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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1319098
審判番号 不服2015-9207  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-19 
確定日 2016-09-07 
事件の表示 特願2012-544585「電子デバイスにおけるデータファイルの削除方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月23日国際公開、WO2011/075323、平成25年 4月25日国内公表、特表2013-514735〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、2010年12月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年12月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年9月10日付けの拒絶理由通知に対し、平成26年12月9日付けで手続補正がなされたが、平成27年1月16日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、上記拒絶査定を不服として、平成27年5月19日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成27年5月19日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成27年5月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容

上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成26年12月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「方法であって、
キャプチャされた画像を画像キャプチャ装置のメモリに記憶するステップと、
前記記憶された画像のうち少なくとも一部の画像をリモート記憶装置に転送するステップと、
前記記憶された画像のうちどの画像が前記リモート記憶装置に成功裏に転送されたかを示すデータを、前記画像キャプチャ装置に記憶するステップと、
前記画像キャプチャ装置が所定の画像記憶容量に達したのに応じて、前記画像キャプチャ装置によって全て削除するプロンプトを与えるステップであって、前記全て削除するプロンプトは、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像を削除可能にするように構成される、プロンプトを与えるステップと、
前記プロンプトに応じて、ユーザインタフェースから、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されるとの表示を受け取るステップと、
前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されるとの表示の受け取りに応じて、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像を前記メモリから削除するステップと、を有する、方法。」

という発明を、平成27年5月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「方法であって、
キャプチャされた画像を画像キャプチャ装置のメモリに記憶するステップと、
前記記憶された画像のうち少なくとも一部の画像を、バックグラウンドタスクとしてRFリンクを介してリモート記憶装置に転送するステップと、
前記記憶された画像のうちどの画像がRFリンクを介して前記リモート記憶装置に成功裏に転送されたかを示すデータを、前記画像キャプチャ装置に記憶するステップと、
前記画像キャプチャ装置が所定の画像記憶容量に達したのに応じて、前記画像キャプチャ装置によって全て削除するプロンプトを与えるステップであって、前記全て削除するプロンプトは、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像を削除可能にするように構成される、プロンプトを与えるステップと、
前記プロンプトに応じて、ユーザインタフェースから、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されるとの表示を受け取るステップと、
前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されるとの表示の受け取りに応じて、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像を前記メモリから削除するステップと、を有する、方法。」

という発明に補正することを含むものである。
なお、下線は補正箇所である。

2.補正の適法性について

本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、平成26年12月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「前記記憶された画像のうち少なくとも一部の画像をリモート記憶装置に転送するステップ」に関して、「前記記憶された画像のうち少なくとも一部の画像を、バックグラウンドタスクとしてRFリンクを介してリモート記憶装置に転送するステップ」であることに限定し、
「前記記憶された画像のうちどの画像が前記リモート記憶装置に成功裏に転送されたかを示すデータを、前記画像キャプチャ装置に記憶するステップ」に関して、「前記記憶された画像のうちどの画像がRFリンクを介して前記リモート記憶装置に成功裏に転送されたかを示すデータを、前記画像キャプチャ装置に記憶するステップ」であることに限定して、特許請求の範囲を減縮するものである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3.独立特許要件について

上記補正後の発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後発明

補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正後発明」という。)は、上記の本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
なお、A?Hについては、説明のために当審にて付したものである。
(以下、「構成A」、・・・、「構成H」という。)

「A 方法であって、
B キャプチャされた画像を画像キャプチャ装置のメモリに記憶するステップと、
C 前記記憶された画像のうち少なくとも一部の画像を、バックグラウンドタスクとしてRFリンクを介してリモート記憶装置に転送するステップと、
D 前記記憶された画像のうちどの画像がRFリンクを介して前記リモート記憶装置に成功裏に転送されたかを示すデータを、前記画像キャプチャ装置に記憶するステップと、
E 前記画像キャプチャ装置が所定の画像記憶容量に達したのに応じて、前記画像キャプチャ装置によって全て削除するプロンプトを与えるステップであって、前記全て削除するプロンプトは、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像を削除可能にするように構成される、プロンプトを与えるステップと、
F 前記プロンプトに応じて、ユーザインタフェースから、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されるとの表示を受け取るステップと、
G 前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されるとの表示の受け取りに応じて、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像を前記メモリから削除するステップと、
H を有する、方法。」

(2)引用発明

原審の拒絶理由に引用された、特開2007-243568号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「情報管理システム」として図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0001】
本発明は、画像データ及び各種の視聴用データを複数記録するデジタルカメラ等の情報記録再生装置と、これら複数のデータを管理する管理装置とを備える情報管理システムに関する。」

