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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1317801
審判番号 不服2015-6786  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-09 
確定日 2016-08-23 
事件の表示 特願2010-204293「基板処理システム、基板処理装置、データ処理方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月22日出願公開、特開2012- 60059、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年9月13日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 5月 1日 拒絶理由通知
平成26年 7月 7日 意見書・手続補正書
平成27年 1月26日 拒絶査定
平成27年 4月 9日 審判請求・手続補正書
平成28年 4月18日 補正の却下の決定(当審)
(平成27年 4月 9日付けの手続補正を却下する旨の決定)
平成28年 4月18日 拒絶理由通知(当審)
平成28年 6月16日 意見書・手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成28年6月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載される事項により特定されるとおりであって、そのうち請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。

「【請求項2】
基板を処理する基板処理装置であって、
少なくとも前記基板処理装置を構成する各部品の状態を示すモニタデータを取得し、
複数の前記モニタデータから選択された1つの前記モニタデータについて、少なくとも最大値、平均値、最小値の3つの算出データを有するパッケージデータを生成する際に、取得した前記モニタデータと直前の最大値とを比較する処理と、取得した前記モニタデータと直前の最小値とを比較する処理と、取得した前記モニタデータを直前までのモニタデータの積算値に積算する処理と、前記モニタデータを取得する所定周期が経過したかどうかを判定する処理と、前記積算値に基づいて平均値を算出する処理とを行い、前記パッケージデータを生成し、
前記パッケージデータを群管理装置に送信する際、前記パッケージデータが揃っているか判定する処理と、前記パッケージデータのデータ抜けを補填する処理と、前記パッケージデータの前記平均値をバックアップする処理とを行うように構成されており、前記パッケージデータに含まれる最大値、平均値、最小値のうち少なくとも一部が抜けている場合には、前記バックアップされた平均値で補填し、データ抜けの無い前記パッケージデータに更新して、前記群管理装置に送信することを特徴とする基板処理装置。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「この出願については、平成26年5月1日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
……(中略)……
しかしながら、最大値/最小値を求める手段として直前の最大値/最小値と比較するものや、平均値を求める手段として所定期間の積算値に基づいて平均値を算出するものは、いずれも技術分野を問わず周知かつ慣用の技術であり(必要であれば、前者については下記文献5(段落[0050]、[0051]等)?6(段落[0019]等))を、後者については下記文献7(段落[0029]等)?8(段落[0047]等)をそれぞれ参照。)、当該技術を先記引用文献1?4からなる基板処理システムにおけるモニタデータの最大値、平均値、最小値を生成する手段として用いることは、当業者が適宜設計する事項にすぎないものである。
……(中略)……
したがって、請求項1?11に係る発明は、依然として引用文献1?4の記載及び周知慣用技術(引用文献5?8の記載等)に基づき当業者が容易に想到し得たものである。

<引用文献等一覧>
1.特開2009-290158号公報
2.特開2008-34769号公報
3.特開2007-324316号公報
4.特許第4044443号公報
5.(周知技術)特開2009-216663号公報
6.(周知技術)特開2001-33495号公報
7.(周知技術)特開平7-98583号公報
8.(周知技術)特開2009-156206号公報」

また、平成26年5月1日付け拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

1.請求項1?3/引用文献1?4
基板処理装置側においてモニタデータの最大値、平均値、最小値等を生成して管理装置側に送信する構成は、引用文献3(段落【0037】?【0040】、図1等)や4(段落【0026】、【0028】等)にも記載されているように周知技術であり、該技術を、引用文献1(段落【0002】等)や2(段落【0043】?【0058】、【0130】?【0132】、図3等)に記載されている基板処理装置と群管理装置とを備えた基板処理システムに適用することは、当業者であれば容易に想到しうるものである。

引 用 文 献 等 一 覧

1.特開2009-290158号公報
2.特開2008-34769号公報
3.特開2007-324316号公報
4.特許第4044443号公報」

2 原査定の理由についての当審の判断
(1)引用文献1ないし8の記載事項及び引用発明
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の出願の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2009-290158号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(当審注.下線は、参考のために、当審において付したものである。以下において同じ。)

「【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置と、前記基板処理装置とデータ交換可能なように接続される群管理装置と、を備える基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板を処理する基板処理装置内には、温度、ガス流量、圧力その他基板処理装置の状態を示すデータの発生箇所(例えば温度センサ、ガス流量計、圧力計など、以下データ発生箇所と呼ぶ)が多数存在する。基板処理装置が複数存在する場合には、これら基板処理装置群の状態を統合的かつ効率的に管理するため、各基板処理装置とデータ交換可能なように接続された群管理装置(上位管理装置)が用いられることがある。かかる群管理装置は、基板処理装置から温度、ガス流量、圧力等の各種データを受信し、受信したデータに時刻を付し(タイムスタンプを付し)、かかる時刻に基づいてグラフ等を作成して群管理装置の操作画面に表示していた。」

(イ)引用発明
上記(ア)の引用文献1の記載と当該技術分野における技術常識より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「基板を処理する基板処理装置と、前記基板処理装置とデータ交換可能なように接続される群管理装置と、を備える基板処理システムであって、
前記基板処理装置内には、温度、ガス流量、圧力その他基板処理装置の状態を示すデータの発生箇所である温度センサ、ガス流量計、圧力計が多数存在し、
前記群管理装置は、前記基板処理装置から温度、ガス流量、圧力等の各種データを受信し、受信したデータに時刻を付し、かかる時刻に基づいてグラフ等を作成して群管理装置の操作画面に表示する、
基板処理システム。」

