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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
管理番号 1318582
審判番号 不服2015-15034  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-10 
確定日 2016-08-22 
事件の表示 特願2011-51517号「ナビゲーション装置、撮影制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月4日出願公開、特開2012-189371号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月9日の出願であって、平成26年8月22日付けで拒絶理由が通知され、平成26年10月15日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年12月11日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成27年2月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年5月7日付けで平成27年2月12日提出の手続補正書でした補正についての補正却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年8月10日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成28年4月6日付けで当審による拒絶理由が通知され、平成28年6月2日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし請求項6に係る発明は、出願当初の明細書及び平成28年6月2日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
ナビゲーションを行うナビゲーション部と、
前記ナビゲーション部からナビゲーションの地点に関する情報である地点情報を取得する取得部と、
撮影を行って撮影画像を取得する撮影部と、
前記撮影部が取得した撮影画像を蓄積する蓄積部と、
前記取得部が取得した地点情報を用いて、前記撮影部の撮影に関し、撮影を行うタイミングであるかどうかを判断する判断処理と、撮影を行うタイミングであると判断した場合に、撮影が行われるようにする撮影実行処理とを行う制御部と、を備え、
前記蓄積部は、前記取得部が取得した地点情報に応じた画像を前記撮影画像の一部に合成して蓄積する、ナビゲーション装置。」

第3 刊行物
1.刊行物1
(1)刊行物1の記載事項
本願の出願前に頒布され、当審による拒絶理由において引用された刊行物である、特開2002-213973号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の記載がある。

1a)「【請求項1】所定の座標取得手段より得られる現在位置の情報に基づいて、少なくとも撮影対象の位置情報を蓄積した情報蓄積手段をアクセスし、現在位置近傍における前記撮影対象の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報取得手段で取得した位置情報に基づいて撮像手段を制御し、前記現在位置近傍における撮影対象の画像データを取得する制御手段とを備えることを特徴とする画像取得装置。
【請求項2】前記制御手段は、
前記画像データを所定の画像表示手段により表示することを特徴とする請求項1に記載の画像取得装置。
【請求項3】前記制御手段は、
前記画像データを所定の画像データ蓄積手段に蓄積することを特徴とする請求項1に記載の画像取得装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項3】)

1b)「【0010】請求項1に構成によれば、所定の座標取得手段より得られる現在位置の情報に基づいて、少なくとも撮影対象の位置情報を蓄積した情報蓄積手段をアクセスし、現在位置近傍における撮影対象の位置情報を取得する位置情報取得手段と、位置情報取得手段で取得した位置情報に基づいて撮像手段を制御し、現在位置近傍における撮影対象の画像データを取得する制御手段とを備えることにより、例えば所望の目的地まで移動する際に、移動経路沿いの観光地等の画像を自動的に取得することができる。これによりこの画像を種々に利用して、観光バスによる移動のように、沿線の観光地を気楽に楽しむことができ、またきままに観光地の風景を記録に残すことができる。」(段落【0010】)

1c)「【0013】(1)第1の実施の形態
(1-1)第1の実施の形態の構成
図2は、本発明の実施の形態に係る観光案内システムを示すブロック図である。この観光案内システム1は、例えば乗用車に搭載されて、ナビゲーションシステムを構成すると共に、各種の観光案内をユーザーに提供する。
【0014】このためこの観光案内システム1において、位置方位速度計測部2は、乗用車の現在位置(高度を含む)、乗用車の進行方向、移動速度を所定周期で検出し、現在位置を示す座標情報、進行方向を示す方位情報、移動速度の情報を出力する。すなわち位置方位速度計測部2は、図示しないGPS受信部の受信結果を処理することにより、GPSにより現在位置の座標情報、移動速度の情報、移動方向の情報を取得する。さらに車輪の回転周期で立ち上がる車速パルス4の計測により単位時間当たりの走行距離を検出する。またジャイロ3を用いた角速度検出機構により、車両の姿勢の変化を角速度により検出する。位置方位速度計測部2は、GPSにより得られる現在位置の座標情報、移動速度の情報、移動方向の情報を必要に応じてこれら単位時間当たりの走行距離、角速度で補正して現在位置の座標情報、方位情報、移動速度の情報を生成し、これにより例えばトンネル等の衛星からの電波を受信できないような場所を通行している場合でも、確実に現在位置等を検出するようになされている。」(段落【0013】及び【0014】)