イ.「【0006】
しかしながら、デジタルカメラは、デジタルオーディオプレイヤと異なり、各種データを単に保存・利用するだけではなく、新規の撮影により画像データを取得するという機能を具備するため、内蔵メモリ等の記録手段がいくら大容量だとしても、その容量に不安がある。
即ち、通常時には、画像データやTV録画データ、音楽データなどを視聴用に保存しておくため、被写体画像の撮影により記録手段に画像データが蓄積されてくると、画像データの記録容量の確保を十分に行うことができなくなる。
ここで、上記特許文献1等のように、画像データのバックアップを行うことで記録手段の記録容量の確保を行うことができるとも考えられるが、通常、バックアップはパーソナルコンピュータ等が存する自宅等でしか行うことができないため、外出先等では被写体の撮影タイミングを逃してしまう虞もある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、画像情報及び各種の視聴用情報の再生を行うことができる情報記録再生装置であっても、この情報記録再生装置に備わる記録手段の画像情報の記録容量の確保を適正に行うことができる情報管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
画像を撮影して画像情報を取得する撮影手段(例えば、図4の撮影部11等)と、前記撮影手段により取得された前記画像情報及び各種の視聴用情報を複数記録する記録手段(例えば、図4のメモリカードM等)と、前記記録手段に記録された複数の情報を再生する再生手段(例えば、図4の表示部12、発音部13等)とを有する情報記録再生装置(例えば、図1のデジタルカメラ1等)と、前記記録手段に記録された前記複数の情報を管理する管理装置(例えば、図1の画像管理装置2等)とを備える情報管理システム(例えば、図1の画像表示システム100等)であって、
前記情報記録再生装置は、
前記記録手段に記録された前記複数の情報のうち、少なくとも何れか一の情報を削除する情報削除手段(例えば、図4のDSP/CPU19等)と、
前記記録手段に記録された前記複数の情報の各々が前記情報削除手段による削除対象であるか否かに係る削除対象特定情報を記憶する特定情報記憶手段(例えば、図4のメモリカードM等)と、を備え、
前記情報削除手段は、前記撮影手段により取得される前記画像情報の記録容量を確保するように、前記複数の情報の中から前記特定情報記憶手段の前記削除対象特定情報に基づいて前記削除対象情報を特定して削除することを特徴としている。
(中略)
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1?3の何れか一項に記載の情報管理システムにおいて、
前記管理装置は、
前記記録手段に記録される前記複数の情報の各々のバックアップを行うバックアップ手段(例えば、図2の記録装置23等)を備え、
前記特定情報記憶手段は、前記削除対象特定情報として、前記バックアップ手段により前記バックアップが既に行われているか否かに係るバックアップ済み特定情報を記憶し、
前記情報削除手段は、さらに、前記複数の情報の中から、前記バックアップ済み特定情報に基づいて前記バックアップが既に行われている前記情報を前記削除対象情報として特定することを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の情報管理システムにおいて、
前記情報記録再生装置は、
前記複数の情報のうち、前記バックアップ手段により前記バックアップが未だ行われていない前記情報を前記管理装置に送信する情報送信手段(例えば、図4のデータ転送部16等)を備え、
前記管理装置は、
前記情報送信手段から送信された前記情報を受信する情報受信手段(例えば、図2のデータ転送部22等)を備え、
前記バックアップ手段は、さらに、前記情報受信手段により受信された前記情報のバックアップを行い、
前記情報削除手段は、さらに、前記バックアップ手段により前記バックアップが行われた前記情報を前記削除対象情報として特定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画像情報及び各種の視聴用情報の再生を行うことができる情報記録再生装置であっても、記録手段における画像情報の記録容量の確保を適正に行うことができる。」

ウ.「【0015】
本実施形態の画像表示システム(情報管理システム)100は、例えば、図1及び図2に示すように、複数の画像データ及び各種の視聴用データをメモリカードMに記録するデジタルカメラ1と、このデジタルカメラ1に接続されて、メモリカードMに記録されたこれら複数のデータを管理する画像管理装置2と、この画像管理装置2に接続されて、複数の画像データ及び各種の視聴用データに係る画像等を表示する表示装置3を備えて構成されている。」

エ.「【0017】
データ転送部21は、例えば、デジタルカメラ1とUSBケーブル(図示略)を介して接続されるUSB端子等の外部入出力端子21aを備え、デジタルカメラ1との間で各種のデータの転送を行うものである。
即ち、データ転送部21は、例えば、デジタルカメラ1から送信された画像データを受信するようになっている。具体的には、データ転送部21は、例えば、未だ画像管理装置2にてバックアップがなされていない画像データを受信するようになっている。ここで、データ転送部21は情報受信手段を構成している。」

