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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1317835
審判番号 不服2015-18800  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-19 
確定日 2016-08-30 
事件の表示 特願2012-286075「集光型太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月 7日出願公開、特開2014-127704、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成24年12月27日の出願であって、平成27年4月22日付けで拒絶理由が通知され、同年6月8日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが、同年7月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年10月19日に該拒絶査定を不服として審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成28年5月13日付けで拒絶理由が通知され、平成28年7月5日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。


第2 本願発明
本願発明は、平成28年7月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5により特定される次のとおりのものである(以下、これらの請求項に係る発明を項番号に対応して「本願発明1」などという。)。

「【請求項1】
太陽電池セルを搭載するための複数の搭載領域及び前記太陽電池セルと外部電極を電気的に接続するための複数のリード電極を有する基台部と、該基台部の前記搭載領域のそれぞれを取り囲むように熱硬化性樹脂で成型された支持体と、前記搭載領域に搭載された前記太陽電池セルと、該太陽電池セルを封止するように前記搭載領域の上方に成型された集光レンズとを具備する集合型の集光型太陽電池モジュールであって、
前記基台部の前記搭載領域の表面にメッキが施され、前記集光レンズは透明の熱硬化性シリコーン樹脂で成型されたものであり、
前記基台部は、前記リード電極の一部にハーフダイシング部を有するものであり、該ハーフダイシング部を有する箇所では前記複数の太陽電池セル同士の電気的接続が切れており、前記ハーフダイシング部を有しない箇所では前記複数の太陽電池セル同士が前記リード電極で電気的に接続されている、直列、並列、又は直列並列の電気的回路を備えたものであることを特徴とする集光型太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記支持体の内壁表面が金属で蒸着、又はメッキされたものであることを特徴とする請求項1に記載の集光型太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記搭載された太陽電池セルは、金属又は導電性熱硬化性シリコーン樹脂で、前記メッキが施された搭載領域と接合されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の集光型太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記支持体は、熱硬化性シリコーン樹脂、有機変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなる混成樹脂のうちから選ばれる少なくとも1種の材料からなるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の集光型太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記支持体には、フィラー、拡散剤、顔料、蛍光物質、反射性物質、遮光性物質、繊維状無機材料からなる群から選択される少なくとも1つが混合されているものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の集光型太陽電池モジュール。」


第3 原査定の拒絶理由についての当審の判断
1 原査定の拒絶理由の概要は以下のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1?12
・引用文献等 1?4
・備考
引用文献1に記載された発明(特に、段落0021?0045参照。以下「引用発明1」という。)の「光半導体素子実装基板」、「遮光性及び反射性を有する熱硬化性樹脂からなる枠体」及び「『レンズ面を形成』した『透光部』」は、それぞれ請求項1に係る発明の「基台部」、「熱硬化性樹脂で成形された支持体」及び「集光レンズ」に相当する。
引用発明1において、光半導体素子として受光素子を用いることが記載されており、当該受光素子として文献を挙げるまでも無く周知な太陽電池セルを採用することや、枠体の反射特性を請求項2に係る発明の数値範囲内に設定することは当業者が適宜なしうるものである。

引用文献2には「光反射面と導通部にめっきを施して形成した所望の反射特性を有する光反射面及び配線部と、を有する光電子部品」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。(特、段落0044?0048,0056,0057参照。)

引用文献3には「集光レンズと太陽電池セルとを用いたものであって、前記集光レンズにシリコンー樹脂を用いる集光型太陽電池パネル」の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。(特に、段落0008参照。)

引用文献4には「酸化チタン粒子を含むシリコーン樹脂でパッケージ成形体部材を構成する太陽電池素子」の発明(以下「引用発明4」参照。)が記載されている。(特に、段落0041?0045,0063,00064,図4参照。)

引用発明1において、引用発明2?4に基づいて、請求項1?12に係る発明の構成をなすことは当業者が容易に発明しうるものである。

<引用文献等一覧>
引用文献1.特開2010-123620号公報
引用文献2.特開2004-111906号公報
引用文献3.国際公開第2012/091082号
引用文献4.再公表特許第2010/150880号

