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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1319053
審判番号 不服2014-11182  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-12 
確定日 2016-09-07 
事件の表示 特願2009-170719号「熱交換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月 4日出願公開,特開2010- 25542号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成21年7月22日(パリ条約による優先権主張2008年7月23日,米国 2008年11月19日,米国)の出願であって,平成25年6月7日付けで通知された拒絶の理由に対して,平成25年10月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成26年2月5日付けで拒絶査定され,これに対して平成26年6月12日に審判請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成26年6月12日に提出された手続補正書により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下,「本願発明」という。)と認められる。
「気相または液相の流体が圧送されてツーウェイ流体として流れる二流路と、
前記二流路の各両端の四個の流体口(a)、(b)、(c)、(d)と、
流体を圧送して前記流体口のうちの二個から送入し、他の二個から排出する二方向流体ポンピング装置(123)とを有し、
前記二流路を流れる流体との吸熱、放熱により、二流体間での熱交換機能を有する熱交換体(100)をその内部に備える熱交換装置(1000)であって、
前記四個の流体口のうち、前記熱交換装置(1000)の片側に設置される流体口(a)と流体口(d)は同じ空間へ通じる所或いは物体に接続され、前記熱交換装置(1000)の他側に設置される流体口(c)及び流体口(b)は温度差を有する別の空間へ通じる所或いは物体に接続され、
方向変更制御装置(250)は、
流体口(a)から熱交換体(100)を通って流体口(b)に連通する第一流路と、流体口(c)から熱交換体(100)を通って流体口(d)に連通する第二流路とを流れるツーウェイ流体の流向が常に互いに反対方向となるように維持しつつ、ツーウェイ流体の流向を周期的に正逆方向に変更するように前記二方向流体ポンピング装置(123)のポンピング方向を周期的に変更し、それによって、流体と前記熱交換体(100)の間の温度分布状態を適時に変更させ、
前記熱交換体(100)に更に浸透式や吸着式の吸湿材料を挟込むか塗布し、或いは前記熱交換体(100)自体が吸湿機能を兼ね備えることにより、全熱交換体(200)として構成することができ、熱交換機能に加えて、流体との湿度吸収、放出により除湿機能を有することができ、
それによって、流体と前記全熱交換体(200)の間の湿度分布状態を更に適時に変更させることが可能であり、
前記熱交換装置(1000)の両側に二個の二方向流体ポンプ(140)を設置して二方向流体ポンピング装置(123)を構成することにより、気相または液相の流体をポンピングし、
前記二個の二方向流体ポンプ(140)を制御することによって、前記二方向流体ポンピング装置(123)のポンピング方向を周期的に変更する方向変更制御装置(250)を設け、
前記二個の二方向流体ポンプ(140)は、正圧で流体を推進させる機能或いは負圧で流体を吸引させる機能で作動し、或いは正圧または負圧を発生する段階を含み、互いに反対方向に流体をポンピングし、
その駆動電源(300)は、個別に電力モータを設置するか、或いは電力モータを共用することができ、
前記二方向流体ポンピング装置(123)は、前記方向変更制御装置(250)の制御により、
1.正逆反転によって流体ポンピングの流向を周期的に変更し、或いは、
2.周期的に、個別同時にポンピング方向を変更し、
前記二方向流体ポンピング装置(123)と前記熱交換装置(1000)は一体構造または分離構造で構成され、
前記電源(300)は、交流或いは直流の市内電源システム或いは独立した電気エネルー供給装置から電源エネルギーを供給されて、駆動電源を供給し、
前記熱交換装置(1000)の内部に、前記二流路、及び前記二流路を流れる流体との吸熱、放熱により、二流体間での熱交換機能を有する前記熱交換体(100)を有し、
前記方向変更制御装置(250)は、メカトロニクスコンポーネント、固体電子回路コンポーネントまたはマイクロプロセッサ及び関連ソフトウェア及び制御インターフェースによって構成され、前記二個の二方向流体ポンプ(140)を制御し、前記熱交換装置(1000)を流れるツーウェイ流体の各流向を周期的に変更することによって、流体と前記熱交換体(100)間の温度分布状態を制御し、
圧送する流体の温度変化を直接或いは間接に測定できる位置に、少なくとも一個の温度測定装置(11)を設置し、
流体の流向を周期的に変更する時機は、前記温度測定装置(11)の測定信号を参照して流体の流向の周期的変更時期を制御することを特徴とする熱交換装置。」

3 引用刊行物等
本願の優先日の前に日本国内において頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-187403号公報(以下,「引用例」という。)には次の事項が記載されている。

(ア) 「【0016】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、外気を室内へ供給する給気流路と、室内空気を室外へ排出する排気流路とを有するデシカント換気システムにおいて、
熱伝導性を有し空気や水分を透過しない伝熱シートを介して前記給気流路と排気流路とが隣接配置されるとともに、前記伝熱シートの両面にそれぞれ流通空気と接触可能に除湿材が配設された水分吸脱装置部を備え、前記伝熱シートの一方の面側で流通空気の除湿がなされると同時に、他方の面側で流通空気の加湿がなされる構成としたことを特徴とするデシカント換気システムが提供される。
【0017】
上記請求項1記載の本発明では、一方の面側の伝熱シートに配設された除湿材の吸湿熱(除湿材の水分吸着に伴う温度上昇)が、伝熱シートを介して他方の面側の伝熱シートに配設された除湿材へ供給可能となる。これにより流通空気の除湿がなされる側の除湿材は冷却され、流通空気に水分を脱着する側の除湿材は加熱されるようになる。この様に、特段の加熱手段や冷却手段を備えなくても、除湿材の温度を適正に保つことが可能となり、通過する空気の水分を効率よく吸脱着することが可能となる。」

