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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A01N
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 A01N
管理番号 1317939
審判番号 不服2014-21050  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-17 
確定日 2016-08-10 
事件の表示 特願2012-800「グリホサート除草剤用の貯蔵および輸送システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年3月29日出願公開、特開2012-62334〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、1999年11月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年11月23日(US)米国)を国際出願日とする特願2000-583349号の一部を平成24年1月5日に新たな特許出願としたものであって、平成25年11月19日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月13日付けで拒絶査定がされ、同年10月17日に拒絶査定不服審判が請求され、同年11月25日に審判請求書を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 特許請求の範囲の記載
この出願の特許請求の範囲の記載は、平成26年2月25日付けの手続補正により補正された以下のとおりである(以下、請求項1?11に係る発明をそれぞれ「本願発明1」?「本願発明11」という。)。
「【請求項1】グリホサート除草剤の貯蔵効率を最大化させる方法であって、下記工程:
(1)同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも低い粘度を有し、かつ同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも大きい比重を有するグリホサートの一塩基性カリウム塩の水溶液を選択し、ここに、前記水溶液のグリホサート酸当量濃度が40重量%と上記一塩基性カリウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であって、ここに、該選択された溶液は、該組成物1リットルあたり合計20ないし200グラムの1またはそれ以上の界面活性剤を含む界面活性剤成分をさらに含むものであり、該界面活性剤成分は50℃またはそれ未満の温度において組成物が相分離を示さないように選択されるものであり;
(2)0.1ないし100000リットルまたはそれ以上の容量を有する容器に該選択された溶液を実質的に充填し;次いで、
(3)充填後、該容器を適切な貯蔵区域に置く
を含む方法。
【請求項2】グリホサート除草剤の貯蔵効率を最大化させる方法であって、下記工程:
(1)同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも低い粘度を有し、かつ同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも大きい比重を有するグリホサートのモノエタノールアンモニウム塩の水溶液を選択し、ここに、前記水溶液のグリホサート酸当量濃度が40重量%と上記モノエタノールアンモニウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であり;
(2)0.1ないし100000リットルまたはそれ以上の容量を有する容器に該選択された溶液を実質的に充填し;次いで、
(3)充填後、該容器を適切な貯蔵区域に置く
を含む方法。
【請求項3】グリホサート除草剤の貯蔵効率を最大化させる方法であって、下記工程:
(1)同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも低い粘度を有し、かつ同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも大きい比重を有するグリホサートの一塩基性カリウム塩の水溶液を選択し、ここに、前記水溶液のグリホサート酸当量濃度が40重量%と上記一塩基性カリウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であって、ここに、該選択された溶液は、該組成物1リットルあたり合計20ないし200グラムの1またはそれ以上の界面活性剤を含む界面活性剤成分をさらに含むものであり、該界面活性剤成分は50℃またはそれ未満の温度において組成物が相分離を示さないように選択されるものであり;
(2)0.1ないし2000リットルまたはそれ以上の容量を有する複数の容器に該選択された溶液を実質的に充填し;
(3)荷積み区域において、道路用車両、鉄道用車両または水上輸送用車両内または上に荷積みし;次いで、
(4)荷積みの後、車両を、荷積み区域から荷下ろし区域へ移動させる
を含む方法。
【請求項4】グリホサート除草剤の貯蔵効率を最大化させる方法であって、下記工程:
(1)同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも低い粘度を有し、かつ同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも大きい比重を有するグリホサートのモノエタノールアンモニウム塩の水溶液を選択し、ここに、前記水溶液のグリホサート酸当量濃度が40重量%と上記モノエタノールアンモニウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であり;
(2)0.1ないし2000リットルまたはそれ以上の容量を有する複数の容器に該選択された溶液を実質的に充填し;
(3)荷積み区域において、道路用車両、鉄道用車両または水上輸送用車両内または上に荷積みし;次いで、
(4)荷積みの後、車両を、荷積み区域から荷下ろし区域へ移動させる
を含む方法。
【請求項5】グリホサート除草剤の貯蔵効率を最大化させる方法であって、下記工程:
(1)同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも低い粘度を有し、かつ同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも大きい比重を有するグリホサートの一塩基性カリウム塩の水溶液を選択し、ここに、前記水溶液のグリホサート酸当量濃度が40重量%と上記一塩基性カリウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であって、ここに、該選択された溶液は、該組成物1リットルあたり合計20ないし200グラムの1またはそれ以上の界面活性剤を含む界面活性剤成分をさらに含むものであり、該界面活性剤成分は50℃またはそれ未満の温度において組成物が相分離を示さないように選択されるものであり;
(2)15000ないし100000リットルまたはそれ以上の容量を有するバルクコンテナに該選択された溶液を実質的に充填し;
(3)荷積み区域において、道路用車両、鉄道用車両または水上輸送用車両内または上に荷積みし;次いで、
(4)荷積みの後、車両を、荷積み区域から荷下ろし区域へ移動させる
を含む方法。
【請求項6】グリホサート除草剤の貯蔵効率を最大化させる方法であって、下記工程:
(1)同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも低い粘度を有し、かつ同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも大きい比重を有するグリホサートのモノエタノールアンモニウム塩の水溶液を選択し、ここに、前記水溶液のグリホサート酸当量濃度が40重量%と上記モノエタノールアンモニウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であり;
(2)15000ないし100000リットルまたはそれ以上の容量を有するバルクコンテナに該選択された溶液を実質的に充填し;
(3)荷積み区域において、道路用車両、鉄道用車両または水上輸送用車両内または上に荷積みし;次いで、
(4)荷積みの後、車両を、荷積み区域から荷下ろし区域へ移動させる
を含む方法。
【請求項7】該選択された溶液が、水溶液中または安定な水中分散物中の界面活性剤成分を用いて調節され、該溶液は該組成物1リットルあたり合計20ないし200グラムの1またはそれ以上の界面活性剤を含むものであり、該界面活性剤成分は50℃またはそれ未満の温度において組成物が相分離を示さないように選択されるものである、請求項2、4および6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】該界面活性剤成分が、0℃以上の温度において、7日間まで貯蔵された場合に、該グリホサートまたはその塩の結晶化が示されないように選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】g/l で表された界面活性剤濃度が、全てのグリホサートがイソプロピルアンモニウム塩として存在する場合に達成される最大濃度よりも高い、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】選択された溶液の調製をさらに含み、前記調製が、水、界面活性剤およびグリホサートの一塩基性カリウム塩またはモノエタノールアミン塩を混合し、ついで、水および/または他の成分で調節することを含む、請求項1?9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】除草に有効な量の請求項1?10のいずれか1項記載の選択された溶液を適当な体積の水で希釈して適用組成物を得て、次いで、適用組成物を植物の葉に適用することを特徴とする、除草方法。」

なお、グリホサートの一塩基性カリウム塩(以下「グリホサートK塩」という。)及びグリホサートのモノエタノールアンモニウム塩(以下「グリホサートMEA塩」は、それぞれ、以下の化学式で表される化合物である。

HOOCCH_(2)NHCH_(2)P(=O)(OH)_(2)・K

HOOCCH_(2)NHCH_(2)P(=O)(OH)_(2)・H_(2)NCH_(2)CH_(2)OH

また、グリホサートのIPA塩(グリホサートのイソプロピルアミン塩。以下「グリホサートIPA塩」ということがある。)は、以下の化学式で表される化合物である。

HOOCCH_(2)NHCH_(2)P(=O)(OH)_(2)・H_(2)NCH(CH_(3))_(2)

第3 原査定の理由
原査定の理由は、平成25年11月19日付けの拒絶理由通知における理由1及び3である。
その理由3の概要は、「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない」というものであり、「発明の詳細な説明には、グリホサートの一塩基性カリウム塩を使用した具体例は記載されていない。一般に、化合物は塩の違いにより溶解性や溶液の粘度・比重等の物性が大きく異なる場合があり、化合物の化学式からその物性を推測することは困難であるというのが技術常識である。また、グリホサート塩と界面活性剤との組み合わせによる協同的な作用は、それぞれの組み合わせに依存する特異的なものであると考えられる。そうすると、グリホサートのモノエタノールアンモニウム塩の場合に所期の効果が得られるからといって、グリホサートの一塩基性カリウム塩を用いた場合や、さらにはこれに界面活性剤を組み合わせた場合にも、グリホサートのモノエタノールアンモニウム塩を用いた場合と同等の効果が得られるとは直ちには推認できない。したがって、発明の詳細な説明に開示された内容を請求項1-12に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。よって、請求項1-12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない」と指摘したものである。
その理由1の概要は、「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた下記の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)」というものであり、その「国際公開がされた下記の外国語特許出願」は「先願1」すなわち「特願2000-569638号(国際公開第00/15037号)」である。この国際公開のフロントページに記載された国際出願番号は、PCT/GB99/02726である。また、その「下記の請求項」は、請求項1、3、5、7?12である。
そして、上記理由3及び理由1により拒絶査定がされた本願発明1、3、5、10及び11は、それぞれ、上記拒絶理由が通知された請求項7において請求項1を引用して記載した態様に係る発明、同じく請求項7において請求項3を引用して記載した態様に係る発明、同じく請求項7において請求項5を引用して記載した態様に係る発明、同じく請求項10に係る発明及び同じく請求項12に係る発明に対応する。

第4 当審の判断
この出願は、原査定の理由3のとおり、請求項1、3、5、10及び11の特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないものである。
また、仮に、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するとした場合、原査定の理由1のとおり、本願発明1、3、5、10及び11は、先願1の国際出願日における国際出願の明細書及び請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
その理由は、以下のとおりである。

