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審決分類 |
審判 訂正 特126 条1 項 C07D 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 C07D |
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管理番号 | 1318328 |
審判番号 | 訂正2015-390124 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2015-11-11 |
確定日 | 2016-06-24 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5721706号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 平成27年11月11日付け本件訂正審判請求において、特許第5721706号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5、8?9かならる一群の請求項、請求項6について訂正することを認める。 請求項7に係る訂正についての審判請求は成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第5721706号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、2010年6月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年12月18日及び2009年6月17日 いずれも米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成27年4月3日にその特許権の設定登録がされ、同年11月11日に訂正審判の請求がされ、同年12月16日付けで当審より訂正拒絶理由が通知され、それに対して、平成28年1月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 平成27年12月16日付け訂正拒絶理由の概要 訂正事項5及び6に係る訂正は特許法第126条第1項ただし書き各号に規定する事項を目的とするものではないから、審判請求書に添付した特許請求の範囲のとおり訂正することを認めることはできないというものである。 第3 平成28年1月13日付け手続補正の適否 1 補正の内容 平成28年1月13日付け手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は、審判請求書における「6 請求の理由」の「(3)請求項7に係る訂正」について、「(イ)訂正事項5」にある 「【化495】 」を 「【化495】 」と、「(ウ)訂正事項6」にある 「【化497】 」を 「【化497】 」と補正すること、また、これらと同様に、審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項7における【化495】及び【化497】として記載される化合物の化学構造を同様に補正するものである。 2 本件補正についての当審の判断 本件補正は、審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項7に記載の「式1070の化合物: 【化494】 、またはその薬学的に許容される塩を調製する方法」について、反応に用いられる化合物である【化495】で表される化合物(訂正事項5)を変更し、反応により形成される化合物である【化497】で表される化合物(訂正事項6)を変更するものであり、ひいては、請求項7に係る発明の方法を本件補正前とは異なる方法に変更することにもなる。 したがって、当初の訂正審判請求で審判を申し立てていた事項と本件補正後に審判を申し立てている事項との間に同一性がない。 よって、本件補正は審判請求書の要旨を変更するものである。 3 審判請求人の主張について 審判請求人は、平成28年1月13日付け意見書において、本件補正は、上記【化495】及び【化497】で表される化合物のピリミジン環状のアミノ置換基と、ビシクロ[2.2.2]オクタン環との間の立体配置を限定する訂正(A)と、メトキシカルボニルをカルボキシに変更する訂正(B)のうち、訂正(B)を削除し訂正(A)のみとする、審判便覧(第16版)54-05.1の2.(3)に記載の減縮的変更に相当する旨主張する。 しかし、審判請求人の指摘する審判便覧(第16版)54-05.1の2.(3)には、減縮的変更として、訂正事項A(減縮)及びB(誤記)であったものを、A又はBのみにすることが例示されおり、本件補正に係る訂正事項5及び6はいずれも審判請求書において1の訂正事項として記載されているものであり、当該補正は訂正事項5又は訂正事項6のいずれかを削除するものではないから、審判便覧に記載の減縮的変更にはあたらない。 また、本件補正前は、訂正事項5において【化495】で表される化合物について、訂正事項6において【化497】で表される化合物について、上記訂正(A)と訂正(B)によって化合物の化学構造を変更するものであるところ、この変更は訂正(A)及び訂正(B)が一体となって化合物の化学構造を変更するものであり、本件補正前に【化495】で表される化合物及び【化497】で表される化合物のいずれについても、訂正(A)のみを行う化合物とする訂正について審判を申し立てていたということはできない。 