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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1318061
異議申立番号 異議2016-700190  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-04 
確定日 2016-08-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第5785832号発明「凍結乾燥甘酒の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5785832号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5785832号の請求項1ないし3に係る特許(以下「本件特許」という。)に係る出願(特願2011-199105号)は、平成23年9月13日に出願され、平成27年7月31日に特許権の設定登録がなされたところ、平成28年3月4日に異議申立人大藪朋子により特許異議の申立てがなされ、当審において平成28年5月19日付けで取消理由を通知した。これに対し、本件特許権者より、平成28年6月22日付けで意見書が提出された。

第2 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?請求項3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。以下、本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などという。
【請求項1】
お湯又は水により復元させて喫食することができる凍結乾燥甘酒の製造方法であって、
ペースト状の果実を含有する甘酒原料を凍結乾燥処理することを特徴とする、凍結乾燥甘酒の製造方法。
【請求項2】
前記甘酒原料が米麹を含有している、請求項1記載の凍結乾燥甘酒の製造方法。
【請求項3】
前記甘酒原料には、さらに果肉を添加してある、請求項1又は2に記載の凍結乾燥甘酒の製造方法。

2 取消理由の概要
本件特許に対し、平成28年5月19日付けで通知した取消理由は、概ね、次のとおりである。
(取消理由)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(引用例)
引用例1:特開2003-24026号公報(異議申立人提出の甲第10号証)
引用例2:特開2009-273410号公報(同甲第1号証)
引用例3:食品成分データベース(文部科学省、http://fooddb.mext.go.jp/index.pl)により調査した、野菜及び果実の食物繊維量を示す表(同甲第4号証)
引用例4:Drying Technology,24:457-463,2006(同甲第2号証)
引用例5:LABCONCO社カタログ、2010年(同甲第3号証)
引用例6:Food Hydrocolloids 18(2004)825-835(同甲第5号証)
引用例7:特開2004-236612号公報(同甲第6号証)
引用例8:特開2010-99058号公報(同甲第7号証)
引用例9:特開2008-109919号公報(同甲第8号証)
引用例10:特開昭51-148070号公報(同甲第11号証)
引用例11:特開昭64-34272号公報(同甲第12号証)
引用例12:特開2009-148254号公報(同甲第14号証)

3 判断
(1) 引用例に記載された事項
ア 引用例1
(ア) 引用例1には、以下の事項が記載されている。
a 「液状又はペースト状食品原液をシャーベット状化したのち、予備凍結し、次いで凍結乾燥処理することを特徴とする易復元性凍結乾燥食品の製造方法。」(【請求項1】)
b 「本発明は、易復元性凍結乾燥食品の製造方法及び易復元性凍結乾燥食品に関する。さらに詳しくは、本発明は、お湯又は水で復元させる場合に、溶解性が良好で容易に復元し得る凍結乾燥食品を効率よく製造する方法及びこの方法により得られた易復元性凍結乾燥食品に関するものである。」(【0001】)
c 「しかしながら、お粥、コーンスープ、ルー、甘酒、しるこなど、澱粉質、増粘多糖類、不溶性固形分などを多く含む液状又はペースト状食品原液を凍結乾燥させた場合、その凍結乾燥食品は、お湯又は水で復元させる際、お湯又は水の食品中心部への浸透が遅く、溶解性が悪いという問題が生じる。これは、凍結乾燥食品の表面付近で先に溶解した部分がゲル化あるいは糊化して未溶解部分の孔を塞ぎ、その結果該食品がダマ状となり、速やかに溶解分散することができないためである。」(【0005】)
