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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する A61B
管理番号 1318310
審判番号 訂正2016-390045  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2016-03-23 
確定日 2016-05-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4790091号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4790091号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第4790091号は、平成23年4月5日(優先権主張 平成22年7月29日、平成22年12月9日)に出願されたものであって、平成23年7月29日に特許権の設定登録がなされ、その後、平成28年3月23日に本件訂正審判が請求されたものである。


第2 本件訂正審判における請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第4790091号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものである。


第3 訂正の内容
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。なお、下線部は請求人が付したものであって、訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「解放性のきず」と記載されているのを、「開放性のきず」に訂正する。

(2)訂正事項2
明細書の段落【0002】、【0007】、【0008】、及び【0028】にそれぞれ「解放性のきず」と記載されているのを、「開放性のきず」に訂正する。


第4 当審の判断
1.訂正事項1について
(1)訂正の目的の適否
明細書の段落【0002】には、「従来、開放性のきずである「創(そう)」に対しては、・・・創離開を防止している。」と記載されている。
そうすると、同じく「創」に関して、特許請求の範囲の請求項1に「解放性のきずである創」と記載されているところ、当該記載における「解放性のきず」は、「開放性のきず」の誤記であることは明らかである。
よって、訂正事項1は、誤記である「解放性のきず」との記載を「開放性のきず」に訂正するものであるから、特許法第126条第1項第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。

(2)新規事項の追加の有無
明細書の段落【0002】には、「開放性のきずである「創(そう)」」と記載されているから、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされるものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3)特許請求の範囲の拡張、又は変更の有無
訂正事項1は、誤記の訂正を目的としたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)独立特許要件
訂正事項1による訂正後における特許請求の範囲の請求項1?3に記載されている事項により特定される発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせないから、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。


2.訂正事項2について
(1)訂正の目的の適否
明細書の段落【0002】には、「従来、開放性のきずである「創(そう)」に対しては、・・・創離開を防止している。」と記載されている。
そうすると、同じく「創」に関して、明細書の段落【0002】に「解放性のきずを称する創(そう)」と記載されているところ、当該記載における「解放性のきず」は、「開放性のきず」の誤記であることは明らかである。
同様の理由により、明細書の段落【0007】、【0008】及び【0028】の「解放性のきずである創」との記載における「解放性のきず」も、「開放性のきず」の誤記であることは明らかである。
よって、訂正事項2は、誤記である「解放性のきず」との記載を「開放性のきず」に訂正するものであるから、特許法第126条第1項第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。