オ.「【0021】
記憶装置23は、例えば、ハードディスクや各種の不揮発性のメモリ等からなり、制御部25の制御下にて、データ転送部21を介して取得した画像データや、データ読取装置22により読み取られた各種の視聴用データ等を記憶するものである。
即ち、記憶装置23は、バックアップ手段として、デジタルカメラ1のメモリカードMに記録される画像データ及び視聴用データの各々のバックアップを行うようになっている。具体的には、記憶装置23は、インターネット等を介して取得した視聴用データやデジタルカメラ1にて撮影されデータ転送部16を介して転送された画像データ、さらに、デジタルカメラ1の自動削除処理にて削除対象から除外され、バックアップが未だ行われていない所定の画像データのバックアップを行うようになっている。」

カ.「【0031】
データ転送部16は、例えば、画像管理装置2と接続されるUSB端子等の入出力端子16aを備え、画像管理装置2との間で各種のデータの転送を行うものである。
具体的には、データ転送部16は、撮影部11により撮影されて取得された画像データを画像管理装置2に送信するようになっている。特に、データ転送部16は、情報送信手段として、例えば、画像管理装置2にてバックアップが未だ行われていないデータを画像管理装置2に送信するようになっている。
【0032】
メモリカードMは、例えば、カードI/F15を介して脱着自在に設けられ、撮影部11により取得された画像データ及び画像管理装置2から送信されデータ転送部16を介して受信された各種の視聴用データを記録するものである。
これら複数の画像データ及び各種の視聴用データは、例えば、画像管理装置2にてバックアップが行われているか否かに係るバックアップ済み特定情報と対応付けられて記録されている。バックアップ済み特定情報(削除対象特定情報)は、具体的には、例えば、DSP/CPU19の制御下における自動削除処理(後述)にて画像データ及び各種の視聴用データを削除対象とするか否かを特定するためのものである。
また、バックアップ済み特定情報は、例えば、デジタルカメラ1と画像管理装置2とが接続されてバックアップ処理が行われることにより、DSP/CPU19の制御下にて、バックアップ済みであることを示す情報が付与されるようになっている。
ここで、メモリカードMは、複数の画像データ及び各種の視聴用データの各々がDSP/CPU19の制御下における自動削除処理による削除対象であるか否かに係る削除対象特定情報を記憶する特定情報記憶手段を構成している。」

キ.「【0036】
情報削除プログラムは、DSP/CPU19を情報削除手段として機能させるものである。即ち、情報削除プログラムは、メモリカードMに記録された複数の画像データ及び各種の視聴用データのうち、少なくとも何れか一のデータを削除する自動削除処理、具体的には、メモリカードMに撮影部11により取得される画像データを記録するための記録容量を確保するように、複数のデータの中からメモリカードMに記録された複数のデータのバックアップ済み特定情報に基づいて画像管理装置2にてバックアップが既に行われているデータを削除対象データとして特定して削除する自動削除処理に係る機能をDSP/CPU19に実現させるためのプログラムである。より具体的には、情報削除プログラムは、撮影動作処理や画像転送動作処理にて、DSP/CPU19によって、メモリカードMに記録された所定のデータを削除するためのものである。
なお、画像管理装置2にてバックアップが未だ行われていないデータについては、デジタルカメラ1と画像管理装置2とが接続されて画像管理装置2によりバックアップされると、DSP/CPU19は、当該バックアップ済みのデータを削除対象とすることができるようになっている。
【0037】
記録容量判定プログラムは、DSP/CPU19を記録容量判定手段として機能させるものである。即ち、記録容量判定プログラムは、メモリカードMに画像データの記録容量が十分あるか否かを判定する記録容量判定処理に係る機能をDSP/CPU19に実現させるためのプログラムである。
【0038】
報知プログラムは、記録容量判定処理にて記録容量が十分でないと判定された場合に、当該記録容量が十分でない旨を表示部12や発音部13から報知させる報知処理に係る機能をDSP/CPU19に実現させるためのプログラムである。ここで、DSP/CPU19は、報知プログラムを実行することにより、表示部12及び発音部13と協働して報知手段を構成している。
これにより、表示部12や発音部13からメモリカードMにおける画像データの記録容量が十分でないことを報知して、ユーザに適正に認識させることができる。」

