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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47H
管理番号 1318853
審判番号 不服2015-17735  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-30 
確定日 2016-09-01 
事件の表示 特願2010-210381「日射遮蔽装置のスクリーン取付構造」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月 5日出願公開、特開2012- 65685〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成22年9月21日の出願であって、平成26年5月29日及び平成27年1月9日に手続補正がなされ、同年6月23日付けで、前記同年1月9日になされた手続補正を却下する決定とともに拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年9月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に特許請求の範囲及び明細書に係る手続補正がなされ、平成28年5月13日付けで上申書が提出されたものである。


第2 平成27年9月30日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年9月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。


[理由]

1 補正の内容

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を補正する内容を含んでおり、本件補正前と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。


本件補正前(平成26年5月29日付け手続補正書)

「【請求項1】
ヘッドレール(13)と、前記ヘッドレール(13)の両端部又は一方の端部に取付けられた端部材(14,74)と、前記ヘッドレール(13)及び前記端部材(14,74)の合計長さと略同一の幅を有し上端が前記ヘッドレール(13)に面ファスナ(21,22)を介して取付けられたスクリーン(11,12)とを備えた日射遮蔽装置において、
前記面ファスナ(21)が前記ヘッドレール(13)の前面及び前記端部材(14,74)の前面に設けられ、
前記スクリーン(11)の上端が前記面ファスナ(21)を介して前記ヘッドレール(13)の前面及び前記端部材(14,74)の前面に取付けられ、
前記スクリーン(11)昇降用の操作チェーン(33)を前記端部材(14,74)に出入りさせるチェーン用窓(14a)が前記端部材(14,74)の下部に形成され、
前記面ファスナ(21)の端部材用帯状板(21b)が係合する端部材用フック(14b,14c)が前記端部材(14,74)の前記チェーン用窓(14a)の上方に位置するように前記端部材(14,74)に設けられた
ことを特徴とする日射遮蔽装置のスクリーン取付構造。」


本件補正後(平成27年9月30日付け手続補正書)

「【請求項1】
ヘッドレール(13)と、前記ヘッドレール(13)の両端部又は一方の端部に取付けられた端部材(14,74)と、前記ヘッドレール(13)及び前記端部材(14,74)の合計長さと略同一の幅を有し上端が前記ヘッドレール(13)に面ファスナ(21,22)を介して取付けられたスクリーン(11,12)とを備えた日射遮蔽装置において、
前記面ファスナ(21)が前記ヘッドレール(13)の前面及び前記端部材(14,74)の前面に設けられ、
前記スクリーン(11)の側端が前記端部材(14,74)の端部に一致した状態で、前記スクリーン(11)の上端が前記面ファスナ(21)を介して前記ヘッドレール(13)の前面及び前記端部材(14,74)の前面に取付けられ、
前記スクリーン(11)昇降用の操作チェーン(33)を前記端部材(14,74)に出入りさせるチェーン用窓(14a)が前記端部材(14,74)の前面下部から下面にわたって形成され、
前記面ファスナ(21)の端部材用帯状板(21b)が係合する端部材用フック(14b、14c)が前記端部材(14,74)の前記チェーン用窓(14a)の上方に位置するように前記端部材(14,74)に設けられた
ことを特徴とする日射遮蔽装置のスクリーン取付構造。」(下線は、補正箇所を示す。)。


2 補正の目的及び新規事項の追加の有無

本件補正の請求項1に係る補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「スクリーン(11)の上端が前記面ファスナ(21)を介して前記ヘッドレール(13)の前面及び前記端部材(14,74)の前面に取付けられ」に関して、「スクリーン(11)の側端が前記端部材(14,74)の端部に一致した状態で」取付けられることに限定し、同様に、「チェーン用窓(14a)が」「形成され」る位置が「端部材(14,74)」の「下部」であったものを、「前面下部から下面にわたって」であることに限定したものであって、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項の規定を満たしている。


3 独立特許要件について

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)刊行物1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である、実願平5-68878号(実開平7-30867号)のCD-ROM(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

ア 「【産業上の利用分野】
この考案は、例えば、三角形や台形等の出窓と、スクリーンやカーテン等の幕体との間に光漏れが生じるのを防止するときに用いられる幕体の隙間覆い構造に関する。」

