100を示している。受信機101は,1人以上の個人によって放射された識別信号を受信または”リッスン”する。受信された識別信号を用いて,受信機101は,好ましくは広告/消費者関連付け処理手段102を介して,識別信号を用いて消費者プロファイル情報を検索するために,消費者プロファイルデータベース103と通信する。一実施形態において,処理手段102を省略し,残りの構成要素を直接リンクすることができる。消費者プロファイル情報は,次に,広告データベース104からターゲット広告を選択するために使用され,そしてそのターゲット広告は,装置100の広告範囲内でターゲットされた個人にターゲット広告を配信する伝達要素105に送信される。
受信機101は,セルラー電話機等のように,機器から放射された識別信号を受信することができる任意の適切な電子装置を含むことができる。そのような装置は,例えば,セルラー通信の分野で周知である。好ましくは,受信機101は,セル電話機,ポケットベル,携帯コンピュータによって放射された信号,及び,異なる製造業者によって製造された機器によって放射された信号のような,種々の異なるタイプの識別信号を検出又は受信することができる。例えば,受信機101は,好ましくは第一の長距離通信業者(例えば,Sprint)によって提供されるサービスを用いる第1の携帯デバイスによって放出された信号と,第2の長距離通信業者(例えばAT&T)によって提供されるサービスを用いる第2の携帯デバイスによって放出された信号とを受信することができる。)

ケ.「 The system also preferably includes an identification processor (e.g., ad/consumer associate processor 202) which selects or facilitates the selection of the targeted advertisements. Preferably, the processor retrieves a consumer profile based on the identifying signal and retrieves or selects one or more advertisements from an advertisement database to be displayed to the targeted individual based on the consumer profile. For example, referring to FIG. 1, the system includes ad/consumer association processor 102 which correlates or matches the retrieved consumer profile to a targeted advertisement. 」(16ページ13行?23行)
(当審訳:システムはまた,好ましくは,ターゲット広告を選択し,または,選択を容易にする識別処理手段(例えば,広告/消費者関連付け処理手段202)を有している。好ましくは,この処理手段は,識別信号に基づいて消費者プロファイルを検索し,消費者プロファイルに基づいてターゲットとなる個人に表示すべき1以上の広告を広告データベースから検索するか,選択する。例えば図1を参照すると,システムは,検索された消費者プロファイルをターゲット広告に関連付けまたはマッチングする広告/消費者関連付け処理手段102を備えている。」

コ.「Communication element 105 delivers the advertisement or message. It can include an electronic billboard which can display a variety of different images and/or a speaker to play audio messages. Suitable examples include highway billboards, signage along streets or in public mass transportation terminals, store front displays, etc. For example, the communication can comprise a liquid crystal display (LCD), LED, plasma panel display or the like. 」(19ページ15行?20行)
(当審訳:伝達要素105は,広告またはメッセージを配信する。それは,種々の異なる画像を表示できる電子広告板,および/または,音声メッセージを再生するスピーカを含むことができる。好ましい例としては,ハイウェイ広告板,ストリートに沿って又は公共大輸送ターミナルの標識,店頭ディスプレイなどを含んでいる。例えば,この伝達は,液晶ディスプレイ(LCD),LED,プラズマパネルディスプレイ等を含むことができる。)


前記カ.?コ.によれば,引用文献2には,次の事項が記載されている。

<引用文献2の記載事項>
「広告装置であって,
受信機101,広告/消費者関連付け処理手段102,消費者プロファイルデータベース103,広告データベース104および伝達要素105を含み,
受信機101は,セルラー電話機から放射された識別信号をリッスンするものであり,当該識別信号は,例えば,セルラー電話機ネットワークのオペレーションにおいて放射される電子シリアル番号(ESN)であり,
広告/消費者関連付け処理手段102は,識別信号を用いて消費者プロファイルデータベース103から消費者プロファイル情報を検索し,消費者プロファイル情報に基づいて広告データベース104からターゲット広告を検索し,
伝達要素105は,ディスプレイやスピーカなどを含み,ターゲット広告を,広告範囲内でターゲットされた個人に配信し,
当該広告範囲は,広告を効果的に伝達するエリアであり,例えば,タクシーの前席のシート背面等にあるディスプレイは,建物の側面にある大きな広告板よりも,より限定された広告範囲を有する,広告装置。」

