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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1318706 |
審判番号 | 不服2015-8383 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-07 |
確定日 | 2016-08-25 |
事件の表示 | 特願2013-261783「光学シート」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月 3日出願公開、特開2014- 59585〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成20年9月4日に出願した特願2008-227352号の一部を平成25年12月18日に新たな特許出願としたものであって、 平成26年11月6日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年1月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年2月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月7日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成27年1月13日になされた手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。 「透明基材の少なくとも一方の面に、透明樹脂と、該透明樹脂に分散される拡散要素である透光性無機粒子及び/又は透光性有機粒子とを含む機能層を有し、下記式(I)の関係を有することを特徴とする表示素子表面に用いる光学シート。 0.32<V/T<0.511 (I) T;透明基材上に機能層を構成する樹脂と同様の樹脂からなり、前記拡散要素を含有しない表面層を設け、該表面層側の面に向けて、法線から45度の角度で可視光線を照射した際の拡散正反射方向に対して-45度?+45度まで0度を含む1度ごとに測定した拡散反射強度の総和 V;光学シートの機能層側の面に向けて、法線から45度の角度で可視光線を照射した際の拡散正反射方向に対して-45度?+45度まで0度を含む1度ごとに測定した拡散反射強度の総和 (T及びVの測定条件は同一である。)」(以下「本願発明」という。) 3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、概略、この出願の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1.特開2007-65635号公報 4 刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-65635号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、反射防止フィルム、偏光板、画像表示装置に関し、更に詳細には後述するような明室での白ボケが殆どなく、明室でコントラストが良好で、液晶表示装置の表面に用いた際に、正面コントラストを低減せずに、斜め方向のコントラストを改善できる内部散乱性を有する層と低屈折率層を有する反射防止フィルム、該反射防止フィルムを表面保護フィルムとして用いた偏光板、該反射防止フィルム偏光板を用いた画像表示装置に関する。 【背景技術】 【0002】 反射防止フィルムは一般に、CRT、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射による像の映り込みを防止するために、ディスプレイの最表面に配置される。反射防止フィルムは、フィルムの表面の低屈折率の層を形成することで、表面の反射率を低減し、表面への像の映り込みを低減する。更に、表面の映り込みを低減するためには、表面に凹凸を形成し、その凹凸での表面散乱を利用して、表面へ映りこんだ画像をぼやけさせることを利用した防眩性反射防止フィルムがある。また、反射防止フィルムには表面散乱性以外に内部散乱性を有するフィルムがある。特に映り込みを低減するために、防眩性の強い反射防止フィルムを用いる場合、近年表示装置の高精細化に伴い、防眩性フィルムの表面凹凸による微小な輝度ムラ(ギラツキと呼称する)が問題となり、その改良手段として、表面散乱に加えて高い内部散乱性を有する防眩性フィルムに関する技術が開示されている(特許文献1)。 【0003】 また、特許文献2等で開示されているように、光散乱性フィルムが表示装置の最表面に用いられる場合には、明室にて外光の表面反射を抑制する効果を有する、反射防止機能を併せ持つフィルムが好ましいことが知られている。 【0004】 近年、液晶テレビ等に代表されるような、大画面を有する表示装置へのアプリケーションの市場が急速に拡大している。このようなアプリケーションにおいては、表示装置は明室下で使用される頻度が高く、従来の防眩層を有するフィルムを表示装置の表面に適用すると、明室下で表面が全体的に白く光ること(以後、白ボケと称する)が問題となってきた。 【0005】 また、最近では上述したギラツキを改良した高い内部散乱性を有する防眩性フィルムがこのアプリケーションにも用いられているが、高い内部散乱性は表示装置が本来有するコントラストを低下してしまう問題を引き起こすため、必ずしもこのアプリケーションに対しては最適ではない。また、特許文献3では、偏光子と位相差補償素子を有する液晶表示装置の観察者側に特定のヘイズ値を有するアンチグレア層を設けることで、液晶表示装置の色再現性を改善する技術が開示されているが、表示装置の正面コントラストおよび斜め方向のコントラストに関しては記載が無く、また、フィルムの表面反射率、表面ヘイズに関する記載および内部ヘイズと表面ヘイズの分類も十分でなく、明室下での画像表示性能改善に関する十分な記載はされていない。」 (2)「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 以上の背景技術に示されるように、画像の映り込み低減と白ボケの防止、明室コントラスト、および画像表示装置に使用した場合の正面コントラストの低下を問題のないレベルに抑えつつ、斜め方向のコントラスト改善を同時に満足する反射防止フィルムは提案されてないのが現状である。 従って、本発明の目的は、高い反射防止性と白ボケの防止能を有し、かつ画像表示装置に使用した場合の正面コントラストと斜め方向のコントラストが良好な反射防止フィルムを提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記の反射防止フィルムを高い生産性で製造できる製造法を提供することにある。」 (3)「【発明の効果】 【0009】 本発明により、高い反射防止性と白ボケの低減とを同時に満足し、かつ、画像表示装置に使用した場合の正面コントラストと斜め方向のコントラストが良好な反射防止フィルムを提供することができる。更に、上記の反射防止フィルムを高い生産性で提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)?(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」等も同様である。 【0011】 本発明の反射防止フィルムについて好適な一実施形態の基本的な構成を図面を参照しながら説明する。 ここで、図1は、本発明の反射防止フィルムの好ましい1実施形態を模式的に示す断面図である。 