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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1318857 |
審判番号 | 不服2015-21158 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-30 |
確定日 | 2016-09-01 |
事件の表示 | 特願2011-194833「硝材情報提供方法および硝材」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月28日出願公開、特開2013- 57540〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年9月7日にされた出願であって、平成27年3月26日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月28日付けで拒絶査定がなされ、その謄本は同年9月1日に請求人に送達された。 これに対し、平成27年11月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、それと同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成27年11月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成27年11月30日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の内容について (1)本件補正は、特許請求の範囲を全文にわたって補正するものであり、その補正の一部には、本件補正前の請求項6の記載を本件補正後の請求項3のとおりに補正する補正事項(以下、「本件補正事項」という。)を含むものである。 ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項6の記載 「【請求項6】 光学ガラスの形成材料となる硝材であって、 前記硝材の化学的耐久性に関する情報として、前記硝材が浸漬される処理液の水素イオン濃度指数の変化が前記処理液に浸漬された前記硝材における所定種類の化学的耐久性指標値に与える影響を把握できるように、前記水素イオン濃度指数の変化と前記化学的耐久性指標値の変化との対応関係が、視認可能な態様で図表化された状態で、前記硝材の硝種毎に個別に添付されている ことを特徴とする硝材。」 イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項3の記載 「【請求項3】 光学ガラスの形成材料となる硝材であって、 前記硝材の化学的耐久性に関する情報として、前記硝材が浸漬される処理液の水素イオン濃度指数の変化が前記処理液に浸漬された前記硝材における所定種類の化学的耐久性指標値に与える影響を把握できるように、前記水素イオン濃度の変化と前記化学的耐久性指標値の変化との対応関係が、視認可能な態様で図表化されてなる図表化情報が掲載された紙媒体または前記図表化情報が電子化されて格納された記憶媒体の少なくとも一方が、商品構成要素の一部として前記硝材の硝種毎に個別に添付されている ことを特徴とする硝材。」(下線は、本件補正による補正箇所を示す。) (2)本件補正の目的について 本件補正事項は、本件補正前の請求項6において特定されている「前記硝材の化学的耐久性に関する情報」として、「水素イオン濃度指数の変化」と「化学的耐久性指標値の変化との対応関係が、視認可能な態様で図表化された状態」で、「硝材の硝種毎に個別に添付されている」ものについて、「図表化情報が掲載された紙媒体または前記図表化情報が電子化されて格納された記憶媒体の少なくとも一方」であること、及び、当該情報が硝材の硝種毎に個別に添付されている態様として「商品構成要素の一部として添付される」ものであることをさらに特定するものである。 してみると、本件補正事項における補正は、硝材に添付される情報は、「図表化情報が掲載された紙媒体」、又は「図表化情報が電子化されて格納された記憶媒体」の形で添付されることを特定し、限定するとともに、それが「商品構成要素の一部として添付される」ものであることを特定し、限定するものであって、それにより、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が変更されるものでもないから、本件補正事項による補正の目的は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものである。 そこで、本件補正後の請求項3に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 2 独立特許要件についての検討 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)イにおいて摘示したとおりの発明特定事項により特定されるものである。 (2)引用例 ア 原査定の拒絶の理由の引用文献2として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-10477号公報(以下、「引用例1」という。)には、つぎの事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 無鉛、無砒素のショートフリント特殊ガラスであって、 屈折率が1.60≦nd≦1.65、アッベ数が41≦νd≦52、青色分光領域での相対部分分散が0.551≦PgF≦0.570、赤色分光領域での相対部分分散が0.507≦PCs≦0.525、相対部分分散の標準線からのマイナスの偏差がΔPg,F≦-0.0045であり、改良された化学安定性を有し、以下の組成(重量%): 【外1】 を有することを特徴とする無鉛、無砒素のショートフリント特殊ガラス。」 (イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、無鉛かつ無砒素のショートフリント特殊ガラスに関するものである。」 (ウ)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の課題は、その光学状態に基づいてショートフリント特殊ガラスに分類され、化学的に安定で、例えば光学部品を製造する際に良好で精密な加工性を示す無鉛かつ無砒素のガラスを提供することである。特にこの新しいガラスは安価に製造することも可能である。」 (エ)「【0005】 【課題を解決するための手段】 かかる課題は、本願特許請求の範囲の請求項1に記載のすべての特徴を有する無鉛、無砒素のショートフリント特殊ガラスにより解決される。その好ましい製造方法は請求項6に記載されている。本発明の好ましい実施形態は、各従属形式請求項にも記載されている。」 (オ)「【0032】 本発明のガラスの化学安定性は、耐酸性ISO8424、耐アルカリ性ISO/DIN10629と耐スペック(speck)性(光学ガラスの耐スペック性を測定するためのショット内部法-AAW FTA-3-5422による応力、判定および分類)で、実施例の間でもはや差異なく測定できたほど良好である。本発明のすべてのガラスについて次のことがあてはまる。 耐酸性:等級1、0.1μmの除去+に必要な時間>100時間、 耐アルカリ性:等級1、0.1μmの除去に必要な時間>4時間、 耐スペック性:等級0、pH:4.6、100時間での磨耗層<0.08μm」 イ 引用例1に記載された発明 (ア)上記ア(エ)には、引用例1に記載の「ガラス」が、「光学部品を製造する際に良好で精密な加工性を示す無鉛かつ無砒素のもの」を提供するためのものであることが記載されており、同(エ)によれば、そのためのガラスは、請求項1において特定されるガラスであることが記載され、さらに、同(オ)によれば、そのようなガラスの化学安定性、すなわち化学的耐久性に関する情報が記載されている。 (イ)以上のことからすれば、引用例1には、「光学部品を製造する際に良好で精密な加工性を示す、無鉛、無砒素のショートフリント特殊ガラス」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「光学部品を製造する際に良好で精密な加工性を示す、無鉛、無砒素のショートフリント特殊ガラス」は、光学部品を製造する材料となるガラス材料であるから、本願発明の「光学ガラスの形成材料となる硝材」と言い得るものである。 ここで、本願発明の「硝材」に関しては、本願の図1において、実施例1ないし18としての硝材が図示され、図2には、そのうちの実施例1(FDS18)及び実施例16(M-FCD1)についての図が特に示されており、それらには、各実施例のpHと重量変化値、ヘーズ値の特定がされたものが示され、発明の詳細な説明の段落【0052】ないし【0062】において「FDS18」及び「M-FCD1」について例示して説明がされているものの、それらの記載には、本件補正発明として特定されている「硝材」に関する定義が特にされているわけではないから、本願発明の「硝材」は、「光学ガラスの形成材料となる硝材」一般を特定しているものというほかない。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、つぎの一致点で一致し、つぎの相違点で一応相違するものである。 <一致点> 「光学ガラスの形成材料となる硝材」 <相違点> 本件補正発明が「前記硝材の化学的耐久性に関する情報として、前記硝材が浸漬される処理液の水素イオン濃度指数の変化が前記処理液に浸漬された前記硝材における所定種類の化学的耐久性指標値に与える影響を把握できるように、前記水素イオン濃度の変化と前記化学的耐久性指標値の変化との対応関係が、視認可能な態様で図表化されてなる図表化情報が掲載された紙媒体または前記図表化情報が電子化されて格納された記憶媒体の少なくとも一方が、商品構成要素の一部として前記硝材の硝種毎に個別に添付されている」ことが特定されているのに対して、引用発明は、そのような特定がされない点 (4)相違点についての検討 ア 本件補正発明は、その末尾によれば「硝材」という物の発明である。 