4.対比

次に,本件補正発明と引用発明とを対比する。

・引用発明の広告ターゲティングの方法は,コンテンツである広告の配信環境において,機器固有識別(DSI)や広告などの通信を行う方法といえる。
したがって,引用発明の「広告ターゲティングの方法」は,本件補正発明の「コンテンツ配信環境における通信のための方法」に相当する。

・引用発明の「携帯ハンドセット」は,本件補正発明の「前記コンテンツ配信環境内に存在するモバイル機器」に相当する。

・引用発明の「携帯ハンドセットの機器固有識別(DSI)」は,本件補正発明の「該モバイル機器のモバイル機器識別子」に相当する。

・引用発明の「セットトップボックス204は,テレビ208の視聴近傍内に位置する携帯ハンドセットに対して近距離無線技術を用いて,携帯ハンドセットの機器固有識別(DSI)を検出し」と,本件補正発明の「前記コンテンツ配信環境内に存在するモバイル機器がモバイル・キャリアに識別されることを意図して該モバイル機器によって送信されたブロードキャスト信号をリッスンすることによって該モバイル機器のモバイル機器識別子を検出するステップ」は,「前記コンテンツ配信環境内に存在するモバイル機器のモバイル機器識別子を検出するステップ」の点で共通する。
ただし,モバイル機器識別子を検出するために,引用発明は「近距離無線技術」を用いるのに対し,本件補正発明は「モバイル機器がモバイル・キャリアに識別されることを意図して該モバイル機器によって送信されたブロードキャスト信号をリッスンする」点で相違する。

・引用発明の「サーバは,機器固有識別(DSI)に関連づけられたユーザプロファイルを特定し,そのユーザプロファイルの情報を使用してデモグラフィックの推定を行い」は,本件補正発明の「前記検出されたモバイル機器識別子を用いて,前記モバイル機器のユーザに関するデモグラフィック情報を特定するステップ」に相当する。

・引用発明の「当該デモグラフィックをターゲットとする広告を決定し」は,本件補正発明の「前記特定されたデモグラフィック情報を用いて,前記ユーザに対して表示するコンテンツを選択するステップ」に相当する。

・本件補正発明の「前記選択されたコンテンツを表示する,前記モバイル機器の近傍にある少なくとも1つのディスプレイ装置を,前記モバイル機器識別子が検出された場所を用いて,識別するステップ」について検討する。
本願明細書には,上記ステップについて次の事項が記載されている。

「【0036】・・・(中略)・・・識別されたモバイル機器所有者に対して表示すべきコンテンツが選択されると,このシステムは,選択されたディスプレイ・スクリーン上に,例えば,一実施形態において,検出されたモバイル通信機器の近傍にあるディスプレイ・スクリーンに選択されたコンテンツを表示する(608)。」

上記記載によれば,本件補正発明の「前記モバイル機器識別子が検出された場所を用いて,識別する」は,検出されたモバイル通信機器の近傍にあるディスプレイ・スクリーンを選択することと解される。
一方,引用発明において,決定された広告を表示するテレビは,検出されたモバイル通信機器の近傍にあるテレビすなわちディスプレイ・スクリーンである。
また,明示されてはいないものの,テレビとセットトップボックスは複数存在することは技術常識であり,その中からテレビ208の視聴近傍内に位置する携帯ハンドセットに対して,セットトップボックス204が該携帯ハンドセットのDSIを検出するものであるから,決定された広告を表示するテレビは,複数のテレビの中から,検出された携帯ハンドセットの近傍にあるテレビとして識別されたものである。
したがって,引用発明の「サーバは,決定された広告をセットトップボックス204に配信して,テレビ208上に表示させる」は,本件補正発明の「前記選択されたコンテンツを表示する,前記モバイル機器の近傍にある少なくとも1つのディスプレイ装置を,前記モバイル機器識別子が検出された場所を用いて,識別するステップ」に相当する。