1d)「【0020】このようにして処理する際に、検索処理部15は、ユーザーにより沿線観光地の案内が指示されると、位置方位速度計測部2で計算される現在位置情報を取得し、この現在位置情報を基準にしてデータベース12をアクセスする。これにより検索処理部15は、現在位置近傍の観光地を検出してその座標情報をカメラ制御部21に通知するようになされている。なおこの処理において、ユーザーがテキストによる案内、画像データによる案内を指示した場合には、上述したと同様に、それぞれ文字データ、画像データを表示メモリ9に展開する。」(段落【0020】)

1e)「【0022】撮像装置20は、カメラ制御部21の制御により車外の風景を撮像するビデオカメラである。すなわち図4に示すように、撮像装置20は、例えば半円球の透明ドーム20A内に収納されてこの乗用車の天井に配置される。撮像装置20は、所定の駆動機構により矢印Aにより示すように、種々の方向にチルトできるようになされ、さらに矢印Bにより示すように、所定の範囲内でパンできるようになされ、さらにはズームできるようになされている。
【0023】カメラ制御部21は、入力処理部7による指示に従って、ユーザーが沿線観光の案内を指示すると、検索処理部15で検索した観光地を自動的に追尾して撮像するように、撮像装置20の姿勢を種々に制御し、また撮像装置20をズーミングさせる。
【0024】カメラ映像処理部22は、撮像装置20より出力されるビデオ信号を信号処理して画像データを生成し、この画像データにより表示メモリ9を更新する。これによりこの観光案内システム1では、沿線観光地の風景を撮像して表示できるようになされている。」(段落【0022】ないし【0024】)

