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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H05K
管理番号 1318056
異議申立番号 異議2016-700387  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-02 
確定日 2016-08-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第5806030号発明「回路基板およびこれを備える電子装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5806030号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5806030号の請求項1及び2に係る特許についての出願(以下「本件出願」という。)は、平成23年7月28日に特許出願され、平成27年9月11日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:同年11月10日)がされ、その特許に対し、平成28年5月2日に特許異議の申立てがされたものである。

2 本件特許発明
特許第5806030号の請求項1及び2の特許に係る発明(以下「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
セラミック焼結体の少なくとも一方主面に、主成分が銅である金属配線層を備え、該金属配線層の上方に電子部品が搭載される回路基板であって、前記金属配線層の任意の断面において、空孔の平均径が2μm以上10μm以下であり、前記空孔の平均面積占有率が1面積%以上4面積%以下であり、前記空孔の平均重心間距離が7μm以上15μm以下であることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
請求項1に記載の回路基板に電子部品を搭載してなることを特徴とする電子装置。」

3 申立理由の概要
(1)申立理由1
本件特許発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明と同一であるか、又は甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証、甲第3号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、請求項1及び2に係る特許は、取り消すべきものである。

(2)申立理由2
特許明細書の発明の詳細な説明の実施例1及び2において、金属配線層12となる金属粉末の具体的構成が何ら記載されておらず、かつ周知のものでもないから、特許明細書は当業者が発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
したがって、請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。

〔証拠方法〕
甲第1号証:特開2002-176236号公報(以下「刊行物1」という。)
甲第2号証:特開2007-115852号公報(以下「刊行物2」という。)
甲第3号証:特開平2-291604号公報(以下「刊行物3」という。)

4 刊行物
(1)本件出願の出願前に頒布された刊行物1には、「多層セラミック基板」に関して、図面(特に、図1参照)とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ビアホール導体用組成物、ならびに、それを用いる多層セラミック基板およびその製造方法に関するもので、特に、多層セラミック基板におけるビアホール導体とセラミック層との焼成時の収縮挙動差によるクラック等の構造欠陥の発生を抑制するための改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】多層セラミック基板は、その上に種々の電子部品を搭載したり、その内部に受動素子を内蔵したりしながら、これら電子部品等を配線するために用いられ、より具体的には、ICやLSI等の半導体素子を収納するパッケージ部品において、また、複数種類の電子部品を搭載した混成集積回路装置において用いられている。多層セラミック基板に備えるセラミック層のための材料としては、電気絶縁性や化学的安定性等の特性に優れていることから、アルミナ質セラミックが多用されている。」

イ 「【0023】
【発明の実施の形態】図1は、この発明の一実施形態による多層セラミック基板1を図解的に示す断面図である。
【0024】多層セラミック基板1は、積層された複数のセラミック層2を備えている。このような多層セラミック基板1に関連して設けられる配線導体として、セラミック層2の特定のものの主面に沿って、いくつかの導体膜3が形成され、また、セラミック層2の特定のものを貫通して、いくつかのビアホール導体4が設けられている。
【0025】この多層セラミック基板1において、セラミック層2は、たとえばBaO-Al_(2)O_(3) -SiO_(2)混合セラミックを含む低温焼成セラミック材料のように、1050℃以下の温度で焼結可能な低温焼成セラミック材料を含む組成を有するようにされる。
【0026】図2は、図1に示された特定のセラミック層2を貫通するように設けられたビアホール導体4を拡大して示す断面図である。
【0027】図2を参照して、ビアホール導体4内には、複数の空孔5が形成されている。この空孔率は、ビアホール導体4全体において、0.3?40.0体積%であり、また、空孔5の最大空孔径は、0.1?30.0μmである。さらに、ビアホール導体4の外周部分6であって、ビアホール導体4とセラミック層2との界面から半径方向に測定したビアホール導体4の半径の15%の範囲においては、ビアホール導体4の空孔率が0.5?10.0体積%となるようにされる。すなわち、ビアホール導体4の中心付近に空孔5がより多く存在するようにされる。
【0028】このような多層セラミック基板1を製造するため、次のような工程が実施される。
【0029】まず、ビアホール導体4を形成するためのビアホール導体用組成物が用意される。ビアホール導体用組成物は、Cu、CuO、Cu_(2)O、Cu-CuO混合物、Cu-Cu_(2)O混合物、およびCuO-Cu_(2)O混合物から選ばれた少なくとも1種を主成分とし、平均粒径0.1?30.0μmのタングステンまたは無機ホウ素化合物のような無機空孔形成剤を、主成分と当該無機空孔形成剤との合計に対して0.5?30.0重量%添加したものである。上述の主成分については、好ましくは、平均粒径2.0?4.0μmの粉末が用いられる。」

