• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1317954
審判番号 不服2015-3212  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-19 
確定日 2016-08-10 
事件の表示 特願2010- 9692「ウェブアクションとクライアントの制御とクライアントでのビジネスロジックの実行が可能なHTMLベースのアプリケーションでのHTML領域とアプリケーション領域との相互運用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月19日出願公開、特開2010-182299〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成22年1月20日(パリ条約による優先権主張2009年2月6日,韓国)の出願であって,平成25年1月16日付けで審査請求書が提出され,平成25年12月25日付けの拒絶理由通知に対して平成26年6月18日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,同年10月15日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成27年2月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年4月8日付けで特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされたものである。

2.本願発明
平成27年2月19日付けの手続補正は,補正前の請求項1乃至9を削除して,補正前の請求項10乃至11を補正後の請求項1乃至2とするものであるから,特許法第17条の2第5項第1号に掲げられた「請求項の削除」を目的とするものに該当し,適法になされたものである。
したがって,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成27年2月19日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「HTML領域で発生したイベント情報がHTMLページの動作であるウェブアクションかアプリケーション駆動ファイルにより実行され,クライアントを制御するビジネスロジックかを判断し,
前記イベント情報が前記ビジネスロジックの場合,オペレーティングシステムコンポーネントを用いて前記イベント情報をフックし,
フックした前記イベント情報が所定のビジネスロジックに関連する命令語の場合,前記命令語に対応するビジネスロジックを実行し,
特定のビジネスロジックが実行されると,HTMLに含まれたジャバスクリプトを用いて実行された前記特定のビジネスロジックの結果を前記HTML領域に表示することを特徴とするウェブアクションの制御とクライアントでのビジネスロジックの実行が可能なHTMLベースのアプリケーションでのHTML領域とアプリケーション領域との相互運用方法。」

3.引用例
(1)引用例1
本願の優先権主張日前に頒布され,原審の拒絶査定の理由である平成25年12月25日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2004-318607号公報(平成16年11月11日出願公開,以下,「引用例1」という。)には,関連する図面とともに以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

(ア)「【0043】
上記図3に例示した指定タグテーブル205の指定内容に対応したネットワーク端末装置1の動作を,図4を参照して説明する。
図4には,Webブラウザ201による再生出力処理によって,ディスプレイモニタ17に表示されるWebページを示している。このWebページは,本実施の形態のネットワーク端末装置1のシステムについてのアップデートを促すためのものとされている。
そして,このWebページにおいては,「実行する」ボタンBT1と,「実行しない」ボタンBT2が表示されている。このうち,前者の「実行する」ボタンBT1は,このWebページのHTMLファイルの全記述内容のうち,
<input type=”submit” value=”実行する”>
のタグの記述内容に従って表示出力されている領域である。」

(イ)「【0046】
そして,「実行する」ボタンBT1にフォーカスが当たって強調表示がされている状態のもとで,決定操作を行ったとする。
決定操作に応じては,通常は,上記もしているように,Webブラウザ202としての処理によってリンクを発火させ,例えばリンク先のURLにアクセスする動作などが得られることになる。
しかしながら,この場合においては,今回フォーカスが与えられていた「実行する」ボタンBT1に対応するタグは,指定タグの1つとして,指定タグテーブル205に登録されている。
コントローラ202は,前述しているように,現在のフォーカス対象領域に対応するHTMLファイルのタグ内容の情報を保持しているから,上記のようにして,指定タグテーブル205を参照すれば,「実行する」ボタンBT1に対応するタグが指定タグとして登録されていることを認識できる。
そしてこの場合,コントローラ202は,Webブラウザ201に対してイベント通知は行わない。そして代わりに,指定タグテーブル205の指定内容に従って,アップデートアプリケーションを実行させるための処理を実行する。
つまり,コントローラ202は,機器制御モジュール203に対して,アップデートアプリケーション204Aを動作させることを要求するコマンドを機器制御モジュール203に対して発行する。このコマンドに応じて,機器制御モジュール203は,アップデートアプリケーション204Aを起動させる。」