イ 「【0002】
【従来の技術】
従来、上述例のような出窓にカーテンを吊設する場合、図4に示すように、出窓を構成する上部窓枠23に沿ってカーテンレール21を架設し、同カーテンレール21の長手側前面部にカーテン22の上端側縁部を貼着固定して、適宜開閉手段(図示省略)によりカーテン22を上下方向に引上げ開閉する。」

ウ 「【0011】
【実施例】
この考案の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は幕体の一例としてカーテンの両側縁部に形成される隙間を覆い隠すために用いられるカーテンの隙間覆い構造を示し、図1及び図2に於いて、後述する上部窓枠13に沿ってカーテンレール1を架設し、同カーテンレール1の長手側前面部に面ファスナ2を介してカーテン3の上端側縁部を固定し、適宜開閉手段(図示省略)によりカーテン3を上下方向に引上げ開閉する。
【0012】
上述の隙間覆い構造は、カーテンレール1の両側端部に嵌着固定される巻取りユニット4及びレールキャップ5と、同巻取りユニット4及びレールキャップ5に差込み固定される隙間覆い具6とで構成している。
【0013】
この隙間覆い具6は、任意角度に折曲げ可能な金属板により一体形成され、折曲部7の一方側を巻取りユニット4やレールキャップ5に対して差込み固定するための装着片8とするとともに、他方側を、カーテン3の上端側縁部を固定するための取付け片9としており、相互のなす角度は、力を加えることで適宜変更できるものである。
【0014】
上述の装着片8は、巻取りユニット4の端面4a及びレールキャップ5の端面5aに差込み固定するもので、一側面の上下両側縁に、その長さ方向に沿って突出する突条8a,8aを形成している。また、これら突条8a,8aを形成した側の面には、脱落防止用の突部8bを膨出形成している。
【0015】
前述の取付け片9は、隙間を閉塞するに必要な適宜長さの短冊状で、その前面には、カーテン3の上端側縁部に縫合固定した面ファスナ2の固定側テープ2aと対向して、面ファスナ2の着脱側テープ2bを挾持固定又は接着固定している。
【0016】
前述の巻取りユニット4およびレールキャップ5の端面には、隙間覆い具6の装着片8の差込み形状に嵌合対応する差込み溝10を幅方向(前後方向)に沿って形成している。なお、この差込み溝10は、巻取りユニット4やレールキャップ5がカーテンレール1に対する装着に際して方向性を問わない形態であることに対応して、幅方向に対して左右の何れからでも差込めるように形成している。
すなわち、図面上は前側から差込むように示しているが、後側からも差込んで装着することが可能である。
【0017】
また、巻取りユニット4は、上述のレールキャップ5のように薄型形状ではないため、カーテンレール1に形成したテープ装着溝1aと連続してテープ装着溝11を形成している。これらテープ装着溝1a,11は、前面に面ファスナ2の着脱側テープ2bを接着固定した帯状のテープ12を長さ方向に差込み固定するためのものである。
【0018】
なお、図面上はカーテンレール1に合せてテープ装着溝11を形成したが、カーテンレール1が面ファスナ2の着脱側テープ2bを直接接着するものである場合には、これと同様に面ファスナ2の着脱側テープ2bを接着すればよい。
【0019】
図示実施例は上記の如く構成するものとして、以下、台形出窓を構成する上部窓枠13に対してカーテン3を吊設するときの取付け方法を説明する。
先ず、図3に示すように、カーテンレール1の両側端部に嵌着固定した巻取りユニット4及びレールキャップ5に、各隙間覆い具6,6の各装着片8,8を差込み固定すると共に、図2にも示したように、各隙間覆い具6,6の各取付け片9,9を後方側に折曲げて、窓枠13とカーテン3の両側縁部との間に形成される隙間を覆い隠すような適宜角度に折曲げる。次に、カーテンレール1と、巻取りユニット4と、各隙間覆い具6,6とに面ファスナ2を介してカーテン3の上端側縁部を固定した後、上部窓枠13に沿ってカーテンレール1を架設する。
【0020】
以上のように、カーテンレール1の両側端部に固定した巻取りユニット4及びレールキャップ5に各隙間覆い具6,6を差込み固定して、同カーテンレール1と、巻取りユニット4と、各隙間覆い具6,6とにカーテン3の上端側縁部を固定するので、カーテンレール1の両側端部よりも突出した状態にカーテン3を吊設することができ、窓枠13とカーテン3との一側縁部に形成される隙間を覆い隠して、カーテン3の開閉時に光漏れが生じるのを確実に防止する。
【0021】
しかも、隙間を覆い隠しながらカーテン3を開閉するので、任意の採光量に可変調節できると共に、窓枠13とカーテン3との間に形成される隙間が覆われる任意角度に各隙間覆い具6,6を折曲げ調節することができる。
【0022】
さらに、巻取りユニット4にも面ファスナ2を介してカーテン3の上端側縁部を固定するので、カーテン3と巻取りユニット4との間に光漏れが生じるのを防止でき、カーテン3の上端側縁部を確実に固定することができる。
【0023】
なお、図3は、カーテンレール1の一側端部に嵌着固定した巻取りユニット4に隙間覆い具6を取付けた状態を示しているが、他側端部に嵌着固定したレールキャップ5にも図3と同様に隙間覆い具6を取付けている。
【0024】
この考案の構成と上述の一実施例の構成との対応において、
この考案の支持レールは、実施例のカーテンレール1に対応し、
以下同様に、
幕体は、カーテン3に対応し、
嵌込み部材は、巻取りユニット4とレールキャップ5とに対応し、
幕取付け部材は、隙間覆い具6に対応し、
嵌込み部材の幕取付け部は、巻取りユニット4のテープ装着溝11に対応するも、
この考案は上述の一実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0025】
上述の実施例では、巻取りユニット4及びレールキャップ5に対して隙間覆い具6を幅方向に差込み固定するが、例えば、巻取りユニット4及びレールキャップ5に対して隙間覆い具6をネジ固定するもよく、また、巻取りユニット4及びレールキャップ5に対して隙間覆い具6を上下方向に差込み固定するもよい。」