(イ) 「【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明に係る換気システムの構成例を示した図である。
【0035】
本発明に係るデシカント換気システムDSは、外気6を室内へ供給する給気流路Sと、室内空気7を室外へ排出する排気流路Eとを有し、熱伝導性に優れ空気や水分を透過しない伝熱シート2を介して、前記給気流路Sに形成されたデシカント流路3Aと前記排気流路Eに形成されたデシカント流路3Bとが隣接配置されるとともに、前記伝熱シート2の両面にシリカゲル等の除湿材1A、1Bがそれぞれ配設された水分吸脱装置3と、前記給気流路Sに配設され、蓄熱体5Aを内蔵し流通空気の冷却又は加熱を行う蓄熱装置4Aと、前記排気流路Eに配設され、蓄熱体5Bを内蔵し流通空気の冷却又は加熱を行う蓄熱装置4Bとから主に構成される。なお、各流路には、給気、排気のためのファン(図示せず)が適宜配設される。
【0036】
前記給気流路Sは、前記水分吸脱装置3のデシカント流路3Aを通過した外気6が前記蓄熱装置4Aを経由した後に室内へ供給される流路構成とされ、前記排気流路Eは、前記蓄熱装置4Bを通過した室内空気7が前記水分吸脱装置3のデシカント流路3Bを経由した後に室外へ排出される流路構成とされる。この給気流路Sと排気流路Eとは交互に切り替えて運転されるようになっている。
【0037】
〔デシカント換気システムDSの構成〕
先ず、図1、図2に基づいて、デシカント換気システムDSの構成について詳述する。
【0038】
前記水分吸脱装置3は、金属材料や非金属材料など各種工業材料のうち熱伝導性を有し、空気や水分を透過しない材料によって構成された伝熱シート2を介して、給気流路Sに形成されたデシカント流路3Aと排気流路Eに形成されたデシカント流路3Bとが隣接配置されるとともに、前記伝熱シート2のデシカント流路3A側の面側に除湿材1Aが配設され、デシカント流路3B側の面側に除湿材1Bが配設された構造となっている。
【0039】
前記各デシカント流路3A、3Bは、除湿材1A、1Bの水分吸脱着効率や熱伝導などの点から、給気流路Sに形成された複数のデシカント流路3A、3A…と、排気流路Eに形成された複数のデシカント流路3B、3B…とが、伝熱シート2を介して交互に交差するように複数形成される構成とされていることが好ましい。この際、各デシカント流路3A、3Bの入口および出口には、それぞれ流通空気を一体化するための空気ヘッダー8A、8Bを備えるようにする。
【0040】
前記除湿材1には、従来より公知のシリカゲル、ゼオライト、高分子除湿材などを使用することができる。特に本発明では、これら各種除湿材の内、図3に示されるように、35℃等温吸着線図において、相対湿度約60%以上の湿度領域での最大吸湿量が相対湿度約30%以下の湿度領域での最大吸湿量の2倍以上のものとすることが望ましい。このような物性値を有する除湿材としては、特定量のカリウム塩型カルボシキル基を含有し、かつ架橋構造を有する有機高分子の吸放湿性重合体から構成される高分子除湿材、例えば特開2005-21840号公報に開示されるものを使用することができる。これによって、流通する空気の十分な除湿および加湿が可能になり、水分吸脱装置部3を小型化することも可能となる。
【0041】
前記伝熱シート2において給気流路S側の面側および排気流路E側の面側の両面に、粉粒状にしたシリカゲル等の除湿材が接着剤等により層状に固定されるか、あるいは除湿材をバインダーと混合した後に塗布するか、または粉粒状にしたシリカゲル等の除湿材と、通気性を確保するために例えば中空状に形成した充填物との混合物が、前記伝熱シート2の配設位置に隣接する各流路に前記伝熱シートと接するように充填されるとともに、その出入口を前記除湿材および充填物の外形寸法より小さな開口を有する通気性の膜または網により塞がれることによって配設されている。このようにして伝熱シート2の両面に配設された除湿材は、一方の面側に配設された除湿材によって流通空気の除湿がなされると同時に、他方の面側に配設された除湿材によって流通空気の加湿がなされるようになっている。伝熱シート2の一方の面側に配設された除湿材の吸湿熱(除湿材の水分吸着に伴う温度上昇)は、伝熱シート2を熱伝導して他方の面側の除湿材を加熱して、この除湿材の水分脱着作用を促進させている。
【0042】
前記伝熱シート2は、前述のように一方の面側に配設された除湿材の吸着熱を他方の面側の除湿材に効率よく伝導させるため、鉄鋼材料や非鉄鋼材料の金属材料または非金属材料など各種工業材料のうち熱伝導性に優れたもの、好ましくは、熱伝導率170kcal/mh℃以上である材料を使用する。また、一方の流路を流通する流通空気やそれに含まれる水分が他方の流路に流入するのを防止するため、前記伝熱シート2は、空気や水分を透過しない材料を使用する。
【0043】
一方、前記蓄熱装置4A、4Bは、それぞれ蓄熱性能に優れたペブル状の顕熱蓄熱体5A、5Bが内蔵され、流通空気との温度交換がなされるようになっている。」