(ウ)「【0049】
上記したネットワーク端末装置1の動作として,CPU11が,コントローラ202,及び機器制御モジュール203のプログラムに従って実行する処理を,図5のフローチャートにより説明する。この図には,ステップS101?S108までの処理動作が示されているが,ステップS101?106までの処理がコントローラ202としての処理に対応し,ステップS107→S108の処理が機器制御モジュール203としての処理に対応する。
また,この図に示す処理は,Webブラウザ201が起動中にあってHTMLコンテンツを再生出力しており,例えば図4に示したようなWebページの画面が表示出力されている処理が実行されている状態の下で実行される。
【0050】
上記のようにして,HTMLコンテンツによるWebページを再生出力している状態の下で,先ず,コントローラ202は,ステップS101の処理として,操作入力部15に対する操作に応じた操作コマンドが入力されるのを待機している。なお,確認のために述べておくと,Webブラウザ201が起動してWebページを再生出力しているときに有効となる操作としては,少なくとも,前述もしたように,フォーカス移動のための上下左右に対応する移動操作,及び決定操作となるものである。例えば,この操作以外に,文字入力操作なども含まれてよいが,ここでは説明を簡単にするために,有効となる操作がフォーカス移動,及び決定操作のみであることとする。
そして,ステップS101にて操作コマンドが入力されたことを判別すると,ステップS102の処理に移行する。
【0051】
ステップS102においては,上記ステップステップS101としての処理に対応して入力された操作コマンドが,決定操作に対応する決定コマンドであったか否かについて判別する。ここで,決定コマンドではなく,上下左右何れかのフォーカス移動操作に対応するフォーカス移動コマンドであるとして否定の判別結果が得られた場合には,ステップS103の処理をスキップしてステップS104の処理に進む。
これに対して,決定コマンドであるとして肯定結果が得られたのであれば,ステップS103に進む。
【0052】
先の図4の説明においても述べたように,Webブラウザ201からは現在のフォーカス対象領域に対応するタグ内容の情報が通知されるが,コントローラ202は,後述するステップS105の処理によって,この通知されたタグ内容の情報を受信して保持するようにされている。つまり,コントローラ202は,再生出力されているWebページ上におけるフォーカス対象領域に対応するタグの内容が何であるのかを常に認識できている。
【0053】
ステップS103においては,指定タグテーブル205を参照することで,現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容が,指定タグとして登録されているか否かについて判別する。つまり,例えば図4に示した具体例に対応させて,現在保持しているタグの内容が
<input type=”submit” value=”実行する”>
であれば,ステップS103においては肯定結果が得られることになるが,これ以外のタグの内容であれば否定結果が得られることになる。
そして,ステップS103において肯定結果が得られたのであれば,後述するステップS106の処理に進むが,否定結果が得られた場合には,ステップS104の処理に進むことになる。
【0054】
ステップS104においては,先のステップS101の処理に対応して入力された操作コマンドに対応するイベントを,Webブラウザ201に対して通知する。この場合には,操作コマンドが上下左右の何れかに応じたフォーカス移動に対応するものであれば,上下左右の何れかに応じたフォーカス移動イベントを通知する。また,決定操作に対応する操作コマンドであった場合には,決定イベントを通知する。
Webブラウザ201では,フォーカス移動イベントが通知されたのに応じては,指定された移動方向に従って,フォーカス対象領域を移動させる。また,決定操作に応じては,例えば,このときのフォーカス対象領域に対応するHTMLファイルのタグが示すURLにアクセスして,新たなWebページのHTMLコンテンツを取得して再生出力する。
これらの動作がWebブラウザ201にて実行される結果,再生出力されているWebページ上でのフォーカス対象領域も変更されることになるので,Webブラウザ201は,この新たなフォーカス対象領域に対応するHTMLファイルのタグの内容を,コントローラ202に対して通知する。
これに応じて,コントローラ202は,ステップS105の処理によって,通知されたタグ内容の情報を受信して保持するようにされる。そして,ステップS101の処理に戻るようにされる。
【0055】
また,ステップS103において肯定結果が得られた場合とは,決定操作が行われたフォーカス対象領域に対応するタグの内容が,指定タグテーブル205に登録されていた場合となるが,この場合にはステップS106の処理に移行する。ステップS106では,指定タグテーブル205を参照して,現在,保持しているタグの内容に対応付けられている指定の処理が何であるのかについて認識する。例えば,図4の具体例に対応させた場合には,このステップS106の処理によって,システムのアップデートのための処理を実行させるべきことが認識される。
【0056】
上記ステップS106による認識処理に続く,ステップS107→S108の処理が,機器制御モジュール203としての処理に相当する。
ステップS107の処理によっては,先ず,これまで起動されていたWebブラウザ201を終了させることとしている。なお,上記ステップS106により認識した処理が,特にWebブラウザ201の終了を必要としない処理である場合には,このステップS107の処理をスキップしてよい。
そして,次のステップS108の処理によって,指定された処理を実行するようにされる。図4の例に対応させれば,機器制御モジュール203としての処理によって,アプリケーション204Aが起動され,このアプリケーション204Aによってシステムのアップデートが実行されるように制御することになる。」

(エ)引用例1の図2には,Webサーバ100にネットワーク300を介して接続され,Webブラウザ201とコントローラ202と機器制御モジュール203と指定タグテーブル205とアップデートアプリケーション204Aとを備えたネットワーク端末装置1が記載されている。

ここで,上記引用例1に記載されている事項について検討する。

(a)上記(エ)より,引用例1には,「Webサーバにネットワークを介して接続され,Webブラウザとコントローラと機器制御モジュールと指定タグテーブルとアプリケーションとを備えたネットワーク端末装置」が記載されているものと認められる。

(b)上記(ウ)の【0049】段落の「上記したネットワーク端末装置1の動作として,CPU11が,コントローラ202,及び機器制御モジュール203のプログラムに従って実行する処理を,図5のフローチャートにより説明する。」との記載から,引用例1には,「ネットワーク端末装置において実行される方法」が記載されていると認められる。

