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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1318713
審判番号 不服2015-15084  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-11 
確定日 2016-08-25 
事件の表示 特願2012-148713号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月20日出願公開、特開2014- 8333号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月2日の出願であって、平成26年6月16日付けで拒絶理由通知がなされ、平成26年8月22日付けで手続補正がなされたが、平成27年4月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成27年8月11日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年8月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年8月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の概要
平成27年8月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含む補正であり、特許請求の範囲の請求項1は、
補正前(平成26年8月22日付け手続補正)の
「【請求項1】
遊技者による開始操作が行われることに基づいて複数列の図柄を変動させて行う1回の遊技が図柄表示手段で開始され、1回の遊技の開始に基づき各列の図柄の変動が開始された後、遊技者による停止操作に基づいて対応する列の図柄が停止される遊技機において、
遊技に関連して移行条件の成立を許容するか否かを決定する条件許容手段と、
前記条件許容手段が前記移行条件の成立を許容する場合に、前記移行条件の成立を契機として遊技者に有利な状態での遊技となる有利遊技状態に制御する制御手段と、
前記開始操作に基づいて当選役として特定入賞の発生を許容する特定入賞役を含む複数種類の入賞役の中から決定する当選役決定手段と、
前記図柄表示手段に表示結果を導出させるための前記停止操作を受付ける導出操作受付手段と、
前記当選役決定手段の決定結果及び前記導出操作受付手段が受付けた前記停止操作に応じて前記図柄表示手段に表示結果を導出させる制御を行う手段であって、前記特定入賞役の決定がなされる場合、該特定入賞役の決定がなされることに対応して決定される特定の停止操作と前記導出操作受付手段が受付けた停止操作との一致を条件に特定停止態様による表示結果を導出させる一方、前記特定の停止操作と前記導出操作受付手段が受付けた停止操作との不一致を条件に通常停止態様による表示結果を導出させる導出制御手段と、
前記図柄表示手段に導出される表示結果に基づいて賞を遊技者に付与する制御を行う賞付与手段と、
前記有利遊技状態の制御中、前記特定入賞役の決定がなされる場合に前記導出操作受付手段が受付けた停止操作が特定の停止操作と一致した一致回数を計数する計数手段と、
前記有利遊技状態の制御中であることを特定可能な制御信号を遊技機外部に対して出力する信号出力手段と、を備え、
前記導出制御手段は、前記特定入賞役について、前記特定停止態様による表示結果、及び前記通常停止態様による表示結果として同一の表示結果を導出させるように制御し、
前記賞付与手段は、前記特定停止態様による入賞及び前記通常停止態様による入賞に対して同一の賞を遊技者に付与するように制御し、
前記信号出力手段は、前記移行条件の成立後であって、前記有利遊技状態の制御中の前記一致回数が所定回数に達する特定条件の成立を契機として前記制御信号を出力することを特徴とする遊技機。」
から、
補正後(本件補正:平成27年8月11日付けの手続補正)の
「【請求項1】
遊技者による開始操作が行われることに基づいて複数列の図柄を変動させて行う1回の遊技が図柄表示手段で開始され、1回の遊技の開始に基づき各列の図柄の変動が開始された後、遊技者による停止操作に基づいて対応する列の図柄が停止される遊技機において、
遊技に関連して移行条件の成立を許容するか否かを決定する条件許容手段と、
前記条件許容手段が前記移行条件の成立を許容する場合に、前記移行条件の成立を契機として、通常遊技状態に比して遊技者に有利な状態での遊技となる有利遊技状態に制御する制御手段と、
前記開始操作に基づいて当選役として特定入賞の発生を許容する特定入賞役を含む複数種類の入賞役の中から決定する当選役決定手段と、
前記図柄表示手段に表示結果を導出させるための前記停止操作を受付ける導出操作受付手段と、
前記当選役決定手段の決定結果及び前記導出操作受付手段が受付けた前記停止操作に応じて前記図柄表示手段に表示結果を導出させる制御を行う手段であって、前記特定入賞役の決定がなされる場合、該特定入賞役の決定がなされることに対応して決定される特定の停止操作と前記導出操作受付手段が受付けた停止操作との一致を条件に特定停止態様による表示結果を導出させる一方、前記特定の停止操作と前記導出操作受付手段が受付けた停止操作との不一致を条件に通常停止態様による表示結果を導出させる導出制御手段と、
前記図柄表示手段に導出される表示結果に基づいて賞を遊技者に付与する制御を行う賞付与手段と、
前記有利遊技状態の制御中、前記特定入賞役の決定がなされる場合に前記導出操作受付手段が受付けた停止操作が特定の停止操作と一致した一致回数を計数する計数手段と、
前記有利遊技状態の制御中であることを特定可能な制御信号を遊技機外部に対して出力する信号出力手段と、を備え、
前記有利遊技状態には、第1有利遊技状態と、前記第1有利遊技状態とは異なる第2有利遊技状態と、があり、
前記導出制御手段は、前記特定入賞役について、前記特定停止態様による表示結果、及び前記通常停止態様による表示結果として同一の表示結果を導出させるように制御し、
前記賞付与手段は、前記特定停止態様による入賞及び前記通常停止態様による入賞に対して同一の賞を遊技者に付与するように制御し、
前記信号出力手段は、前記移行条件の成立後であって、前記有利遊技状態のうち前記第2有利遊技状態の制御中における前記一致回数が所定回数に達する特定条件の成立を契機として前記制御信号を出力することを特徴とする遊技機。」
へ補正された(下線部は補正箇所を示す。)。

2.補正の適否
本件補正のうち「通常遊技状態に比して」を追加する補正は、補正前の「遊技者に有利な状態での遊技となる有利遊技状態」を「通常遊技状態に比して」「遊技者に有利な状態での遊技となる有利遊技状態」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮に該当する。
次に、本件補正のうち「前記有利遊技状態には、第1有利遊技状態と、前記第1有利遊技状態とは異なる第2有利遊技状態と、があり」を追加する補正は、「有利遊技状態」が「第1有利遊技状態」と「第2有利遊技状態」を有することを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮に該当する。
また、本件補正のうち、補正前の「前記有利遊技状態の制御中の前記一致回数」を、補正後の「前記有利遊技状態のうち前記第2有利遊技状態の制御中における前記一致回数」とする補正は、「一致回数」を「第2有利遊技状態」の制御中におけるものに限定するものであり、特許請求の範囲の減縮に該当する。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
さらに、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)を検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1に記載したとおりのものである。

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-24221号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下、同じ。)。

