• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1318578
審判番号 不服2015-6730  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-09 
確定日 2016-08-22 
事件の表示 特願2014-118765「写真撮影編集機、写真撮影編集機の処理方法、並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月13日出願公開、特開2014-211642〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月25日を出願日とする特願2012-99867号の特許出願の一部を、平成24年12月3日に分割出願した特願2012-264220号の一部を、平成25年12月13日に分割出願した特願2013-257724号の一部を、平成26年6月9日に分割出願した特願2014-118765号であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成26年 8月13日(起案日)
手続補正 :平成26年10月17日
拒絶査定 :平成27年 1月 7日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成27年 4月 9日
手続補正 :平成27年 4月 9日
拒絶理由(当審・最初) :平成28年 3月29日(起案日)
手続補正 :平成28年 5月24日

第2 本願発明
本願の請求項16に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年5月24日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項16に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。((A)ないし(E)は当審が付与した。以下、構成要件(A)、構成要件(B)・・などという。)

【請求項16】
(A)利用者を撮影して複数枚の撮影画像を得るように撮影を制御し、
(B)前記複数枚の撮影画像の内、前記利用者の一部を表示している画像表示領域に表示されている前記利用者の同一箇所に対する異なる変更の指示を受け付け、
(C)受け付けられた変更を、前記画像表示領域に表示されている撮影画像に対して施す
ステップを含み、
(D)前記画像表示領域に表示されていない全ての撮影画像に対しても、前記受け付けられた変更を施す
ステップを含む
(E)写真撮影編集機の処理方法。

第3 刊行物の記載事項
(1)刊行物1の記載
当審における拒絶の理由の通知において引用された特開2005-92588号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

【0001】
本発明は、遊技場、遊園地などのアミューズメント施設などで利用者の全身、もしくは上半身、または顔領域を撮影・印刷する自動写真撮影装置に好適な合成画像プリント装置及び画像編集方法に関する。
【0002】
従来アミューズメント装置として、利用者である被写体をデジタルカメラで撮影し、その撮影画像と利用者が選択した画像とを合成した画像をシール紙に印刷する合成画像プリント装置が一般に知られている。
このような合成画像プリント装置では背景画像と、撮影した被写体画像をクロマキー合成をしてシールとして印刷するものが主流であるが、中には撮影した被写体画像に対して編集を加えるものが知られている。例えば、被写体画像に対して、予め設定された画像処理方法に基づき、利用者による化粧入力に対応して化粧画像を合成する化粧画像処理手段を備えた構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)
また、化粧をシミュレーションする装置として、化粧を行う範囲を指定する化粧範囲指定手段と、判定された化粧範囲に対し、指定された口紅色,パウダー色に変換する各変換手段とを備えた構成が知られている(例えば、特許文献2参照。)
【特許文献1】特開2000-069404号公報
【特許文献2】特開平06-319613号公報