2 本願発明1について
(1)引用文献、引用文献の記載事項及び引用発明
ア 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
(ア)「【0021】
図1は本発明の製造方法に基づいて作製される半導体装置の説明図である。
【0022】
半導体装置62は、光半導体素子31が実装された光半導体素子実装基板30上に遮光性及び反射性を有する熱硬化性樹脂からなる枠体32が形成され、枠体32で囲まれた内部及び枠体32の上面上に熱硬化性の透光性樹脂による透光部52が配置されている。透光性樹脂は、光半導体素子31が発光又は受光する光の波長領域の少なくとも一部に対して透光性を有する樹脂からなる。
【0023】
透光部52は、光半導体素子31を覆うように該光半導体素子31を樹脂封止していると共に光半導体素子31の上方に球面又は非球面の凸形状のレンズ面63を形成しており、光半導体素子31がLED等の発光素子の場合は、光半導体素子31から出射して透光部52内を導光されて外部に対する光出射面となるレンズ面63に至った光線は、レンズ面63で光半導体素子31の光軸X方向に屈折されて透光部52外に出射される。
【0024】
光半導体素子31がフォトダイオード、フォトトランジスタ等の受光素子の場合は、外部から透光部52のレンズ面63に到達した光線は、透光部52の光入射面となるレンズ面63で光半導体素子31の光軸X方向に屈折されて透光部52内に入射し、透光部52内を導光されて光半導体素子31上に収束される。」

(イ)図1


上記(ア)及び(イ)より、引用文献1には、
「光半導体素子31が実装された光半導体素子実装基板30上に遮光性及び反射性を有する熱硬化性樹脂からなる枠体32が形成され、枠体32で囲まれた内部及び枠体32の上面上に熱硬化性の透光性樹脂による透光部52が配置されている半導体装置62であって、
光半導体素子31がフォトダイオード、フォトトランジスタ等の受光素子であり、外部から透光部52のレンズ面63に到達した光線は、透光部52の光入射面となるレンズ面63で光半導体素子31の光軸X方向に屈折されて透光部52内に入射し、透光部52内を導光されて光半導体素子31上に収束される、半導体装置62。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