ク.「【0052】
<バックアップ済みの画像データが記録されている場合>
先ず、デジタルカメラ1により撮影された画像データのバックアップ処理は、このデジタルカメラ1が画像管理装置2とが接続されることにより行われる。
このバックアップ処理の実行により、DSP/CPU19の制御下にて、メモリカードMのバックアップ済み特定情報にバックアップ済みであることを示す情報が付与される。
【0053】
そして、バックアップ済みの画像データが記録されている場合の撮影動作処理にあっては、図5に示すように、DSP/CPU19は、ステップS1にて、画像撮影に必要な空き容量を計算した後、ステップS2にて、メモリカードMの残りの容量が必要空き容量以上であるか否か判定する。
ここで、メモリカードMの残りの容量が必要空き容量以上であると判定されると(ステップS2;YES)、DSP/CPU19は、ステップS3に移行して、それ以降の処理を実行制御する。
【0054】
一方、ステップS2にて、メモリカードMの残りの容量が必要空き容量未満であると判定されると(ステップS2;NO)、DSP/CPU19は、ステップS10に移行して、自動削除処理を実行制御する。
【0055】
自動削除処理にあっては、図6に示すように、DSP/CPU19は、情報削除プログラムを実行して、バックアップ特定情報に基づいて、画像管理装置2にてバックアップされた削除可能な画像データがあるか否かを判定する(ステップS71)。
ここで、バックアップ済みの画像データがあると判定されると(ステップS71;YES)、DSP/CPU19は、表示部12を制御して、“残り容量が少なくなっています。削除可能画像を削除しますか?”等の確認画面(警告画面)を表示させ(ステップS101)、その後、所定の画像データの削除指示「OK」が入力されると(ステップS102;YES)、当該画像データをメモリカードMから削除する(ステップS103)。
また、DSP/CPU19は、バックアップされていない画像データを削除対象から除外して、自動削除処理を終了する。」

ケ.「【0067】
以上のように、本実施形態の画像表示システム100によれば、メモリカードMに記録された複数の画像データの中から、当該複数の画像データの各々のバックアップ済み特定情報に基づいてバックアップ済みの画像データを削除対象データとして特定することができる。これにより、バックアップ済みの画像データを削除し、バックアップが行われていない必要なデータの削除を防止することができる。従って、画像データ及び各種の視聴用データの再生を行うことができるデジタルカメラ1であっても、メモリカードMにおける画像データの記録容量の確保を適正に行うことができる。
また、不必要な画像データの削除を自動削除処理により自動的に行うことができるので、ユーザが画像データの内容を確認しながら削除する必要がなくなって、メモリカードMにおける画像データの記録容量の確保を簡便に行うことができる。」

コ.「【0071】
また、上記実施形態の自動削除処理にあっては、メモリカードMにバックアップ済みの画像データが複数記録されている場合、これら全ての画像データを一度に削除しても良いし、個別に削除するようにしても良い。」

サ.「【0077】
また、上記実施形態では、デジタルカメラ1と画像管理装置2とをUSBケーブル等を介して優先接続するようにしたが、これに限られるものではなく、無線LAN等の所定の通信回線を介して無線接続するようにしても良い。
さらに、上記実施形態では、情報記録再生装置としてデジタルカメラ1を例示したが、これに限られるものではない。」

上記ア.?サ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

(a)引用文献1には、上記ア.及びイ.に記載があるように、デジタルカメラ等の情報記録再生装置に備わる記録手段の画像情報の記録容量の確保を適正に行うことができるようにするために、
バックアップ手段によりバックアップが行われた情報を削除対象情報として特定し、撮影手段により取得される画像情報の記録容量を確保するように、記録手段に記録された複数の情報の中から削除対象情報を特定して削除する方法についての記載がある。

(b)上記ウ.及びカ.の段落【0032】の記載から、引用文献1の方法は、撮影部により取得された画像データをデジタルカメラのメモリカードに記録するものである。

(c)上記ウ.?カ.及びサ.の記載から、引用文献1の方法は、メモリカードに記録されたバックアップがなされていない画像データを、無線LAN等の所定の通信回線を介して無線接続された画像管理装置に転送するものである。

(d)上記カ.及びサ.の記載から、引用文献1の方法は、画像データはバックアップ済み特定情報と対応付けられ、メモリカードに記録された画像データを、無線LAN等の所定の通信回線を介して無線接続された画像管理装置に転送し、バックアップ処理が行われると、バックアップ済みであることを示す情報を、メモリカードに記憶されたバックアップ済み特定情報に付与するものである。

(e)上記キ.?コ.の記載から、引用文献1の方法は、デジタルカメラのメモリカードの記録容量が十分あるか否かを判定し、記録容量が十分でないと判定された場合に、“残り容量が少なくなっています。削除可能画像を削除しますか?”等の画面を表示し、削除指示「OK」が入力されると、メモリカードに、バックアップ済みの画像データが複数記録されている場合、これら全ての画像データを一度に削除するものである。