d 「本発明の方法においては、被乾燥食品として、液状又はペースト状食品原液が用いられる。この液状又はペースト状食品の種類としては、シャーベット状化及び凍結乾燥し得るものであればよく、特に制限されず、様々なものに本発明の方法を適用することができるが、特に澱粉質、増粘多糖類、不溶性固形分などを多く含む液状又はペースト状食品に、本発明の方法を適用するのが好ましい。
このような液状又はペースト状食品としては、例えばお粥、コーンスープ、各種ルー(カレーライス、ハヤシライス、シチュー用など)、甘酒、しるこ、サンドイッチ用各種ペースト又はスプレッドなどを挙げることができる。・・・」(【0010】、【0011】)
e 「本発明の方法においては、前記の液状又はペースト状食品原液を、まずシャーベット状化する。ここでいうシャーベット状化とは、微細な氷結晶と空気を混在させた集合体にすることである。・・・
次に、前記のシャーベット状化された食品を予備凍結したのち、凍結乾燥処理する。・・・予備凍結としては、通常-20?-40℃の範囲の温度において、急速凍結する方法が、好ましく用いられる。また、凍結乾燥処理としては、前記-20?-40℃の予備凍結品を、100?1Pa程度の真空下に載置し、該凍結品中の氷を昇華させ、最終的には室温?70℃程度まで昇温して乾燥させる方法を用いることができる。
このようにして得られた本発明の凍結乾燥食品は、連続相をなしている空間部が形成され、お湯又は水で復元する際、それらが食品内部に容易に浸透するので、溶解性が良好となる。図2は、本発明の方法で得られた凍結乾燥食品における組織の模式図であり、空間部1が食品マトリックス2中で連続相をなしている状態が示されている。」(【0012】?【0014】)
f 「実施例1
酒粕100g、砂糖50g、食塩2g及び水248gを混合し、加熱して均質に分散溶解させ、凍結乾燥用甘酒原液400gを調製した。・・・次に、シャーベット製造装置・・・により、上記甘酒原液をシャーベット状化した。・・・次いで、該シャーベット状甘酒60gを充填トレイに充填し、-35℃雰囲気下で急速凍結(予備凍結)した。続いて、この予備凍結品を常法により凍結乾燥処理し(真空度:10Pa、品温:-30→70℃)、凍結乾燥甘酒を作製した。この凍結乾燥甘酒を300ミリリットルのビーカーに入れ、そこにお湯100ミリリットルを注いだところ、お湯を注いだ直後に組織が崩壊し、速やかに分散溶解した。」(【0015】)
g 「本発明によれば、液状又はペースト状食品原液をシャーベット状化後、予備凍結、次いで凍結乾燥処理することにより、連続相をなす空間部が形成された凍結乾燥食品が得られ、このものは、お湯又は水で復元する際、それらが食品内部に浸透しやすく、良好な溶解性を有している。」(【0018】)
(イ) 引用例1の記載からすると、引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「お湯又は水により復元させて喫食することができる凍結乾燥甘酒の製造方法であって、甘酒原液をシャーベット状化したのち、予備凍結し、次いで凍結乾燥処理する、凍結乾燥甘酒の製造方法。」
イ 引用例2
引用例2には、以下の事項が記載されている。
(ア) 「野菜ペーストで粘度を付けたことを特徴とする凍結真空乾燥カレー。」(【請求項1】)
(イ) 「本発明は凍結真空乾燥法による即席乾燥カレーの製造方法、及び、湯戻し後にカレーとして良好な粘度を有しながらも、溶解性が良く、かつ溶け残りが無い即席乾燥カレーに関するものである。」(【0001】)
(ウ) 「・・・工業的に用いられ且つ被食品の風味や色彩を長期間良好な状態で保存する技術として、凍結真空乾燥法が知られている。凍結真空乾燥法は、食品を-20℃以下程度で凍結させた後、真空中での水分の昇華現象により食品を乾燥する技術である。この技術は食品を乾燥させることで微生物の繁殖を防止すると共に、昇華現象によって構成される微細孔が、湯戻し時の復元性を画期的に改善したことから多くの食品に利用されてきている。具体的には即席カップめん類のトッピング剤やふりかけの具材として、その他、ブロック形状の即席スープの素、即席粥の素などが例として挙げられる。