イ 引用文献2には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)
(ア)「【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態に係る光電素子部品について、図面を参照して説明する。図1は光電素子部品の封止樹脂層を除いた状態を示し、図2は光電素子部品の外観を示す。光電素子部品10は、四角形状の回路基板1に形成した凹所2の底面4に光電素子5を実装して形成されており、光コネクタ等の発光/受光デバイスとして用いられる。光電素子5の発光/受光面の略中心における垂線方向に光軸が定義される。凹所2を形成する斜面を含む内面には、光電素子5による発光/受光用に供せられるメタライズされた光反射面3が形成されている。
【0045】
この光反射面3は、光利用効率の優れた集光性を有する、例えば、略パラボラ形状や略円錐凹形状などからなる斜面を光軸周りのほぼ全周に亘って備えて形成される。その光反射面3による略集光点位置に光電素子5の発光/受光中心が位置するように発光素子5が配置される。この光反射面3は、光電素子5の発光/受光面からの光束の角度分布及び集光レンズなどとの組合せにおいて所望の高い光利用効率が得られるように、通常はコンピュータ演算処理を用いて非球面形状に光学設計される。そのような設計により生成された光反射面形状データを用いて光反射面3が形成されている。光反射面3の周囲方向の一部の範囲における斜面の中途及び斜面下端の若干下側までも含む凹所2の中途部位に形成された踊り場状の段面9には、光電素子5の回路接続用のボンディングパッド7が備えられている。
【0046】
光反射面3は、導電性膜によってメタライズされており、光電素子収納用凹所2の底面4を含む内面の略全面にわたって形成されている。また、この導電性膜は、電気回路パターンを形成しており、絶縁部8によって電気的に絶縁された2領域からなり、それぞれ回路基板1の外表面に延伸されて配線3a,3bに接続されている。
【0047】
また、光電素子5を封止する樹脂層(以下、封止樹脂層と記す)が凹所2に形成され、その上部にレンズ層15が形成される。封止樹脂層は光電素子5やボンディングワイヤ11を保護するものであり、光透過性のある樹脂、例えばエポキシ樹脂などが用いられる。回路基板1は、LCP樹脂(液晶ポリマー)やPPA樹脂(ポリフタルアミド樹脂)基板などの基板材で形成される厚みを有する立体状のものである。このような立体状の基板材は射出成形により作成され、この上に立体的な回路が形成され、いわゆるMID(Molded Interconnect Device)と呼ばれる立体成形回路部品となる。MIDには一回成形法、二回成形法など各種公知の方式があるが、特にレーザを用いて回路形成する一回成形法が本発明の構造を有する小型精密部品の製造に適している。なお、基板材はフィラーなどを含有するものでもよく、またセラミック基板や金属体に絶縁層を被覆した基板などのように樹脂からなる基板以外の基板材でもよい。
【0048】
光電素子5について説明する。光電素子5は、例えばLED(発光ダイオード)素子等の
発光素子やフォトダイオード等の受光素子、又はこれらで構成された光電素子モジュールなどである。光電素子5は、その上面から発光して凹所2の上方開口に向けて光を出射、又は、凹所2の上方の開口からの入射する光を光電素子5の上面で受光する。この光電素子5は、その上下面に電極を有している。光電素子5の下面電極は、凹所2の底面4において、例えば銀ペーストやはんだなどの導電性接合材12(図4参照)によって光反射膜3に電気的に接続される。従って、光電素子5の下面電極は、光反射面3を形成する導電膜の回路パターンを介して、回路基板1の上端面からその側面、さらにその裏面(不図示)にかけて形成された配線3aに引き出されている。光電素子5の上面電極6は、例えば金線からなるボンディングワイヤ11によってボンディングパッド7に接続される。従って、光電素子5の上面電極6は、回路基板1の上面からその側面、さらにその裏面(不図示)にかけて形成された配線3bに引き出されている。」

(イ)「【0056】
続いて、光反射面3である前記凸部9a、凹部9bを含めて光電素子収納用の凹所2の内面ほぼ全面、及び配線3a,3bなどの電気回路パターンを形成する面の全域に、例えばスパッタリングや蒸着法により導電性を有する下地膜を形成する。
【0057】
その後、例えばレーザ光照射により、下地膜の不要な部分を蒸発させて除去することにより、下地膜にパターニングを施して、導通部と絶縁部を形成する。さらに、導通部にめっきを施すことにより、所望の厚み、及び光反射特性を有する光反射面3、及び配線部3a,3b等が形成される。パターニングは、めっき等により最終膜厚の膜を形成した後に行うこともできる。このように、パターニングをレーザ加工により行うと立体形状への加工が容易である。通例、光反射面3の膜は、銅膜(厚さ0.1?0.5μm)から形成される。この場合、SHG-YAGレーザ(波長532nm)を用いるのが好ましい。」

ウ 引用文献3には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)

「[0008] 太陽光発電パネルが地球温暖化の問題の解決策として広く普及するためには、系統商用電力システムによる電力コストと拮抗する程の低コスト化が達成される必要がある。そのコストは太陽光発電パネルが100円/Wpと言われており、耐久性に優れ、且つ、材料費及びフレネルレンズ形状の加工費用が安価であることが求められている。
樹脂製のフレネルレンズでは、その材料として一般にはアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂が用いられている。しかし、太陽光下で20年超の長期耐久性が求められる集光型太陽光電池パネルでは、これらの汎用樹脂より更に紫外線耐性の高いシリコーン樹脂が好適である。
シリコーン樹脂をフレネルレンズ形状に加工する場合、汎用で用いられるアクリル樹脂等と同じく、インジェクションモールディングにより金型に樹脂を注入し、成型後に製品を取り出す生産性の低い加工プロセスで生産するために生産性が低く、結果として、製造コストが高くなっていた。
このような理由から、樹脂製のフレネルレンズを用いて簡便・軽量な集光型太陽光発電パネルは実用化が困難となっていた。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、太陽光照射に対して耐久性が優れ、例えば、フレネルレンズ形状を有するフレネルシート、太陽光をフレネルレンズシートの法線方向に揃えるために、プリズムシートに入射する前に、太陽光の入射を法線方向に揃えるマイクロレンズシート或いはプリズムレンズシートとして使用可能な有機材料光学シートを提供することを目的とする。この有機材料光学シートは、例えば、集光型太陽光電池パネルに利用できる。」