ア 「【0001】
本発明は、スロットマシン(パチスロ)、パチンコに代表される遊技台に関する。」

イ 「【0012】
図1に示すスロットマシン100は、本体101と、本体101の正面に取付けられ、本体101に対して開閉可能な前面扉102と、を備える。本体101の中央内部には、(図示省略)外周面に複数種類の図柄が配置されたリールが3個(左リール110、中リール111、右リール112)収納され、スロットマシン100の内部で回転できるように構成されている。これらのリール110?112はステッピングモータ等の駆動装置により回転駆動される。」

ウ 「【0019】
スタートレバー135は、リール110?112の回転を開始させるためのレバー型のスイッチである。すなわち、メダル投入口141に所望するメダル枚数を投入するか、ベットボタン130?132を操作して、スタートレバー135を操作すると、リール110?112が回転を開始することとなる。スタートレバー135に対する操作を遊技の開始操作と言う。
【0020】
ストップボタンユニット136には、ストップボタン137?139が設けられている。ストップボタン137?139は、スタートレバー135の操作によって回転を開始したリール110?112を個別に停止させるためのボタン型のスイッチであり、各リール110?112に対応づけてそれぞれ設けられている。本実施形態では、左リール110にストップボタン137、中リール111にストップボタン138、右リール112にストップボタン139が対応付けられている。以下、ストップボタン137?139に対する操作を停止操作と言い、最初の停止操作を第1停止操作、次の停止操作を第2停止操作、最後の停止操作を第3停止操作という。また、第1停止操作の対象となるリールを第1停止リール、第2停止操作の対象となるリールを第2停止リール、第3停止操作の対象となるリールを第3停止リールという。なお、各ストップボタン137?139の内部に発光体を設けてもよく、ストップボタン137?139の操作が可能である場合、該発光体を点灯させて遊技者に知らせることもできる。」

エ 「【0027】
スロットマシン100の制御部は、大別すると、遊技の進行を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号(以下、単に「コマンド」と呼ぶ)に応じて、主な演出の制御を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500と、によって構成されている。」

オ 「【0031】
なお、センサ回路320がスタートレバーセンサのHレベルを検出した場合には、この検出を示す信号を乱数発生回路316に出力する。この信号を受信した乱数発生回路316は、そのタイミングにおける値をラッチし、抽選に使用する乱数値を格納するレジスタに記憶する。」

カ 「【0050】
本実施形態では、外部信号1は、遊技状態がRB(レギュラーボーナス)中であること(BB中のRBを含む)を示すRB信号として、外部信号2は、遊技状態がBB1(ビッグボーナス1)中であることを示すBB1信号として、外部信号3は、遊技状態がBB2(ビッグボーナス2)中であることを示すBB2信号として設定されている。また、外部信号4は、補助信号を示しており、本実施形態では、第1副制御部400がAT(アシストタイム)状態であることを示すAT信号として設定されている。ここで、AT状態とは、遊技者にとって有利となる情報を報知する状態をいい、例えば、有利となる操作手順や操作タイミング、または内部当選した入賞役などを報知する状態をいう。詳しくは後述するが、AT信号は、AT状態の各セット(AT状態は1つまたは複数のセット(連続するAT遊技の単位をいう)から構成されている)開始時に出力されるようになっている。なお、AT状態は第1副制御部400の遊技状態であるから、主制御部300は、所定の条件(以下、AT信号出力条件ともいう)が成立することに基づいて、第1副制御部400の状態がAT状態であると判断し、AT状態であると判断をした場合に上記AT信号を出力するようになっている。」

キ 「【0057】
スロットマシン100の入賞役には、ビッグボーナス(BB)と、シングルボーナス(SB)と、小役(小役1?小役6)と、再遊技役(再遊技1?再遊技4)がある。なお、入賞役の種類は、これに限定されるものではなく、任意に採用できることは言うまでもない。」

ク 「【0065】
<役の内部当選確率>
次に、図7を用いて、役の内部当選確率について説明する。なお、同図は、設定Nにおける入賞役の内部当選確率の一例を遊技状態別に示した図であり、各遊技状態における入賞役の抽選テーブルの内容を示している。詳しくは後述するが、本実施形態では、大別して、RT0?RT3の4つの遊技状態(RTモードともいう)が存在する。なお、RT0は、図8に示す再遊技低確率状態、RT1は、図8に示す再遊技高確率状態、RT2は、図8に示す特別役1内部当選状態、RT3は、図8に示すBB遊技状態である。また、RT0及びRT1は、さらに非SB中(非SB遊技)とSB中(SB遊技)に分類される。」

ケ 「【0077】
本実施形態ではいわゆる引込制御(コマ滑り制御)を行う。引込制御とは、遊技者による各ストップボタン137?139の操作があってから一定のコマ数(図柄数)の範囲(ここでは最大4コマ)でリール110?112の停止位置をずらす制御をいう。リール停止データは主制御部300のROM306に格納されている。各リール停止データは、所定の入賞役の図柄組合せが入賞ライン114上に揃って表示されることを許容する許容制御と、いずれの入賞役の図柄組合せも入賞ライン114上に揃って表示されない禁止制御と、に大別される。
・・・
【0080】
尤も、リール110?112における図柄の配置と引き込みコマ数次第で100%揃う場合もある。例えば、再遊技役1(リプレイ)に対応する、リプレイ図柄の配置間隔は最大4コマであり、再遊技役1に内部当選すると、そのタイミングに関わらず100%入賞することになる。」

コ 「【0086】
<再遊技高確率状態(RT1)>
再遊技高確率状態(RT1)は、再遊技役の内部当選確率が、再遊技低確率状態(RT0)における再遊技役の内部当選確率よりも上昇した遊技状態である。従って、本実施形態の再遊技高確率状態(RT1)は、メダルを投入せずに遊技を継続できる確率が高くなっているため、再遊技低確率状態(RT0)に比べて遊技者に有利な遊技状態となっている。ここで、本実施形態における有利度とは、具体的には、所定期間の遊技を行ったときに遊技者が賭け数として遊技台に使用した遊技媒体の総数に対して、遊技台が払い出した遊技媒体の総数の割合、いわゆる払出率のことをいい、再遊技低確率状態(RT0)に比べて遊技者に有利とは、再遊技低確率状態(RT0)よりも払出率が大きいことを意味する。」