【0024】
図6,7は、上記構成における処理手順を示すフローチャートである。ここで説明する各処理は、制御装置10のメモリ502に記憶された制御プログラムによって実現されるものである。
図6は、本発明の合成画像プリント装置における基本処理を示すフローチャートである。
管理側の設定として、まず、電源を投入する。
電源が投入されると、オープニング処理として、機器動作確認,カメラ撮影準備,プリンタ印刷準備を行う(ステップ601)。機器動作確認では、蛍光灯照明機器の点滅確認,制御装置10の起動確認が行われ、カメラ撮影準備では、シャッタースピード,絞りの設定が行われ、さらにプリンタ印刷準備では、プリンタ17のウォームアップが開始される。
ステップ601でのオープニング処理が終わると、顧客操作を受け入れるためのデモとして、画像合成装置の紹介、操作手順のデモを行う(ステップ602)。
【0025】
撮影を開始するために、利用者により規定枚数のコインが投入されると、撮影を行うための処理手順を画面上に表示する。
撮影条件として、明るさ,濃度等の選択画面を表示し、利用者に各撮影条件を選択させる(ステップ603)。
【0026】
利用者はタッチパネルに対してタッチペンでタッチすることで選択を行う。このとき利用者により選択された明るさをストロボ用電源に設定する。
ステップ603で設定された明るさでストロボを発光して、撮影処理を行う(ステップ604)。
通常、本装置では、撮影処理の際に、被写体画像を含む3つの画像を使って合成を行う。まず、利用者により任意に選択されたフレームの前景画像に対して、マスク処理を行う。マスク処理を行うことで撮影した被写体と前景画像との重なり位置を確認する。次に実際に被写体の動画像を取り込み、そのまま動画で表示されている状態で選択したフレームの中に合成して、液晶モニタ7に表示する。
この場合、マスク化された前景画像と利用者により選択された背景フレームとの間に、動画撮影されている被写体画像を挟み込むように合成し表示する。このときに使用されている被写体側の撮影データ、NTSCの低解像の動画画像データが使用されている。ここでは解像度は640×480ピクセルの解像度のデータを利用する。
取り込んでいた動画の被写体画像を撮影する。ここでは静止スチル画像によって撮影を行う。実際に撮影を行う場合は前述の低解像度ではなく、高解像度の画像データ、ここでは1280×1024ピクセルのデータでの出力に切り替える。
撮影した静止画像に対して画像の歪み、色、輝度、濃度による補正と、画像の大きさの補正という2つの形態の補正を行い、データ記憶部に保存する(ステップ605)。その後再びステップ604の撮影に戻り、4枚撮影するまでこれを繰り返す。
【0027】
撮影画像としての被写体画像を4枚保存した後、画像編集処理を開始する(ステップ606?609)。
画像編集処理としては、利用者の選択に応じて、落書き処理(ステップ607)の他、後述する化粧処理(ステップ608)を行い、画像編集の選択画面(ステップ606)から終了ボタンが選択されると画像編集処理を終了する(ステップ609)。
その後印刷するレイアウトを選択させ(ステップ610)、このレイアウトで編集した画像をプリンタ17で印刷する(ステップ611)。
印刷後処理を終了し(ステップ612)、オープニング画面(ステップ601)へ戻る。
なお、落書き処理と化粧処理の順番はユーザによって変えることもできる。また、落書き処理、化粧処理のいずれか一つだけを選択することも、さらにどちらも選択しないことも可能である。また、落書き処理、化粧処理のどちらか一方にした場合には、それぞれの処理に利用する時間をどちらかの処理に追加することができる。最初にどちらか一方の処理にするかという選択も可能であり、一つの処理終了後に、同じ処理を選択するか異なる処理を選択するかを選ぶことも可能である。
【0028】
図7は、図6のステップ608に示す化粧処理を示すフローチャートである。
化粧処理を開始すると、化粧モード選択画面を表示装置に表示して、利用者に化粧モードを選択させる(ステップ701)。