(c)上記(ア)の【0043】段落の「図4には,Webブラウザ201による再生出力処理によって,ディスプレイモニタ17に表示されるWebページを示している。・・・そして,このWebページにおいては,「実行する」ボタンBT1と,「実行しない」ボタンBT2が表示されている。」との記載,上記(イ)の【0046】段落の「そして,「実行する」ボタンBT1にフォーカスが当たって強調表示がされている状態のもとで,決定操作を行ったとする。」との記載,上記(ウ)の【0049】段落の「また,この図に示す処理は,Webブラウザ201が起動中にあってHTMLコンテンツを再生出力しており,例えば図4に示したようなWebページの画面が表示出力されている処理が実行されている状態の下で実行される。」との記載,【0050】?【0051】段落の「HTMLコンテンツによるWebページを再生出力している状態の下で,先ず,コントローラ202は,ステップS101の処理として,操作入力部15に対する操作に応じた操作コマンドが入力されるのを待機している。・・・ステップS102においては,上記ステップステップS101としての処理に対応して入力された操作コマンドが,決定操作に対応する決定コマンドであったか否かについて判別する。・・・決定コマンドであるとして肯定結果が得られたのであれば,ステップS103に進む。」との記載から,Webブラウザ201が図4に示されるHTMLコンテンツによるWebページを再生出力しており,「実行する」ボタンBT1にフォーカスが当たっている状態で決定操作を行うと,図5のフローチャートのステップS103に進むことが読み取れるから,引用例1には,「Webブラウザが,「実行する」ボタンBT1が表示されているHTMLコンテンツによるWebページを再生出力している状態で,「実行する」ボタンBT1が操作されるとステップS103の処理に進む」ことが記載されていると認められる。

(d)上記(ウ)の【0049】段落の「・・・ステップS101?106までの処理がコントローラ202としての処理に対応し,・・・」との記載から,ステップS101?106の処理は,コントローラによって実行される処理である。
そうすると,上記(ウ)の【0053】段落の「ステップS103においては,指定タグテーブル205を参照することで,現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容が,指定タグとして登録されているか否かについて判別する。・・・そして,ステップS103において肯定結果が得られたのであれば,後述するステップS106の処理に進むが,否定結果が得られた場合には,ステップS104の処理に進むことになる。」との記載から,引用例1には,「コントローラは,ステップS103で指定タグテーブルを参照して,現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容が指定タグとして登録されているか否かを判別し,登録されていると判別するとステップS106の処理に進み,登録されていないと判別するとステップS104の処理に進む」ことが記載されていると認められる。

(e)「ステップS103で登録されていると判別する場合」について
(e-1)上記(ウ)の【0055】段落の「ステップS106では,指定タグテーブル205を参照して,現在,保持しているタグの内容に対応付けられている指定の処理が何であるのかについて認識する。」との記載から,引用例1には,「ステップS106において,コントローラは,指定タグテーブルを参照して,現在,保持しているタグの内容に対応付けられている指定の処理が何であるのかについて認識する」ことが記載されていると認められる。
ここで,上記(ウ)の【0054】段落の「Webブラウザ201は,この新たなフォーカス対象領域に対応するHTMLファイルのタグの内容を,コントローラ202に対して通知する。これに応じて,コントローラ202は,ステップS105の処理によって,通知されたタグ内容の情報を受信して保持するようにされる。」との記載からみて,「現在,保持しているタグの内容」は,「現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容」に他ならない。
してみれば,引用例1には,「ステップS106において,コントローラは,指定タグテーブルを参照して,現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容に対応付けられている指定の処理が何であるのかについて認識する」ことが記載されていると認められる。
(e-2)上記(イ)の【0046】段落には,「しかしながら,この場合においては,今回フォーカスが与えられていた「実行する」ボタンBT1に対応するタグは,指定タグの1つとして,指定タグテーブル205に登録されている。・・・そしてこの場合,コントローラ202は,Webブラウザ201に対してイベント通知は行わない。そして代わりに,指定タグテーブル205の指定内容に従って,アップデートアプリケーションを実行させるための処理を実行する。つまり,コントローラ202は,機器制御モジュール203に対して,アップデートアプリケーション204Aを動作させることを要求するコマンドを機器制御モジュール203に対して発行する。」と記載されており,上記記載は,“今回フォーカスが与えられていた「実行する」ボタンBT1に対応するタグが,指定タグの1つとして,指定タグテーブル205に登録されている場合”,すなわち,“ステップS103で登録されていると判別する場合”の記載であるから,引用例1には,「ステップS103で登録されていると判別する場合,コントローラは,Webブラウザに対してイベント通知は行なわず,その代わりに,機器制御モジュールに対して,所定のアプリケーションを動作させることを要求するコマンドを発行する」ことが記載されていると認められる。
(e-3)上記(イ)の【0046】段落の「つまり,コントローラ202は,機器制御モジュール203に対して,アップデートアプリケーション204Aを動作させることを要求するコマンドを機器制御モジュール203に対して発行する。このコマンドに応じて,機器制御モジュール203は,アップデートアプリケーション204Aを起動させる。」との記載,上記(ウ)の【0056】段落の「上記ステップS106による認識処理に続く,ステップS107→S108の処理が,機器制御モジュール203としての処理に相当する。・・・そして,次のステップS108の処理によって,指定された処理を実行するようにされる。図4の例に対応させれば,機器制御モジュール203としての処理によって,アプリケーション204Aが起動され,このアプリケーション204Aによってシステムのアップデートが実行されるように制御することになる。」との記載から,引用例1には,「ステップS106に続くステップS108において,機器制御モジュールは,コントローラから発行されたコマンドに応じて,所定のアプリケーションを起動させて指定された処理(指定の処理)を実行する」ことが記載されていると認められる。
(e-4)上記(e-1)?(e-3)の検討から,引用例1には,「ステップS103で登録されていると判別すると,コントローラは,指定タグテーブルを参照して,現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容に対応付けられている指定の処理が何であるのかについて認識し,この場合,コントローラは,Webブラウザに対してイベント通知は行なわず,その代わりに,機器制御モジュールに対して,所定のアプリケーションを動作させることを要求するコマンドを発行し,機器制御モジュールは,コントローラから発行されたコマンドに応じて,所定のアプリケーションを起動させて指定の処理を実行する」ことが記載されていると認められる。