サ 「【0092】
<第1副制御部の遊技状態、及び停止ボタンナビ演出>
詳しくは後述するが、第1副制御部400は、所定の条件が成立した場合に、遊技者にとって有利となる情報を報知するAT状態となる。AT状態においては、演出画像表示装置157を用いて、停止操作に関するナビ演出、すなわち、停止操作順序や停止操作タイミング(内部当選した役の示唆)を報知する停止ボタンナビ演出を行うので、遊技者はこの停止ボタンナビ演出の指示に従うことにより、所定の小役に入賞したり、有利な遊技状態を維持できたりする。そのため、AT状態は、遊技者に大きな利益を付与することが可能な状態である。なお、停止ボタンナビ演出のうち、ストップボタンの停止操作順序に関するナビを「押し順ナビ」、停止操作タイミング(内部当選した役の示唆)に関するナビを「目押しナビ」という場合がある。」
【0093】
具体的には、本実施形態では、RT0(再遊技低確率状態)において特別役2(SB)に内部当選した場合には、SBこぼし目が有効ライン上に表示される停止操作手順(逆押し)及び停止タイミング(ブランク2の図柄を引き込まないタイミング)を報知する停止ボタンナビ演出を実行し、RT1(再遊技高確率状態)への移行を手助けする。この場合には、特別役2(SB)に入賞させるよりもRT1(再遊技高確率状態)に移行させる方が遊技者にとって有利なためである。以下、RT0(再遊技低確率状態)において特別役2(SB)に内部当選した場合に実行される停止ボタンナビ演出を「RT1移行ナビ」(逆押しナビ)ともいう。RT1移行ナビは、押し順ナビ及び目押しナビの双方を兼ね備える。
・・・
【0095】
また、RT1(再遊技高確率状態)において押し順リプレイ(「再遊技役1、2」、「再遊技役1、2、3」、「再遊技役1、2、4」)のいずれかに内部当選した場合には、パンクリプレイ(再遊技役2)に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に表示されることを回避する停止操作順序の報知を行う停止ボタンナビ演出を実行し、RT1(再遊技高確率状態)の状態維持を手助けする。RT1(再遊技高確率状態)はRT0(再遊技低確率状態)よりも有利な遊技状態であるからである。以下、RT1(再遊技高確率状態)において押し順リプレイに内部当選した場合に実行される停止ボタンナビ演出を「RT1維持ナビ」ともいう。RT1維持ナビは、押し順ナビである。」

シ 「【0100】
<補助信号用ナビ、AT状態特定機能>
さらには、本実施形態のAT状態では、RT1(再遊技高確率状態)において通常リプレイ(再遊技役1)に内部当選した場合には、主制御部300から送信された停止操作順序(具体的には第1停止操作に関する情報)に沿った停止ボタンナビ演出を行うようになっている。詳しくは後述するが、このナビは、第1副制御部400の状態がAT状態であることを主制御部300が把握するために実行されるナビであり、主制御部300が上述したAT信号を出力するか否かの判断をするために行われるナビである。以下、RT1(再遊技高確率状態)において通常リプレイ(再遊技役1)に内部当選した場合に実行される停止ボタンナビ演出を「補助信号出力用ナビ」ともいう。補助信号出力用ナビは、押し順ナビである。」

ス 「【0103】
まず、RT1(再遊技高確率状態)において通常リプレイ(再遊技役1)に内部当選した場合には、主制御部300は、抽選処理を行って、所定の停止操作順序を決定し、決定した停止操作順序(後述する押し順ナビ指示情報)を第1副制御部400に送信する(ステップS1)。本実施形態では、第1停止操作に関する停止操作順序を決定するので、例えば、抽選処理により、第1停止操作の対象が左リール110である場合には、「第1停止リールは左」を示す指示情報を第1副制御部400に送信する。なお、通常リプレイ(再遊技役1)は、停止操作順序に依存しない入賞役(いずれの停止操作順序でも入賞する役)であるため、主制御部300が第1副制御部400に送信する停止操作順序は、遊技者の利益に変化を与えない停止操作順序である。」

セ 「【0106】
次に、主制御部300は、遊技者による実際の停止操作順序と、送信した停止操作順序が一致するか否かを判定し、一致した場合には、第1副制御部400はAT状態であると判断し、AT信号を出力する(ステップS4)。例えば、遊技者による実際の第1停止操作が左、送信した第1停止操作が左である場合には、第1副制御部400はAT状態であると判断する。勿論、1回の一致で第1副制御部400をAT状態と判断するのは早計なので(偶然の一致もあり得る)、本実施形態では1回の一致だけで判断せず、複数回(具体的には3回)連続して一致した場合に、AT状態であると判断する。すなわち、RT1(再遊技高確率状態)の通常リプレイに内部当選した場合において、連続して3回、停止操作順序に関する指示と遊技者の実際の停止操作順序が一致した場合には、偶然の一致はあり得ないと判断し(補助信号出力用ナビの報知に従っているので一致していると判断する)、第1副制御部400はAT状態であると判断するものである。」

ソ 「【0113】
<主制御部メイン処理>
次に、図12を用いて、主制御部300のメイン処理について説明する。なお、同図は、主制御部300のメイン処理の流れを示すフローチャートである。」

タ 「【0118】
ステップS104では乱数発生回路316で発生させた乱数を取得する。」

チ 「【0123】
ステップS109では、入賞判定を行う。ここでは、有効化された入賞ライン114上に、何らかの入賞役に対応する図柄組合せが表示された場合にその入賞役に入賞したと判定する。例えば、有効化された入賞ライン114上に「スイカ図柄-スイカ図柄-スイカ図柄」が揃っていたならばスイカ入賞と判定する。また、このステップS109では、入賞判定の結果を示す表示判定コマンドを第1副制御部400に送信する準備を行う。
【0124】
ステップS110では、メダル払出処理を行う。このメダル払出処理では、払い出しのある何らかの入賞役に入賞していれば、その入賞役に対応する枚数のメダルを払い出す。」

ツ 「【0129】
ステップS201では、入賞役内部抽選を実行する。具体的には、現在の遊技状態に応じてROM306に格納されている入賞役抽選テーブルを読み出し、これとステップS104で取得した乱数値とを用いて内部抽選を行う。内部抽選の結果、いずれかの入賞役(作動役を含む)に内部当選した場合には、内部当選した役の条件装置(フラグ)を作動させる(その入賞役のフラグがONになる)。」

テ 「【0201】
<第1副制御部400の処理>
図22を用いて、第1副制御部400の処理について説明する。なお、同図(a)は、第1副制御部400のCPU404が実行するメイン処理のフローチャートである。同図(b)は、第1副制御部400のコマンド処理のフローチャートであり、同図(c)は、第1副制御部400のコマンド受信割込処理のフローチャートであり、同図(d)は、第1副制御部400のタイマ割込処理のフローチャートである。」

ト 「【0217】
<演出設定処理>
次に、図23を用いて、演出設定処理について説明する。演出設定処理は、図22(b)のステップS1102において、未処理コマンドが演出情報コマンドである場合に実行されるイベント処理である。なお、同図は、演出設定処理の流れを示すフローチャートである。
【0218】
ステップS1401では、AT遊技を付与するか否かを決定するAT抽選処理(詳しくは後述)を行う。」