1f)「【0026】図1は、ユーザーが沿線観光の案内を指示した場合におけるこの中央処理ユニットの処理手順を示すフローチャートである。すなわち中央処理ユニットは、ステップSP1からステップSP2に移り、位置方位速度計測部2により現在位置の座標情報、移動速度の情報、移動方向の情報を取得する。
【0027】続いて中央処理ユニットは、ステップSP3に移り、ここでステップSP1で検出した現在位置の位置情報である座標情報により検索処理部15でデータベース12をアクセスし、観光案内データとしてデータベース12に格納された現在位置近傍の観光地を検出する。なお中央処理ユニットは、ここで例えば現在位置より半径1〔km〕以内の観光地を現在位置近傍の観光地として検出する。
【0028】続いて中央処理ユニットは、ステップSP4に移り、検索処理部15において、ステップSP3の検索で1つ以上の観光地が検出されたか否か判断し、否定結果が得られると、ステップSP2に戻る。これにより中央処理ユニットは、ステップSP2-SP3-SP4-SP2の処理手順を一定周期により繰り返し、移動経路に沿って点在する観光地を順次検出する。
【0029】これに対してステップSP4で肯定結果が得られると、中央処理ユニットは、ステップSP5に移り、ここで検索処理部15において、ステップSP3で検出した観光地の中から現在位置に最も近い観光地を選択する。さらにこの選択した観光地について観光案内データをロードする。続いて中央処理ユニットは、ステップSP6に移り、カメラ制御部21において、ステップSP5で取得した観光案内データの座標情報と、ステップSP2で検出した現在位置の座標情報より、この検出した観光地の方位を計算する。
【0030】ここで中央処理ユニットは、図5に示すように、現在位置の緯度及び経度による座標値を、メートルを単位にした東西方向及び南北方向の座標値(Xc、Yc)に正規化し、また同様に、観光地の緯度及び経度による座標値を、メートルを単位にした東西方向及び南北方向の座標値(Xv、Yv)に正規化する。なおここでこの正規化した座標値においては、それぞれ東及び北方向を正の向きとして処理する。中央処理ユニットは、このようして正規化した座標値間で差分値(ΔX(Xv-Xc)、ΔY(Yv-Yc))を計算した後、この差分値(ΔX、ΔY)により次式の演算処理を実行し、これにより北方向を基準にして観光地の方位φを計算する。かくするにつき次式の演算処理により、中央処理ユニットは、北方向を0度として上方より見て時計回りに方位φを計算する。
【0031】
【数1】・・(略)・・
【0032】さらに中央処理ユニットは、このようにして計算した北方向を基準にした観光地の方位φより、次式の演算処理を実行し、これにより図6に示すように、自動車の進行方向を基準にした-180度?180度の範囲で観光地の方位αを計算する。
【0033】
【数2】・・(略)・・
【0034】さらに中央処理ユニットは、差分値(ΔX、ΔY)により観光地までの距離を計算し、この距離により高度差を処理することにより、現在の高度における水平を基準にした観光地までの仰角を計算する。さらに中央処理ユニットは、位置方位速度計測部2で得られる角速度を基準にした車の姿勢により、このようにして計算した水平方向を基準にした仰角を補正し、これにより車を基準にした観光地の仰角を計算する。
【0035】このようにして観光地の方位α、仰角を計算すると、中央処理ユニットは、ステップSP7に移り、カメラ制御部21により撮像装置20をチルト及びパンさせ、続くステップSP8で観光地の風景を撮像装置20により撮像する。続いて中央処理ユニットは、カメラ映像処理部22の制御により、このようにして撮像装置20で取得した画像データを表示部10に表示し、ステップSP2に戻る。」(段落【0026】ないし【0035】)

1g)「【0050】また上述の実施の形態においては、観光地の画像を取得して表示する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、記録するようにしてもよい。このようにすれば観光バスによる移動で車窓の風景を記録する場合のように、きままに観光地の風景を記録に残すことができ、旅行等の記録に利用することができる。なおこの場合、ハードディスク装置等の内蔵の記録手段に撮像結果を記録する場合、さらにはネットワークにより接続した外部記憶装置に撮像結果を記録する場合が考えられる。」(段落【0050】)

1h)「【0056】
【発明の効果】上述のように本発明によれば、所定の座標取得手段より得られる現在位置の情報に基づいて撮影対象の位置情報を蓄積した情報蓄積手段をアクセスし、現在位置近傍における撮影対象の位置情報を取得すると共に、この位置情報に基づいて撮像手段を制御して撮影対象の画像データを取得することにより、観光バスによる移動のように、沿線の観光地を気楽に楽しむことができ、またきままに観光地の風景を記録に残すことができる。」(段落【0056】)