1 理由3(特許法第36条第6項第1号)について

(1)はじめに
特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)発明の詳細な説明の記載

ア 技術分野、背景技術、発明が解決しようとする課題及び発明の特徴についての記載

a この出願の明細書(以下「本願明細書」という。明細書は補正されていない。)の段落【0001】?【0024】に、以下の記載がある。
「【0001】本発明は、農薬の貯蔵および輸送システムに関する。特に、本発明は、除草剤グリホサート(glycosate)の倉庫保管および輸送に有用な製造物品に関する。
【背景技術】
【0002】・・・農業における・・・輸送コストが、この産業におけるかなりの負担であり、これらのコストを減少させる輸送効率の向上が常に求められている。
【0003】農業に必要とされる製品の・・・配給会社、小売業者、および共同組合がそのような製品の在庫を維持し、在庫コストが発生し、最終的に農家によって負担されるコストが増加する。従って、コスト削減のためにも貯蔵効率の向上が求められる。
【0004】意図する製品が農薬、例えば除草剤の場合、向上した輸送および貯蔵効率によって得られる利益は特に大きい。・・・
【0005】従って、一般に、最終使用者による取扱やすさを犠牲にせず、できるだけ濃縮するかまたはコンパクトな形態で農薬を貯蔵し輸送し・・・所定容量のコンテナに入れることができる農薬有効成分の量が多いほど、活性成分の単位当たり、およびその有効成分で最終的に処理される土地の単位面積当たりの、輸送および貯蔵コストが低くなる。・・・
【0006】グリホサートは、「世界市場で最もよく販売されている農薬」であり、推定年間製造量93,420?114,180トンである(Woold Mackenzie Agrochemical Service,Agrochemicals Product Databasc,1998)。事実上、全ての農業生産システム、ならびに林業、工業、地方自治、住宅、公道用地、施設および他の用途において、好ましくない植物の抑制に、グリホサートを使用することができる。グリホサートは、水に比較的不溶性の酸である(25℃において1.16重量%)。この理由から、グリホサートは一般に水溶液中の水溶性塩として処方される。
【0007】グリホサートは、一塩基性、二塩基性、および三塩基性の塩として、製造することができる。しかし、一塩基性の塩としてグリホサートを処方し、植物に適用するのが一般に好ましい。最も広く使用されているグリホサートの塩は、モノ(イソプロピルアンモニウム)であり、IPA塩と略される場合が多い。有効成分としてグリホサートのIPA塩を含有するMonsanto Companyによって市販されている除草剤は、Roundup(登録商標)、Roundup(登録商標)Ultra、Roundup(登録商標)Xtra、およびRodeo(登録商標)除草剤を包含する。そのような全ての市販製品は、グリホサートIPA塩の濃厚水溶液の形態であり、ほとんどの場合、不活性配合成分、主として界面活性剤が使用される。濃厚水溶液として工業的に処方されている他のグリホサート塩は、例えばZenecaのTouchdown(登録商標)除草剤に使用されている、TMS塩と略されることが多いモノ(トリメチルスルホニウム)を包含する。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0016】グリホサートの種々の塩、グリホサートの塩の製造法、グリホサートまたはその塩の配合、ならびに雑草および他の植物の除草および抑制におけるグリホサートまたはその塩の使用法が、Bakelの米国特許第4,507,250号、Prisbyllaの米国特許第4,481,026号、Franzの米国特許第4,405,531号、Largeの米国特許第4,315,765号、Prillの米国特許第4,140,513号、Franzの米国特許第3,977,860号、Franzの米国特許第3,853,530号、およびFranzの米国特許第3,799,758号に開示されている。
【0017】グリホサートIPA塩に関し、水溶液として有利に貯蔵され輸送される最も高い濃度は、約62重量%である。IPA塩の溶解度の限度は、これよりも少しだけ高い。除草剤として活性を示すものは、IPA成分ではなくむしろグリホサートであるため、濃度は、グリホサート酸当量(a.e.,acid equivalent)として表すのが最も有用である。62重量%のグリホサートIPA塩溶液は、約46重量%のグリホサートa.e.を含有する。この濃度においてさえ、低温で長時間貯蔵した際、グリホサート塩の結晶化の問題、並びに特に低温での高粘度溶液による流動化(注入/排出、pouring)および/またはポンプ輸送(pumping)が困難であることの問題を含め、種々の問題が生じる。
【0018】ほとんどのグリホサート塩は、62重量%よりもかなり高い濃度における貯蔵および輸送を可能にするのに充分に水溶性ではない。TMS塩は、高溶解性であり、ある場合においては有用であるが、全ての適用においてIPA塩に取って代わることはできない。
【0019】IPAよりもかなり低い分子量を有するアンモニウムイオンのようなグリホサートの対イオンを選択することによって、よりも高いグリホサートa.e.濃度が可能であると考えられる。例えば、36重量%の塩濃度において、グリホサートアンモニウム塩溶液は、約33a.e.重量%を含有し、一方、グリホサートIPA塩溶液は、約27a.e.重量%を含有するにすぎない。残念なことに、水におけるグリホサートアンモニウム塩の溶解性は、IPA塩の溶解性よりもかなり低く、従って、例えば40a.e.重量%またはそれ以上の高濃厚溶液において、この明白な利点を利用することができない。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0021】文献において既知であるが商業的に使用されないグリホサートの水溶性塩は、カリウム塩およびモノエタノールアンモニウム(MEA)塩を包含する。これらの塩は、例えば前記に引用したFranzの米国特許第4,405,531号において、除草剤として有効な極めて多くのグリホサートの塩に包含されるものとして開示されている。
【0022】ほとんどの除草剤は、それらのカリウムまたはMEA塩として市販されていない。Pesticide Manual、第11版、1997年は、カリウム塩として、オーキシン型除草剤2,4-DB((2,4-ジクロロフェノキシ)ブタン酸)、ジカンバ(3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸)、ジクロルプロプ(2-(2,4-ジクロロフェノキシ)プロパン酸)およびMCPA((4-クロロ-2-メチルフェノキシ)酢酸)、ならびにピクロラム(4-アミノ-3,5,6-トリクロロ-2-ピリジンカルボン酸)、DowElancoによって商品名Tordon(登録商標)として市販されているある種の除草剤の有効成分を記載している。クロピラリド(3,6-ジクロロ-2-ピリジンカルボン酸)は、DowElancoによって商品名Lontrel(登録商標)として市販されているある種の除草剤において、そのMEA塩として配合される。
【0023】グリホサートカリウム塩は、208の分子量を有する。グリホサートMEA塩は230の分子量を有し、グリホサートIPA塩(228)の分子量に極めて似ている。
【0024】グリホサートのカリウムおよびMEA塩の水への溶解性は、先行文献に記載されていないと考えられるが、当業者に既知の方法によって簡単に求めることができる。同様に、約40重量%よりも高い濃度のこれらの塩の水溶液は、特に報告されていないと考えられ、従って、そのような溶液の普通でないかまたは予期されない特性は、知られていない。本明細書において重量%で示される濃度は、溶液100重量部当たり、塩または酸当量(acid equivalent)の重量部である。」

b 段落【0032】?【0033】に、以下の記載がある。
「【0032】コンパクト貯蔵および輸送システムの一部を構成し、農業経済的に有効な量の界面活性剤を含有するグリホサート塩の濃厚水溶液を、360g a.e./Lよりも顕著に高い、例えば、約420g a.e./Lまたはそれ以上、または約480gb a.e./Lまたはそれ以上のグリホサート濃度で得られる場合に、コスト節減および使用者への利便性においてさらに利益が得られる。そのようなコンパクト貯蔵および輸送システムが、低温においてさえ、濃厚溶液の容易な流動化および/またはポンプ輸送を可能にする場合に、特に有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】本発明は、グリホサートのカリウム塩およびMEA塩の濃厚水溶液に関し、これまでに知られていない意外な特性、即ち、同じグリホサートa.e.濃度において、IPA塩を包含する他の大部分の農業経済的に有効なグリホサート塩の水溶液と比較して、そのような溶液が極めて高い比重を有するという特性を利用している。従って、所定の重量%濃度において、グリホサートカリウム塩またはMEA塩の水溶液が、グリホサートIPA塩の対応する組成物と比較して、組成物の単位容量に対してより多い重量の有効成分を含有する。これが、図1においてMEA塩に関して示されている。」

c 図1に、以下の記載がある。




イ グリホサートK塩水溶液及びグリホサートMEA塩水溶液の比重及びグリホサート酸濃度についての記載

a 段落【0025】に、以下の記載がある。
「【0025】本発明によれば、グリホサートカリウム塩は、20℃の純水において約54%の溶解度、即ち約44重量%のグリホサート酸当量(a.e.)を有することが分かった。さらに、グリホサートMEA塩は、20℃の純水において、溶液の約64重量%の溶解度、即ち、約47重量%のグリホサートa.e.(グリホサート約47a.e.重量%)を有することが分かった。MEA塩の溶解度は、IPA塩の溶解度に極めて似ている。従って、Monsanto Companyによって商品名MON 0139として市販されている水溶液濃縮物のように、グリホサートIPA塩を使用して市販されているものと比較して、グリホサートMEA塩単独の水溶液濃縮物は、例えば46a.e.重量%の濃度で簡単に得ることができる。」

b 段落【0034】に、以下の記載がある。
「【0034】従って、本発明の1つの実施態様において、主としてカリウム塩およびモノエタノールアンモニウム塩の1つまたは混合物の形態のグリホサートの水溶液であって、その水溶液が(約30重量%)?(存在するグリホサート塩または塩の混合物の溶解度によって決まる最大重量%)のグリホサート酸当量濃度を有する水溶液を、実質的に充填した約0.1リットル?約100,000リットルまたはそれ以上の容量を有するコンテナを含んでなるグリホサート除草剤の貯蔵および輸送システムを提供する。グリホサートが主としてモノエタノールアンモニウム塩の形態であり、その溶液が、約30?約48重量%、より好ましくは約40?約48重量%のグリホサート酸当量濃度を有するのが好ましい。」

c 段落【0046】?【0050】に、以下の記載がある。
「【0046】前記したように、驚くことに、グリホサートカリウム塩およびMEA塩の濃厚水溶液が、極めて大きい比重を有することが見い出された。表1は、例として、現在のまたは以前の商業的に関心のある有機アンモニウム塩および他の塩と比較して、グリホサートのカリウム塩およびMEA塩の30重量%グリホサートa.e.溶液について測定した比重を示す。比重は、Mettler DA-300 Density/Specific Gravity Meterを使用して測定される。
【0047】【表1】

【0048】従って、20℃の30a.e.重量%グリホサートカリウム塩溶液1リットルは、約376gのグリホサートa.e./Lを含有し、一方、20℃の30a.e.重量%グリホサートIPA塩溶液は、約347gグリホサートa.e./Lを含有する。言い換えれば、同じa.e.重量濃度において、カリウム塩溶液は、1リットルにつき約8%多いグリホサートa.e.を与える。
【0049】同様に、20℃の30a.e.重量%グリホサートMEA塩溶液は、約371gグリホサートa.e./Lを含有する。従って、同じa.e.重量濃度において、MEA塩溶液は、IPA塩溶液よりも約7%多いグリホサートa.e./Lを与える。
【0050】カリウムまたはMEA塩が使用される場合に、水溶液における最少有効濃度は、約30a.e.重量%、好ましくは約40a.e.重量%である。20℃における溶解度の限界によって決まる最大濃度は、カリウム塩の場合は約44a.e.重量%であり、MEA塩の場合は約47a.e.重量%である。」

ウ 界面活性剤を併用することについてのグリホサートK塩とグリホサートMEA塩を区別しない記載

a 段落【0026】に、以下の記載がある。
「【0026】前記したように、グリホサート塩のコンパクト貯蔵および輸送システムが好ましいが、農業経済学的に有効な量の1種類またはそれ以上の界面活性剤を含有するグリホサート塩のコンパクト貯蔵および輸送システムも好ましい。」

b 段落【0053】?【0054】に、以下の記載がある。
「【0053】本発明の貯蔵および輸送システムの利点は、水溶液におけるグリホサート濃度が減少するにつれて小さくなって、約360g a.e./Lよりも低いグリホサート濃度、即ちRoundup(登録商標)除草剤として市販されているグリホサートIPA塩組成物に見られる濃度よりも低いグリホサート濃度において、限界であるにすぎない。本発明の好ましいシステムにおいては、水溶液におけるグリホサート濃度は、420g a.e./L以上または約420g a.e./Lであり、特に好ましいシステムにおいては、約480g a.e./L以上、例えば、約480?約540g a.e./Lである。グリホサートカリウム塩またはMEA塩の貯蔵安定性界面活性剤含有水性組成物におけるグリホサート濃度の事実上の上限は約570g a.e./Lであると考えられ、この上限は、水におけるグリホサート塩の溶解度の限界の結果であり、ある場合には、界面活性剤の存在によってさらに制限される。当然であるが、より高いグリホサート濃度が可能であり、界面活性剤が極めて少量しか存在しない本発明によって使用される。しかし、界面活性剤のそのような低濃度は、農業経済的には有効でないと考えられる。
【0054】グリホサート濃度のこの上限に近い場合に、適合しうる界面活性剤の量は、より低いグリホサート濃度におけるよりもより少ない。大部分の目的について、この少量の界面活性剤は、グリホサートの除草剤有効性の信頼できる強化を、許容される程度に与えるのに不充分であると考えられる。しかし、組成物が比較的少量の水で稀釈されるある特別な目的の適用において、例えば約10?約50L/haの容量での植物処理については、本発明の濃厚組成物における界面活性剤濃度は、約20g/Lの低さで有効であることができる。そのような特別な目的の適用には、ロープ芯適用(rope-wick application)および超低容量空気吹付(ultra-low-volume aerial spraying)が包含される。一般に、約50?約1,000L/ha、最も一般的には約100?約400L/haの水で稀釈した後に吹き付けする一般的な目的の適用については、本発明の濃厚組成物における界面活性剤濃度は、約60?約200g/Lであるのが好ましい。」

