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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1318366
審判番号 不服2016-306  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-07 
確定日 2016-09-12 
事件の表示 特願2014-515770「光電池用シート」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月20日国際公開、WO2012/173461、平成26年 9月11日国内公表、特表2014-523642、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の概要
本願は、2012年6月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年6月17日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成26年12月18日付けで拒絶理由が通知され、平成27年5月22日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたが、同年9月1日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされた。
本件は、これに対して、平成28年1月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後、同年3月10日付けで前置報告がなされた。


第2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明12」、といい、「本願発明1」?「本願発明12」をまとめて「本願発明」という。)は、平成28年1月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1?12は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
アリール基を有するシリコーン樹脂であり、上記シリコーン樹脂に含まれている全体ケイ素原子に対する上記アリール基のモル比が0.3を超過し、下記化学式1および2のシロキサン単位を含むシリコーン樹脂;及び耐光性付与剤を含む樹脂層を有する光電池用バックシートと、
基板と、
上記光電池用バックシートと基板との間で素子をカプセル化している封止材とを含む、光電池モジュールであって、
上記耐光性付与剤は、紫外線吸収剤及び光安定剤からなる群から選択された1つ以上であり、
上記紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、又はトリアジン化合物であり、
上記光安定剤は、ヒンダードアミン化合物である、光電池モジュール:
[化学式1]
(R^(1)R^(2)SiO_(2/2))
[化学式2]
(R^(3)SiO_(3/2))
(上記化学式1及び2で、R^(1)及びR^(2)は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アルコキシ基または1価炭化水素基であり、且つR^(1)及びR^(2)のうち1つ以上は、アリール基であり、R^(3)は、アリール基である)。
【請求項2】
前記バックシートが、基材層をさらに含み、上記樹脂層が上記基材層の一面または両面に形成されている、請求項1に記載の光電池モジュール。
【請求項3】
前記バックシートが、基材層をさらに含み、上記樹脂層が上記基材層の一面に形成されており、上記基材層の反対面には、アリール基を含むシリコーン樹脂であり、上記樹脂に含まれている全体ケイ素原子に対する上記アリール基のモル比が0.3を超過するシリコーン樹脂を含む第2樹脂層が形成されている、請求項1に記載の光電池モジュール。
【請求項4】
上記基材層が金属、フッ素樹脂シート、ポリエステルシートまたは上記のうち2個以上の積層シートである、請求項2に記載の光電池モジュール。
【請求項5】
上記シリコーン樹脂に含まれている全体ケイ素原子に対するアリール基のモル比が0.5以上である、請求項1に記載の光電池モジュール。
【請求項6】
上記シリコーン樹脂は、下記化学式6の平均組成式を有する、請求項1に記載の光電池モジュール:
[化学式6]
(R^(3)SiO_(1/2))_(a)(R^(2)SiO_(2/2))_(b)(RSiO_(3/2))_(c)(SiO_(4/2))_(d)
(上記化学式6で、Rは、ケイ素原子に直接結合している置換基であり、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アルコキシ基または1価炭化水素基であり、Rのうち少なくとも1つは、アリール基であり、a+b+c+dを1に換算したとき、aは0?0.6であり、bは、0?0.97であり、cは0?0.8であり、dは0?0.4であり、b及びcは、同時に0ではない)。
【請求項7】
上記シリコーン樹脂は、重量平均分子量が500?100,000である、請求項1に記載の光電池モジュール。
【請求項8】
上記樹脂層は、上記シリコーン樹脂100重量部に対して0.05重量部?10重量部の上記耐光性付与剤を含む、請求項1に記載の光電池モジュール。
【請求項9】
上記耐光性付与剤は、上記紫外線吸収剤100重量部に対して10重量部?70重量部の上記光安定剤を含む、請求項1に記載の光電池モジュール。
【請求項10】
上記樹脂層は、光散乱性または光反射性粒子をさらに含む、請求項1に記載の光電池モジュール。
【請求項11】
上記光散乱性または光反射性粒子が、ガラス、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化セリウム、酸化ハフニウム、五酸化ニオブ、五酸化タンタル、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫、酸化亜鉛、ケイ素系粒子、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン及び酸化マグネシウムよりなる群から選択された1つ以上である、請求項10に記載の光電池モジュール。
【請求項12】
アリール基を有するシリコーン樹脂であり、上記シリコーン樹脂に含まれている全体ケイ素原子に対する上記アリール基のモル比が0.3を超過し、下記化学式1および2のシロキサン単位を含むシリコーン樹脂またはその前駆体;及び耐光性付与剤を含む液状コーティング液を使用して樹脂層を形成することを含む光電池用バックシートの製造方法であって、
上記耐光性付与剤は、紫外線吸収剤及び光安定剤からなる群から選択された1つ以上であり、
上記紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、又はトリアジン化合物であり、
上記光安定剤は、ヒンダードアミン化合物である、方法:
[化学式1]
(R^(1)R^(2)SiO_(2/2))
[化学式2]
(R^(3)SiO_(3/2))
(上記化学式1及び2で、R^(1)及びR^(2)は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アルコキシ基または1価炭化水素基であり、且つR^(1)及びR^(2)のうち1つ以上は、アリール基であり、R^(3)は、アリール基である)。」


