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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01J
管理番号 1318463
審判番号 不服2015-11916  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-24 
確定日 2016-08-18 
事件の表示 特願2013-507765「粒子状吸水剤およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日国際公開、WO2012/133734〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成24年3月30日(優先権主張 2011年3月31日)を国際出願日とする出願であって、平成26年7月11日付けで拒絶理由が通知され、同年9月16日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年3月18日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年6月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に、特許請求の範囲の記載に係る手続補正書が提出され、平成28年6月22日付けで上申書が提出されたものである。

第2.平成27年6月24日付けの特許請求の範囲の記載に係る手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年6月24日付けの特許請求の範囲の記載に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
本件補正は、平成26年9月16日付けの特許請求の範囲の記載に係る手続補正書において、補正前の特許請求の範囲の請求項1及び請求項21を、以下に示すように補正して、新たな請求項1及び請求項13とすることを含むものである。

(補正前)
「【請求項1】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とし、当該吸水性樹脂に対して長鎖アルキル化合物、有機ポリシロキサン、有機高分子化合物から選ばれる水不溶性或いは水難溶性の化合物を0.001?5重量%(但し、長鎖アルキル化合物が金属石鹸に該当する場合は0.001重量%以上、1.0重量%未満)含む粒子状吸水剤であって、
上記長鎖アルキル化合物の90重量%以上が炭素数8?30の炭化水素鎖を有し、
上記有機ポリシロキサンが、分子量1000以上の親水性官能基を有する常温で固体または液体の化合物であり、
上記有機高分子化合物が、熱可塑性高分子であり、
衝撃試験後の吸湿ブロッキング率が0?30重量%であり、かつ、20重量%食塩水垂直吸収指数が1.5?10.0[g/g]であり、2.06kPaの荷重下における加圧下吸水倍率(AAP)が20[g/g]以上であることを特徴とする、粒子状吸水剤。」
「【請求項21】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法であって、
アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液を重合する工程、重合工程後の乾燥前または乾燥後の吸水性樹脂に対して、長鎖アルキル化合物、有機ポリシロキサン、有機高分子化合物から選ばれる水不溶性或いは水難溶性の化合物を0.001?5重量%(但し、長鎖アルキル化合物が金属石鹸に該当する場合は0.001重量%以上、1.0重量%未満)添加する工程、当該長鎖アルキル化合物、有機ポリシロキサン、有機高分子化合物の何れか一つ以上を含む吸水性樹脂に対して、界面活性剤を添加する工程を順次含み、
吸水性樹脂の2.06kPa荷重下における加圧下吸水倍率(AAP)を20[g/g]以上に制御する工程をさらに含み、
上記長鎖アルキル化合物の90重量%以上が炭素数8?30の炭化水素鎖を有し、
上記有機ポリシロキサンが、分子量1000以上の親水性官能基を有する常温で固体または液体の化合物であり、
上記有機高分子化合物が、熱可塑性高分子であることを特徴とする、粒子状吸水剤の製造方法。」

(補正後)
「【請求項1】
表面架橋されたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とし、当該吸水性樹脂に対して長鎖アルキル化合物、有機ポリシロキサン、有機高分子化合物から選ばれる水不溶性或いは水難溶性の化合物を0.001?5重量%(但し、長鎖アルキル化合物が金属石鹸に該当する場合は0.001重量%以上、1.0重量%未満)含み、上記水不溶性或いは上記水難溶性の化合物を含む上記吸水性樹脂に対して、界面活性剤の溶液を添加することにより得られる、表面に界面活性剤の被膜を備える粒子状吸水剤であって、
上記長鎖アルキル化合物が、炭素数12?20の長鎖飽和脂肪酸、および/または、その2価以上の金属塩、および/または、そのエステルであり、
上記有機ポリシロキサンが、分子量1000以上の反応性有機基を導入した有機ポリシロキサンであり、
上記有機高分子化合物が、ポリオレフィン類であり、
衝撃試験後の吸湿ブロッキング率が0?30重量%であり、かつ、20重量%食塩水垂直吸収指数が1.5?10.0[g/g]であり、2.06kPaの荷重下における加圧下吸水倍率(AAP)が20[g/g]以上であることを特徴とする、粒子状吸水剤。」
「【請求項13】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法であって、
アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液を重合する工程、重合工程後の乾燥前または乾燥後の吸水性樹脂に対して、長鎖アルキル化合物、有機ポリシロキサン、有機高分子化合物から選ばれる水不溶性或いは水難溶性の化合物を0.001?5重量%(但し、長鎖アルキル化合物が金属石鹸に該当する場合は0.001重量%以上、1.0重量%未満)添加する工程、当該長鎖アルキル化合物、有機ポリシロキサン、有機高分子化合物の何れか一つ以上を含む吸水性樹脂に対して、界面活性剤の溶液を添加する工程を順次含み、
吸水性樹脂の2.06kPa荷重下における加圧下吸水倍率(AAP)を20[g/g]以上に制御するための表面架橋工程をさらに含み、
上記長鎖アルキル化合物は、炭素数12?20の長鎖飽和脂肪酸、および/または、その2価以上の金属塩、および/または、そのエステルであり、
上記有機ポリシロキサンが、分子量1000以上の、反応性有機基を導入した有機ポリシロキサンであり、
上記有機高分子化合物が、ポリオレフィン類であることを特徴とする、粒子状吸水剤の製造方法。」