4 本件補正についての結論 以上のとおり、本件補正は、審判請求書の要旨を変更するものであって、特許法第131条の2第1項の規定する要件を満たさないから、本件補正を認めることはできない。 第4 本件審判請求の内容 1 審判請求の趣旨 本件審判請求の趣旨は、特許第5721706号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?9について訂正することを認める、との審決を求めるものである。 2 訂正の内容 訂正の内容は次のとおりである。 (1)請求項1?5及び8?9からなる一群の請求項に係る訂正 [訂正事項1] 特許請求の範囲の請求項1に記載される式: を式: に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5及び8?9も同様に訂正する。)。 (2)請求項6に係る訂正 [訂正事項2] 特許請求の範囲の請求項6に記載される式1070の化合物: 【化490】 を、式1070の化合物: 【化490】 に訂正する。 [訂正事項3] 特許請求の範囲の請求項6に記載される式: 【化493】 を式: 【化493】 に訂正する。 (3)請求項7に係る訂正 [訂正事項4] 特許請求の範囲の請求項7に記載される式1070の化合物: 【化490】 を、式1070の化合物: 【化490】 に訂正する。 [訂正事項5] 特許請求の範囲の請求項7に記載される式: 【化495】 を、式 【化495】 に訂正する。 [訂正事項6] 特許請求の範囲の請求項7に記載される式: 【化497】 を、式: 【化497】 に訂正する。 第5 本件審判請求に対する当審の判断 1 請求項1?5及び8?9からなる一群の請求項に係る訂正について (1)一群の請求項ごとに訂正を請求することについて 訂正事項1に係る訂正後の請求項1?5及び8?9は、当該訂正事項1を含む請求項1の記載を、請求項2?5及び8?9がそれぞれ引用しているから、請求項1?5及び8?9からなる一群の請求項ごとに訂正を請求することは、特許法第126条第3項の規定に適合する。 (2)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1に記載された【化489】で表される化合物のピリミジン環に結合するアミノ基とビシクロ[2.2.2]オクタン環との間の結合を上記第4の2(1)に記載したとおりに訂正するものであるところ、当該訂正によって、上記ピリミジン環に結合するアミノ基とビシクロ[2.2.2]オクタン環の間の立体配置の限定がなかったのが、限定されることとなるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 そして、訂正事項1に係る訂正後の【化489】で表される化合物は、願書に添付した明細書の段落1020に【化385】で示され式1070の化合物として記載され、【表3ー08】には当該化合物の薬理学的試験、LCMS、NMRのデータが記載されているから、訂正事項1は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、訂正後における請求項1?5及び8?9に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由はない。 したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第5項、第6項及び第7項の規定に適合する。 2 請求項6に係る訂正について 請求項6に係る発明は、式1070の化合物又はその薬学的に許容される塩を調製する方法についてのものであるところ、訂正事項2は【化490】で表される当該式1070の化合物についてのものであり、訂正事項3は当該方法における反応により形成される化合物である【化493】で表される化合物についてのものである。 (1)訂正の目的について 訂正事項2は、請求項6に記載された【化490】で表される化合物のピリミジン環に結合するアミノ基とビシクロ[2.2.2]オクタン環との間の結合を上記第4の2(2)[訂正事項2]に記載したとおりに訂正するものであるところ、当該訂正によって、上記ピリミジン環に結合するアミノ基とビシクロ[2.2.2]オクタン環の間の立体配置の限定がなかったのが、限定されることとなるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 訂正事項3は、請求項6に記載された【化493】で表される化合物のピリミジン環に結合するアミノ基とビシクロ[2.2.2]オクタン環との間の結合を上記第4の2(2)[訂正事項3]に記載したとおりに訂正するものであるところ、当該訂正によって、上記ピリミジン環に結合するアミノ基とビシクロ[2.2.2]オクタン環の間の立体配置の限定がなかったのが、限定されることとなるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 (2)新規事項の有無について 願書に添付した明細書には、 「【1013】 ・・・ 一般的スキーム53 【化382】 (a)H_(2)、Pd-C、MeOH、(b)Na_(2)CO_(3)、THF-CH_(3)CN、135℃、(c)NaOMe、MeOH、DCM、(d)NaOH、MeOH、THF。 