第3 原査定の理由の概要

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特表2009-545872号公報
引用文献2:国際公開第2011-048895号

引用文献1に記載された発明に、引用文献2に記載された周知技術を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。


第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項
(1)引用文献1
引用文献1には、以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、概して太陽電池に、より詳細にはシリコーンポリマー層に隣接した太陽電池を形成することに関する。」


イ 「【0011】
図1A、1B、1C、1D、1E、及び1Fは、太陽電池を形成する方法200の第1の例示的実施形態を概念的に例示する。例示的実施形態では、基材105を処理することによって、次に基材105に対して形成される層の粘着性を減少させ、次いで形成される層の基材105からの剥離を可能にするように意図された剥離層110を形成する。剥離層110は、下記のように、シリコーン樹脂が硬化した後、層間剥離によって損傷なしでそれから強化シリコーン樹脂フィルムを除去し得る表面を有する任意の剛性又は可撓性材料であってよい。剥離ライナーの例として、限定されないが、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、シリコーン、及びゾルゲルコーティングが挙げられる。例えば、基材105は、Nanofilm、Inc of Valley View、オハイオからのRelisse(登録商標)2520を用いて処理することによって剥離層110が形成される寸法6インチ×6インチを有するガラスプレートであってよい。しかし、本開示の利益を享受する当業者なら、任意の材料を使用することによって基材105及び/又は剥離層110を形成し得ることが理解されよう。さらに、剥離層105は、任意選択であり、本発明を実施するために必須ではない。
【0012】
次いで、図1Aに示すように、硬化性ケイ素含有組成物層115を基材105及び(存在する場合)剥離層110上に堆積する。この硬化性ケイ素含有組成物層115は、スピンコーティング、ディッピング、スプレーイング、ブラッシング、又はスクリーン印刷など従来のコーティング技法を使用して堆積させてよい。・・後略・・」