(f)「ステップS103で登録されていないと判別する場合」について
上記(ウ)の【0054】段落の「ステップS104においては,先のステップS101の処理に対応して入力された操作コマンドに対応するイベントを,Webブラウザ201に対して通知する。・・・また,決定操作に対応する操作コマンドであった場合には,決定イベントを通知する。Webブラウザ201では,・・・決定操作に応じては,例えば,このときのフォーカス対象領域に対応するHTMLファイルのタグが示すURLにアクセスして,新たなWebページのHTMLコンテンツを取得して再生出力する。」との記載から,ステップS104において,コントローラ202は,入力された操作コマンドが決定操作に対応する操作コマンドであった場合には,決定イベントをWebブラウザ201に対して通知し,Webブラウザは,このときのフォーカス対象領域に対応するタグが示すURLにアクセスして,新たなWebページのHTMLコンテンツを取得して再生出力することが読み取れるから,引用例1には,「ステップS103で,登録されていないと判別すると,コントローラは,決定イベントをWebブラウザに対して通知し,Webブラウザは,このときのフォーカス対象領域に対応するタグが示すURLにアクセスして,新たなWebページのHTMLコンテンツを取得して再生出力する」ことが記載されていると認められる。

上記(a)?(f)の検討から,引用例1には,次のとおりの発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「Webサーバにネットワークを介して接続され,Webブラウザとコントローラと機器制御モジュールと指定タグテーブルとアプリケーションとを備えたネットワーク端末装置において実行される方法であって,
Webブラウザが,「実行する」ボタンBT1が表示されているHTMLコンテンツによるWebページを再生出力している状態で,「実行する」ボタンBT1が操作されると,コントローラは,ステップS103で指定タグテーブルを参照して,現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容が指定タグとして登録されているか否かを判別し,
ステップS103で登録されていると判別すると,コントローラは,指定タグテーブルを参照して,現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容に対応付けられている指定の処理が何であるのかについて認識し,この場合,コントローラは,Webブラウザに対してイベント通知は行なわず,その代わりに,機器制御モジュールに対して,所定のアプリケーションを動作させることを要求するコマンドを発行し,機器制御モジュールは,コントローラから発行されたコマンドに応じて,所定のアプリケーションを起動させて指定の処理を実行する一方,
ステップS103で登録されていないと判別すると,コントローラは,決定イベントをWebブラウザに対して通知し,Webブラウザは,このときのフォーカス対象領域に対応するタグが示すURLにアクセスして,新たなWebページのHTMLコンテンツを取得して再生出力する
方法。」

(2)引用例2
本願の優先権主張日前に頒布され,原審の拒絶査定の理由である平成25年12月25日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2006-276939号公報(平成18年10月12日出願公開,以下,「引用例2」という。)には,関連する図面とともに以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

(オ)「【0012】
図4,図5は,本発明の実施例のロジックフローを示す図である。なお,図4はシステム起動依頼からシステム起動アプレット表示までのロジックフローを示し,図5はシステム起動用アプレット表示からシステム起動までのロジックフローを示しており,図4?図5のA-Aの部分が従来とは異なる流れの部分である。
図4において,クライアント1のブラウザが起動されると,システム起動依頼がサーバ2に通知され,サーバ2はメニュー用HTMLをクライアント1にダウンロードする。
これにより,クライアントの画面上には,例えば「Aシステム」,「Bシステム」,「Cシステム」のようなメニュー画面20が表示される。
ユーザが上記メニュー画面20のアンカーをクリックすると,Java (登録商標)Scriptにてシステム起動用HTML表示用のウィンドウ21が表示される。
システム起動用HTML表示用のウィンドウ21が表示されると,必要パラメタを付加して,システム起動用HTMLの生成をサーバ2のサーブレットに依頼する。
上記パラメータ(*1)としては,例えば以下のものがある。
・起動システムURL
・起動VMバージョン
・システム起動時必要資源 (Jar, Classの情報)
・クライアント端末識別情報」