(2)新規事項の追加の有無
明細書の段落【0002】には、「開放性のきずである「創(そう)」」と記載されているから、訂正事項2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされるものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3)特許請求の範囲の拡張、又は変更の有無
訂正事項2は、誤記の訂正を目的としたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)独立特許要件
訂正事項2による訂正後における特許請求の範囲の請求項1?3に記載されている事項により特定される発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせないから、訂正事項2は、特許法第126条第7項の規定に適合する。


第5 むすび
上記のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
創離開防止用補助具
【技術分野】
【0001】
本発明は、創離開(創がさらに開くこと)を防止するための創離開防止用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
身体の一部がきずつけられてできたきずを創傷と称するが、創傷は、鋭利な刃物等で切って生じた開放性のきずを称する「創(そう)」と、鈍器等で打撲した時のような切り口のない閉鎖的なきずを称する「傷(しょう)」に大別することができる。
従来、開放性のきずである「創(そう)」に対しては、創底が浅い場合は、絆創膏や包帯等で創を閉じて固定する手段で創離開を防止し、創底が深い場合は、縫合糸等による縫合の手段により創を閉じて創離開を防止している。さらに、縫合糸等による縫合の手段では、外力等によって縫合糸が切断されることによる創離開を防止するために、適度な太さの複数の縫合糸の中から、より太い縫合糸を選択し使用する手段が汎用されている。
【0003】
しかし、太い縫合糸の使用は、縫合の跡が目立ちやすく、好ましいものとは言えない。また、太い縫合糸を使用し、創の周辺組織を強く引き寄せ強く縫合するほど、縫合した創の周辺組織に対する血液等の循環は不良となり、次第に縫合した創の周辺組織に壊死が生じ、創離開が生じる。
さらに、切開手術等による縫合は、創の周辺組織を引き寄せて行われる。そのため、縫合糸と縫合した創の周辺組織は引き合っている。この状態で外力が加われば、縫合糸が細ければ縫合糸が切れ、縫合糸が太ければ縫合した創の周辺組織が裂ける。即ち、適度な太さの縫合糸を選択し使用しても、創離開の予防は困難であった。
【0004】
一部では、切開手術後の縫合に際して、創口が開くのを防止すると共に、縫合糸による縫合部皮膚の圧迫、壊死等を防止して、患者の苦痛を和らげるための当て具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、細い縫合糸によって、患部組織に応力が集中的に働かないようにするため、患部への接触面積の大きな当て具を用意し、糸に張力を掛けるための弾性付与形状とし、糸の巻きつけを容易化するためのガイドスリット及び糸固定スリットを設けた創離開防止用当て具が提案されている。
【0005】
このように、上記を含む従来の創離開防止用当て具では、切開手術等の縫合時に創離開防止用当て具を装着する技術を事前に習得することが不可欠となる。また、当て具の消毒や患部を乾燥させるときに当て具を脱着させる必要があり、これらに対する技術も事前に習得しなければならない。さらに、患者は縫合部に装着した創離開防止用当て具に対する外力、特に、睡眠時の寝返り等によって生じる外力に対する留意を怠れない生活を余儀なくされる。また、創離開の治療について科学的に言及している書籍や論文は乏しく、治療法のみならず、予防法も確立されてはいないというのが現状である。