エ 界面活性剤を併用することについてグリホサートK塩に特定して言及した記載
段落【0051】に、以下の記載がある。
「【0051】グリホサートカリウム塩溶液を使用する貯蔵および輸送システムは、溶液が界面活性剤をさらに含有しないか、および/または、溶液が濃厚界面活性剤含有配合物の製造に使用することを予定しない場合に特に有効である。数種の界面活性剤だけが、農業経済的に有効な量において、高濃度のグリホサートカリウム塩に相溶性であることが見い出された。」

オ 界面活性剤を併用することについてグリホサートMEA塩に特定して言及した記載

a 段落【0040】?【0041】に、以下の記載がある。
「【0040】本発明の他の実施態様において、農業経済的に有効な量の界面活性剤の存在下に、濃厚水溶液中にグリホサートMEA塩の極めて高い重量/容量濃度が得られることを見い出した。界面活性剤の選択が、このような結果を得るのに重要であることが分かった。
【0041】従って、そのような実施態様において、本発明は、コンテナを含んでなる、グリホサート除草剤用の貯蔵および輸送システムであって、
当該コンテナは、容量約0.1?約100,000Lまたはそれ以上を有し、かつ、組成物によって部分的または完全に満たされており、
上記組成物は、
(1)水、
(2)主としてモノエタノールアンモニウム塩形態のN-ホスホノメチルグリシン(水溶液中、上記組成物1L当たり、酸当量約360g?約570gの量)、および
(3)1またはそれ以上の界面活性剤を含んでなる、水溶液または安定な水分散形態の界面活性剤成分(全量で、上記組成物1L当たり、約20?約200gの量)
を含んでなり、
上記界面活性剤成分は、得られる組成物が約50℃またはそれ以下の温度で、何ら相分離を示さない(好適には、当該組成物を約0℃以上の温度で約7日間貯蔵しても、当該組成物においてグリホサートまたはその塩の結晶化が実質的に起こらない)ように、選択される
ことを特徴とするシステムを提供する。」

b 段落【0052】に、以下の記載がある。
「【0052】しかし、MEA塩を使用するグリホサート除草剤の貯蔵および輸送システムは、界面活性剤不含溶液および界面活性剤含有溶液の両方に高い有効性を有する。界面活性剤含有溶液において、グリホサートの最大濃度は、水におけるMEAの溶解度の限界だけでなく、界面活性剤の相溶性の限界によっても抑制される。そのような溶液におけるMEA塩の利点は、(a)同じ界面活性剤濃度において、同じ相溶性界面活性剤の存在下に、IPA塩よりも高い最大グリホサートa.e.重量/容量濃度が得られ、(b)同じグリホサートa.e.重量/容量濃度において、IPA塩よりも高い相溶性界面活性剤濃度が得られ、(c)グリホサートa.e.および界面活性剤の所定の重量/容量濃度において、IPA塩を使用して製造される対応する組成物よりも向上した貯蔵安定性が得られ、および/または(d)グリホサートa.e.および界面活性剤の所定の重量/容量濃度において、より低い粘度の結果として、IPA塩を使用して製造した対応する組成物よりも向上した流動性(注入/排出特性)およびポンプ輸送性能を有することである。」

c 段落【0059】?【0073】には、段落【0059】の冒頭に「本発明の他の要旨において、前記の濃度におけるグリホサートMEA塩への相溶性が予想外に高い特定種類の界面活性剤を確認した」と記載され、続けて、段落【0073】にかけて、上記の「特定種類の界面活性剤」である、界面活性剤の親水性部分が、オキシエチレン単位を含んでなるアミノ基又はグリコシド単位を含む界面活性剤について、複数の商品名及び文献(米国特許5,750,468号及び米国特許第5,652,197号)を引用して、詳細に説明されている。

カ グリホサートMEA塩特有の利点及び実施態様の記載

a 段落【0074】?【0078】には、MEA塩の濃厚水溶液が、IPA塩で「約50℃またはそれ以下の温度において相分離を示さず、約0℃以上の温度に、最大7日間にわたって暴露した際に、グリホサートまたはその塩の結晶の形成を実質的に示さないこと」で定義される許容される貯蔵安定性を与える最大濃度よりも高い濃度で使用できること、IPA塩よりも「低温、例えば約-10℃?約10℃における向上した流動性および/またはポンプ輸送性能」として現れるようなより低い粘度を有すること、「少量の水の添加が一般にかなりの程度に粘度を減少させる」こと、「眼への刺激(眼の炎症)が少ない」ことが記載されている。

b 段落【0078】?【0083】には、MEA塩の濃厚水溶液に併用できる追加の除草剤有効成分について、多数の物質名を挙げて、記載されている。

キ 他の配合成分についての記載
段落【0083】?【0084】に、以下の記載がある。
「【0083】本発明のシステムに有効な組成物において、組成物が本明細書に規定されるような貯蔵安定性である限り、前記に定義した界面活性剤成分の他に賦形剤成分が所望により存在することができる。そのような追加の賦形剤成分は、染料、増粘剤、結晶化防止剤、グリコールを包含する凍結防止剤、制泡剤、ドリフト防止剤、相溶化剤などのような従来の配合添加剤を包含する。
【0084】グリホサート配合物に使用されることが多い賦形剤成分の種類は、グリホサートの除草剤活性または除草剤活性の安定性を向上させるために含有される硫酸アンモニウムのような無機塩である。そのような向上を与えるのに必要な、配合物における無機塩の含有量は一般に比較的多く、存在するグリホサートの量よりも多い場合が多いので、本発明のシステムに使用される組成物にそのような塩を添加するのはあまり有効でない。例えば少なくとも360g a.e./Lの濃度でグリホサートMEA塩を含有する貯蔵安定性水性組成物に使用しうる硫酸アンモニウムの量は、非常に少ないので実質的な利益を与えることができないと考えられる。従って、代替法は、国際特許出願公開第WO98/33384号および第WO98/33385号にそれぞれ開示されているアントラキノン化合物またはフェニル置換オレフィン化合物のような相乗剤を少量で含有することである。」

ク グリホサート塩水溶液の貯蔵又は搬送に関する記載

a 段落【0055】?【0058】には、図2?図4を引用して、ジャグやドラムのようなコンテナについての記載がある。

b 段落【0085】?【0087】には、コンテナの材質、容量、構造についての記載がある。

c 段落【0088】?【0101】には、「グリホサート除草剤の貯蔵または輸送法」であるとして、以下の記載がある。
「【0088】本発明は、グリホサート除草剤の貯蔵または輸送法にも関する。
【0089】従って、1つの実施態様において、4つの段階を含んでなるグリホサート除草剤の貯蔵法を提供する。
【0090】第一段階において、グリホサート酸を、水性媒体中で、カリウムまたはモノエタノールアンモニウムカチオンを与える塩基と反応させて、グリホサートの一塩基性カリウムまたはモノエタノールアンモニウム塩の水溶液を製造する。塩基が、水酸化カリウムまたはモノエタノールアミンであるのが好ましく、モノエタノールアミンであるのが最も好ましい。ほぼ等モル量のグリホサートおよび塩基が使用される。
【0091】第二段階において、必要であれば水および/または他の成分を使用して、水溶液を調節して、約30重量%から塩の溶解度によって決まる最大重量%のグリホサート酸当量濃度を有する調節溶液を製造する。一般に水だけを使用して調節されるが、必要であれば界面活性剤を包含する他の成分をこの段階で添加することができる。塩がグリホサートのモノエタノールアンモニウム塩である場合に、約30?約46重量%、より好ましくは約40?約46重量%のグリホサート酸当量濃度に溶液を調節するのが好ましい。
【0092】第三段階において、約0.1?約100,000リットルまたはそれ以上の容量を有するコンテナに、調節溶液を実質的に充填する。
【0093】第四段階において、充填されたコンテナを好適な貯蔵場所に配置する。これは、倉庫または相当する貯蔵設備であることができる。
【0094】他の実施態様においては、5つの段階を含んでなるグリホサート除草剤の輸送法を提供する。第一および第二段階は、前記と全く同じである。
【0095】第三段階において、約0.1?約2000リットルの容量をそれぞれ有する多数の各コンテナに、調節溶液を実質的に充填する。コンテナは、例えば、ジャグ、フラスコ、またはドラムのような使い捨てのコンテナであるかまたはシャトルのような再充填可能なコンテナである。
【0096】第四段階において、充填されたコンテナを、荷積み場所で、道路または鉄道車両または水上輸送船の閉鎖容量に入れる。閉鎖容量は、例えば、道路、鉄道、および水上輸送用に適合されたモジュールボックスコンテナ、トラック、または鉄道有蓋者の容量である。
【0097】第五段階において、閉鎖容量に入れた後に、車両または船を、荷積み場所から荷下し場所に輸送する。
【0098】他の実施態様においては、5つの段階を含んでなるグリホサート除草剤の輸送法を提供する。
【0099】第三段階において、約15,000?約100,000リットルまたはそれ以上の容量を有するバルクコンテナに、調節溶液を実質的に充填する。バルクコンテナは、例えば、モジュールバルク輸送タンク、またはタンクローリーまたは貨車のタンクである。
【0100】先の3つの段階の前にまたは後にきてもよい第四段階において、荷積み場所で、鉄道車両または水上輸送船にバルクコンテナーを固定する。タンクローリーまたは貨車の場合は、バルクコンテナーを車両に一体化することができ、車両の組立の際に車両に固定される。
【0101】第五段階において、バルクコンテナの充填および固定後に、車両または船を荷積み場所から荷下し区域に輸送する。」