下線部は補正箇所を示し、請求人が付記した。

2.補正の目的要件
本件補正は、発明特定事項である「分子量1000以上」の「有機ポリシロキサン」につき、補正前の「親水性官能基を有する常温で固体または液体の化合物」を本件補正により「反応性有機基を導入した有機ポリシロキサン」とする補正事項を含むものである。
ここで、補正後の請求項1、13に記載された「反応性有機基」には、「反応性」の「疎水基」等、「親水性官能基」に含まれない置換基が含まれ、補正前の請求項1、21に記載された「親水性官能基」の下位概念とはいえないから、当該補正事項は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定するものとはいえない。
よって、当該補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものでない。
さらに、当該補正事項が、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものでないことも明らかであるから、同条第5項第3号または第4号に掲げる事項を目的とするものともいえない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、その請求項1-28に係る発明は、平成26年9月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-28に記載されたとおりのものであるところ、その請求項21に係る発明は、上記「第2.1.(補正前)」に示した以下のとおりのものである(以下、「本願発明1」という。)。

「【請求項21】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法であって、
アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液を重合する工程、重合工程後の乾燥前または乾燥後の吸水性樹脂に対して、長鎖アルキル化合物、有機ポリシロキサン、有機高分子化合物から選ばれる水不溶性或いは水難溶性の化合物を0.001?5重量%(但し、長鎖アルキル化合物が金属石鹸に該当する場合は0.001重量%以上、1.0重量%未満)添加する工程、当該長鎖アルキル化合物、有機ポリシロキサン、有機高分子化合物の何れか一つ以上を含む吸水性樹脂に対して、界面活性剤を添加する工程を順次含み、
吸水性樹脂の2.06kPa荷重下における加圧下吸水倍率(AAP)を20[g/g]以上に制御する工程をさらに含み、
上記長鎖アルキル化合物の90重量%以上が炭素数8?30の炭化水素鎖を有し、
上記有機ポリシロキサンが、分子量1000以上の親水性官能基を有する常温で固体または液体の化合物であり、
上記有機高分子化合物が、熱可塑性高分子であることを特徴とする、粒子状吸水剤の製造方法。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定は、「この出願については、平成26年7月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由2-4によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、その「理由2」は、「本願発明は、その出願の優先日前に日本国内において頒布された引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」とするものを含む。

3.引用例の記載事項
(1)引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由にて引用例1として引用され、本願優先日前に頒布された特開平8-92454号公報(以下、「引用例1」という。)には、「親水性高分子粉末組成物」(発明の名称)について、次の記載がある。
(ア)「【請求項1】 親水性高分子(a)の粒径100μm?2mmの粉末100重量部を、水に難溶または実質的に不溶性であり、粒径10?200μmであり、含水率が15重量%未満の粉末状物質(b)0.05?5重量部および100℃以上の沸点を有し50℃で液状の物質(c)0.0002?5重量部により処理してなり、(b)と(c)の重量比が50:1?1:1であることを特徴とする親水性高分子粉末組成物。」
(イ)「【0006】本発明において、親水性高分子(a)としては、水不溶性吸水性高分子、水溶性高分子などが挙げられ、水不溶性吸水性高分子としては架橋ポリアクリル酸、アクリル酸グラフトデンプンなどが挙げられる。水溶性高分子としては、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、アクリルアミド-アクリル酸ソーダ共重合物、ポリビニルイミダゾリン、ポリビニルアミン、ポリジアリルメチルアンモニウムクロライド、下記一般式(1)で示される1種以上のモノマーまたはこれを40モル%以上含有する重合性モノマー混合物を重合して得られ、かつその[η](1NNaNO3中、25℃で測定、以下同様)が2以上であるカチオン性水溶性高分子などが挙げられる。
【0007】