特に、血液等の循環不良による縫合した創の周辺組織等の壊死を原因とする創離開に対しては、再度縫合しても効果は期待できず、縫合糸をすべて除去し、壊死組織を切除し、創傷被覆材で覆い自然治癒に期待するという保存的治療に切り替えなければならない場合も稀ではなく、そのため、患者は長期間の入院や通院を余儀なくされることも少なくはない。ゆえに、創離開の防止そのものや創離開を防止するための従来の創離開防止用補助具を使用・装着することは容易ではなく、このような不利を適切に解決できる手段がなかったのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 実開平6-44511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑み、身体の一部がきずつけられて生じた開放性のきずである創に対し、創の離開を防止する効果が高く、使用・装着が容易な創離開防止用補助具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の創離開防止用補助具は、身体の一部がきずつけられて生じた開放性のきずである創に対し、創およびその周辺組織を覆って装着し、創の離開を防止するための創離開防止用補助具であって、創およびその周辺組織を覆う創離開防止部と、該創離開防止部を創およびその周辺組織に密着させて保持する機能を有する保持部と、前記創離開防止部を創離開方向に適度に引き伸ばした状態を維持し、該創離開防止部の収縮を防止する機能を有する収縮防止部とを備え、前記創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、前記保持部の装着に伴う創離開方向の収縮距離以上となる機能を備え、前記創離開防止部を創離開方向に引き伸ばし、前記創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、前記創離開防止部の装着に伴う創離開方向に対する垂直方向の収縮距離以上となる状態で、前記創離開防止部を創およびその周辺組織に密着させ、前記保持部で固定し装着した後に前記収縮防止部を取り外すことを特徴としている。
なお、前記創が、縫合された状態あるいは未縫合の状態に関わらず、本発明の創離開防止用補助具を効果的に装着することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の創離開防止用補助具によれば、創の周辺組織が受けている生理的で静的な張力(以下、生理的張力と称する)を持続的に減少させるための手段を創離開防止用補助具に機能として取り入れることで、創底が浅い場合は、創の周辺組織を弛ませ、軽くしわをよせ、創の周辺組織が受けている創を離開させる方向(以下、創離開方向と称する)の生理的張力を持続的に減少させて創離開を防止し、創底が深い場合は、縫合糸等による縫合後に、縫合した創の周辺組織を弛ませ、軽くしわをよせ、縫合した創の周辺組織が受けている創離開方向の生理的張力ならびにその生理的張力に伴う縫合糸に作用する張力を持続的に減少させ、縫合後の縫合糸切断による創離開ならびに縫合糸による縫合した創の周辺組織の血液等の循環不良を原因とする縫合した創の周辺組織の壊死等による創離開を防止することができる。
また、適度な太さの複数の縫合糸の中から、より細い縫合糸を選択し使用することが可能となり、縫合の跡を目立ちにくくすることができる。さらに、創の状態によっては縫合を不要とすることも可能となる。また、挫創や咬創等のような一般的に縫合が困難な創の創離開を防止することも期待することができる。さらに、創の状態が縫合、未縫合に関わらず、創およびその周辺組織を安静に保つことができ、自然治癒を早めることもできる。
さらに、創離開防止部を創離開方向に適度に引き伸ばした状態を維持し、収縮を防止する機能を有する収縮防止部を備えることで、創離開防止部を創離開方向に適度に引き伸ばした状態に維持できるため、装着が著しく容易となる。そして、保持部で固定して装着した後に収縮防止部を取り外すことで、創離開防止部を創離開方向に抗する方向に効率よく収縮させ、創離開防止用補助具として機能させることができる。また、創の状態が縫合、未縫合に関わらず、該創離開防止用補助具を効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 図1は、本発明の第1の実施の形態を示す創離開防止用補助具の、非装着時の状態を示す概略平面図である。
【図2】 図2は、図1に示した創離開防止用補助具の、装着時の状態を示す概略平面図である。
【図3】 図3は、本発明の第2の実施の形態に備えた収縮防止部を示す概略平面図である。
【図4】 図4は、図3に示した収縮防止部を備えた創離開防止用補助具の非装着時の状態を示す概略平面図である。
【図5】 図5は、図4に示した創離開防止用補助具の装着時の状態を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、鋭意研究を重ねていく過程で、創離開の一因が生体の生理的作用に伴う物理的な力と密接に関係していることを知見した。
