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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1318464 |
審判番号 | 不服2015-12423 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-01 |
確定日 | 2016-08-18 |
事件の表示 | 特願2012-257841号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 9日出願公開、特開2014-104056号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年11月26日の出願であって、平成26年4月23日付けで手続補正がなされ、平成26年9月2日付けで拒絶理由通知がなされ、平成26年10月28日付けで手続補正がなされたが、平成27年4月2日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、これと同時に拒絶査定がなされ、これに対し平成27年7月1日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、これと同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の概要 平成26年10月28日の手続補正は既に補正却下の決定がなされている。本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載を含む補正であり、平成26年4月23日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。 (補正前:平成26年4月23日付け手続補正書) 「【請求項1】 始動条件の成立により特別遊技を行うか否かを判定する判定手段と、この判定手段による判定結果に基づいて所定の演出手段に遊技演出を行わせる演出制御手段とを備えた遊技機において、 前記演出制御手段は、 複数の楽曲が収録された楽曲データ記憶手段と、 前記楽曲データ記憶手段に収録された複数の楽曲の何れかを再生させる楽曲演出制御手段とを備え、 前記楽曲演出制御手段は、 前記楽曲データ記憶手段に収録された複数の楽曲の中から再生を許可する複数の解放楽曲を指定する解放楽曲指定手段と、 前記解放楽曲指定手段により指定された複数の解放楽曲の中から再生させる再生楽曲を選択する再生楽曲選択手段とを有し、 前記解放楽曲指定手段は、 遊技内容に基づいて、前記楽曲データ記憶手段に収録されている複数の楽曲のうち未だ解放楽曲として指定されていない楽曲の何れかを新たに解放楽曲として指定するか否かを判定する楽曲解放判定手段を有し、 前記楽曲解放判定手段により新たな楽曲を解放楽曲として指定すると判定された場合、該新たな楽曲を既に解放楽曲として指定されていた楽曲に解放楽曲として追加することを特徴とする遊技機。」 (補正後:本件補正である平成27年7月1日付け手続補正書) 「【請求項1】 始動条件の成立により特別遊技を行うか否かを判定する判定手段と、この判定手段による判定結果に基づいて所定の演出手段に遊技演出を行わせる演出制御手段とを備え、遊技媒体を用いた遊技を実行可能な遊技機において、 前記演出制御手段は、 複数の楽曲が収録された楽曲データ記憶手段と、 前記楽曲データ記憶手段に収録された複数の楽曲の何れかを再生させる楽曲演出制御手段とを備え、 前記楽曲演出制御手段は、 前記楽曲データ記憶手段に収録された複数の楽曲の中から再生を許可する複数の解放楽曲を指定する解放楽曲指定手段と、 前記解放楽曲指定手段により指定された複数の解放楽曲の中から再生させる再生楽曲を選択する再生楽曲選択手段とを有し、 前記解放楽曲指定手段は、 実行された遊技内容に基づいて、前記楽曲データ記憶手段に収録されている複数の楽曲のうち未だ解放楽曲として指定されていない楽曲の何れかを新たに解放楽曲として指定するか否かを判定する楽曲解放判定手段を有し、 前記楽曲解放判定手段により新たな楽曲を解放楽曲として指定すると判定された場合、複数の楽曲の中から新たに解放楽曲として指定する楽曲を、遊技の実行前に予め設定されている楽曲解放順序に従って指定し、その指定した楽曲を既に解放楽曲として指定されていた楽曲に解放楽曲として新たに追加することを特徴とする遊技機。」 2.補正の適否 本件補正により、請求項1の記載は上記1.のように補正されたが、具体的には以下のとおりである。 (1)「遊技機」について、「遊技媒体を用いた遊技を実行可能な遊技機」とした点。 (2)解放楽曲として指定するか否かを判定する楽曲解放判定手段について、「遊技内容に基づいて、」を「実行された遊技内容に基づいて、」とした点。 (3)楽曲解放判定手段により新たな楽曲を解放楽曲として指定すると判定された場合、「該新たな楽曲を既に解放楽曲として指定されていた楽曲に解放楽曲として追加する」を、「複数の楽曲の中から新たに解放楽曲として指定する楽曲を、遊技の実行前に予め設定されている楽曲解放順序に従って指定し、その指定した楽曲を既に解放楽曲として指定されていた楽曲に解放楽曲として新たに追加する」とした点。 上記(1)は遊技機を媒体を用いた遊技を実行可能として遊技方法を限定するものであり、上記(2)は「遊技内容」を実行されたとして限定するものであり、上記(3)は「解放楽曲」の指定について限定するものである。 そして、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下に検討する。 (1)本件補正後の請求項1に係る発明 補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1.の本件補正の概要において示したとおりのものである。 (2)刊行物1 本願の出願前に頒布された刊行物である「特開2007-252401号公報」(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 (ア)「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、遊技者にとって有利となる大当たりが所定の確率で発生すると共に、その遊技中に遊技者を惹き付ける映像シーン、楽曲等のコンテンツが表示・出力されるように構成した遊技機に関するものである。」 (イ)「【発明の効果】 【0005】 遊技中に遊技者が選択可能となるコンテンツの数が次第に増えることから、常に遊技者は次に選択可能となる新たなコンテンツを楽しみとして遊技を続けることができ、遊技性を向上させる。」 (ウ)「【0009】 図6はCPU,ROM,RAM,I/Oからなる遊技制御基板20に接続される本発明に関連する入出力機器を示したブロック図で、21は始動入賞口3に入賞した遊技球を検出する始動スイッチ、22,23は可変入賞装置4への入賞球を計数する大入賞口スイッチと継続スイッチ、24,25は前記普通入賞口5の入賞球を検知する入賞口スイッチ、26は始動入賞口3の羽根を開閉動させるソレノイド、27は可変入賞装置4の開閉扉を開閉動させるソレノイドである。なお、十字ボタン10aと決定ボタン10bとからなる前記設定スイッチ10は該遊技制御基板に接続されている。 【0010】 また、28はCPU,ROM,RAM,I/Oによって構成された音声画像制御基板で、該音声画像制御基板に前記画像出力装置2および前記音響出力装置9が接続されている。また、該音声画像制御基板28のROMには変動図柄画像、効果音等のデータが記憶されている他、映像シーン、楽曲等からなる多数のコンテンツが記憶されており、前記遊技制御基板20の遊技制御回路から指令を受けることにより、該音声画像制御基板28が該ROMから読み込んだ画像および音声を合成し、画像出力装置2および音響出力装置9に指定された映像シーン、楽曲等を表示・出力できるように構成している。」 (エ)「【0012】 図7はこのパチンコ遊技機の遊技制御回路の作動を示すフローチャートで、遊技球が始動入賞口3に入賞し、始動スイッチ21を作動させることにより始動条件が成立すると、ステップaにて大当たりの可否およびリーチ演出の有無、種類等を決めるための乱数を取得する。次いで、ステップbにて画像出力装置2に1?9の数字および有名アーティストの画像等からなる十数種類の図柄を3列に変動表示させる。また、ステップcにて後述する特典フラグの有無を判別し、特典フラグがある場合はステップdにて後述する選択フラグに従い所定のコンテンツをデモ演出する。具体的には選択フラグに従い特定のヒット曲のインストルメンタル版(歌唱がなく器楽演奏だけのもの)がこの図柄変動中に音響出力装置9のスピーカから遊技機前面に音響出力される。また、ステップe,ステップfではリーチ演出の有無に従いこの図柄変動を各列順に停止させ、ステップgにて各列の図柄変動を完全に停止させる。なお、上記音響出力はこの図柄変動中に継続的に行われる。そして、完全停止した図柄が「222」或いは「777」等の所謂ゾロ目であった場合は大当たりとなり、「131」或いは「793」のように不揃いであるとハズレとなり、夫々その結果が画像出力装置2に表示される。 【0013】 そして、大当たりが発生した場合、ステップhからステップiに移行し、図8に例示したようなコンテンツ選択画面が画像出力装置2に表示される。