(ウ) 「【0047】
先ず、給気流路Sにおいては、図4に示されるように、外気6(約33℃、約60%RH)が水分吸脱装置3のデシカント流路3A、3A…に導かれ、内蔵する除湿材1A、1A…と接触して除湿された後(約38℃、約30%RH)、蓄熱装置4Aへ送られる。蓄熱装置4Aに導入された流通空気は、ペブル状蓄熱体5Aと接触し、流下するにしたがい低温化(保持する顕熱を蓄熱体5Aに与える)し、最終的に目的温度である26℃程度まで冷却された後(約26℃、約60%RH)に室内へ供給される。
【0048】
次に、排気流路Eにおいては、室内空気7(約26℃、約50%RH)が蓄熱装置4Bに導かれ、ペブル状蓄熱体5Bと接触して、流下するにしたがい高温化(蓄熱体5Bから顕熱を奪う)した後(約38℃、約25%RH)、水分吸脱装置3へ送られる。水分吸脱装置3のデシカント流路3B、3B…に導入された流通空気は、内蔵する除湿材1B、1B…から水分を乾燥(再生)した後(約39℃、約40%RH)、外部へ排出される。
【0049】
ここで、給気流路Sにおける除湿材1Aの水分吸着に伴って上昇した温度は、前記除湿材1Aに接触する伝熱シート2を介して、排気流路Eにおける除湿材1Bに熱伝導される。これによって、排気流路Eにおける除湿材1Bは、温度上昇して、吸着した水分の乾燥(再生)が促進されるようになる。
【0050】
上述の給気流路Sと排気流路Eの流路構成による運転に伴って、給気流路Sに配設された除湿材1Aには多量の水分が吸着されるとともに、蓄熱体5Aは高温化する。その後、流路を相互に切り替えて運転することによって、給気流路Sに配設された除湿材1Aおよび蓄熱体5Aの再生が可能となる。流路が切り替わることによって、これまでの給気流路Sが排気流路Eとなり、これまでの排気流路Eが給気流路Sとなるとともに、給気流路Sで流通空気の除湿を行っていた除湿材1Aおよび流通空気の冷却を行っていた蓄熱体5Aは、それぞれ流通空気に水分および熱を脱着する除湿材1B、蓄熱体5Bとして作用するようになる。
【0051】
この流路の切り替えは、給気流路Sまたは排気流路Eにおける流通空気の温度および湿度を測定する測定装置と、これら測定値に基づき、前記給気流路Sと排気流路Eとの流通経路を切り替える制御手段とによって構成される流路制御手段(図示せず)によって行われる。なお、前記測定装置は、流路の制御性、装置の取付け、メンテナンスの容易性などの点から、排気流路Eの空気流路下流に設置することが好ましい。
【0052】
なお、前記流路の切り替えは、例えば各流路に配設された給気、排気のためのファン(図示せず)の正逆回転を切り替えることによって行われるようにすることができる。」

(エ) 図1にはデシカント換気システムDSの構成概要図が示され,図2には水分吸脱装置3の流路構成を表した一部透過概略図が示され,図4には夏季の運転時における流路構成と,各部の温度と湿度,空気中の水分量の状態を示した図が示されている。

(オ) 図1の図示内容から,デシカント換気システムDSの水分吸脱装置3の給気流路Sと排気流路Eは,給気流路の入口・出口と排気流路の入口・出口の,合計で四個の入口および出口を水分吸脱装置の両端に有するといえ,これら合計四個の給気流路の入口・出口と排気流路の入口・出口のうち,水分吸脱装置の片側に設置される給気流路の入口と排気流路の出口は外気6へ通じる流路に接続され,水分吸脱装置の他側に設置される排気流路の入口と給気流路の出口は蓄熱装置4A,4Bを介して室内空気7へ通じる流路に接続されるといえる。また,水分吸脱装置の流通空気は,水分吸脱装置の給気流路の入口から給気流路の出口に導かれる給気流路のデシカント流路3Aと,排気流路の入口から排気流路の出口に導かれる排気流路のデシカント流路3Bを流通するといえる。さらに,図4の図示内容から,夏季の運転時には,外気は約33°Cで室内空気は約26°Cであって,外気と室内空気とは温度差を有しているといえる。したがって,デシカント換気システムの水分吸脱装置の片側に設置される給気流路の入口と排気流路の出口は外気へ通じる流路に接続され,デシカント換気システムの水分吸脱装置の他側に設置される排気流路の入口と給気流路の出口は室内空気へ通じる流路に接続され,その外気と室内空気とは温度差を有しているといえる。