イ 引用文献2の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の出願の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2008-34769号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0043】
図3は、本実施の形態における群管理システムのブロック図である。
【0044】
製造装置11は、入力受付部1101、レシピ格納部1102、製造装置識別子格納部1103、計時部1104、処理部1105、測定部1106、元情報蓄積部1107、元情報送信部1108を具備する。
【0045】
サーバ装置12は、測定情報格納部1201、元情報受信部1202、測定情報取得部1203、測定情報蓄積部1204、指示受付部1205、出力情報構成部1206、出力部1207、出力指示蓄積部1208、条件情報格納部1209、異常検知部1210を具備する。
【0046】
測定情報取得部1203は、第一測定情報取得手段12031と、有効時間内測定情報取得手段12032とを具備する。
【0047】
クライアント装置13は、指示入力部1301、指示送付部1302、受付部1303、表示部1304を具備する。
【0048】
入力受付部1101は、製造装置11のユーザから各種の入力を受け付ける。各種の入力とは、例えば、レシピや、レシピを識別するレシピ識別子や、ウエハに対する加工処理等の処理の実行指示などである。ユーザから各種の入力の入力手段は、テンキーやキーボードやマウスやメニュー画面によるもの等、何でも良い。入力受付部1101は、テンキーやキーボード等の入力手段のデバイスドライバーや、メニュー画面の制御ソフトウェア等で実現され得る。
【0049】
レシピ格納部1102は、製造装置11を制御するために使用されるレシピを格納している。レシピとは、製造装置11が実行する所定のプロセスに関する情報であり、通常、プロセスを構成する複数の手順や、その手順におけるプロセスパラメータ等を設定する情報を含む。レシピを構成する各手順は、通常、レシピステップ、あるいはステップと呼ばれる。プロセスパラメータの情報は、例えば、カテゴリー名、アイテム名、パラメータ名、値を含む。カテゴリー名とは、プロセスパラメータの種類を示す名称であり、例えば、「温度」「ガス流量」「ボートエレベーターのスピード」などである。アイテム名は、プロセスパラメータの属性を示す名称であり、例えば、「上下速度」「回転速度」などである。パラメータ名は、プロセスパラメータの名称であり、例えば、「C」「A」などである。値は、プロセスパラメータという変数に与える値である。通常、レシピは、レシピを識別するレシピ識別子(例えば、レシピ名)と対に格納されている。また、レシピは、当該レシピを構成するレシピステップの識別子であるレシピステップ識別子とともにレシピ格納部1102に格納されている。レシピステップ識別子は、例えば、レシピステップの名称や、識別番号等である。レシピ格納部1102は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0050】
製造装置識別子格納部1103は、製造装置11を識別する製造装置識別子を格納している。製造装置識別子は、各製造装置11を識別できる情報であればよく、例えば、装置名や、型番、製造番号や、各製造装置11に設定された識別番号や名称等であってもよい。この製造装置識別子は、入力受付部1101が受け付けた情報でも良いし、製造装置出荷時に予め格納した情報でも良い。製造装置識別子格納部1103は、ハードディスクやROM等の不揮発性の記録媒体でも、RAM等の揮発性の記録媒体でも良い。
【0051】
計時部1104は、時を計測する。計時部1104は、時を計測した結果得られた時刻を示す情報を、測定部1106に出力する。ここで述べる時刻を示す情報は、年月日等の情報を含んでいていてもよい。計時部1104が計時する時間は、絶対時間であっても良く、相対時間であっても良い。計時部1104は、例えば時計等で実現される。
【0052】
処理部1105は、レシピ格納部1102のレシピを読み出し、当該レシピにしたがって、被処理基板に対する所定のプロセスを行う。処理部1105は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。処理部1105の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0053】
測定部1106は、製造装置11内の温度や、ガス流量や、圧力、製造装置11の電力などを測定し、チャート化等の対象となる測定情報の元になる情報である元情報を取得する。元情報は、測定した温度などの情報である。測定部1106は、例えば、定期、あるいは不定期の所定の時間間隔で測定を行う。元情報は、通常、測定した時刻を示す時刻情報を有する。この時刻情報は、例えば計時部1104から取得される。元情報は、測定部1106が温度等の値を測定していた際に処理していたレシピを識別するレシピ識別子と、測定した値と、測定した時刻を示す時刻情報を有することが好適である。また、測定していた際に実行されていたレシピステップを識別するレシピステップ識別子を有していることが好適である。なおレシピ識別子や、レシピステップ識別子は、レシピや、レシピステップを識別できる情報であれば良く、例えば、レシピの名称や、レシピステップの名称、レシピやレシピステップの識別番号等が利用可能である。レシピ識別子やレシピステップ識別子は、レシピ格納部1102から取得される。また、元情報がレシピを実行した製造装置11の製造装置識別子を有していても良い。この製造装置識別子は、例えば製造装置識別子格納部1103から取得される。また、元情報は、測定部1106が測定する、測定対象、例えば温度やガス圧等や、測定箇所、例えばプロセスチューブ内等、を識別するための情報、例えば測定対象の名称や、測定箇所の名称、あるいはこれらに対応した識別情報等を有していても良い。測定部1106は、複数の箇所の複数の温度や、温度とガス流量などの複数の値を測定しても良いことは言うまでもない。つまり、元情報は、二種類以上の測定された値を有しても良い。測定部1106は、1以上の温度センサや1以上の流量センサなどのセンサ等で実現され得る。