ケ 実施例の記載
段落【0103】?【0138】に、以下の実施例1、2、4?8の記載がある。
「【0103】実施例1
1L容ガラス容器(電磁撹拌機付き)において、479.2gのグリホサート酸、工業グレイド(分析値96%)、166.0gのモノエタノールアミンおよび水100gを混合した。グリホサート酸とモノエタノールアミンとを反応させて、MEA塩を形成する反応は、発熱反応である。反応混合物を室温に冷却した。得られた62.6重量%グリホサートMEA塩水溶液(46.0重量%グリホサートa.e.を含有)の比重(20/15.6℃)を測定すると、1.32であることがわかった。得られた溶液の密度(25℃)は、1.31g/Lであるから、この溶液1,000gの25℃での容量は、763mlであって、グリホサートの重量/容量濃度は、602g a.e./lである。
【0104】比較のため、62.1重量%グリホサートIPA塩水溶液(同様に46.0重量%グリホサートa.e.含有)の比重は、1.24であることがわかった。溶液の密度(25℃)は、1.23g/Lであるから、この比較溶液1,000gの25℃での容量は、813mlであって、グリホサートの重量/容量濃度は、565g a.e./lである。
【0105】第1の100ml容フラスコに、25℃で、この実施例のグリホサートMEA塩溶液を満たし、第2の100ml容フラスコに、前記したグリホサートIPA塩溶液比較例を満たした。第1フラスコは、60.2gのグリホサートa.e.を含む一方、第2フラスコは、グリホサートa.e.を56.5gしか含まないことがわかった。すなわち、本発明の代表例である第1フラスコは、グリホサートa.e.を、第2フラスコよりも約6.5%多量に含む。
【0106】実施例2
所定の範囲のグリホサートa.e.濃度を有する、一連のグリホサートMEA塩水溶液を、実施例1の方法で製造した。各溶液について、比重を測定した。
【0107】グリホサートIPA塩溶液と比較した結果を図1に示す。全ての濃度において、MEA塩水溶液の比重は、対応するIPA塩水溶液の比重よりも、著しく高いことが判明した。
【0108】この実施例のグリホサートMEA塩水溶液(グリホサート濃度29.9a.e.重量%)を、充分な容量で、10L容のジャグ(これは、グリホサートIPA塩水溶液(30.2%)の貯蔵および輸送用に工業的に常用されている)に、添加して、コンテナを実質的に満たした。得られた充填コンテナは、本発明の貯蔵および輸送システムである。29.9a.e.重量%MEA塩水溶液の比重は、1.1991であって、この比重は、30.2重量%IPA塩水溶液の比重1.1566よりも、3.7%高いという、事実のため、本発明の充填コンテナは、3,585gのグリホサートa.e.を保持でき、これに対し、従来技術の貯蔵および輸送システム(これは、本発明のMEA塩水溶液に代えて、IPA塩水溶液を充填した同じコンテナからなる)は、グリホサート3,493gを含む。
【0109】実施例1の46a.e.重量%グリホサート塩水溶液を、より多量に用いて、繰り返した。
【0110】円筒形HDPEドラムは、従来品の100L容ドラム(これは、46a.e.重量%グリホサートIPA水溶液の貯蔵および輸送用に使用されている)と、同じになるように製造した。ただし、HDPEドラムの直径は、従来品のドラムの直径よりも、2.55%小さく、このため、断面積も、6.5%小さい。より小さいドラムの容量は、93.5Lである。この93.5Lドラムに、グリホサートMEA塩水溶液を実質的に充填して、本発明の貯蔵および輸送システムを形成した。本発明の充填93.5Lドラムの総重量は、46a.e.重量%グリホサートIPA塩水溶液を充填した100Lドラムの総重量と等しい。しかしながら、本発明の93.5Lドラムは、より小さい直径を有するため、多数のかかるドラム、所定寸法の貯蔵庫に貯蔵でき、また、例えば、船舶または航空機において、所定寸法の貨物用コンパートメントによって輸送することができる。
【0111】ドラムの充填により本発明の貯蔵および輸送システムを形成することは、以下の2つの理由によって、46a.e.重量%IPA塩水溶液を従来品の100Lドラムに充填することに比し、時間を節約することができ、これにより、コストをより低下させることができる。(1)充填時間は、容量に比例するため、本発明の93.5Lドラムの場合には、6.5%も、より小さいからである。(2)MEA塩水溶液の粘度88cP(25℃)は、IPA塩水溶液の粘度165cP(25℃)よりも著しく小さいため、より大きな流速が可能となるからである。
【0112】加えて、本発明の充填ドラムは、最終使用者にとって、IPA塩水溶液の100Lドラムよりも、人間工学的により効率的である。第1に、重量の損失なく、本発明の充填ドラムは、直径がよりも小さいため、その取り扱いおよび持ち上げがより容易である。第2に、本発明のMEA塩水溶液は、粘度が低いため、ドラムから、水溶液を、例えば噴霧器のタンクへ流動化させたり、ポンプ輸送することが、より迅速であって、より容易である。第3に、MEA塩水溶液は、粘度が低いため、空のドラムの洗浄がより容易で、より迅速に実施することができる。これは、また材料の無駄を防止し、かつ、空のドラムに関し、化学物質を含んでない状態での廃棄、戻しまたはリサイクルが保証される。IPA塩水溶液に対する、MEA塩水溶液の利点は、低温で拡大される。
【0113】実施例4
界面活性剤含有組成物4-01?4-11を、下記のように調製した。それぞれの組成物は、グリホサートMEA塩を含有し、46a.e.重量%、602g a.e./lの実施例1で製造した水溶液を使用して調製した。各々の場合の界面活性剤を、表2で示されるリストから選択した。比較組成物を、グリホサートIPA塩によって調製し、グリホサートIPA塩を、46a.e.重量%、565g a.e./lの実施例1で製造した水溶液として添加した。
【0114】【表2】

^(*) この界面活性剤の製造方法は、イギリス特許第1,588,079号に開示。
【0115】式:[グリホサートa.e.]/[界面活性剤]で示され、単位g/Lであるターゲット重量/容量濃度を設定した。実際の重量/容量濃度は、ターゲット濃度とわずかに異なることがある。なぜなら、成分が便宜上、重量で測定されるからである。種々のターゲット濃度が得られるように混合される成分の量を、表3(本発明のグリホサートMEA塩組成物)および表4(グリホサートIPA塩比較組成物)に示す。
【0116】【表3】

【0117】【表4】

【0118】比重(20/15.6℃)、25℃での粘度および曇り点を、表5に示すように、調製した組成物について記録した。曇り点は、所定の濃度で界面活性剤および塩を含有する所定の水性組成物が単一相溶液を形成する最高温度についての測定尺度である。曇り点を超える温度で、界面活性剤は、溶液から分離し、始めは、曇った分散体または濁った分散体として分離し、放置すると、一般に溶液表面に生じる明らかな相として分離する。曇り点を、溶液が曇るまで組成物を加熱することによって決定し、次いで、組成物を攪拌しながら、冷却させて、温度を連続的にモニターする。溶液が透明になったときに読み取られる温度が、曇り点の測定尺度である。
【0119】【表5】

【0120】表5において注目すべきは、グリホサートMEA塩を含有する本発明の組成物すべてが、対応するIPA塩組成物に比し、かなり低い粘度を有する点である。MEA塩組成物とって都合のよい粘度利点の大きさは、幾分、界面活性剤の選択および濃度に依存する。例えば、MEA塩形態の480g/Lのグリホサートa.e.および120g/Lのポリオキシエチレン(5)ココアミン界面活性剤のターゲット濃度を有する本発明の組成物4-01は、IPA塩比較組成物よりもかなり有利であることを示す。
【0121】表5に示されるすべてではないが、いくつかの場合、グリホサートMEA塩組成物は、対応するIPA塩組成物よりも低い曇り点を示す。しかしながら、曇り点が50℃よりも低い場合は1つもなく、商業的に許容できる下限にほぼ等しい場合(組成物4-03)が1つだけ存在する。したがって、一般に、曇り点の低下が、MEA塩に代えて、IPA塩を用いることによって生じる場合、この低下は、粘度の重要な利点によって許容できる見かえりである。すなわち、粘度の利点は、流動化およびポンプ輸送挙動の際に、そのような置き換えによって可能になる。
【0122】グリホサートMEA塩組成物4-01?4-11を、より大きな容量で再び調製し、10L容のジャグをこれらの組成物で実質的に満たし、各場合に、本発明の貯蔵および輸送システムを形成した。
【0123】実施例5
540g a.e./lのグリホサートを含む水性濃縮組成物において、実際に達成可能な最大界面活性剤濃度について、MEA塩とIPA塩とを比較した。これは、選択した界面活性剤を、46a.e.重量%まで増量させながら、グリホサート塩水溶液に対し、グリホサート重量/容量濃度がその初期レベル(565g a.e./l(IPA塩)、602g a.e./l(MEA塩))から540g a.e./lに、落下するまで、添加することによって測定した。実験は、前記表3の界面活性剤Aまたは界面活性剤Fのいずれかを用いて行った。達成可能な最大界面活性剤濃度に達した際に、粘度を25℃で測定した。結果を表6に示す。この方法で測定した達成可能な最大界面活性剤濃度を有する組成物は、曇り点および/または結晶形成によって測定したような許容可能な安定性を、必然的に示さないことに、注目すべきである。
【0124】【表6】