これらの事項によれば,引用例には次の発明が記載されていると認めることができる(以下,この発明を「引用発明」という。)。

「空気がファンにより送られて室内へ供給される空気と室外へ排出される空気として流通する水分吸脱装置の給気流路と排気流路と,
前記水分吸脱装置の給気流路と排気流路の,水分吸脱装置の各両端の合計四個の給気流路の入口・出口と排気流路の入口・出口と,
空気をファンにより送って前記水分吸脱装置の給気流路の入口・出口と排気流路の入口・出口のうちの二個の入口から供給し,他の二個の出口から排出する,正逆回転を切り替えるファンとを有し,
熱伝導性を有し,空気や水分を透過しないものであって,一方の面側から他方の面側へ熱を熱伝導し,一方の流路を流通する流通空気やそれに含まれる水分が他方の流路に流入するのを防止する伝熱シートを内蔵するデシカント換気システムの水分吸脱装置であって,
前記四個の給気流路の入口・出口と排気流路の入口・出口のうち,前記デシカント換気システムの水分吸脱装置の片側に設置される給気流路の入口と排気流路の出口は外気へ通じる流路に接続され,前記デシカント換気システムの水分吸脱装置の他側に設置される排気流路の入口と給気流路の出口は室内空気へ通じる流路に接続され,外気と室内空気とは温度差を有し,
流路制御手段は,
水分吸脱装置の給気流路の入口から給気流路の出口に導かれる給気流路のデシカント流路と,排気流路の入口から排気流路の出口に導かれる排気流路のデシカント流路とを流通する,室内へ供給される空気と室外へ排出される空気の,給気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えて運転するように前記正逆回転を切り替えるファンの正逆回転を切り替え,
前記伝熱シートの給気流路側の面側および排気流路側の面側の両面に,粉粒状にしたシリカゲル等の除湿材を接着剤等により層状に固定するか,あるいは除湿材をバインダーと混合した後に塗布するか等で配設した,熱伝導と水分吸脱とを行う伝熱シートと除湿材とによって,熱伝導と水分吸脱による除湿とがなされることができ,
前記デシカント換気システムの各流路に正逆回転を切り替えるファンを配設して,空気をファンにより送り,
前記デシカント換気システムの各流路に配設された正逆回転を切り替えるファンの,正逆回転を切り替える流路制御手段を配設し,
前記正逆回転を切り替えるファンは,前記流路制御手段の正逆回転の切り替えにより,正逆回転の切り替えによって給気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えて運転し,
前記デシカント換気システムの水分吸脱装置に内蔵して,前記給気流路と排気流路,及び一方の面側から他方の面側へ熱を熱伝導する前記伝熱シートを配設し,
流路制御手段は,前記デシカント換気システムの各流路に配設された正逆回転を切り替えるファンの正逆回転を切り替えて,前記デシカント換気システムの水分吸脱装置を流通する室内へ供給される空気と室外へ排出される空気の給気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えることによって,これまでの給気流路が排気流路となり,これまでの排気流路が給気流路となり,
ファンにより送られる空気の排気流路の空気流路下流に,流通空気の温度および湿度を測定する測定装置を設置し,
空気の給気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えるのは,前記流通空気の温度および湿度を測定する測定装置の測定値に基づき空気の給気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えて運転するように正逆回転を切り替えるファンの,正逆回転を切り替えることであるデシカント換気システムの水分吸脱装置。」

4 対比・判断
(ア) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

本願発明の「気相または液相の流体」について,例えば,本願明細書の【0004】には「空気」が本願発明の「気相または液相の流体」として例示されている。そうすると,引用発明の「空気」は本願発明の「気相または液相の流体」及び「流体」に相当する。

一般的な「ポンプ」及び「ファン」に係る技術的事項からして,本願発明の「二方向流体ポンプ」と引用発明の「正逆回転を切り替えるファン」とは,ともに「流体機械」の概念で共通している。また,引用発明の「正逆回転を切り替えるファン」は,その正逆回転を切り替えると作動流体の流れの方向は逆転するから,二方向ファンといえる。そうすると,結局,本願発明の「二方向流体ポンプ」と引用発明の「正逆回転を切り替えるファン」とはともに「二方向流体機械」の概念で共通している。また,本願発明の「二方向流体ポンプを制御」する態様と引用発明の「正逆回転を切り替えるファンの正逆回転を切り替え」る態様とは、ともに「二方向流体機械を制御」する概念で共通している。

本願発明の「二流路の各両端の四個の流体口(a)、(b)、(c)、(d)」の詳細について,本願明細書の【0004】の寒冬に室内の空気を室外に排出する熱交換装置の例の記載を参酌すると,四個の流体口は,流体口aから室内の気流を熱交換装置1000へ圧送して流体口bより室外へ排出し,流体口cより室外から空気を熱交換装置1000へ圧送して流体口dより排出するものである。これらをふまえると,引用発明の水分吸脱装置の給気流路と排気流路の各両端の合計四個の給気流路の入口・出口と排気流路の入口・出口については,それぞれ詳細には,引用発明の「給気流路の入口」は本願発明の「流体口(c)」に相当し,以下同様に,「給気流路の出口」は「流体口(d)」に,「排気流路の入口」は「流体口(a)」に,「排気流路の出口」は「流体口(b)」に,それぞれ相当するといえる。

両発明の機能・構造からして,引用発明の「ファンにより送られて」及び「ファンにより送って」の態様はそれぞれ本願発明の「圧送されて」及び「圧送して」の態様に相当し,以下同様にして,「室内へ供給される空気と室外へ排出される空気」は「ツーウェイ流体」に,「流通する」態様は「流れる」態様に,「水分吸脱装置の給気流路と排気流路」は「二流路」に,「水分吸脱装置の給気流路と排気流路の各両端の合計四個の給気流路の入口・出口と排気流路の入口・出口」及び「給気流路の入口・出口と排気流路の入口・出口」はそれぞれ「二流路の各両端の四個の流体口(a)、(b)、(c)、(d)」及び「流体口」に,「供給」は「送入」に,「ファン」は流体を圧送する装置といえ,すなわち,「ポンピング装置」といえるから「前記水分吸脱装置の給気流路の入口・出口と排気流路の入口・出口のうちの二個の入口から供給し,他の二個の出口から排出する正逆回転を切り替えるファン」は「前記流体口のうちの二個から送入し、他の二個から排出する二方向流体ポンピング装置」に,「内蔵する」態様は「その内部に備える」態様に,「流路制御手段」は給気流路と排気流路とを切り替える観点において「方向変更制御装置」に,「室内へ供給される空気と室外へ排出される空気の給気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えて運転するよう」の態様は「ツーウェイ流体の流向が常に互いに反対方向となるように維持しつつ、ツーウェイ流体の流向を」「正逆方向に変更するよう」の態様に,「配設して」の態様は「設置して」の態様に,「ファンにより送り」の態様は流体を圧送するから「ポンピングし」の態様に,「正逆回転を切り替える」態様は「制御する」態様及び「ポンピング方向を」「変更する」態様に,「配設し」た態様は「設け」た及び「有し」た態様に,「内蔵して」の態様は「内部に」の態様に,「流路制御手段の正逆回転の切り替え」は「方向変更制御装置の制御」に,「空気の排気流路の空気流路下流に,流通空気の温度および湿度を測定する測定装置を設置し」た態様は「流体の温度変化を直接或いは間接に測定できる位置に、少なくとも一個の温度測定装置を設置し」た態様に,「流通空気の温度および湿度を測定する測定装置」は少なくとも「温度測定装置」に,「測定値に基づき」の態様は「測定信号を参照して」の態様に,それぞれ相当している。