【0054】
元情報蓄積部1107は、測定部1106が取得した元情報を、図示しない記録媒体に蓄積する。元情報蓄積部1107は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。元情報蓄積部1107の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。また、上記の図示しない記録媒体は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0055】
元情報送信部1108は、元情報蓄積部1107が蓄積した元情報を、サーバ装置12に送信する。元情報の送信のトリガーは問わない。また、元情報送信部1108が送信する元情報は、測定された一種以上(例えば、温度とガス流量)の値、および時刻情報を有する。また、元情報送信部1108が送信する元情報は、レシピステップを識別するレシピステップ識別子を有することが好適である。さらに加えて、元情報送信部1108が送信する元情報は、製造装置11を識別する製造装置識別子や、レシピを識別するレシピ識別子を有することが好適である。また、測定部1106が測定する、測定対象、例えば温度やガス圧等や、測定箇所、例えばプロセスチューブ内等、を識別するための情報を有していても良い。なお、元情報蓄積部1107が蓄積した元情報と、元情報送信部1108が送信する元情報は、その構造や構成が異なっていても良い。また、元情報は、複数の測定された値に対して、一つの製造装置識別子または一つのレシピ識別子あるいは一つのレシピステップ識別子の少なくとも一つを有する構成でも良い。元情報送信部1108は、無線または有線の通信手段等で実現され得る。また、元情報送信部1108は、元情報をサーバ装置12に送信する前に、レシピ格納部1102や製造装置識別子格納部1103から、それぞれレシピステップ識別子やレシピ識別子や製造装置識別子を読み出し、元情報に付加しても良い。また、元情報送信部1108は、値(例えば、ガス流量)が測定される毎に、元情報を送信しても良いし、所定数の測定した値をまとめた元情報(例えば、10個をまとめた元情報)を一度に送信しても良い。元情報送信部1108が送信するデータの単位やデータ構造等は問わない。また、送信する元情報を構成する処理は、元情報送信部1108ではなく、元情報蓄積部1107が行っても良い。測定された元情報や、製造装置識別子やレシピ識別子やレシピステップ識別子を送信するタイミングなども問わない。
【0056】
測定情報格納部1201は、複数の測定情報を格納し得る。複数の測定情報は、1以上の製造装置11で測定された一種以上の情報(例えば、温度や圧力)についての時系列の情報であり、製造装置で所定のプロセスを実行した場合の測定値と時刻を示す時刻情報を有する情報である。また、複数の測定情報は、製造装置11を識別する製造装置識別子や、レシピ識別子や、レシピステップ識別子等を有していても良い。測定情報は、元情報受信部1202が受信した複数の元情報に対して、測定情報取得部1203が所定の演算を行い、取得された情報でも良いし、元情報と同じ情報でも良い。測定情報格納部1201は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。なお、測定情報格納部1201の測定情報は、測定情報蓄積部1204が蓄積した情報でも良いし、製造装置11から直接に受信した情報でも良いし、図示しない記録媒体から読み出した情報でも良い。
【0057】
元情報受信部1202は、複数の測定情報の元になる情報である元情報を1以上の製造装置11から受信する。元情報受信部1202は、無線または有線の通信手段等で実現され得る。
【0058】
測定情報蓄積部1204は、元情報受信部1201が受信した複数の元情報に応じた測定情報を測定情報格納部1201に蓄積する。この測定情報は、元情報受信部1202が受信した複数の元情報に対して、測定情報取得部1203が所定の演算を行い、取得された情報でも良いし、元情報と同じ情報でも良い。所定の演算とは、例えば、所定の時間間隔ごとに、複数の元情報が有する複数の値の平均値を算出したり、最大値を取得したり、最小値を取得したり、値を標準化したり、標準偏差を算出したり、中央値を取得したりする演算である。なお、測定情報取得部1203が取得した複数の測定情報を、測定情報格納部1201に配置する場合は、測定情報蓄積部1204が行う蓄積処理はNOP(No Operation)と同意義となる。測定情報蓄積部1204は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。測定情報蓄積部1204の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
・・・
【0130】
次に、出力情報構成部1206は、測定情報取得部1203が取得した図11の情報と、異常検知部1210の判断結果を用いて、出力情報であるチャートを構成する。本チャートは、横軸が時刻情報の示す時刻、縦軸が値(ガス流量の平均値)である折れ線グラフである。
【0131】
次に、出力部1207は、出力情報構成部1206が構成した折れ線グラフをクライアント装置13に送信する。
【0132】
クライアント装置13の受付部1303は当該折れ線グラフを受信し、表示部1304は、図12に示すように折れ線グラフをディスプレイに表示する。図12において、正常範囲は、斜線で示している。」