ウ 「【0032】また、導体膜3を形成するための導電性ペーストが用意される。この導電性ペーストとしては、たとえば、平均粒径2.0?4.0μmの銅粉末を主成分とするものが用いられる。なお、この導電性ペーストにおいて、導電成分として、銅のほかに、アルミニウム、ニッケル、銀、金もしくはパラジウム、またはこれらの少なくとも1種を含む合金が用いられてもよい。また、焼成時の収縮挙動の制御や印刷性および接合強度の向上を目的として、樹脂、ガラスまたはその他の無機物を添加したり、これら樹脂等によって導電成分を表面処理したりしてもよい。」

エ 「【0036】次に、このようにして得られた複数のセラミックグリーンシートのうちの特定のものに、たとえば、ドリル加工、パンチ加工、レーザ加工等の方法によって、ビアホール導体4を設けるための貫通孔が形成される。そして、これら貫通孔には、印刷等の方法を適用して、前述したビアホール導体用組成物ペーストが充填される。
【0037】また、複数のセラミックグリーンシートの特定のものの主面上には、前述した導電性ペーストが、たとえばスクリーン印刷法によって付与され、それによって、導体膜3となるべき導電性ペースト膜が形成される。【0038】次に、複数のセラミックグリーンシートが積層され、たとえば、温度80℃および圧力200kg/cm^(2)の条件でプレスすることによって、生の積層体が得られる。この生の積層体は、セラミックグリーンシートによって与えられた複数の積層されたセラミックグリーン層を備え、セラミックグリーン層の特定のものに貫通孔が形成され、貫通孔にビアホール導体用組成物が充填されている。」

オ 「【0040】次に、生の積層体は焼成され、それによって、多層セラミック基板1が得られる。この焼成工程の詳細について、前述したビアホール導体用組成物に含まれる無機空孔形成剤がタングステンの場合と無機ホウ素化合物の場合とに分けて説明する。」

カ 「【0050】また、得られた多層セラミック基板1において、ビアホール導体4内の空孔5について、前述したように、最大空孔径は0.1?30.0μmとなるようにされる。
【0051】この最大空孔径が0.1μmより小さい場合には、ビアホール導体4とセラミック層2との間での収縮量の差による応力の緩和が不十分であり、ビアホール導体4とセラミック層2との界面において剥離が生じやすい。他方、最大空孔径が30.0μmより大きい場合には、ビアホール導体4の側壁とセラミック層2との間で十分な密着強度が得られず、そのため、熱的信頼性に乏しくなる。
【0052】また、前述したように、ビアホール導体4全体の空孔率は0.3?40.0体積%となるようにされる。
【0053】最大空孔径が0.1?30.0μmとなるようにされても、ビアホール導体4での空孔率が0.3体積%より低い場合には、ビアホール導体4とセラミック層2との間での収縮量の差による応力の緩和が不十分となり、ビアホール導体4とセラミック層2との界面において剥離が生じやすい。
【0054】他方、空孔率が40.0体積%を超えると、ビアホール導体4の側壁とセラミック層2との間で十分な密着強度が得られず、そのため熱的信頼性に劣ることになる。
【0055】また、前述したように、ビアホール導体4の外周部分6であって、ビアホール導体4とセラミック層2との界面から半径方向に測定したビアホール導体4の半径の15%の範囲において、ビアホール導体4の空孔率が0.5?10.0体積%となるようにされる。
【0056】このような範囲を外れると、ビアホール導体4の側壁とセラミック層2との間で十分な密着強度が得られなくなる。なお、より高い密着強度を得るためには、ビアホール導体4の半径の5%の範囲において、ビアホール導体4の空孔率が0.5?1.0体積%とされることがより好ましい。」