引用発明の「伝熱シート」は「熱伝導性を有し,空気や水分を透過しないものであって,一方の面側から他方の面側へ熱を熱伝導し,一方の流路を流通する流通空気やそれに含まれる水分が他方の流路に流入するのを防止する」のであって,空気や水分を透過せず,一方の流路を流通する流通空気やそれに含まれる水分が他方の流路に流入するのを防止しており,その両面の除湿剤は流通空気と接触可能である(【0042】)ことから,流通空気は伝熱シートに接触可能であるといえる。そうすると,引用発明の「水分吸脱装置の給気流路の入口から給気流路の出口に導かれる給気流路のデシカント流路と,排気流路の入口から排気流路の出口に導かれる排気流路のデシカント流路」は,そこを流通する空気がそれぞれ伝熱シートに接触可能であるといえるので,「水分吸脱装置の給気流路の入口から伝熱シートに接触して給気流路の出口に導かれる給気流路のデシカント流路と,排気流路の入口から伝熱シートに接触して排気流路の出口に導かれる排気流路のデシカント流路」であるといえる。そして,上述のとおり,引用発明の水分給脱装置の給気流路のデシカント流路と排気流路のデシカント流路とを流通する空気がそれぞれ伝熱シートに接触可能であるといえることから,「伝熱シート」の両面を介して各流通する空気は熱交換し得るので,この引用発明の「伝熱シート」は,各流路間に熱を伝導し,二流路を流れる流体との吸熱,放熱により,二流体間での熱交換機能を有する熱交換体といえ,本願発明の「熱交換体」に相当するといえる。また,引用発明の「伝熱シート」は,吸湿熱を熱伝導し(【0017】,【0041】,【0049】),この吸湿熱は流通空気中の水分吸着に伴う凝縮熱であって流通空気が保有する熱であるから,流通空気間での熱交換機能を有する熱交換体といえ,この点からしても,引用発明の「伝熱シート」は本願発明の「熱交換体」に相当するといえる。
さらに,引用発明の「伝熱シート」は本願発明の「熱交換体」に相当するといえることをふまえると,引用発明の「伝熱シートを内蔵するデシカント換気システムの水分吸脱装置」は熱交換体を内蔵するのであるから,本願発明の「熱交換体をその内部に備える熱交換装置」に相当する。
そして,先述の引用発明の「水分吸脱装置の給気流路の入口から給気流路の出口に導かれる給気流路のデシカント流路と,排気流路の入口から排気流路の出口に導かれる排気流路のデシカント流路」において,「導かれる」態様は本願発明の「連通する」態様に相当し,同様に「給気流路のデシカント流路」は「第二流路」に,「排気流路のデシカント流路」は「第一流路」にそれぞれ相当するから,結局,引用発明の「水分吸脱装置の給気流路の入口から給気流路の出口に導かれる給気流路のデシカント流路と,排気流路の入口から排気流路の出口に導かれる排気流路のデシカント流路」は,本願発明の「流体口(a)から熱交換体を通って流体口(b)に連通する第一流路と、流体口(c)から熱交換体を通って流体口(d)に連通する第二流路」に相当する。

先述のとおり,引用発明の「伝熱シート」は本願発明の「熱交換体」に相当するといえることをふまえると,引用発明の「伝熱シートの給気流路側の面側および排気流路側の面側の両面に,粉粒状にしたシリカゲル等の除湿材が接着剤等により層状に固定するか,あるいは除湿材をバインダーと混合した後に塗布するか等で配設した」態様は本願発明の「熱交換体に更に浸透式や吸着式の吸湿材料を挟込むか塗布し,或いは前記熱交換体自体が吸湿機能を兼ね備える」態様に相当するといえる。同様に,引用発明の「デシカント換気システムの水分吸脱装置」は本願発明の「熱交換装置」に相当するといえることをふまえると,引用発明の「デシカント換気システムの水分吸脱装置の片側に設置される給気流路の入口と排気流路の出口は外気へ通じる流路に接続され,デシカント換気システムの水分吸脱装置の他側に設置される排気流路の入口と給気流路の出口は室内空気へ通じる流路に接続され,外気と室内空気とは温度差を有」する態様は本願発明の「熱交換装置の片側に設置される流体口(a)と流体口(d)は同じ空間へ通じる所或いは物体に接続され、前記熱交換装置の他側に設置される流体口(c)及び流体口(b)は温度差を有する別の空間へ通じる所或いは物体に接続され」る態様に相当するといえる。

同じく,先述のとおり,引用発明の「デシカント流路」は本願発明の「第一流路」と「第二流路」とに相当することをふまえると,引用発明の「水分吸脱装置の給気流路の入口から給気流路の出口に導かれる給気流路のデシカント流路と,排気流路の入口から排気流路の出口に導かれる排気流路のデシカント流路とを流通する,室内へ供給される空気と室外へ排出される空気の,給気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えて運転するように前記正逆回転を切り替えるファンの正逆回転を切り替え」る態様は,本願発明の「流体口(a)から熱交換体を通って流体口(b)に連通する第一流路と、流体口(c)から熱交換体を通って流体口(d)に連通する第二流路とを流れるツーウェイ流体の流向が常に互いに反対方向となるように維持しつつ、ツーウェイ流体の流向を」「正逆方向に変更するように前記二方向流体ポンピング装置のポンピング方向を」「変更」する態様に相当するといえる。