[式中、R^(1)は、HまたはCH_(3);R^(2)は、H、CH_(3)、C_(2)H_(5)またはベンジル基であり、3個のR^(2)はそれぞれ異なっていてもよく;Xは、OまたはNH;Yは、CH_(2)CH_(2)、CH_(2)CH_(2)CH_(2)またはCH_(2)CH(OH)CH_(2);ZはCl、Br、I、1/2SO_(4)またはCH_(3)SO_(4)である。]」
(ウ)「【0009】一般式(1)のモノマーと他のコモノマーとを共重合する場合、他のコモノマーとしては公知のものが使用できるが、例えば、アクリルアミド、ビニルピロリドン、アクリル酸、アクリル酸ソーダ、アクリル酸カルシウム、マレイン酸、マレイン酸ソーダ、アクリロイルアミノ-2-メチルプロピルスルホン酸ソーダ、アクリロイルアミノ-2-メチルプロピルスルホン酸亜鉛等の水溶性モノマー、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等の油溶性モノマー等が挙げられる。この他のコモノマーのうち実用面および効果面から好ましいものは水溶性モノマーであり、同じ理由でさらに好ましいものはアクリルアミドである。一般式(1)のモノマーは他のコモノマーとの合計モル数に対して40モル%以上である。好ましくは50モル%以上、より好ましくは60?97モル%である。40モル%を下回ると本発明の効果が小さくなる傾向にあり、50モル%以上、さらには60?97モル%で効果が最も高い。」
(エ)「【0010】この一般式(1)のモノマーおよび必要により他のコモノマーを用いた水溶性高分子は、公知の方法、たとえば水溶液重合、水と有機溶剤を用いた乳化重合、懸濁重合などにより製造できる。水溶液重合の場合、モノマー濃度が通常10?80重量%となるようにモノマー水溶液として系内を不活性ガスで置換した後、公知の重合触媒(過硫酸塩たとえば過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウム;有機過酸化物たとえばベンゾイルパーオキシド;アゾ系化合物たとえば2,2′-アゾビス-(アミジノプロパン)ハイドロクロライドおよびアゾビスシアノバレリン酸;およびレドックス触媒(過酸化物(H_(2)O_(2)、過硫酸カリウムなど)と還元剤(重亜硫酸ソーダ、硫酸第一鉄など)との組合せ)を加えて20?100℃程度で数時間重合を行う。また、光増感剤を加えた後、紫外線等を照射してもよい。粉末化を行うには、このようにして得られた重合物を適宜細断して熱風乾燥、溶剤沈澱・乾燥し、粉砕すればよい。」
(オ)「【0013】本発明において、水に難溶または実質的に不溶性であり、粒径10?200μmであり、含水率が15重量%未満の粉末状物質(b)としては、この範囲の公知の粉末状物質が使用できるが、(b)の具体例としては以下のものが挙げられる。
(1)無機粉末:酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ほう砂など
(2)長鎖アルキル基をもつ有機粉末:ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸ソーダ、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸アルミニウム、ラウリルアミン、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミド、エチレンジアミンビスステアリルアミド、トリエチレンテトラミンジラウレート、ジステアリルベンジルメチルアンモニウムクロライドなど
(3)長鎖アルキル基をもたない有機粉末:ジシアンジアミド、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、プロピルセルロースなど」(当審注:丸付き文字は起案システム上表記できないので、「(1)」「(2)」と記した。以下も同様。)
(カ)「【0015】本発明において100℃以上の沸点を有し50℃で液状の物質(c)としては、この範囲の公知のものが使用できるが、具体例としては以下のものが挙げられる。
(1)界面活性剤:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ソルビタンジラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、N,Nジヒドロキシエチルラウリルアミド、N,Nポリオキシエチレンステアリルアミド、ポリエチレングリコール(重合度20)、ポリオキシエチレンプロピレンブロック付加物など
(2)有機溶剤:鉱物油、流動パラフィン、グリセリン、ジエチレングリコール、DMSOなど
(3)シリコン系化合物:シリコンオイル、シリコンオイルエマルションなど
(c)は通常50℃で液状であるが、実使用の便宜から好ましくは常温で液状である。さらに効果面を加味すると、好ましくはシリコン系化合物でありシリコンオイルが最も好ましい。」
(キ)「【0017】(b)および(c)で(a)の粉末を処理する方法としては、例えば、(b)および(c)を、
(1)(a)を重合する前のモノマー中に添加する方法、
(2)(a)を粉末化する前の重合ゲルに添加する方法、
(3)(a)の粉末に添加する方法
などが挙げられる。これらの中で好ましいものは効果の面から(3)の方法である。
【0018】また、(b)と(c)との添加の順序は限定なく、例えば、
(1)先に(b)で(a)の粉末を処理した後に(c)で処理する方法、
(2)先に(c)で(a)の粉末を処理した後に(b)で処理する方法、
(3)(b)と(c)とで同時に(a)の粉末を処理する方法
などが挙げられる。これらの中で好ましいものは効果の面から(1)の方法である。」
(ク)「【0023】実施例1?6
アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド0.8モル、アクリルアミド0.2モルの共重合物([η]6.1)の粉末(平均粒系0.9mm、含水率7.5重量%)に、表1の(A)に示す化合物(平均粒系50?70μm)を添加してブレンドし、さらにシリコンオイルを添加(0.2重量%/共重合物)してブレンドした。結果は表2に示す。」
(ケ)「【0027】
【表1】