図1に示す本実施形態の反射防止フィルム1は、透明支持体2と、透明支持体2上に形成された内部散乱層3と、内部散乱層3上に形成された低屈折率層4とからなる。内部散乱層3の上に低屈折率層4を光の波長の1/4前後の膜厚で形成することにより、薄膜干渉の原理により表面反射を低減することができる。本発明では低屈折率層を有さなくても白ボケの改善は可能であるが、十分な効果を得るためには、低屈折率層を有することが好ましい。 【0012】 内部散乱層3は、内部散乱性を有する層であり、透光性樹脂と透光性樹脂中に分散された透光性粒子5とからなる。内部散乱性を有する層3は、ハードコート性を備えたものであることが好ましい。本実施形態においては、内部散乱性を有する層が1層形成されたものを例示しているが、複数層、例えば2層?4層で構成されていてもよい。 ・・・略・・・ 【0016】 本発明の反射防止フィルムは、低屈折率層側から垂直方向に対して-60°傾斜して入射した光量I_(0)の光に対する45°傾斜した方向へ反射した光量I^(45°)が前記式(1)を満たすことが望ましい。図2は、このような散乱特性を測定するための光学系の概略図である。図2に示すように、反射防止フィルムの表面から垂直な方向を0°とし、この垂直方向に対して左回りをマイナス、右回りをプラスと定義する。式(1)におけるI_(0)は、反射防止フィルムの低屈折率層に向かって-60°の方向に入射させた光量を表す。入射光量は、光源で調整することができる。 一方、受光器を+45°方向に配置し、受光器により測定された反射光の光量をI^(45°)とする(なお、式(2)におけるI^(50°)、式(3)におけるI^(40°)も、受光器をそれぞれ+50°方向、+40°方向に配置して同様に測定した光量の値である。)。以上の測定装置としては、例えば(株)村上色材研究所社製の「ゴニオフォトメータ」を用いることができる。 なお、図2においては、ディスプレイ装置の黒表示の条件に近づけるために、偏光板に反射防止フィルムを貼り付けた状態でI_(0)及びI^(45°)を測定しているが、反射防止フィルム単独として反射防止層を有する面の反対面を黒色インクで処理し、裏面反射のない状態として測定してもよい。 【0017】 式(1)の(-LOG_(10)(I^(45°)/I_(0)))の値が大きいほど、45°方向への散乱光が少なくなることを意味し、45°方向から目視した際の白ボケが良好となる。式(1)に示すように、(-LOG_(10)(I^(45°)/I_(0)))の値は、4.3以上が好ましく、4.5以上がより好ましい。4.3未満では明室での白ボケが本発明の目的とするレベルに十分でない。 【0018】 また、反射防止フィルムの表面散乱に起因するヘイズ(以後、表面ヘイズと呼称する)は、3%未満であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることが特に好ましく、1.0以下が更に好ましい。3%を超えると白ボケが本発明の目的とするレベルに十分でない。 【0019】 また、反射防止フィルムは、内部散乱に起因するヘイズ(以後、内部ヘイズと呼称する)が15%?40%であることが好ましく、20%?32%であることがより好ましい。内部ヘイズは低い程、正面コントラストの低下を起こしにくいが、斜め方向のコントラストの改善効果が低い。内部散乱が40%を超えると、コントラストの悪化や画像ボケが起こる場合がある。 【0020】 また、該反射防止フィルムの積分反射率は4.6%以下である必要がある。本発明では白ボケを低減するために、表面凹凸による散乱を抑えているため、映り込み防止のために反射率を低減することで十分な効果を得ることができる。したがって、積分反射率は3.5%以下が好ましく、2.5%以下がより好ましく、2.0%以下が更に好ましい。特に好ましくは1.5%以下である。鏡面反射率は3.3%以下が好ましく、3.0%以下がより好ましく、2.0%以下が更に好ましく、1.7%以下が特に好ましい。最も好ましくは1.4%以下である。透過率は90%以上とするのが、外光の反射を抑制でき、表面への像の映り込みを低減し、視認性が向上するため、好ましい。 JIS K7105に準じた像鮮明性が光学くし幅0.5mmで測定したときに30%?99.9%であるのが、充分な白ボケ防止が得られるため好ましい。更に好ましくは45%?99.9%であり、より好ましくは65?99.9%である。 また、C光源下でのCIE1976L*a*b*色空間における反射光の色味がa*値-2?2、b*値-3?3、380nm?780nmの範囲内での反射率の最小値と最大値の比0.5?0.99とするのが、反射光の色味がニュートラルとなるので、好ましい。またC光源下での透過光のb*値を0?3とすると、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減され、好ましい。 【0021】 さらに、本発明の反射防止フィルムは、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.01?0.25μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下となるように設計するのが表面凹凸による白ボケを低減するために好ましい。Raはより好ましくは0.01?0.15μmである。映り込み防止効果を重視する場合には0.05μm以上であることが好ましく、更に好ましくは、0.05?0.08μmである。一般的な製法ではRaを0.01μm以下にすることは困難であり、0.15μmを超えるとギラツキ、白ボケ等の問題が発生する場合がある。 【0022】 次に、反射防止フィルムの内部散乱層について以下に説明する。 [内部散乱層] 内部散乱層は、内部散乱性と、好ましくはフィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに付与する目的で形成される。従って、好ましくはハードコート性を付与することのできる透光性樹脂、内部散乱性を付与するための透光性微粒子、および溶媒を含有する。 【0023】 (透光性微粒子) 透光性微粒子の平均粒径は0.5?10μmが好ましく、より好ましくは2.0?6.0μmである。さらに好ましくは3.0?4.0μmである。平均粒径が0.5μm未満であると、光の散乱角度分布が広角にまで広がるため、ディスプレイの文字ボケを引き起こしたりするため、好ましくない。一方、10μmを超えると、内部散乱層の膜厚を厚くする必要が生じ、カールが大きくなる、素材コストが上昇してしまう、等の問題が生じる。 透光性微粒子の具体例としては、例えばポリ((メタ)アクリレート)粒子、架橋ポリ((メタ)アクリレート)粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリ(アクリル-スチレン)粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリ((メタ)アクリレート)粒子、架橋ポリ(アクリル-スチレン)粒子が好ましく用いられ、これらの粒子の中から選ばれた各透光性微粒子の屈折率にあわせて透光性樹脂の屈折率を調整することにより、内部ヘイズ、表面ヘイズを所望の範囲にすることができ、透光性樹脂と透光性微粒子、塗布組成物の溶媒の組み合わせ、添加量等を調整することで、中心線平均粗さを所望の範囲にすることができる。 ・・・略・・・ 【0027】 透光性樹脂と透光性微粒子との屈折率は、上述の範囲であることが好ましい。また、透光性樹脂と透光性微粒子との屈折率の差(透光性微粒子の屈折率-透光性樹脂の屈折率)は、絶対値として好ましくは0.008?0.15であり、より好ましくは0.01?0.10である。