【1014】 (+/-)-2,3-トランス-メチル3-ニトロビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-カルボキシレート(53a)の形成 この化合物は、Chang,Linda L.;Truong,Quang;Doss,George A.;MacCoss,Malcolm;Lyons,Kathryn;McCauley,Ermengilda;Mumford,Richard;Forrest,Gail;Vincent,Stella;Schmidt,John A.;Hagmann,William K.Bioorg.Med.Chem.Lett.2007,17(3),597-601に記載される文献の手順に従って、トランス異性体の混合物(エンド:エキソ=84:16)として調製した。 【1015】 (+/-)-2,3-トランス-メチル3-アミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(53b)の形成 MeOH中の(+/-)-2,3-トランス-メチル3-ニトロビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-カルボキシレートである53a(0.32g、1.62mmol)およびPd-C(10%)の混合物を、パージし、H_(2)雰囲気(50PSI)下で入れ、一晩振とうした。混合物をセライトを通して濾過し、真空中で濃縮し、CH_(3)CNで2回共沸させて、MeOHの痕跡を除去した。 粗混合物の^(1)H NMRは、エンドおよびエキソの生成物(84:16=エンド:エキソ)の両方の存在を示し、これらをさらに精製せずに次の反応に直接取り入れた。 【1016】 (+/-)-2,3-トランス-メチル3-(2-(5-クロロ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(53c)の形成 THF(3.7mL)およびCH_(3)CN(1.2mL)中の、5-クロロ-3-(5-フルオロ-4-(メチルスルフィニル)ピリミジン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンである1a(0.46g、1.00mmol)および(+/-)-トランス-メチル3-アミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレートである53b(0.27g、1.60mmol)(84:16=エンド:エキソ)、ならびに挽きたてのNa_(2)CO_(3)(0.32g、2.99mmolの混合物を、マイクロ波中で、120℃まで20分間加熱した。反応混合物を濾過し、固体をEt_(2)OおよびTHFですすいだ。有機層を真空中で濃縮して、粗生成物を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(0?40% EtOAc/ヘキサン、勾配)によって精製して、NMRによって示されるように、トランス内部およびトランス外部の異性体(エンド:エキソ=85:15)の分離できない混合物として、所望の生成物(352mg)を得た。 LC/MS滞留時間=6.13分間、(M+H)570.34。 【1017】 (+/-)-2,3-トランス-エンド-メチル3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(53d)および (+/-)-2,3-トランス-エキソ-メチル3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(53d) MeOH(3mL)およびCH_(2)Cl_(2)(1mL)中のトランス-エンド-およびトランス-エキソ-メチル3-(2-(5-クロロ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレートである53c(0.18g、0.31mmol)の溶液に、NaOMe(3mLの25%w/v、13.88mmol)を添加した。90秒間後、NH_(4)Cl溶液(5mL)を添加して、反応を停止させた。混合物をNH_(4)Cl水溶液(半飽和)とEtOAcに分配した。水層を再抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na_(2)SO_(4)上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO_(2)、0?15% MeOH-DCM、勾配)により、混合物として、所望の生成物を得た。(白色固体):112mgの^(1)H NMRは、所望の生成物が、エンドおよびエキソ異性体の混合物(エンド:エキソ=84 :16)として存在することを示し、これを加水分解ステップに進めた。 (+/-)-2,3-トランス-エキソ-メチル3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(53d):副異性体(エキソ):LC/MS(方法:m117)滞留時間=3.17分間、(M+H)416.27。 (+/-)-2,3-トランス-エンド-メチル3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(53d):主異性体(エンド):LC/MS(方法:m117)滞留時間=3.49分間、(M+H)416.27。 【化383】 【1018】 (946)(+/-)-2,3-トランス-エンド-3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸および (947)(+/-)-2,3-トランス-エキソ-3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イルアミノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸 THF(0.60mL)およびMeOH(0.10mL)中の、出発メチルエステルである53d(0.076g、0.183mmol)(84:16=エンド:エキソ)の撹拌した溶液に、NaOH(0.10mLの2M、0.201mmol)を添加した。