(コ)「【0032】実施例13?16
実施例1と同じ共重合物に、ジラウリルアミン(平均粒系74ミクロン)を添加してブレンドし(添加量0.5重量%/共重合物)、さらに表4に示す化合物を添加してブレンドした。結果は表5に示す。」
(サ)「【0036】
【表4】



(2)引用例2の記載事項
原査定の拒絶の理由にて引用例2として引用され、本願優先日前に頒布された国際公開第2009/5114号(以下、「引用例2」という。)には、「粒子状吸水剤およびその製造方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
(シ)「請求の範囲
[1]ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とし、キレート剤および燐化合物を含む粒子状吸水剤。
・・・
[10]吸水性樹脂がさらに有機架橋剤で表面架橋されている請求の範囲第1項?第9項の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。」
(ス)「[0003] 従来から上記の吸水剤に望まれる吸水特性としては、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、吸水速度、無加圧下通液性、加圧下通液性、耐衝撃性、耐尿性、流動性、ゲル強度、粒度など数多くの特性(パラメータ)が知られ、また、さらに同じ物性(例、無加圧下吸収倍率)の中でも種々の観点で数多くの規定(パラメータ測定法)が提案されている。」(セ)「[0041](5)粒子状吸水剤の製造方法
本発明の粒子状吸水剤はその製造方法の一例として、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液を架橋重合する工程、重合で得られた含水ゲル状重合体を乾燥する工程を含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法であって、キレート剤および燐化合物を下記吸水性樹脂の製造工程に添加する。」
(ソ)「[0091](15)表面架橋工程(工程E)
吸水性樹脂の表面架橋とは、重合体内部に均一な架橋構造を有する吸水性樹脂の表面層(表面近傍:通常数10μm以下の近傍)にさらに架橋密度の高い部分を設けることであり、表面でのラジカル架橋や表面重合で高架橋層を形成してもよく、表面架橋剤との架橋反応で表面架橋してもよい。」
(タ)「[0112] なお、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法は、界面活性剤の添加工程を含んでいてもよい。界面活性剤の添加工程とは、界面活性剤を粒子状吸水剤の製造工程の途中または粒子状吸水剤の製造工程終了後に添加する工程をいう。界面活性剤は前記工程(D)、工程(E),工程(F)または工程(F)の後、で添加されるが、好ましくは前記工程(E)、工程(F)または工程(F)の後で添加される。すなわち、表面架橋工程と同時または、多価金属塩による表面処理と同時または、多価金属塩による表面処理以降に添加することが好ましい。
[0113] そのため、表面架橋剤と水ないし親水性有機溶媒に界面活性剤を混合した溶液を用いて前記表面架橋する方法や、前記多価金属溶液に界面活性剤を混合した溶液で表面処理する方法が好ましく例示される。」
(チ)「[0135](b)加圧下吸収倍率(AAP,Absorbency against Presure)
本発明の粒子状吸水剤は上記表面架橋を達成手段の一例として、1.9kPaの加圧下、または4.9kPaの加圧下での0.9質量%の塩化ナトリウムに対する吸収倍率(AAP)が好ましくは20(g/g)以上、より好ましくは25(g/g)以上に制御される。
[0136]1.9kPaまたは4.9kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が20(g/g)未満の場合、例えば、オムツに用いた場合、戻り量、いわゆるRe-wetが多くなり、赤ちゃんの肌あれを引き起こすことがあるため好ましくない。」