(3)周知例1
本願の優先権主張日前に頒布され,平成26年10月15日付けの拒絶査定において引用された,特開平10-124461号公報(平成10年5月15日出願公開,以下,「周知例1」という。)には,関連する図面とともに以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

(カ)「【0029】好ましい実施例では,ウェブ共用マネージャ160とリダイレクタ(145,155)は,ブラウザ130及びオペレーティング・システム195とは独立したプロセスである。しかし,リダイレクタ・プロセス(145,155)は登録機能130Fを介してブラウザ130に接続し,フック191を介してオペレーティング・システム195に接続し,それによってブラウザからイベント情報にアクセスすることができ,オペレーティング・システム195が使用するメモリ165に記憶されているメッセージとイベント情報へのアクセスとそれらの供給を行うことができる。好ましい実施例では,オペレーティング・システムがメッセージ及び(メッセージの形の)要求/イベント情報の記憶とアクセスを行うために使用するメモリ165は,メッセージ/イベント・キュー(または単にキュー)165である。リダイレクタ(145,155)は,要求/事象とメッセージがソースと受信側の両方の共用クライアント内の正しい場所に確実にルーティングされるようにし,それによってすべての共有クライアント上に同じウェブ・ページが表示されるようにする。」

(キ)「【0045】本発明は,オペレーティング・システム195が備えるフック191という周知の機能を使用して,キュー165内のすべてのキュー項目171をキャッチする。オペレーティング・システム195と共にフックがインストールされている場合,キュー165から取り出されたすべてのキュー項目171がフック191に渡される。フック191は,メッセージ・リダイレクタ155がメッセージ・タイプ166を検査156してメッセージ・リダイレクタが「インタレストを持っている」かどうか,すなわちキュー項目171を処理するかどうかを判断することができるようにする。メッセージ・リダイレクタ155がインタレストを持っていない場合,そのキュー項目171をオペレーティング・システム191がさらに処理することができるようにオペレーティング・システム195に制御が戻される。しかし,メッセージ・リダイレクタ155がインタレストを持っている場合156,メッセージ・リダイレクタ155がそのキュー項目を処理し,その後でオペレーティング・システムがそのキュー項目171をその宛先,たとえばアプリケーションに配送することができるようになる。メッセージ・リダイレクタ155がその処理を完了した後,オペレーティング・システム195に制御が戻され,キュー項目171がさらに処理される。メッセージ・リダイレクタ155は,受信側共用クライアント150B上でソース共用クライアント150Aにあるウェブ・ページを再作成するために必要なメッセージ(CCIリダイレクタが扱うDDEメッセージは含まない)にインタレストを持つ。」

(4)参考文献1
本願の優先権主張日前に頒布された,特開2007-286905号公報(平成19年11月1日出願公開,以下,「参考文献1」という。)には,関連する図面とともに以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

(ク)「【0034】
オペレーティングシステム利用フック手段02は,アプリケーション01がオペレーティングシステム03のファイルに関するAPI呼び出しを検知する手段である。例えば,ファイルを利用する場合に,まず,ファイルを開けるAPIであるOPENコマンドが呼び出される。オペレーティングシステム利用フック手段02は,このOPENコマンドを検知する。通常,APIの呼び出しは,ファイル名などの引数を持っている。オペレーティングシステム利用フック手段02は,コマンドの呼び出しを検知した際に,ファイル名などの引数も検出する。
オペレーティングシステム利用フック手段02の実現は,オペレーティングシステム03で標準に備わっている「フック」と呼ばれる機能を利用すればよい。「フック」とは,アプリケーション内で発生しているイベントや,アプリケーションによるオペレーティングシステムのAPI呼び出しを,外部のプログラムが横取りする仕組みである。Windows(登録商標)の場合は,GUIの操作を取得する,MSAA(Microsoft Active Accessibility)や,アプリケーション内部で発生しているイベントを取得するメッセージフックや,アプリケーションからOSへのシステムコールを取得するAPIフックなどが開示されている。本実施例では,APIフックを利用すれば,ファイルのアクセスを検知することができる。なお,APIフックではファイルアクセス以外のAPI呼び出しも横取りできる。本実施例で必要なのはファイルアクセスだけであるため,オペレーティングシステム利用フック手段02は,ファイルアクセスのAPIの名前を記憶しておき,ファイルアクセスではないAPIの呼び出しは無視するようにする必要がある。」

(5)参考文献2
本願の優先権主張日前に頒布された,特開平11-85690号公報(平成11年3月30日出願公開,以下,「参考文献2」という。)には,関連する図面とともに以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

(ケ)「【0037】PROXYサーバでHTMLデータに付加されるJavaScriptスクリプト24Jには,有効情報の2つの表示形態の実行手順が用意されている。第1の表示形態は,有効情報コンテンツ作成者6に指定された表示時間における有効情報のヘッドライン表示と,利用者からの要求に応じて,より詳細な概要や本文の提供を行なう表示形態である。第2の表示形態は,定常的にスクリプトを動作させ,コンテンツサーバに登録されている複数の有効情報コンテンツを連続的に表示する表示形態である。WWWプラウザ35は,JavaScriptスクリプト24Jに記述されている実行手順にしたがって,利用者によるコンソール入力に対応して2つの表示形式の一方を選択して実行する。」