なお、このコンテンツ選択画面の表示は選択フラグに従い既に選択可能となっている複数のコンテンツに上記図柄変動中に音響出力された楽曲の歌唱版を新たに選択可能とする。そして、ステップjにて遊技者が所定時間内に前記設定スイッチ10の決定ボタン10bを押すことによりそのうちの好みの1つのコンテンツが選択され、ステップkにて大当たり動作が始まり、ステップlにて選択されたコンテンツが画像出力装置2および音響出力装置9に表示・出力される。ステップkの大当たり動作は、周知のように、可変入賞装置4の開閉扉が継続的に開放されて1ラウンド目が開始され、該可変入賞装置4内に遊技球が所定個数入るかまたは十数秒経過すると該開閉扉が一旦は閉じるが該該可変入賞装置4内に入った遊技球が特定入賞口に入っていることを条件として該開閉扉がすぐに再び継続的に開放されて2ラウンド目が開始され、同様に16ラウンドまで該開閉扉が継続的に開放されることにより多数の遊技球が該可変入賞装置4に入賞し、遊技者に多数の賞球が払い出されるもので、この大当たり動作の間に上記のように選択されたコンテンツが画像出力装置2および音響出力装置9に表示・出力されることから遊技者はたっぷりとこのコンテンツを楽しむことができる。具体的には画像出力装置2にそのアーティストのライブ映像が表示されると共にそのアーティストによる歌唱(オリジナル版)がスピーカから音響出力される。また、同時に変動部材14a?14mがピアノ鍵盤のように上下動し、雰囲気を盛り上げる。」 (オ)「【0014】 そして、このような大当たり動作が終了すると、ステップmにてこの大当たりが「333」「555」「777」のように奇数のゾロ目である特別図柄によるものか、或いは「222」「444」のように偶数のゾロ目である通常図柄によるものかが判別され、奇数のゾロ目でなったものであった場合はステップnにて特典フラグが付与される。・・・」 (カ)「【0015】 表1はこのパチンコ遊技機において大当たりが発生する度に新たに選択可能となる曲名を網羅したもので、大当たりが13回以上発生した場合は総ての楽曲が選択可能となる。」 (キ)【図6】は、遊技制御基板20、音声画像制御基板28に接続される入出力機器を示したブロック図であり、音声画像制御基板28はCPU、ROM等を備え、画像出力装置2および音響出力装置9が接続されている。 (ク)上記(カ)の記載を参酌すると、【表1】には、1回目?12回目までの大当たり中の規定楽曲が並べられている(「ギリギリハートの子守唄」?「人魚」)。新たに選択可能となる楽曲は、この規定楽曲から追加されることは明らかである。 したがって、上記記載事項(ア)?(ク)を総合すれば、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 「遊技球が始動入賞口3に入賞し、始動スイッチ21を作動させることにより始動条件が成立すると、大当たりの可否およびリーチ演出の有無、種類等を決めるための乱数を取得し、大当たりが発生した場合、楽曲等のコンテンツが表示・出力される遊技機において、 CPUを備えた音声画像制御基板28は、ROMに楽曲等のコンテンツが記憶され、画像出力装置2および音響出力装置9に楽曲等を表示・出力させ、 特典フラグがある大当たりが発生した場合、既に選択可能となっている複数のコンテンツに図柄変動中に音響出力された楽曲の歌唱版を新たに選択可能とし、設定スイッチ10の決定ボタン10bを押すことにより画像出力装置2に表示されるコンテンツ選択画面のうちの好みの1つのコンテンツが選択され、 大当たり動作が始まり、選択されたコンテンツが画像出力装置2および音響出力装置9に表示・出力され、 新たに選択可能となる楽曲を、規定楽曲から追加するようにした遊技機。」 (3)対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1における「遊技球」は、本願補正発明の「遊技媒体」に相当するから、引用発明1も「遊技媒体を用いた遊技を実行可能な遊技機」である。 そして、引用発明1における「大当たりの可否」は、本願補正発明の「特別遊技を行うか否か」に相当し、引用発明1の「乱数を取得」することは、特別遊技を行うか否かを判定するためであるから、引用発明1も本願補正発明の「判定手段」を備えていることは明らかである。 (イ)引用発明1の「楽曲等のコンテンツの表示・出力」、「画像出力装置2および音響出力装置9」は、それぞれ、本願補正発明の「遊技演出」、「所定の演出手段」に相当する。 したがって、引用発明1の「大当たりが発生した場合、楽曲等のコンテンツが表示・出力される」ことは、本願補正発明の「判定結果に基づいて所定の演出手段に遊技演出を行わせる」ことに相当する。 