4.引用例1に記載された発明
記載事項(ア)によれば、引用例1には、親水性高分子(a)の粉末100重量部を、水に難溶または実質的に不溶性の粉末状物質(b)0.05?5重量部および100℃以上の沸点を有し50℃で液状の物質(c)0.0002?5重量部により処理して、親水性高分子粉末組成物を製造することが記載されており、親水性高分子(a)に対する物質(b)及び(c)の割合を「重量%」で表記しても、それぞれ「0.05?5重量%」および「0.0002?5重量%」となる。
記載事項(エ)によれば、引用例1には、親水性高分子(a)の粉末は、モノマーを重合して得られた重合物を熱風乾燥又は溶剤沈澱・乾燥し、粉砕して製造されることが記載されている。
記載事項(キ)(ケ)(コ)によれば、引用例1の実施例16には、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドとの共重合物の粉末に、ジラウリルアミンを0.5重量%添加してブレンドし、さらにN,Nジヒドロキシエチルラウリルアミドを0.2重量%添加してブレンドすることが記載されている。
したがって、引用例1には、
「親水性高分子(a)である、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドのモノマーを重合して得られた共重合物を、熱風乾燥又は溶剤沈澱・乾燥し、粉砕して製造された粉末100重量部に対し、ジラウリルアミンを0.5(重量%/共重合物)添加し、さらにN,Nジヒドロキシエチルラウリルアミドを0.2(重量%/共重合物)添加して、親水性高分子粉末組成物を製造する方法。」が記載されている(以下「引用発明1」という。)

3.対比・判断
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「モノマー」、「熱風乾燥又は溶剤沈澱・乾燥」は、本願発明1の「単量体」、「乾燥」に相当する。
引用発明1の「ジラウリルアミン」(ジドデシルアミン:CH_(3)(CH_(2))_(11)NH(CH_(2))CH_(3) 融点45-47℃)は、窒素(N)原子に、C_(12)H_(25)のドデシル基が2つ、水素(H)原子が1つ結合した化合物である。
一方、本願発明の「長鎖アルキル化合物」は、本願明細書段落【0129】によれば、「脂肪族アミン」を含み、段落【0137】よれば、融点は、「20?350℃が好ましく、40?350℃がより好まし」いものであるから、引用発明1の「ジラウリルアミン」は、本願発明1の「炭素数8?30の炭化水素鎖を有」する「長鎖アルキル化合物」に相当する。
引用発明1の「親水性高分子粉末組成物」と、本願発明1の「粒子状吸水剤」は、「粒子」である点で共通する。
引用発明1の「ジラウリルアミン」の添加量は「0.5(重量%/共重合物)」であるから、本願発明1における「長鎖アルキル化合物」の添加量「0.001?5重量%」の範囲に含まれる。
記載事項(カ)によれば、引用発明1の「N,Nジヒドロキシエチルラウリルアミド」は「界面活性剤」であるから、本願発明1の「界面活性剤」に相当する。
したがって、本願発明1と、引用発明1とは、
「樹脂を主成分とする粒子の製造方法であって、
単量体を重合する工程、重合工程後の乾燥後の樹脂に対して、樹脂に対して、長鎖アルキル化合物を0.5重量%添加する工程、当該長鎖アルキル化合物を含む樹脂に対して、界面活性剤を添加する工程を順次含み、
上記長鎖アルキル化合物の90重量%以上が炭素数8?30の炭化水素鎖を有する、粒子の製造方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明1では、重合により樹脂を製造するための単量体の主成分が「アクリル酸(塩)」であり、製造される樹脂が「ポリアクリル酸(塩)系」の樹脂であり、重合工程では単量体の「水溶液」を重合しているのに対し、引用発明1では、重合するモノマーが「アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミド」であり、製造される樹脂が「ポリアクリル酸(塩)系」の樹脂であるか、該モノマーが「水溶液」であるかは不明である点。