そうすると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
なお、a?hについては、説明のために当審にて付したものである。
(以下、「構成a」、・・・、「構成h」という。)

[引用発明]

「a 方法であって、
b 撮影部により取得された画像データをデジタルカメラのメモリカードに記録し、
c メモリカードに記録されたバックアップがなされていない画像データを、無線LAN等の所定の通信回線を介して無線接続された画像管理装置に転送し、
d 画像データはバックアップ済み特定情報と対応付けられ、メモリカードに記録された画像データを、無線LAN等の所定の通信回線を介して無線接続された画像管理装置に転送し、バックアップ処理が行われると、バックアップ済みであることを示す情報を、メモリカードに記憶されたバックアップ済み特定情報に付与し、
e デジタルカメラのメモリカードの記録容量が十分あるか否かを判定し、記録容量が十分でないと判定された場合に、“残り容量が少なくなっています。削除可能画像を削除しますか?”等の画面を表示し、
f 削除指示「OK」が入力されると、
g メモリカードに、バックアップ済みの画像データが複数記録されている場合、これら全ての画像データを一度に削除する
h 方法。」

(3)補正後発明と引用発明との対比と一致点・相違点の認定

ア.対比

(ア-1)引用発明の構成aと補正後発明の構成Aについて
引用発明も補正後発明も「方法」の発明であり、引用発明の構成aは、補正後発明の構成Aに相当する。

(ア-2)引用発明の構成bと補正後発明の構成Bについて
引用発明の「デジタルカメラ」は、画像を捉える装置であるから、補正後発明の「画像キャプチャ装置」に相当する。
そして、引用発明の「撮影部により取得された画像データ」、「メモリカードに記録」は、補正後発明の「キャプチャされた画像」、「メモリに記憶」に相当するので、引用発明の構成bは補正後発明の構成Bに相当する。

(ア-3)引用発明の構成cと補正後発明の構成Cについて
引用発明における「メモリカードに記録されたバックアップがなされていない画像データを、」「転送し」に関して、「バックアップがなされていない画像データ」であるから、一部の画像データといえ、補正後発明の「前記記憶された画像のうち少なくとも一部の画像を、」「転送する」に相当する。
引用発明の「無線LAN等の所定の通信回線を介して無線接続された」とは、無線接続を介していることを指すものであるから、補正後発明の「RFリンクを介して」に相当する。
引用発明の「画像管理装置」は、補正後発明の「リモート記憶装置」に相当する。

そうすると、引用発明の構成cと補正後発明の構成Cは、「前記記憶された画像のうち少なくとも一部の画像を、RFリンクを介してリモート記憶装置に転送する」点で共通する。しかし、引用発明は、補正後発明のように、「バックグラウンドタスクとして」という限定がない点で相違する。

(ア-4)引用発明の構成dと補正後発明の構成Dについて
引用発明の「バックアップ済み特定情報」は、画像データと対応付けられており、バックアップ処理が行われると、バックアップ済みであることを示す情報が付与されるものであるから、メモリカードに記録された画像データのうちどの画像データが、無線LAN等の所定の通信回線を介して無線接続された画像管理装置に転送され、バックアップ処理が行われて、バックアップ済みであるかを示す情報であるといえる。
また、「バックアップ済み特定情報」は、「メモリカードに記憶され」ており、「メモリカード」は、「デジタルカメラ」内にあるので、「デジタルカメラ」に記憶するといえる。
したがって、引用発明の構成dは、『メモリカードに記録された画像データのうちどの画像データが、無線LAN等の所定の通信回線を介して無線接続された画像管理装置に転送され、バックアップ処理が行われて、バックアップ済みであるかを示す情報を、デジタルカメラに記憶する』ことといえる。

そして、引用発明の『メモリカードに記録された画像データ』、『無線LAN等の所定の通信回線を介して無線接続された』、『画像管理装置』、『デジタルカメラ』は、補正後発明の「前記記憶された画像」、「RFリンクを介して」、「前記リモート記憶装置」、「前記画像キャプチャ装置」に相当する。

そうすると、『メモリカードに記録された画像データのうちどの画像データが、無線LAN等の所定の通信回線を介して無線接続された画像管理装置に転送され、バックアップ処理が行われて、バックアップ済みであるかを示す情報を、デジタルカメラに記憶する』ことと、補正後発明の構成Dは、「前記記憶された画像のうちどの画像がRFリンクを介して前記リモート記憶装置に転送されたかを示すデータを、前記画像キャプチャ装置に記憶する」点で共通するものの、どのようなデータを前記画像キャプチャ装置に記憶するかに関して、引用発明は、「画像管理装置に転送され、バックアップ処理が行われて、バックアップ済みであるかを示す情報」であるのに対し、補正後発明は、「成功裏に転送されたかを示すデータ」である点で相違する。