エ 図1から、面ファスナ2がカーテンレール1の前面及び巻取りユニット4の前面に設けられていることが看て取れる。

オ 上記ウ(特に、段落【0020】)を踏まえて図1ないし3をみると、カーテン3は、カーテンレール1、巻取りユニット4及び各隙間覆い具6,6の取付け片9の合計長さと略同一の幅を有し、側端が各隙間覆い具6,6の端部に一致した状態でカーテンレール1と、巻取りユニット4と、各隙間覆い具6,6とに固定されることが看て取れる。

カ 上記アないしオからみて、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。

「カーテンレール1と、カーテンレール1の端部に嵌着固定される巻取りユニット4と、同巻取りユニット4に差込み固定される隙間覆い具6とで構成され、さらに、カーテンレール1、巻取りユニット4及び各隙間覆い具6,6の取付け片9の合計長さと略同一の幅を有し、カーテンレール1の長手側前面部に面ファスナ2を介してその上端側縁部を固定するカーテン3を備えた構成において、
面ファスナ2がカーテンレール1の前面及び巻取りユニット4の前面に設けられ、
側端が各隙間覆い具6,6の端部に一致した状態で、カーテンレール1と、巻取りユニット4と、各隙間覆い具6,6とにカーテン3の上端側縁部が固定され、
巻取りユニット4は、薄型形状ではないため、カーテンレール1に形成したテープ装着溝1aと連続して、前面に面ファスナ2の着脱側テープ2bを接着固定した帯状のテープ12を差込み固定するためのテープ装着溝11が形成された、出窓に上下方向に引上げ開閉するカーテンを吊設する構成。」