化粧モードの選択を受付ると、表示装置に化粧処理開始画面を表示する(ステップ702)。化粧処理開始画面では、被写体画像とともに、化粧処理対象となる顔について、両目及び口の位置の指定を促す案内メッセージを表示する。
タッチペンの操作により、両目及び口の位置が指定されると(ステップ703)、指定された両目及び口の位置情報に基づき顔領域を判定して、化粧部分選択画面として、判定結果に基づく顔領域の拡大画像と、化粧部分選択ボタンとを表示する(ステップ704)。この場合、両目及び口の位置情報に基づき、顔の中心線も判定される。
タッチペンにより、化粧部分の選択ボタンが操作されると(ステップ705)、選択ボタンに対応する化粧部分の化粧処理画面を表示して、利用者に化粧部分を選択させる。化粧処理を行う化粧部分及び化粧処理の順序については、利用者による任意の選択が可能なものとし、一部の化粧部分のみについて化粧処理を行うこととしてもよい。
化粧部分として目が選択された場合(ステップ706)、化粧処理画面として、両目の位置情報に基づく両目部分の拡大画像とともに、両目部分に対応する種別の化粧画像を選択するための化粧ツール(アイライン,アイシャドウ,マスカラ等のメイク道具)及びアイテムパレット(色,パターン)を表示する(ステップ707)。この場合、アイテムパレットには、ステップ701で利用者により選択された化粧モードに対応するパレットを表示する。
化粧処理画面では、タッチペンの操作により化粧ツール及びアイテムパレットを選択させた後(ステップ708)、化粧範囲を指定させる(ステップ709)。
口・肌・髪・アクセサリのいずれかが選択された場合(ステップ710,714,718,722)も同様に、対応する化粧処理画面を表示し(ステップ711,715,719,723)、化粧ツール,アイテムパレットを選択させた後(ステップ712,716,720,724)、化粧範囲を指定させる(713,717,721,725)。
指定された化粧範囲について、選択された化粧ツール及びアイテムパレットに応じた化粧画像合成処理を行い、各部分の拡大画像に合成して表示する(ステップ726)。なお、各化粧部分における化粧範囲の指定及び化粧画像生成処理については、後述する。
合成画像を表示した後、タッチペンの操作により、化粧ツール又はアイテムパレットが選択されると、選択内容に基づき化粧画像を変更し、変更した化粧画像を拡大画像に合成して表示する(ステップ727)。また、消去ツール,消しゴムツールが選択されると、タッチペンで指定された化粧画像について、後述する消去処理を行う。
一方、タッチペンの操作により、終了ボタンが選択されると(ステップ728)、化粧部分選択画面を表示する(ステップ704)。
化粧部分選択画面で終了ボタンが選択されると(ステップ729)、化粧処理を終了して(ステップ730)、画像編集選択画面を表示する。
複数の処理が存在するため、予めユーザにどの処理を行うのかを選択させ、選択されたそれぞれの処理1つづつに必要な時間をカウントダウンし表示することもでき、また選択した全ての処理の合計時間数をカウントダウン表示させることもできる。また、各処理を順次選択していく場合は、化粧処理を行うことができる時間の総合計数をカウントダウン表示することもできる、前述したように落書き時間も化粧処理時間に加えることができるため、予め落書きモードを選択してある場合は落書き時間も加えて表示することができる。
また、音声にてカウントダウンをユーザに知らせても良い。
【0029】
以下、図8?20に基づき、化粧処理の具体例を説明する。
図8は、画像編集選択画面の画面構成の一例を示す図である。
本例では、画像編集選択画面としての落書き処理画面800上に、化粧処理選択ボタン801と、画像編集終了ボタン802と、編集対象となる被写体画像選択ボタン803と、選択画像表示部804と、落書きツールボタン805とが配置されている。