エ 引用文献4には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)
(ア)「【0041】
本発明の酸化チタン含有シリコーン製の白色反射材の好ましい一形態について、図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0042】
白色反射材は、図1の通り、半導体発光装置1に組み込まれるもので、半導体発光素子13を装着する基材16と、その発光素子を取り巻くパッケージ成形体部材10とに、用いられている。
【0043】
基材16は、基板20の回路側の層を構成する部材であり、酸化チタン粒子12bを含有しているシリコーン樹脂で成形されている。基材16上の半導体発光素子13の装着面側の表面に導電金属膜である銅膜15a・15bが、付され、電源(不図示)へ接続される配線パターンを形成している。発光ダイオード13から伸びた2本のリード線14a・14bが、その銅膜15aと銅膜15bとに、夫々接続されている。その基材16の表面上の配線パターン部位以外の部位は、基材16が露出しており、それに含有された酸化チタン粒子12bのために、白色を呈し、白色反射材として優れた隠蔽性を有するから光を漏出しない。
【0044】
板状の基材16上の半導体発光素子13の非装着面側の表面に、絶縁性の支持体17が、付されて、基板20を形成している。パッケージ成形体部材10の出射方向側の開口部は、透光性材料で封止され、あるいは封止に代わって又は封止とともにガラス製や樹脂製の透明板や透明フィルムで覆われていてもよい。その封止や透明板や透明フィルムが、それの透過光の波長を所期の波長へ変換する顔料、色素、蛍光剤、りん光剤を含有していてもよい。また、パッケージ成形体部材10の出射方向側の開口部が、凸レンズ、凹レンズ、フレネルレンズのようなレンズで、覆われていてもよい(不図示)。
【0045】
パッケージ成形体部材10も、基材16で用いられた同種の酸化チタン粒子12aを含有するシリコーン樹脂で成形されている。パッケージ成形体部材10は、半導体発光素子13を取り巻きつつ、傾斜した内壁11によってその光の出射方向へ向かって末広がりに開口しており、半導体発光素子13の装着面側の基材16の表面に、接着剤層(不図示)を介して一体に接着されている。」

(イ)「【0063】
別な白色反射材の態様は、図4の通り、太陽電池2のアセンブリとして組み込まれるもので、太陽電池素子24である光電変換素子を装着したパッケージ成形体部材10に、用いられる。
【0064】
パッケージ成形体部材10は、酸化チタン粒子12aを含有するシリコーン樹脂からなり、椀状に複数窪んだ列が幾重にも並んで、成形されている。太陽電池素子24は、内部の略球状のp型シリコン半導体24aとその周りを覆ってPN接合しているn型シリコン半導体24bとからなる。n型シリコン半導体24bの下端が研磨によって欠落しており、そこからp型シリコン半導体24aが露出している。n型シリコン半導体24bは、負電極の電極エレメント層である銅膜22bのみに接続し、一方p型シリコン半導体24aは、正電極の電極エレメント層である銅膜22aのみに接続している。両電極である銅膜22a・22bは、その間で積層されている絶縁体層23で、隔離され絶縁されている。パッケージ成形体部材10は、太陽電池素子24を取り巻きつつ、椀状に窪んだ内壁11によってその出射方向へ向かって末広がりに開口しており、銅膜22bに接着剤層(不図示)を介して一体に接着されている。」

(2)対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「光半導体素子実装基板30」及び「熱硬化性樹脂からなる枠体32」は、本願発明1の「基台部」及び「支持体」に、それぞれ相当する。