(相違点2)
本願発明1の樹脂が、「吸水性樹脂」であり、製造される粒子が「粒子状吸水剤」であるのに対し、引用発明1の「親水性高分子(a)」が「吸水性樹脂」であるかは不明であり、製造された「親水性高分子粉末組成物」が「粒子状吸水剤」であるかも不明である点。

(相違点3)
本願発明1が、「吸水性樹脂の2.06kPa荷重下における加圧下吸水倍率(AAP)を20[g/g]以上に制御する工程」をさらに含んでいるのに対し、引用発明1は、当該工程を有していない点。

(2)判断
(相違点1)(相違点2)について
本願明細書の段落【0035】、【0046】の記載によれば、本願発明1における単量体は、「重合後」の「加水分解(鹸化)」でポリアクリル酸(塩)を生成する単量体となるものを用いてもよいものであるといえる。
ここで、引用例1の記載事項(イ)の一般式(1)を参酌すれば、引用発明1の「アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド」は、「アクリル酸」と「エチルトリメチルアンモニウムクロライド」とからなる「エステル」であり、「エステル」は、加水分解すれば「カルボン酸」が生成するものである。
そして、引用例1の記載事項(イ)に、親水性高分子(a)として、「ポリアクリル酸(塩)」に含まれる「架橋ポリアクリル酸」、「ポリアクリル酸ソーダ」が記載されていることから、引用発明1の「アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドのモノマーを重合して得られた共重合物」には、「重合後」に「加水分解(鹸化)」して生成される「ポリアクリル酸(塩)」も含まれるといえる。
一方、引用発明1の「アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドのモノマーを重合して得られた共重合物」が、「重合後」に「加水分解(鹸化)」して生成される「ポリアクリル酸(塩)」を含まないとしても、引用例1の記載事項(イ)に、「架橋ポリアクリル酸」、「ポリアクリル酸ソーダ」が記載されており、「架橋ポリアクリル酸」、「ポリアクリル酸ソーダ」は、「アクリル酸」、「アクリル酸ソーダ」を「重合」することによって得られる「ポリアクリル酸(塩)」であるから、引用発明1において、親水性高分子(a)を、「ポリアクリル酸(塩)」である「架橋ポリアクリル酸」、「ポリアクリル酸ソーダ」とすることも、当業者が容易に想到し得る事項にすぎない。
また、引用例1の記載事項(ウ)によれば、一般式(1)に該当する「アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド」と共重合させる「他のコモノマー」として、「アクリル酸、アクリル酸ソーダ、アクリル酸カルシウム」を用いてもよく、この「他のコモノマー」の割合は、「一般式(1)のモノマーは他のコモノマーとの合計モル数」に対し、最大で「60モル%」とできるものであって、この割合を「50モル%」以上とした場合、「重合物」は「アクリル酸(塩)の繰り返し単位を主成分」ものとなるから、引用発明1において、「アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド」と共重合させる「他のコモノマー」を、「50モル%」以上の「アクリル酸、アクリル酸ソーダ、アクリル酸カルシウム」として、親水性高分子(a)を「ポリアクリル酸(塩)」とすることも、当業者が容易に想到し得る事項にすぎない。
さらに、記載事項(イ)には、「架橋ポリアクリル酸」が水不溶性の「吸水性」高分子であることも記載されており、引用発明1において、親水性高分子(a)を「架橋ポリアクリル酸」とした場合、「親水性高分子(a)」は「吸水性樹脂」となり、製造された「親水性高分子粉末組成物」も、「粒子状吸水剤」であるといえる。
加えて、例えば引用例2の記載事項(ス)に記載されているように、アクリル酸(塩)を重合してポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を製造する際に、単量体を「水溶液」の形態とすることは技術常識であるといえる。
したがって、(相違点1)(相違点2)は、本願発明と引用発明1との実質的な相違点でなく、実質的な相違点であるとしても、引用発明1において、親水性高分子(a)を、「吸水性」高分子である「架橋ポリアクリル酸」とし、「水溶液」の形態の単量体を重合させて製造することは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点3)について
本願明細書の段落【0087】に、「表面架橋によって好ましくは後述するAAPの範囲に制御されるが、表面架橋工程によって2.06kPaの荷重下における加圧下吸水倍率(AAP)が20[g/g]以上に制御される。」と記載されており、段落【0259】に、「AAPは(5-2)にて後述する方法で規定することができ、前記(2-1-4)に記載の表面架橋の割合等で適宜調整することができる。」と記載されていることから、本願発明1における「吸水性樹脂の2.06kPa荷重下における加圧下吸水倍率(AAP)を20[g/g]以上に制御する工程」とは、「表面架橋工程」等であるといえる。
一方、引用例2の記載事項(サ)(セ)には、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂に表面架橋を施して粒子状吸水剤を製造することが記載されており、また、記載事項(タ)には、当該表面架橋により、本願発明1の「2.06kPa」に近く、かつ、やや小さい「1.9kPa」及び、「2.06kPa」より大きい「4.9kPa」の両方の加圧下で、0.9質量%の塩化ナトリウムに対する吸収倍率(AAP)が、20(g/g)以上に制御し得ることが記載されている。
さらに、引用例2の記載事項(シ)には、「加圧下吸収倍率」が、従来から吸水剤に望まれる吸水特性の1つであることも記載されている。
したがって、引用発明1においても、吸水材に望まれる周知の吸水特性である「加圧下吸水倍率」の向上のため、「親水性高分子(a)」である「架橋ポリアクリル酸」に表面架橋を施すことによって、該「加圧下吸水倍率」を、「1.9kPa」と「4.9kPa」の間の「2.06kPa」加圧下で、「0.9質量%の塩化ナトリウム」に対して「20[g/g]以上」になるように制御することは、当業者が容易になし得る事項である。