(ア-5)引用発明の構成eと補正後発明の構成Eについて
引用発明の「デジタルカメラのメモリカードの記録容量が十分あるか否かを判定し、記録容量が十分でないと判定された場合」に関して、記録容量が十分あるか否かを判定するのは、記憶容量が所定の値より多いか少ないかを比較し、所定の値に達すると、新たな画像データを保存するには記録容量が十分でないと判定されることであるから、補正後発明の「前記画像キャプチャ装置が所定の画像記憶容量に達したのに応じて」に相当する。

引用発明の「“残り容量が少なくなっています。削除可能画像を削除しますか?”等の画面を表示」することは、デジタルカメラの表示部に表示されるものであり、該表示後に、構成f及びgのように「削除指示「OK」が入力されると、メモリカードに、バックアップ済みの画像データが複数記録されている場合、これら全ての画像データを一度に削除する」ことから、デジタルカメラによって、削除可能画像であるバックアップ済みの全ての画像データを削除することについて、“残り容量が少なくなっています。削除可能画像を削除しますか?”等の画面を表示することによって、ユーザに対しての応答を要求するような問い合わせのメッセージを与えるものである。また、削除可能画像であるバックアップ済みの全ての画像データとは、構成b及びdの記載から、画像管理装置に以前に転送しバックアップ処理が行われた全ての撮影部により取得された画像データである。
そうすると、引用発明の「“残り容量が少なくなっています。削除可能画像を削除しますか?”等の画面を表示」することは、『デジタルカメラによって、画像管理装置に以前に転送しバックアップ処理が行われた全ての撮影部により取得された画像データを削除することについて、ユーザに対しての応答を要求するような問い合わせのメッセージを与える』ことといえる。

そして、引用発明の『デジタルカメラ』、『画像管理装置』、『撮影部により取得された画像データ』は、補正後発明の「画像キャプチャ装置」、「リモート記憶装置」、「キャプチャされた画像」に相当し、引用発明の『バックアップ処理』は、バックアップ処理を行うことによって画像データが記憶されるものであるから、補正後発明の「記憶」に相当する。

補正後発明の「プロンプト」に関して、発明の詳細な説明には「608でメモリカードがいっぱいになる。カメラ300は、カメラユーザにプロンプト(prompt)して、610で、PCに転送された写真を一緒に削除し始めたいか、問い合わせる。ユーザは、このプロンプトを612で受け入れると、カメラ300を自動削除モードにする。」(段落【0071】)と記載されており、「プロンプト」とは、ユーザに対して応答を要求するような問い合わせのメッセージ(「PCに転送された写真を一緒に削除し始めたいか」)を指すといえる。
そうすると、引用発明の『ユーザに対しての応答を要求するような問い合わせのメッセージ』は、補正後発明の「プロンプト」に相当する。

したがって、引用発明の「“残り容量が少なくなっています。削除可能画像を削除しますか?”等の画面を表示」すること、すなわち、『デジタルカメラによって、画像管理装置に以前に転送しバックアップ処理が行われた全ての撮影部により取得された画像データを削除することについて、ユーザに対しての応答を要求するような問い合わせのメッセージを与える』ことは、補正後発明の「前記画像キャプチャ装置によって全て削除するプロンプトを与えるステップであって、前記全て削除するプロンプトは、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像を削除可能にするように構成される、プロンプトを与えるステップ」に相当する。

そうすると、引用発明の構成eは補正後発明の構成Eに相当する。

(ア-6)引用発明の構成fと補正後発明の構成Fについて
引用発明の「削除指示「OK」が入力されると、」とは、構成eの「“残り容量が少なくなっています。削除可能画像を削除しますか?”等の画面を表示」することに応じて、ユーザの入力によりなされるものである。また、「削除指示「OK」が入力」とは、この入力により、画像管理装置に以前に転送しバックアップ処理が行われた全ての撮影部により取得された画像データを削除することをユーザが受け入れることといえる。

そうすると、引用発明の「削除指示「OK」が入力されると、」とは、『“残り容量が少なくなっています。削除可能画像を削除しますか?”等の画面を表示することに応じて、ユーザの入力により、画像管理装置に以前に転送しバックアップ処理が行われた全ての撮影部により取得された画像データを削除することを受け入れる』ことといえる。