【0125】表6のデータは、グリホサートMEA塩組成物の最も有益な利点の1つを示し、最も驚くべきことの1つである。MEA塩を用いれば、540g a.e./lの著しく高いグリホサートa.e.濃度で、IPA塩を用いて達成可能な最大濃度の2.5倍を超える選択界面活性剤濃度を達成することができる。これは、特に意外なことである。なぜなら、MEA塩は、ポリオキシエチレン(15)獣脂アミンとのIPA塩よりも相溶性が非常に小さいことが測定されているからであり、これは、グリホサートIPA塩組成物においてこれまで最も広く使用されてきた界面活性剤である。
【0126】表6から明らかなように、ここで選択したタイプの界面活性剤を用いれば、MEA塩の場合の界面活性剤/グリホサートa.e.の重量比は、1:5(市販の除草剤有効性に匹敵するレベル)よりも、より大きい一方、IPA塩の場合の上記比率は、1:10よりも、低い。同様に重要なこととして、表6に示した界面活性剤は、当該分野において、グリホサート除草剤の有効性を向上させる点で、非常に有効であることが知られている(界面活性剤/グリホサートa.e.の比率=1.5またはそれ以上、例えば、US5,668,085(界面活性剤A)、US5,750,468(界面活性剤F)、参照)。したがって、かかる界面活性剤の利点を示すことができる一方、540g a.e./lほどの高いグリホサートa.e.充填量が得られるような組成物は、これら界面活性剤またはグリホサートMEA塩に関する従来技術での知識から当該分野では予測できないような、著しい技術的進歩を達成することができる。
【0127】表6から明らかなように、驚くべきことに、MEA塩によって、より高い界面活性剤濃度を達成できた場合でも、MEA塩組成物の濃度は、IPA塩組成物の濃度よりもより低い。IPA塩組成物は、界面活性剤濃度が、市販の除草剤の有効性(特に、高いスプレイ容量)を示す見込みがないほどに低いだけでなく、粘度が、市販の除草剤の流動化またはポンプ輸送挙動(特に、表6に例示の温度よりも低い温度での挙動)を示す見込みがないほどに高い。これとは対照的に、MEA塩組成物は、良好な除草剤有効性を提供するだけでなく、流動化またはポンプ輸送に関し、問題が起こることがない。
【0128】理論的には、46a.e.重量%よりもやや高い濃度のグリホサートMEAまたはIPA塩水溶液を用いて出発したこの実施例では、当該実施例に示した濃度よりも僅に高い界面活性剤濃度を達成することができる。しかしながら、得られた組成物のグリホサート塩濃度は、溶解度の限界に近接しているため、実際には、当該組成物は、許容可能な貯蔵安定性を示さないようであって、特に、グリホサートまたはその塩の結晶の沈殿を、特に低温で示すようである。
【0129】10L容のジャグに、実質的に、この実施例の540g a.e./lグリホサートMEA塩組成物の各々を充填して、本発明の貯蔵および輸送システムを形成した。前記した他の利点に加え、この実施例の貯蔵および輸送システムは、540g a.e./lのグリホサートIPA塩を含む対応するシステムよりも、次のような利点を有する:この実施例のシステムは、完全充填である利点、すなわち使用者が許容可能で信頼性のある除草剤有効性を得るために付加的な界面活性剤の添加が不要となるような利点を有する。これにより、付加的な環境的利点並びに使用者の経済的利点が得られ、使用者は、本発明の貯蔵および輸送システムを用いれば、洗浄および廃棄が必要な付加的な界面活性剤容器が不要である。
【0130】実施例6
低温での貯蔵安定性を、4つの比較例と比較した。組成物6-01は、グリホサートMEA塩を、540g a.e./lの濃度で含み、界面活性剤Aを46g/Lで含む。組成物6-02は、同様であるが、界面活性剤Fを濃度46g/Lで含む。比較組成物は、各々の場合、グリホサートMEA塩に代えて、グリホサートIPA塩を用いる一方、同じ界面活性剤を、同じ濃度46g/Lで含み、IPA塩で達成可能な最大濃度は、実施例5に示した。
【0131】組成物は、キャップ付ガラスジャグ中に入れ、冷凍貯蔵域において、温度0℃で3日間貯蔵した。組成物製造に用いたのと同じグリホサート塩を、種結晶として添加し、組成物をさらに7日間、貯蔵した。この期間の終了時点で、組成物を、結晶成長について調べた。
【0132】結晶成長に関し、MEA組成物6-01および6-02は、何ら痕跡が見られなかったが、IPA塩比較組成物は、共に著しい痕跡が見られた。コンテナへの充填によって、本発明の貯蔵および輸送システムを形成すると、グリホサートMEA塩組成物6-01および02は、低温貯蔵安定性に関し、著しい利点が得られた。
【0133】実施例7
グリホサートMEA塩組成物7-01および7-02を、各々、組成物4-08および4-11と、実質的に同様に製造した。IPA塩比較組成物も、同様に製造した。粘度を、25℃および一連の低温で測定し、これにより、MEA塩組成物についての25℃で見られる低粘度の利点が、事実低温度でも保持され、低温度でも、流動化およびポンプ輸送上の問題は、殆ど見られなかった。結果を表7に示す。
【0134】【表7】

【0135】表7に示すように、本発明のグリホサートMEA塩組成物は、対応するIPA塩組成物に比し、低粘度の利点を有している。コンテナへの充填によって、本発明の貯蔵および輸送システムを形成すると、グリホサート塩組成物7-01および02は、低粘度に関する本明細書に開示の利点の全て、特に、低温での特性を示している。
【0136】実施例8
グリホサート濃度480g a.e./lの組成物4-08および7-01と実質的に同じグリホサートMEA塩組成物8-01を製造した。また、同じグリホサート濃度および同じ界面活性剤Fを有するグリホサートIPA塩組成物を、同じ濃度120g/Lで、比較組成物として形成した。
【0137】標準眼炎症試験は、これらの組成物につき、以下の文献記載の方法に従い、行った:U.S.Enviommental Protection Agency(EPA)assesment guidelines,section F,Hazard Evaluation:Human and Domestic Animals(Revised eddition,1984),Section 81-4,Primary Eye Irritation。IPA塩比較組成物は除草剤組成物の分類に関しEPAで採用されている、最も激しい炎症クラス(カテゴリーI)に属するのに充分な眼の炎症を引き起こすことが判明した。これとは対照的に、本発明の組成物8-01は、カテゴリーIIに属し、眼の炎症の程度は、より小さいことが判明した。
【0138】コンテナへの充填によって、本発明の貯蔵および輸送システムを形成すると、グリホサートMEA塩組成物8-01は、本発明の別の利点を奏し、すなわち、ヒトがかかるコンテナを取り扱う際の危険が減少し、特に、コンテナの偶発的な破壊または漏れによる刺激が減少した。」

コ 図面の記載
上記アcにも示した図1に、グリホサートMEA塩及びグリホサートIPA塩の水溶液の、酸当量濃度と比重の関係を示すグラフが記載されている。そのグラフの横軸は「グリホサートa.e.重量%」であり0?50の範囲であり、縦軸は「比重」で1.00?1.32の範囲である。
図2?図4には、グリホサート塩を容器に入れた状態を示す模式図が、示されている。

(3)本願発明1の課題について
上記(2)アによれば、本願発明1の課題は、グリホサートK塩の濃厚水溶液が極めて高い比重を有するという特性を利用して、請求項1に記載された「同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも低い粘度を有し、かつ同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも大きい比重を有するグリホサートの一塩基性カリウム塩の水溶液を選択し、ここに、前記水溶液のグリホサート酸当量濃度が40重量%と上記一塩基性カリウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であって、ここに、該選択された溶液は、該組成物1リットルあたり合計20ないし200グラムの1またはそれ以上の界面活性剤を含む界面活性剤成分をさらに含むものであり、該界面活性剤成分は50℃またはそれ未満の温度において組成物が相分離を示さないように選択されるものであり」という組成物を用意して用いることにより、グリホサート除草剤の貯蔵効率を増大させる方法を提供することであると認められる。

(4)発明の詳細な説明に記載された発明と特許請求の範囲の請求項1に記載された発明との対比・判断

ア 本願発明1が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本願発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討する。

(ア)本願明細書には、流通しているグリホサート除草剤の形態がグリホサートIPA塩の濃厚水溶液に基づく組成物であることを前提技術とし、グリホサート除草剤の貯蔵及び輸送の効率を高めるために、組成物の単位体積当たりグリホサートIPA塩よりも多量のグリホサート(グリホサート塩の酸当量としての量)を含むことができるグリホサート塩として、グリホサートK塩及びグリホサートMEA塩に着目し、これらのグリホサート塩の濃厚水溶液に基づく組成物を用いて、グリホサート除草剤の貯蔵及び輸送効率を高めることについて、記載されている(上記(2))。

(イ)そして、グリホサート塩がグリホサートMEA塩である場合については、その酸当量濃度が40重量%以上の濃厚水溶液がグリホサートIPA塩よりも大きい比重を有することが記載され(上記(2)アc及びコの図1)、相溶性が高い一群の界面活性剤が存在し、グリホサートMEA濃厚水溶液(酸当量で360?570又は600g/L)に20?200g/Lの量で配合できることが記載され(同オ、カ)、低い粘度についても言及されている(同カ)。特に、全ての実施例はグリホサートMEA塩を用いるものであって(同ケ)、グリホサートMEA塩62.6重量%(酸当量濃度46.0重量%)の水溶液の比重が1.32であり(したがって酸当量で602g/L)、同じ酸当量濃度のグリホサートIPA塩水溶液の比重が1.24であること(実施例1)、図1による各濃度での比重の説明(実施例2)、グリホサートMEA塩の酸当量濃度46重量%の水溶液に6種の界面活性剤A?F(表2)を120、110、100、80又は60g/Lの何れかの量で配合して曇り点を測定して相溶性を調べたこと(実施例4、表5)、適合し得る界面活性剤の量はグリホサート濃度が高まると低くなるところ(同ウb)、グリホサートIPA塩の酸当量濃度が540g/Lのときに配合し得る上記の界面活性剤A及びFの最大量がそれぞれ116及び119g/Lであること(実施例5、表6)、低温貯蔵安定性を調べたこと(実施例6)、低温での粘度を調べたこと(実施例7、表7)、眼の炎症の程度を調べたこと(実施例8)が、それぞれ記載されている。

(ウ)しかし、グリホサートK塩については、溶解度の限界が酸当量濃度で44重量%であること及び酸当量濃度30重量%のときの比重が1.2539であり同じ酸当量濃度のグリホサートIPA塩の1.1554と比べて比重が大きいことは記載されているものの(上記(2)イc)、酸当量濃度40重量%以上の濃厚水溶液に、50℃以下の温度で相分離を起こさない界面活性剤を20?200g/Lの量で配合できることは、何ら具体的に記載されていない。
本願明細書には、界面活性剤を併用することについてのグリホサートK塩とグリホサートMEA塩を区別しない記載においては、上記(2)ウbに示したとおり、
「本発明の好ましいシステムにおいては、水溶液におけるグリホサート濃度は、420g a.e./L以上・・・であり、特に好ましいシステムにおいては・・・例えば、約480?約540g a.e./Lである。グリホサートカリウム塩またはMEA塩の貯蔵安定性界面活性剤含有水性組成物におけるグリホサート濃度の事実上の上限は約570g a.e./Lであると考えられ、この上限は、水におけるグリホサート塩の溶解度の限界の結果であり、ある場合には、界面活性剤の存在によってさらに制限される。・・・より高いグリホサート濃度が・・・界面活性剤が極めて少量しか存在しない本発明によって使用される。しかし、界面活性剤のそのような低濃度は、農業経済的には有効でないと考えられる。
グリホサート濃度のこの上限に近い場合に、適合しうる界面活性剤の量は、より低いグリホサート濃度におけるよりもより少ない。大部分の目的について、この少量の界面活性剤は、グリホサートの除草剤有効性の信頼できる強化を、許容される程度に与えるのに不充分であると考えられる。しかし、組成物が比較的少量の水で稀釈されるある特別な目的の適用において、例えば約10?約50L/haの容量での植物処理については、本発明の濃厚組成物における界面活性剤濃度は、約20g/Lの低さで有効であることができる。そのような特別な目的の適用には、ロープ芯適用(rope-wick application)および超低容量空気吹付(ultra-low-volume aerial spraying)が包含される。一般に、約50?約1,000L/ha、最も一般的には約100?約400L/haの水で稀釈した後に吹き付けする一般的な目的の適用については、本発明の濃厚組成物における界面活性剤濃度は、約60?約200g/Lであるのが好ましい」
と記載されており、この記載は、グリホサートMEA塩に関しては、上記(イ)でみたとおり該当するものであるということができる。しかし、その一方で、本願明細書には、界面活性剤を併用することについてグリホサートK塩に特定して言及した記載においては、
「グリホサートカリウム塩溶液を使用する貯蔵および輸送システムは、溶液が界面活性剤をさらに含有しないか、および/または、溶液が濃厚界面活性剤含有配合物の製造に使用することを予定しない場合に特に有効である。数種の界面活性剤だけが、農業経済的に有効な量において、高濃度のグリホサートカリウム塩に相溶性であることが見い出された」
と記載されており(上記(2)エ)、グリホサートK塩の濃厚水溶液に基づく組成物については、界面活性剤を併用することは、全く推奨されていないし、「数種の界面活性剤だけが・・・相溶性である」と記載されていても、どの界面活性剤が相溶性なのかは、全く開示されていない。
このように、グリホサートK塩の酸当量濃度40重量%以上の濃厚水溶液に、50℃以下の温度で相分離を起こさない界面活性剤を20?200g/Lの量で配合できることは、何ら具体的に記載されていないのであるから、本願発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。