特に好ましくは0.008?0.05の範囲の透光性粒子を全透光性粒子の30%以上用いることである。以上のような範囲にすることで、画像のボケ、表面の白濁、コントラストなど良好な性能を得ることが可能である。 透光性微粒子の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に透光性微粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定される。 また、透光性樹脂の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。透光性樹脂が硬化性の場合には硬化後の屈折率を指す。 【0028】 内部散乱層の膜厚は、3?12μmが好ましく、3?9μmがより好ましく、4.5?8μmが更に好ましく、5?7μmが特に好ましい。薄すぎるとハード性が不足し、厚すぎるとカールや脆性が悪化して加工適性が低下する、コストアップする、ムラが発生し易いなどの問題が発生する場合があるので、前記範囲内とするのが好ましい。 【0029】 内部散乱層の透光性粒子密度と用いる透光性粒子の屈折率範囲、2種類の粒子を用いる場合の各粒子の含有率に関しては、更に詳細に最適な範囲があることを見出した。表1(審決注:引用例には「表11」と記載されているが、明らかな誤記であるので、このように表記した。)にその関係をまとめる。2種類の粒子を用いるのはその比率の調整により、粒子量を変えずに、所望の内部ヘイズ値、表面ヘイズ値を得ることができ好ましい。3種類以上の粒子を用いることも可能であるが、系が複雑になる問題がある。表中の好ましい範囲において、好ましい内部ヘイズ値、表面ヘイズ値をえることができ、画像のボケ、表面の白濁、コントラストなど良好な性能を得ることが可能であり、より好ましい範囲でより良好な性能を得ることが可能である。表中の粒子の屈折率差は内部散乱層に用いる透光性粒子と透光性樹脂の屈折率差を示す。 【0030】 【表1】 」 (4)「【0068】 (溶媒) 内部散乱性を有する層は、直接透明支持体上にウエット塗布されるケースが多いため、特に塗布組成物に用いる溶媒は重要な要因となる。溶媒は、上記透光性樹脂等の各種溶質を充分に溶解すること、上記透光性粒子を溶解しないこと、塗布?乾燥過程で塗布ムラ、乾燥ムラを発生しにくいこと、支持体を溶解しないこと(平面性悪化、白化等の故障防止に必要)、逆に最低限の程度には支持体を膨潤させること(密着性に必要)、等の要件を満たしていることが好ましい。 溶媒としては、少なくとも、透明支持体の膨潤性の低く、透明支持体を溶解しない溶媒を主溶媒として含有することが好ましい。主溶媒の具体例としては、支持体にトリアセチルセルロースを用いる場合には、各種ケトン(メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、各種セロソルブ(エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、その他として、各種アルコール類(プロピレングリコール、エチレングリコール、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、トルエンなどが好ましく用いられる。 【0069】 また、上記の中から選択した、透明支持体の膨潤性の低い主溶媒に対して、膨潤性の高い少量溶媒を添加することにより、他の性能、面状を悪化させることなく、透明支持体との密着性を向上させることができる。具体的には、主溶媒として、メチルイソブチルケトン、トルエンを用い、少量溶媒として、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコール、エチレングリコール、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール等を用いることができ、特に好ましくは、主溶媒として、メチルイソブチルケトン、トルエンを用い、少量溶媒として、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、を用いることである。また、溶媒の親水性制御のために、プロピレングリコール、エチレングリコール、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール等を添加して用いることもでき、特にプロピレングリコール、エチレングリコールが好ましく用いることができる。 主溶媒と少量溶媒の混合比は、重量比で99:1?50:50が好ましく、95:5?60:40がより好ましい。50:50を超えると、塗布後の乾燥工程における面質のバラツキが大きくなり、好ましくない。 【0070】 また、上記の中から選択した主溶媒に対して、水酸基を有する少量溶媒を添加することにより、表面凹凸が調整でき、好ましい。水酸基を有する少量溶媒は、塗布組成物の乾燥工程において主溶媒よりも後まで残留することで表面凹凸性を大きくすることができるため、20?30℃の範囲内のある温度における蒸気圧が前記主溶媒に対して低いことが好ましい。例えば、主溶媒をメチルイソブチルケトン(21.7℃における蒸気圧:16.5mmHg)に対して水酸基を有する少量溶媒としてプロピレングリコール(20.0℃における蒸気圧:0.08mmHg)の組み合わせが好ましい一例として挙げられる。主溶媒と水酸基を有する少量溶媒の混合比は、重量比で100:0?50:50が好ましく、100:0?80:20がより好ましい。50:50を超えると、塗布液の安定性や、塗布後の乾燥工程における面質のバラツキが大きくなり、好ましくない。特に、本発明のように、表面凹凸起因の表面散乱を抑制するためには、100:0?97:3であるとより好ましい。」 (5)「【0172】 (乾燥) 内部散乱層および低屈折率層は、基材フィルム上に直接又は他の層を介して塗布された後、溶剤を乾燥するために加熱されたゾーンにウェブで搬送される。その際の乾燥ゾーンの温度は25℃?140℃が好ましく、乾燥ゾーンの前半は比較的低温であり、後半は比較的高温であることが好ましい。但し、各層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。例えば、紫外線硬化樹脂と併用される市販の光ラジカル発生剤のなかには120℃の温風中で数分以内にその数10%前後が揮発してしまうものもあり、また、単官能、2官能のアクリレートモノマー等は100℃の温風中で揮発が進行するものもある。そのような場合には、前記のように各層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。 【0173】 また、各層の塗布組成物を基材フィルム上に塗布した後の乾燥風は、前記塗布組成物の 固形分濃度が1?50%の間は塗膜表面の風速が0.1?2m/秒の範囲にあることが、乾燥ムラを防止するために好ましい。 また、各層の塗布組成物を基材フィルム上に塗布した後、乾燥ゾーン内で基材フィルムの塗布面とは反対の面に接触する搬送ロールと基材フィルムとの温度差を0℃?20℃の範囲内とすると、搬送ロール上での伝熱ムラによる乾燥ムラが防止でき、好ましい。 【0174】 表面凹凸を乾燥条件である程度制御することも可能である。本発明では、塗布後早く乾燥風を当てることで、表面凹凸の形成を抑制できることを見出し、好ましい表面凹凸範囲に制御することを可能とした。」 (6)「【0199】 [実施例1] (内部散乱層用塗布液Aの調製) ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET-30、日本化薬(株)製)を71.0g、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を3.0g、フッ素系表面改質剤(FP-149)0.1g、シランカップリング剤(KBM-5103、信越化学工業(株)製)を11.9gをメチルイソブチルケトンとメチルエチルケトンの混合溶媒に添加し、エアーディスパーにて60分間攪拌して溶質を完全に溶解した。この溶液を塗布したのち紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.520であった。平均粒径3.5μmの架橋ポリ(スチレン)粒子(屈折率1.600)6.3gと平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル-スチレン)粒子(共重合組成比=50/50、屈折率1.536)7.7gをそれぞれポリトロン分散機にて10000rpmで20分間分散し30%メチルイソブチルケトン分散液として添加し、メチルイソブチルケトンとメチルエチルケトンを加え、メチルイソブチルケトンとメチルエチルケトンの比を70対30、固形分濃度を45質量%に調整後、エアーディスパーにて10分間攪拌した。 前記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して内部散乱層用塗布液Aを調製した。 【0200】 (低屈折率層用塗布液Aの調整) オプスターJTA113(熱架橋性含フッ素含シリコーンポリマー組成液(固形分6%):JSR(株)製)783.3質量部(固形分として47.0質量部)に対して、分散液Aを195質量部(シリカ+表面処理剤固形分として39.0質量部)、コロイダルシリカ分散物(シリカ、MEK-STの粒子径違い品、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)30.0質量部(固形分として9.0質量部)、ゾル液a17.2質量部(固形分として5.0質量部)を添加した。塗布液全体の固形分濃度が6質量%になり、シクロヘキサンとメチルエチルケトンの比率が10対90になるようにシクロヘキサン、メチルエチルケトンで希釈して低屈折率用塗布液Aを調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.39であった。 【0201】 (1)内部散乱層の塗設 80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC-TD80U、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して、下記の装置構成および塗布条件で示されるダイコート法によって内部散乱層用塗布液Aを塗布し、30℃で15秒間、90℃で20秒間乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射エネルギー強度90mJ/cm^(2)の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ7.2μmのを有する内部散乱層を形成し、巻き取った。塗布後の2?10秒の間で乾燥風を当て始める時間を制御することで表面凹凸の出方を制御した。形成された膜中の粒子密度は1.21g/m2であった。 【0202】 基本条件:スロットダイ13は、上流側リップランド長I_(UP)が0.5mm、下流側リップランド長I_(LO)が50μmで,スロット16の開口部のウェブ走行方向における長さが150μm、スロット16の長さが50mmのものを使用した。上流側リップランド18aとウェブWの隙間を、下流側リップランド18bとウェブWの隙間よりも50μm長くし(以下、オーバーバイト長さ50μmと称する)、下流側リップランド18bとウェブWとの隙間G_(L)を50μmに設定した。また、減圧チャンバー40のサイドプレート40bとウェブWとの隙間G_(S) 、及びバックプレート40aとウェブWとの隙間G_(B)はともに200μmとした。 【0203】 (2)低屈折率層の塗設 上記内部散乱層用塗布液Aを塗布して内部散乱層を塗設したトリアセチルセルロースフィルムを再び巻き出して、前記低屈折率層用塗布液Aを上記の基本条件で塗布し、120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから窒素パージにより酸素濃度0.1%の雰囲気下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射エネルギー強度300mJ/cm^(2)の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取った。 (3)反射防止フィルムの鹸化処理 前記低屈折率層の製膜後、前記試料について、以下の処理を行った。 1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01mol/lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製した反射防止フィルムを前記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、前記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。 このようにして、鹸化処理済みの反射防止フィルムを作製した。これを実施例1-1とする。 【0204】 表2に示す粒子比、粒子密度になるように内部散乱層用塗布液Aの2種類の粒子の添加量を変更した以外は実施例1-1と同じ作成法で実施例1-2?1-5を作製した。 【0205】 内部散乱層用塗布液Aの平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル-スチレン)粒子(共重合組成比=50/50、屈折率1.536)の代わりに平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル-スチレン)粒子(共重合組成比=30/70、屈折率1.561)を使用し、表2に示す粒子比、粒子密度になるように2種類の粒子の添加量を変更した以外は実施例1-1と同じ作成法で実施例1-6を作製した。 【0206】 (内部散乱層用塗布液Bの調製) ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET-30、日本化薬(株)製)を70.9g、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を3.4g、フッ素系表面改質剤(FP-149)0.1g、シランカップリング剤(KBM-5103、信越化学工業(株)製)を13.0gをメチルイソブチルケトンとメチルエチルケトンに添加し、エアーディスパーにて60分間攪拌して溶質を完全に溶解した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.523であった。平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル-スチレン)粒子(共重合組成比=30/70、屈折率1.561)12.6gをポリトロン分散機にて10000rpmで20分間分散し30%メチルイソブチルケトン分散液として添加し、メチルイソブチルケトンとメチルエチルケトンを加え、固形分濃度を43.5質量%に調整後、エアーディスパーにて10分間攪拌した。