そして、引用発明1の「音声画像制御基板28」は楽曲等のコンテンツが記憶されたROMを備え、楽曲等を表示・出力させ、上記遊技演出を行わせるものであるから、本願補正発明の「演出制御手段」を備えているといえる。 また、引用発明1の「音声画像制御基板28」の「CPU」は、楽曲演出を制御可能であるから、本願補正発明の「楽曲演出制御手段」に相当する。 (ウ)引用発明1の「画像出力装置2に表示されるコンテンツ選択画面」は「設定スイッチ10の決定ボタン10b」により複数のコンテンツから1つのコンテンツ(楽曲等)を選択可能とするものであるから、本願補正発明の「再生楽曲を選択する再生楽曲選択手段」に相当する。そして、引用発明1の「既に選択可能となっている複数のコンテンツ」は、本願補正発明の「複数の楽曲の中から再生を許可する複数の解放楽曲」に相当するから、引用発明1は「解放楽曲指定手段」を備えているといえる。 そして、引用発明1の「解放楽曲指定手段」、「再生楽曲選択手段」は、指定、選択後に楽曲等は表示、出力されることから、「音声画像制御基板28」の「CPU」(楽曲演出制御手段)により制御されていることは明らかである。 (エ)引用発明1の「特典フラグがある大当たりが発生した場合、既に選択可能となっている複数のコンテンツに図柄変動中に音響出力された楽曲の歌唱版を新たに選択可能とし、」における「特典フラグがある大当たり」は、本願補正発明の「実行された遊技内容」に相当する。そして、引用発明1の「既に選択可能となっている複数のコンテンツ」に「楽曲の歌唱版を新たに選択可能」とすることは、本願補正発明の「複数の楽曲のうち未だ解放楽曲として指定されていない楽曲の何れかを新たに解放楽曲として指定するか否かを判定する」ことであるから、引用発明1も本願補正発明の「楽曲解放判定手段」を備えているといえる。また、「楽曲解放判定手段」により解放楽曲は増加するから、引用発明1の「解放楽曲指定手段」は「楽曲解放判定手段」を備えているといえる。 (オ)引用発明1の「新たに選択可能となる楽曲を、規定楽曲から追加する」ためには、「特典フラグがある大当たりが発生した場合、既に選択可能となっている複数のコンテンツ」に「楽曲の歌唱版を新たに選択可能」とし、すなわち新たに解放楽曲として指定するか否かを判定し、指定されることが必要であるから、引用発明1には、本願補正発明の「複数の楽曲の中から新たに解放楽曲として」「指定し、その指定した楽曲を既に解放楽曲として指定されていた楽曲に解放楽曲として新たに追加する」ことが記載されているといえる。 そうすると、両者は、 「始動条件の成立により特別遊技を行うか否かを判定する判定手段と、この判定手段による判定結果に基づいて所定の演出手段に遊技演出を行わせる演出制御手段とを備え、遊技媒体を用いた遊技を実行可能な遊技機において、 前記演出制御手段は、 複数の楽曲が収録された楽曲データ記憶手段と、 前記楽曲データ記憶手段に収録された複数の楽曲の何れかを再生させる楽曲演出制御手段とを備え、 前記楽曲演出制御手段は、 前記楽曲データ記憶手段に収録された複数の楽曲の中から再生を許可する複数の解放楽曲を指定する解放楽曲指定手段と、 前記解放楽曲指定手段により指定された複数の解放楽曲の中から再生させる再生楽曲を選択する再生楽曲選択手段とを有し、 前記解放楽曲指定手段は、 実行された遊技内容に基づいて、前記楽曲データ記憶手段に収録されている複数の楽曲のうち未だ解放楽曲として指定されていない楽曲の何れかを新たに解放楽曲として指定するか否かを判定する楽曲解放判定手段を有し、 前記楽曲解放判定手段により新たな楽曲を解放楽曲として指定すると判定された場合、複数の楽曲の中から新たに解放楽曲として指定し、その指定した楽曲を既に解放楽曲として指定されていた楽曲に解放楽曲として新たに追加する遊技機。」である点で一致しており、次の点で相違する。 (相違点) 新たに解放楽曲として指定する楽曲について、本願補正発明では、遊技の実行前に予め設定されている楽曲解放順序に従って指定しているのに対し、引用発明1は楽曲解放順序が予め設定されているかどうか定かでない点。 (4)判断 そこで、前記相違点について検討する。 刊行物1には上記2(ク)のとおり、【表1】には、1回目?12回目までの大当たり中の規定楽曲が並べられている(「ギリギリハートの子守唄」?「人魚」)ことが記載されている。そして、新たな解放楽曲の指定について、この順番どおり指定させるかどうか定かではないが、遊技の実行前に、例えば、年代順、楽曲のタイトルの「あいうえお順」等のように、予め定められた規則により順番を設定させておくことは当業者なら容易に行えることである。 そして、本願補正発明の作用効果は引用発明1、刊行物1に記載された事項からみて格別のものではない。 