そして、引用発明の『“残り容量が少なくなっています。削除可能画像を削除しますか?”等の画面を表示すること』は、上記(ア-5)で検討したように、補正後発明の「前記プロンプト」に相当する。
また、引用発明の『ユーザの入力により』は、ユーザが何らかの入力手段を用いて入力するものであるから、補正後発明の「ユーザインタフェースから」に相当する。
さらに、引用発明の『画像管理装置に以前に転送しバックアップ処理が行われた全ての撮影部により取得された画像データを削除することを受け入れる』と、補正後発明の「前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されるとの表示を受け取る」は、上記(ア-5)の検討を考慮するに、「前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されることを受け取る」という点で共通する。

したがって、引用発明の構成fと補正後発明の構成Fは、「前記プロンプトに応じて、ユーザインタフェースから、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されることを受け取る」という点で共通する。しかし、引用発明は、「削除指示「OK」が入力される」ものであり、具体的にどのように受け取るかについての限定がないのに対し、補正後発明は、「表示を受け取る」という点で相違する。

(ア-7)引用発明の構成gと補正後発明の構成Gについて
引用発明の構成gは、「削除指示「OK」が入力されると」、すなわち、『画像管理装置に以前に転送しバックアップ処理が行われた全ての撮影部により取得された画像データを削除することを受け入れる』と、「メモリカードに、バックアップ済みの画像データが複数記録されている場合、これら全ての画像データを一度に削除する」ものである。
また、「メモリカードに、バックアップ済みの画像データが複数記録されている場合、これら全ての画像データを一度に削除する」とは、『画像管理装置に以前転送しバックアップ処理が行われた全ての撮影部により取得された画像データをメモリカードから削除する』ことといえる。

上記(ア-6)で検討したように、引用発明の『画像管理装置に以前に転送しバックアップ処理が行われた全ての撮影部により取得された画像データを削除することを受け入れる』と、補正後発明の「前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されるとの表示を受け取り」は、「前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されることを受け取り」という点で共通する。
また、引用発明の『画像管理装置に以前転送しバックアップ処理が行われた全ての撮影部により取得された画像データをメモリカードから削除する』は、補正後発明の「前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像を前記メモリから削除する」に相当する。

そうすると、引用発明の構成gと補正後発明の構成Gは、「前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されることの受け取りに応じて、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像を前記メモリから削除する」という点で共通する。しかし、上記(ア-6)で検討したように、引用発明は、具体的にどのように受け取るかについての限定がないのに対し、補正後発明は、「表示を受け取る」という点で相違することに起因して、「前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されることの受け取りに応じて」に関して、引用発明は、具体的にどのように受け取りをするかについての限定がないのに対し、補正後発明は、「表示を受け取り」という点で相違する。

(ア-8)引用発明の構成hと補正後発明の構成Hについて
上記(ア-1)で論じたことと同様に、引用発明の構成hは、補正後発明の構成Hに相当する。

イ.一致点・相違点
したがって、引用発明と補正後発明は、以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]

「方法であって、
キャプチャされた画像を画像キャプチャ装置のメモリに記憶するステップと、
前記記憶された画像のうち少なくとも一部の画像を、RFリンクを介してリモート記憶装置に転送するステップと、
前記記憶された画像のうちどの画像がRFリンクを介して前記リモート記憶装置に転送されたかを示すデータを、前記画像キャプチャ装置に記憶するステップと、
前記画像キャプチャ装置が所定の画像記憶容量に達したのに応じて、前記画像キャプチャ装置によって全て削除するプロンプトを与えるステップであって、前記全て削除するプロンプトは、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像を削除可能にするように構成される、プロンプトを与えるステップと、
前記プロンプトに応じて、ユーザインタフェースから、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されることを受け取るステップと、
前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されることの受け取りに応じて、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像を前記メモリから削除するステップと、を有する、方法。」

[相違点]
(1)相違点1
「前記記憶された画像のうち少なくとも一部の画像を、RFリンクを介してリモート記憶装置に転送する」ことに関して、補正後発明は、「バックグラウンドタスクとして」転送するのに対し、引用発明は、どのようにして転送するかの限定がない点。

(2)相違点2
どのようなデータを前記画像キャプチャ装置に記憶するかに関して、補正後発明は、「成功裏に転送されたかを示すデータ」であるのに対し、引用発明は、「画像管理装置に転送され、バックアップ処理が行われて、バックアップ済みであるかを示す情報」であるが、成功裏に転送されたかどうかについての限定はない点。

(3)相違点3
「前記プロンプトに応じて、ユーザインタフェースから、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されることを受け取る」ことに関して、補正後発明は、「表示を受け取る」のに対し、引用発明は、具体的にどのように受け取るかについての限定がなく、該相違点に起因して、「前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されることの受け取りに応じて」に関して、補正後発明は、「表示の受け取り」をするのに対し、引用発明は、具体的にどのように受け取りをするかについての限定がない点。