ナ 「【0228】
ステップS1505では、小役6(1枚小役)が当選したか否かを判定する。具体的には、受信した演出情報コマンドが示す内部当選情報(条件装置の抽選コード)が小役6の当選情報であるか否かを判定する。小役6が当選した場合には、ステップS1506に進み、小役6が当選しなかった場合には、AT抽選処理を終了する。
【0229】
ステップS1506では、AT遊技を付与するか否かを抽選により決定するAT抽選を実行する。」

ニ 「【0234】
以上から、本実施形態では、BB遊技状態(RT3)においては、小役6またはハズレに当選したときにAT遊技が付与され、また、BB遊技状態(RT3)以外の遊技状態においては、小役6に当選し、かつAT抽選に当選したときにAT遊技が付与される。」

ヌ 「【0368】
<実施形態のまとめ>
以上述べたように、本実施形態の遊技台(例えば、スロットマシン100)によれば、少なくとも、遊技の進行に関する制御を行う主制御手段(例えば、主制御部300、主制御部300により制御される装置など)と、前記主制御手段と一方向通信で構成され、前記主制御手段から送信された情報に基づいて、遊技に関する演出を制御する副制御手段(例えば、第1制御部400、第2制御部500、第1制御部400及び第2制御部500により制御される装置など)と、を備えた遊技台であって、前記主制御手段は、複数種類の図柄が施され、回転駆動される複数のリール(例えば、リール110?112)と、予め定められた複数種類の役の内部当選の当否を抽選により判定する抽選手段(例えば、主制御部300、入賞役内部抽選処理)と、前記複数のリールそれぞれに対応して設けられ、前記複数のリールの回転を個別に停止させる複数の停止ボタン(例えば、ストップボタン137?139)と、前記複数の停止ボタンに対する各停止操作を受け付ける停止操作受付手段(例えば、主制御部300、ストップボタン受付処理)と、前記抽選手段の抽選結果及び前記停止操作受付手段による停止操作に基づいて、前記複数のリールの回転の停止に関する停止制御を行う停止制御手段(例えば、主制御部300、リール制御処理)と、前記停止制御手段による停止制御により、予め定められた有効ライン上に停止表示された図柄組合せが、前記抽選手段により内部当選した役に対応して定められた図柄組合せであるか否かにより前記役への入賞を判定する判定手段(例えば、主制御部300、入賞判定処理)と、遊技に関する情報を前記副制御手段に送信する情報送信手段(例えば、主制御部300、コマンド設定送信処理)と、前記副制御手段における演出制御の状況を特定する演出制御特定手段(例えば、主制御部300、補助信号出力処理)と、を有し、前記副制御手段は、前記複数の停止ボタンに対する操作手順を所定の報知態様で報知する報知処理を実行する報知手段(例えば、第1制御部400、第2制御部500、演出設定処理、画像制御処理、演出画像表示装置157など)を有し、前記抽選手段により第一の役(例えば、通常リプレイ、押し順役など)に内部当選した場合には、前記操作受付手段による操作受付前に、前記第一の役に入賞し、かつ前記複数の停止ボタンに対する最も有利な(例えば、メダルの払出が最も多い)操作手順(例えば、停止操作順序、操作タイミングなど。1つまたは複数のいずれでもよい。抽選処理、または予め定められていてもよい)を示す第一の情報を前記副制御手段に送信し、前記報知手段は、前記操作受付手段による操作受付前に、前記副制御手段の演出制御の状況(例えば、AT状態の有無、AT状態の種類、AT状態のストックの有無など)に応じて、前記主制御手段から送信された前記第一の情報に基づく操作手順(例えば、送信された情報と同一の操作手順、異なる操作手順、送信された複数の情報の対応する1つの操作手順など)を第一の報知態様(例えば、演出画像表示装置157を用いた画像表示による報知態様)で報知する第一の報知処理(例えば、補助信号出力用ナビ)を実行し、前記演出制御特定手段は、前記情報送信手段が前記副制御手段に送信した前記第一の情報の操作手順と、前記停止操作受付手段により受け付けた前記複数の停止ボタンに対する操作手順に基づいて(例えば、送信された情報の操作手順と、実際の操作手順が一致するか否か)、前記副制御手段における前記演出制御の状況を特定することを基本的構成とする。」

ネ 上記テの段落【0201】、上記トの段落【0217】、【0218】及び図22(b)、図23の記載より、AT抽選処理は第1副制御部400により実行されているものと認められる。

ノ 上記ソの段落【0113】及び図12の記載より、メダル払出し処理は、主制御部300により実行されているものと認められる。

ハ 上記ア?ヌの記載事項及び上記ネ、ノの認定事項から、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「スタートレバー135を操作すると、外周面に複数種類の図柄が配置されたリール110?112が回転を開始し、ストップボタン137?139に対する停止操作により回転を開始したリール110?112を個別に停止させる遊技機において、
主制御部300と第1副制御部400とを備え、
第1副制御部400は、
BB遊技状態(RT3)以外の遊技状態(RT0(再遊技低確率状態)、RT1(再遊技高確率状態)又はRT2(特別役1内部当選状態))においては、小役6が当選した場合には、AT状態を付与するか否かを抽選により決定するAT抽選処理を実行し、
BB遊技状態(RT3)以外の遊技状態(RT0(再遊技低確率状態)、RT1(再遊技高確率状態)又はRT2(特別役1内部当選状態))においては、AT抽選に当選したときに、遊技者にとって有利となる情報を報知するAT状態となるようにし、
主制御部300は、
センサ回路320がスタートレバーセンサのHレベルを検出した場合には、この検出を示す信号を乱数発生回路316に出力し、乱数発生回路316は、そのタイミングにおける値をラッチし、抽選に使用する乱数値を格納し、乱数値を用いて内部抽選を行い、再遊技役(再遊技1?再遊技4)を含む予め定められた複数種類の役の内部当選の当否を抽選により判定する抽選手段を備え、
複数のリールの回転を個別に停止させる複数の停止ボタンに対する各停止操作を受け付ける停止操作受付手段を備え、
通常リプレイ(再遊技役1)に内部当選した場合、所定の停止操作順序を決定し、通常リプレイ(再遊技役1)は、いずれの停止操作順序でも入賞させ、抽選手段の抽選結果及び停止操作受付手段が受け付けた停止操作に基づいて、複数のリールの回転の停止に関する停止制御を行う停止制御手段を備え、
入賞役に対応する図柄組合せが表示され、払い出しのある何らかの入賞役に入賞していれば、その入賞役に対応する枚数のメダルを払い出すメダル払出処理を実行し、
第1副制御部400は、AT状態では、RT1(再遊技高確率状態)において通常リプレイ(再遊技役1)に内部当選した場合には、主制御部300から送信された停止操作順序(具体的には第1停止操作に関する情報)に沿った停止ボタンナビ演出を行い、主制御部300は、RT1(再遊技高確率状態)の通常リプレイに内部当選した場合において、連続して3回、停止操作順序に関する指示と停止操作受付手段により受け付ける遊技者の実際の停止操作順序が一致した場合には、AT状態であると判断し、
AT状態であると判断をした場合にAT状態であることを示すAT信号として設定されている外部信号4を出力し、
第1副制御部400は、AT状態においては、RT0(再遊技低確率状態)において特別役2(SB)に内部当選した場合には、停止ボタンナビ演出を実行し、RT1(再遊技高確率状態)において通常リプレイ(再遊技役1)に内部当選した場合には、主制御部300から送信された停止操作順序(具体的には第1停止操作に関する情報)に沿った停止ボタンナビ演出を行い、主制御部300は、RT1(再遊技高確率状態)の通常リプレイに内部当選した場合において、連続して3回、停止操作順序に関する指示と停止操作受付手段により受け付ける遊技者の実際の停止操作順序が一致した場合には、AT状態であると判断し、AT状態であると判断をした場合にAT状態であることを示すAT信号として設定されている外部信号4を出力する遊技機。」