本画面において、画面操作として、タッチペン806により化粧処理選択ボタン801が操作されると、化粧処理を開始する。化粧処理では、化粧ツール及びアイテムパレットを選択させた後、タッチペンが化粧部分を表示した表示画面のパネル上に接触したことを検出して、タッチペンの移動軌跡に応じた化粧範囲を設定し、選択された化粧ツール及びアイテムパレットに応じた化粧画像を合成する。
また、画像編集終了ボタン802が操作されると、画像編集処理を終了する。
【0030】
図9は、化粧処理の前に利用者に選択させる化粧モードと、各化粧モードに対応したアイテムパレットの基本パターンを示す図である。
各化粧モード901には、化粧ツール902?906毎にアイテムパレットが設定されており、利用者の選択に応じて、化粧モードに対応するアイテムパレットを各化粧処理画面に表示する。
なお、図9では、各化粧ツール902?906に対して一つずつのアイテムパレットが設定されているが、実際には複数のアイテムパレットが設定されることとなる。
また、達人モードでは、他の化粧モードに設定されたアイテムパレットの全てが選択可能となっている。また、達人モードにおいては、利用者の選択に応じて、アイシャドーでの濃淡やさらに濃淡階調の度合い、色合いの濃さの位置関係(例えば、目を丸く印象つけたいときには瞼の上、黒目の上あたりを濃い色にし、目尻に向かって濃淡階調を段階的に薄くてしておくことや、鋭い印象を持たせたいときには目尻に向かって)を変化させることもできる。
【0031】
図10は、顔領域の指定画面の画面構成の一例を示す図である。
図10(a)に示すように、顔領域の指定画面1010では、被写体画像全体1011とともに、ガイドメッセージ1012を表示する。
利用者のタッチペンの操作により、左右両目と口の三点が指定されると、図10(b)に示すように、化粧部分選択画面1020として、指定点に基づき判定された顔領域の拡大画像1021を表示するとともに、化粧部分選択ボタン1022と終了ボタン1023とを表示する。ここで、三点の指定により、両目及び口の位置座標と、顔領域の範囲と、顔領域における中心線とが設定される。
化粧部分選択画面1020において、化粧部分選択ボタン1022が操作されると、選択されたボタンに対応する化粧部分の化粧処理画面を表示する。
【0032】
図11は、目部分の化粧処理画面の画面構成の一例を示す図である。
目部分の化粧処理画面1100では、両目周辺の拡大画像を表示する化粧部分拡大表示部1101と、化粧ツール選択ボタン1102と、各化粧ツールに対応するアイテムパレット1103と、消しゴムツールボタン1004と、消去ツールボタン1005とを備える。アイテムパレット1103はそれぞれ予めマスカラを塗る範囲を示すものであり、ユーザは化粧の範囲を選択することができる。
化粧部分拡大表示部1101には、両目の周囲の拡大画像を表示し、タッチペンの移動軌跡に応じた化粧処理を可能とする。
目部分の化粧処理として、アイシャドウツールを用いた化粧処理を行う場合には、図11に示す編集部分拡大表示部1101に示す目部分の上部輪郭に沿って、タッチペンを操作させ、タッチペンの移動軌跡に応じた所定範囲に、アイシャドウを入れた化粧画像を生成する。
【0033】
図12は、目部分の化粧処理画面1100において、アイシャドウツールを選択した場合の化粧処理の一例を示す図である。
この場合、図12(a)に示すように、化粧範囲を示す基本図形1210として、予め目の輪郭線を示す線分1211とアイシャドウを入れる範囲1212が記憶されている。
利用者のタッチペンの移動軌跡1221に合わせて、基本図形1210の線分1211を変形するとともに、線分1211の変形に対応させて、基本図形1210を変形することにより化粧範囲1222を設定し、当該化粧範囲に対して選択された化粧パターンに応じた化粧画像の生成を行う。この場合、タッチペンがパネル面上で移動を行っている間は、基本図形1210の変形を行い続け、タッチペンがタッチパネル面から離れた時点で変形を終了し、化粧範囲を確定する。
この場合、タッチペンの移動軌跡に応じて、化粧範囲の設定だけでなく、化粧範囲に合成される化粧画像について、色濃度の濃淡階調を設定することとしてもよい。