(2)刊行物1の記載から分かること
上記(1)及び図1ないし図8から以下のことが分かる。

1i)上記(1)1c)から、観光案内システム1はナビゲーションシステムを構成するものであることが分かる。

1j)上記(1)1b)並びに図1及び図2から、観光案内システム1は、現在位置の情報を取得する座標取得手段を備えることが分かる。

1k)上記(1)1e)並びに図2及び図8から、観光案内システム1は、車外の風景を撮像する撮像装置20を備えることが分かる。

1l)上記(1)1a)及び1g)から、観光案内システム1は、撮像装置20で取得した画像データを蓄積する画像データ蓄積手段を備えることが分かる。

1m)上記(1)1f)及び図1から、観光案内システム1は、座標取得手段が取得した現在位置の情報に基づいて、撮像装置20による撮像に関し、現在位置の近傍にある撮影対象が検出されたか否かを判断(図1のフローのSP4)し、現在位置の近傍にある撮影対象が検出された場合(図1のフローのSP4におけるYESとなった場合)に、現在位置に最も近い撮影対象の位置情報に基づいて撮像装置20を制御することにより現在位置に最も近い撮影対象の画像データを取得するカメラ制御部21を備えることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図1ないし図8の記載を総合すると、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ナビゲーションシステムを構成する観光案内システム1と、
観光案内システム1において現在位置の情報を取得する座標取得手段と、
車外の風景を撮像した画像データを取得する撮像装置20と、
撮像装置20が取得した画像データを蓄積する画像データ蓄積手段と、
座標取得手段が取得した現在位置の情報に基づいて、撮像装置20による撮像に関し、
現在位置の近傍にある撮影対象が検出されたか否かを判断し、現在位置の近傍にある撮影対象が検出された場合に、現在位置に最も近い撮影対象の位置情報に基づいて撮像装置20を制御することにより現在位置に最も近い撮影対象の画像データを取得するカメラ制御部21とを備える、観光案内システム1。」

2.刊行物2
(1)刊行物2の記載事項
本願の出願前に頒布され、当審による拒絶理由において引用された刊行物である、特開2006-185262号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

2a)「【請求項1】
ユーザーが所定の移動経路を移動したときに撮影したデータを含むデジタル画像データを表示手段に表示させる電子アルバムを作成する電子アルバムシステムであって、
ナビゲーション装置により特定された前記移動経路の経路データ及び前記デジタル画像データを記録する記録手段と、
前記記録手段に記録された前記移動経路の全体又は一部の経路データを示すサムネイル画像を、前記表示手段に表示される前記電子アルバムのタイトルを示すタイトル表示部に対して合成するサムネイル画像合成手段を備えたことを特徴とする電子アルバムシステム。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

2b)「【請求項3】
請求項1に記載された電子アルバムシステムにおいて、
前記電子アルバムに収録されている画像データの画像の一部に副画像表示領域を設け、該副画像表示領域に前記経路データのサムネイル画像を合成表示する副画像合成表示手段をさらに備えており、
前記サムネイル画像合成手段は、前記タイトル表示部に合成すべき画像データとして、前記副画像合成表示手段により前記経路データが合成表示された画像データを合成するように構成されていることを特徴とする電子アルバムシステム。」(【特許請求の範囲】の【請求項3】)

2c)「【0007】
しかしながら、上述したようなサムネイル画像であっても、似通った観光地に旅行したときのサムネイル画像であれば、その画像を見ただけではどこで撮影したものであるのかを瞬時に把握して互いに識別することは非常に困難であると考えられ、結局はユーザーが実際にアルバムを再生して確認していかなければならず、手間がかかって使い勝手が悪い。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アルバムのタイトル表示を見るだけでそのアルバムの内容をユーザーが容易に想起できるようにすることにある。」(段落【0007】及び【0008】)

2d)「【0009】
前記目的を達成するため、本発明では、タイトル表示部に旅行当時の移動経路を示す経路データのサムネイル画像を合成表示するようにした。
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、ユーザーが所定の移動経路を移動したときに撮影したデータを含むデジタル画像データを表示手段に表示させる電子アルバムを作成する電子アルバムシステムであって、
ナビゲーション装置により特定された前記移動経路の経路データ及び前記デジタル画像データを記録する記録手段と、
前記記録手段に記録された前記移動経路の全体又は一部の経路データを示すサムネイル画像を、前記表示手段に表示される前記電子アルバムのタイトルを示すタイトル表示部に対して合成するサムネイル画像合成手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
従って、本発明によれば、ユーザーが移動した移動経路の経路データが記録手段に記録され、サムネイル画像合成手段により、該記録手段に記録された該移動経路の全体又は一部の経路データを示すサムネイル画像が電子アルバムのタイトル表示部に合成される。」(段落【0009】ないし【0011】)