したがって、本願補正発明は引用発明1及び刊行物1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。 なお、請求人は審判請求書において、本願補正発明を特開2012-5568号公報に記載された発明と対比して、本願補正発明の進歩性を主張している。しかしながら、上記(2)?(4)の検討のとおり、対比対象が変わったため、請求人の主張は採用できない。 4.むすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 本件補正(平成27年7月1日付け手続補正)は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年4月23日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で前述した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 1.刊行物2 原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である「特開2012-5568号公報」(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 始動条件の成立にもとづいて、各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を行う可変表示手段を備え、該識別情報の可変表示の表示結果が導出されることで遊技の結果が確定され、該遊技の結果が予め定められた特定遊技結果となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御される遊技機であって、 前記識別情報の可変表示の開始後における第1タイミングおよび該第1タイミングよりも後の第2タイミングにおいて、複数の選択肢を遊技者に提示する提示手段と、 前記提示手段により提示した複数の選択肢のうちから1の選択肢の選択を遊技者より受付ける選択受付け手段と、 前記選択受付け手段にて受付けた選択肢に基づいて、該受付けた選択肢に対応する演出を決定する演出決定手段と、 前記演出決定手段にて決定された演出を実行する演出実行手段と、 前記第2タイミングにおいて前記提示手段が提示する選択肢である2次選択肢として、前記第1タイミングにおいて前記提示手段が提示した選択肢である1次選択肢のうち、前記選択受付け手段にて受付けた1次選択肢である1次受付け選択肢に応じた異なる2次選択肢を決定する選択肢決定手段と、 を備える、 ことを特徴とする遊技機。」 (イ)「【0173】 演出制御基板80に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータ100(具体的には、演出制御用CPU101)は、主基板31に搭載されている遊技制御用マイクロコンピュータ560から上述した演出制御コマンドを受信すると、図14および図15に示された内容に応じて演出表示装置9の表示状態を変更したり、ランプの表示状態を変更したり、音声出力基板70に対して音番号データを出力したりする。」 (ウ)「【0267】 演出制御用マイクロコンピュータ100におけるROMには、図29に示す図柄変動制御パターンテーブル180を初めとする、各種の予告演出の演出制御パターンを含む予告演出制御パターンテーブル(図示略)、大当り状態や小当り状態における演出制御パターンを含む各種演出制御パターンテーブル(図示略)が記憶されている。図29に示す図柄変動制御パターンテーブル180には、演出図柄の変動が開始されてから最終停止図柄となる確定演出図柄が停止表示されるまでの期間における、演出表示動作等の演出動作の制御内容を示すデータが、変動パターンに応じて格納されている。各図柄変動制御パターンには、例えば、プロセスタイマ設定値、表示制御実行データ、ランプ制御実行データ、並びに音制御実行データといった演出図柄の可変表示に応じた各種の演出動作を制御するための複数の制御データ(プロセスデータ)が時系列的に設定されている。 【0268】 また、各種演出制御パターンテーブルには、大当り遊技状態や小当り遊技状態に制御されている期間における、各種の演出制御の内容を示すデータが、ラウンド等に応じて格納されている。各演出制御パターンには、プロセスタイマ設定値、表示制御実行データ、ランプ制御実行データといった各種の演出動作を制御するための複数の制御データが時系列的に設定されている。尚、大当り遊技状態の演出制御パターンテーブルには、後述する演出パラメータの値に応じて決定可能な各種楽曲毎に個別に設けられており、大当り遊技状態においては、該大当りの開始時に実行される当り表示処理において演出パラメータの値に応じて決定される各楽曲の演出が実施される。」 (エ)「【0273】 演出制御用CPU101は、これら演出制御パターンに含まれる各種の制御データに従って、演出動作の制御内容を決定する。例えば、プロセスタイマ値がプロセスタイマ設定値のいずれかと合致したときには、そのプロセスタイマ設定値と対応付けられた演出制御実行データに含まれる表示制御実行データにより指定される態様で演出図柄を表示させるとともに、キャラクタ画像や背景画像といった演出画像を演出表示装置9の表示画面に表示させる制御を行う。また、音声制御実行データにより指定される態様でスピーカ27L、27Rから音声を出力させる制御を行うとともに、ランプ制御実行データにより指定される態様で装飾LED25や天枠LED28a、左枠LED28b、右枠LED28c等の発光体を点滅させる制御を行う。なお、プロセスタイマ設定値と対応していても制御対象にならない演出用部品に対応するデータには、ダミーデータ(制御を指定しないデータ)が設定されてもよい。」 (オ)「【0448】 図46は、演出制御プロセス処理における演出図柄変動停止処理(ステップS803)を示すフローチャートである。演出図柄変動停止処理において、演出制御用CPU101は、確定コマンド受信フラグがセットされているか否か確認する(ステップS861)、確定コマンド受信フラグがセットされている場合には、確定コマンド受信フラグをリセットし(ステップS862)、演出図柄表示結果格納領域に格納されているデータ(停止図柄を示すデータ)に従って停止図柄を導出表示する制御を行う(ステップS863)。 【0449】 そして、記憶されている予告演出の種別、セリフ予告における受付け履歴或いはクイズ予告における回答履歴、並びに決定されたストーリーリーチの種別、ステップS863における最終の表示結果(当りかはずれ)に基づいて、図31に示す演出パラメータ変化量テーブルにおけるいずれかの変化条件が満たされているか否かを判定し、満たされている条件が存在する場合には、該満たされている条件に対応するとともに、その時点の始動回数カウンタの始動回数に対応する変化量を特定し、該特定した変化量にて遊技情報テーブルにおける演出パラメータを更新した後(ステップS864)、楽曲追加処理を実施する(ステップS865)。 【0450】 この楽曲追加処理においては、図58に示すように、演出パラメータが更新されることで追加対象となる楽曲が存在するか否かが判断されるとともに、追加対象となる楽曲が存在する場合には、該追加対象となる楽曲が、大当り時の演出楽曲として決定可能に追加される。 【0451】 具体的には、本実施例では、図58に示すように、演出パラメータが10変化する毎にキャラクタA、キャラクタBに対応する楽曲1?楽曲5までの5つの楽曲が、1つづつ追加されるようになっており、例えば、ステップS864にて更新される前の演出パラメータが69で、更新後の演出パラメータが70であれば、キャラクタAに対応するA楽曲2が決定可能に追加される。」 (カ)「【0567】 このように、演出パラメータが100に近づく程、キャラクタAに対応するA楽曲が1曲ずつ追加されていき、演出パラメータが0に近づく程、キャラクタBに対応するB楽曲が1曲ずつ追加されていく。すなわち、遊技者が選択操作を行う機会が増加する、つまり遊技への介入頻度が高くなる程、演出パラメータが100または0に近づき、その結果、新たなA楽曲またはB楽曲が1曲ずつ追加されていき、大当り時において、遊技者が所望する楽曲を選択可能となるため、遊技者の遊技への介入意欲を高めることができる。」 (キ)上記(ア)における「特定遊技状態」は、上記(ウ)【0268】における「大当り遊技状態」を意味することは明らかであり、また、上記(ウ)【0268】には、大当りの開始時に各楽曲の演出が実施されることが記載されている。 そして、上記(イ)における「演出表示装置9」、「ランプ」、「音声出力基板70」は、上記各楽曲の演出手段であることは明らかであり、演出制御用マイクロコンピュータ100により制御されている。 したがって、上記(ア)?(ウ)の記載から、刊行物2には、始動条件の成立にもとづいて、各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を行う可変表示手段を備え、該識別情報の可変表示の表示結果が導出されることで遊技の結果が確定され、該遊技の結果が予め定められた特定遊技結果となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御されるとともに、演出手段に各楽曲の演出を行わせる演出制御用マイクロコンピュータ100を備えた遊技機が記載されているといえる。 (ク)上記(ウ)【0267】には、「演出制御用マイクロコンピュータ100におけるROM」に、大当り状態や小当り状態における演出制御パターンを含む各種演出制御パターンテーブル(図示略)が記憶されることが記載され、また、(ウ)【0268】には、大当り遊技状態の大当り遊技状態の演出制御パターンテーブルには、各種楽曲毎に個別に設けられることが記載されている。したがって、演出制御用マイクロコンピュータ100は各種楽曲が個別に記憶されたROMを備えているといえる。 また、上記(イ)によれば、演出制御用マイクロコンピュータ100は具体的には演出制御用CPU101に演出制御を行わせている。したがって、演出制御用CPU101はROMに記憶された各種楽曲の演出を制御するものであるといえる。 (ケ)上記(オ)には、演出制御用CPU101の制御について記載されている。そして、(オ)【0448】、【0449】には、演出制御用CPU101は、最終の表示結果(当りかはずれ)に基づいて、演出パラメータ変化量テーブルにおけるいずれかの変化条件が満たされているか否かを判定し、条件により、楽曲追加処理を実施することが記載されている。したがって、演出制御用CPU101は、大当たり結果に基づいて、楽曲追加処理を実施する楽曲追加処理手段を備えているといえる。 また、上記(オ)【0450】には、楽曲追加処理においては、演出パラメータが更新されることで追加対象となる楽曲が存在するか否かが判断されるとともに、追加対象となる楽曲が存在する場合には、該追加対象となる楽曲が、大当り時の演出楽曲として決定可能に追加されることが記載されており、したがって、演出制御用CPU101の楽曲追加処理手段は、大当たり結果に基づいて追加対象となる楽曲が存在するか否かを判断する判断手段も備えているといえる。 (コ)そして、上記(カ)には、大当り時において、遊技者が所望する楽曲を選択可能となることが記載されている。そして、上記(オ)【0450】の楽曲追加処理に追加対象の楽曲は追加され、上記(ケ)より、演出制御用CPU101が楽曲追加処理手段を備えている。このような追加処理と選択処理は関連した処理であることを考慮すると、遊技者が所望する楽曲を選択可能とする選択手段は演出制御用CPU101が備えているといえる。 したがって、上記(ア)?(カ)の記載事項、(キ)?(コ)の認定事項を総合すれば、刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 「始動条件の成立にもとづいて、各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を行う可変表示手段を備え、該識別情報の可変表示の表示結果が導出されることで遊技の結果が確定され、該遊技の結果が予め定められた特定遊技結果となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御されるとともに、演出手段に各楽曲の演出を行わせる演出制御用マイクロコンピュータ100を備えた遊技機において、 演出制御用マイクロコンピュータ100は、 各種楽曲が記憶されたROMと、 ROMに記憶された各種楽曲の演出を制御する演出制御用CPU101とを備え、 演出制御用CPU101は、 楽曲追加処理を実施する楽曲追加処理手段、 遊技者が所望する楽曲を選択可能な選択手段を備え、 楽曲追加処理手段は、 大当たり結果に基づいて追加対象となる楽曲が存在するか否かを判断する判断手段を備え、 追加対象となる楽曲が存在する場合には、該追加対象となる楽曲が、大当り時の演出楽曲として決定可能に追加する遊技機」 2.対比 本願発明と引用発明2を対比する。 (ア)引用発明2の「遊技の結果が予め定められた特定遊技結果となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御される」ことから、引用発明2は本願発明の「特別遊技を行うか否かを判定する判定手段」を備えていることは明らかである。 そして、引用発明2の「演出手段」、「各楽曲の演出」は、それぞれ、本願発明の「所定の演出手段」、「遊技演出」に相当するから、引用発明2の「演出手段に各楽曲の演出を行わせる演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本願発明の「所定の演出手段に遊技演出を行わせる演出制御手段」に相当する。 (イ)引用発明2の「各種楽曲が記憶されたROM」、「ROMに記憶された各種楽曲の演出を制御する演出制御用CPU101」は、それぞれ、本願発明の「複数の楽曲が収録された楽曲データ記憶手段」、「楽曲データ記憶手段に収録された複数の楽曲の何れかを再生させる楽曲演出制御手段」に相当する。 