イ 発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本願発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討する。
この出願の出願日において、グリホサート除草として用いる、グリホサートK塩の酸当量濃度40重量%以上の濃厚水溶液に、50℃以下の温度で相分離を起こさない界面活性剤を20?200g/Lの量で配合できる、という技術常識は、存在しない。
なお、仮に、グリホサートIPA塩などのグリホサート塩の濃厚水溶液に基づくグリホサート除草剤について界面活性剤を併用することが知られていて、グリホサートK塩の濃厚水溶液についても、少量であれば何れかの種類の界面活性剤が相分離なしに併用し得ると考える余地があるとした場合でも、本願発明1で用いるグリホサートK塩の濃厚水溶液に基づく組成物は、界面活性剤を「1リットルあたり合計20ないし200グラム」含むものであり、上記アで検討した本願明細書の(2)エの記載も併せ考慮すれば、グリホサートK塩の濃厚水溶液と200g/Lのような多量で併用できる界面活性剤が存在することを当業者が技術常識に基づき認識できるともいえない。
そうすると、本願発明1は、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。

ウ したがって、請求項1の特許を受けようとする発明(本願発明1)は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本願発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本願発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。

(5)本願発明3、5、10及び11について
本願発明3、5、10及び11は、何れも、本願発明1と同じく「同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも低い粘度を有し、かつ同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも大きい比重を有するグリホサートの一塩基性カリウム塩の水溶液を選択し、ここに、前記水溶液のグリホサート酸当量濃度が40重量%と上記一塩基性カリウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であって、ここに、該選択された溶液は、該組成物1リットルあたり合計20ないし200グラムの1またはそれ以上の界面活性剤を含む界面活性剤成分をさらに含むものであり、該界面活性剤成分は50℃またはそれ未満の温度において組成物が相分離を示さないように選択されるものであり」という組成物を用意して用いることを、発明を特定するための事項とするものであるので、上記(4)に示したのど同様の理由で、、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本願発明3、5、10及び11の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本願発明3、5、10及び11の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。

(6)まとめ
以上のとおり、本願発明1、3、5、10及び11は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、この出願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

2 理由1(特許法第29条の2)について
前述のとおり、仮に、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するとした場合について検討する。

(1)先願
先願:PCT/GB99/02726(特願2000-569638号)(国際公開第00/15037、特表2002-524476号公報参照)

(2)先願明細書の記載事項
上記先願の、国際出願日における国際出願の明細書及び請求の範囲(以下「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。翻訳文が提出され公表特許公報が発行されているので、翻訳文により示し(一部表記を修正している。)、引用箇所は国際公開の頁及び行に、公表特許公報の頁及び行を併記する。
(1a)「1.グリホサートのカリウム塩、アルキルグリコシド界面活性剤及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤を含む高濃度水性グリホサート濃縮物。
2.グリホサート濃度が、グリホサート酸含有量をもとに400g/L以上である、請求項1に記載のグリホサート濃縮物。
3.グリホサート濃度が、グリホサート酸含有量をもとに440から540g/Lである、請求項2に記載のグリホサート濃縮物。
4.アルキルグリコシド及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤系の総含有量が、160から300g/Lである、請求項1?3の任意の一項に記載のグリホサート濃縮物。」(国際公開10頁3?13行;公表特許公報2頁2?11行;請求の範囲の請求項1?4)
(1b)「本発明は、グリホサート調合物、そして特に、グリホサートの高濃度水性濃縮調合物に関する。
N-ホスホノメチルグリシン(本明細書では、一般名グリホサートで呼ぶ)は、良く知られた除草剤であり、普通、その塩の形で用いられる。グリホサートは、一連の商業的用途をカバーするように設計された、広範囲に多様な液体及び固体組成物に調合されている。本発明は、使用する前に稀釈されるように設計されている液状の濃縮調合物に関する。多くのこのような液状濃縮物が市販されているが、水性調合物中のグリホサートの濃度を、普通入手できる以上の濃度に上げることを求める強い商業的及び環境的理由が存在する。高濃度水性濃縮調合物は、より少ない液量中に所定量のグリホサートを準備し、その結果、少ない輸送、貯蔵及び取扱い費用の点で有意な利点が得られ、そして容器の処分が減り、且つ便利になる。
商業的に実用するには、一種又はそれ以上の界面活性剤を用いて、グリホサートの活性を高める必要があることが良く知られており、そして多くの有効な個々の界面活性剤又は混合界面活性剤系が文献に報告されている。この水性グリホサート濃縮物が稀釈される同じ時に、希望の界面活性剤系を、別にタンク混合物に添加することが可能であり、かくして、その界面活性剤系は、その濃縮物には入れないで、タンク混合の段階で別に添加することが可能である。しかし、明らかなように、タンク混合段階での別の成分の添加は、除草剤の散布に先立つ追加の工程となり、そして最終製品での正しい割合を保証するために、利用者に、混合容量を正確に測定する責任を持たせることになる。それ故、有効な比率の界面活性剤系が、その組成物に“組込まれて”いる高濃度グリホサート濃縮物に対する需要が存在する。このような濃縮物は、商業的使用中に遭遇する可能性のある周囲温度で考えられる最大の温度で長時間にわたって物理的に安定でなければならないから、これまで、界面活性剤を含む有効な高濃度グリホサート濃縮物の実用的な実現を制約してきたのは、この因子である。高濃度調合物に、例えば、グリホサート酸をベースにして400又は450g/L以上の濃度でグリホサート塩を含む調合物に、有効な添加水準の常用の界面活性剤系を“組込む”ことは非常に困難である。
グリホサートの塩と界面活性剤系の両方を混和した高濃縮系で遭遇するさらなる一つの問題は、粘度の問題である。容積が小さくて高濃度の組成物が有する優位性は、その組成物が、その容器からうまく注がれるのに粘ちょう過ぎるなら、また、その容器から残留分を迅速に洗い出すのに粘ちょう過ぎるなら、多かれ少なかれ失われるであろう。このことは、その製品が、大規模消費者用にバルクで供給されなければならない場合には特に重要である。
グリホサートの多くの塩が文献に記載されているが、広範囲にわたって商業的に利用できるのは、そのトリメチルスルホニウム塩およびイソプロピルアミン塩を含む液状濃縮物から作られているものだけである。そのアンモニウム塩又はナトリウム塩が幾つかの固体調合物中で用いられている。我々は、グリホサートのカリウム塩が、それは水に容易に溶けて比較的高密度の溶液(約1.45g/cc) を生成するからグリホサートの高濃度水性濃縮物の準備に特によく適していることを見出した。しかし常用の界面活性剤系を広範囲に調べて、そのカリウム塩のようなグリホサートの塩を含む物理的に安定な高濃度組成物を提供するのに有効な水準の界面活性剤を組込むことは非常に困難であることを示した。
本発明の方法に従って、グリホサートのカリウム塩、アルキルグリコシド系界面活性剤及びアルコキシル化アルキルアミン系界面活性剤を含む高濃度水性グリホサート濃縮物が提供される。」(国際公開1頁3行?2頁18行;公表特許公報の段落【0001】?【0006】)
(1c)「本明細書では、“高濃度”水性グリホサート濃縮物という用語は、その中のグリホサートの濃度が、グリホサート酸含有量をベースにして400g/L以上、そしてより特定すれば440g/L以上、であることを意味する。本明細書では、グリホサートの全ての濃度は、特に断らない限り、そのグリホサートが塩として存在している場合でも、グリホサート酸の重量パーセントで与えられることに留意すべきである。一般に、グリホサートの濃度の実用的な上限は、粘度を考慮して決められるであろう。下で考察するように、その濃度が500g/Lを大きく超えるなら、粘度調節剤が必要になる場合があり、一方その濃度が550g/Lを超える調合物は、常用の設備を用いて、商業的に有効に利用するには粘ちょう過ぎる傾向がある。本発明の組成物は、その中のグリホサート含有量が、約440g/Lから約540g/Lである場合に特に有効である。
好ましくは、この水性濃縮物中のアルキルグリコシド及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤系の総含有量は、約160から300g/L、例えば約200から270g/Lである。このアルキルグリコシドおよびアルコキシル化アルキルアミン以外の追加の界面活性剤が、希望により用いられることもあるが、そのような追加の界面活性剤の存在は、アルキルグリコシド及びアルコキシル化アルキルアミンの濃度の上限で用いると、調合物の安定性に悪影響を及ぼすこともある。」(国際公開2頁19行?3頁2行;公表特許公報の段落【0007】?【0008】)
(1d)「本発明の範囲は、任意の一つの特別な理論によって限定されるものと考えるべきではなく、そして界面活性剤の作用様式は極端に複雑であるが、アルキルグリコシドとアルコキシル化アルキルアミンは、異なる一般的な機構で機能し、そして、その調合物の物理的安定性を失うことなくこの高濃度調合物に組込むために最適の能力を有する最大の助剤効果を提供するために、一緒になって働くことができると信じられる。特にアルキルグリコシドは、基本的に受動的に作用し、大部分は葉の表面に所在して、有効な吸収を保証するために、それが乾燥するように散布溶液の物理的性質を適度に調節すると信じられる。この様式の作用の結果であると信じられる一つの現象は、アルキルグリコシドの容量が特に適した範囲を過ぎて増加すると、その活性の増大は、アルキルグリコシドの容量に比例しなくなる現象である。次いで、さらにアルキルグリコシドを添加すると、比較としては、殆ど効果がなくなる。他方、アルコキシル化アルキルアミンは、より能動的機構で作用すると信じられ、この場合、アルコキシル化アルキルアミンは、葉の表皮層であるクチクラに浸透し、そして、この植物系への活性成分の浸透を促進することにより生物活性を高める。
かくして、高濃度カリウム・グリホサート調合物にアルキルグリコシドを比較的高濃度に混和することが可能である一方で、その生物活性の向上は、最適値より小さい傾向があり、そしてさらに、得られる溶液の粘度が、望ましくない程高くなる傾向がある。他方、アルコキシル化アルキルアミンは、高濃度グリホサート濃縮物中での相溶性の閾値が比較的低い。しかし、我々は、本発明のグリホサート組成物が、高濃度にできるカリウム塩の性能と、アルキルグリコシドによる最適な“受動的”活性の向上及び比較的低水準のアルコキシル化アルキルアミン(全体としてのその系と相溶性である)により提供される“浸透性”の向上を組合せることを見出した。かくして本発明の高濃度グリホサート組成物は、これまで、そのような高濃度組成物で可能であることが証明されていたよりも、非常に高い容量の総界面活性剤を含んでおり、その結果、グリホサート濃度が遥かに低い多くの市販の調合物に比べて、素晴らしい生物活性を示す。」(国際公開3頁10行?4頁5行;公表特許公報の段落【0010】?【0011】)
(1e)「その組成物の粘度が高いと、例えば、カリウム・グリホサートの濃度が範囲の上限に近づくと、粘度修飾剤を添加するのが適当である。適した粘度修飾剤は、プロピレングリコールを含む。アルキルグリコシドを含む調合物を用いる常用の実施法におけるように、消泡剤が添加される。この技術分野では多くの消泡剤が知られており、そして市場から入手できる消泡剤は、非常に低濃度(例えば5g/L以下)で機能するので、従って、その組成物の容量に大きい影響はない。
希望に応じて、湿潤剤、(無機のアンモニウム塩のような)活性増強剤、不凍剤、濡れ剤又は他の追加用界面活性剤のような他の常用の添加物を添加してもよいが、一般に、そのような材料を、特に若しそれらが有意の量存在するなら、添加することにより、その組成物の容量に追加されないことが望ましい。同様に、追加の水溶性除草剤又は殺真菌剤及び殺虫剤のような他の農薬が、切望されるなら混和されてもよいが、本発明は、本来、唯一の活性農薬成分がグリホサートである組成物に関する。」(国際公開5頁29行?6頁10行;公表特許公報の段落【0017】?【0018】)
(1f)「本発明は、以下の実施例により例示されるが、実施例中、全ての部及びパーセントは、特に断らない限り重量で与えられる。
実施例1?15
以下の実施例において、グリホサート酸(表中では、PMG酸として引用される)を、その酸を中和するのに十分な量の50重量%の水酸化カリウム水溶液中に溶かしてカリウム塩を生成させることにより、複数の組成物を調製した。かくして、例えば、PMG酸の濃度が450g/Lの場合、対応する割合の50%水酸化カリウム水溶液は334g/Lであった。残りの成分は、指示された割合(g/L) で加えられ、そして適量の水を加えてリットルにした。
全調合物について、54℃で4週間および-10℃で2週間貯蔵した場合の物理的安定性を評価した。下の表1から4中で、安定性コード“A”を与えられた調合物は、この試験の後、物理的に安定なままであった。安定性コード“B”を与えられた調合物は、室温では安定であったが、54℃で 4週間の試験の間、安定なままではなく、相分離の証拠が見られた。
表1から4中で用いられたアルキルグリコシド(APG)は、AGRIMUL PG2067であり、その組成は前に示されている。
ETHOMEEN C15(ETHOMENは、Akzo Nobel社の商標である)は、平均エトキシル化度5のエトキシル化ココアミンである。
ETHOMEEN C12は平均エトキシル化度2のエトキシル化ココアミンである。
ETHOMEEN T15は平均エトキシル化度5のエトキシル化タロウアミンである。
ETHOMEEN T25は平均エトキシル化度15のエトキシル化タロウアミンである。
ETHOMEEN S22は平均エトキシル化度12のエトキシル化ソイアミンである。
表1