ウ 引用文献3の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の出願の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2007-324316号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0035】本発明による情報処理装置等によれば、異なる設定値で行われた処理に関してそれぞれ半導体製造装置等から取得される値を、監視しやすくすることが可能となる。
・・・
【0037】(実施の形態1)図1は、本実施の形態における半導体製造システムの構成を示すブロック図である。半導体製造システムは、情報処理装置100と、半導体製造装置200とを具備する。なお、ここでは、半導体製造装置200が、熱処理を含む処理を行う熱処理装置であり、処理対象物が半導体ウエハである場合を例に挙げて説明するが、半導体製造装置200は半導体を含む処理対象物に、処理を行うものであればよく、また、その処理はどのような処理であっても良い。すなわち、半導体製造装置200が、熱処理装置以外の場合や、処理対象物が半導体ウエハ以外の半導体を含むものである場合においても、本発明の構成は適用可能である。ここでは、情報処理装置100と半導体製造装置200とは、情報の入出力が可能なように、インターネットやLAN等のネットワークや、専用の信号線等により接続されている。
【0038】情報処理装置100は、設定値受付部101、状態値受付部102、補正量算出部103、補正部104、出力部105、補正関数格納部106、指定値格納部107を具備する。
・・・
【0040】状態値受付部102は、半導体製造装置200の、処理時の状態に関して取得した値である状態値を受け付ける。「状態値」とは、ここでは、半導体製造装置200が設定値に応じて処理を行っている際に取得した値である。「処理時の状態に関して取得した値」とは、取得可能な値であって、半導体製造装置200の処理時の状態を示すことが可能な値であればどのような値であっても良い。具体的には、半導体製造装置200自身や、半導体製造装置200の内部環境から処理時に取得される測定値や、この測定値を用いて算出した算出値や、半導体製造装置200が、処理時に内部で制御している値等である。例えば、状態値は、処理時における半導体製造装置200の処理容器211内の所望の位置の温度を、温度センサ等を利用して測定した値や、処理圧力を、圧力計等を用いて測定した値や、電力計により測定したヒータの電力値や、これらの測定値の平均値や、最大値、最小値、標準偏差等である。また、状態値は、例えば、半導体製造装置が処理時に内部のヒータに対して出力する電圧や電流等から算出されるヒータの電力値であってもよい。なお、上述した設定値受付部101が受け付ける設定値と状態値受付部102が受け付ける状態値とが相関関係を有していることが好ましい。例えば、設定値が半導体製造装置200の処理容器211内の所望の位置の設定温度であれば、状態値受付部102が受け付ける状態値を、処理時における半導体製造装置200の処理容器211内の所定の位置における温度や、ヒータ出力等とする。状態値は、1つの値であっても良いし、複数の値、例えば、時間の経過に沿って取得した複数の値であっても良いし、半導体製造装置がバッチ処理を行うごとに取得した値であっても良い。状態値受付部102がどのようにして状態値を受け付けるかは問わない。例えば、状態値受付部102は、他の機器等から通信回線等を介して送信される状態値を受信して受け付けても良いし、記録媒体等に記録されている状態値を読み出してもよい。また、状態値受付部102は、テンキーやキーボードやマウスやメニュー画面等の入力手段により入力される状態値を受け付けても良い。状態値受付部102は、テンキーやキーボード等の入力手段のデバイスドライバーや、メニュー画面の制御ソフトウェアや、通信デバイスのドライバ等や、メモリカードリーダや、CDドライブ等の記録媒体等から情報を読み出すデバイスのドライバ等で実現され得る。
・・・
【0056】半導体製造装置200は、さらに、処理設定値受付部201と、制御部202と、処理状態値取得部203と、処理出力部204とを具備している。
・・・
【0059】処理状態値取得部203は、半導体製造装置200の処理時の状態に関する値である状態値を取得する。この状態値は、通常は、上述した状態値受付部102が受け付けた状態値と同じ値である。状態値は、例えば、各温度検出部241が検出した温度の値、すなわち測定値や、各ヒータ231の電力値である。例えば、処理状態値取得部203は、処理対象物に対して所定の処理を行っている時に、温度検出部が温度を検出した結果として出力する信号から、この信号に対応した温度の値である状態値を取得する。また、処理状態値取得部203は、制御部202が制御するヒータ231の電力値である状態値を取得したり、図示しない電力計の電力検出値からヒータ231の電力値である状態値を取得してもよい。ここでは、温度検出部241の出力が制御部202に一旦入力され、この温度検出部241の出力が制御部202から処理状態値取得部203に出力される場合について説明するが、処理状態値取得部203が温度検出部241の出力を直接受け付けるようにしてもよい。また、この場合、処理状態値取得部203が受け付けた入力を、処理状態値取得部203が適宜、制御部202に出力するようにしても良い。処理状態値取得部203は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。処理状態値取得部203の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0060】処理出力部204は、処理状態値取得部203が取得した状態値を出力する。ここでは、例として、処理出力部204は、処理状態値取得部203が取得した状態値を、情報処理装置100の状態値受付部102に対して送信する場合について説明する。なお、処理出力部204から、状態値受付部102へ状態値を出力するタイミングやトリガー等は問わない。例えば、処理状態値取得部203が処理時の状態に関する値を取得するごとに、処理出力部204が出力を行う必要はなく、複数の値を一旦メモリ等に蓄積後、出力するようにしても良い。また、処理出力部204が出力した状態値が、情報処理装置100内の図示しないメモリ等の記録媒体に蓄積されるようにしても良い。また、処理出力部204は、処理設定値受付部201が受け付けた設定値を、設定値受付部101に出力してもよい。また、処理出力部204は、着脱可能な記録媒体等を介して、処理に関する情報等を情報処理装置100に受け渡しできるようにしても良い。ここで述べる出力とは、外部の装置への送信や、メモリ等の記録媒体への蓄積等を含む概念である。処理出力部204は、通信デバイス等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。処理出力部204は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
・・・
【0063】(ステップS202)状態値受付部102は、半導体製造装置200等が出力する複数の状態値を受け付ける。受け付けた状態値を図示しないメモリ等の記憶媒体に蓄積する。
・・・
【0069】(ステップS208)補正部104は、K番目の状態値を取得する。ここでは、状態値受付部102が、図示しないメモリ等に蓄積した状態値のうちの、半導体製造装置200等によって取得された時刻が早いものから数えてK番目の状態値を取得する。」