例えば、筋肉は、筋膜が備える弾性や下層にある筋線維等により、皮膚では、皮膚が備える弾性や下層にある筋組織等により常に生理的張力を受けている。筋肉や皮膚の縫合時に、縫合糸や施術者の手指または器具等で、縫合する筋肉や皮膚を引き寄せる必要性が生じることや、縫合後に、外力によらずとも創離開が生じやすいのは、縫合した筋肉や皮膚が創離開方向の生理的張力を持続的に受けているためである。
【0012】
このように、縫合後の創離開を防止するためには、縫合した創の周辺組織や縫合糸が受けている創離開方向の生理的張力を持続的に減少させることが肝要となる。また、縫合後の自然治癒を早めるためには、縫合した創の周辺組織を安静に保つことも必要となる。しかし、縫合した創の周辺組織は、創離開方向の生理的張力を持続的に受けているため、安静を保つことが困難である。
【0013】
ここで、縫合した創に向かって、創離開方向に抗する方向から縫合した創の周辺組織を弛ませ、軽くしわをよせ、縫合した創の周辺組織が受けている創離開方向の生理的張力ならびにその生理的張力に伴う縫合糸に作用する張力を持続的に減少させることは、縫合後の縫合糸切断による創離開ならびに縫合糸による縫合した創の周辺組織の壊死等による創離開を防止するための有効な手段となる。
この有効な手段を創離開防止用補助具に機能として取り入れることで、縫合した創の周辺組織が受けている創離開方向の生理的張力ならびにその生理的張力に伴う縫合糸に作用する張力を持続的に減少させることが可能となり、縫合後の縫合糸切断による創離開ならびに縫合糸等による縫合した創の周辺組織の壊死等による創離開を防止することができる。
さらに、創離開方向の生理的張力を持続的に減少させることができるため、創の状態によっては縫合を不要とすることも可能となり、挫創や咬創等のような一般的に縫合が困難な創の創離開を防止することも期待することができる。加えて、創の状態が縫合、未縫合に関わらず、創の周辺組織を安静に保つことができ、自然治癒を早めることもできる。
これらの観点から見ると、従来の創離開防止用補助具においては、縫合した創の周辺組織や縫合糸が受けている創離開方向の生理的張力に対する考慮がなされていないことがわかる。
【0014】
そこで、本発明者は、縫合した創の周辺組織が受けている創離開方向の生理的張力ならびにその生理的張力に伴う縫合糸に作用する張力を持続的に減少させる機能を取り入れた創離開防止用補助具を提供するために、創離開防止用補助具の材料として、医療用として使用可能な伸縮性を有する素材を選択すること、さらに、生理的張力に勝る伸縮力を有する素材を選択して創離開防止用補助具を構成することを着想した。
創離開防止用補助具の材料をなす素材から試験片を切り出し、所定の力を加えてその伸びた長さを測定する。そして、この測定した、負荷を加えて引き伸ばした状態の数値から、負荷をゼロにすることによって収縮した状態の数値を差し引いた長さ(以下、収縮距離と称する)を求め、この収縮距離が異なる素材を用いることによって生じる、創離開防止用補助具の各部における収縮距離の差異によって生じる作用(装着する際に一定の力で引き伸ばした場合、収縮距離の長い部位は、収縮距離の短い部位よりさらに伸びる。すなわち、装着時において収縮距離の最も長い部位が最も縮む)と、素材と創の周辺組織との摩擦を考慮すれば、縫合した創の周辺組織や縫合糸が受けている生理的張力を持続的に減少させるための手段を創離開防止用補助具に機能として取り入れることができ、縫合した創の周辺組織を弛ませ、軽くしわをよせ、縫合した創の周辺組織が受けている創離開方向の生理的張力ならびにその生理的張力に伴う縫合糸に作用する張力を持続的に減少させ、創離開を防止することができるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明は、創離開防止用補助具を構成する素材の適切な選択・組み合わせによって、創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、保持部の装着に伴う創離開方向の収縮距離以上となる機能を備え、創離開防止部を創離開方向に引き伸ばし、創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、創離開防止部の装着に伴う創離開方向に対する垂直方向の収縮距離以上となる状態で、創およびその周辺組織に密着させ、保持部で固定し装着することを基本とする。ここで云う装着に伴う収縮距離とは、安静時にも起こりうる創離開防止用補助具の各部の装着後に生じる身体の生理的な動き(呼吸による胸囲や腹囲の変化等)によって引き伸ばされた状態の数値から、これらの負荷をゼロにすることによって収縮した状態の数値を差し引いた長さである。