加えて、(相違点1)-(相違点3)を採用することによる効果も格別なものとはいえないので、本願発明1は、引用発明1及び引用例2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.平成28年6月22日付け上申書の検討
請求人は、当審からの審理終結通知を受領後に、平成28年6月22日付けで、特許請求の範囲につき、独立請求項である補正前の請求項1及び請求項21を、下記の新たな請求項1及び請求項13とする補正案を含む上申書を提出したので、念のため当該上申書について検討する。
(補正前)
「第2.[補正却下の決定の結論][理由]1.」の(補正前)の欄に同じ

(補正後)
「【請求項1】
表面架橋されたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とし、当該吸水性樹脂に対して長鎖アルキル化合物、有機ポリシロキサン、有機高分子化合物から選ばれる水不溶性或いは水難溶性の化合物を0.001?5重量%(但し、長鎖アルキル化合物が金属石鹸に該当する場合は0.001重量%以上、1.0重量%未満)含み、表面に界面活性剤の被膜を備える粒子状吸水剤であって、
上記長鎖アルキル化合物が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖ステアリン酸エステル、パルミチン酸から選択され、
上記有機ポリシロキサンが、分子量1000以上のエポキシ変性又はアミノ変性シリコーンであり、
上記有機高分子化合物が、ポリエチレンであり、
衝撃試験後の吸湿ブロッキング率が0?30重量%であり、かつ、20重量%食塩水垂直吸収指数が1.5?10.0[g/g]であり、2.06kPaの荷重下における加圧下吸水倍率(AAP)が20[g/g]以上であることを特徴とする、粒子状吸水剤。」
「【請求項13】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法であって、
アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液を重合する工程、重合工程後の乾燥前または乾燥後の吸水性樹脂に対して、長鎖アルキル化合物、有機ポリシロキサン、有機高分子化合物から選ばれる水不溶性或いは水難溶性の化合物を0.001?5重量%(但し、長鎖アルキル化合物が金属石鹸に該当する場合は0.001重量%以上、1.0重量%未満)添加する工程、当該長鎖アルキル化合物、有機ポリシロキサン、有機高分子化合物の何れか一つ以上を含む吸水性樹脂に対して、界面活性剤の溶液を添加する工程を順次含み、
吸水性樹脂の2.06kPa荷重下における加圧下吸水倍率(AAP)を20[g/g]以上に制御するための表面架橋工程をさらに含み、
上記長鎖アルキル化合物が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖ステアリン酸エステル、パルミチン酸から選択され、
上記有機ポリシロキサンが、分子量1000以上のエポキシ変性又はアミノ変性シリコーンであり、
上記有機高分子化合物が、ポリエチレンであることを特徴とする、粒子状吸水剤の製造方法。」