メチルイソブチルケトンとメチルエチルケトンの比率は80対20になるように調整した。 前記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して内部散乱層用塗布液Bを調製した。 【0207】 層用塗布液Bを用いた以外は実施例1-1と同じ作成方法で実施例1-7を作製した。実施例1-7の層の厚さは5.8μm、形成された膜中の粒子密度は0.90g/m^(2)であった。 【0208】 内部散乱層用塗布液Bの平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル-スチレン)粒子(共重合組成比=30/70、屈折率1.561)の一部を架橋ポリ(アクリル-スチレン)粒子(共重合組成比=50/50、屈折率1.536)に替え、表2に示す粒子比、粒子密度になるように2種類の粒子の添加量を変更した以外は実施例1-7と同じ作成法で実施例1-8?11を作製した。 【0209】 内部散乱層用塗布液Bの平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル-スチレン)粒子(共重合組成比=30/70、屈折率1.561)の一部を架橋ポリ(スチレン)粒子(屈折率1.600)に替え、表2に示す粒子比、粒子密度になるように2種類の粒子の添加量を変更した以外は実施例1-7と同じ作成法で実施例1-12?13を作製した。 【0210】 低屈折率層を塗設しない以外は実施例1-1と同じ方法で実施例1-14を作製した。 【0211】 表2に示す粒子比、粒子密度になるように内部散乱層用塗布液Aの2種類の粒子の添加量を変更した以外は実施例1-1と同じ作成法で比較例1-1?1-4を作製した。 【0212】 表2に示す粒子比、粒子密度になるように実施例1-8に使用の内部散乱層用塗布液の2種類の粒子の添加量を変更した以外は実施例1-1と同じ作成法で比較例1-5?1-8を作製した。 【0213】 表2に示す粒子比、粒子密度になるように内部散乱層用塗布液Aの2種類の粒子の添加量を変更し、塗布量を調整し、膜厚を変更した以外は実施例1-1と同じ作成法で比較例1-9を作製した。 【0214】 表2に示す粒子密度になるように内部散乱層用塗布液Bの粒子の添加量を変更し、塗布量を調整し、膜厚を変更した以外は実施例1-7と同じ作成法で比較例1-10を作製した。 【0215】 【表2】 【0216】 (フィルムの評価) 得られたフィルムについて、以下の項目の評価を行った。結果を表3に示す。 (1)反射フォトゴニオメーター 厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S9111、MATSUNAMI製)の裏表の両面に、表面の平滑な偏光板をクロスニコル状態で貼り合せて作製したものの片面に、本発明の反射防止フィルムを、粘着シートで反射防止層を塗布した側の反対側を貼り合せて、測定用のサンプル片を作製した。続いて、(株)村上色材研究所社製の「ゴニオフォトメータ」機を用いて、入射角を0°として受光器を90°?180°?-90°まで0.1°刻みで測定し、それらの総和である全光量I_(a)を測定した。 続いて、入射角を-60°に設定してサンプル片の低屈折率層側から垂直方向に対して-60°傾斜して入射した光量I_(0)の光に対する40°?50°までの範囲で反射光量を0.1°刻みで測定し、45°傾斜した方向へ反射した光量I^(45°)について数値を読み取り、それぞれの角度における-LOG_(10)(I^(45°)/I_(0))の値を算出した。 (2)積分反射率 フィルムの裏面をサンドペーパーで祖面化した後に黒色インクで処理し、裏面反射をなくした状態で、表面側を、分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380?780nmの波長領域において、積分分光反射率を測定した。結果には450?650nmの積分反射率の算術平均値を用いた。 (3)鏡面反射率 フィルムの裏面をサンドペーパーで祖面化した後に黒色インクで処理し、裏面反射をなくした状態で、表面側を、分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380?780nmの波長領域において、入射角5°における鏡面分光反射率を測定した。結果には450?650nmの鏡面反射率の算術平均値を用いた。 【0217】 (4)ヘイズ 以下の測定により、得られたフィルムの全ヘイズ(H)、内部ヘイズ(Hi)、表面ヘイズ(Hs)を測定した。 [1]JIS-K7136に準じて得られたフィルムの全ヘイズ値(H)を測定した。 [2]得られたフィルムの低屈折率層側の表面および裏面にシリコーンオイルを数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATSUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られたフィルムを光学的に密着し、表面ヘイズを除去した状態でヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間にシリコーンオイルのみを挟みこんで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ(Hi)として算出した。 [3]上記[1]で測定した全ヘイズ(H)から上記[2]で算出した内部ヘイズ(Hi)を引いた値をフィルムの表面ヘイズ(Hs)として算出した。 (5)像鮮明性 JIS K7105に準じて透過画像鮮明性を光学くし幅0.5mmで測定した。 【0218】 (6)中心線平均粗さ JIS-B0601に準じて得られたフィルムの中心線平均粗さRaを測定した。 【0219】 (7)映り込み (1)のフォトゴニオメーター測定用のサンプル片に顔を映し込み反射像の強さを以下の基準で評価した。 反射が弱く、映り込みがほとんど気にならない:○ 反射が強く、映り込みが気になる :△ 反射が非常に強く、映り込みが非常に気になる:× 【0220】 【表3】 【0221】 <試験結果> 実施例1-1?1-13の試料はいずれも透過画像鮮明性は60?99%の範囲であった、また、-LOG_(10)(I45°/I_(0))の値はいずれも4.3?5.0の間であった。 また、フォトゴニオメーターに用いたサンプル片は、裏面反射光が直交する偏光板によりカットされるため、パネルの黒表示に近い外観であるが、実施例1-1?1-13のサンプル片は、目視で白ボケが低減され、黒く締まって見えた。一方、比較例1-9、10のサンプル片は、鏡面反射近辺から軸のずれた領域まで白く光り、白ボケに近い外観であった。実施例1-14は白ボケ、映り込みとも実用上では問題ないレベルではあるものの、実施例1-1?13と比較すると劣っており、本発明の効果を十分に発揮している結果ではなかった。 【0222】 (低屈折率層用塗布液Bの調整) パーフルオロオレフィン共重合体(1)15.2g、中空シリカゾル(屈折率1.31、平均粒径60nm、固形分濃度20%)2.1g、反応性シリコーンX-22-164B(商品名;信越化学工業社製)0.3g、ゾル液a 7.3g、光重合開始剤(イルガキュア907(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.76g、メチルエチルケトン301g、シクロヘキサノン9.0gを添加、攪拌の後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Bを調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.40であった。 