表2

表3

表4

実施例12及び13は、調合物の物理的安定性は、このエトキシル化アルキルアミンの平均エチレンオキシド含有量が10.6(10部の“ETHOMEEN”C15と40部の“ETHOMEEN”S22)ならば満足であるが、このエトキシル化アルキルアミンの平均エチレンオキシド含有量が13(10部の“ETHOMEEN”C15と40部の“ETHOMEEN”T25)の場合は、物理的安定性が最適値より低い、ことを示している。
実施例15では、540g/Lのグリホサート酸を含む調合物の粘度が、プロピレングリコールを添加することにより低下した。
実施例16および17
用いられたアルキルグリコシドが、重合度約1.75の2-エチル-1-ヘキシルグリコシドであった点を除いて、実施例1から15の方法が追試された。表5に示した組成を有する調合物が調製され、そして少なくとも-10℃から40℃の範囲で安定であることが見いだされた。
表5

」(国際公開6頁23行?9頁末行;公表特許公報の段落【0022】?【0033】)

(3)先願発明

ア 先願明細書には、摘示(1a)?(1f)からみて、請求の範囲の請求項4に係る発明であって請求項3、2、1を順次引用したものに相当する、以下の
「グリホサートのカリウム塩、アルキルグリコシド界面活性剤及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤を含む高濃度水性グリホサート濃縮物であって、グリホサート濃度が、グリホサート酸含有量をもとに440から540g/Lであり、アルキルグリコシド及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤系の総含有量が、160から300g/Lである、上記高濃度水性グリホサート濃縮物」
の発明(以下「先願発明1」という。)が記載されている。
なお、上記グリホサート濃度については、実施例にグリホサート酸として540g/L、500g/L、450g/Lなどとした例が記載されており、上記界面活性剤系の総含有量については、実施例に218.5?564g/Lとした例が記載されており、グリホサートK塩がグリホサート酸として540g/Lの実施例1、8、15では、上記界面活性剤系の総含有量は、それぞれ264g/L、236g/L、236g/Lである(以上、摘示(1f))。一方、先願明細書には、上記界面活性剤系の総含有量については、「好ましくは、この水性濃縮物中のアルキルグリコシド及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤系の総含有量は、約160から300g/L、例えば約200から270g/Lである」(摘示(1c))との記載があり、さらに、この界面活性剤の作用について、「アルキルグリコシドは、基本的に受動的に作用し、大部分は葉の表面に所在して、有効な吸収を保証するために、それが乾燥するように散布溶液の物理的性質を適度に調節すると信じられる。・・・他方、アルコキシル化アルキルアミンは、より能動的機構で作用すると信じられ、この場合、アルコキシル化アルキルアミンは、葉の表皮層であるクチクラに浸透し、そして、この植物系への活性成分の浸透を促進することにより生物活性を高める」(摘示(1d))との記載がある。そうすると、先願発明1の高濃度水性グリホサート濃縮物における界面活性剤の総含有量は、実施例に記載された上記界面活性剤系の総含有量の264g/Lや236g/L又は218.5?564g/Lに限られず、「約200から270g/L」の範囲や「約160から300g/L」の範囲でも界面活性剤がその量に応じた機能を発揮し、例えば160?200g/Lとした場合は200?270g/Lとした場合よりも上記界面活性剤によりもたらされる機能は多少小さいものとなるかも知れないが、それでも先願明細書に記載された発明の目的からして十分なものであることが、理解できる。よって、先願発明1は、先願明細書に実質的に記載された発明である。

イ そして、先願明細書には、グリホサート除草剤の従来技術及び課題に関連して、「本発明は、使用する前に稀釈されるように設計されている液状の濃縮調合物に関する。多くのこのような液状濃縮物が市販されているが、水性調合物中のグリホサートの濃度を、普通入手できる以上の濃度に上げることを求める強い商業的及び環境的理由が存在する。高濃度水性濃縮調合物は、より少ない液量中に所定量のグリホサートを準備し、その結果、少ない輸送、貯蔵及び取扱い費用の点で有意な利点が得られ、そして容器の処分が減り、且つ便利になる」(摘示(1b))との記載があることから、上記アの先願発明1は、そのグリホサート濃縮物を、容器に入れて輸送及び貯蔵することを前提としたものである。
そうすると、先願明細書には、以下の、
「グリホサートのカリウム塩、アルキルグリコシド界面活性剤及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤を含む高濃度水性グリホサート濃縮物であって、グリホサート濃度が、グリホサート酸含有量をもとに440から540g/Lであり、アルキルグリコシド及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤系の総含有量が、160から300g/Lである、上記高濃度水性グリホサート濃縮物を、容器に入れて輸送及び貯蔵する方法」
の発明(以下「先願発明2」という。)が記載されているということができる。

ウ また、先願発明1の界面活性剤を含む高濃度水性グリホサート濃縮物に関し、先願明細書には、「N-ホスホノメチルグリシン(本明細書では、一般名グリホサートで呼ぶ)は、良く知られた除草剤であり・・・本発明は、使用する前に稀釈されるように設計されている液状の濃縮調合物に関する」(摘示(1b))、「アルキルグリコシドは・・・大部分は葉の表面に所在して、有効な吸収を保証するために、それが乾燥するように散布溶液の物理的性質を適度に調節すると信じられる。・・・他方、アルコキシル化アルキルアミンは・・・葉の表皮層であるクチクラに浸透し、そして、この植物系への活性成分の浸透を促進することにより生物活性を高める」(摘示(1d))と記載されているように、これを稀釈して、植物の葉に適用することを前提としたものである。稀釈するのに水が用いられることは、技術常識である。
そうすると、先願明細書には、以下の、
「グリホサートのカリウム塩、アルキルグリコシド界面活性剤及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤を含む高濃度水性グリホサート濃縮物であって、グリホサート濃度が、グリホサート酸含有量をもとに440から540g/Lであり、アルキルグリコシド及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤系の総含有量が、160から300g/Lである、上記高濃度水性グリホサート濃縮物を、水で稀釈して植物の葉に適用する除草方法」
の発明(以下「先願発明3」という。)が記載されているということができる。

(4)本願発明1について

ア 対比
本願発明1と先願発明2とを対比すると、
先願発明2の「グリホサートのカリウム塩、アルキルグリコシド界面活性剤及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤を含む高濃度水性グリホサート濃縮物」は、本願発明1の「グリホサートの一塩基性カリウム塩の水溶液」すなわち「グリホサートK塩の水溶液」であって「1またはそれ以上の界面活性剤を含む界面活性剤成分をさらに含むもの」に相当する。
そして、先願発明2の、特定のアルキルグリコシド界面活性剤及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤を含む高濃度水性グリホサート濃縮物の、界面活性剤の相溶性については、先願明細書に「アルキルグリコシドを比較的高濃度に混和することが可能である」、「アルコキシル化アルキルアミンは、高濃度グリホサート濃縮物中での相溶性の閾値が比較的低い。しかし・・・比較的低水準のアルコキシル化アルキルアミン(全体としてのその系と相溶性である)」(摘示(1d))と記載されていることからすると、先願発明2の、特定の界面活性剤を含むグリホサート濃縮物は、その界面活性剤が、相溶性があるもの、すなわち、系が貯蔵、輸送、及び使用の温度で相分離を示さないものである。そして、その温度は、グリホサート除草剤の一般的な貯蔵及び輸送の態様からみて、本願発明1における「50℃またはそれ未満の温度」を含む。
また、先願発明2の、上記高濃度水性グリホサート濃縮物を「容器に入れて輸送及び貯蔵する」方法は、本願発明1の「(2)・・・容器に・・・実質的に充填し・・・(3)充填後、該容器を適切な貯蔵区域に置く」を含む方法に相当し、その方法は、グリホサート除草剤の貯蔵方法である。
したがって、本願発明1と先願発明2は、
「(1)グリホサートK塩の水溶液であって、1またはそれ以上の界面活性剤を含む界面活性剤成分をさらに含むものであり、該界面活性剤成分は50℃またはそれ未満の温度において組成物が相分離を示さないように選択される、上記水溶液を選択し;
(2)容器に該選択された溶液を実質的に充填し;次いで、
(3)充填後、該容器を適切な貯蔵区域に置く
を含むグリホサート除草剤の貯蔵方法」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。
(相違点1)
本願発明1においては、界面活性剤を含むグリホサートK塩の水溶液が、同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも低い粘度を有し、かつ同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも大きい比重を有する、グリホサート酸当量濃度が40重量%と上記一塩基性カリウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であるグリホサートK塩水溶液に、該組成物1リットルあたり合計20ないし200グラムの界面活性剤を含むものであると特定されているのに対し、先願発明2においては、グリホサートK塩及び特定の界面活性剤を含む高濃度水性グリホサート濃縮物が、グリホサート濃度が、グリホサート酸含有量をもとに440から540g/Lであり、アルキルグリコシド及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤系の総含有量が、160から300g/Lである、と特定されている点
(相違点2)
本願発明1においては、グリホサート除草剤の貯蔵方法が、グリホサート除草剤の貯蔵効率を最大化させる方法であると特定され、界面活性剤を含むグリホサートK塩の水溶液を0.1ないし100000リットルまたはそれ以上の容量を有する容器に実質的に充填することが特定されているのに対し、先願発明2においては、容器の大きさが特定されず、グリホサート除草剤の貯蔵効率が最大化させられているかが特定されていない点