ウ 「【0150】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の代替として、縮合硬化性シリコーン組成物もまた、本発明のシリコーン組成物に適している。
【0151】
縮合硬化性シリコーン組成物は、通常、ケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基を有するシリコーン樹脂(A’’’’)と、任意選択で、ケイ素結合加水分解性基及び/又は縮合触媒(C’)を有する架橋剤(B’’)とを含む。シリコーン樹脂(A’’’’)は、通常、M及び/又はDシロキサン単位と組み合わせたT及び/又はQシロキサン単位を含有するコポリマーである。
【0152】
一実施形態によれば、シリコーン樹脂(A’’’’)は、式:
(R^(1)R^(6)_(2)SiO_(1/2))_(w’)(R^(6)_(2)SiO_(2/2))_(x’)(R^(6)SiO_(3/2))_(y’)(SiO_(4/2))_(z’)(VIII)
を有し、式中、R^(1)は、上記で説明され、例示されたのと同様であり、R^(6)はR^(1)、-H、-OH、又は加水分解性基であり、w’は0?0.8、好ましくは0.02?0.75、より好ましくは0.05?0.3であり、x’は0?0.95、好ましくは0.05?0.8、より好ましくは0.1?0.3であり、y’は0?1、好ましくは0.25?0.8、より好ましくは0.5?0.8であり、z’は0?0.99、好ましくは0.2?0.8、より好ましくは0.4?0.6であり、シリコーン樹脂(A’’’’)は、分子当り平均少なくとも2個のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基、又は加水分解性基を有する。本明細書で使用される「加水分解性基」という用語は、ケイ素結合基が、触媒なしで室温(約23±2℃)?100℃の任意の温度で数分間以内、例えば30分間水と反応することによってシラノール(Si-OH)基を形成することを意味する。R^(6)によって表される加水分解性基の例として、限定されないが、-CI、-Br、-OR^(7)、-OCH_(2)CH_(2)OR^(7)、CH_(3)C(=O)O-、Et(Me)C=N-O-、CH_(3)C(=O)N(CH_(3))-、及び-ONH_(2)が挙げられ、R^(7)はCl?C8ヒドロカルビル又はCl?C8ハロゲン置換ヒドロカルビルである。
【0153】
R^(7)によって表されるヒドロカルビル及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、通常、1?8個の炭素原子、或いは3?6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビル及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分枝又は非分枝構造を有することができる。R^(7)によって表されるヒドロカルビル基の例として、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチルなどの非分枝及び分枝アルキル;シクロペンチル、シクロヘキシル、及びメチルシクロヘキシルなどのシクロアルキル;フェニル;トリル及びキシリルなどのアルカリール;ベンジル及びフェネチルなどのアラルキル;ビニル、アリル、及びプロペニルなどのアルケニル;スチリルなどのアリールアルケニル;並びにエチニル及びプロピニルなどのアルキニルが挙げられる。R^(7)によって表されるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例として、限定されないが、3,3,3-トリフルオロプロピル、3-クロロプロピル、クロロフェニル、及びジクロロフェニルが挙げられる。
【0154】
通常、シリコーン樹脂の基R^(6)の少なくとも5モル%、或いは少なくとも15モル%、或いは少なくとも30モル%は、水素、ヒドロキシ、又は加水分解性基である。本明細書では、R^(6)中の基のモル%は、シリコーン樹脂(A’’’’)のケイ素結合基モル数とシリコーン樹脂(A’’’’)の基R^(6)の全モル数の比に100を乗じたものとして定義される。
【0155】
シリコーン樹脂(A’’’’)の特定の例として、限定されないが、以下の式:
(MeSiO_(3/2))_(n)、(PhSiO_(3/2))_(n)、(Me_(3)SiO_(1/2))_(0.8)(SiO_(4/2))_(0.2)、(MeSiO_(3/2))_(0.67)(PhSiO_(3/2))_(0.33)、(MeSiO_(3/2))_(0.45)(PhSiO_(3/2))_(0.40)(Ph_(2)SiO_(2/2))_(0.1)(PhMeSiO_(2/2))_(0.05)、(PhSiO_(3/2))_(0.4)(MeSiO_(3/2))_(0.45)(PhSiO_(3/2))_(0.1)(PhMeSiO_(2/2))_(0.05)、及び(PhSiO_(3/2))_(0.4)(MeSiO_(3/2))_(0.1)(PhMeSiO_(2/2))_(0.5)を含むシリコーン樹脂が挙げられ、式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、カッコの外側の下付き数字はモル分率を表し、下付き文字nは、シリコーン樹脂が500?50,000の数平均分子量を有するような値である。前記式中の単位順序は、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものと見なすべきでない。これらの式は、樹脂の完全縮合形態を表す。硬化する前、樹脂は、上記で指定した量の-H、-OH及び/又は他の加水分解性基を含むことになる。
【0156】
上記のように、式(VIII)で表されるシリコーン樹脂(A’’’’)は、通常、数平均分子量(Mn)が、500?50,000である。或いは、シリコーン樹脂(A’’’’)は、300?測定不能、或いは1,000?3,000のMnを有してもよく、分子量は、低角レーザー光散乱検出器又は屈折率検出器、及びシリコーン樹脂(MQ)標準を用いるゲル透過クロマトグラフィーによって求められる。
【0157】
シリコーン樹脂(A’’’’)の25℃における粘度は、通常、0.01Pa・sから固体、或いは0.1?100,000Pa・s、或いは1?1,000Pa・sである。
【0158】
式(VIII)で表されるシリコーン樹脂(A’’’’)を調製する方法は、当技術分野で周知であり、この樹脂の多くは市販されている。式(VIII)で表されるシリコーン樹脂(A’’’’)は、通常、トルエンなどの有機溶媒中でクロロシラン前駆体の適切な混合物を共加水分解することによって調製される。例えば、R^(1)R^(6)_(2)SiO_(1/2)単位及びR^(6)SiO_(3/2)単位を含むシリコーン樹脂は、式R^(1)R^(6)_(2)SiClを有する第1化合物と式R^(6)SiCl_(3)を有する第2化合物をトルエン中で共加水分解することによって調製することができ、R^(1)及びR^(6)は、上記で定義され、例示されたのと同様である。共加水分解法は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物を用いて上述されている。共加水分解反応物質は、所望の程度までさらに「加える」ことによって架橋性基の量及び粘度を調節することができる。
【0159】
式(VIII)のQ単位、及びそれとM単位との任意の比の組合せはまた、樹脂(A’’’’)中で明確な粒子の形態で存在することができる。粒径は、通常、1nm?20μmである。この粒子の例として、限定されないが、直径15nmのシリカ(SiO_(4/2))粒子が挙げられる。縮合硬化性シリコーン樹脂は、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、及び雲母などの無機充填剤をさらに含有することができる。」

