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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1318577
審判番号 不服2015-4042  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-02 
確定日 2016-08-22 
事件の表示 特願2011-542248「透明-円偏光フォトクロミックデバイスおよびその作製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月15日国際公開、WO2010/080311、平成24年 6月 7日国内公表、特表2012-513044〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2009年12月9日(パリ条約による優先権主張2008年12月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月21日及び平成26年7月11日に手続補正がなされ、平成26年10月23日付けで平成26年7月11日になされた手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対して平成27年3月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし39に係る発明は、平成27年3月2日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし39に記載された事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。
なお、平成27年3月2日になされた手続補正は特許請求の範囲を対象とする補正であるが、当該手続補正後の請求項1は、当該手続補正前(平成25年8月21日になされた手続補正後)の請求項1と事実上同じものである。

「(a)(i)基材;および
(ii)前記基材に接合された少なくとも1種のコーティングであって、第1の吸収状態および第2の吸収状態を有し、化学線に応答して前記第1の吸収状態から前記第2の吸収状態に切り換わり、化学線および/または熱エネルギーに応答して元の前記第1の吸収状態に戻り、そして前記第1の吸収状態および/または前記第2の吸収状態で透過した放射線を直線偏光するよう動作可能であるコーティング
を含み、前記コーティング(ii)が、活性化状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有する少なくとも部分的に位置合わせされた可逆性フォトクロミック-2色性材料を含む、
フォトクロミック直線偏光素子と、
(b)(i)前記フォトクロミック直線偏光素子(a)に接続された、ポリマーコーティングまたはポリマーシート;および
(ii)第1の秩序化された領域と前記第1の秩序化された領域に隣接した少なくとも1つの第2の秩序化された領域とを有する層であって、前記層に所望のパターンが形成されるように、前記第1の秩序化された領域が第1の全体的方向を有し、少なくとも1つの前記第2の秩序化された領域が前記第1の全体的方向と同じまたは異なる第2の全体的方向を有する、層
を含む少なくとも1種の複屈折層であって、透過した放射線を円または楕円偏光するよう動作可能な複屈折層と
を含む、光学素子。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特表2007-521507号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子であって、該光学素子は、第1の状態および第2の状態を有し、基材の少なくとも一部分に結合される少なくとも部分コーティングを備え、該少なくとも部分コーティングは、少なくとも化学線放射に応答して該第1の状態から該第2の状態に切り替わり、熱エネルギーに応答して該第1の状態に戻り、かつ第1の状態および第2の状態の少なくとも一方において、少なくとも透過した放射線を直線偏光させるように適合された、光学素子。
【請求項2】
前記光学素子が、眼科用素子、ディスプレイ素子、ウィンドウ、反射鏡ならびに能動および受動液晶セル素子から選択される、請求項1に記載の光学素子。
・・・(中略)・・・
【請求項6】
前記第1の状態および前記第2の状態を有する前記少なくとも部分コーティングが、該第1の状態において非偏光状態であり第2の状態において直線偏光状態であるように適合された、請求項1に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第1の状態および前記第2の状態を有する前記少なくとも部分コーティングが、該第2の状態において少なくとも紫外線放射を直線偏光させるように適合された、請求項6に記載の光学素子。
【請求項8】
前記第1の状態および前記第2の状態を有する前記少なくとも部分コーティングが、該第2の状態において少なくとも可視光放射線を直線偏光させるように適合された、請求項6に記載の光学素子。
・・・(中略)・・・
【請求項13】
前記第1の状態および前記第2の状態を有する前記少なくとも部分コーティングが、少なくとも一方の状態において少なくとも1.5の平均吸光度比を有する、請求項1に記載の光学素子。
・・・(中略)・・・
【請求項15】
前記第1の状態および前記第2の状態を有する前記少なくとも部分コーティングが、少なくとも1種類の少なくとも部分的にアライメントされたフォトクロミック二色性化合物を含有してなる、請求項1に記載の光学素子。
【請求項16】
前記少なくとも1種類の少なくとも部分的にアライメントされた熱的可逆性フォトクロミック二色性化合物が、セル法により測定したとき活性化状態において少なくとも1.5の平均吸光度比を有する、請求項15に記載の光学素子。
・・・(中略)・・・
【請求項28】
前記基材の表面の少なくとも一部分上に、フォトクロミックコーティング、抗ミラーコーティング、直線偏光性コーティング、円偏光性コーティング、楕円偏光性コーティング、中間コーティング、下塗りコーティングおよび保護コーティングから選択される少なくとも1つのさらなる少なくとも部分コーティングをさらに備える、請求項1に記載の光学素子。
・・・(以下略)・・・」