(3)対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「スタートレバー135」は、遊技者により操作されることは明らかで、「スタートレバー135」の「操作」は、ゲームの開始操作であるので、「スタートレバー135を操作すると」は、本件補正発明の「遊技者による開始操作が行われることに基づいて」に相当する。また、「外周面に複数種類の図柄が配置されたリール110?112が回転を開始し」は、本件補正発明の「複数列の図柄を変動させ」に相当する。ここで、引用発明において、リール110?112が回転を開始し、停止されるまでが「1回の遊技」であること、「停止操作」が遊技者により行われることは明らかある。

したがって、引用発明の「スタートレバー135を操作すると、外周面に複数種類の図柄が配置されたリール110?112が回転を開始し、ストップボタン137?139に対する停止操作により回転を開始したリール110?112を個別に停止させる遊技機」は、本件補正発明の「遊技者による開始操作が行われることに基づいて複数列の図柄を変動させて行う1回の遊技が図柄表示手段で開始され、1回の遊技の開始に基づき各列の図柄の変動が開始された後、遊技者による停止操作に基づいて対応する列の図柄が停止される遊技機」に相当する。

イ 本件補正発明の「移行」を、引用発明においては「AT状態」への移行とすると、引用発明の「BB遊技状態(RT3)以外の遊技状態(RT0(再遊技低確率状態)、RT1(再遊技高確率状態)又はRT2(特別役1内部当選状態))において、小役6が当選した場合には、AT状態を付与するか否かを抽選により決定するAT抽選処理」により、「AT状態」が付与されることは、本件補正発明の「移行条件の成立を許容する」に相当する。すると、当該「AT抽選処理」を実行する「第1副制御部400」は、本件補正発明の「条件許容手段」の機能を備えているといえる。

したがって、引用発明の「BB遊技状態(RT3)以外の遊技状態(RT0(再遊技低確率状態)、RT1(再遊技高確率状態)又はRT2(特別役1内部当選状態))においては、小役6が当選した場合には、AT状態を付与するか否かを抽選により決定するAT抽選処理を実行する第1副制御部400」は、本件補正発明の「遊技に関連して移行条件の成立を許容するか否かを決定する条件許容手段」としての機能を有する。

ウ 引用発明における「RT0(再遊技低確率状態)」かつ「AT状態」でない状態は、本件補正発明における「通常遊技状態」に相当する。また、引用発明の「AT抽選に当選したとき」は、本件補正発明の「移行条件の成立を許容する場合」であり(上記イ参照)、かつ、「移行条件の成立を契機」とすることでもある。したがって、引用発明の「AT抽選に当選したとき」は、本件補正発明の「前記条件許容手段が前記移行条件の成立を許容する場合に、前記移行条件の成立を契機とすること」に相当する。
さらに、引用発明において、BB遊技状態(RT3)以外の「RT0(再遊技低確率状態)」又は「RT1(再遊技高確率状態)」の状態で、AT状態となった場合、「RT0(再遊技低確率状態)」又は「RT1(再遊技高確率状態)」の状態で、「遊技者にとって有利となる情報を報知する」のであるから、これらの状態は、「RT0(再遊技低確率状態)」かつ「AT状態」でない状態(通常遊技状態)に比して、遊技者に有利な状態である「有利遊技状態」となることは明らかである。

したがって、引用発明の「BB遊技状態(RT3)以外の遊技状態(RT0(再遊技低確率状態)、RT1(再遊技高確率状態)又はRT2(特別役1内部当選状態))においては、AT抽選に当選したときに、遊技者にとって有利となる情報を報知するAT状態となるようにする第1副制御部400」は、本件補正発明の「前記条件許容手段が前記移行条件の成立を許容する場合に、前記移行条件の成立を契機として、通常遊技状態に比して遊技者に有利な状態での遊技となる有利遊技状態に制御する制御手段」としての機能を有する。

エ 引用発明において、「スタートレバーセンサのHレベルを検出」するのは、スタートレバーの操作(本件補正発明の「開始操作」に相当)があった場合であることは明らかであるので、引用発明は、開始操作に基づいて、乱数発生器316よりラッチした乱数値を用いた抽選で、役の内部当選を判定するものである。また、引用発明の「役の内部当選」の「判定」は、本件補正発明の「当選役」の「決定」に相当する。さらに、引用発明の「再遊技役(再遊技1)」は、本件補正発明の「特定入賞役」に相当するから、引用発明の複数種類の役には特定入賞役が含まれる。

したがって、引用発明の「センサ回路320がスタートレバーセンサのHレベルを検出した場合には、この検出を示す信号を乱数発生回路316に出力し、乱数発生回路316は、そのタイミングにおける値をラッチし、抽選に使用する乱数値を格納し、乱数値を用いて内部抽選を行い、再遊技役(再遊技1?再遊技4)を含む予め定められた複数種類の役の内部当選の当否を抽選により判定する抽選手段を備える主制御部300」は、本件補正発明の「前記開始操作に基づいて当選役として特定入賞の発生を許容する特定入賞役を含む複数種類の入賞役の中から決定する当選役決定手段」としての機能を有する。