イ 相違点についての検討

(ア)相違点1について

a 先願発明2における、グリホサートK塩及び特定の界面活性剤を含む高濃度水性グリホサート濃縮物は、グリホサート濃度が、グリホサート酸含有量をもとに440から540g/Lであり、アルキルグリコシド及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤系の総含有量が、160から300g/Lである、というものである。

b 一方、請求人は、平成26年2月25日に提出した意見書において、
「グリホサートのカリウム塩の特性を示すために、参考資料1を添付いたします。
この参考資料は、いくつかの異なるグリホサート塩についての比重対グリホサートa.e.濃度の表およびグラフです。この表は、各々がいくつかの異なる離散的濃度における、いくつかの異なるカウンターカチオンについてのグリホサート塩濃縮物の組成、比重および粘度を示します。
モノカリウムグリホサートについてのデータは、360、480、540または600g/Lグリホサートa.e.いずれかを含む処方についてのものです。540g/Lにおける溶液は40.01wt%グリホサートa.e.を含み、他方、600g/Lにおける溶液は43.45wt%グリホサートa.e.を含みます。」



と、グリホサートK塩を酸当量として540g/L含むグリホサートK塩の水溶液は、グリホサート酸当量濃度が40.01重量%であることを説明している。そして、この説明の内容が事実に反すると考えるべき事情は存在しない。

c そこで、先願発明2で用いる高濃度水性グリホサート濃縮物に該当するものの一つである、「グリホサート濃度が、グリホサート酸含有量をもとに540g/Lであり、アルキルグリコシド及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤系の総含有量が、200g/Lである」、というものについて、本願発明1の、グリホサート酸当量濃度が40重量%と上記一塩基性カリウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であるグリホサートK塩水溶液に、該組成物1リットルあたり合計20ないし200グラムの界面活性剤を含むものである、との特定を満足するものであるか否かを検討する。
上記bによれば、グリホサートK塩を酸当量として540g/L含むグリホサートK塩の水溶液は、グリホサート酸当量濃度が40.01重量%である。
ここで、仮に、グリホサートK塩を酸当量として540g/L含む1リットルのグリホサートK塩の水溶液(酸当量濃度40.01重量%)に、界面活性剤を200g添加することを考えると、添加後の水溶液は体積が増えて1リットルよりも大きくなることが明らかであり、その結果、得られた混合水溶液においては、グリホサートK塩の濃度は酸当量として540g/Lを下回り、界面活性剤の濃度も200g/Lを下回ることになる。
そのため、上記の「グリホサート濃度が、グリホサート酸含有量をもとに540g/Lであり、アルキルグリコシド及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤系の総含有量が、200g/Lである」という高濃度水性グリホサート濃縮物を作るためには、もっと濃いグリホサートK塩の水溶液から出発しなくてはならない。
したがって、先願発明2で用いる上記の特定の高濃度水性グリホサート濃縮物は、本願発明1において特定される、グリホサート酸当量濃度が40重量%と上記一塩基性カリウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であるグリホサートK塩水溶液に、該組成物1リットルあたり合計200グラムの界面活性剤を含むものに相当する。

d そして、先願発明2で用いる高濃度水性グリホサート濃縮物は、上記cで検討した特定の態様のもの以外に、グリホサート濃度が、グリホサート酸含有量をもとに440から540g/Lであり、アルキルグリコシド及びアルコキシル化アルキルアミン界面活性剤系の総含有量が、160から300g/Lである、というものであるから、そのいくつかの態様は、本願発明1において特定される、グリホサート酸当量濃度が40重量%と上記一塩基性カリウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であるグリホサートK塩水溶液に、該組成物1リットルあたり合計20ないし200グラムの界面活性剤を含むものに相当する。

e 次に、先願発明2で用いる高濃度水性グリホサート濃縮物を、グリホサートK塩水溶液に界面活性剤を含ませたものとしてみた場合の、界面活性剤を含ませる前のグリホサートK塩水溶液が、本願発明1の「同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも低い粘度を有し、かつ同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも大きい比重を有する」との性質を有するものであるかを検討する。
引用発明の上記のグリホサートK塩水溶液と、本願発明1におけるグリホサートK塩の水溶液は、何れも、「グリホサート酸当量濃度が40重量%と上記一塩基性カリウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であるグリホサートK塩水溶液」である点で異ならないのであり、粘度及び比重は、水溶液の固有の性質であるから、上記の性質を有することは明らかである。

f 以上によれば、相違点1は、実質的な相違点ではない。

(イ)相違点2について

a 先願発明2においては、界面活性剤を含むグリホサートK塩の水溶液を実質的に充填するために用いる容器の大きさは、特定されていない。しかし、本願発明における「0.1ないし100000リットルまたはそれ以上の容量を有する容器」との特定は、グリホサート除草剤を貯蔵したり輸送する際に通常採用される容器の大きさを単に記載したにすぎないものであるから、この容器の大きさは、実質的な相違点であるとはいえない。

b また、本願発明1においては、「グリホサート除草剤の貯蔵効率を最大化させる方法」であると特定されているが、本願発明1において、グリホサート除草剤の貯蔵効率が向上するのは、上記1(3)でも検討したとおり、グリホサートK塩の濃厚水溶液が極めて高い比重を有するという特性を利用することに基づくものである。一方、先顔発明2においても、上記(3)イでみたとおり、先願明細書には「水性調合物中のグリホサートの濃度を、普通入手できる以上の濃度に上げることを求める強い商業的及び環境的理由が存在する。高濃度水性濃縮調合物は、より少ない液量中に所定量のグリホサートを準備し、その結果、少ない輸送、貯蔵及び取扱い費用の点で有意な利点が得られ、そして容器の処分が減り、且つ便利になる」(摘示(1b))との記載があり、グリホサート除草剤の貯蔵効率を向上させることを目的とした発明であることが明らかである。そして、引用発明2において、グリホサートK塩水溶液のグリホサートK塩の酸当量濃度は事実上十分に高いから、その貯蔵効率が最大化することは、明らかである。したがって、この点も、実質的な相違点であるとはいえない。

c 以上によれば、相違点2は、実質的な相違点ではない。

(ウ)以上によれば、相違点1及び2に関わらず、本願発明1は、先願発明2と同一である。

(5)本願発明3、5、10及び11について

ア 本願発明3及び5は、何れも、本願発明1と同じく「同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも低い粘度を有し、かつ同様に処方されたグリホサートのIPA塩の組成物よりも大きい比重を有するグリホサートの一塩基性カリウム塩の水溶液を選択し、ここに、前記水溶液のグリホサート酸当量濃度が40重量%と上記一塩基性カリウム塩の溶解度により決定される最大重量%との間であって、ここに、該選択された溶液は、該組成物1リットルあたり合計20ないし200グラムの1またはそれ以上の界面活性剤を含む界面活性剤成分をさらに含むものであり、該界面活性剤成分は50℃またはそれ未満の温度において組成物が相分離を示さないように選択されるものであり」という組成物を用意して用いることを、発明を特定するための事項とするものであり、その後の工程が、本願発明1では、
「(2)0.1ないし100000リットルまたはそれ以上の容量を有する容器に該選択された溶液を実質的に充填し;次いで、
(3)充填後、該容器を適切な貯蔵区域に置く」
であったのに対し、本願発明3は、代わりに、
「(2)0.1ないし2000リットルまたはそれ以上の容量を有する複数の容器に該選択された溶液を実質的に充填し;
(3)荷積み区域において、道路用車両、鉄道用車両または水上輸送用車両内または上に荷積みし;次いで、
(4)荷積みの後、車両を、荷積み区域から荷下ろし区域へ移動させる」
と特定されたものであり、本願発明5は、代わりに、
「(2)15000ないし100000リットルまたはそれ以上の容量を有するバルクコンテナに該選択された溶液を実質的に充填し;
(3)荷積み区域において、道路用車両、鉄道用車両または水上輸送用車両内または上に荷積みし;次いで、
(4)荷積みの後、車両を、荷積み区域から荷下ろし区域へ移動させる」
と特定されたものである。
しかし、これらの特定は、グリホサート除草剤を貯蔵したり輸送する際に通常採用される容器の種類や大きさを単に記載し、また、充填後の通常の輸送手段及び操作を記載したにすぎないものであるから、本願発明3及び5と引用発明2との間の、実質的な相違点であるとはいえない。
したがって、本願発明3及び5は、先願発明2と同一である。

イ 本願発明10は、「選択された溶液の調製をさらに含み、前記調製が、水、界面活性剤およびグリホサートの一塩基性カリウム塩またはモノエタノールアミン塩を混合し、ついで、水および/または他の成分で調節することを含む、請求項1?9いずれか1項記載の方法」を、発明を特定するための事項とする発明である。
本願発明10は、本願発明1、3及び5で用いる、界面活性剤を含むグリホサートK塩の水溶液の調製方法を、各成分の混合順序で特定するものである。先願明細書に明示の記載はないとしても、水溶液の調製に当たり、最初に全部の水を混ぜるのではなく、水の一部を調節用に残しておくことは、常套手段に過ぎない。
したがって、本願発明10は、先願発明2と同一である。

ウ 本願発明11は、「除草に有効な量の請求項1?10のいずれか1項記載の選択された溶液を適当な体積の水で希釈して適用組成物を得て、次いで、適用組成物を植物の葉に適用することを特徴とする、除草方法」を、発明を特定するための事項とする発明である。
本願発明11を先願発明3と対比すると、上記(4)で検討したとおり、本願発明1、3、5において用いる界面活性剤を含むグリホサートK塩の水溶液と、先願発明2において用いるグリホサートK塩及び特定の界面活性剤を含む高濃度水性グリホサート濃縮物が、同一であり、そして、先願発明3の「上記高濃度水性グリホサート濃縮物を、水で稀釈して植物の葉に適用する除草方法」は、本願発明11の「選択された溶液を適当な体積の水で希釈して適用組成物を得て、次いで、適用組成物を植物の葉に適用することを特徴とする、除草方法」に相当する。
したがって、本願発明11は、先願発明3と同一である。

(6)まとめ
以上のとおり、本願発明1、3、5、10及び11は、先願発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

第5 むすび
したがって、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
また、仮に、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するとした場合、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-09 
結審通知日 2016-03-15 
審決日 2016-03-29 
出願番号 特願2012-800(P2012-800)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (A01N)
P 1 8・ 16- Z (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬籠 朋広  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 中田 とし子
木村 敏康
発明の名称 グリホサート除草剤用の貯蔵および輸送システム  
代理人 山崎 宏  
代理人 佐藤 剛  
代理人 田中 光雄  

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