(2)「【0034】
以下に、光本発明の種々の非限定的な実施形態による光学素子およびデバイスについて記載する。本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態は、第1の状態および第2の状態を有し、基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に結合される少なくとも部分コーティングを備える光学素子であって、この少なくとも部分コーティングが、少なくとも化学線放射に応答して第1の状態から第2の状態に切り替わり、かつ熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻り、第1の状態および第2の状態の少なくとも一方において少なくとも透過した放射線を直線偏光させるように適合された光学素子を提供する。本明細書中で使用する場合、用語「熱エネルギー」は、任意の形態の熱を意味する。
【0035】
用語「状態」を変更するために本明細書中で使用する場合、用語「第1」および「第2」は、なんら特定の順序または時系列を示すのではなく、2つの異なる条件または特性を示すことを意図する。例えば、本明細書において限定しないが、コーティングの第1の状態および第2の状態は、少なくとも1つの光学特性、例えば、限定されないが、可視光および/またはUV放射線の吸収または直線偏光に関して異なり得る。したがって、本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態によれば、少なくとも部分コーティングは、第1および第2の状態の各々において異なる吸収スペクトルを有するように適合され得る。例えば、本明細書において限定しないが、少なくとも部分コーティングは、第1の状態において透明であり第2の状態において着色状態であり得る。あるいはまた、少なくとも部分コーティングは、第1の状態において第1の色を、第2の状態において第2の色を有するように適合され得る。さらに、以下により詳細に記載するように、少なくとも部分コーティングは、第1の状態において直線偏光ではなく(または「非偏光状態」)第2の状態において直線偏光状態であるように適合され得る。
【0036】
本明細書中で使用する場合、用語「光学」は、光および/または視力に関するか、またはそれに関連することを意味する。例えば、本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態によれば、光学素子またはデバイスは、眼科用素子および素子、ディスプレイ素子および素子、ウィンドウ、反射鏡ならびに能動および受動液晶セル素子および素子から選択され得る。本明細書中で使用する場合、用語「眼科用」は、目および視力に関するか、またはそれに関連することを意味する。眼科用素子の非限定的な例としては、矯正および非矯正レンズ(シングルビジョンレンズ、またはマルチビジョンレンズ(これは、セグメントまたは非セグメントいずれのマルチビジョンレンズでもよい(例えば、限定されないが、二焦点レンズ、三焦点レンズおよびプログレッシブレンズなど)を含む))ならびに視力を(美容上またはその他として)矯正、保護または強化するために使用される他の素子(限定されないが、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大鏡および保護レンズまたは遮光板を含む)が挙げられる。本明細書中で使用する場合、用語、「ディスプレイ」は、目視または機械読取可能な、単語、数、記号、模様または図による情報の表示を意味する。ディスプレイ素子および素子非限定的な例としては、スクリーン、モニターおよびセキュリティ素子(例えば、セキュリティマークなど)が挙げられる。本明細書中で使用する場合、用語「ウィンドウ」は、放射線がこれを透過することを可能にするように適合された開口部を意味する。ウィンドウの非限定的な例としては、自動車および航空機用の透明板(transparency)、フィルター、シャッターおよび光スイッチが挙げられる。本明細書中で使用する場合、用語「反射鏡」は、入射光の大部分を正反射する表面を意味する。
【0037】
本明細書中で使用する場合、用語「液晶セル」は、整列させられ得る液晶材料を含有する構造をいう。能動液晶セルは、液晶材料が、整列された状態と無秩序状態の間、または2つの整列された状態間で、電界または磁界などの外力の印加により切り替わり得るセルである。受動液晶セルは、液晶材料が整列された状態を維持するセルである。能動液晶セル素子またはデバイスの非限定的な一例は液晶ディスプレイである。
【0038】
上記のように、非限定的な一実施形態は、ひとつには、第1の状態および第2の状態を有し、基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に結合される少なくとも部分コーティングを備える光学素子を提供する。本明細書中で使用する場合、用語「コーティング」は、流動性組成物に由来する支持膜を意味し、これは均一な厚みを有していても有していなくてもよいが、明確にポリマー系シートは除外される。本明細書中で使用する場合、用語「シート」は、おおむね均一な厚みを有し、自立(self-support)可能である予備形成された膜を意味する。さらに、本明細書中で使用する場合、用語「に結合される」は、物体と直接接触している、または1つ以上の他の構造体または材料(これらの少なくとも1つはこの物体と直接接触している)により物体と間接的に接触していることを意味する。したがって、本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態によれば、第1の状態および第2の状態を有する少なくとも部分コーティングは、基材の少なくとも一部分と直接接触していてもよく、または1つ以上の他の構造または材料により、基材の少なくとも一部分と間接的に接触していてもよい。例えば、本明細書において限定しないが、少なくとも部分コーティングは、1つ以上の他の少なくとも部分コーティング、ポリマーシートまたはその組合せ(その少なくとも1種は、基材の少なくとも一部分と直接接触している)と接触していてもよい。」