(6)参考文献3
本願の優先権主張日前に頒布された,特開平11-161663号公報(平成11年6月18日出願公開,以下,「参考文献3」という。)には,関連する図面とともに以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

(コ)「【0049】図4には,DVDビデオとHTMLコンテンツとの連動表示画面の一例が示されている。図4(a)に示されているように,画面上には,DVD再生制御プログラム116によって提供されるDVDビデオと,WWWブラウザ117によって提供されるHTMLコンテンツとが同時に表示されている。この状態で,例えばユーザがリモコンユニット上に設けられたWeb表示用キーを押すことなどによるリモコン操作でHTMLコンテンツの連動表示を指定するための入力操作や,DVDビデオの映像上に表示されているWebボタンをリモコン,キーボード,マウスなどによって選択する操作などを行うと,図4(b)に示されているように,現在再生中の動画映像に関連するHTMLコンテンツが自動的に外部のWWWサーバから取得されて画面表示される。」

(7)参考文献4
本願の優先権主張日前に頒布された,特開2007-88716号公報(平成19年4月5日出願公開,以下,「参考文献4」という。)には,関連する図面とともに以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

(サ)「【0010】
図28は,TV番組と連携Web画面とを同時に表示する表示システムの一例を示したブロック図である。
【0011】
図28において,この表示システムは,TV番組を放送するTV局1と,関連情報データベース(DB)2と,サービスサーバ(コンテンツ提供サーバ)3と,表示装置104とを含む。」

(シ)「【0020】
この状況下で,表示装置104のユーザは,TVのチャンネルの変更時あるいはTV番組の視聴開始時に,視聴TV番組に関する情報を得たくなると,表示装置104の情報取得ボタンを押下する。なお,視聴TV番組は,現在TV局1で放送中のTV番組でもよいし,録画再生中のTV番組でもよい。
【0021】
表示装置104は,情報取得ボタンが押下されると,視聴TV番組の識別情報(チャンネルと放送日時)を,サービスサーバ3に送出する。
【0022】
サービスサーバ3は,その識別情報を受け付けると,その識別情報に関連づけられた詳細情報コンテンツのURLを,関連情報データベース2から読み取り,その読み取られたURLを表示装置104に返す。
【0023】
表示装置104は,そのURLを受け付けると,その受け付けられたURLにアクセスして,サービスサーバ3を介して詳細情報コンテンツを取得し,その取得された詳細情報コンテンツを連携Web画面上で表示する。この詳細情報コンテンツは,視聴TV番組に関する関連情報(例えば,TV番組関連グッズの通販情報またはTV番組関連商品の広告)を示す。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(a)
(a-1)引用発明の,Webブラウザが再生出力する「Webページ」は,“HTMLコンテンツ”によるものであり,“現在のフォーカス対象領域”という“領域”を有するものであるから,引用発明の“現在のフォーカス対象領域”が本願発明の「HTML領域」に相当する。
そして,引用発明では,“Webページを再生出力している状態”で,「実行する」ボタンBT1が操作されると,“現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容”が指定タグとして登録されているか否かを判別しているから,引用発明の“「実行する」ボタンBT1が操作される”という“イベント”に対応して“発生した”“情報”である「現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容」が本願発明の「HTML領域で発生したイベント情報」に相当する。
(a-2)引用発明は,「ステップS103で登録されていないと判別すると,コントローラは,決定イベントをWebブラウザに対して通知し,Webブラウザは,このときのフォーカス対象領域に対応するタグが示すURLにアクセスして,新たなWebページのHTMLコンテンツを取得して再生出力する」ものであるところ,このWebブラウザの処理は,“HTMLページ”で“動作”する“ウェブアクション”といえるから,引用発明の「フォーカス対象領域に対応するタグが示すURLにアクセスして,新たなWebページのHTMLコンテンツを取得して再生出力する」処理が本願発明の「HTMLページの動作であるウェブアクション」に相当する。
(a-3)引用発明の「ネットワーク端末装置」は,「Webサーバにネットワークを介して接続され」たものであり,“HTMLコンテンツによるWebページを再生出力するWebブラウザ”を備えているから,“サーバ”に接続された“クライアント”といえるものである。
引用発明の「指定の処理」は,ネットワーク端末装置において所定の“アプリケーション”を起動させて実行することができるものであるから,本願発明の「ビジネスロジック」に対応するものである。
また,引用発明において,「指定の処理」を実行するための“アプリケーション”が,ネットワーク端末装置(クライアント)を“制御”していることは自明のことである。
また,引用発明の“機器制御モジュール”は,“アプリケーション”を起動させることによって,「指定の処理」を実行するものであるから,引用発明の「機器制御モジュール」が本願発明の「アプリケーション駆動ファイル」に相当する。
そして,引用発明の“指定の処理”(ビジネスロジック)は,機器制御モジュール(アプリケーション駆動ファイル)によって“実行され”るものである。
以上のことから,引用発明の「指定の処理」が本願発明の「アプリケーション駆動ファイルにより実行され,クライアントを制御するビジネスロジック」に相当する。
(a-4)引用発明は,ステップS103で,“現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容”(HTML領域で発生したイベント情報)が指定タグとして登録されているか否かを判別し,登録されていないと判別すると,“このときのフォーカス対象領域に対応するタグが示すURLにアクセスして,新たなWebページのHTMLコンテンツを取得して再生出力”(HTMLページの動作であるウェブアクション)し,登録されていると判別すると,“現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容に対応付けられている指定の処理”(クライアントを制御するビジネスロジック)を実行するものである。
してみれば,引用発明のステップS103の「指定タグテーブルを参照して,現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容が指定タグとして登録されているか否かを判別」することが,本願発明の「HTML領域で発生したイベント情報がHTMLページの動作であるウェブアクションかアプリケーション駆動ファイルにより実行され,クライアントを制御するビジネスロジックかを判断」することに相当する。