(2)刊行物2に記載された技術事項

原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である、特開2003-310421号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0008】図1は、上縁11にて多数の互いに間隔をあけて配置されたループ10によりレール14に固定されているカーテン生地2を有するカーテン1を示している。レール14は、好ましくは、図2によれば自由端14aを有し、図3によれば支持具18により建物壁17または天井に固定されるロッドである。ループ10は、例えば図5によれば、カーテン生地2がレール14から取除かれ得るように、解放可能である。ループ10の代わりに、カーテン生地は、例えば図2によれば、フック15等によりレール14に固定され得る。レール14は、上縁11の上方にこれと間隔をあけて配置され、装飾要素として見える。したがって、レール14は、装飾レールを構成する。これに、カーテン生地2は、解放可能に固定され、一般に側方に僅かに移動される。
【0009】好ましくは、カーテン生地2の裏面20(図3参照)に、カーテン生地2の垂直方向の波状の折畳みそして下縁12の持ち上げを可能にする操作手段3が配置されている。この操作手段3は、水平に延びるテープ状の支持具16を有しており、その内側に、面ファスナ4が固定される。この面ファスナ4により、支持具16は、対応するけばテープ5に解放可能に固定され得る。けばテープ5は、図1によれば、上縁11の領域にて裏面側でカーテン生地2に固定され、例えば縫い付けられている。」

イ 上記アを踏まえて図1、2、9をみると、面ファスナ4を、カーテン生地2が固定される操作手段3の水平幅方向の全領域に設けることが看て取れる。

ウ 上記ア及びイからみて、刊行物2には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「刊行物2技術」という。)。

「カーテン生地2の裏面20に配置され、その内側に、カーテン生地2に固定されるけばテープ5に解放可能に固定され得る面ファスナ4が固定される水平に延びるテープ状の支持具16を有した、カーテン生地2の垂直方向の波状の折畳みそして下縁12の持ち上げを可能にする操作手段3において、面ファスナ4を、カーテン生地2が固定される操作手段3の水平幅方向の全領域に設けること。」


(3)対比

本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

ア 刊行物1発明の「カーテンレール1」は、本願補正発明の「ヘッドレール(13)」に相当し、以下同様に、「面ファスナ2」は「面ファスナ(21)」に、「カーテン3」は「スクリーン(11)」に、「面ファスナ2の着脱側テープ2bを接着固定した帯状のテープ12」は「端部材用帯状板(21b)」に相当する。

イ 刊行物1発明の「巻取りユニット4」は、「カーテンレール1の」「端部に嵌着固定される」ものなので、本願補正発明の「端部材(14,74)」に相当する。

ウ 刊行物1発明の「カーテンレール1」と「巻取りユニット4」と「隙間覆い具6とで構成され、さらに、」「カーテン3」を備えた「構成」は、本願補正発明の「日射遮蔽装置」に相当し、同様に、「出窓にカーテンを吊設する構成」は、「日射遮蔽装置のスクリーン取付構造」に相当する。

エ 刊行物1発明の「カーテンレール1の端部に嵌着固定される巻取りユニット4」は、本願補正発明の「ヘッドレール(13)の両端部又は一方の端部に取付けられた端部材」に相当する。

オ 刊行物1発明の「カーテンレール1」「に面ファスナ2を介してその上端側縁部を固定するカーテン3」は、本願補正発明の「上端が前記ヘッドレール(13)に面ファスナ(21,22)を介して取付けられたスクリーン(11,12)」に相当する。

カ 刊行物1発明の「面ファスナ2がカーテンレール1の前面及び巻取りユニット4の前面に設けられ」は、本願補正発明の「面ファスナ(21)が前記ヘッドレール(13)の前面及び前記端部材(14,74)の前面に設けられ」に相当する。

キ 刊行物1発明の「カーテンレール1と、巻取りユニット4と、各隙間覆い具6,6とにカーテン3の上端側縁部が固定され」は、「面ファスナ2がカーテンレール1の前面及び巻取りユニット4の前面に設けられ」、「カーテン3」が「面ファスナ2を介してその上端側縁部を固定する」ものであることから、本願補正発明の「スクリーン(11)の上端が前記面ファスナ(21)を介して前記ヘッドレール(13)の前面及び前記端部材(14,74)の前面に取付けられ」に相当する。

ク 刊行物1発明の「巻取りユニット4は」「面ファスナ2の着脱側テープ2bを接着固定した帯状のテープ12を差込み固定するためのテープ装着溝11が形成された」と、本願補正発明の「面ファスナ(21)の端部材用帯状板(21b)が係合する端部材用フック(14b、14c)が前記端部材(14,74)の前記チェーン用窓(14a)の上方に位置するように前記端部材(14,74)に設けられた」は、「面ファスナの端部材用帯状板が固定される端部材用固定手段が端部材に設けられた」で共通する。