(3)「【0048】
上記のように、本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態による光学素子は、第1の状態および第2の状態を有し、化学線放射に応答して第1の状態から第2の状態に切り替わり、熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻り、かつ第1の状態および第2の状態の少なくとも一方において直線偏光状態であるように適合された、少なくとも部分コーティングを備える。すなわち、本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態による光学素子は、フォトクロミック二色性素子であり得る。本明細書中で使用する場合、用語「フォトクロミック二色性」は、ある一定の条件下で、フォトクロミック性および二色性(すなわち、直線偏光)の両方の特性を示すことを意味し、この特性は、機器の使用によって少なくとも検出可能である。さらに、以下により詳細に記載するように、本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態による光学素子は、少なくとも部分的にアライメントされた少なくとも1種類のフォトクロミック二色性化合物を用いて形成され得る。
【0049】
前記のように、本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態によれば、少なくとも部分コーティングは、第1の状態において非偏光状態であり(すなわち、コーティングは、光波の電界ベクトルの振動を一方向に限定しない)、第2の状態において少なくとも透過した放射線を直線偏光させるように適合され得る。本明細書中で使用する場合、用語「透過した放射線」は、物体の少なくとも一部分を通り抜けた放射線をいう。本明細書において限定しないが、透過した放射線は、紫外線放射、可視光放射線またはその組み合わせであり得る。したがって、本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態によれば、少なくとも部分コーティングは、第1の状態において非偏光状態であり、第2の状態において、透過した紫外線放射、透過した可視光放射線またはその組み合わせを直線偏光させるように適合され得る。
【0050】
さらに他の非限定的な実施形態によれば、第1の状態および第2の状態を有する少なくとも部分コーティングは、第1の状態において第1吸収スペクトルを、第2の状態において第2吸収スペクトルを有し、第1および第2の状態の両方において直線偏光状態であるように、適合され得る。
【0051】
非限定的な一実施形態によれば、第1の状態および第2の状態を有する少なくとも部分コーティングは、少なくとも一方の状態において少なくとも1.5の平均吸光度比を有し得る。別の非限定的な実施形態によれば、少なくとも部分コーティングは、少なくとも一方の状態において少なくとも1.5?50(またはそれより大きい)範囲の平均吸光度比を有し得る。前述のように、用語「吸光度比」は、第1平面における直線偏光した放射線の吸光度の、第1平面に直交する平面における直線偏光した放射線の吸光度に対する比をいい、ここで第1平面は、最大吸光度を有する平面とする。したがって、吸光度比(および平均吸光度比(以下に記載))は、放射線の2つの直交平面偏光成分の一方がどれだけ強く物体または材料により吸収されたかの指標である。
【0052】
フォトクロミック二色性化合物を含有するコーティングまたは素子の平均吸光度比は、以下に記載するようにして測定され得る。例えば、フォトクロミック二色性化合物を含有するコーティングの平均吸光度比を測定するため、コーティングを有する基材を光学ベンチ上に配置し、コーティングを、フォトクロミック二色性化合物の活性化によって直線偏光状態に置く。活性化は、コーティングをUV放射線に、飽和またはほぼ飽和状態(すなわち、コーティングの吸収特性が、測定が行なわれている時間中、実質的に変化しない状態)に達するのに充分な時間曝露することによってなされる。吸光度測定値は、ある一定時間(典型的には、10?300秒)、3秒間隔で、光学ベンチに垂直な平面(0°偏光平面または方向という)において直線偏光状態の光、および光学ベンチと平行な平面(90°偏光平面または方向という)において直線偏光状態の光について、以下のシーケンス:0°、90°、90°、0°などで取得する。コーティングによる直線偏光された光の吸光度は、各時間間隔で、試験した波長のすべてについて測定され、同じ波長範囲の非活性化吸光度(非活性化状態におけるコーティングの吸光度)を差し引き、0°および90°偏光平面の各々での活性化状態におけるコーティングの吸収スペクトルを得、飽和またはほぼ飽和状態におけるコーティングの各偏光平面の平均差吸収スペクトルを得る。
【0053】
例えば、図1を参照すると、本明細書中に開示された非限定的な一実施形態によるコーティングについて得られた一偏光平面における平均差吸収スペクトル(一般的に、10で示す)が示されている。平均吸収スペクトル(一般的に、11で示す)は、直交偏光平面における同じコーティングについて得られた平均差吸収スペクトルである。
【0054】
コーティングについて得られた平均差吸収スペクトルに基づき、コーティングの平均吸光度比は、以下のようにして得られる。λ_(max-vis)+/-5ナノメートルに相当する所定範囲の波長(λ_(max-vis)は、任意の平面にいてコーティングが最大平均吸光度を有した波長)(一般的に、図1において14で示す)における各波長でのコーティングの吸光度比は、以下の等式:
AR_(λi)=Ab^(1)_(λi)/Ab^(2)_(λi) 式1
(式中、AR_(λi)は、波長λ_(i)における吸光度比であり、Ab^(1)_(λi)は、高い方の吸光度を有する偏光方向(すなわち、0°または90°)での波長λ_(i)における平均吸光度であり、Ab^(2)_(λi)は、残りの偏光方向での波長λ_(i)における平均吸光度である)
にしたがって算出される。前述のように、「吸光度比」は、第1平面において直線偏光した放射線の吸光度の、第1平面に直交する平面において直線偏光した同じ波長の放射線の吸光度に対する比をいい、ここで、第1平面は、最大吸光度を有する平面とする。
【0055】
コーティングの平均吸光度比(「AR」)は、したがって、
所定の波長範囲(すなわち、λ_(max-vis)+/-5ナノメートル)にわたる個々の吸光度比を、以下の等式
AR=Σ(AR_(λi))/n_(i) 式2
(式中、ARは、コーティングの平均吸光度比であり、AR_(λi)は、所定の波長範囲内での各波長での個々の吸光度比(上記等式1により算出)であり、n_(i)は、平均した個々の吸光度比の数である)
にしたがって平均することにより算出される。平均吸光度比の測定方法のより詳細な記載は、以下の実施例に提供する。
【0056】
前記のように、本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態によれば、第1の状態および第2の状態を有する少なくとも部分コーティングは、少なくとも部分的にアライメントされた少なくとも1種類のフォトクロミック二色性化合物を備え得る。前述のように、用語「フォトクロミック二色性」は、ある一定の条件下で、フォトクロミックおよび二色性(すなわち、直線偏光)の両方特性を示すことを意味し、この特性は、機器の使用によって少なくとも検出可能である。したがって、「フォトクロミック二色性化合物」は、ある一定の条件下で、フォトクロミック性および二色性(すなわち、直線偏光)の両方特性を示し、その特性が機器の使用によって少なくとも検出可能である化合物である。したがって、フォトクロミック二色性化合物は、少なくとも化学線放射に応答して変化し、少なくとも透過した放射線の2つの直交平面偏光成分の一方を他方よりもより強く吸収することができる少なくとも可視光放射線の吸収スペクトルを有する。加えて、上記の従来のフォトクロミック化合物のように、本明細書中に開示されたフォトクロミック二色性化合物は、熱的可逆性であり得る。すなわち、フォトクロミック二色性化合物は、化学線放射に応答して第1の状態から第2の状態に切り替わり、熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻り得る。本明細書中で使用する場合、用語「化合物」は、2種類以上の元素、成分、構成成分または部分の結合体で形成された物質を意味し、限定されないが、2種類以上の元素、成分、構成成分または部分の結合体で形成された分子および高分子(例えば、ポリマーおよびオリゴマー)が挙げられる。
【0057】
例えば、本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態によれば、少なくとも1種類のフォトクロミック二色性化合物は、第1吸収スペクトルを有する第1の状態、第1吸収スペクトルと異なる第2吸収スペクトルを有する第2の状態を有し得、少なくとも化学線放射に応答して第1の状態から第2の状態に切り替わり、熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻るように適合され得る。さらに、フォトクロミック二色性化合物は、第1の状態および第2の状態の一方または両方において二色性(すなわち、直線偏光)であり得る。例えば、要求されないが、フォトクロミック二色性化合物は、活性化状態において直線偏光であり、脱色または色あせた(すなわち、活性化されていない)状態において非偏光状態であり得る。本明細書中で使用する場合、用語「活性化状態」は、フォトクロミック二色性化合物が、充分な化学線放射に曝露されると、フォトクロミック二色性化合物の少なくとも一部分が、第1の状態から第2の状態に切り替わることをいう。さらに、要求されないが、フォトクロミック二色性化合物は、第1および第2の状態の両方において二色性であり得る。本明細書において限定しないが、例えば、フォトクロミック二色性化合物は、活性化状態および脱色状態の両方において可視光放射線を直線偏光させ得る。さらに、フォトクロミック二色性化合物は、活性化状態において可視光放射線直線偏光させ得、脱色状態においてUV放射線を直線偏光させ得る。
【0058】
要求されないが、本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態によれば、少なくとも1種類のフォトクロミック二色性化合物は、セル法により測定したとき活性化状態において少なくとも1.5の平均吸光度比を有し得る。本明細書中に開示された他の非限定的な実施形態によれば、少なくとも1種類のフォトクロミック二色性化合物は、セル法により測定したとき活性化状態において2.3より大きい平均吸光度比を有し得る。さらに他の非限定的な実施形態によれば、少なくとも1種類の少なくとも部分的にアライメントされたフォトクロミック二色性化合物は、セル法により測定したとき活性化状態において1.5?50の範囲の平均吸光度比を有し得る。他の非限定的な実施形態によれば、少なくとも1種類の少なくとも部分的にアライメントされたフォトクロミック二色性化合物は、セル法により測定したとき活性化状態において、4?20の範囲の平均吸光度比を有し得、さらに3?30の範囲の平均吸光度比を有し得、またさらに2.5?50の範囲の平均吸光度比を有し得る。しかしながら、一般的に言うと、少なくとも1種類の少なくとも部分的にアライメントされたフォトクロミック二色性化合物の平均吸光度比は、デバイスまたは素子に所望の特性を付与するのに充分な任意の平均吸光度比であり得る。好適なフォトクロミック二色性化合物の非限定的な例を、本明細書において、以下に詳細に記載する。
【0059】
フォトクロミック二色性化合物の平均吸光度比を測定するためのセル法は、コートされた基材の吸光度を測定する代わりに、アライメントされた液晶材料およびフォトクロミック二色性化合物を含有するセルアセンブリを試験する以外は、少なくとも部分コーティングの平均吸光度比を測定するために使用される方法(上記、および実施例において記載)と本質的に同じである。より詳しくは、セルアセンブリは、20ミクロン+/-1ミクロン間隔を空けて配置された2つの対向するガラス基材を備える。基材は、2つの対向している縁部に沿ってシールされ、セルを構成する。ガラス基材の各々の内側表面は、ポリイミドコーティングでコートされ、その表面は、摩擦によって少なくとも部分的に整列されている。フォトクロミック二色性化合物のアライメントは、フォトクロミック二色性化合物および液晶媒体をセルアセンブリ内に導入し、液晶媒体を、摩擦されたポリイミド表面にアライメントさせることによりなされる。液晶媒体およびフォトクロミック二色性化合物がアライメントされたら、セルアセンブリを光学ベンチ(これは、実施例において詳細に記載する)上に置き、平均吸光度比を、セルアセンブリの非活性化吸光度を活性化吸光度から差し引いて平均差吸収スペクトルを得る以外は、コートされた基材について先に記載したようにして測定する。
【0060】
前述のように、二色性化合物は、平面偏光された光の2つの直交する成分の一方を優先的に吸収することができるが、一般的に、純量直線偏光効果を達成するために、二色性化合物の分子を好適に位置または配列させることが必要である。同様に、一般的に、純量直線偏光効果を達成するために、フォトクロミック二色性化合物の分子を好適に位置または配列させることが必要である。すなわち、一般的に、フォトクロミック二色性化合物の分子を、活性化状態におけるフォトクロミック二色性化合物の分子の長軸が互いにおおむね平行になるようにアライメントすることが必要である。したがって、上記のように、本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態によれば、少なくとも1種類のフォトクロミック二色性化合物は、少なくとも部分的にアライメントされている。さらに、フォトクロミック二色性化合物の活性化状態が、材料の二色性状態に相当する場合、少なくとも1種類のフォトクロミック二色性化合物は、活性化状態のフォトクロミック二色性化合物の分子の長軸がアライメントされるように少なくとも部分的にアライメントされ得る。本明細書中で使用する場合、用語「アライメントされる」は、別の材料、化合物または構造体との相互作用により、好適な配列または位置に至らせることを意味する。」