オ 引用発明の「複数のリールの回転を個別に停止させる」ことは、全てのリールが停止すれば表示結果が導出されるので、本件補正発明の「図柄表示手段に表示結果を導出させる」ことに相当する。

したがって、引用発明の「複数のリールの回転を個別に停止させる複数の停止ボタンに対する各停止操作を受け付ける停止操作受付手段を備える主制御部300」は、本件補正発明の「前記図柄表示手段に表示結果を導出させるための前記停止操作を受付ける導出操作受付手段」としての機能を有する。

カ 引用発明の「通常リプレイ(再遊技役1)に内部当選した場合、所定の停止操作順序を決定し、通常リプレイ(再遊技役1)は、いずれの停止操作順序でも入賞させ、抽選手段の抽選結果及び停止操作受付手段が受け付けた停止操作に基づいて、複数のリールの回転の停止に関する停止制御を行う停止制御手段を備える主制御部300」と本件補正発明の「前記当選役決定手段の決定結果及び前記導出操作受付手段が受付けた前記停止操作に応じて前記図柄表示手段に表示結果を導出させる制御を行う手段であって、前記特定入賞役の決定がなされる場合、該特定入賞役の決定がなされることに対応して決定される特定の停止操作と前記導出操作受付手段が受付けた停止操作との一致を条件に特定停止態様による表示結果を導出させる一方、前記特定の停止操作と前記導出操作受付手段が受付けた停止操作との不一致を条件に通常停止態様による表示結果を導出させる導出制御手段」を備え、「前記導出制御手段は、前記特定入賞役について、前記特定停止態様による表示結果、及び前記通常停止態様による表示結果として同一の表示結果を導出させるように制御し、前記賞付与手段は、前記特定停止態様による入賞及び前記通常停止態様による入賞に対して同一の賞を遊技者に付与するように制御」することとを対比する。

引用発明の「抽選手段の抽選結果」、「停止操作受付手段が受け付けた停止操作」は、それぞれ、本件補正発明の「当選役決定手段の決定結果」、「導出操作受付手段が受付けた前記停止操作」に相当する。また、引用発明の「複数のリールの回転の停止」は、全てのリールが停止したものが表示結果となるので、本件補正発明の「図柄表示手段に表示結果を導出」することに相当する。
次に、本件補正発明においては、特定入賞役の決定がなされる場合、特定の停止操作と導出操作受付手段が受付けた停止操作との一致を条件に表示される「特定停止態様」と、前記特定の停止操作と前記導出操作受付手段が受付けた停止操作との不一致を条件に表示される「通常停止態様」とは、同一の表示結果であり、同一の賞を遊技者に付与するものであるから、結局は、特定入賞役の決定がなされる場合、いずれの停止操作であっても、当該特定入賞役が入賞することとなる。すると、引用発明は、通常リプレイ(再遊技役1)(本件補正発明の「特定入賞役」に相当)に内部当選した場合、所定の停止操作順序(本件補正発明の「特定の停止操作」に相当)が決定されるが、いずれの停止操作順序であっても、当該通常リプレイ(再遊技役1)が入賞するものであるから、本件補正発明における「特定の停止操作と前記導出操作受付手段が受付けた停止操作との一致を条件に特定停止態様による表示結果を導出させる」こと(引用発明において、「所定の停止操作順序」と遊技者が行った「停止操作順序」が一致した場合に「通常リプレイ(再遊技役1)」を入賞させること)及び「特定の停止操作と前記導出操作受付手段が受付けた停止操作との不一致を条件に通常停止態様による表示結果を導出させる」こと(引用発明において、「所定の停止操作順序」と遊技者が行った「停止操作順序」が不一致の場合に「通常リプレイ(再遊技役1)」を入賞させること)を備えているといえる。
以上より、引用発明では、「所定の停止操作順序」と遊技者が行った「停止操作順序」が一致した場合に入賞させる「通常リプレイ(再遊技役1)」(本件補正発明の「特定停止態様」に相当)、及び「所定の停止操作順序」と遊技者が行った「停止操作順序」が不一致の場合に入賞させる「通常リプレイ(再遊技役1)」(本件補正発明の「通常停止態様」に相当)は、同一の表示結果(「通常リプレイ(再遊技役1)」)となり、同一の賞(リプレイ)が付与されるといえる。

したがって、引用発明の「通常リプレイ(再遊技役1)に内部当選した場合、所定の停止操作順序を決定し、通常リプレイ(再遊技役1)は、いずれの停止操作順序でも入賞させ、抽選手段の抽選結果及び停止操作受付手段が受け付けた停止操作に基づいて、複数のリールの回転の停止に関する停止制御を行う停止制御手段を備える主制御部300」は、本件補正発明の「前記当選役決定手段の決定結果及び前記導出操作受付手段が受付けた前記停止操作に応じて前記図柄表示手段に表示結果を導出させる制御を行う手段であって、前記特定入賞役の決定がなされる場合、該特定入賞役の決定がなされることに対応して決定される特定の停止操作と前記導出操作受付手段が受付けた停止操作との一致を条件に特定停止態様による表示結果を導出させる一方、前記特定の停止操作と前記導出操作受付手段が受付けた停止操作との不一致を条件に通常停止態様による表示結果を導出させる導出制御手段」としての機能を有し、「前記導出制御手段は、前記特定入賞役について、前記特定停止態様による表示結果、及び前記通常停止態様による表示結果として同一の表示結果を導出させるように制御し、前記賞付与手段は、前記特定停止態様による入賞及び前記通常停止態様による入賞に対して同一の賞を遊技者に付与するように制御」するものである。

キ 引用発明において、表示される「図柄組合せ」が入賞役に入賞していると「メダル」を払い出すことは、本件補正発明において、「図柄表示手段に導出される表示結果」に基づいて遊技者に「賞」を付与することに相当する。

したがって、引用発明の「入賞役に対応する図柄組合せが表示され、払い出しのある何らかの入賞役に入賞していれば、その入賞役に対応する枚数のメダルを払い出すメダル払出処理を実行する主制御部300」は、本件補正発明の「前記図柄表示手段に導出される表示結果に基づいて賞を遊技者に付与する制御を行う賞付与手段」としての機能を有している。

ク 引用発明の「AT状態では、RT1(再遊技高確率状態)において通常リプレイ(再遊技役1)に内部当選した場合には、主制御部300から送信された停止操作順序(具体的には第1停止操作に関する情報)に沿った停止ボタンナビ演出を行う第1副制御部400と、RT1(再遊技高確率状態)の通常リプレイに内部当選した場合において、連続して3回、停止操作順序に関する指示と停止操作受付手段により受け付ける遊技者の実際の停止操作順序が一致した場合には、AT状態であると判断する主制御部300」と、本件補正発明の「前記有利遊技状態の制御中、前記特定入賞役の決定がなされる場合に前記導出操作受付手段が受付けた停止操作が特定の停止操作と一致した一致回数を計数する計数手段」とを対比する。