反応の進行をTLCによってモニターした。30分間後、さらにNaOH(0.18mLの2M溶液、0.37 mmol)およびMeOH(0.18mL)を添加した。混合物を、室温でさらに16時間撹拌した。混合物をHCl(1M)で中和させ、真空中で濃縮した。分取HPLCによる精製により、塩酸塩として、52mgの主異性体(946)および11mgの副異性体(947)を得た。 (946)主(エンド)異性体:^(1)H NMR(300MHz,MeOD)δ8.82(d,J=2.2Hz,1H)、8.48(s,1H)、8.39(d,J=2.2Hz,1H)、8.31(d,J=5.6Hz,1H)、5.11(m,1H)、2.85(br s,1H)、2.68(br s,1H)、2.62(d,J=4.8Hz,1H)、1.92(d,J=10.1Hz,1H)、および1.77-1.51(m,5H)ppm;LC/MS滞留時間=3.51、(M+H)402.32。 (947)副(エキソ)異性体:^(1)H NMR(300MHz,MeOD)δ8.87(d,J=2.1Hz,1H)、8.48(s,1H)、8.39(d,J=1.9Hz,1H)、8.30(d,J=5.7Hz,1H)、4.73(d,J=3.3Hz,1H)、3.12(m,1H)、2.76(br s,1H)、2.56(d,J=4.2Hz,1H)、1.86(d,J=9.5Hz,2H)、1.79-1.49(複合体 m,2H)、および1.51(組み込み d,J=10.4Hz,2H)ppm;LC/MS滞留時間=3.42、(M+H)402.32。 【1019】 (1184)(2S,3S)-3-((2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イル)アミノ)ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボン酸 【化384】 化合物1184は、化合物946および947の上記と同様の様式で作製した。 【1020】 (1070)(2S,3S)-3-((2-(5-フルオロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロピリミジン-4-イル)アミノ)ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボン酸 【化385】 化合物1070は、化合物946および947の上記と同様の様式で作製した。」との記載があり、【表3ー08】には化合物1070の薬理学的試験、LCMS、NMRのデータが記載されている。 ここで、訂正事項2に係る訂正後の【化490】で表される化合物は上記摘示した段落1020に記載の式1070の化合物である。当該式1070の化合物は化合物946及び947の上記と同様の様式で作製した旨記載されるところ、その様式とは、一般的スキーム53として記載され、段落1014?1018に記載されたものであり、それらには、化合物1aを化合物53bと反応させ、化合物53cを生成し、トシル基を脱保護することに相当する反応によって化合物53dを生成し、さらに、メチルエステル基を脱エステル化することに相当する反応によって化合物946又は化合物53eとすることが記載されている。そして、上記化合物1a、53b、53c、53d、946又は53eは、それぞれ、訂正後の請求項6に記載の【化491】で表される化合物、【化492】で表される化合物、【化493】で表される化合物、トシル基を脱保護した際の化合物、及び式1070の化合物に対応する。 してみると、訂正後の請求項6に係る式1070の化合物又はその薬学的に許容される塩を調製する方法は、願書に添付した明細書に記載された事項に等しいか、記載された事項から自明の事項であるといえるから、訂正事項2及び訂正事項3は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 (3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無及び独立特許要件について 訂正事項2及び訂正事項3について、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、訂正後における請求項6に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由はない。 (4)まとめ したがって、訂正事項2及び訂正事項3は、いずれも、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第5項、第6項及び第7項の規定に適合する。 3 請求項7に係る訂正について 請求項7に係る発明は、式1070の化合物又はその薬学的に許容される塩を調製する方法についてのものであるところ、訂正事項4は【化494】で表される当該式1070の化合物についてのものであり、訂正事項5は当該方法における反応に用いる化合物である【化495】で表される化合物についてのものであり、訂正事項6は当該方法における反応により形成される化合物である【化497】で表される化合物についてのものである。 (1)訂正事項5及び6の訂正の目的について 訂正事項5は、【化495】で表される化学構造式におけるビシクロ[2.2.2]オクタン環の2位に結合する置換基について、訂正前にメトキシカルボニルであったのを訂正後にカルボキシとすることを含むものである。 