(4)「【0076】
本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態による光学素子は、基材の少なくとも一部分に結合される、従来のフォトクロミックコーティング、抗ミラーコーティング、直線偏光性コーティング、円偏光性コーティング、楕円偏光性コーティング、中間コーティング(transitional coating)、下塗りコーティング(例えば、上記のもの)および保護コーティングから選択される少なくとも1つのさらなる少なくとも部分コーティングをさらに備え得る。例えば、本明細書において限定しないが、少なくとも1つのさらなる少なくとも部分コーティングは、第1の状態および第2の状態を有する少なくとも部分コーティングの少なくとも一部分の上に存在、すなわち、オーバーコートとしてであり得、または少なくとも部分コーティングの少なくとも一部分の下に存在、すなわち、アンダーコートとしてであり得る。加えて、あるいはまた、第1の状態および第2の状態を有する少なくとも部分コーティングは、基材の第1表面の少なくとも一部分に結合され得、この少なくとも1つのさらなる少なくとも部分コーティングは、基材の第2表面の少なくとも一部分に結合され得、ここでこの第1表面がこの第2表面に対向している。
【0077】
従来のフォトクロミックコーティングの非限定的な例としては、以下に詳細に記載する任意の従来のフォトクロミック化合物を含有するコーティングが挙げられる。例えば、本明細書において限定しないが、フォトクロミックコーティングは、フォトクロミックポリウレタンコーティング(米国特許第6,187,444号に記載されたものなど);フォトクロミックアミノプラスト樹脂コーティング(米国特許第4,756,973号、同第6,432,544号および同第6,506,488号に記載されたものなど);フォトクロミックポリシランコーティング(米国特許第4,556,605号に記載されたものなど);フォトクロミックポリ(メタ)アクリレートコーティング(米国特許第6,602,603号、同第6,150,430号および同第6,025,026号ならびに国際公開公報WO 01/02449に記載されたものなど);ポリ無水物フォトクロミックコーティング(米国特許第6,436,525号に記載されたものなど);フォトクロミックポリアクリルアミドコーティング(米国特許第6,060,001号に記載されたものなど);フォトクロミックエポキシ樹脂コーティング(米国特許第4,756,973号および同第6,268,055号に記載されたものなど);およびフォトクロミックポリ(尿素-ウレタン)コーティング(米国特許第6,531,076号に記載されたものなど)であり得る。上記米国特許および国際公開公報の明細書は、これにより本明細書中に参考として援用される。
【0078】
直線偏光性コーティングの非限定的な例としては、限定されないが、従来の二色性化合物(例えば、限定されないが、上記のものなど)を含有するコーティングが挙げられる。
【0079】
本明細書中で使用する場合、用語「中間コーティング」は、2つのコーティング間の特性において勾配を生じるのを補助するコーティングを意味する。例えば、本明細書において限定しないが、中間コーティングは、比較的硬質なコーティングと比較的軟質なコーティング間の硬度において勾配を生じるのを補助し得る。中間コーティングの非限定的な例としては、放射線硬化型アクリレート系薄膜が挙げられる。
【0080】
保護コーティングの非限定的な例としては、オルガノシランを含有する耐摩耗性コーティング、放射線硬化型アクリレート系薄膜を含む耐摩耗性コーティング、シリカ、チタニアおよび/またはジルコニアなどの無機材料系耐摩耗性コーティング、紫外線硬化性酸素バリアコーティング、UV遮光性コーティングおよびその組合せのタイプの有機耐摩耗性コーティングが挙げられる。例えば、非限定的な一実施形態によれば、保護コーティングは、放射線硬化型アクリレート系薄膜の第1コーティング、およびオルガノシランを含有する第2コーティングを含み得る。市販の保護コーティング製品の非限定的な例としては、SILVUE(登録商標) 124およびHI-GARD(登録商標)コーティング(それぞれ、SDC Coatings, Inc.およびPPG Industries, Inc.から入手可能である)が挙げられる。」

(5)「【0082】
前述のように、用語「に結合される」は、物体と直接接触している、または1つ以上の他の構造(これらの少なくとも1つはこの物体と直接接触している)により物体と間接的に接触していることを意味する。したがって、前記の非限定的な実施形態によれば、基材の少なくとも一部分に結合され得る少なくとも1種類の少なくとも部分的にアライメントされたフォトクロミック二色性化合物は、基材の少なくとも一部分と直接接触され得るか、または基材と直接または間接的に接触している1つ以上の他の構造または材料と接触し得る。例えば、本明細書において限定しないが、非限定的な一実施形態において、少なくとも1種類の少なくとも部分的にアライメントされたフォトクロミック二色性化合物は、少なくとも部分コーティングまたは基材の少なくとも一部分と直接接触しているポリマー系シートの一部として存在し得る。別の非限定的な実施形態において、この少なくとも1種類の少なくとも部分的にアライメントされたフォトクロミック二色性化合物は、コーティング、または1つ以上の他の少なくとも部分コーティングまたはシート(これらの少なくとも一方は、基材の少なくとも一部分と直接接触している)と直接接触しているシートの一部として存在し得る。」