本発明において、創およびその周辺組織を覆う創離開防止部と、創離開防止部を創およびその周辺組織に密着させて保持する機能を有する保持部とを備え、創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、保持部の装着に伴う創離開方向の収縮距離以上となることが必須であり、保持部の装着に伴う創離開方向には、創離開防止部の装着に伴う収縮距離との差異を大きくするために非伸縮機能を備えることが望ましい。
しかし、縫合した創の周辺組織を弛ませ、軽くしわをよせ、縫合した創の周辺組織が受けている創離開方向の生理的張力ならびにその生理的張力に伴う縫合糸に作用する張力を持続的に減少させ、創離開を防止する機能を備えてさえいれば、保持部にも創離開方向への伸縮機能を備えさせてもよい。また、前述したように、本発明は、創離開防止部を創離開方向に引き伸ばし、創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、創離開防止部の装着に伴う創離開方向に対する垂直方向の収縮距離以上となる状態で、創およびその周辺組織に密着させ、創離開防止部の収縮力により、創離開方向に抗する方向に収縮させて機能させるように、保持部で固定し装着するものである。なお、創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、創離開防止部の装着に伴う創離開方向に対する垂直方向の収縮距離以上となる状態とは、創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、創離開防止部の装着に伴う創離開方向に対する垂直方向の収縮距離と少なくとも同等か長い状態をいう。
【0016】
図1および図2に示す本発明の第1の実施の形態である創離開防止用補助具では、縫合部および縫合部周辺の皮膚を覆う創離開防止部1と、創離開防止部1を縫合部および縫合部周辺の皮膚に密着させて保持する機能を有する保持部2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2j、2k、2lと、創離開防止部1と保持部2a?2lを接続する接続部3a、3bとから構成される。保持部2a?2lは、図1に示すように、非装着状態においては、創離開防止部1の両端に設けられた接続部3a、3bから接続・延設されている。保持部2a、2b、2c、2d、2e、2fは、接続部3aに接続され、保持部2g、2h、2i、2j、2k、2lは、接続部3bに接続されている。
そして、装着状態においては、図2に示すように、創離開防止部1を縫合部および縫合部周辺の皮膚に密着させて保持するために、適切な保持部2c、2d、2i、2jによって前腕内側部で、創離開防止部の収縮力により、創離開方向に抗する方向に収縮させて機能させるように保持部で固定し装着され、不要な保持部2a、2b、2e、2f、2g、2h、2k、2lは切除されている。また、保持部は、創離開方向に配置され、かつ創離開防止部の両端に配置されることが縫合部および縫合部周辺の皮膚に密着させて保持できるため好ましく、例えば、縫合部5が創離開防止部の中央線1aの方向にある場合には、保持部の位置は、2c、2d、2i、2jが好ましい。
【0017】
なお、図1において、1aは創離開防止部の中央線を示す。図2において、前腕外側部の縫合部5に対し、創離開防止部の中央線1aを一致させて創離開防止用補助具を装着した状態を示し、「創離開防止用補助具」部分と「人体」部分とを区別するために、「人体」部分を破線で記した。
該創離開防止用補助具において、創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、前記保持部の装着に伴う創離開方向の収縮距離以上となる機能を備え、前記創離開防止部を創離開方向に引き伸ばし、前記創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、前記創離開防止部の装着に伴う創離開方向に対する垂直方向の収縮距離以上となる状態で、縫合部および縫合部周辺の皮膚に密着させ、前記創離開防止部の収縮力により、創離開方向に抗する方向に収縮させて機能させるように前記保持部で固定し装着する構成からなり、保持部は創離開防止部の両端に接続部によって接続される。
【0018】