(1)補正案における補正の目的要件について
上申書に記載された当該補正案は、拒絶査定の対象である平成26年9月16日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲を基準とするものであるため、本件補正と同じく、補正の目的要件について検討する。
上申書に記載された当該補正案は、発明特定事項である「分子量1000以上」の「有機ポリシロキサン」につき、「親水性官能基を有する常温で固体または液体の化合物」を「エポキシ変性又はアミノ変性シリコーン」とする補正事項を含むものである。
ここで、補正後の請求項1、13に記載された「エポキシ変性」「シリコーン」には、「エポキシ基」が含まれていると認められるが、当該「エポキシ基」は、本願明細書の段落【0131】で例示された「親水性官能基」に該当せず、当該「エポキシ基」が「親水性官能基」であるという技術常識も存在しない。
してみれば、補正後の請求項1、13に記載された「エポキシ変性」「シリコーン」は、補正前の請求項1、21に記載された、「親水性官能基を有する」「有機ポリシロキサン」の下位概念とはいえないから、当該補正事項は、補正前の請求項1、21に記載された発明特定事項を限定するものとはいえない。
よって、当該補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものでない。
さらに、当該補正事項が、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものでないことも明らかであるから、同条第5項第3号または第4号に掲げる事項を目的とするものともいえない。
したがって、上申書に記載された当該補正案の内容は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)補正案に記載された請求項13に係る発明の進歩性について
上記のとおり、上申書に記載された当該補正案の内容は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが、当該補正案に記載された請求項13に係る発明(以下「補正案発明1」という。)の進歩性について、更に検討する。
補正案発明1と引用発明1とを比較すると、両者は、本願発明1と引用発明1との一致点
「樹脂を主成分とする粒子の製造方法であって、
単量体を重合する工程、重合工程後の乾燥後の樹脂に対して、樹脂に対して、長鎖アルキル化合物を0.5重量%添加する工程、当該長鎖アルキル化合物を含む樹脂に対して、界面活性剤を添加する工程を順次含み、
上記長鎖アルキル化合物の90重量%以上が炭素数8?30の炭化水素鎖を有する、粒子の製造方法。」である点で一致し、「第3.3.(1)(2)」で対比・判断した(相違点1)-(相違点3)に加えて、下記(相違点4)、(相違点5)で相違する。

(相違点4)
補正案発明1で添加される「界面活性剤」が、界面活性剤の「溶液」であるのに対し、引用発明1で添加される「N,Nジヒドロキシエチルラウリルアミド」は、「溶液」であるか不明である点。

(相違点5)
補正案発明1では、吸水性樹脂に対して添加する「長鎖アルキル化合物」が、「ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖ステアリン酸エステル、パルミチン酸から選択され」たものであるのに対し、引用発明1では、親水性高分子(a)に対して添加する「長鎖アルキル基ををもつ有機粉末」が、「ジラウリルアミン」である点。

(相違点1)-(相違点3)については、「第3.3.(2)」で判断を行っているので、(相違点4)、(相違点5)について判断する。

(相違点4)について
記載事項(オ)によれば、引用例1には、「界面活性剤」を、「実使用の便宜」から「好ましくは常温で液状」のものとすることが記載されていることから、引用発明1における「界面活性剤」である「N,Nジヒドロキシエチルラウリルアミド」は、「液状」で添加されるものであるといえる。
そして、引用例2の記載事項(ソ)に記載されているように、「界面活性剤」を「溶液」として添加することは周知の技術に過ぎないから、引用発明1において、「界面活性剤」である「N,Nジヒドロキシエチルラウリルアミド」を、「溶液」として添加することは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点5)について
引用例1の記載事項(エ)(オ)によれば、引用発明1で添加される「N,Nジヒドロキシエチルラウリルアミド」と組み合わせて用いることが可能な「長鎖アルキル基ををもつ有機粉末」として、「ステアリン酸亜鉛」、「ステアリン酸カルシウム」も記載されているから、この点は引用発明1との新たな相違点とならない。

したがって、補正案発明1は、引用発明1及び引用例2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

上記(1)(2)に記載したとおりであるから、当該上申書の補正案を採用することはできない。

第5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-20 
結審通知日 2016-06-21 
審決日 2016-06-29 
出願番号 特願2013-507765(P2013-507765)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 直子  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 萩原 周治
中澤 登
発明の名称 粒子状吸水剤およびその製造方法  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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