(6)「【0278】
前述のように、本明細書中に開示された種々の非限定的な実施形態は、ディスプレイ素子および素子に関する。さらに、上記のように、本明細書中で使用する場合、用語「ディスプレイ」は、単語、数、記号、模様または図による情報の可視表示を意味する。ディスプレイ素子および素子非限定的な例としては、スクリーン、モニターおよびセキュリティ素子が挙げられる。セキュリティ素子の非限定的な例としては、基材の少なくとも一部分に結合されるセキュリティマークおよび認証マーク、例えば、限定されないが、アクセスカードおよびアクセスパス、例えば、チケット、バッジ、身分証明書または会員証、デビットカードなど;譲渡可能証券および非譲渡可能証券、例えば、為替手形、小切手、債券、約束手形、定期預金、株券など.;政府発行書類、例えば、貨幣、免許証、身分証明書、保険証、ビザ、パスポート、公的資格、捺印証書など;消費財、例えば、ソフトウェア、コンパクトディスク(「CD」)、デジタルビデオディスク(「DVD」)、電気製品、消費家電製品、スポーツ用品、自動車など;クレジットカード;ならびに商品用タグ、ラベルおよびパッケージ類が挙げられる。
【0279】
例えば、非限定的な一実施形態において、ディスプレイ素子は、基材の少なくとも一部分に結合されるセキュリティ素子である。この非限定的な実施形態によれば、セキュリティ素子は、第1の状態および第2の状態を有し、少なくとも化学線放射に応答して第1の状態から第2の状態に切り替わり、熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻り、かつ第1の状態および第2の状態の少なくとも一方において少なくとも透過した放射を直線偏光させるように適合された少なくとも部分コーティングを含む。少なくとも化学線放射に応答して第1の状態から第2の状態に切り替わり、熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻り、かつ第1の状態および第2の状態の少なくとも一方において少なくとも透過した放射を直線偏光させるように適合された少なくとも部分コーティング、およびその作製方法の非限定的な例は、先に詳細に記載している。
【0280】
この非限定的な実施形態によれば、セキュリティ素子は、セキュリティマークおよび/または認証マークであり得る。さらに、セキュリティ素子は、透明基材および反射基材から選択される基材の少なくとも一部分に結合され得る。あるいはまた、反射基材が必要とされるある特定の非限定的な実施形態によれば、基材が、目的の用途に対して反射性または充分に反射でない場合、セキュリティマークを付与する前に、最初に、反射材料を基材の少なくとも一部分に付与し得る。例えば、反射性アルミニウムコーティングを基材の少なくとも一部分に、その上面にセキュリティ素子を形成する前に付与し得る。さらにまた、セキュリティ素子は、薄い着色のない基材、薄く着色された基材、フォトクロミック基材、薄く着色されたフォトクロミック基材、直線偏光性基材、円偏光性基材および楕円偏光性基材から選択される基材の少なくとも一部分に結合され得る。
【0281】
加えて、上記非限定的な実施形態による少なくとも部分コーティングは、セル法により測定したとき活性化状態において少なくとも1.5の平均吸光度比を有する少なくとも1種類のフォトクロミック二色性化合物を含有し得る。本明細書中に開示された他の非限定的な実施形態によれば、少なくとも1種類のフォトクロミック二色性化合物は、セル法により測定したとき活性化状態において2.3より大きい平均吸光度比を有し得る。さらに他の非限定的な実施形態によれば、少なくとも1種類の少なくとも部分的にアライメントされたフォトクロミック二色性化合物は、セル法により測定したとき活性化状態において1.5?50の範囲の平均吸光度比を有し得る。他の非限定的な実施形態によれば、少なくとも1種類の少なくとも部分的にアライメントされたフォトクロミック二色性化合物は、セル法により測定したとき活性化状態において、4?20の範囲の平均吸光度比を有し得、さらに3?30の範囲の平均吸光度比を有し得、またさらに2.5?50の範囲の平均吸光度比を有し得る。しかしながら、一般的に言うと、少なくとも1種類の少なくとも部分的にアライメントされたフォトクロミック二色性化合物の平均吸光度比は、デバイスまたは素子に所望の特性を付与するのに充分な任意の平均吸光度比であり得る。この非限定的な実施形態との組み合わせにおける使用に好適なフォトクロミック二色性化合物の非限定的な例は、先に詳細に記載している。
【0282】
さらにまた、前述の非限定的な実施形態によるセキュリティ素子は、引用により具体的に本明細書中に参考として援用される、米国特許第6,641,874号に記載のような視角依存性特性を有する多層反射セキュリティ素子を形成するために、1つ以上の他のコーティングまたはシートをさらに備え得る。例えば、非限定的な一実施形態は、基材の少なくとも一部分に結合され、第1の状態および第2の状態を有し、少なくとも化学線放射に応答して第1の状態から第2の状態に切り替わり、熱エネルギーに応答して元の第1の状態に戻り、かつ第1の状態および第2の状態の少なくとも一方において少なくとも透過した放射を直線偏光させるように適合された基材の少なくとも一部分上の少なくとも部分コーティング;および偏光性コーティングまたはシート、フォトクロミックコーティングまたはシート、ミラーコーティングまたはシート、薄く着色されたコーティングまたはシート、円偏光性コーティングまたはシート、遅延剤コーティングまたはシート(すなわち、その内部での伝播放射を遅延または遅滞させるコーティングまたはシート)、および広視野角コーティングまたはシート(すなわち、視角を増大させるコーティングまたはシート)から選択される少なくとも1つのさらなる少なくとも部分コーティングまたはシートを備えるセキュリティ素子を提供する。さらに、この非限定的な実施形態によれば、少なくとも1つのさらなる少なくとも部分コーティングまたはシートは、第1の状態および第2の状態を有する少なくとも部分コーティングの上、この少なくとも部分的コーティングの下に配置され得るか、または多数のコーティングおよび/またはシートが、このコーティングの上および/または下に配置され得る。
【0283】
他の非限定的な実施形態は、第1表面を有する第1基材および第2表面を有する第2基材を備える、ディスプレイ素子またはデバイスであり得る液晶セルであって、第2基材の第2表面は第1基材の第1表面に、開口領域を規定するように対向し、これから隔てられている、液晶セルを提供する。さらに、この非限定的な実施形態によれば、第1表面および第2表面により規定された領域内に配置された、少なくとも部分的に整列されるように適合された液晶材料、および少なくとも部分的にアライメントされるように適合され、セル法により測定したとき活性化状態において少なくとも1.5の平均吸光度比を有する少なくとも1種類のフォトクロミック二色性化合物が液晶セルを形成する。」

(7)上記(1)ないし(6)の記載からみて、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(括弧内は引用例において当該構成が記載されている箇所を表す。)。