エ 引用文献4の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の出願の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特許第4044443号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0026】
装置情報としては,プロセスログ,マシンログ,トレースログ等の各種ログ,及びパーティクル,欠陥,歩留まり等のデータが例としてあげられる。プロセスログはロット毎の各種パラメータ,例えば,処理ガスの圧力値やRF電力値の平均値,最大値,最小値等のプロセスデータである。マシンログは装置の動作の状態を示すログである。トレースログは1枚のウエハについての所定時間毎,例えば1秒毎のプロセスデータである。これらの装置情報は,主に異常の原因の判定に用いられる。
・・・
【0028】
次に,本実施の形態のシステムを用いて半導体製造装置の遠隔保守を行う方法について図8を参照しながら詳細に説明する。図8は,本実施の形態のシステムの動作を示すフローチャートである。各工場10に設置されたクライアント100のデータ収集部110は,LANによって接続されている半導体製造装置のステータス情報を収集する(ステップS101)。ステータス情報には前述したように装置の稼動状態情報および装置情報が含まれる。」

オ 引用文献5の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の出願の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2009-216663号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0050】
ここで、実施例2の制御回路38が実行する流量計測制御処理2について説明する。制御回路38は図9に示すS21で、ピックアップ36のコイル36bから出力された検出信号の最小電圧値Vmin1を計測する。この最小電圧値Vmin1は、直前に検出された電圧値をメモリ39に記憶し、この電圧値と比較して今回検出された電圧値が小さい場合に最小電圧値を更新し、直前に検出された電圧値と比較して今回検出された電圧値が大きい場合に、直前に検出された電圧値を最小電圧値Vmin1とすることで記憶される。
【0051】
続いて、S22に進み、ピックアップ36のコイル36bから出力された検出信号の最大電圧値Vmaxを計測し、記憶する。この最大電圧値Vmaxは、直前に検出された電圧値をメモリ39に記憶し、この電圧値と比較して今回検出された電圧値が大きい場合に最大電圧値を更新し、直前に検出された電圧値と比較して今回検出された電圧値が小さい場合に、直前に検出された電圧値を最大電圧値Vmaxとすることで記憶される。」

カ 引用文献6の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の出願の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2001-33495号公報(以下「引用文献6」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0019】最大電流検出部2では、電流検出部3より数値データ化された値の大きさを直前までの最大値と今回の値とを比較し大きい方のデータを最大値として計測する。しかし、判定部6で基本波に対する第2高調波の値がある所定値以上であると判断されたときは、最大電流検出は行わず計測を抑止する。」

キ 引用文献7の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の出願の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開平7-98583号公報(以下「引用文献7」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【要約】
【目的】物体との距離に応じて非接触で周波数又は音量が可変される音源装置を得る。
【構成】光源10、コリメートレンズL2、集光用レンズL1、PSD1と差動増幅器2、VCO3、増幅器4、スピーカ5が備えられた音源装置15であって、物体との距離Lに応じた受光信号が、PSDを用いた測距と感知電流の差動増幅で得られ、さらに変換されたデジタル信号に基いて音源の周波数または音量を可変しスピーカから音を発する。」

ク 引用文献8の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の出願の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2009-156206号公報(以下「引用文献8」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0047】
ECU40は、前述したNOx量積算手段が算出したNOx量の積算値、あるいはNOx量の変化量の積算値に基づいてNOxセンサ30の異常を検出してもよい。この場合、ECU40は、複数回の過渡状態において算出した積算値の合計に基づいてNOxセンサ30の異常を検出してもよい。また、複数回の過渡状態において算出した積算値の平均、あるいは所定の複数回の過渡状態において算出した積算値を1グループとして複数グループの積算値から1グループの積算値の平均を算出し、この平均値に基づいてNOxセンサ30の異常を検出してもよい。」

(2)対比
ア 本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「基板処理装置」と本願発明の「基板処理装置」は、「基板を処理する」という点において共通するといえる。
(イ)引用発明では、「基板処理装置」内に「温度、ガス流量、圧力その他基板処理装置の状態を示すデータの発生箇所である温度センサ、ガス流量計、圧力計」が多数存在しており、また、「群管理装置」が「基板処理装置」から「温度、ガス流量、圧力等の各種データ」を受信しているのであるから、「基板処理装置」が「温度センサ、ガス流量計、圧力計」から「温度、ガス流量、圧力等の各種データ」を取得していることは明らかである。また、引用発明の「温度センサ、ガス流量計、圧力計」及び「温度、ガス流量、圧力等の各種データ」は、本願発明の「基板処理装置を構成する各部品」及び「モニタデータ」に相当するといえる。そうすると、引用発明の「基板処理装置」と本願発明の「基板処理装置」は、「少なくとも前記基板処理装置を構成する各部品の状態を示すモニタデータを取得」する点において共通するといえる。
(ウ)引用発明では「群管理装置」が「基板処理装置」から「温度、ガス流量、圧力等の各種データ」を受信しているのであるから、「基板処理装置」がこれらのデータを「群管理装置」に送信していることは明らかである。また、引用発明の「温度、ガス流量、圧力等の各種データ」と本願発明の「パッケージデータ」とは、後述の相違点1を除き、「モニタデータに基づくデータ」である点において共通するといえる。そうすると、引用発明の「基板処理装置」と本願発明の「基板処理装置」は、後述の相違点1を除き、「群管理装置にモニタデータに基づくデータを送信する」という点において共通するといえる。