(2)刊行物2の記載
当審における拒絶の理由の通知において引用された特許第4919131号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

【0001】
本発明は、画像提供装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、利用者にとってより満足度の高い画像を提供することができるようにする画像提供装置および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
利用者を撮影し、撮影画像に対して利用者に編集を行わせ、編集後の画像をシール紙に印刷して提供する写真シール機が知られている。このような写真シール機は娯楽(遊戯)施設等に設置される。
【0003】
写真シール機によって提供される1ゲームの流れは、通常、撮影空間内にいる利用者を被写体として撮影し、利用者を編集空間に移動させ、編集空間内で行われる操作に従って画像を編集し、編集後の画像である編集済み画像をシール紙に印刷して排出するという流れになる。

【0115】
硬貨が投入されたとステップS1において判定した場合、ステップS2において、撮影処理部302は、撮影部208を制御し、カメラ91に取り込まれた被写体の動画像をタッチパネルモニタ93にライブビュー表示させ、撮影空間A1にいる利用者を被写体として撮影する撮影処理を行う。なお、撮影処理については、図13乃至図15のフローチャートを参照して後述する。
【0116】
ステップS3において、撮影処理部302は、撮影空間A1にいる利用者に対して、編集空間A2-1または編集空間A2-2への移動を案内する。編集空間A2-1または編集空間A2-2への移動の案内は、撮影部208のタッチパネルモニタ93に画面を表示させることによって、または音声をスピーカ224から出力させることによって行われる。
【0117】
ステップS4において、編集処理部303は、編集空間A2-1と編集空間A2-2のうち、撮影処理を終えた利用者の移動先とした方の編集空間に対応する編集部209を制御し、編集処理を行う。具体的には、編集処理部303は、編集対象画像として選択された撮影画像に合成する合成用画像を利用者に選択させ、選択された合成用画像を撮影画像に合成させ、得られた合成画像に対して、利用者による編集操作に従って編集を行う。なお、編集処理については、図30のフローチャートを参照して後述する。

【0168】
図22は、利用者自身が写されている撮影画像を使用して、被写体の目のサイズを選択するのに用いられる目サイズ選択画面の例を示す図である。
【0169】
目サイズ選択画面には、撮影処理によって得られた撮影画像481が表示される。例えば、撮影を6回繰り返し行ったときには、6枚の撮影画像が得られており、目サイズ選択画面では、6枚の撮影画像481-1乃至481-6が、画面の中央から左側に表示される。
【0170】
目サイズ選択画面の右側には、3つの目サイズ選択ボタン482-1乃至482-3が上から順に表示される。目サイズ選択ボタン482-1には、「ナチュラルeye」という文字と、目のサイズが自然な大きさのモデルの目の画像とが表示されている。目サイズ選択ボタン482-2には、「パッチリeye」という文字と、目のサイズが若干大きな(例えば、自然な大きさよりも1割程度大きな)モデルの目の画像とが表示されている。また、目サイズ選択ボタン482-2には、この大きさの目サイズを選択することが推奨されることを示唆する「おすすめ」の文字がハート形の図形とともに表示されている。
【0171】
目サイズ選択ボタン482-3には、「ボリュームeye」という文字と、目のサイズが比較的大きな(例えば、自然な大きさよりも2割程度大きな)モデルの目の画像とが表示されている。また、目サイズ選択ボタン482-1乃至482-3の右方には、上から下に向かう矢印が表示されるとともに、その矢印の上方に「natural」という文字が表示され、その矢印の下方に「big」という文字が表示されている。つまり、目サイズ選択ボタン482-1、目サイズ選択ボタン482-2、および目サイズ選択ボタン482-3の順に下に向かうにしたがって、目サイズが大きくなることを示唆している。
【0172】
また、目サイズ選択画面の右下側には、目のサイズの選択を決定するときに操作される決定ボタン483が表示されており、決定ボタン483には、「決定」という文字が表示されている。
【0173】
このような目サイズ選択画面がタッチパネルモニタ93に表示され、利用者が、目サイズ選択ボタン482-1乃至482-3のいずれかを選択すると、目サイズ決定処理部319は、利用者による選択を受け付ける。そして、目サイズ決定処理部319は、利用者により選択されたサイズの目が写されている画像になるように、撮影画像481-1乃至481-6の被写体の目のサイズを一括して変更する。
【0174】
そして、利用者が、目のサイズの選択を行った後に決定ボタン483を選択すると、その時点で撮影画像481-1乃至481-6に反映されていた大きさで、被写体の目のサイズの選択が決定される。
【0175】
図15のフローチャートに戻り、ステップS62において、利用者が、目サイズ選択画面の目サイズ選択ボタン482-1乃至482-3のいずれかに対する操作(タッチ)を行って目のサイズを選択すると、目サイズ決定処理部319は、タッチパネルモニタ93から供給された情報に基づいて、利用者による選択を受け付ける。
【0176】
ステップS63において、目サイズ決定処理部319は、利用者により選択されたサイズの目が写っている画像になるように、全ての撮影画像481-1乃至481-6に写る利用者の目のサイズを一括して変更する。
【0177】
ステップS64において、目サイズ決定処理部319は、目のサイズを変更した撮影画像481-1乃至481-6をタッチパネルモニタ93に表示し、目のサイズの変更結果を利用者に確認させる。
【0178】
ステップS65において、目サイズ決定処理部319は、決定ボタン483が押されたか否かをタッチパネルモニタ93から供給された情報に基づいて判定し、押されていないと判定した場合、ステップS62に戻り、以上の処理を繰り返す。
【0179】
一方、決定ボタン483が押されたとステップS65において判定した場合、ステップS66において、目サイズ決定処理部319は、目のサイズを決定し、決定した目のサイズを表す情報を記憶部202などに記憶させて保存する。
【0180】
ステップS67において、用途情報生成部320は、ステップS39において選択された「お祝いメール」、「ブログデコ」、および「コーデアルバム」のうちのいずれか1つの用途を表す用途情報を生成する。
【0181】
ステップS68において、合成画像処理部316は、携帯送信後利用画像および合成用画像が合成された撮影画像を、用途情報生成部320によって生成された用途情報を含む付加情報とともに記憶部202に記憶させる。付加情報には、上述した用途情報の他、携帯送信後利用画像用の合成用画像に含まれるテキスト(文章)や画像等のデータが含まれる。
【0182】
ステップS68の処理が終了すると、撮影処理は終了され、処理は、図12のステップS2に戻る。