また,先述のとおり,引用発明の「流路制御手段」は給気流路と排気流路とを切り替える観点において本願発明の「方向変更制御装置」に相当し,引用発明の「伝熱シート」は本願発明の「熱交換体」に相当することをふまえると,引用発明は給気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えることによって,「これまでの給気流路が排気流路となり,これまでの排気流路が給気流路となり」,本願発明と同様に「それによって,空気と伝熱シートの間の温度分布状態を変更させ」,同様に「空気と伝熱シートの間の温度分布状態を制御」するものといえると共に,本願発明の「それによって,流体と熱交換体の間の温度分布状態を」「変更させ」るものに相当し,同様に「流体と前記熱交換体間の温度分布状態を制御」するものに相当するといえる。

さらに,引用発明の「熱伝導と水分吸脱とを行う伝熱シートと除湿材とによって,熱伝導と水分吸脱による除湿とがなされる」態様は,本願発明の「熱交換機能に加えて、流体との湿度吸収、放出により除湿機能を有することができ」る態様に相当するといえる。

そして,引用発明の「デシカント換気システムの各流路に正逆回転を切り替えるファンを配設すること」は,デシカント換気システムを構成する水分吸脱装置の給気及び排気を行うべく二方向流体機械を配設することであり,その配設する正逆回転を切り替えるファンが二方向流体ポンピング装置となるのであるから,結局,本願発明の「熱交換装置の両側に二個の二方向流体ポンプを設置して二方向流体ポンピング装置を構成すること」と引用発明の「デシカント換気システムの各流路に正逆回転を切り替えるファンを配設すること」とは,「熱交換装置に二方向流体機械を設置して二方向流体ポンピング装置を構成すること」の概念で一致している。

また,本願発明の「ポンピング方向を周期的に変更する」の態様と引用発明の「正逆回転を切り替える」態様とは,「ポンピング方向を変更する」態様の概念で共通し,本願発明の「流体と熱交換体の間の温度分布状態を適時に変更させ」る態様と引用発明の「空気と伝熱シートの間の温度分布状態を変更させ」る態様とは,「流体と熱交換体の間の温度分布状態を変更させ」る態様の概念で共通していることからすると,本願発明の他に特定された「周期的に」(変更),「周期的」(変更)および「適時に」(変更)の態様を考慮すれば,結局,
本願発明の「方向変更制御装置は、」「ツーウェイ流体の流向を周期的に正逆方向に変更するように前記二方向流体ポンピング装置のポンピング方向を周期的に変更し、それによって、流体と前記熱交換体の間の温度分布状態を適時に変更させ、」「前記二個の二方向流体ポンプを制御することによって、前記二方向流体ポンピング装置のポンピング方向を周期的に変更する方向変更制御装置を設け、」「前記二方向流体ポンピング装置は、前記方向変更制御装置の制御により、1.正逆反転によって流体ポンピングの流向を周期的に変更し、或いは、2.周期的に、個別同時にポンピング方向を変更し、」「前記熱交換装置を流れるツーウェイ流体の各流向を周期的に変更することによって、流体と熱交換体間の温度分布状態を制御し、」「流体の流向を周期的に変更する時機は、温度測定装置の測定信号を参照して流体の流向の周期的変更時期を制御する」ことと,
引用発明の「流路制御手段は,」「室内へ供給される空気と室外へ排出される空気の吸気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えて運転するように前記正逆回転を切り替えるファンの正逆回転を切り替え,」「各流路に配設された正逆回転を切り替えるファンの,正逆回転を切り替える流路制御手段を配設し,前記正逆回転を切り替えるファンは,前記流路制御手段の正逆回転の切り替えにより,正逆回転の切り替えによって給気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えて運転し,」「各流路に配設された正逆回転を切り替えるファンの正逆回転を切り替えて,前記デシカント換気システムの水分吸脱装置を流通する室内へ供給される空気と室外へ排出される空気の吸気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えることによって,これまでの給気流路が排気流路となり,これまでの排気流路が給気流路となり,」「空気の給気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えるのは,前記流通空気の温度および湿度を測定する測定装置の測定値に基づき空気の給気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えて運転するように正逆回転を切り替えるファンの,正逆回転を切り替える」こととは,
「方向変更制御装置は,」「ツーウェイ流体の流向を正逆方向に変更するように二方向流体ポンピング装置のポンピング方向を変更し,それによって,流体と熱交換体の間の温度分布状態を変更させ,」「前記二個の二方向流体機械を制御することによって,前記二方向流体ポンピング装置のポンピング方向を変更する方向変更制御装置を設け,」「前記二方向流体ポンピング装置は,方向変更制御装置の制御により,1.正逆反転によって流体ポンピングの流向を変更し,或いは,2.個別同時にポンピング方向を変更し,」「前記熱交換装置を流れるツーウェイ流体の各流向を変更することによって,流体と熱交換体間の温度分布状態を制御し,」「流体の流向を変更する時機は,温度測定装置の測定信号を参照して流体の流向の変更時期を制御する」こと,の概念で一致している。