【0223】 (低屈折率層用塗布液Cの調製) オプスターJTA113 (熱架橋性含フッ素含シリコーンポリマー組成液(固形分6%):JSR(株)製)の添加量を減らし、分散液A-1の添加量を増やして、この塗布液より形成される層の屈折率を1.36にした以外は塗布液Aと同じ方法で塗布液Cを調整した。 【0224】 (低屈折率層用塗布液Dの調製) ポリシロキサンおよび水酸基を含有する屈折率1.44の熱架橋性含フッ素ポリマー(JTA113、固形分濃度6%、JSR(株)製)13g、コロイダルシリカ分散液MEK-ST-L(商品名、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)1.3g、ゾル液a0.6g、およびメチルエチルケトン5g、シクロヘキサノン0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層塗布液Dを調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.45であった。 【0225】 また、実施例1-1の低屈折率層用塗布液Aを低屈折率層用塗布液Cに置き換えた以外は同様にして反射防止フィルムを作製したところ、実施例1-1?13の積分平均反射率が1.1?1.3%に改良された。 【0226】 また、実施例1-1の低屈折率層用塗布液Aを低屈折率層用塗布液Bに置き換え、塗布後の乾燥を100℃30秒、紫外線を照射エネルギー強度900mJ/cm^(2)に変更した以外は同様にして反射防止フィルムを作製したところ、積分反射率が1.6?1.9%と実施例1-1?1-13に比較して多少大きくなったものの、低屈折率層用塗布液Cは熱硬化と併用であるため、耐擦傷性を向上することができた。 【0227】 また、実施例1-1の低屈折率層用塗布液Aを低屈折率層用塗布液Dに置き換えた以外は、実施例1-1?1-13と同様にして反射防止フィルムを作製したところ、積分反射率が2.6?2.9%と実施例1-1?1-13に比較して大きくなった。反射防止フィルムを用いない場合と比較して映り込みは少なくなっているものの、他の低屈折率層用塗布液を用いた場合と比較して、映り込み防止は十分でなかった。」 (7)「【0228】 [実施例2] (偏光板の作製) 1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC-TD80U、富士写真フイルム(株)製)と、実施例1で作製した反射防止フィルム(鹸化処理済み:実施例1-1?実施例1-14、比較例1-1?比較例1-10)を、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光子の両面に接着、保護して偏光板を作製した。これらを、それぞれ実施例2-1?実施例2-14、比較例2-1?2-10とした。 また、上記の鹸化処理済みのトリアセチルセルロースフィルムを両面の保護フィルムに用いて偏光板を作製し、比較例2-11とした。 【0229】 [実施例3] (偏光板の評価) 実施例2で作製した実施例2-1?実施例2-14、比較例2-1?比較例2-11の偏光板を、液晶テレビの視認側の偏光板の代わりとして貼り換えたものを作製した。液晶テレビはシャープ(株)製の『LC-37GD4』(MVA方式)を用いた。 得られた表示装置について、以下の項目の評価を行った。結果を表4に示す。 【0230】 (1)白ボケ 表中に記載の精細度と画像サイズを有するLCDテレビパネル(VAモード)について、表面側の偏光板を、実施例の偏光板に貼り換え、全面を黒表示とし、暗室にてルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m^(2))を上方60度の角度から映し、正面から目視した際の面全体の白光り状態(白ボケ)を以下の基準で評価した。 白ボケが気にならなく、好ましい :◎ 白ボケがわずかにわかるが、比較的好ましい :○ 白ボケが若干気になる :△ 白ボケが目立ち、好ましくない :× (2)暗室コントラスト 上記(1)で作製したLCDパネルを用いて、暗室にて正面コントラストおよび斜め方向のコントラストを測定した。斜め方向のコントラストは45°の4方向の極角60°の平均とした。 (3)暗室黒表示(目視) 上記(1)で作製したLCDパネルを用いて、暗室にて黒表示し、正面から目視で以下の基準で評価した。 光モレ量が少なく好ましい :○ 光モレ量が多く好ましくない :× (4)斜め方向白階調つぶれ(目視) 上記(1)で作製したLCDパネルを用いて、暗室にて白っぽい画像を表示し、斜め方向45°方向の極角80°から目視で白の階調潰れを以下の基準で評価した。 階調つぶれが気にならない :○ 階調つぶれが気になる :× (5)映り込み 得られた液晶テレビにルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m^(2))を45度の角度から映し、-45度の方向から観察した際の蛍光灯の映り込みの程度を以下の基準で評価した。 蛍光灯の輪郭がほとんど判らないほど映り込まない :◎ 蛍光灯が若干映り込むが、気にならない :○ 蛍光灯が映り込み、気になる :△ 蛍光灯が完全に写り込む :× 【0231】 【表4】 」 (8)上記(1)ないし(7)からみて、引用例には、次の発明(なお、ここでは引用箇所を示す段落番号を参考として併記している。)が記載されているものと認められる。 「【0001】【0011】透明支持体2と、透明支持体2上に形成された内部散乱層3と、内部散乱層3上に形成された低屈折率層4とからなる、液晶表示装置の表面に用いた反射防止フィルムであって、 【0012】内部散乱層3は、内部散乱性を有する層であり、透光性樹脂と透光性樹脂中に分散された透光性粒子とからなり、 【0023】透光性粒子は、ポリ((メタ)アクリレート)粒子、架橋ポリ((メタ)アクリレート)粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリ(アクリル-スチレン)粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子である、 反射防止フィルム。」(以下「引用発明」という。) 5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「透明支持体2」及び「液晶表示装置」は、それぞれ、本願発明の「透明基材」及び「表示素子」に相当する。 (2)引用発明の「内部散乱層3」は、内部散乱性を有する層であり、本願発明の「機能層」は、「最表面及び/又は内部に拡散要素を有する層」であるから、引用発明の「内部散乱層3」は、本願発明の「機能層」に相当する。 (3)引用発明は、「液晶表示装置」(本願発明の「表示素子」に相当。以下「」に続く()内の用語は本願発明の用語。)の表面に用いた「反射防止フィルム」であり、該「反射防止フィルム」を透過した「液晶表示装置」(表示素子)の画像を観察者が視認できるものである。そうすると、引用発明の「透光性樹脂」は、「液晶表示装置」(表示素子)の画像を視認可能な程度の透過率を有していること、すなわち「透明」であることは当業者に自明であるから、本願発明の「透明樹脂」に相当する。 (4)引用発明の「透光性粒子」は、ポリ((メタ)アクリレート)粒子、架橋ポリ((メタ)アクリレート)粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリ(アクリル-スチレン)粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子であるから、本願発明の「透光性有機粒子」に相当する。 (5)引用発明の「内部散乱層3」(機能層)は、内部散乱性を有する層であり、「透光性樹脂」(透明樹脂)と「透光性樹脂」中に分散された「透光性粒子」(透光性有機粒子)とからなるから、本願発明の「機能層」と、「透明樹脂と、該透明樹脂に分散される拡散要素である透光性有機粒子とを含む」点で一致する。 (6)引用発明は、「内部散乱層3」(機能層)が「透明支持体2」(透明基材)上に形成されているから、本願発明の「透明基材の少なくとも一方の面に」、「機能層を有する」という構成を備える。 (7)本願の請求項8には「最表層に反射防止機能層を形成してなる請求項1?7のいずれかに記載の光学シート。」と記載されており、また、本願の明細書の【0041】には「反射防止性はシートの反射率を低減するために、最表面に低屈折率層を設ける。」と記載されており、これらの記載を踏まえれば、本願発明の「透明基材の少なくとも一方の面に」「機能層を有する」「光学シート」は、機能層だけでなく、最表面に機能層以外の他の層(例えば反射防止機能層)を備えることを許容しているものである。そうすると、引用発明の「反射防止フィルム」は、本願発明の「光学シート」に相当する。 (8)引用発明は、「液晶表示装置」(表示素子)の表面に用いた「反射防止フィルム」(光学シート)であるから、引用発明の「反射防止フィルム」(光学シート)と、本願発明の「光学シート」とは、「表示素子表面に用いる」点で一致する。 (9)上記(1)ないし(8)から、本願発明と引用発明とは、 「透明基材の少なくとも一方の面に、透明樹脂と、該透明樹脂に分散される拡散要素である透光性有機粒子とを含む機能層を有する表示素子表面に用いる光学シート。」である点で一致し、次の点で一応相違する。 相違点: 「光学シート」が、 本願発明では、下記式(I)の関係を有するのに対し、 引用発明では、下記式(I)の関係を有するかどうかが明らかでない点。 0.32<V/T<0.511 (I) T;透明基材上に機能層を構成する樹脂と同様の樹脂からなり、前記拡散要素を含有しない表面層を設け、該表面層側の面に向けて、法線から45度の角度で可視光線を照射した際の拡散正反射方向に対して-45度?+45度まで0度を含む1度ごとに測定した拡散反射強度の総和 V;光学シートの機能層側の面に向けて、法線から45度の角度で可視光線を照射した際の拡散正反射方向に対して-45度?+45度まで0度を含む1度ごとに測定した拡散反射強度の総和 (T及びVの測定条件は同一である。) 6 判断 (1)本願発明における「V/T」の技術的意義 ア 本願発明における「T」は、「透明基材上に機能層を構成する樹脂と同様の樹脂からなり、前記拡散要素を含有しない表面層を設け、該表面層側の面に向けて、法線から45度の角度で可視光線を照射した際の拡散正反射方向に対して-45度?+45度まで0度を含む1度ごとに測定した拡散反射強度の総和」と定義されており、「V」は、「光学シートの機能層側の面に向けて、法線から45度の角度で可視光線を照射した際の拡散正反射方向に対して-45度?+45度まで0度を含む1度ごとに測定した拡散反射強度の総和」と定義されている。 イ 本願の明細書には、段落【0014】に、「すなわち、反射強度分布が広がっている光学シートほど、0度近傍の反射強度分布の変化が大きいシートほど、Vは小さい値を示し、反射強度分布が狭い光学シートほど、0度近傍の反射強度分布の変化が小さいシートほど、Vは大きくなる。従って、V/Tは光学シートの拡散反射強度の分布を示す指標となると推察している。」との記載、段落【0015】に、「V/Tが0.32を超えると、コントラストの低下の小さい光学シートを得ることができる。コントラストの低下を抑制するとの観点から、V/Tは0.43を超えることが好ましく、0.62を超えることがさらに好ましい。 一方、V/Tは大きいほどコントラストの低下が見られず、V/Tが1でほぼ鏡面反射となる。本発明の光学シートは機能層を有し、何らかの拡散要素を有するが、機能層の種類に応じて、その上限値は変わる。一般には、V/Tが0.77未満であると鏡面反射が大きすぎず、光学シートとしての実用性が確保される。」との記載があり、段落【0055】には「表2」として、 「【表2】 」の記載がある。 ウ 上記ア及びイの事項を踏まえれば、本願発明の「V/T」は、光学シートの拡散反射強度の分布を示す指標であり、該指標がコントラスト及び防眩性に相関するといえる。そして、光学シートにおいて、例えば拡散要素の含有量が限りなくゼロに近く、光をほとんど拡散反射しないような場合には、V≒Tとなるから、V/T≒1となり、逆に、拡散要素の含有量が増える等して、光の拡散反射の度合いが増えた場合には、反射強度分布が広がり、Vの値が小さくなるから、V/Tの値は小さくなる。 エ 上記イ及びウより、本願発明の「V/T」は、光学シートの拡散反射強度の分布を示す指標であり、「V/T」を大きくすることにはコントラストの低下を抑制するという技術的意義があり、「V/T」を小さくすることには、鏡面反射が大きすぎないようにする、すなわち、防眩性を高くするという技術的意義があるといえる。 オ 一方、本願の明細書の表2(上記イ)より、本願発明の「V/T」の範囲である「0.32」?「0.511」を満たすのは、製造例3、4、10、11、15、16及び18であり、これらの製造例において、明室コントラストの評価は「2」又は「3」であり、防眩性の評価は「2」?「4」である。そうすると、必ずしも、明室コントラスト及び防眩性の双方の評価が「5」でなくても、本願の課題を解決できたものとしていると解される。また、前記表2の製造例からみて、「V/T」が「0.32」及び「0.511」を境界として、目視評価である明室コントラスト及び防眩性の評価に特段の違いがあるとも認められないから、本願発明の「V/T」の境界値である「0.32」及び「0.511」に臨界的意義があるとはいえない。 (2)引用例における防眩性とコントラストに関する記載 ア 引用例(上記4(1)、(2))には、段落【0002】に、「表面の映り込みを低減するためには、表面に凹凸を形成し、その凹凸での表面散乱を利用して、表面へ映りこんだ画像をぼやけさせることを利用した防眩性反射防止フィルムがある。」との記載があり、段落【0004】に、「従来の防眩層を有するフィルムを表示装置の表面に適用すると、明室下で表面が全体的に白く光ること(以後、白ボケと称する)が問題となってきた。」との記載があり、段落【0005】に、「最近では・・・高い内部散乱性を有する防眩性フィルムが・・・用いられているが、高い内部散乱性は表示装置が本来有するコントラストを低下してしまう問題を引き起こす」との記載があり、段落【0007】に、「本発明の目的は、高い反射防止性と白ボケの防止能を有し、かつ画像表示装置に使用した場合の正面コントラストと斜め方向のコントラストが良好な反射防止フィルムを提供することにある。」との記載がある。よって、引用例には、表面散乱性や内部散乱性を高めて防眩性を高めるとコントラストが低下し、防眩性を低くするとコントラストが向上することが記載されているといえる。 イ また、引用例(上記4(3)?(7))には、段落【0023】に、「各透光性微粒子の屈折率にあわせて透光性樹脂の屈折率を調整することにより、内部ヘイズ、表面ヘイズを所望の範囲にすることができ、透光性樹脂と透光性微粒子、塗布組成物の溶媒の組み合わせ、添加量等を調整することで、中心線平均粗さを所望の範囲にすることができる。」との記載があり、段落【0029】に、「内部散乱層の透光性粒子密度と用いる透光性粒子の屈折率範囲、2種類の粒子を用いる場合の各粒子の含有率に関しては、更に詳細に最適な範囲があることを見出した。