この創離開防止用補助具では、縫合部および縫合部周辺の皮膚を十分に覆う創離開防止部を備える創離開防止用補助具を選択し、縫合部に創離開防止部の中央線を一致させ、創離開防止部を創離開方向に適度に引き伸ばし、縫合部および縫合部周辺の皮膚に密着させ、12本の保持部の中から、創離開防止部を縫合部および縫合部周辺の皮膚に密着させて保持するために適切な保持部を選択し、創離開防止部の収縮力により創離開方向に抗する方向に収縮させて機能させるように保持部で固定し装着する。その後、不要な保持部は切除する。そのため、装着により、創離開防止用補助具と縫合部および縫合部周辺の皮膚との間に摩擦が生じる。さらに、縫合部および縫合部周辺の皮膚に密着する創離開防止部の装着に伴う収縮距離が、保持部の装着に伴う収縮距離以上となり、創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、創離開防止部の装着に伴う創離開方向に対する垂直方向の収縮距離以上となる差異を設けて、創離開防止部の両端に接続部を介して保持部を接続しているため、創離開防止用補助具の装着に伴う収縮距離の度合は、縫合部および縫合部周辺の皮膚に密着する創離開防止部の創離開方向が最大となり、創離開方向に抗する方向から縫合部周辺の皮膚を弛ませ、軽くしわをよせ、縫合糸や縫合部および縫合部周辺の皮膚が受けている生理的張力を持続的に減少させる機能を備えることができる。
【0019】
このことで、創離開防止用補助具の装着に伴い、縫合部周辺の皮膚は、創離開方向に抗する方向から弛ませられ、縫合糸や縫合部および縫合部周辺の皮膚への生理的張力を持続的に減少させることができる。したがって、本発明の創離開防止用補助具では、創の周辺組織が受けている生理的張力を持続的に減少させるための手段を創離開防止用補助具に機能として取り入れることができ、縫合した創の周辺組織を弛ませ、軽くしわをよせ、縫合した創の周辺組織が受けている創離開方向の生理的張力ならびにその生理的張力に伴う縫合糸に作用する張力を持続的に減少させ、縫合後の縫合糸切断による創離開ならびに縫合糸による縫合した創の周辺組織の血液等の循環不良を改善することができ、縫合した創の周辺組織の壊死等による創離開を防止することが可能となる。
【0020】
具体的には、本発明の第1の実施の形態において、創離開防止部1は、伸縮性のベア天竺生地(綿89%、ポリウレタン11%)からなり、装着に伴う創離開方向の収縮距離が装着に伴う創離開方向に対する垂直方向の収縮距離より長くなる方向で使用し、創離開防止部1の両端を折り返して二重にし、接続部3a、3bとした。また、保持部2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2j、2k、2lは、伸縮機能を備えない綿糸を使用した綾織り生地を細くして紐とし、前腕部に装着するために十分な長さとした。保持部2a、2b、2c、2d、2e、2fは、接続部3aに逢着され、保持部2g、2h、2i、2j、2k、2lは、接続部3bに逢着されている。
【0021】
なお、本発明の第1の実施の形態においては、創離開防止部1の形状を正方形とし、保持部2a?2lを紐としたが、創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、保持部の装着に伴う創離開方向の収縮距離以上となる機能を備えていれば、用途に応じ創離開防止部1の形状は長方形、円形、菱形等でもよい。また、保持部2a?2lは、用途に応じ紐の本数や長さは任意でよく、伸縮性を有してもよく、紐状でなくてもよく、保持するためにボタン、ファスナーおよびマジックテープ等を用いてもよく、皮膚と密着する面に医療用の粘着剤を塗布してもよい。また、創離開防止部1の両端を折り返して二重とし、接続部3a、3bとしたが、明確な接続部を設けなくてもよい。結果として、創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、保持部の装着に伴う創離開方向の収縮距離以上となる機能を備えさせればよい。
【0022】
さらに第1の実施の形態において、創離開防止部1、保持部2a?21、接続部3a、3bを互いに縫着したが、全部および一部に縫い目や継ぎ目のない製法を用いてもよい。なお、本発明を創離開防止用補助具に用いた第1の実施の形態においては、上記の素材を用いたが、構成する素材としては、例えばナイロン等の化学繊維および絹、麻等の天然繊維等が挙げられ、創離開防止部1、保持部2a?2l、接続部3a、3bのそれぞれに適した通気性、柔軟性、保温性、耐久性等を備えるものが好ましい。これらは例示であって制限的なものではない。さらに用途に応じ、プラスチックや金属等の素材を用いてもよく、医療用として適していれば、その他の新素材等を用いてもよい。
さらに、保持部は、創離開防止部を創およびその周辺組織に密着させて保持する機能を備え、前記創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、前記保持部の装着に伴う創離開方向の収縮距離以上となる機能を備えさせていれば、用途に応じ、その素材や形状および部位等に制限を受けない。