エ 「【0180】
ここで図1Bを参照すると、繊維材料120を硬化性ケイ素含有組成物層115の中又は上に配置することができる。・・後略・・」

オ 「【0184】
ここで図1Cを参照すると、次いで、硬化性ケイ素含有組成物層145を層115及び含浸繊維材料120に施用することができる。層145は、上記の従来技法を使用して施用することができる。層115、含浸繊維材料120、及び層145は、集合的に強化シリコーン樹脂フィルム150と呼ぶことができる。・・後略・・」

カ 「【0187】
光電池素子160は、強化シリコーン樹脂フィルム150、又は存在すれば、耐スクラッチ性コーティング155に隣接して形成することができる。・・後略・・」

キ 「【0190】
次いで、光電池素子160と強化シリコーン樹脂フィルム150とを含む完成太陽電池185は、図1Fに示すように、基材、及び存在すれば剥離層から取り外すことができる。基材層105は、太陽電池製作プロセス中に必ずしも存在しなければならないものではないことも当業者に理解されよう。強化シリコーン樹脂フィルムは、105から剥離させることができ、自立型になる。・・後略・・」

コ 「



すると、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「光電池素子160と強化シリコーン樹脂フィルム150とを含む完成太陽電池185であって、
強化シリコーン樹脂フィルム150は、硬化性ケイ素含有組成物層115、含浸繊維材料120及び硬化性ケイ素含有組成物層145からなり、
硬化性ケイ素含有組成物層115及び硬化性ケイ素含有組成物層145は、ケイ素結合ヒドロキシ又は加水分解性基を有するシリコーン樹脂(A’’’’)と、ケイ素結合加水分解性基及び/又は縮合触媒(C’)を有する架橋剤(B’’)とを含む縮合硬化性シリコーン組成物であって、
シリコーン樹脂(A’’’’)は、以下の式:
(MeSiO_(3/2))_(n)、(PhSiO_(3/2))_(n)、(Me_(3)SiO_(1/2))_(0.8)(SiO_(4/2))_(0.2)、(MeSiO_(3/2))_(0.67)(PhSiO_(3/2))_(0.33)、(MeSiO_(3/2))_(0.45)(PhSiO_(3/2))_(0.40)(Ph_(2)SiO_(2/2))_(0.1)(PhMeSiO_(2/2))_(0.05)、(PhSiO_(3/2))_(0.4)(MeSiO_(3/2))_(0.45)(PhSiO_(3/2))_(0.1)(PhMeSiO_(2/2))_(0.05)、及び(PhSiO_(3/2))_(0.4)(MeSiO_(3/2))_(0.1)(PhMeSiO_(2/2))_(0.5)を含むシリコーン樹脂であって、式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、カッコの外側の下付き数字はモル分率を表し、下付き文字nは、シリコーン樹脂が500?50,000の数平均分子量を有するような値である、
完成太陽電池185。」

(2)引用文献2
引用文献2には、以下の事項が記載されている。

ア 「[0012] 本発明は、少なくとも1層の透明なフッ素樹脂フィルム層と、少なくとも1層の透明なシリコーン層とが積層されていることを特徴とする太陽電池モジュール表面保護用透明積層フィルムである。」