第4 刊行物1に記載された発明
以上の記載によれば、刊行物1には次の発明(以下、刊行物1発明という。)が記載されている。

(4-1)刊行物1の【0001】、【0002】の記載によれば、刊行物1に記載された発明は、合成画像プリント装置において、撮影した被写体画像に対して編集を加える編集方法に関する発明が開示されているといえる。

(4-2)刊行物1の【0024】-【0026】の記載によれば、刊行物1に記載された合成画像プリント装置は、被写体画像を静止スチル画像によって撮影を行うステップを4回繰り返していることが開示されている。

(4-3)刊行物1の【0027】の記載によれば、刊行物1に記載された合成画像プリント装置は、撮影画像としての被写体画像を4枚保存した後、画像編集処理を開始し、化粧処理(ステップ608)を行い、終了ボタンが選択されると画像編集処理を終了し、編集した画像をプリンタ17で印刷することが開示されている。

(4-4)刊行物1の【0028】-【0033】の記載によれば、刊行物1に記載された合成画像プリント装置における化粧処理の具体的な構成(目部分の化粧処理)について、以下のとおり開示されている。
(4-4-1)目部分の化粧処理の画面では、化粧部分拡大表示部1101には、両目の周囲の拡大画像を表示することが開示されている。
(4-4-2)上記目部分に対する化粧処理は、例えば、アイシャドウツールを選択した場合、利用者のタッチペンの移動軌跡1221に合わせて基本図形1210の変形を行い化粧画像の生成を行うことが開示されている。

(4-5)まとめ
以上まとめると、刊行物1発明として、以下のとおりのものを認定することができる。((a)ないし(d)は当審において付与し、以下「構成要件(a)」等として引用する。)

(a)被写体画像を静止スチル画像によって撮影を行うステップを4回繰り返し、
(b)撮影画像としての被写体画像を4枚保存した後、画像編集処理を開始し、
(c)化粧処理(ステップ608)を行い、
(c-1)化粧処理(目部分の化粧処理の場合)は、
(c-2)化粧部分拡大表示部1101には、両目の周囲の拡大画像を表示し、
(c-3)アイシャドウツールを選択した場合、利用者のタッチペンの移動軌跡1221に合わせて基本図形1210の変形を行い化粧画像の生成を行い、
(d)終了ボタンが選択されると画像編集処理を終了し、編集した画像をプリンタ17で印刷する合成画像プリント装置において、撮影した被写体画像に対して編集を加える編集方法。

第5 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(5-1)本願発明の構成要件(A)と刊行物1発明の構成要件(a)とを対比する。
刊行物1発明において被写体画像の被写体は、刊行物1の【0002】に「利用者である被写体」とあるから、利用者の撮影を4回行い利用者が撮影された画像を4枚得ているといえる。
したがって、刊行物1発明は、利用者を撮影して複数枚の撮影画像を得るように撮影を制御していることは明らかであるから、刊行物1発明は、本願発明の構成要件(A)を有している。