例えば、医療用として適した粘着剤のみを保持部とし、創離開防止部の下層の一部もしくは全部に備えても良く、この時、保持部の装着に伴う創離開方向の収縮距離は、創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離と同等となることが望ましく、創離開防止部または保持部の形状により、保持部の装着に伴う創離開方向の収縮距離と、創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離との差異が少なくても良い。
【0023】
次に、本発明の創離開防止用補助具を用いた第2の実施の形態を、図3?図5を用いて説明する。
図3は、収縮防止部4を示す概略平面図であり、図4は、図3に示した収縮防止部4を備えた創離開防止用補助具の非装着時の前面側を示す概略平面図である。なお、符号1は創離開防止部、符号1aは創離開防止部の中央線、符号2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2j、2k、2lは保持部、符号3a、3bは接続部、符号4は収縮防止部である。
この第2の実施の形態での創離開防止用補助具は、本発明の第1の実施の形態の接続部3a、3bを筒状とし、図3に示した収縮防止部4であるコの字型の金属を2個使用し、これを図4の上下両側から差し込むことによって、創離開防止部1を創離開方向に適度に引き伸ばした状態に維持し、創離開防止部1の収縮を防止し、創離開防止部1を縫合部および縫合部周辺の皮膚に密着させ、保持部2(2a?2l)で固定して装着した後に、収縮防止部4を取り外すようになっている。これにより、創離開防止部1を創離開方向に引き伸ばした状態を維持して容易に装着することができる。
【0024】
図5は、図4に示した創離開防止用補助具の装着時の状態を示す概略平面図である。図において、前腕外側部の縫合部5に対し、創離開防止部の中央線1aを一致させて創離開防止用補助具を装着した状態を示し、「創離開防止用補助具」部分と「人体」部分とを区別するために、「人体」部分を破線で示している。
【0025】
図4に示す第2の実施の形態において、創離開防止部1は、伸縮性のベア天竺生地(綿89%、ポリウレタン11%)からなり、装着に伴う創離開方向の収縮距離が、装着に伴う創離開方向に対する垂直方向の収縮距離より長くなる方向で使用し、創離開防止部1の両端を折り返して筒状にし、接続部3a、3bとした。また、保持部2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2j、2k、2lは、伸縮機能を備えない綿糸を使用した綾織り生地を細くして紐とし、前腕部に装着するために十分な長さとした。保持部2a、2b、2c、2d、2e、2fは、接続部3aに逢着され、保持部2g、2h、2i、2j、2k、2lは、接続部3bに逢着されている。さらに、筒状の接続部3a、3bには、図3に示したコの字型の金属からなる収縮防止部4が2個使用され、両側から差し込まれている。
そして、装着状態においては、図5に示すように、創離開防止部1を縫合部および縫合部周辺の皮膚に密着させて保持するために適切な保持部2c、2d、2i、2jによって前腕内側部で、創離開防止部の収縮力により、創離開方向に抗する方向に収縮させて機能させるように保持部で固定し装着され、不要な保持部2a、2b、2e、2f、2g、2h、2k、2lは切除されている。収縮防止部4は、装着後、筒状の接続部3a、3bから引き抜かれている。また、保持部は、創離開方向に配置され、かつ創離開防止部の両端に配置されることが縫合部および縫合部周辺の皮膚に密着させて保持できるため好ましく、例えば、縫合部5が創離開防止部の中央線1aの方向にある場合、保持部の位置は、2c、2d、2i、2jが好ましい。
【0026】
また、第2の実施の形態では、接続部3a、3bを筒状にしてコの字型の金属を差し込み、収縮防止部を備えた構成としたが、収縮防止部は、創離開防止部を創離開方向に適度に引き伸ばした状態を維持する機能を備えてさえいれば、
用途に応じ、その素材や形状および部位等に制限を受けない。
【0027】
図1および図4に示した本発明の創離開防止用補助具は、いずれも、本発明の基本的構造を備えており、このような構成としたことにより、創の周辺組織が受けている生理的張力を持続的に減少させるための手段を創離開防止用補助具に機能として取り入れることができ、縫合した創の周辺組織を弛ませ、軽くしわをよせ、縫合した創の周辺組織が受けている創離開方向の生理的張力ならびにその生理的張力に伴う縫合糸に作用する張力を持続的に減少させ、縫合後の縫合糸切断による創離開ならびに縫合糸による縫合した創の周辺組織の壊死等による創離開を防止することが可能となる。