2e)「【0014】
請求項3の発明は、請求項1に記載された電子アルバムシステムにおいて、
前記電子アルバムに収録されている画像データの画像の一部に副画像表示領域を設け、該副画像表示領域に前記経路データのサムネイル画像を合成表示する副画像合成表示手段をさらに備えており、
前記サムネイル画像合成手段は、前記タイトル表示部に合成すべき画像データとして、前記副画像合成表示手段により前記経路データが合成表示された画像データを合成するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
従って、本発明によれば、副画像合成表示手段により、電子アルバムに収録されている画像データの画像の一部に設けられた副画像表示領域に経路データのサムネイル画像が合成され、サムネイル画像合成手段により、副画像として経路データが合成された画像データが電子アルバムのタイトル表示部に合成される。」(段落【0014】及び【0015】)

2f)「【0020】
以上のように、請求項1に係る発明によれば、電子アルバムのタイトル表示部に移動経路の全部又は一部の経路データを示すサムネイル画像を合成するようにしたから、実際にアルバムを再生しなくてもどこに旅行したときのアルバムであるかがタイトル表示を見るだけで瞬時に判別でき、例えば、1つの電子アルバム内に複数のアルバムデータが収録されている場合であっても、ユーザーが鑑賞を希望するアルバムをすぐに見つけ出すことができてユーザーの利便性が向上する。」(段落【0020】)

2g)「【0022】
請求項3に係る発明によれば、電子アルバムに収録されている画像データに副画像表示領域を設けて、この副画像表示領域に旅行当時の経路データを示すサムネイル画像を合成し、この合成画像をタイトル表示部に合成表示するようにしたから、旅行当時の経路データとともにそのときに撮影した画像データからもアルバムの内容を想起することができ、ユーザーが鑑賞を希望するアルバムを容易に判別することができる。」(段落【0022】)

2h)「【0057】
次に、ディスプレイ201に図4に示す画像編集画面31が表示される。この画像編集画面31では、先ほど観光地タイトルに関連付けた画像データが1枚ずつ表示される。画像編集画面31の下側位置にはタイトル枠32が表示され、このタイトル枠32の左端には画像データと関連付けられた観光地タイトル(図4では“USJ”)が表示され、タイトル枠32の中央右寄り位置には画像データのExif情報から取得した撮影日時が表示されている。
【0058】
そして、タイトル枠32の右端には、その観光地毎に予め登録されている観光地にちなんだ画像がはめ込み合成されるようになっており、複数の画像の中からユーザーの好みに合わせて選択して切り替えることができるようになっている。
【0059】
また、画面右上には、副画像合成表示手段308により副画像表示画面33が設けられ、観光地の位置情報が地図データとして表示されている。なお、この副画像表示画面33は、表示されている画像データとオーバーラップして表示されているため、画像データが見づらい等の場合には非表示に設定することもできる。
【0060】
[タイトル入力処理]
次の処理では、図5に示すように、ディスプレイ201にタイトル編集メニュー40を表示する。このタイトル編集メニュー40の画面上部にはアルバムのタイトルバー41がプレビュー表示されており、画面下部にはタイトルバー41に合成すべき経路データのサムネイル画像42が一覧表示されている。このサムネイル画像42としては、旅行期間中に移動した移動経路の全体を表示した画像42A、旅行期間中に観光した観光地周辺をその観光地タイトルとともに表示した画像42B、及び撮影した画像データに副画像表示画面33を設けて該副画像表示画面33に経路データを合成した画像42C等が挙げられる。」(段落【0057】ないし【0060】)