イ 「[0053] また、本発明のシリコーン組成物には、上記の他に各種の添加物を加えることができる。即ち、他の樹脂、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、充填剤、顔料、染料、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤、及び分散剤等から選ばれる1種又は2種以上を添加することができる。」

すると、上記引用文献2には、太陽電池モジュール表面保護用透明積層フィルムを構成する透明なシリコーン層を形成するシリコーン組成物に、紫外線吸収剤及び安定剤を添加することが記載されている。

また、他に、特開2002-368243号公報(特に、段落【0028】参照)、特開2005-322681号公報(特に、段落【0055】?【0057】参照)等に記載されるように、太陽電池モジュールのバックシートを形成する樹脂に、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤やヒンダードアミン系の安定剤を添加することは周知技術である。
したがって、太陽電池モジュールのバックシートを形成する樹脂に、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤やヒンダードアミン系の安定剤を添加することは周知技術であると認められる。

2 対比
本願発明1と引用発明を対比すると、
引用発明の「Ph_(2)SiO_(2/2)」及び「PhMeSiO_(2/2)」は本願発明1の「化学式1」「のシロキサン単位」に、引用発明の「PhSiO_(3/2)」は本願発明1の「化学式」「2のシロキサン単位」に、それぞれ、相当するから、両者は、
「アリール基を有するシリコーン樹脂であり、下記化学式1および2のシロキサン単位を含むシリコーン樹脂;及び耐光性付与剤を含む樹脂層を有する光電池用バックシートと、
素子とを含む、光電池モジュールであって、
上記耐光性付与剤は、紫外線吸収剤及び光安定剤からなる群から選択された1つ以上であり、
上記紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、又はトリアジン化合物であり、
上記光安定剤は、ヒンダードアミン化合物である、光電池モジュール:
[化学式1]
(R^(1)R^(2)SiO_(2/2))
[化学式2]
(R^(3)SiO_(3/2))
(上記化学式1及び2で、R^(1)及びR^(2)は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アルコキシ基または1価炭化水素基であり、且つR^(1)及びR^(2)のうち1つ以上は、アリール基であり、R^(3)は、アリール基である)。」
で一致し、次の各点で相違する。

(相違点ア)
本願発明は、「光電池用バックシートと、基板と、上記光電池用バックシートと基板との間で素子をカプセル化している封止材とを含む、光電池モジュールであ」るのに対して、引用発明は、「光電池素子160と強化シリコーン樹脂フィルム150とを含む完成太陽電池185であ」る点。

(相違点イ)
本願発明では、「上記シリコーン樹脂に含まれている全体ケイ素原子に対する上記アリール基のモル比が0.3を超過」するのに対して、引用発明では、ケイ素原子に対するフェニル基のモル比が不明である点。

3 判断
上記相違点イについて検討する。
引用文献1には、引用発明のようにケイ素原子に対するフェニル基のモル比が不明であるほか、フェニル基を含むアリール基の量と太陽電池のバックシートの作用・効果との関連を示唆する記載もないから、当業者といえども、ケイ素原子に対するアリール基のモル比を特定の値に設定するという技術思想自体を想起することが容易であるとはいえない。
また、上述のとおり、引用文献2等の文献には、紫外線吸収剤や安定剤を添加するという周知技術が示されるのみであって、上記相違点イに係る構成は開示も示唆もされていない。
すると、引用発明や引用文献2等に記載された事項に基づいて、上記相違点イに係る本願発明1の構成を、当業者が容易に想到し得るとすることはできない。

さらに、他に、本願発明の上記相違点イに係る構成が公知であることを示す証拠もない。

そして、上記相違点イにより、本願発明1は、樹脂層の耐湿性、耐候性及び硬度などが向上し、光電池モジュールでの集光効率を高めることができるという効果を奏する。

よって、本願発明1は、上記相違点アを検討するまでもなく、引用発明に引用文献2等に記載された周知技術を採用することにより当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

4 小括
したがって、本願発明1は、当業者が引用発明、引用文献2等に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、本願発明2?11は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が引用発明、引用文献2等に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、本願発明12は、上記相違点イの構成を備える「光電池用バックシートの製造方法」に係る発明であるから、本願発明1と同様に、当業者が引用発明、引用文献2等に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。


第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-25 
出願番号 特願2014-515770(P2014-515770)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 濱田 聖司  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 井口 猶二
伊藤 昌哉
発明の名称 光電池用シート  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡部 崇  

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