表1にその関係をまとめる。・・・表中の好ましい範囲において、好ましい内部ヘイズ値、表面ヘイズ値をえることができ、画像のボケ、表面の白濁、コントラストなど良好な性能を得ることが可能であり、より好ましい範囲でより良好な性能を得ることが可能である。」との記載があり、段落【0070】に、「主溶媒に対して、水酸基を有する少量溶媒を添加することにより、表面凹凸が調整でき、」との記載があり、段落【0174】に、「表面凹凸を乾燥条件である程度制御することも可能である。本発明では、塗布後早く乾燥風を当てることで、表面凹凸の形成を抑制できることを見出し、好ましい表面凹凸範囲に制御することを可能とした。」との記載があり、段落【0201】に、「塗布後の2?10秒の間で乾燥風を当て始める時間を制御することで表面凹凸の出方を制御した。」との記載があり、段落【0230】に、「得られた液晶テレビにルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m^(2))を45度の角度から映し、-45度の方向から観察した際の蛍光灯の映り込みの程度を以下の基準で評価した。」、「蛍光灯の輪郭がほとんど判らないほど映り込まない:◎」、「蛍光灯が若干映り込むが、気にならない:○」、「蛍光灯が映り込み、気になる:△」及び「蛍光灯が完全に写り込む:×」との記載があり、表4には、白ボケが「◎」でも、映り込みが「○」止まりの実施例の記載しかなく、白ボケ及び映り込みの双方の評価が最良の「◎」でない実施例の記載がある。よって、引用例には、諸条件によって、表面凹凸や内部散乱層の形成を制御し、画像のボケ、表面の白濁、コントラストを調整できること、及び、白ボケ及び映り込みの双方が最良評価の「◎」でなくても、白ボケ(防眩性)とコントラストが良好であるとみなしていることが記載されているといえる。 ウ よって、上記ア及びイから、引用例には、表面凹凸や内部散乱層の形成を制御し、防眩性及びコントラストをそれぞれ最適となるように調整したことが記載されているといえる。 (3)上記相違点についての検討 ア 上記(2)のように、引用発明は、高い反射防止性と白ボケの防止能を有し、かつ画像表示装置に使用した場合の正面コントラストと斜め方向のコントラストが良好な反射防止フィルムを提供することを目的としており、白ボケ、すなわち防眩性とコントラストとは、一方を向上させると、他方が低下するというトレードオフの関係にあることが技術常識である。よって、引用発明において、防眩性及びコントラストのいずれをどの程度を重視するかはその目的に応じて当業者が適宜決定し得ることであり、防眩性及びコントラストがそれぞれ許容範囲で全体としてバランスが取れた最適なものとなるように、表面凹凸や内部散乱層の形成を制御し、防眩性及びコントラストを調整することは当業者が適宜なし得ることである。 イ 上記(1)エのように、本願発明の「V/T」は、光学シートの拡散反射強度の分布を示す指標であり、「V/T」を大きくすることによりコントラストの低下を抑制し、該「V/T」を小さくすることにより防眩性を高くするというものである。そうすると、上記アのように、引用発明において、防眩性及びコントラストを調整した結果、「V/T」で表される指標が0から1の範囲で適当な値をとるものであるといえる。そして、上記(1)オのように、「V/T」の下限値である「0.32」、上限値である「0.511」に臨界的意義が見出せないのであるから、引用発明において、「0.32<V/T<0.511」となすこと、すなわち、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは当業者にとって格別困難なことではない。 (4)審判請求人の主張について ア 審判請求人は、審判請求書の3-2において、概略、以下のとおり主張している。 (ア)主張ii 「なお、引用文献1に記載された発明のV/Tの値が、本願発明のV/Tの値よりも大きいことは、本願発明と引用文献1に記載された発明との実施例の対比からも明らかです。 まず、両発明の実施例の溶剤を比較すると、本願発明の実施例では、トルエン(沸点110℃)とメチルイソブチルケトン(沸点116℃)との混合溶剤、あるいはトルエン(沸点110℃)とシクロヘキサノン(沸点156℃)との混合溶剤を用いているのに対して、引用文献1の実施例では、メチルエチルケトン(沸点79.5℃)とメチルイソブチルケトン(沸点116℃)との混合溶剤を用いています。両者の溶剤を比較すると、引用文献1の実施例の溶剤の方が沸点が低いことが分かります。そして、溶剤の沸点が低い引用文献1の実施例では、溶剤が速く揮発して粒子の凝集が抑制される結果、表面凹凸(外部拡散要素)が発現しにくくなるため(本願明細書の段落0033?0034、0045?0046参照)、本願の実施例に比べてV/Tの値は大きくなります(以下、便宜的に「主張ii」とします。)。」 (イ)主張iii 「また、引用文献1の実施例では、内部散乱層中の粒子の平均粒子径よりも、内部散乱層の膜厚の方が明らかに大きくなっており(表2参照)、この観点からも、引用文献1の実施例のものは表面凹凸(外部拡散要素)が発現しにくく、V/Tの値が大きいと言えます(以下、便宜的に「主張iii」とします。)。」 イ 審判請求人の主張について検討する。 (ア)主張iiについて 引用例には、段落【0070】に、「主溶媒に対して、水酸基を有する少量溶媒を添加することにより、表面凹凸が調整でき、」(上記4(4))との記載があり、段落【0174】に、「表面凹凸を乾燥条件である程度制御することも可能である。本発明では、塗布後早く乾燥風を当てることで、表面凹凸の形成を抑制できることを見出し、好ましい表面凹凸範囲に制御することを可能とした。」(上記4(5))との記載があり、段落【0201】に、「塗布後の2?10秒の間で乾燥風を当て始める時間を制御することで表面凹凸の出方を制御した。」(上記4(6))との記載があり、表面凹凸及び粒子の凝集を調整するために、溶媒自体を調製可能であること、粒子の凝集が溶媒の組成だけでなく乾燥条件にも起因することも記載されていると認められるから、引用例の実施例において、溶媒を調製する等して、課題を解決することは当業者が適宜なし得たことである。 (イ)主張iiiについて 引用例の実施例が内部散乱層中の粒子の平均粒子径よりも内部散乱層の膜厚の方が大きく表面凹凸(外部拡散要素)が発現しにくいとしても、上記(イ)でも述べたように、様々な手段により、表面凹凸を調整可能であるから、引用例の実施例において、目的とする防眩性やコントラストを達成するために、当業者が表面形状を適宜調整可能であるといえる。 (5)そして、本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果から当業者が予測することができた程度のものである。 (6)したがって、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。 7 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-06-22 |
結審通知日 | 2016-06-28 |
審決日 | 2016-07-11 |
出願番号 | 特願2013-261783(P2013-261783) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉川 陽吾 |
特許庁審判長 |
藤原 敬士 |
特許庁審判官 |
河原 正 鉄 豊郎 |
発明の名称 | 光学シート |
代理人 | 大谷 保 |