したがって、引用発明2の演出制御用マイクロコンピュータ100(演出制御手段)は、各種楽曲が記憶されたROMと、ROMに記憶された各種楽曲の演出を制御する演出制御用CPU101とを備えるから、本願発明の「複数の楽曲が収録された楽曲データ記憶手段と、前記楽曲データ記憶手段に収録された複数の楽曲の何れかを再生させる楽曲演出制御手段」を備えている。 (ウ)引用発明2の演出制御用CPU101(楽曲演出制御手段)は、楽曲追加処理を実施する楽曲追加処理手段を備えており、この楽曲追加により楽曲の選択対象は増加することから、引用発明2の「楽曲追加処理手段」は本願発明の「解放楽曲指定手段」に相当する。 そして、引用発明2の「遊技者が所望する楽曲を選択可能な選択手段」は、本願発明の「解放楽曲指定手段により指定された複数の解放楽曲の中から再生させる再生楽曲を選択する再生楽曲選択手段」に相当する。 したがって、引用発明2は、本願発明の「楽曲演出制御手段は、前記楽曲データ記憶手段に収録された複数の楽曲の中から再生を許可する複数の解放楽曲を指定する解放楽曲指定手段と、前記解放楽曲指定手段により指定された複数の解放楽曲の中から再生させる再生楽曲を選択する再生楽曲選択手段とを有し、」という構成を備えている。 (エ)引用発明2の「大当たり結果に基づいて追加対象となる楽曲が存在するか否かを判断する判断手段」について検討する。まず、引用発明2の「大当たり結果」は本願発明の「遊技内容」に相当する。そして、引用発明2の「追加対象となる楽曲が存在するか否かを判断する」ことは、追加される楽曲が既存の選択対象にない、新たな楽曲か否かを判断することであると解される。 したがって、引用発明2の「大当たり結果に基づいて追加対象となる楽曲が存在するか否かを判断する判断手段」は、本願発明の「遊技内容に基づいて、前記楽曲データ記憶手段に収録されている複数の楽曲のうち未だ解放楽曲として指定されていない楽曲の何れかを新たに解放楽曲として指定するか否かを判定する楽曲解放判定手段」に相当する。 そして、引用発明2の「追加対象となる楽曲が存在する場合」は、本願発明の「新たな楽曲を解放楽曲として指定すると判定された場合」に相当する。また、引用発明2の「追加対象となる楽曲が、大当り時の演出楽曲として決定可能に追加」することは、本願発明の「新たな楽曲を既に解放楽曲として指定されていた楽曲に解放楽曲として追加すること」に相当する。 そうすると、両者は、 「始動条件の成立により特別遊技を行うか否かを判定する判定手段と、この判定手段による判定結果に基づいて所定の演出手段に遊技演出を行わせる演出制御手段とを備えた遊技機において、 前記演出制御手段は、 複数の楽曲が収録された楽曲データ記憶手段と、 前記楽曲データ記憶手段に収録された複数の楽曲の何れかを再生させる楽曲演出制御手段とを備え、 前記楽曲演出制御手段は、 前記楽曲データ記憶手段に収録された複数の楽曲の中から再生を許可する複数の解放楽曲を指定する解放楽曲指定手段と、 前記解放楽曲指定手段により指定された複数の解放楽曲の中から再生させる再生楽曲を選択する再生楽曲選択手段とを有し、 前記解放楽曲指定手段は、 遊技内容に基づいて、前記楽曲データ記憶手段に収録されている複数の楽曲のうち未だ解放楽曲として指定されていない楽曲の何れかを新たに解放楽曲として指定するか否かを判定する楽曲解放判定手段を有し、 前記楽曲解放判定手段により新たな楽曲を解放楽曲として指定すると判定された場合、該新たな楽曲を既に解放楽曲として指定されていた楽曲に解放楽曲として追加することを特徴とする遊技機。」 において一致し、相違点はない。したがって、本願発明は刊行物2に記載された発明であるということができる。 仮に、相違点があったとしても、本願発明も、引用発明2及び刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 3.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項3号又は第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-06-15 |
結審通知日 | 2016-06-21 |
審決日 | 2016-07-04 |
出願番号 | 特願2012-257841(P2012-257841) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) P 1 8・ 113- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 洋行 |
特許庁審判長 |
瀬津 太朗 |
特許庁審判官 |
加舎 理紅子 本郷 徹 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 岡村 俊雄 |
代理人 | 大津 元 |