(b)引用発明では,ステップS103で登録されていると判別すると,“現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容に対応付けられている指定の処理”(ビジネスロジック)を実行するから,引用発明の「ステップS103で登録されていると判別する」場合が,本願発明の「イベント情報がビジネスロジックの場合」に相当する。
そして,引用発明では,「ステップS103で,登録されていると判別すると」,“コントローラは,Webブラウザに対してイベント通知は行わ”ないことから,“コントローラ”は,「現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容」(イベント情報)をWebブラウザに渡すことなく,自ら“保持”している,すなわち“フック”しているものである。
してみれば,引用発明の「ステップS103で登録されていると判別すると・・・コントローラは,Webブラウザに対してイベント通知は行わず」と本願発明の「イベント情報が前記ビジネスロジックの場合,オペレーティングシステムコンポーネントを用いて前記イベント情報をフックし」とは,後記する点で相違するものの,「イベント情報がビジネスロジックの場合,前記イベント情報をフック」する点で共通している。

(c)
(c-1)引用発明の「現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容」(イベント情報)は,上記(b)の検討から,“フックした”ものであるから,本願発明の「フックしたイベント情報」に相当する。
(c-2)引用発明では,“ステップS103で指定タグテーブルを参照して,現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容が指定タグとして登録されているか否かを判別し,登録されていると判別すると,指定タグテーブルを参照して,現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容に対応付けられている“指定の処理”(ビジネスロジック)を実行するものであるから,引用発明の指定タグテーブルにおいて,“指定の処理”(ビジネスロジック)と対応付けて登録されている「指定タグ」が本願発明の「所定のビジネスロジックに関連する命令語」に相当し,また,引用発明の「現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容が指定タグとして登録されていると判別する」場合が,本願発明の「フックしたイベント情報が所定のビジネスロジックに関連する命令語の場合」に相当する。
(c-3)上記(c-1),(c-2)の検討から,引用発明の「ステップS103で指定タグテーブルを参照して,現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容が指定タグとして登録されているか否かを判別し,登録されていると判別すると,・・・現在のフォーカス対象領域に対応するタグの内容に対応付けられている指定の処理・・・を実行」することが本願発明の「フックしたイベント情報が所定のビジネスロジックに関連する命令語の場合,前記命令語に対応するビジネスロジックを実行」することに相当する。

(d)
(d-1)引用発明のWebページは,「HTMLコンテンツ」によるものであり,当該Webページにおいて“「実行する」ボタンBT1”が操作されると所定の処理が実行されるものであるから,引用発明の「HTMLコンテンツ」が本願発明の「HTMLベースのアプリケーション」に相当する。
また,上記(a)で検討したように,引用発明の“HTMLコンテンツによるWebページ”は,“クライアントを制御するビジネスロジック”と“HTMLページの動作であるウェブアクション”とを実行することが可能なものであるから,結局,引用発明の“HTMLコンテンツによるWebページ”は,「クライアントでのビジネスロジックの実行」と「ウェブアクションの制御」が“可能な”ものである。
してみれば,引用発明の「HTMLコンテンツ」が本願発明の「ウェブアクションの制御とクライアントでのビジネスロジックの実行が可能なHTMLベースのアプリケーション」に相当する。
(d-2)上記(a-1)で検討したように,引用発明の“現在のフォーカス対象領域”が本願発明の「HTML領域」に相当する。
そして,引用発明では,“現在のフォーカス対象領域”(HTML領域)に対応する「実行する」ボタンBT1が操作されると,これに対応して“所定のアプリケーション”が起動されることから,“HTMLベースのアプリケーションでのHTML領域とアプリケーションとの相互運用”が行われているということができる。
(d-3)上記(d-1)及び(d-2)の検討から,引用発明の「Webブラウザが,「実行する」ボタンBT1が表示されているHTMLコンテンツによるWebページを再生出力している状態で,「実行する」ボタンBT1が操作されると・・・所定のアプリケーションを起動させて指定の処理を実行する・・・方法」と本願発明の「ウェブアクションの制御とクライアントでのビジネスロジックの実行が可能なHTMLベースのアプリケーションでのHTML領域とアプリケーション領域との相互運用方法」とは,後記する点で相違するものの,「ウェブアクションの制御とクライアントでのビジネスロジックの実行が可能なHTMLベースのアプリケーションでのHTML領域とアプリケーションとの相互運用方法」である点で共通している。