(5-2)本願発明の構成要件(B)と刊行物1発明の構成要件(b)、(c)とを対比する。
刊行物1発明の「両目の周囲の拡大画像」は、構成要件(a)で撮影された画像4枚の画像のうちの、利用者の目の部分を拡大表示していることは明らかであり、上記拡大表示している「化粧部分拡大表示部1101」は、上記目の部分の画像を表示している領域といえるから、「前記複数枚の撮影画像の内、前記利用者の一部を表示している画像表示領域」といえる。
そして、上記表示領域に表示されている「両目の周囲の拡大画像」に対して、構成要件(c-3)では、「利用者のタッチペンの移動軌跡1221に合わせて基本図形1210の変形を行い化粧画像の生成を行」っているから、上記表示されている利用者の箇所に対して変更の指示を受け付けている。
したがって、刊行物1発明は、「前記複数枚の撮影画像の内、前記利用者の一部を表示している画像表示領域に表示されている前記利用者の箇所に対する変更の指示を受け付け」の構成を有している点で共通する。
もっとも、本願発明では、上記変更の指示が「利用者の同一箇所に対する異なる変更の指示」であるのに対し、刊行物1発明では、上記「同一」および「異なる」の特定事項を有していない点で相違する。

(5-3)本願発明の構成要件(C)と刊行物1発明の構成要件(c)、(d)とを対比する。
刊行物1発明において、構成要件(c-3)では、変更を受け付けており、化粧画像を生成している。
そして、構成要件(d)にて、終了ボタンが選択されると画像編集処理を終了し、編集した画像をプリンタ17で印刷しているが、上記編集した画像は、構成要件(a)にて4回撮影した画像のうちから選択され、構成要件(b)にて拡大表示された撮影画像に対して、構成要件(c)にて行った変更を行った画像であることは明白であるから、受け付けられた変更を、前記画像表示領域に表示されている撮影画像に対して施すステップを有しているといえ、刊行物1発明は、構成要件(C)を備えているといえる。

(5-4)本願発明の構成要件(D)と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明では、上記拡大表示された撮影画像以外に、3枚の撮影画像を有していることは明らかであるが、上記3枚の画像に対して、構成要件(c)にて特定される変更処理を行っていることは特定されていないから、構成要件(D)は有していない。

(5-5)本願発明の構成要件(E)と刊行物1発明の構成要件(d)とを対比する。
刊行物1発明の「合成画像プリント装置」は、構成要件(a)ないし(c)にあるように、写真を撮影し、編集を行っているから、「写真撮影編集機」といえ、上記装置において撮影した被写体画像に対して編集を加える編集方法は、構成要件(a)ないし(c)にある処理のステップを含む編集方法であるから、上記(5-1)ないし(5-3)で検討したステップを含む「写真撮影編集機の処理方法」といえる。
したがって、刊行物1発明は、構成要件(E)を有している。

(5-6)まとめ(一致点・相違点)
以上まとめると、本願発明と刊行物1発明とは以下の一致点で一致し相違点で相違する。

(一致点)
利用者を撮影して複数枚の撮影画像を得るように撮影を制御し、
前記複数枚の撮影画像の内、前記利用者の一部を表示している画像表示領域に表示されている前記利用者の箇所に対する変更の指示を受け付け、
受け付けられた変更を、前記画像表示領域に表示されている撮影画像に対して施すステップを含む、
写真撮影編集機の処理方法。

(相違点)
相違点1
本願発明では、上記変更の指示が「利用者の同一箇所に対する異なる変更の指示」であるのに対し、刊行物1発明では、上記「同一」および「異なる」の特定事項を有していない点。

相違点2
本願発明は、「前記画像表示領域に表示されていない全ての撮影画像に対しても、前記受け付けられた変更を施す」構成を備えているのに対し、刊行物1発明は当該構成を備えていない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。