ケ したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、

「ヘッドレールと、ヘッドレールの一方の端部に取付けられた端部材と、上端がヘッドレールに面ファスナを介して取付けられたスクリーンとを備えた日射遮蔽装置において、
面ファスナがヘッドレールの前面及び端部材の前面に設けられ、
スクリーンの上端が面ファスナを介してヘッドレールの前面及び端部材の前面に取付けられ、
面ファスナの端部材用帯状板が固定される端部材用固定手段が端部材に設けられた
日射遮蔽装置のスクリーン取付構造。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
「スクリーン」の、「ヘッドレール」及び「端部材」に対する長さ、及び、取付け位置に関して、
本願補正発明が、「ヘッドレール及び前記端部材の合計長さと略同一」、及び、「側端が前記端部材の端部に一致した状態」であるのに対して、
刊行物1発明は、「カーテンレール1、巻取りユニット4及び各隙間覆い具6,6の取付け片9の合計長さと略同一」、及び、「側端が各隙間覆い具6,6の端部に一致した状態」である点。

[相違点2]
「端部材用固定手段」に関して、
本願補正発明が、(端部材用帯状板が)「係合する端部材用フック」であるのに対して、
刊行物1発明は、(テープ12を)「差込み固定する」「テープ装着溝」である点。

[相違点3]
本願補正発明が、「スクリーン昇降用の操作チェーンを前記端部材に出入りさせるチェーン用窓が前記端部材の前面下部から下面にわたって形成され」ているのに対して、
刊行物1発明は、その特定がない点。

[相違点4]
「端部材に設けられ」る「端部材用固定手段」の位置に関して、
本願補正発明が、「端部材の前記チェーン用窓の上方」であるのに対して、
刊行物1発明は、その特定がない点。


(4)判断
ア 相違点1ないし3について
窓に吊設され上下方向に引上げ開閉されるスクリーン装置において、
(ア)スクリーンの幅を、ヘッドレール及び端部材によって占められる幅の長さと略同一とし、スクリーンの側端が端部材の端部に一致した状態でスクリーンを取付けるようにすること、
(イ)スクリーンをヘッドレールに取付けるための面ファスナの固定手段として面ファスナと係合するフックを用いること、
(ウ)スクリーン昇降用の操作チェーンを端部材に出入りさせるチェーン用窓を端部材の前面下部から下面にわたって形成すること
は、何れも慣用技術であるから(上記(ア)については、実願平5-74814号(実開平7-39665号)のCD-ROM(図1を参照。)、特開2007-268246号公報(図8を参照。)が挙げられ、上記(イ)については、特開2007-268246号公報(図1を参照。)、特開2010-5315号公報(図3を参照。)が挙げられ、上記(ウ)については、実願平1-15402号(実開平2-107386号)のマイクロフィルム(第1図を参照。)、特許第4063837号公報(第1、2、4図を参照。)、特開平9-252930号公報(図1、3を参照。)が挙げられる。)、相違点1ないし3に係る本願補正発明の構成、刊行物1発明の構成の何れを採用するかは、当業者が適宜決定することであって設計上の微差に過ぎない。

イ 相違点4について
(ア)刊行物1の図1によれば、面ファスナ2の接着側テープ2bが、巻取りユニット4の端面に近い位置まで設けられていることから、刊行物1発明において相違点3に係る本願補正発明の構成を採用した発明は、上記相違点4の構成を備えている蓋然性が高い。

(イ)仮に、刊行物1発明において相違点3に係る本願補正発明の構成を採用した発明が上記相違点4の構成を備えていないとしても、巻取りユニット4が薄型形状ではないことを理由として、巻取りユニット4にテープ装着溝11が形成されている(面ファスナ2の接着側テープ2bを接着固定した帯状のテープ12が装着されている)こと(明細書の段落【0017】を参照。)を勘案すれば、刊行物1発明が巻取りユニット4の幅方向の広い領域でカーテン3を固定する課題を内包することは当業者にとって明らかであるから、刊行物1発明において、そのような課題認識のもとで巻取りユニット4の幅方向の略全域に面ファスナの接着側テープ2bの固定手段を設けるようにすること、すなわち、上記相違点4の構成とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。