(イ)引用発明の「光半導体素子実装基板30」が受光素子と外部電極を電気的に接続するための複数のリード電極を有することは自明のことである。

(ウ)引用発明の「熱硬化性の透光性樹脂による透光部52」は、「透光部52の光入射面となるレンズ面63で光半導体素子31の光軸X方向に屈折されて透光部52内に入射し、透光部52内を導光されて光半導体素子31上に収束される」ように機能するものであるから、引用発明の「透光部52」は、本願発明1の「集光レンズ」に相当する。

(エ)引用発明の「光半導体素子31がフォトダイオード、フォトトランジスタ等の受光素子」は、本願発明の「太陽電池セル」と、「光電変換素子」の点で一致する。

(オ)引用発明の「半導体装置62」は、本願発明の「集合型の集光型太陽電池モジュール」と、「光電変換装置」の点で一致する。

上記(ア)?(オ)より、本願発明1と引用発明は、
「光電変換素子を搭載するための搭載領域及び前記光電変換素子と外部電極を電気的に接続するための複数のリード電極を有する基台部と、該基台部の前記搭載領域のそれぞれを取り囲むように熱硬化性樹脂で成型された支持体と、前記搭載領域に搭載された前記光電変換素子と、該光電変換素子を封止するように前記搭載領域の上方に成型された集光レンズとを具備する光電変換装置。」である点で一致し、以下の相違点1?6で相違する。

<相違点1>
「光電変換素子」が、本願発明1では、「太陽電池セル」であるのに対して、引用発明では、「受光素子」である点。

<相違点2>
「搭載領域」が、本願発明1では、「複数」であるのに対して、引用発明では、1つである点。

<相違点3>
「搭載領域」が、本願発明1では、「表面にメッキが施され」ているのに対して、引用発明の搭載領域は、そのような限定がない点。

<相違点4>
「熱硬化性」「樹脂で成型された」「集光レンズ」が、本願発明1では、「シリコーン樹脂」であるのに対して、引用発明の「熱硬化性の透光性樹脂による透光部52」は、シリコーン樹脂であるとの限定がない点。

<相違点5>
「基台部」が、本願発明では、「前記リード電極の一部にハーフダイシング部を有するものであり、該ハーフダイシング部を有する箇所では前記複数の太陽電池セル同士の電気的接続が切れており、前記ハーフダイシング部を有しない箇所では前記複数の太陽電池セル同士が前記リード電極で電気的に接続されている、直列、並列、又は直列並列の電気的回路を備えたものである」のに対して、引用発明の「光半導体素子実装基板30」は、そのような限定がない点。

<相違点6>
「光電変換装置」が、本願発明1では、「集合型の集光型太陽電池モジュール」であるのに対して、引用発明では、「半導体装置62」である点。

イ 判断
事案に鑑み、上記相違点1、2、5、6について検討する。
引用発明の「半導体装置62」は太陽電池モジュールではないので、引用発明の「半導体装置62」を複数接続して集合型の集光型太陽電池モジュールとする動機付けがない。さらに、上記相違点1、2、5、6に係る構成は、引用文献2?4のいずれの文献にも記載されていない。
してみると、引用発明に引用文献2?4に記載された事項を適用して、上記相違点1、2、5、6に係る構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得ることとはいえない。
よって、相違点3、4について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3 本願発明2?5について
本願発明2?5は、本願発明1をさらに限定するものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4 小括
以上のとおり、本願発明1?5は、引用発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第4 当審の拒絶理由についての当審の判断
1 当審の拒絶理由の概要
理由1(明確性要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由2(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由3(実施可能要件)
この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


理由1(明確性要件)について
(1)請求項1は、「集光型太陽電池モジュール」という物の発明であるが、請求項1の「前記基台部の一部が切断されて形成された」は、その物の製造方法が記載されているものと認められる。
ここで、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である(最二小判平成27年6月5日 平成24年(受)1204号、同2658号)。
しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載がなく、また、出願人から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。
したがって、請求項1は明確でない。

(2)請求項1の「前記基台部の一部が切断されて形成された電気的回路を備えたもの」は、「基台部」が「搭載領域」及び「リード電極」を有するものであるところ、「基台部」のどの部分を切断するのか、また、「電気回路」がどのような構成であるのかが不明である。