イ 以上から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりであると認められる。

(ア)一致点
「基板を処理する基板処理装置であって、
少なくとも前記基板処理装置を構成する各部品の状態を示すモニタデータを取得し、
当該モニタデータに基づくデータを前記群管理装置に送信することを特徴とする基板処理装置。」

(イ)相違点
・相違点1
本願発明の「基板処理装置」は「複数の前記モニタデータから選択された1つの前記モニタデータについて、少なくとも最大値、平均値、最小値の3つの算出データを有するパッケージデータを生成する際に、取得した前記モニタデータと直前の最大値とを比較する処理と、取得した前記モニタデータと直前の最小値とを比較する処理と、取得した前記モニタデータを直前までのモニタデータの積算値に積算する処理と、前記モニタデータを取得する所定周期が経過したかどうかを判定する処理と、前記積算値に基づいて平均値を算出する処理とを行い、前記パッケージデータを生成」する構成を備え、「モニタデータに基づくデータ」として前記「パッケージデータ」を群管理装置に送信しているのに対し、引用発明の「基板処理装置」は「パッケージデータ」を生成する構成を備えておらず、「モニタデータに基づくデータ」として「温度、ガス流量、圧力等の各種データ」を群管理装置に送信している点。
・相違点2
本願発明の「基板処理装置」は「パッケージデータを群管理装置に送信する際、前記パッケージデータが揃っているか判定する処理と、前記パッケージデータのデータ抜けを補填する処理と、前記パッケージデータの前記平均値をバックアップする処理とを行うように構成されており、前記パッケージデータに含まれる最大値、平均値、最小値のうち少なくとも一部が抜けている場合には、前記バックアップされた平均値で補填し、データ抜けの無い前記パッケージデータに更新」する構成を備えるのに対し、引用発明の「基板処理装置」はこうした構成を備えない点。

(3)判断
ア 本願発明の進歩性について
上記相違点2について検討する。
引用文献1ないし8の記載事項は上記(1)アないしクに摘記したとおりであり、上記相違点2に係る構成について記載されているとは認められず、また、当該構成を示唆する記載があるとも認められない。
そうすると、上記相違点2に係る構成は、引用文献1ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に相当し得たものであるとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、引用文献1ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本願の請求項1及び3ないし9に係る発明の進歩性について
本願の請求項1及び7に係る発明は本願発明の「基板処理装置」を備えた「基板処理システム」に係るものであり、本願発明の発明特定事項を全て有する発明である。
また、本願の請求項3ないし6はいずれも請求項2を引用しており、本願の請求項3ないし6に係る発明は本願発明の発明特定事項を全て有する発明である。
また、本願の請求項8に係る発明は、本願発明を「データ処理方法」の発明として表現した発明であり、上記相違点2に対応する発明特定事項である「前記パッケージデータを送信する工程は、前記パッケージデータが揃っているか判定する処理と、前記パッケージデータのデータ抜けを補填する処理と、前記パッケージデータの前記平均値をバックアップする処理とを行うように構成されており、前記パッケージデータに含まれる最大値、平均値、最小値のうち少なくとも一部が抜けている場合には、前記バックアップされた平均値で補填し、データ抜けの無い前記パッケージデータに更新して、前記群管理装置に送信する」という構成を備えている。
また、本願の請求項9に係る発明は、本願発明を「プログラム」の発明として表現した発明であり、上記相違点2に対応する発明特定事項である「前記パッケージデータを送信する処理は、前記パッケージデータが揃っているか判定する処理と、前記パッケージデータのデータ抜けを補填する処理と、前記パッケージデータの前記平均値をバックアップする処理とを含むように構成されており、 前記パッケージデータに含まれる最大値、平均値、最小値のうち少なくとも一部が抜けている場合には、前記バックアップされた平均値で補填し、データ抜けの無い前記パッケージデータに更新して、前記群管理装置に送信する」という構成を備えている。
してみれば、本願発明が引用文献1ないし8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本願の請求項1及び3ないし9に係る発明も、引用文献1ないし8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 原査定の理由についてのまとめ
以上のとおり、本願の請求項1ないし9に係る発明は、引用文献1ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
平成28年4月18日付けで当審より通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。

「【理由1】
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用例については引用例一覧参照)

請求項:1
引用例:1乃至3
備考:
引用例1乃至3には、第1において引用した「補正の却下の決定」の第3の2(1)に示したとおりの発明及び技術が記載されている。
そして、本願の請求項1に係る発明は、上記「補正の却下の決定」の第3の1に記載した本件補正発明から技術的限定を除いた発明であるから、上記「補正の却下の決定」の第3の2(3)に記載した理由と同様の理由により、引用例1乃至3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
……(中略)……
引 用 例 一 覧
1.特開2007-324316号公報
2.特開2009-290158号公報
3.特開平7-23474号公報

【理由2】
平成26年7月7日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



(1)上記手続補正後の請求項8に「前記群管理装置は、前記パッケージデータの平均値をバックアップする」と記載されているが、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、この点について記載されていない。
(2)上記手続補正後の請求項9に「前記群管理装置は、更に、前記パッケージデータの値を判定する判定工程を有し、判定の結果、前記パッケージデータの一部にデータ抜けがあった場合に、バックアップされた前記平均値で補填する」と記載されているが、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、この点について記載されていない。」