引用発明において、「AT状態」かつ「RT0(再遊技低確率状態)」の状態と、「AT状態」かつ「RT1(再遊技高確率状態)」の状態は、共に、「AT状態」でない「RT0(再遊技低確率状態)」の状態(通常遊技状態)よりも遊技者にとって有利な「有利遊技状態」である(上記ウ参照)。
次に、引用発明の「通常リプレイ(再遊技役1)」は、本件補正発明の「特定入賞役」に相当する。また、引用発明の「停止操作受付手段により受け付ける遊技者による実際の停止操作順序」について、本件補正発明の「前記有利遊技状態の制御中、前記特定入賞役の決定がなされる場合に前記導出操作受付手段が受付けた停止操作が特定の停止操作と一致した一致回数を計数する計数手段」との構成における「導出操作受付手段が受付けた停止操作」とは、本件補正発明の明細書の段落【0197】、【0198】、図11を参照すると、具体的には、ストップボタンの停止操作の順番のことであるので、引用発明の「停止操作受付手段により受け付ける遊技者による実際の停止操作順序」は、本件補正発明の「導出操作受付手段が受付けた停止操作」に相当する。さらに、引用発明の主制御部300から第1副制御部400に送信される「停止操作順序に関する指示」について、主制御部300は、「停止操作順序に関する指示」と「停止操作受付手段により受け付ける遊技者の実際の停止操作順序」が一致したか否かに基づきAT状態であるか否か判断しているが、実質的には、第1副制御部400に「指示」した「停止操作順序」と「停止操作受付手段により受け付ける遊技者の実際の停止操作順序」が一致したか否かを判断していることは明らかである。ここで、本件補正発明の「特定の停止操作」は、上記のとおり、具体的には、ストップボタンの停止操作の順番のことであるので、引用発明の「停止操作順序に関する指示」は、本件補正発明の「特定の停止操作」に相当する。
また、引用発明の主制御部300は、連続して3回、「停止操作順序に関する指示」と「停止操作受付手段により受け付ける遊技者の実際の停止操作順序」が一致した場合には、AT状態であると判断するので、「停止操作順序に関する指示」と「停止操作受付手段により受け付ける遊技者の実際の停止操作順序」の一致回数を計数する「計数手段」の機能を備えていることは明らかである。
したがって、引用発明は、「AT状態」かつ「RT1(再遊技高確率状態)」の状態(有利遊技状態)で、「通常リプレイ(再遊技役1)」(特定入賞役)に内部当選した場合、「遊技者による実際の停止操作順序」(導出操作受付手段が受付けた停止操作)が「停止操作順序に関する指示」(特定の停止操作)と一致した回数を計数する計数手段を備えているといえる。
ここで、引用発明は、「AT状態」かつ「RT1(再遊技高確率状態)」の状態で一致した回数を計数し、別の「有利遊技状態」である「AT状態」かつ「RT0(再遊技低確率状態)」の状態では一致回数を計数しないところ、本件補正発明は、「前記有利遊技状態の制御中、・・・一致回数を計数する」との構成を有している。しかし、本件補正発明は、さらに、「前記有利遊技状態のうち前記第2有利遊技状態の制御中における前記一致回数が所定回数に達する特定条件の成立を契機として前記制御信号を出力する」と限定されているので、引用発明の「AT状態」かつ「RT1(再遊技高確率状態)」の状態のみにおいて一致した回数を計数するものと差異はない(下記コ参照)。

よって、引用発明の「AT状態では、RT1(再遊技高確率状態)において通常リプレイ(再遊技役1)に内部当選した場合には、主制御部300から送信された停止操作順序(具体的には第1停止操作に関する情報)に沿った停止ボタンナビ演出を行う第1副制御部400と、RT1(再遊技高確率状態)の通常リプレイに内部当選した場合において、連続して3回、停止操作順序に関する指示と停止操作受付手段により受け付ける遊技者の実際の停止操作順序が一致した場合には、AT状態であると判断する主制御部300」は、本件補正発明の「前記有利遊技状態の制御中、前記特定入賞役の決定がなされる場合に前記導出操作受付手段が受付けた停止操作が特定の停止操作と一致した一致回数を計数する計数手段」としての機能を有する。

ケ 引用発明の「AT状態であることを示すAT信号として設定されている外部信号4」は、主制御部300が、「AT状態」かつ「RT1(再遊技高確率状態)」の状態(有利遊技状態)において、AT状態と判断した場合に出力されるものであるから、本件補正発明の「前記有利遊技状態の制御中であることを特定可能な制御信号」に相当する。また、引用発明の主制御部300は、当該「外部信号4」を出力するので、本件補正発明の「信号出力手段」の機能を備えているといえる。

したがって、引用発明の「AT状態であると判断をした場合にAT状態であることを示すAT信号として設定されている外部信号4を出力する主制御部300」は、本件補正発明の「前記有利遊技状態の制御中であることを特定可能な制御信号を遊技機外部に対して出力する信号出力手段」の機能を有する。

コ 引用発明の「第1副制御部400は、AT状態においては、RT0(再遊技低確率状態)において特別役2(SB)に内部当選した場合には、停止ボタンナビ演出を実行し、RT1(再遊技高確率状態)において通常リプレイ(再遊技役1)に内部当選した場合には、主制御部300から送信された停止操作順序(具体的には第1停止操作に関する情報)に沿った停止ボタンナビ演出を行い、主制御部300は、RT1(再遊技高確率状態)の通常リプレイに内部当選した場合において、連続して3回、停止操作順序に関する指示と停止操作受付手段により受け付ける遊技者の実際の停止操作順序が一致した場合には、AT状態であると判断し、AT状態であると判断をした場合にAT状態であることを示すAT信号として設定されている外部信号4を出力する」ことと本件補正発明の「前記有利遊技状態には、第1有利遊技状態と、前記第1有利遊技状態とは異なる第2有利遊技状態と、があり、
前記信号出力手段は、前記移行条件の成立後であって、前記有利遊技状態のうち前記第2有利遊技状態の制御中における前記一致回数が所定回数に達する特定条件の成立を契機として前記制御信号を出力する」こととを対比する。