(イ) 一致点
以上のことを総合すると両者は,
「気相または液相の流体が圧送されてツーウェイ流体として流れる二流路と,
前記二流路の各両端の四個の流体口(a),(b),(c),(d)と,
流体を圧送して前記流体口のうちの二個から送入し,他の二個から排出する二方向流体ポンピング装置とを有し,
前記二流路を流れる流体との吸熱,放熱により,二流体間での熱交換機能を有する熱交換体をその内部に備える熱交換装置であって,
前記四個の流体口のうち,前記熱交換装置の片側に設置される流体口(a)と流体口(d)は同じ空間へ通じる所或いは物体に接続され,前記熱交換装置の他側に設置される流体口(c)及び流体口(b)は温度差を有する別の空間へ通じる所或いは物体に接続され,
方向変更制御装置は,
流体口(a)から熱交換体を通って流体口(b)に連通する第一流路と,流体口(c)から熱交換体を通って流体口(d)に連通する第二流路とを流れるツーウェイ流体の流向が常に互いに反対方向となるように維持しつつ,ツーウェイ流体の流向を正逆方向に変更するように前記二方向流体ポンピング装置のポンピング方向を変更し,それによって,流体と前記熱交換体の間の温度分布状態を変更させ,
前記熱交換体に更に浸透式や吸着式の吸湿材料を挟込むか塗布し,或いは前記熱交換体自体が吸湿機能を兼ね備えることにより,熱交換機能に加えて,流体との湿度吸収,放出により除湿機能を有することができ,
前記熱交換装置に二方向流体機械を設置して二方向流体ポンピング装置を構成することにより,気相または液相の流体をポンピングし,
前記二方向流体機械を制御することによって,前記二方向流体ポンピング装置のポンピング方向を変更する方向変更制御装置を設け,
前記二方向流体ポンピング装置は,前記方向変更制御装置の制御により,
1.正逆反転によって流体ポンピングの流向を変更し,或いは,
2.個別同時にポンピング方向を変更し,
前記熱交換装置の内部に,前記二流路,及び前記二流路を流れる流体との吸熱,放熱により,二流体間での熱交換機能を有する前記熱交換体を有し,
前記方向変更制御装置は,前記二方向流体機械を制御し,前記熱交換装置を流れるツーウェイ流体の各流向を変更することによって,流体と前記熱交換体間の温度分布状態を制御し,
圧送する流体の温度変化を直接或いは間接に測定できる位置に,少なくとも一個の温度測定装置を設置し,
流体の流向を変更する時機は,前記温度測定装置の測定信号を参照して流体の流向の変更時期を制御する熱交換装置。」
である点で一致し,次の点で相違している。

(ウ) 相違点
[相違点1]
本願発明では,「熱交換体に更に浸透式や吸着式の吸湿材料を挟込むか塗布し,或いは前記熱交換体自体が吸湿機能を兼ね備えることにより、全熱交換体として構成することができ、熱交換機能に加えて、流体との湿度吸収、放出により除湿機能を有することができ、それによって、流体と全熱交換体の間の湿度分布状態を更に」「変更させることが可能であ」るのに対し,引用発明では,「伝熱シートの給気流路側の面側および排気流路側の面側の両面に,粉粒状にしたシリカゲル等の除湿材を接着剤等により層状に固定するか,あるいは除湿材をバインダーと混合した後に塗布するか等で配設した,熱伝導と水分吸脱とを行う伝熱シートと除湿材とによって,熱伝導と水分吸脱による除湿とがなされる」ものの,「全熱交換体として構成することができ、」「それによって、流体と全熱交換体の間の湿度分布状態を更に」「変更させることが可能であ」るか不明である点。

[相違点2]
本願発明では,二方向流体機械が二方向流体ポンプであり,熱交換装置の両側に二個の二方向流体ポンプを設置して二方向流体ポンピング装置を構成し,「正圧で流体を推進させる機能或いは負圧で流体を吸引させる機能で作動し、或いは正圧または負圧を発生する段階を含み,互いに反対方向に流体をポンピング」するのに対し,引用発明では正逆回転を切り替えるファンであり,デシカント換気システムの各流路に正逆回転を切り替えるファンを設置し,そのファンが二方向流体ポンピング装置であって,「正圧で流体を推進させる機能或いは負圧で流体を吸引させる機能で作動し,或いは正圧または負圧を発生する段階を含み,互いに反対方向に流体をポンピング」するか不明である点。

[相違点3]
本願発明では,方向変更制御装置は,ツーウェイ流体の流向を「周期的に」正逆方向に変更するように二方向流体ポンピング装置のポンピング方向を「周期的に」変更し,それによって,流体と熱交換体の間の温度分布状態を「適時に」変更させ,
それによって,流体と全熱交換体の間の湿度分布状態を更に「適時に」変更させることが可能であり,
二方向流体ポンプである流体機械を制御することによって,二方向流体ポンピング装置のポンピング方向を「周期的に」変更する方向変更制御装置を設け,
二方向流体ポンピング装置は,方向変更制御装置の制御により,1.正逆反転によって流体ポンピングの流向を「周期的に」変更し,或いは,2.「周期的に」、個別同時にポンピング方向を変更し,
熱交換装置を流れるツーウェイ流体の各流向を「周期的に」変更することによって,流体と熱交換体間の温度分布状態を制御し,
流体の流向を「周期的に」変更する時機は,温度測定装置の測定信号を参照して流体の流向の「周期的」変更時期を制御するのに対し,引用発明ではこれらの変更について「周期的に」なされ「適時」になされるか不明である点。

[相違点4]
二方向流体機械の駆動源が,本願発明では「その駆動電源は、個別に電力モータを設置するか、或いは電力モータを共用することができ、」「電源は、交流或いは直流の市内電源システム或いは独立した電気エネルギー供給装置から電源エネルギーを供給されて、駆動電源を供給」するのに対し,引用発明では特段特定されていない点。