2 当審拒絶理由についての判断
(1)進歩性について
ア 当審引用文献1ないし3の記載事項及び当審引用発明
(ア)当審引用文献1の記載事項及び当審引用発明
a 当審拒絶理由に引用され、本願の出願の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2007-324316号公報(以下「当審引用文献1」という。)には、上記第3の2(1)ウで摘記したとおりの事項が記載されている。

b 当審引用発明
上記第3の2(1)ウの当審引用文献1の記載と当該技術分野における技術常識より、当審引用文献1には、次の発明(以下「当審引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体ウエハを熱処理する半導体製造装置と、前記半導体製造装置に接続される情報処理装置と、を備える半導体製造システムであって、
前記半導体製造装置は、
処理時における半導体製造装置の処理容器内の所望の位置の温度を、温度センサ等を利用して測定した値や、処理圧力を、圧力計等を用いて測定した値や、電力計により測定したヒータの電力値である測定値を、時間の経過に沿って複数取得し、
これらの測定値から算出された平均値、最大値及び最小値等の状態値を前記情報処理装置に送信するように構成されており、
前記情報処理装置は、
前記状態値を前記半導体製造装置から受信してメモリに蓄積し、前記メモリから前記状態値を取得することを特徴とする半導体製造システム。」

(イ)当審引用文献2の記載事項
当審拒絶理由に引用され、本願の出願の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2009-290158号公報(以下「当審引用文献2」という。)には、上記第3の2(1)ア(ア)で摘記したとおりの事項が記載されている。

(ウ)当審引用文献3の記載事項
当審拒絶理由に引用され、本願の出願の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開平7-23474号公報 (以下「当審引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0037】13は最大値最小値検出手段であって,区間におけるサンプリングデータの最大値と最小値を判定するものである。さらに,必要に応じて区間の平均値,パワー等の副情報を算出するものである。
・・・
【0049】図1の基本構成の動作を説明する(図2を参照する)。観測装置1から送られてくるアナログの観測データは観測データ入力手段10に入力される。サンプリング手段11は観測データを定められた時間間隔でサンプリングする。
【0050】一方,送信側区間設定手段12に時間軸に対して区間とする時間が設定される(図2 (a)参照)。最大値最小値検出手段13はサンプリングデータを入力して保持し,最大値と最小値を検出して保持する(図2 (a)参照)。1区間の処理が終了し最大値,最小値が求められる(必要に応じて副情報も求める)とその最大値,最小値(必要に応じて副情報を含む)は送信データを作成するためのデータ保持領域に移され,区間の最大値,最小値を求めるために保持された最大値,最小値はクリアされる。そして,次の区間のサンプリングデータが入力され,最大値,最小値が判定され保持される。
【0051】出力手段14は,リアルタイム送信の場合,1区間毎の最大値と最小値を変調し,送信信号として伝送路5に有線出力するか,あるいは無線出力する。必要に応じて副情報も送信する。または,リアルタイムに送信するのでない場合には,最大値,最小値を例えば,1時間,1日等を格納し,まとめて伝送路5に有線出力するか,あるいは無線出力する。
【0052】受信装置3において,受信手段20は伝送路5を介して送信される送信信号もしくは送信データを受信し,受信信号として受信装置3の内部に出力する。あるいは,無線の送信信号を復調し,受信装置3の内部に出力する。区間算出手段21は受信信号の開始時刻(もしくは開始アドレス等)に基づいて受信側区間設定手段20’に定められた区間時間を基に受信側区間を求める。観測データがリアルタイムに送信信号として送られてくるのでない場合には,受信手段20は受信データを複数区間まとめて格納する(1時間,1日等)。
・・・
【0085】S2 最大値最小値判定部81はA/D変換器41でA/D変換されるサンプリング値を最大値最小値保持部82に保持されている値と比較し,大きいか小さいかを判定し,最大値,最小値であれば最大値最小値保持部82に保持する。必要に応じて,それまでのサンプリング値の平均値も求め保持する。」

イ 対比
(ア)本願発明と当審引用発明とを対比する。
a 当審引用発明の「半導体ウエハを熱処理する半導体製造装置」は、本願発明の「基板を処理する基板処理装置」に相当するといえる。
b 当審引用発明の「処理時における半導体製造装置の処理容器内の所望の位置の温度を、温度センサ等を利用して測定した値や、処理圧力を、圧力計等を用いて測定した値や、電力計により測定したヒータの電力値である測定値」は、本願発明の「基板処理装置を構成する各部品の状態を示すモニタデータ」に相当するといえる。そうすると、当審引用発明の「半導体製造装置」と本願発明の「基板処理装置」は、「少なくとも前記基板処理装置を構成する各部品の状態を示すモニタデータを取得」する点において共通するといえる。
c 当審引用発明において、平均値、最大値及び最小値等の状態値を測定値から算出する際には、温度、圧力、電力値等の測定値の種別ごとに算出していることは明らかである。また、当審引用発明の「状態値」と本願発明の「パッケージデータ」は、「モニタデータの最大値、平均値及び最小値の3つの算出データを有するデータ」である点において共通するといえる。そうすると、当審引用発明の「半導体製造装置」と本願発明の「基板処理装置」は、後述する相違点2を除き、「複数の前記モニタデータから選択された1つの前記モニタデータについて、少なくとも最大値、平均値及び最小値の3つの算出データを有するデータを生成」する点において共通するといえる。
d 当審引用発明の「情報処理装置」と本願発明の「群管理装置」とは、後述する相違点1を除き、「管理装置」である点において共通するといえる。そうすると、当審引用発明の「半導体製造装置」と本願発明の「基板処理装置」は、後述する相違点1及び2を除き、「少なくとも最大値、平均値及び最小値の3つの算出データを有するデータを管理装置に送信」する点において共通するといえる。