しかしながら、・・・凍結真空乾燥法を用いることが出来ない食品が存在する。一つには、-20℃程度の冷凍環境下で凍らないジャムのような食品である。・・・凍結しない、又は冷凍下でも氷の結晶が作られないような食品は凍結真空乾燥法に適さないのである。また、凍結真空乾燥法に適さない食品としては、でん粉によって粘度を付けた高粘度のあんかけや、カレーのような食品がある。・・・凍結真空乾燥の過程ででん粉に取り込まれた水分子が昇華してしまい、でん粉を形作る網目構造の凝集が起きる。いわゆるでん粉の老化現象である。でん粉が老化して組織が凝集した凍結真空乾燥食品は、微細孔のない部位が形成された状態である。微細孔のない乾燥食品は湯を注いだだけでは復元せず、ボイルなどの再度の加熱が必要となる。・・・これまで凍結真空乾燥法の即席食品への利用は、とろみや粘度とは関係のない即席カップめんやふりかけの具材、及び、即席スープの素や即席粥など低粘度で喫食するものに留まってきたのである。」(【0002】、【0003】)
(エ) 「本発明は、このような問題点を解決して、湯戻りが大幅に改善されながらもおいしさは損なわれていない凍結真空乾燥カレーの製造方法、及び、この製法により製造された凍結真空乾燥カレーを提供することを目的としてなされたものである。」(【0008】)
(オ) 「本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、カレーの粘度付与を野菜ペーストによって行うことで、製造上の問題点、及び、凍結真空乾燥後の湯戻りが著しく改善されたカレーを得られることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。・・・野菜は本来、水和された繊維状の網目構造を持っているが、この構造を一部残した状態の野菜ペーストを選定することで、野菜ペーストによってカレーに粘度を付与することが出来る。・・・さらに、野菜が元々含有して水和状態である繊維状構造は、でん粉のα化構造よりも強固な構造体を構成しているために、凍結真空乾燥においても水分が完全に昇華してしまうことはなくある程度は保持される。この結果、繊維状構造は凝集することなく、凍結真空乾燥後も微細孔を有した多孔質構造が得られるのである。」(【0009】)
(カ) 「1つの実施形態では、野菜ペーストが減圧濃縮されたものであることを特徴とする。本発明においては、野菜ペーストに野菜が本来持っている繊維状構造が残存していることが重要であり、減圧濃縮された野菜ペーストが適している。」(【0011】)
(キ) 「本発明でいう野菜ペーストは、食物繊維物を含む野菜をペースト化したものであれば良く、用いられる野菜としては、アスパラガス、インゲン豆、枝豆、グリーンピース、オクラ、かぼちゃ、キャベツ、にんにく、牛蒡、小松菜、シソ、春菊、しょうが、ヤングコーン、セロリー、大根、竹の子、玉葱、チンゲン菜、トマト、茄子、ニラ、人参、ネギ、白菜、ピーマン、ブロッコリー、ホウレン草などが例として挙げられる。」(【0015】)
(ク)「(実施例1?6、比較例1?4のカレーの調整)
10mm×10mmにカット後、90℃2分間のボイル処理を行った玉ねぎと、次の表1に挙げる原料をカレーベース1に混合撹拌を行い、実施例1?6、比較例1?4のカレーを仕上げた。なお、オニオンペーストAは減圧濃縮法で製造された食物繊維含有率5%のオニオンペーストである。オニオンペーストBは、ダイサーで5mm×5mmにカット後、加熱撹拌によってペースト化された食物繊維含有率1.5%のオニオンペーストである。・・・
以上のようにして仕上げたカレーは、具材である玉ねぎと油脂の分離を確認しながら、5cm×5cm×2cmのプラスチックトレーに充填を行い、-20℃の冷凍庫に48時間保管して、完全に凍結させた。その後、東洋製作所の凍結真空乾燥機VF-350を用いて乾燥を行い、即席乾燥カレーを得た。」(【0024】?【0029】)

(2) 対比及び判断
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と引用発明とを、その有する機能に照らして対比すると、両者は以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「お湯又は水により復元させて喫食することができる凍結乾燥甘酒の製造方法であって、
甘酒原料を凍結乾燥処理する、凍結乾燥甘酒の製造方法。」
(相違点)
本件発明1は、「ペースト状の果実を含有する甘酒原料を凍結乾燥処理する」のに対し、引用発明は「甘酒原液をシャーベット状化したのち、予備凍結し、次いで凍結乾燥処理する」点
(イ) 上記相違点について検討するに、引用例2には、カレーの粘度付与を野菜ペーストによって行うことで、野菜ペースト由来の繊維状構造により、凍結真空乾燥後も繊維状構造が凝集することなく多孔質構造が維持され、湯戻りが良好であることが記載されている(特に、【0009】)。また、利用可能なものとして多種の野菜が列記されており(【0015】)、要するに凍結真空乾燥カレーに食物繊維物を含む野菜ペーストが含まれていることがその技術的特徴であることは、当業者であれば容易に理解できる。