キ 上記アの「多層セラミック基板は、その上に種々の電子部品を搭載したり」(段落【0002】)との記載及び図1からみて、多層セラミック基板1の導体膜3の上方に電子部品が搭載されると認められる。

これらの記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合し、本件特許発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている。

「セラミック層2の少なくとも一方主面に、主成分が銅である導体膜3を備え、該導体膜3の上方に電子部品が搭載され、かつセラミック層2を貫通して主成分が銅であるビアホール導体4を備える多層セラミック基板1であって、
ビアホール導体4内には、複数の空孔5が形成され、この空孔率は、ビアホール導体4全体において、0.3?40.0体積%であり、また、空孔5の最大空孔径は、0.1?30.0μmであり、さらに、ビアホール導体4の外周部分6であって、ビアホール導体4とセラミック層2との界面から半径方向に測定したビアホール導体4の半径の15%の範囲においては、ビアホール導体4の空孔率が0.5?10.0体積%である多層セラミック基板1。」

(2)本件出願の出願前に頒布された刊行物2には、「セラミック基板」に関して、図面(特に、図5参照)とともに、次の事項が記載されている。

ア 「【請求項14】
セラミック基板の少なくとも一方主面に、前記セラミック基板と同時焼成によって形成され、内部に空孔を有する突起電極を有することを特徴とする、セラミック基板。
【請求項15】
前記空孔は、前記突起電極のうち、0.1?20体積%を占めていることを特徴とする、請求項14に記載のセラミック基板。
【請求項16】
前記空孔の径が0.1?10μmφであることを特徴とする、請求項14又は15に記載のセラミック基板。」

イ 「【0011】
突起電極の先端の凹みや中間位置での口開きは、セラミック多層基板をプリント配線基板に実装する際に、接続不良等の不具合の原因となる。
【0012】
本発明は、かかる実情に鑑み、焼成時の収縮を抑制しながら突起電極を形成することができる、セラミック基板の製造方法を提供しようとするものである。」

(3)本件出願の出願前に頒布された刊行物3には、「セラミック配線基板」に関して、図面(特に、第3図参照)とともに、次の事項が記載されている。

ア 「第1の発明の目的は、ワイヤーボンディング性、はんだヌレ性および基板本体との接着性を同時に充足する厚膜導体を形成することができる安価な導体形成用組成物を提供することにある。
第2の発明の目的は、第1の発明に係る導体形成用組成物による配線パターンを備えたセラミック配線基板を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
第1の発明は、基板上に形成される厚膜導体に用いられる導体形成用組成物である。この導体形成用組成物は、有機ビヒクルと、ホウケイ酸塩ガラス粉末と、銅粉末とを含んでいる。また、前記銅粉末は、粒径2.2?4.2μmの銅粉末50?75重量%と、粒径2.2μm未満の銅粉末0?50重量%と、粒径4.2μmを超える銅粉末0?12.5重量%とからなっている。」(2ページ右上欄6行?左下欄1行)

イ 「次に、本発明の導体形成用組成物を用いて基板上に厚膜導体を形成する方法について説明する。
まず、導体形成用組成物は、300?400メッシュ程度のスクリーンを用い、基板上に所定のパターンで印刷される。印刷された導体形成用組成物は、乾燥後、850?950℃で45?60分間焼成される。このようにして、基板上には銅厚膜の配線パターンが形成される。
********
第2の発明は、電子部品を載置して接続するためのセラミック配線基板である。このセラミック配線基板は、セラミック配線基板本体と、セラミック配線基板本体上に形成された第1の発明に係る導体形成用組成物を用いた配線パターンとを有している。
第2の発明に係るセラミック配線基板の一例を第3図に示す。」(3ページ左下欄19行?右下欄15行)