これに対して、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項は、「硝材」の「化学的耐久性に関する情報」が「図表化情報」として「掲載された紙媒体」又は「格納された記憶媒体」が「商品構成要素の一部として」「硝材の硝種毎に個別に添付されている」ことが特定されるものであるところ、ここでの「商品構成要素の一部として」「添付されている」「紙媒体」や「記憶媒体」が「硝材」とは別の物であることは明らかであるし、「硝材」がその構成要素として「紙媒体」や「記憶媒体」を備えるものでないこともまた、技術常識に鑑みれば明らかであるから、当該発明特定事項は、本件補正発明の「硝材」が、当該「紙媒体」や「記憶媒体」とあわせた「商品構成」で流通するものであるということ、すなわち「硝材」の用途を特定しようとするものであると解するか、あるいは、当該「硝材」が「商品構成要素」の一部をなすものであることを特定しようとするものであると解するのが相当である。 そして、ある硝材が、そのような「紙媒体」や「記憶媒体」が添付される「商品構成」で流通、販売がされる場合と、そのような紙媒体や記憶媒体が添付されずに「硝材」単独で流通、販売される場合との間において、「硝材」そのものの具体的な構造や、「硝材」が奏する作用効果が異ならないことは明らかである。 してみると、上記相違点は、「硝材」という物の特定において実質的な相違をもたらすものではないから、本件補正発明と引用発明の間に差異は見出せない。 イ 請求人は、本件補正発明が「紙媒体」または「記憶媒体」が添付されれた「硝材」であることが特定されていることを理由に、本件補正発明が「硝材」に添付された「紙媒体」または「記憶媒体」を備えるものであるのに対して、引用発明が「紙媒体」または「記憶媒体」を備えていない点で相違する旨主張しているが、「硝材」という物の発明である本件補正発明が、そのように特定されないことは上記のとおりであるから、請求人の主張を採用することはできない。 (4)小括 上記で検討したとおり、本件補正発明と引用発明との間には差異は見出せないから、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本件補正発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成27年6月1日にされた手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであって、そのうち請求項6に係る発明は、上記第2の1(1)アにおいて説示したとおりのものである。(以下、請求項6に係る発明を「本願発明」という。) 2 引用例及びその記載事項 原査定で引用された引用例1に記載の事項及び引用発明は、上記第2の2(2)において説示し、認定したとおりである。 3 本願発明と引用発明1との対比・判断 上記第2の2で検討した本件補正発明は、本願発明の「前記硝材の化学的耐久性に関する情報」として、「水素イオン濃度指数の変化」と「化学的耐久性指標値の変化との対応関係が、視認可能な態様で図表化された状態」で、「硝材の硝種毎に個別に添付されている」ものについて、「図表化情報が掲載された紙媒体または前記図表化情報が電子化されて格納された記憶媒体の少なくとも一方」であること、及び、当該情報が硝材の硝種毎に個別に添付されている態様として「商品構成要素の一部として添付される」ものであることをさらに特定するものであるから、本願発明1は、本件補正発明を包含するものであるし、上記第2の2(4)アで検討したように、「硝材」に添付される「硝材の化学的耐久性に関する情報」についての当該特定事項が、本願発明の「硝材」そのものの具体的な構造やそれが奏する作用効果に影響するものとはいえないことに鑑みれば、本願発明は、本件補正発明と同様、上記第2の2において検討した本件補正発明が独立特許要件を具備しないとする理由と同様の理由により、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 4 むすび 上記で検討したように、本願発明と本願出願前に頒布された引用例1に記載された発明(引用発明)との間に差異は見出せないから、本願発明は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない 。 したがって、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-07-01 |
結審通知日 | 2016-07-05 |
審決日 | 2016-07-20 |
出願番号 | 特願2011-194833(P2011-194833) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01N)
P 1 8・ 113- Z (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 海野 佳子、萩田 裕介、磯田 真美 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
尾崎 淳史 田中 洋介 |
発明の名称 | 硝材情報提供方法および硝材 |
代理人 | 奥山 知洋 |
代理人 | 福岡 昌浩 |
代理人 | 阿仁屋 節雄 |
代理人 | 橘高 英郎 |