ウ.当審の判断

上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
撮影に際して自動的にサーバに転送すること、すなわち、画像を転送するに際して、バックグラウンドタスクとして転送することは、画像転送として周知の技術に過ぎず(例えば、特開2007-81741号公報の段落0108には、特に指示を行わなくても撮影と同時に撮影画像データを外部装置に無線通信により転送することが記載され、特開2002-94858号公報の段落0042?0058には、撮影が行われると、画像データをセンターサーバーへ送信することが記載され、特開2003-23593号公報の段落0055には、撮像動作が終了すると、画像データが自動的に外部記憶手段に転送されることが記載されている。)、引用発明において、そのような周知の技術を適用して、バックグラウンドタスクとして転送するようにしたことは、当業者であれば、容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について
引用発明においては、「バックアップ済みであるかを示す情報」が対応付けられた画像データを削除するものであるが、これは、メモリカードの容量が足りなくなり、どの画像データを削除すればよいかを考えた場合に、画像管理装置に転送されてバックアップされていれば、メモリカード内に記録し続ける必要がないために削除するものである。そうすると、画像管理装置に転送されてバックアップされた画像データとメモリカード内の画像データが同じ画像データでなければならないことは当然のことである。
転送が成功しないと、転送されてバックアップされた画像データとメモリカード内の画像データが異なってしまい、削除することが不都合となるので、「バックアップ済みであるかを示す情報」として、画像管理装置に成功裏に転送されたかどうかの情報を含むようにすることは当然考えることであるから、引用発明の「バックアップ済みであるかを示す情報」として、「成功裏に転送されたかを示すデータ」を含むようにすることは、当業者であれば、容易に想到し得るものである。
なお、特開2003-23593号公報の段落0056?0071に記載されているように、転送通信エラーがない場合に消去できるようにする構成は、周知技術であり、当該周知技術を鑑みても、当業者であれば、容易に想到し得るものである。

(3)相違点3について
補正後発明の構成Fの「前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されるとの表示を受け取る」に関して、発明の詳細な説明の段落【0071】には、カメラは、カメラユーザにプロンプト(prompt)して、問い合わせ、ユーザは、このプロンプトを受け入れ、カメラを自動削除モードにすることが記載されている。また、該記載に関連する【図6】では、610にて、YESとNOを表示し、612にて、YES(すなわち自動削除モードにする)を選択することが記載されている。
すなわち、「前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されるとの表示を受け取る」とは、(YESとNOという)表示がなされている中から、(YESという)「前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除される」表示を選択し受け入れることに対応するものといえる。

何らかの入力を与える際に、表示がなされている中から、表示を選択し受け入れるように設計することは、周知の技術であり、引用発明における「削除指示「OK」が入力される」ことに関して、表示がなされている中から、表示を選択し受け入れる、すなわち、表示を受け取るように設計することは、当業者であれば、容易に想到し得るものである。

よって、各相違点については、格別のものではなく、補正後発明に関する作用・効果も、その容易想到である構成から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、補正後発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明
平成27年5月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成26年12月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「方法であって、
キャプチャされた画像を画像キャプチャ装置のメモリに記憶するステップと、
前記記憶された画像のうち少なくとも一部の画像をリモート記憶装置に転送するステップと、
前記記憶された画像のうちどの画像が前記リモート記憶装置に成功裏に転送されたかを示すデータを、前記画像キャプチャ装置に記憶するステップと、
前記画像キャプチャ装置が所定の画像記憶容量に達したのに応じて、前記画像キャプチャ装置によって全て削除するプロンプトを与えるステップであって、前記全て削除するプロンプトは、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像を削除可能にするように構成される、プロンプトを与えるステップと、
前記プロンプトに応じて、ユーザインタフェースから、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されるとの表示を受け取るステップと、
前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像が削除されるとの表示の受け取りに応じて、前記リモート記憶装置に以前転送され且つ記憶された全てのキャプチャされた画像を前記メモリから削除するステップと、を有する、方法。」

2.引用発明
原審の拒絶理由に引用された引用文献1、及び、その記載事項は、前記第2.3.(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.3.で検討した補正後発明における「バックグラウンドタスクとしてRFリンクを介して」、「RFリンクを介して」という限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する補正後発明が、前記第2.3.に記載したとおり、引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.まとめ

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-29 
結審通知日 2016-04-05 
審決日 2016-04-18 
出願番号 特願2012-544585(P2012-544585)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 州一郎  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 小池 正彦
渡辺 努
発明の名称 電子デバイスにおけるデータファイルの削除方法  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  

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