したがって,本件補正発明と引用発明は,次の点で一致する。

<一致点>
「コンテンツ配信環境における通信のための方法であって,
前記コンテンツ配信環境内に存在するモバイル機器のモバイル機器識別子を検出するステップと,
前記検出されたモバイル機器識別子を用いて,前記モバイル機器のユーザに関するデモグラフィック情報を特定するステップと,
前記特定されたデモグラフィック情報を用いて,前記ユーザに対して表示するコンテンツを選択するステップと,
前記選択されたコンテンツを表示する,前記モバイル機器の近傍にある少なくとも1つのディスプレイ装置を,前記モバイル機器識別子が検出された場所を用いて,識別するステップと,
を含む,前記方法。」

そして,本件補正発明と引用発明は,次の点で相違する。

<相違点>
モバイル機器識別子を,本件補正発明では「モバイル機器がモバイル・キャリアに識別されることを意図して該モバイル機器によって送信されたブロードキャスト信号をリッスンすることによって」検出するのに対し,引用発明では「近距離無線技術を用いて」検出する点。

5. 判断

引用文献2に記載された広告装置は,ディスプレイの広告範囲内すなわち視聴近傍内に位置するユーザに対して広告ターゲティングを行うものであり,携帯ハンドセットの機器固有識別DSIを検出し,機器固有識別DSIに関連づけられたユーザプロファイルを特定し,そのユーザプロファイルの情報を使用してターゲットとする広告を決定し,決定された広告を表示する点において,引用発明と共通する。
そして,引用文献2記載の広告装置は,携帯ハンドセットの機器固有識別DSIを検出するために,セルラー電話機ネットワークのオペレーションにおいて放射される電子シリアル番号(ESN)をリッスンする。
このリッスンは,本件補正発明の「前記コンテンツ配信環境内に存在するモバイル機器がモバイル・キャリアに識別されることを意図して該モバイル機器によって送信されたブロードキャスト信号をリッスンすること」に相当する。
引用発明は,IMEI,MEIDsのような機器固有識別DSIを検出するために近距離無線技術を使用しているが,IMEI,MEIDsは,ESNとともに,本来,モバイル・キャリアがモバイル機器を識別するために使用される情報であり,モバイル機器から送信されるブロードキャスト信号に含まれることは周知である。
また,引用文献2には,引用発明と同様,ターゲット広告を行うために,セルラー電話機ネットワークのオペレーションにおいて放射されるESNをリッスンすることが記載されているから,機器固有識別DSIを検出するために,近距離無線技術に代えて,引用文献2記載の上記構成を採用することは格別困難ではない。
してみると,引用発明において,機器固有識別DSIを検出するために,引用文献2に記載された,セルラー電話機ネットワークのオペレーションにおいて放射される識別信号をリッスンする構成を採用し,上記相違点に係る構成とすることは容易に想到し得ることである。
そして,本件補正発明の作用効果も,引用発明,及び,引用文献2の記載事項から,当業者が予測できる範囲のものである。
したがって,本件補正発明は,引用発明,引用文献2記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6. 補正却下の決定のまとめ

したがって,本件補正発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反し,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明

平成27年6月16日の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年10月7日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである(前記第2,1.の<本件補正前の請求項1>参照)。

2.引用文献

引用発明及び引用文献2の記載事項は,前記第2,3.において認定したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は,本件補正発明から前記第2,1.において検討した限定事項を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2.3.及び,前記第2,4.で検討したとおり,引用発明,引用文献2の記載事項に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用文献2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-08 
結審通知日 2016-03-09 
審決日 2016-03-24 
出願番号 特願2013-529108(P2013-529108)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山内 裕史  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 川崎 優
手島 聖治
発明の名称 コンテンツ配信における制御とインタラクションのためのモバイル機器ユーザの識別情報/存在の特定方法およびシステム  
代理人 石井 たかし  
代理人 倉持 誠  
代理人 西谷 明子  
代理人 吹田 礼子  

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