「光学素子であって、
前記光学素子は、第1の状態および第2の状態を有し、基材の少なくとも一部分に結合される少なくとも部分コーティングを備え、該少なくとも部分コーティングは、少なくとも化学線放射に応答して該第1の状態から該第2の状態に切り替わり、熱エネルギーに応答して該第1の状態に戻り、かつ第1の状態および第2の状態の少なくとも一方において、少なくとも透過した放射線を直線偏光させるように適合され(【請求項1】、【0048】、【0049】)、
前記光学素子は、能動および受動液晶セル素子であって(【請求項2】、【0036】、【0283】)、
前記少なくとも部分コーティングの第1の状態および第2の状態は、可視光および/またはUV放射線の吸収または直線偏光に関して異なり得る、すなわち、前記少なくとも部分コーティングは、第1および第2の状態の各々において異なる吸収スペクトルを有するように適合され得るものであり(【請求項6】ないし【請求項8】、【0035】)、
前記第1の状態および前記第2の状態を有する前記少なくとも部分コーティングは、少なくとも1種類の少なくとも部分的にアライメントされたフォトクロミック二色性化合物を含有してなるとともに、セル法により測定したとき活性化状態において少なくとも1.5の平均吸光度比を有し(【請求項13】、【請求項15】、【請求項16】、【0048】、【0051】、【0052】、【0056】、【0058】)、
前記基材の表面の少なくとも一部分上に結合される、従来のフォトクロミックコーティング、抗ミラーコーティング、直線偏光性コーティング、円偏光性コーティング、楕円偏光性コーティング、中間コーティング、下塗りコーティングおよび保護コーティングから選択される少なくとも1つのさらなる少なくとも部分コーティングをさらに備え(【請求項28】、【0076】)、
前記少なくとも1つのさらなる少なくとも部分コーティングは、前記第1の状態および第2の状態を有する少なくとも部分コーティングの少なくとも一部分の上に存在、すなわち、オーバーコートとしてであり得、または少なくとも部分コーティングの少なくとも一部分の下に存在、すなわち、アンダーコートとしてであり得(【0076】)、
前記中間コーティングは、2つのコーティング間の特性において勾配を生じるのを補助するコーティングであり、例えば、放射線硬化型アクリレート系薄膜であり得る(【0079】)、
光学素子。」

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「基材」及び「光学素子」は、それぞれ、本願発明の「基材」及び「光学素子」に相当する。

(2)引用発明における用語「コーティング」は、「流動性組成物に由来する支持膜を意味し、これは均一な厚みを有していても有していなくてもよいが、明確にポリマー系シートは除外される」(上記3(2)に摘記した引用例の【0038】参照。)。
一方、本願発明における「コーティング」という用語は、「均一な厚さを有しても有していなくてもよい流動性組成物から得られた裏付きフィルムを意味し、特にポリマーシートは除外する」(本願明細書の【0025】参照。)から、引用発明における「コーティング」と同じ意味で用いられていることは明らかである。また、本願明細書の【0013】には、「コーティングは、基材の全面を必ずしも覆う必要はなく、即ち、部分コーティングであってもよいことに留意されたい」と記載されている。
そうすると、引用発明の「少なくとも部分コーティング」は、本願発明の「コーティング」に相当するといえる。

(3)引用発明における用語「に結合される」は、「物体と直接接触している、または1つ以上の他の構造(これらの少なくとも1つはこの物体と直接接触している)により物体と間接的に接触していることを意味する」(上記3(5)に摘記した引用例の【0082】参照。)。
一方、本願発明における「に接合された」という用語は、「物体に直接接触しているか、または1つもしくは複数のその他の構造もしくは材料を通して物体に間接的に接触していることであって、その少なくとも1つが物体に直接接触していることを意味する」(本願明細書の【0025】参照。)。
そうすると、引用発明の「基材の少なくとも一部分に結合される少なくとも部分コーティング」における「結合され」と、本願発明の「基材に接合された少なくとも1種のコーティング」における「接合され」とは同じことを意味しているから、引用発明の「結合され」は、本願発明の「接合され」に相当する。

(4)引用発明の「第1の状態」および「第2の状態」は、可視光および/またはUV放射線の吸収または直線偏光に関して異なり得る、すなわち、「第1および第2の状態」の各々において異なる吸収スペクトルを有するように適合され得るものである。したがって、引用発明の「第1の状態」及び「第2の状態」は、それぞれ、本願発明の「第1の吸収状態」及び「第2の吸収状態」に相当するといえる。

(5)引用発明における用語「フォトクロミック二色性化合物」は、「ある一定の条件下で、フォトクロミック性および二色性(すなわち、直線偏光)の両方の特性を示すことを意味」する(上記3(3)に摘記した引用例の【0048】、【0056】参照。)。
一方、本願発明における「フォトクロミック-2色性」という用語は、「ある条件下でフォトクロミックおよび2色性(即ち、直線偏光)特性の両方を示すことを意味」する(本願明細書の【0035】参照。)から、引用発明における「フォトクロミック二色性」と同じ意味で用いられていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「フォトクロミック二色性化合物」は、本願発明の「フォトクロミック-2色性材料」に相当するといえる。

(6)引用発明における用語「活性化状態」は、「フォトクロミック二色性化合物が、充分な化学線放射に曝露されると、フォトクロミック二色性化合物の少なくとも一部分が、第1の状態から第2の状態に切り替わることをいう」(上記3(3)に摘記した引用例の【0057】参照。)。
一方、本願発明における「活性化状態」という用語は、「フォトクロミック-2色性化合物の少なくとも一部が第1の状態から第2の状態に切り換わるのを引き起こすよう十分な化学線に曝されたときの、フォトクロミック-2色性化合物を指す」(本願明細書の【0044】参照。)。
そうすると、引用発明の「活性化状態」と本願発明の「活性化状態」は、共に十分な化学線に曝され、その少なくとも一部が第1の状態から第2の状態に切り換わるときの「フォトクロミック-2色性化合物(フォトクロミック二色性化合物)」の状態を意味しているといえるから、引用発明の「活性化状態」及び「化学線放射」は、本願発明の「活性化状態」及び「化学線」に相当する。

(7)ア 引用発明における「平均吸光度比」の定義は、次のとおりである。
まず、「第1平面(最大吸光度を有する平面)において直線偏光した放射線の吸光度の、第1平面に直交する平面において直線偏光した同じ波長の放射線の吸光度に対する比」を「吸光度比」とするとき、「λ_(max-vis)+/-5ナノメートルに相当する所定範囲の波長(λ_(max-vis)は、任意の平面においてコーティングが最大平均吸光度を有した波長)における各波長(λ_(i))でのコーティングの吸光度比(AR_(λi))」が、「AR_(λi)=Ab^(1)_(λi)/Ab^(2)_(λi)」(式1)で定義される。ここで、「Ab^(1)_(λi)は、高い方の吸光度を有する偏光方向(すなわち、0°または90°)での波長λ_(i)における平均吸光度であり、Ab^(2)_(λi)は、残りの偏光方向での波長λ_(i)における平均吸光度である」(上記3(3)に摘記した引用例の【0054】参照。)。
次いで、「λ_(max-vis)+/-5ナノメートル」の「波長範囲」「にわたる個々の吸光度比(AR_(λi))」を、「AR=Σ(AR_(λi))/n_(i)」(式2)「にしたがって平均することにより算出される」「AR」が「平均吸光度比」である。ここで、「AR_(λi)」は、上記式1により算出される上記「波長範囲内」の「各波長での個々の吸光度比」であり、「n_(i)は、平均した個々の吸光度比の数である」(上記3(3)に摘記した引用例の【0055】参照。)。
イ 一方、本願発明における「平均吸収比」の定義は、まず、「AR_(λi)=Ab^(1)_(λi)/Ab^(2)_(λi)」(方程式1)により「λ_(max-vis)±5ナノメートルに対応する波長の所定範囲における各波長(λ_(i))でのコーティングの吸収比(AR_(λi))」が定義され(本願明細書【0041】参照。)、次いで、「平均吸収比(AR)」を、「λ_(max-vis)±5ナノメートル」の「波長範囲」「にわたる個々の吸収比(AR_(λi))」を「AR=Σ(AR_(λi))/n_(i)」(方程式2)にしたがって「平均することによって計算する」というものであり(同【0042】参照。)、ここで、λ_(max-vis)、Ab^(1)_(λi)、Ab^(2)_(λi)及びn_(i)の定義も、いずれも、引用例におけるものと同じである(同【0041】、【0042】参照。)。
ウ 上記アの式1、式2が、それぞれ、上記イの方程式1、方程式2とまったく同じであることからみて、引用発明の「平均吸光度比」と本願発明の「平均吸収比」が同じパラメータであることは明らかである。よって、引用発明の「平均吸光度比」は、本願発明の「平均吸収比」に相当するといえる。