5 判断
(1)申立理由1について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と刊行物1発明とを対比すると、後者の「セラミック層2」は前者の「セラミック焼結体」に相当し、以下同様に、「導体膜3」は「金属配線層」に、「多層セラミック基板1」は「回路基板」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
「セラミック焼結体の少なくとも一方主面に、主成分が銅である金属配線層を備え、該金属配線層の上方に電子部品が搭載される回路基板。」
で一致し、次の点で相違する。

〔相違点〕
本件特許発明1は、「前記金属配線層の任意の断面において、空孔の平均径が2μm以上10μm以下であり、前記空孔の平均面積占有率が1面積%以上4面積%以下であり、前記空孔の平均重心間距離が7μm以上15μm以下である」のに対し、
刊行物1発明は、「セラミック層2を貫通して主成分が銅であるビアホール導体4を備え」「ビアホール導体4内には、複数の空孔5が形成され、この空孔率は、ビアホール導体4全体において、0.3?40.0体積%であり、また、空孔5の最大空孔径は、0.1?30.0μmであり、さらに、ビアホール導体4の外周部分6であって、ビアホール導体4とセラミック層2との界面から半径方向に測定したビアホール導体4の半径の15%の範囲においては、ビアホール導体4の空孔率が0.5?10.0体積%である」点。

(イ)判断
本件特許発明1の「金属配線層の任意の断面において、空孔の平均径が2μm以上10μm以下であり、前記空孔の平均面積占有率が1面積%以上4面積%以下であり、前記空孔の平均重心間距離が7μm以上15μm以下である」との事項について、特許明細書には、「本発明の回路基板は、セラミック焼結体と金属配線層とを強固に接合することができるとともに、金属配線層は、放熱性に優れ、熱膨張の緩和されたものとなるので、搭載した電子部品の動作の繰り返しによる冷熱サイクルによって、セラミック焼結体と金属配線層とが剥離することが少なく、また、電子部品の動作によって生じた熱が放熱されないことによって電子部品が故障することが少ないため、信頼性の高い回路基板とすることができる。」(段落【0009】)との記載がある。

この記載によれば、本件特許発明1の上記事項は、金属配線層の接合を強固にし、放熱性を向上させ、及び熱膨張を緩和する点において優れた効果を奏するためのものである。

これに対して、刊行物1には、導体膜3を形成するための導電性ペーストについて「導電性ペーストとしては、たとえば、平均粒径2.0?4.0μmの銅粉末を主成分とするものが用いられる。・・・また、焼成時の収縮挙動の制御や印刷性および接合強度の向上を目的として、樹脂、ガラスまたはその他の無機物を添加したり、これら樹脂等によって導電成分を表面処理したりしてもよい。」(段落【0032】)の記載があり、また、ビアホール導体4を形成するためのビアホール導体用組成物について「ビアホール導体用組成物は、Cu、CuO、Cu_(2)O、Cu-CuO混合物、Cu-Cu_(2)O混合物、およびCuO-Cu_(2)O混合物から選ばれた少なくとも1種を主成分とし、平均粒径0.1?30.0μmのタングステンまたは無機ホウ素化合物のような無機空孔形成剤を、主成分と当該無機空孔形成剤との合計に対して0.5?30.0重量%添加したものである。上述の主成分については、好ましくは、平均粒径2.0?4.0μmの粉末が用いられる」(段落【0029】)との記載がある。

これらの記載によれば、導体膜3及びビアホール導体4の主成分の平均粒径が2.0?4.0μmと共通し、導体膜3の焼成時の収縮挙動の制御や印刷性および接合強度の向上を目的として無機物を添加することが示唆されているから、導体膜3を形成するための導電性ペーストに添加される無機物として、平均粒径0.1?30.0μmのタングステンまたは無機ホウ素化合物のような無機空孔形成剤が選択され得るが、たとえ選択されたとしても、刊行物1の無機空孔形成剤は、焼成時に収縮量の差による応力を緩和し、及びセラミック層2との間の十分な密着強度を得ることができるにすぎず、導体膜3の放熱性において優れた効果を奏するとはいえない。