かかる訂正は、置換基の種類が変更されることによって化合物の化学構造を変更するものであり、訂正後において訂正前とは異なる化学構造を有する化合物を記載することになるから、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるとはいえない。 また、かかる訂正は、同法同条同項ただし書きのその他の各号に規定する、いずれの事項も目的とするものとはいえない。 訂正事項6は、【化497】で表される化学構造式におけるビシクロ[2.2.2]オクタン環の2位に結合する置換基について、訂正前にメトキシカルボニルであったのを訂正後にカルボキシとすることを含むものである。 かかる訂正は、置換基の種類が変更されることによって化合物の化学構造を変更するものであり、訂正後において訂正前とは異なる化学構造を有する化合物を記載することになるから、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるとはいえない。 また、かかる訂正は、同法同条同項ただし書きのその他の各号に規定する、いずれの事項も目的とするものとはいえない。 (2)まとめ 請求項7に係る訂正事項5及び6はいずれも特許法第126条第1項ただし書各号に規定する事項を目的とするものではないから、その他の点を検討するまでもなく請求項7に係る訂正を認めることはできない。 第6 むすび したがって、 1 請求項1?5及び8?9からなる一群の請求項に係る訂正(訂正事項1)及び請求項6に係る訂正(訂正事項2及び3)は、いずれも、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するものであるから、請求項1?5及び8?9からなる一群の請求項及び請求項6について訂正することを認める。 2 請求項7に係る訂正(訂正事項5及び6)は、特許法第126条第1項ただし書各号に規定する事項を目的とするものではないから、その他の点を検討するまでもなく、請求項7について訂正することを認めることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 式: 【化489】 の化合物またはその薬学的に許容される塩。 【請求項2】 請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体、アジュバント、もしくはビヒクルを含む、薬学的組成物。 【請求項3】 生体外の生物学的試料中におけるインフルエンザAウイルスの量を減少させる方法であって、前記生物学的試料に有効量の請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩あるいは請求項2に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。 【請求項4】 患者におけるインフルエンザAウイルスを減少させる薬剤の製造のための、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。 【請求項5】 患者におけるインフルエンザAウイルス感染を低下させる薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。 【請求項6】 式1070の化合物: 【化490】 、またはその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、 i)式: 【化491】 を有する化合物を 【化492】 と反応させ、式: 【化493】 を有する化合物を形成するステップと、 ii)トシル基を脱保護し、メチルエステル基を脱エステル化して、式1070の化合物を形成するステップとを含む、方法。 【請求項7】 式1070の化合物: 【化494】 、またはその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、 i)式: 【化495】 の化合物を式 【化496】 の化合物と反応させ、式: 【化497】 の化合物を形成するステップと、 ii)トシル基を脱保護し、メチルエステル基を脱エステル化して、式1070の化合物を形成するステップとを含む、方法。 【請求項8】 患者におけるインフルエンザAウイルスを減少させるための組成物であって、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、組成物。 【請求項9】 患者におけるインフルエンザAウイルス感染を低下させるための組成物であって、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、組成物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2016-01-29 |
結審通知日 | 2016-02-02 |
審決日 | 2016-02-15 |
出願番号 | 特願2012-516299(P2012-516299) |
審決分類 |
P
1
41・
851-
YC
(C07D)
P 1 41・ 85- YC (C07D) |
最終処分 | 一部成立 |
前審関与審査官 | 近藤 政克 |
特許庁審判長 |
中田 とし子 |
特許庁審判官 |
冨永 保 辰己 雅夫 |
登録日 | 2015-04-03 |
登録番号 | 特許第5721706号(P5721706) |
発明の名称 | インフルエンザウイルス複製の阻害剤 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 森下 夏樹 |