(8)引用発明における用語「アライメント」は、「別の材料、化合物または構造体との相互作用により、好適な配列または位置に至らせることを意味する」(上記3(3)に摘記した引用例の【0060】参照。)。
一方、本願発明における「位置合わせ」という用語は、「別の材料、化合物、または構造と相互に作用させることによって、適切な配置構成または位置にすることを意味する」(本願明細書の【0047】参照。)。
そうすると、引用発明の「アライメント」が、本願発明の「位置合わせ」に相当することは明らかである。

(9)ア 引用発明の「光学素子(光学素子)」は、「第1の吸収状態(第1の状態)」および「第2の吸収状態(第2の状態)」を有し、「基材(基材)」の少なくとも一部分に「接合(結合)」される「少なくとも部分コーティング(コーティング)」を備え、該「コーティング」は、少なくとも「化学線(化学線放射)」に応答して該「第1の吸収状態」から該「第2の吸収状態」に切り替わり、熱エネルギーに応答して該「第1の吸収状態」に戻り、かつ「第1の吸収状態」および「第2の吸収状態」の少なくとも一方において、少なくとも透過した放射線を直線偏光させるように適合されるものである。
イ また、引用発明の前記「第1の吸収状態」および前記「第2の吸収状態」を有する前記「コーティング」は、少なくとも1種類の少なくとも部分的に「位置あわせ(アライメント)」された「フォトクロミック-2色性材料(フォトクロミック二色性化合物)」を含有してなるとともに、セル法により測定したとき「活性化状態(活性化状態)」において少なくとも1.5の「平均吸収比(平均吸光度比)」を有するものである。
ウ 上記アからみて、引用発明の「光学素子」が「基材」を含むことは明らかであるから、引用発明の「光学素子」と本願発明の「光学素子」とは、「基材を含む」点で一致する。
エ また、上記アからみて、引用発明の「コーティング」と本願発明の「コーティング」とは、「基材に接合された少なくとも1種のコーティングであって、第1の吸収状態および第2の吸収状態を有し、化学線に応答して前記第1の吸収状態から前記第2の吸収状態に切り換わり、化学線および/または熱エネルギーに応答して元の前記第1の吸収状態に戻り、そして前記第1の吸収状態および/または前記第2の吸収状態で透過した放射線を直線偏光するよう動作可能であるコーティング」である点で一致する。
オ また、上記イからみて、引用発明の「コーティング」と本願発明の「コーティング」とは、「活性化状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有する少なくとも部分的に位置合わせされた可逆性フォトクロミック-2色性材料を含む」点で一致する。
カ また、上記ア及びイからみて、引用発明の「コーティング」は、フォトクロミックであり、かつ、透過した放射線を直線偏光する機能を有するものであるから、それ自体をフォトクロミック直線偏光素子と呼んでも何ら差し支えないものである。そうすると、引用発明の「光学素子」と本願発明の「光学素子」とは、「コーティングを含むフォトクロミック直線偏光素子を含む」点で一致する。

(10)上記(1)ないし(9)からみて、本願発明と引用発明とは、
「(a)(i)基材;および
(ii)前記基材に接合された少なくとも1種のコーティングであって、第1の吸収状態および第2の吸収状態を有し、化学線に応答して前記第1の吸収状態から前記第2の吸収状態に切り換わり、化学線および/または熱エネルギーに応答して元の前記第1の吸収状態に戻り、そして前記第1の吸収状態および/または前記第2の吸収状態で透過した放射線を直線偏光するよう動作可能であるコーティング
を含み、前記コーティング(ii)が、活性化状態で少なくとも1.5の平均吸収比を有する少なくとも部分的に位置合わせされた可逆性フォトクロミック-2色性材料を含む、
フォトクロミック直線偏光素子
を含む、光学素子。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
前記「光学素子」が、
本願発明では、
「(b)(i)前記フォトクロミック直線偏光素子(a)に接続された、ポリマーコーティングまたはポリマーシート;および
(ii)第1の秩序化された領域と前記第1の秩序化された領域に隣接した少なくとも1つの第2の秩序化された領域とを有する層であって、前記層に所望のパターンが形成されるように、前記第1の秩序化された領域が第1の全体的方向を有し、少なくとも1つの前記第2の秩序化された領域が前記第1の全体的方向と同じまたは異なる第2の全体的方向を有する、層
を含む少なくとも1種の複屈折層であって、透過した放射線を円または楕円偏光するよう動作可能な複屈折層」を「含む」のに対し、
引用発明では、前記「基材」の表面の少なくとも一部分上に「接合され」る、従来のフォトクロミックコーティング、抗ミラーコーティング、直線偏光性コーティング、円偏光性コーティング、楕円偏光性コーティング、中間コーティング、下塗りコーティングおよび保護コーティングから選択される少なくとも1つのさらなる少なくとも部分コーティング(以下、「少なくとも1つのさらなる少なくとも部分コーティング」を「第2のコーティング」ともいう。)をさらに備え、前記「第2のコーティング」は、前記「第1の吸収状態」および「第2の吸収状態」を有する「コーティング」(以下「第1のコーティング」ともいう。)の少なくとも一部分の上に存在、すなわち、オーバーコートとしてであり得、または「第1のコーティング」の少なくとも一部分の下に存在、すなわち、アンダーコートとしてであり得るとされているものの、当該「第2のコーティング」の具体的な構造は特定されておらず、不明である点。