(2)刊行物2の技術
上記(1)並びに図4及び図5から、刊行物2には次の技術(以下、「刊行物2の技術」という。)が記載されている。

「撮影した画像データによる画像の一部に、ナビゲーション装置により特定された経路データを合成した画像を作成することにより、その画像データがどこで撮影されたものであるのかを容易に識別可能とする技術。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「ナビゲーションシステムを構成する」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明における「ナビゲーションを行う」に相当し、以下同様に、「観光案内システム1」は「ナビゲーション部」あるいは「ナビゲーション装置」に、「現在位置の情報」は「ナビゲーションの地点に関する情報である地点情報」あるいは「地点情報」に、「座標取得手段」は「取得部」に、「車外の風景を撮像して画像データを取得する」は「撮影を行って撮影画像を取得する」に、「撮像装置20」は「撮影部」に、「画像データ」は「撮影画像」に、「画像データ蓄積手段」は「蓄積部」に、「座標取得手段が取得した現在位置の情報」は「取得部が取得した地点情報」に、「基づいて」は「用いて」に、「撮像装置20による撮像」は「撮影部の撮影」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「現在位置の近傍にある撮影対象が検出されたか否かを判断」することは、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明における「撮影を行うタイミングであるかどうかを判断する判断処理」に相当し、以下同様に、「現在位置の近傍にある撮影対象が検出された場合」は「撮影を行うタイミングであると判断した場合」に、「現在位置に最も近い撮影対象の位置情報に基づいて撮像装置20を制御することにより現在位置に最も近い撮影対象の画像データを取得する」ことは「撮影が行われるようにする撮影実行処理」に、「カメラ制御部21」は「制御部」に、それぞれ相当する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ナビゲーションを行うナビゲーション部と、
前記ナビゲーション部からナビゲーションの地点に関する情報である地点情報を取得する取得部と、
撮影を行って撮影画像を取得する撮影部と、
前記撮影部が取得した撮影画像を蓄積する蓄積部と、
前記取得部が取得した地点情報を用いて、前記撮影部の撮影に関し、撮影を行うタイミングであるかどうかを判断する判断処理と、撮影を行うタイミングであると判断した場合に、撮影が行われるようにする撮影実行処理とを行う制御部と、を備えるナビゲーション装置。」

[相違点]
本願発明においては、「蓄積部は、取得部が取得した地点情報に応じた画像を撮影画像の一部に合成して蓄積する」のに対して、引用発明においては、画像データ蓄積手段が、現在位置の情報に関する画像を、撮像装置20が取得した画像データによる画像の一部に合成して蓄積するものか不明である点(以下、「相違点」という。)。

第5 当審の判断
[相違点について]
上記「第3 2.(2)」において記載したとおり、刊行物2の技術は、「撮影した画像データによる画像の一部に、ナビゲーション装置により特定された経路データを合成した画像を作成することにより、その画像データがどこで撮影されたものであるのかを容易に識別可能とする技術。」であって、引用発明と刊行物2の技術とは、ともにナビゲーションシステム又は装置により得られる位置情報や経路情報とともに画像データを取得して表示又は記録を行うものであるから、同一の技術分野に属するものである。
さらに、複数の画像データを合成したものを記憶手段に蓄積することは周知の技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開2005-229291号公報【特許請求の範囲】の【請求項4】並びに、特開2001-45352号公報【特許請求の範囲】の【請求項1】及び図7を参照。)である。
よって、引用発明において、同一の技術分野に属する刊行物2の技術を適用し、引用発明の画像データによる画像について、どこで撮影されたものであるのかを容易に識別可能とするために、引用発明における座標取得手段により取得する現在位置に応じた画像を車外の風景を撮像した画像の一部に合成した合成画像を作成し、その際、上記周知技術を適用して上記合成画像を記憶手段に蓄積することにより上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願発明は、全体としてみても引用発明及び刊行物2の技術並びに周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2の技術並びに周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-27 
結審通知日 2016-06-28 
審決日 2016-07-11 
出願番号 特願2011-51517(P2011-51517)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G01C)
P 1 8・ 121- WZ (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島倉 理  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 槙原 進
松下 聡
発明の名称 ナビゲーション装置、撮影制御方法、及びプログラム  
代理人 谷川 英和  

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