上記クに記載したとおり、引用発明の「AT状態」かつ「RT0(再遊技低確率状態)」の状態と、「AT状態」かつ「RT1(再遊技高確率状態)」の状態は、共に、「AT状態」でなく「RT0(再遊技低確率状態)」の状態(通常遊技状態)よりも遊技者にとって有利な「有利遊技状態」であり、これらの状態は、それぞれ、本件補正発明の「第1の有利遊技状態」、「第2の有利遊技状態」に相当する。
また、上記ク、ケに記載したとおり、引用発明の主制御部300は、「有利遊技状態の制御中、導出操作受付手段が受付けた停止操作が特定の停止操作と一致した一致回数を計数する計数手段」及び「信号出力手段」の機能を有している。
そして、引用発明において、「AT状態」であれば、本件補正発明における「移行条件の成立後」であることは明らかであり(上記イ参照)、また、引用発明の主制御部300は、「AT状態」かつ「RT1(再遊技高確率状態)」の状態(第2の有利遊技状態)で、連続して3回、停止操作順序に関する指示と遊技者の実際の停止操作順序が一致した場合には、AT状態であると判断し、AT信号として設定されている外部信号4を出力するものである。

したがって、引用発明の「第1副制御部400は、AT状態においては、RT0(再遊技低確率状態)において特別役2(SB)に内部当選した場合には、停止ボタンナビ演出を実行し、RT1(再遊技高確率状態)において通常リプレイ(再遊技役1)に内部当選した場合には、主制御部300から送信された停止操作順序(具体的には第1停止操作に関する情報)に沿った停止ボタンナビ演出を行い、主制御部300は、RT1(再遊技高確率状態)の通常リプレイに内部当選した場合において、連続して3回、停止操作順序に関する指示と停止操作受付手段により受け付ける遊技者の実際の停止操作順序が一致した場合には、AT状態であると判断し、AT状態であると判断をした場合にAT状態であることを示すAT信号として設定されている外部信号4を出力する」ことは、本件補正発明の「前記有利遊技状態には、第1有利遊技状態と、前記第1有利遊技状態とは異なる第2有利遊技状態と、があり、
前記信号出力手段は、前記移行条件の成立後であって、前記有利遊技状態のうち前記第2有利遊技状態の制御中における前記一致回数が所定回数に達する特定条件の成立を契機として前記制御信号を出力する」ことに相当する。

サ 上記ア?コから、本件補正発明と引用発明とは
「遊技者による開始操作が行われることに基づいて複数列の図柄を変動させて行う1回の遊技が図柄表示手段で開始され、1回の遊技の開始に基づき各列の図柄の変動が開始された後、遊技者による停止操作に基づいて対応する列の図柄が停止される遊技機において、
遊技に関連して移行条件の成立を許容するか否かを決定する条件許容手段と、
前記条件許容手段が前記移行条件の成立を許容する場合に、前記移行条件の成立を契機として、通常遊技状態に比して遊技者に有利な状態での遊技となる有利遊技状態に制御する制御手段と、
前記開始操作に基づいて当選役として特定入賞の発生を許容する特定入賞役を含む複数種類の入賞役の中から決定する当選役決定手段と、
前記図柄表示手段に表示結果を導出させるための前記停止操作を受付ける導出操作受付手段と、
前記当選役決定手段の決定結果及び前記導出操作受付手段が受付けた前記停止操作に応じて前記図柄表示手段に表示結果を導出させる制御を行う手段であって、前記特定入賞役の決定がなされる場合、該特定入賞役の決定がなされることに対応して決定される特定の停止操作と前記導出操作受付手段が受付けた停止操作との一致を条件に特定停止態様による表示結果を導出させる一方、前記特定の停止操作と前記導出操作受付手段が受付けた停止操作との不一致を条件に通常停止態様による表示結果を導出させる導出制御手段と、
前記図柄表示手段に導出される表示結果に基づいて賞を遊技者に付与する制御を行う賞付与手段と、
前記有利遊技状態の制御中、前記特定入賞役の決定がなされる場合に前記導出操作受付手段が受付けた停止操作が特定の停止操作と一致した一致回数を計数する計数手段と、
前記有利遊技状態の制御中であることを特定可能な制御信号を遊技機外部に対して出力する信号出力手段と、を備え、
前記有利遊技状態には、第1有利遊技状態と、前記第1有利遊技状態とは異なる第2有利遊技状態と、があり、
前記導出制御手段は、前記特定入賞役について、前記特定停止態様による表示結果、及び前記通常停止態様による表示結果として同一の表示結果を導出させるように制御し、
前記賞付与手段は、前記特定停止態様による入賞及び前記通常停止態様による入賞に対して同一の賞を遊技者に付与するように制御し、
前記信号出力手段は、前記移行条件の成立後であって、前記有利遊技状態のうち前記第2有利遊技状態の制御中における前記一致回数が所定回数に達する特定条件の成立を契機として前記制御信号を出力することを特徴とする遊技機。」の点で一致し、差異はない。

よって、本件補正発明は、特許出願前に日本国内において、頒布された刊行物1に記載された発明である。

(4)請求人の主張
請求人は、審判請求書において、「本願発明1と、引用文献2(審決における刊行物1)とは、本願発明1が「信号出力手段は、移行条件の成立後であって、有利遊技状態のうち第2有利遊技状態の制御中における一致回数が所定回数に達する特定条件の成立を契機として制御信号を出力する」という構成を備えているのに対して、引用文献2はそのような構成を備えていない点で相違している。」(第5頁第13?17行)と主張している。
しかしながら、上記のとおり、刊行物1に記載された発明の「AT状態」及び当該「AT状態」から移行する「AT状態」かつ「RT1(再遊技高確率状態)」の状態は、それぞれ、本件補正発明の「第1有利遊技状態」及び「第2有利遊技状態」に相当するから、刊行物1には、「第2有利遊技状態の制御中における一致回数が所定回数に達する特定条件の成立を契機として制御信号を出力する」ことが記載されているといえる。

したがって、請求人の主張は採用することができない。

(5)小括
上記のとおり、本件補正発明は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1に記載された発明である。

4.むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明
本件補正(平成27年8月22日付け手続補正)は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年8月22日付け手続補正書により補正された、上記第2の1において特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

1.刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1の記載事項は、前記第2の3(2)に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記第2の3で検討した本件補正発明から、「有利遊技状態」に関して、「通常遊技状態に比して」有利であり、「第1有利遊技状態」と「第2有利遊技状態」を有し、また、「第2有利遊技状態」において制御信号を出力するという限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明は、前記第2の3(3)において検討したとおり、刊行物1に記載された発明であるから、本願発明も同様の理由により、刊行物1に記載された発明である。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。したがって、その余の請求項については検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-14 
結審通知日 2016-06-21 
審決日 2016-07-08 
出願番号 特願2012-148713(P2012-148713)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大澤 元成  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 瀬津 太朗
齋藤 智也
発明の名称 遊技機  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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