そうすると,本願発明と引用発明とは,

「HTML領域で発生したイベント情報がHTMLページの動作であるウェブアクションかアプリケーション駆動ファイルにより実行され,クライアントを制御するビジネスロジックかを判断し,
前記イベント情報が前記ビジネスロジックの場合,前記イベント情報をフックし,
フックした前記イベント情報が所定のビジネスロジックに関連する命令語の場合,前記命令語に対応するビジネスロジックを実行することを特徴とするウェブアクションの制御とクライアントでのビジネスロジックの実行が可能なHTMLベースのアプリケーションでのHTML領域とアプリケーションとの相互運用方法。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
イベント情報を「フック」するために,本願発明では,「オペレーティングシステムコンポーネントを用いて」いるのに対して,引用発明では,コントローラを用いている点。

[相違点2]
本願発明では,「特定のビジネスロジックが実行されると,HTMLに含まれたジャバスクリプトを用いて実行された前記特定のビジネスロジックの結果を前記HTML領域に表示する」のに対して,引用発明は,そのような構成となっていない点。

[相違点3]
本願発明は,「HTML領域とアプリケーション領域との相互運用方法」であるのに対して,引用発明は,HTML領域とアプリケーションとの相互運用方法である点。

5.判断
上記各相違点について検討する。

[相違点1]について
オペレーティングシステムが「フック機能」を備えること,また,当該「フック機能」を用いてイベント情報を「フック」することは,例えば周知例1(上記(カ)及び(キ)を参照)や参考文献1(上記(ク)を参照)等に記載されるように本願の優先権主張日前には情報処理の技術分野における周知技術であったと認められる。
また,オペレーティングシステムなどのソフトウェアの機能をコンポーネント化して利用できるようにすることは,プログラミングの技術分野における常套手段である。
してみれば,引用発明において,コントローラが実行しているイベント情報の「フック機能」を,オペレーティングシステムのコンポーネント化された「フック機能」を用いて実現するようにすること,すなわち,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
引用発明の「指定の処理」は,ユーザが“「実行する」ボタンBT1”を操作することによって実行されるものであるから,「指定の処理」が実行された結果をユーザに通知するように構成することは普通に想定されることである。
そして,当該結果をWebページ内のどこに表示するかは,当業者が適宜選択しうる設計的事項である。
また,Webページに情報を表示する際に,HTMLに含まれたジャバスクリプトを用いることは,例えば引用例2(上記(オ)を参照)や参考文献2(上記(ケ)を参照)等に記載されるように本願の優先権主張日前には情報処理の技術分野における周知技術であったと認められる。
してみれば,引用発明において,指定の処理の実行結果をジャバスクリプトを用いてHTML領域に表示すること,すなわち,相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3]について
引用発明の“「実行する」ボタンBT1”は,これを操作するとアプリケーションが起動されて実行されるものであるから,上記“「実行する」ボタンBT1”の“領域”は,“アプリケーション”に関連した“領域”,すなわち,「アプリケーション領域」とも言いうるものである。
そうすると,引用発明も,「「実行する」ボタンBT1が表示されているHTMLコンテンツによるWebページ」のうち,“「実行する」ボタンBT1”の“領域”(アプリケーション領域)と,それ以外の“フォーカス対象領域”(HTML領域)との相互運用をしていると見ることもできる。
してみれば,引用発明と本願発明とは,相違点3に関して,実質的に相違するものとはいえない。
また,仮に,本願発明の「アプリケーション領域」が本願の第7図に記載されているような,HTML領域とは異なる領域のことであると限定的に解釈したとしても,HTML領域と連携して動作するアプリケーションの表示領域をHTML領域とは異なる領域に設けることは,例えば参考文献3(上記(コ)を参照)や参考文献4(上記(サ)及び(シ)を参照)等に記載されるように本願の優先権主張日前には情報処理の技術分野における周知技術であったと認められるから,引用発明のフォーカス対象領域(HTML領域)を含むWebページとは異なる領域にアプリケーション領域を設けて,「HTML領域とアプリケーション領域との相互運用」を行うように構成することも,当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-14 
結審通知日 2016-03-15 
審決日 2016-03-29 
出願番号 特願2010-9692(P2010-9692)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 俊範漆原 孝治篠塚 隆杉浦 孝光  
特許庁審判長 石井 茂和
特許庁審判官 辻本 泰隆
須田 勝巳
発明の名称 ウェブアクションとクライアントの制御とクライアントでのビジネスロジックの実行が可能なHTMLベースのアプリケーションでのHTML領域とアプリケーション領域との相互運用方法  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