[相違点5]
二方向流体ポンピング装置と熱交換装置が,本願発明では「一体構造または分離構造で構成され」るのに対し,引用発明では特段特定されていない点。

[相違点6]
本願発明では「方向変更制御装置は、メカトロニクスコンポーネント、固体電子回路コンポーネントまたはマイクロプロセッサ及び関連ソフトウェア及び制御インターフェースによって構成され」るのに対し,引用発明では「流路制御手段」の構成について特段特定されていない点。

(エ) 相違点に対する当審の判断
[相違点1]について
引用発明の「伝熱シートの給気流路側の面側および排気流路側の面側の両面に,粉粒状にしたシリカゲル等の除湿材を接着剤等により層状に固定するか,あるいは除湿材をバインダーと混合した後に塗布するか等で配設した,熱伝導と水分吸脱とを行う伝熱シートと除湿材とによって,熱伝導と水分吸脱による除湿とがなされる」ものは,本願発明の「熱交換体に更に浸透式や吸着式の吸湿材料を挟込むか塗布し」,「熱交換機能に加えて、流体との湿度吸収、放出により除湿機能を有することができ」たものに相当するのであって,全熱(顕熱と潜熱)を交換できるものであり,本願発明の「全熱交換体として構成することができ、」「それによって、流体と全熱交換体の間の湿度分布状態を更に」「変更させることが可能であ」るものの機能を奏するといえるから,仮に,引用例において,蓄熱装置4A,4Bで顕熱交換が行われていることを考慮しても,引用発明をして,上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
一般に流体機械の作動流体は,ファンでは気体でありポンプでは気体又は液体等である点で相違するものの,ファンは一般に圧力差により送風するものであって,「正圧で流体を推進させる機能或いは負圧で流体を吸引させる機能で作動し,或いは正圧または負圧を発生する段階を含」むといえるし,引用発明のファンは給気・排気のためのものであって,当該機能を達成できれば足りるのであるから,これを流体ポンプとすることは当業者が容易に想到し得たことである。
さらに,引用発明の正逆回転を切り替えるファンはデシカント換気システムの給気,排気のため各流路に配設されるのであるから,各流路のどの箇所に配設するかは,設計者が適宜設定し得る設計事項といえる。そして,室内へ供給される空気と室外へ排出される空気の給気流路と排気流路を備えた熱交換装置の室内側と室外側の両側に二個のファンを設置することは本願の優先日の前に周知の事項である(必要であれば,特開平8-94124号公報(特に,段落【0015】及び図2の(イ),参照。),特開昭60-82733号公報(特に,6ページ右上欄8?17行並びに第4図及び第5図,参照。),特開昭60-80044号公報(特に,1ページ右下欄13?20行及び第1図,参照。),等参照。)。そうすると,引用発明の正逆回転を切り替えるファンの設置の具体化に際して,上記周知の技術を参酌し,デシカント換気システムの給気,排気のため各流路との位置としてデシカント換気システムの水分吸脱装置の両側とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。そして,水分吸脱装置の両側となる給気流路と排気流路に正逆回転を切り替えるファンを配設することで,互いに反対方向に流体をポンピングするものとすることは,給気,排気の機能から技術的に自明である。
以上のことからすると,引用発明をして,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3]について
引用発明は,「空気の給気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えるのは,前記流通空気の温度および湿度を測定する測定装置の測定値に基づき空気の給気流路と排気流路の流路構成の流路を相互に切り替えて運転するように正逆回転を切り替えるファンの正逆回転を切り替える」ものであり,その具体化に際しては,測定値に基づく切り替えのタイミングを設計者が切り替えとなる測定値を設定する等により適宜設定し得るから,周期的に,また,適時に切り替えるものとして,引用発明をして,上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点4]について
ファンの駆動源が,「その駆動電源は,個別に電力モータを設置するか,或いは電力モータを共用することができ,」「電源は,交流或いは直流の市内電源システム或いは独立した電気エネルー供給装置から電源エネルギーを供給されて,駆動電源を供給する」ものは,ファンの駆動源として,及び,電源として例示するまでもなく本願の優先日の前に周知の事項といえる。そして,引用発明のファンの具体化に際して,その駆動源について上記周知の事項を採用することで,引用発明をして,上記相違点4に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点5]について
引用発明の正逆回転を切り替えるファンとデシカント換気システムの水分吸脱装置との構造の関係は一体構造であるか分離構造であるかのどちらかであって,どのような形態であってもどちらかの形態となることは技術常識といえるから,上記相違点5は実質的な相違点ではない。

[相違点6]について
引用発明の流路制御手段を具体的にどのような構造とするかは,設計者が適宜設定し得る設計事項といえる。そして,制御装置として「メカトロニクスコンポーネント,固体電子回路コンポーネントまたはマイクロプロセッサ及び関連ソフトウェア及び制御インターフェースによって構成され」るものは,一般的な制御装置として例示するまでもなく本願の優先日の前に周知の事項といえる。そして,引用発明の流路制御手段の具体化において上記周知の事項を採用することで,引用発明をして上記相違点6に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

また,本願発明の全体構成により奏される効果は,引用発明及び周知の事項から予測し得る程度のものと認められる。

5 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-15 
結審通知日 2016-03-22 
審決日 2016-04-15 
出願番号 特願2009-170719(P2009-170719)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河内 誠仲村 靖  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 田村 嘉章
山崎 勝司
発明の名称 熱交換装置  
代理人 服部 雅紀  

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