(ウ)さらに、仮に、刊行物1発明において相違点3に係る本願補正発明の構成を採用した発明が上記(イ)に記載した課題を内包していないとしても、刊行物1発明において、同様の技術分野に属する刊行物2技術を採用し、面ファスナの接着側テープ2bの固定手段を巻取りユニット4の水平幅方向の全領域に設けること、すなわち、上記相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

ウ 本願補正発明が奏する効果について

本願補正発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明及び慣用技術、又は、刊行物1発明、刊行物2技術及び慣用技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

エ まとめ

以上のように、本願補正発明は、当業者が刊行物1発明及び慣用技術、又は、刊行物1発明、刊行物2技術及び慣用技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。


4 上申書における補正案について

請求人は、上申書において、本願補正発明に関して以下の補正案を提示して、補正の機会を要望している。

「【請求項1】
ヘッドレール(13)と、前記ヘッドレール(13)の両端部又は一方の端部に取付けられた端部材(14,74)と、前記ヘッドレール(13)及び前記端部材(14,74)の合計長さと略同一の幅を有し上端が前記ヘッドレール(13)に面ファスナ(21,22)を介して取付けられたスクリーン(11,12)とを備えた日射遮蔽装置において、
前記面ファスナ(21)が前記ヘッドレール(13)の前面及び前記端部材(14,74)の前面に設けられ、
前記スクリーン(11)の側端が前記端部材(14,74)の端部に一致した状態で、前記スクリーン(11)の上端が前記面ファスナ(21)を介して前記ヘッドレール(13)の前面及び前記端部材(14,74)の前面に取付けられ、
前記スクリーン(11)昇降用の操作チェーン(33)を前記端部材(14,74)に出入りさせるチェーン用窓(14a)が前記端部材(14,74)の前面下部から下面にわたって形成され、
前記面ファスナ(21)の端部材用帯状板(21b)が係合する端部材用フック(14b、14c)が前記端部材(14,74)の前記チェーン用窓(14a)の上方に位置するように前記端部材(14,74)の前面に設けられた
ことを特徴とする日射遮蔽装置のスクリーン取付構造。」(下線は、本願補正発明に対する補正箇所を示す。)

しかし、刊行物1発明は「面ファスナ2が・・・巻取りユニット4の前面に設けられ」る構成を備えるため、端部材用フックが設けられる位置を端部材の「前面」とすることは、刊行物1発明に上記3(4)に記載した慣用技術を適用した発明が当然備える構成である。
したがって、上記補正案の請求項1に係る発明は、上記3(4)に記載したとおり当業者が刊行物1発明及び慣用技術、又は、刊行物1発明、刊行物2技術及び慣用技術に基いて容易に発明をすることができたものである。
よって、補正の機会が制限されていることにも鑑みれば、拒絶の理由を通知する必要性は認められない。


5 補正却下の決定についてのむすび

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成26年5月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]の「1 補正の内容」における「本件補正前」に記載したとおりである。


2 対比・判断

本願発明は、上記第2で検討した本願補正発明から、「スクリーン(11)の上端が前記面ファスナ(21)を介して前記ヘッドレール(13)の前面及び前記端部材(14,74)の前面に取付けられ」に係る限定事項である「スクリーン(11)の側端が前記端部材(14,74)の端部に一致した状態で、」取付けられることを省き、同様に、「チェーン用窓(14a)が」「形成され」る「端部材(14,74)の」「下部」に係る限定事項である「前面下部から下面にわたって」を省いたものである。

そうすると、本願発明の特定事項をすべて含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2の3(4)に記載したとおり、刊行物1発明及び慣用技術、又は、刊行物1発明、刊行物2技術及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、本件補正で限定された事項に係る判断を除き同様の理由により、当業者が刊行物1発明及び慣用技術、又は、刊行物1発明、刊行物2技術及び慣用技術に基いて容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-28 
結審通知日 2016-07-05 
審決日 2016-07-21 
出願番号 特願2010-210381(P2010-210381)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A47H)
P 1 8・ 121- Z (A47H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 家田 政明  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 谷垣 圭二
住田 秀弘
発明の名称 日射遮蔽装置のスクリーン取付構造  
代理人 須田 正義  

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