【0028】
以上、第1、第2の実施の形態では、創離開防止用補助具を前腕外側部の縫合した創に装着した例について説明してきたが、創の状態が縫合、未縫合に関わらず装着することができる。また、前腕外側部に関わらず、身体の各部位に装着することができ、各部位に適した形状とすることもできる。
なお、本発明でいう組織に密着して装着するとは、組織の表面に直接に接して密着する場合に限らず、湿潤環境を整えるための処置やガーゼ類等の縫合部周辺の組織を覆うものを介して密着する場合も含んでいる。また、縫合糸を用いず、医療用接着剤やステープラー(ホッチキス)等を用いた場合でも同様の効果が得られる。
また、本発明は、身体の一部がきずつけられて生じた開放性のきずである創に対し、創の離開を防止する効果が高く、使用・装着が容易な創離開防止用補助具を提供するが、前述したように、血液等の循環不良による創の周辺組織等の壊死を原因とする創離開に対しては、再度縫合しても効果は期待できず、縫合糸をすべて除去し,壊死組織を切除し,創傷被覆材で覆い自然治癒に期待するという保存的治療に切り替えなければならない。このような場合にも本発明の創離開防止用補助具は有効に作用する。さらに、皮膚以外の唇や爪等の他の上皮組織の創離開を防止する効果も期待できる。そのため、本発明の創離開防止用補助具の使用は、皮膚に限定するものではなく、医学的に有効であれば他の上皮組織に使用してもよい。また、創の状態が縫合、未縫合に関わらず、使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の創離開防止用補助具は、生理的張力を原因とする創離開を防止する効果が極めて高く、創の状態が縫合、未縫合に関わらず使用することができ、医療業界に貢献するところ大である。
【符号の説明】
【0030】
1:創離開防止部
1a:創離開防止部の中央線
2:保持部
2a:保持部
2b:保持部
2c:保持部
2d:保持部
2e:保持部
2f:保持部
2g:保持部
2h:保持部
2i:保持部
2j:保持部
2k:保持部
2l:保持部
3a:接続部
3b:接続部
4:収縮防止部
5:縫合部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 身体の一部がきずつけられて生じた開放性のきずである創に対し、創およびその周辺組織を覆って装着し、創の離開を防止するための創離開防止用補助具であって、創およびその周辺組織を覆う創離開防止部と、該創離開防止部を創およびその周辺組織に密着させて保持する機能を有する保持部と、前記創離開防止部を創離開方向に適度に引き伸ばした状態を維持し、該創離開防止部の収縮を防止する機能を有する収縮防止部とを備え、前記創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、前記保持部の装着に伴う創離開方向の収縮距離以上となる機能を備え、前記創離開防止部を創離開方向に引き伸ばし、前記創離開防止部の装着に伴う創離開方向の収縮距離が、前記創離開防止部の装着に伴う創離開方向に対する垂直方向の収縮距離以上となる状態で、前記創離開防止部を創およびその周辺組織に密着させ、前記保持部で固定し装着した後に前記収縮防止部を取り外すことを特徴とする創離開防止用補助具。
【請求項2】 前記創が、縫合された状態にある請求項1に記載の創離開防止用補助具。
【請求項3】 前記創が、未縫合の状態にある請求項1に記載の創離開防止用補助具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-04-19 
結審通知日 2016-04-21 
審決日 2016-05-09 
出願番号 特願2011-83394(P2011-83394)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (A61B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 熊倉 強
土田 嘉一
登録日 2011-07-29 
登録番号 特許第4790091号(P4790091)
発明の名称 創離開防止用補助具  
代理人 嶋崎 英一郎  
代理人 嶋崎 英一郎  

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