5 判断
以下、相違点について検討する。
(1)ア 引用発明の「光学素子」は、「能動および受動液晶セル素子」であるところ、本願の優先日前において、液晶表示装置、サングラスや防目メガネ(すなわち眼科用素子)、表示素子(CRT、LCD等)、建築材料に反射防止機能を付与するために、当該液晶表示装置やLCD等の表示素子に適用される直線偏光素子に位相差板(代表的には1/4波長板)を積層して円偏光板を形成することは、周知である(周知例として、特開平8-300543号公報(【0002】、【0028】等を参照。)、特開2008-122485号公報(【0038】?【0043】、【0045】、【0046】、図1、図2等を参照。))。
また、本願の優先日前において、液晶表示装置に立体表示機能を付与するために、基板上に偏光板を介して位相差シートを配置し、当該位相差シートを遅相軸または進相軸方向がそれぞれ異なる第1の領域と第2の領域に分割することは、周知である(周知例として、特開平10-153707号公報(【0108】、【0109】、図2、図3等を参照。))。
以下、液晶表示装置やLCD等の表示素子に反射防止機能や立体表示機能を付与するため、当該液晶表示装置や表示素子に適用される直線偏光素子に位相差板(代表的には1/4波長板)を積層して円偏光板を形成し、その際、必要に応じて前記位相差板を遅相軸または進相軸方向がそれぞれ異なる第1の領域と第2の領域に分割し又は分割しないことを「周知技術」という。
イ 引用発明は、「第1の吸収状態」および「第2の吸収状態」を有する「コーティング」(「第1のコーティング」)のオーバーコート又はアンダーコートとして、従来のフォトクロミックコーティング、抗ミラーコーティング、直線偏光性コーティング、円偏光性コーティング、楕円偏光性コーティング、中間コーティング、下塗りコーティングおよび保護コーティングから選択される少なくとも1つのさらなる少なくとも部分コーティング(「第2のコーティング」)をさらに備えるものであり、また、引用発明の「前記中間コーティングは、2つのコーティングの間の特性において勾配を生じるのを補助するコーティングであり、例えば、放射線硬化型アクリレート系薄膜であり得る」ところ、前記円偏光性コーティングや前記楕円偏光性コーティングが、直交する偏光成分の間に位相差を生じさせる複屈折素子としての機能を有するコーティングであって、当該複屈折素子が位相差板(1/4波長板)として機能することによって、直線偏光素子の透過光に円偏光性や楕円偏光性を付与するコーティングであることは当業者に明らかである。
液晶セル素子に反射防止機能又は立体表示機能を付与するために、前記「第2のコーティング」の1つとして、円偏光性コーティング又は楕円偏光性コーティング(以下「円/楕円偏光性コーティング」という)を選択するとともに、「第1のコーティング」と「第2のコーティング」の1つとして選択した円/楕円偏光性コーティングとの間の特性において勾配を生じるのを補助するために、前記「第2のコーティング」として、円/楕円偏光性コーティングに加えてもう1つ、放射線硬化型アクリレート系薄膜である中間コーティングを選択することは、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(2)ア 引用発明において、「第2のコーティング」として、円/楕円偏光性コーティングと中間コーティングを選択した場合、中間コーティングは、2つのコーティング間の特性において勾配を生じるのを補助するコーティングであるのだから、当該中間コーティングを含む「第2のコーティング」を「第1のコーティング」にアンダーコート又はオーバーコートする際に、中間コーティングが「第1のコーティング」と「第2のコーティング」のうちの円/楕円偏光性コーティングとの間に配置されるようにするのが自然である。
中間コーティングを「第1のコーティング」と円/楕円偏光性コーティングとの間に配置した場合、中間コーティングは、「第1のコーティング」に接合されることとなるが、引用発明における中間コーティングは、放射線硬化型アクリレート系薄膜、すなわち、ポリマーコーティングである。
また、「第1のコーティング」は、「第1の吸収状態」および「第2の吸収状態」を有する少なくとも部分「コーティング」であり、フォトクロミック直線偏光素子と呼んでも何ら差し支えないものである(上記4(8)参照。)。
そうすると、中間コーティングを「第1のコーティング」と円/楕円偏光性コーティングとの間に配置した場合、引用発明の「光学素子」は、「前記フォトクロミック直線偏光素子(a)に接続された、ポリマーコーティング」を含むといえる。
イ 引用発明において、「第2のコーティング」として、円/楕円偏光性コーティング、すなわち、位相差板(1/4波長板)として機能することによって、直線偏光素子の透過光に円偏光性や楕円偏光性を付与するコーティング(上記(1)イ参照。)を選択する際、必要に応じて、前記円/楕円偏光性コーティングを遅相軸または進相軸方向がそれぞれ異なる第1の領域と第2の領域に分割し又は分割しないことは、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得た程度のことである。
そして、円/楕円偏光性コーティングを遅相軸または進相軸方向がそれぞれ異なる第1の領域と第2の領域に分割した場合、当該円/楕円偏光性コーティングが、本願発明の「第1の秩序化された領域と前記第1の秩序化された領域に隣接した少なくとも1つの第2の秩序化された領域とを有する層であって、前記層に所望のパターンが形成されるように、前記第1の秩序化された領域が第1の全体的方向を有し、少なくとも1つの前記第2の秩序化された領域が前記第1の全体的方向と異なる第2の全体的方向を有する、層」に該当するものとなることは明らかである。
また、円/楕円偏光性コーティングを遅相軸または進相軸方向がそれぞれ異なる第1の領域と第2の領域に分割しない場合、当該円/楕円偏光性コーティングが、「第1の秩序化された領域と前記第1の秩序化された領域に隣接した少なくとも1つの第2の秩序化された領域とを有する層であって、前記層に所望のパターンが形成されるように、前記第1の秩序化された領域が第1の全体的方向を有し、少なくとも1つの第2の秩序化された領域が前記第1の全体的方向と同じ第2の全体的方向を有する、層」に該当するとみることもできる。

(3)上記(1)及び(2)からみて、引用発明の「第2のコーティング」として、円/楕円偏光性コーティングと中間コーティングを選択した「光学素子」において、相違点に係る本願発明の構成を有するもの、すなわち、
「(b)(i)前記フォトクロミック直線偏光素子(a)に接続された、ポリマーコーティングまたはポリマーシート;および
(ii)第1の秩序化された領域と前記第1の秩序化された領域に隣接した少なくとも1つの第2の秩序化された領域とを有する層であって、前記層に所望のパターンが形成されるように、前記第1の秩序化された領域が第1の全体的方向を有し、少なくとも1つの前記第2の秩序化された領域が前記第1の全体的方向と同じまたは異なる第2の全体的方向を有する、層
を含む少なくとも1種の複屈折層であって、透過した放射線を円または楕円偏光するよう動作可能な複屈折層」を含むものとなすことは、当業者が周知技術に基づいて容易に想到し得たことである。

(4)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測できる程度のものである。

(5)したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

(6)まとめ
本願発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が本願の出願前に頒布された刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-31 
結審通知日 2016-04-01 
審決日 2016-04-12 
出願番号 特願2011-542248(P2011-542248)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 最首 祐樹竹村 真一郎  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 西村 仁志
本田 博幸
発明の名称 透明-円偏光フォトクロミックデバイスおよびその作製方法  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
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