(イ)以上から、本願発明と当審引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりであると認められる。
a 一致点
「基板を処理する基板処理装置であって、
少なくとも前記基板処理装置を構成する各部品の状態を示すモニタデータを取得し、
複数の前記モニタデータから選択された1つの前記モニタデータについて、少なくとも最大値、平均値及び最小値の3つの算出データを有するデータを生成し、
当該データを管理装置に送信することを特徴とする基板処理装置。」

b 相違点
・相違点1
本願発明の「管理装置」は「群管理装置」であるのに対し、当審引用発明の「情報処理装置」は「半導体製造装置」の「群管理装置」と言い得るか不明である点。

・相違点2
「少なくとも最大値、平均値及び最小値の3つの算出データを有するデータ」の生成方法に関し、本願発明の「基板処理装置」は、「取得した前記モニタデータと直前の最大値とを比較する処理と、取得した前記モニタデータと直前の最小値とを比較する処理と、取得した前記モニタデータを直前までのモニタデータの積算値に積算する処理と、前記モニタデータを取得する所定周期が経過したかどうかを判定する処理と、前記積算値に基づいて平均値を算出する処理」を行うことによって、「少なくとも最大値、平均値及び最小値の3つの算出データを有するデータ」である「パッケージデータ」を生成しているのに対し、当審引用発明の「半導体製造装置」は、「少なくとも最大値、平均値及び最小値の3つの算出データを有するデータ」である「状態値」の生成方法について特定されていない点。

・相違点3
本願発明の「基板処理装置」は、「パッケージデータを群管理装置に送信する際、前記パッケージデータが揃っているか判定する処理と、前記パッケージデータのデータ抜けを補填する処理と、前記パッケージデータの前記平均値をバックアップする処理とを行うように構成されており、前記パッケージデータに含まれる最大値、平均値、最小値のうち少なくとも一部が抜けている場合には、前記バックアップされた平均値で補填し、データ抜けの無い前記パッケージデータに更新」するのに対し、当審引用発明の「半導体製造装置」はこうした処理を行わない点。

エ 判断
(ア)本願発明の進歩性について
上記相違点3について検討する。
当審引用文献1ないし3の記載事項は上記(1)アないしクに摘記したとおりであり、上記相違点3に係る構成について記載されているとは認められず、また、当該構成を示唆する記載があるとも認められない。
そうすると、上記相違点3に係る構成は、当審引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に相当し得たものであるとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、当審引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本願の請求項1及び3ないし9に係る発明の進歩性について
本願の請求項1及び7に係る発明は本願発明の「基板処理装置」を備えた「基板処理システム」に係るものであり、本願発明の発明特定事項を全て有する発明である。
また、本願の請求項3ないし6はいずれも請求項2を引用しており、本願の請求項3ないし6に係る発明は本願発明の発明特定事項を全て有する発明である。
また、本願の請求項8に係る発明は、本願発明を「データ処理方法」の発明として表現した発明であり、上記相違点3に対応する発明特定事項である「前記パッケージデータを送信する工程は、前記パッケージデータが揃っているか判定する処理と、前記パッケージデータのデータ抜けを補填する処理と、前記パッケージデータの前記平均値をバックアップする処理とを行うように構成されており、前記パッケージデータに含まれる最大値、平均値、最小値のうち少なくとも一部が抜けている場合には、前記バックアップされた平均値で補填し、データ抜けの無い前記パッケージデータに更新して、前記群管理装置に送信する」という構成を備えている。
また、本願の請求項9に係る発明は、本願発明を「プログラム」の発明として表現した発明であり、上記相違点3に対応する発明特定事項である「前記パッケージデータを送信する処理は、前記パッケージデータが揃っているか判定する処理と、前記パッケージデータのデータ抜けを補填する処理と、前記パッケージデータの前記平均値をバックアップする処理とを含むように構成されており、 前記パッケージデータに含まれる最大値、平均値、最小値のうち少なくとも一部が抜けている場合には、前記バックアップされた平均値で補填し、データ抜けの無い前記パッケージデータに更新して、前記群管理装置に送信する」という構成を備えている。
してみれば、本願発明が当審引用文献1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本願の請求項1及び3ないし9に係る発明も、当審引用文献1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

進歩性についてのまとめ
以上のとおり、本願の請求項1ないし9に係る発明は、当審引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、当審拒絶理由の「理由1」に示した理由によっては、本願を拒絶することはできない。

(2)新規事項について
平成26年7月7日付けでした手続補正後の請求項8に「前記群管理装置は、前記パッケージデータの平均値をバックアップする」と記載されているが、当該記載は平成28年6月16日付けでした手続補正により削除されている。
また、平成26年7月7日付けでした手続補正後の請求項9に「前記群管理装置は、更に、前記パッケージデータの値を判定する判定工程を有し、判定の結果、前記パッケージデータの一部にデータ抜けがあった場合に、バックアップされた前記平均値で補填する」と記載されているが、当該記載は平成28年6月16日付けでした手続補正により削除されている。
したがって、当審拒絶理由の「理由2」に示した理由によっては、本願を拒絶することはできない。

(3)当審拒絶理由についてのまとめ
以上のとおり、当審拒絶理由の「理由1」及び「理由2」に示した理由によっては、本願を拒絶することはできない。
そうすると、もはや、当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 結言
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-08 
出願番号 特願2010-204293(P2010-204293)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 樫本 剛  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 飯田 清司
須藤 竜也
発明の名称 基板処理システム、基板処理装置、データ処理方法およびプログラム  
代理人 阿仁屋 節雄  
代理人 福岡 昌浩  

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