しかしながら、引用発明は、甘酒原液をシャーベット状化したのち、予備凍結し、次いで凍結乾燥処理することで、お湯又は水で復元させる場合の課題を解決したものであるところ、当該課題に対して別途の手段をさらに重畳して採用する旨の示唆は特段ない。
また、引用例2に記載された技術は、「凍結真空乾燥カレー」(【請求項1】)に関するものであって、凍結真空乾燥の対象とする食品としてカレーが記載されているのみである。甘酒を含め、他の食品へ適用することの記載や示唆はないとともに、実施例として開示されているのはオニオンペーストのみであり、果実ペーストが利用可能である旨の記載や示唆もない。
そして、引用例1には、対象とする食品として甘酒とカレーのルーが併記されているが(【0011】)、実施例として開示されているのは甘酒のみである(【0015】)。カレーのルーに対し、食品原液をシャーベット状化したのち、予備凍結し、次いで凍結乾燥処理する点を適用することが可能であっても、特に甘酒とカレーのルーとの間に技術的な関連性がある旨の記載もなく、カレーに関する技術を採用することの示唆があるものではない。
そうすると、引用発明において、甘酒原料に野菜ペーストを含有させる動機付けはなく,野菜ペーストの代わりに果実ペーストを用いることも、その動機付けがあるとは認められない。
その他の引用例をみても、凍結乾燥甘酒の製造に当たり、「ペースト状の果実を含有する甘酒原料を凍結乾燥処理する」ことについて、特段記載がない。
甘酒に果実や野菜を含有させ、種々の味付けを試みることがあるとしても、そのことから、当然に引用発明において甘酒原料にペースト状の果実を含有させることの動機付けがあるとはいえない。
そして、本件発明1は、「ペースト状の果実を含有する甘酒原料を凍結乾燥処理する」ことにより、「従来の凍結乾燥甘酒よりも短い時間で喫食可能に復元することができる・・・お湯によってだけでなく、水によっても短時間で復元する・・・」(本件明細書【0011】)といった効果を発揮するものであって、この点を単なる設計的事項とすることは妥当ではない。
以上のとおり、引用発明において、「ペースト状の果実を含有する甘酒原料を凍結乾燥処理する」こと、すなわち、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できた事項とは認められない。
よって、本件発明1は、引用発明及び各引用例に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、本件発明1と引用例2に記載された技術とを対比して検討しても、既に述べたように、引用例2に記載されたものは「凍結真空乾燥カレー」であって、甘酒へ適用することの記載や示唆はないとともに、果実ペーストが利用可能である旨の記載や示唆もない。引用例1に甘酒とカレーのルーが列記されていることを考慮しても、このような引用例2に記載された技術において、対象を甘酒とすること、そして、野菜ペーストに代えて果実ペーストを採用することの動機付けがあるとはいえない。
イ 本件発明2及び3について
既に述べたとおり、本件発明1が、引用発明及び各引用例に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1を特定するための事項をすべて含む本件発明2及び3は、その余の事項を検討するまでもなく、同様に、引用発明及び各引用例に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 むすび
以上のとおりであるから、前記取消理由によっては、本件特許(請求項1ないし3に係る特許)を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-07-22 
出願番号 特願2011-199105(P2011-199105)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 名和 大輔  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 山崎 勝司
窪田 治彦
登録日 2015-07-31 
登録番号 特許第5785832号(P5785832)
権利者 アサヒグループ食品株式会社
発明の名称 凍結乾燥甘酒の製造方法  
代理人 木村 俊之  
代理人 鈴江 正二  
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