(6-1)相違点1について
本願発明の「同一箇所に対する異なる変更の指示」は、平成28年5月24日付け手続補正にて補正されたものであり、同日付け意見書を参酌すると、当該補正の根拠として「この補正は、出願当初の明細書の「0294」乃至「0296」の段落の記載、図面の図40の記載を根拠とする。これらの段落の記載、および図面から、例えば、利用者の目のサイズを変更する3つのボタンが表示されていること、顔の明るさを変更する5つのボタンが表示されていること、髪の毛の色を変更する5つのボタンが表示されていること、顔の大きさを変更する3つのボタンが表示されていることが読み取れ、利用者の目、顔色、髪の毛、顔の輪郭といった異なる箇所に対して、大きさや明るさなどを変更するボタンが表示されていることが読み取れる。」と請求人は述べている。
上記主張によれば、「利用者の目、顔色、髪の毛、顔の輪郭といった異なる箇所」とあるから、「同一箇所」は、「利用者の目」、「顔色」、「髪の毛」、「顔の輪郭」のいずれか一つのみを示し、異なる変更は、上記同一箇所に対して、例えば「利用者の目」であれば「利用者の目のサイズを変更する3つのボタンが表示されていること」により、上記3つのボタンをのいずれかを指示することにより異なる変更の指示を行うことを特定しているものと認めることができる。
当該構成について刊行物2の、【0001】-【0003】、【0168】-【0174】および図22の記載によれば、刊行物2に記載された発明は、写真シール機に関する発明であって、利用者の目のサイズを変更しようとしたとき、3つの目サイズ選択ボタンのいずれかを選択することで、異なる目サイズに変更の指示を行うことが開示されている。
刊行物2に記載された発明が前提とする「写真シール機」は、刊行物1発明の「合成画像プリント装置」と同等のものであり、刊行物1発明において、目の化粧処理を行うことも開示されており、上記目の化粧は、撮影画像に対する目部分についての見栄えをよくする点で目のサイズ変更と共通するから、当該目の化粧処理において、刊行物2に記載された目のサイズ変更も行うようにしようとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、刊行物1発明において、上記相違点1の構成を採用することは、当業者が容易になしえたことである。

(6-2)相違点2について
刊行物2の記載によれば、刊行物2に記載された写真シール機は、(6-1)で検討した目のサイズを変更する構成を含む撮影処理(ステップS2)を有することが記載されており(【0115】-【0117】)、上記目のサイズ変更の処理の具体的な構成について、【0168】-【0179】の記載を参酌すると、撮影を6回繰り返し行ったときには、6枚の撮影画像481-1乃至481-6が得られており、目のサイズ変更の指示を行うと、利用者により選択されたサイズの目が写っている画像になるように、全ての撮影画像481-1乃至481-6に写る利用者の目のサイズを一括して変更することが開示されている。
そして、刊行物1発明でも4枚の画像を撮影していることは、先に検討したとおりであるから、上記相違点1で検討したように、目部分に対する見栄えをよくするために、刊行物2に記載された目のサイズ変更の処理を付加すれば、上記4枚の画像に対して目のサイズを一括して変更する構成となることは当然であり、刊行物1発明に対して、刊行物2に記載された上記目のサイズ変更の処理を上記4枚全ての画像に行う構成を付加すれば、「化粧部分拡大表示部」に拡大表示された画像以外の全ての画像に対しても、化粧処理を施す構成となることは明らかであり、刊行物1発明に対して、刊行物2に記載された技術思想を適用し相違点2の構成を採用することは、当業者が容易になしえたことである。

したがって、上記各相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記各相違点に係る構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項1ないし請求項15、請求項17に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-16 
結審通知日 2016-06-21 
審決日 2016-07-05 
出願番号 特願2014-118765(P2014-118765)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 洋介赤穂 州一郎  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 渡辺 努
渡邊 聡
発明の名称 写真撮影編集機、写真撮影編集機の処理方法、並びにプログラム  
代理人 西川 孝  
代理人 稲本 義雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