(3)請求項4の「前記搭載された太陽電池セルは、金属又は導電性熱硬化性シリコーン樹脂で前記メッキが施された搭載領域と接合されたものであること」は、金属又は導電性熱硬化性シリコーン樹脂によってメッキが施されたと読み取れ、意味不明の記載である。

(4)請求項1、4を間接的又は直接的に引用する請求項に係る発明も、同様に、明確ではない。

(5)以上から、請求項1?6に係る発明は明確でない。


理由2(サポート要件)について
(1)請求項1の「前記基台部の一部が切断されて形成された電気的回路を備えたもの」について、明細書の【0055】に、「図5の(B)に示すように、厚さ0.4mmのダイシングブレードを用いて基台部の一部を切断し(ハーフダイシング)、太陽電池セル3個の直列電子回路を3列並列させた電子回路を有した集光型太陽電池モジュールを得た。」と記載されていて、電気的回路についての具体的な実施例としては、ダイシングブレードを用いて、図5(A)に示される特定の基台部の一部を切断するという方法により製造された「集光型太陽電池モジュール」のみが記載されている。
すると、請求項1は、このような方法が特定されていないので、発明の詳細な説明の記載に対応していない(なお、この理由を解消するように補正しても、上記理由1(1)は解消できない。)。
したがって、請求項1は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(2)請求項1を間接的又は直接的に引用する請求項に係る発明も、同様である。

(3)よって、請求項1?6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

理由3(実施可能要件)
(1)請求項2の「前記支持体は、350nm以上、900nm以下の波長の光に対する反射率が90%以上であるシリコーン樹脂を含有する熱硬化性樹脂で成型されたものであること」について、通常、(二酸化チタン等の反射性物質を含有しない)シリコーン樹脂の可視光の反射率が90%以上とはならないことが技術常識であるから、「350nm以上、900nm以下の波長の光に対する反射率が90%以上であるシリコーン樹脂」というのは一般的なものでなく、また、反射性物質等を含有しないシリコーン樹脂を、350nm以上、900nm以下の波長の光に対する反射率が90%以上とするための条件は、発明の詳細な説明に具体的に記載されていない。
したがって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

(2)請求項2を間接的又は直接的に引用する請求項に係る発明も、同様である。

(3)よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項2?6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

2 当審の判断
(1)平成28年7月5日付け手続補正書によって、補正前の請求項1の「前記基台部の一部が切断されて形成された電気的回路を備えたものであること」が「前記基台部は、前記リード電極の一部にハーフダイシング部を有するものであり、該ハーフダイシング部を有する箇所では前記複数の太陽電池セル同士の電気的接続が切れており、前記ハーフダイシング部を有しない箇所では前記複数の太陽電池セル同士が前記リード電極で電気的に接続されている、直列、並列、又は直列並列の電気的回路を備えたものであること」に補正された。
このことにより、理由1(明確性要件)の(1)、(2)、理由2(サポート要件)の(1)に関する拒絶理由は解消した。
(2)平成28年7月5日付け手続補正書によって、補正前の請求項4の「」前記搭載された太陽電池セルは、金属又は導電性熱硬化性シリコーン樹脂で前記メッキが施された搭載領域と接合されたものであること」が「前記搭載された太陽電池セルは、金属又は導電性熱硬化性シリコーン樹脂で、前記メッキが施された搭載領域と接合されたものであること」に補正された。
このことにより、理由1(明確性要件)の(3)に関する拒絶理由は解消された。
(3)平成28年7月5日付け手続補正書によって、補正前の請求項2が削除された。
このことにより、理由3(実施可能要件)の(1)に関する拒絶理由は解消された。

よって、当審拒絶理由において指摘した拒絶理由はすべて解消した。


第5 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-15 
出願番号 特願2012-286075(P2012-286075)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 536- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金高 敏康  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 伊藤 昌哉
井口 猶二
発明の名称 集光型太陽電池モジュール  
代理人 好宮 幹夫  

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