また、刊行物2には、突起電極の焼成時の収縮を抑制することが記載され、刊行物3には、セラミック配線基板のワイヤーボンディング性、はんだヌレ性及び基板本体との接着性を同時に充足することが記載されているが、いずれも、セラミック基板の放熱性に関する効果についての記載や示唆はない。

そうすると、本件特許発明1と刊行物1発明との上記相違点は実質的なものであるから、両者は同一ではなく、また、刊行物1発明に刊行物2及び3に記載された事項を適用しても、相違点に係る本件特許発明1の構成を導き出すことができないから、本件特許発明1は刊行物1発明及び刊行物2及び3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、本件特許発明1についての判断と同様の理由により、本件特許発明2と刊行物1発明とは同一ではなく、また、本件特許発明2は刊行物1発明及び刊行物2及び3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ まとめ
以上のとおり、本件特許発明1及び2は、刊行物1発明と同一でなく、また、刊行物1発明及び刊行物2及び3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)申立理由2について
特許明細書には、「本実施形態の回路基板10を構成する金属配線層12は、銅やアルミニウムを主成分とすることが好ましく、特に銅を主成分とすることが好ましい。」(段落【0019】)との記載、「金属配線層12となる金属ペーストを準備する。この金属ペーストは、銅やアルミニウムを主成分とする金属粉末、ガラス粉末、有機ビヒクルを含有する。また、必要に応じて金属酸化物を加えても良い。そして、金属粉末としては、平均粒径が1.5μm以上3.5μm以下である第1の金属粉末を65質量%以上75質量%以下、平均粒径が第1の金属粉末の平均粒径の13.5%以上16.5%以下である第2の金属粉末を25質量%以上35質量%以下で混合した金属粉末を用いる。」(段落【0024】及び段落【0025】)との記載、実施例1に関して「各試料の作製のために使用する金属ペーストについては、第1の金属粉末および第2の金属粉末を用いて、表1に示す平均粒径および混合比率とした金属粉末を86質量%と、R_(2)O-SiO_(2)-B_(2)O_(3)系のガラス粉末を3質量%と、有機ビヒクルを11質量%(有機バインダであるアクリル樹脂を8.5質量%と、有機溶剤であるテルピネオールを2.5質量%)とを調合し、金属ペーストを作製した」(段落【0043】)との記載、実施例2に関して「次に、ZnまたはBiを含むガラスを添加した金属ペーストを用いて作製した試料(以下、Bi有り試料およびZn有り試料と)およびBiを含まないガラスを添加した金属ペーストを用いて作製した試料(以下、Bi,Zn無し試料)について、ヒートサイクル試験を行なった。なお、ガラス粉末として、R_(2)O-SiO_(2)-B_(2)O_(3)系、R_(2)O-SiO_(2)-B_(2)O_(3)-ZnO系またはR_(2)O-SiO_(2)-B_(2)O_(3)-Bi_(2)O_(3)系を用いたこと以外は、製造方法、試験方法ともに実施例1と同様の方法で行なった」(段落【0052】)との記載があり、表1には、第1及び第2の金属粉末それぞれの平均粒径及び混合比率が記載されている。

これらの記載からみて、特許明細書には金属配線層12となる金属粉末の具体的構成が明確に記載されているから、特許明細書は当業者が発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。

6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-07-22 
出願番号 特願2011-165650(P2011-165650)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (H05K)
P 1 651・ 121- Y (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉澤 秀明  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 内田 博之
冨岡 和人
登録日 2015-09-11 
登録番号 特許第5806030号(P5806030)
権利者 京セラ株式会社
発明の名称 回路基板およびこれを備える電子装置  
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