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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G02B
管理番号 1319150
異議申立番号 異議2015-700030  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-09-28 
確定日 2016-05-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5697023号「粘着剤層付偏光板およびその製造方法」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 特許第5697023号の明細書を,訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 特許第5697023号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 事案の概要
特許第5697023号の請求項1?6に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は,平成22年12月14日に特許出願され(特願2010-278334号),平成27年2月20日に特許権の設定登録がされたものである。
本件特許について,特許異議申立人宮園祐爾から,平成27年9月28日に特許異議の申立て(異議2015-700030号)がされたところ,その後の手続の経緯は,以下のとおりである。
平成27年11月26日:取消理由通知
平成28年 1月27日:訂正請求
平成28年 1月27日:意見書
平成28年 2月 2日:訂正請求があった旨の通知
平成28年 3月 4日:意見書
平成28年 3月14日:特許権者に対し審尋
平成28年 3月30日:回答書

第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は,以下のとおりである。なお,下線は当合議体が付したものである。
(1) 訂正事項A
段落【0050】に「上記と同様にして,表1に記載の組成で,共重合体2,3を得た。」とあるのを,「上記と同様にして,表1に記載の組成で,共重合体2を得た。」に訂正する。

(2) 訂正事項B
段落【0051】の表1に「

」とあるのを,「

」に訂正する。

(3) 訂正事項C
段落【0055】の表2に「

」とあるのを,「

」に訂正する。

(4) 訂正事項D
段落【0056】の記載を削除する。

(5) 訂正事項E
段落【0064】の表3に「

」とあるのを,「

」に訂正する。

2 訂正の適否
(1) 120条の5第2項について
本件訂正の訂正事項A,B,D及びEは,いずれも,取消理由(36条4項1号,同条6項1号及び2号)の根拠とされた比較例2を本件特許の発明の詳細な説明から削除することによって,前記取消理由通知を解消しようとする訂正である。
したがって,訂正事項A,B,D及びEは,いずれも,特許法120条の5第2項3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,本件訂正の訂正事項Cは,特許法120条の5第2項2号の誤記の訂正を目的とするものである。

(2) 120条の5第9項について
126条5項について
本件訂正が行われた事情は,以下のとおりと考えるのが相当である。
すなわち,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)の全ての記載を総合すると,比較例2は,本来ならば,本件特許発明に該当しない例,すなわち,本件特許発明の「上記アクリル共重合体の反応性官能基のモル当量に対して上記架橋剤の官能基のモル当量を多くして」の要件を満たさない例として記載されたものと解するのが相当である。ところが,段落【0051】の表1においては,何らかの事情により,比較例2についても,本件特許発明の前記要件を満たす組成等で記載されているという不備が生じていた。そこで,本件訂正により,本件特許の発明の詳細な説明から比較例2が削除された。
また,段落【0053】の記載に基づいて,表2の誤記が訂正された。
以上の事情に鑑みると,本件訂正の訂正事項A?Eは,いずれも,当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものである。

126条6項について
本件訂正が行われた事情は,上記イで述べたとおりと解するのが相当であるから,本件訂正の訂正事項A?Eは,いずれも,本件特許発明の要旨を変更するものではない。
したがって,本件訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法120条の5第2項2号及び同条同項3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条4項から6項までの規定に適合する。また,本件訂正請求は,特許権全体に対してされたものである。
したがって,特許第5697023号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
本件特許の請求項1?6に係る発明(以下「本件特許発明」と総称する。)は,本件特許の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ポリビニルアルコール系偏光子フィルムの少なくとも一方の面に,偏光子保護フィルムとしても機能する粘着剤層が設けられてなり,該粘着剤層が,少なくとも,反応性官能基を有するアクリル共重合体と,該反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤との反応生成物を含んで形成されており,該反応生成物の形成の際に,上記アクリル共重合体の反応性官能基のモル当量に対して上記架橋剤の官能基のモル当量を多くして,粘着剤層内に架橋剤の未架橋の官能基を残留させて,該官能基を上記偏光子フィルムの形成成分であるポリビニルアルコールの水酸基と反応させるようにしたことを特徴とする粘着剤層付偏光板。

【請求項2】
前記反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤が,イソシアネート架橋剤である請求項1に記載の粘着剤層付偏光板。

【請求項3】
前記反応生成物の30℃における貯蔵弾性率が,1MPa以上である請求項1または2に記載の粘着剤層付偏光板。

【請求項4】
前記反応性官能基を有するアクリル共重合体が,(メタ)アクリル酸の炭素数1?18のアルキルエステルモノマー(A)と,水酸基またはカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー(B)とを主モノマーとしてなる,反応性官能基として水酸基またはカルボキシル基を有する分子量が50万?200万のアクリル共重合体である請求項1?3のいずれか1項に記載の粘着剤層付偏光板。

【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載の粘着剤層付偏光板の製造方法であって,予め剥離フィルム上に,反応性官能基を有するアクリル共重合体と,該反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤とを用いて反応生成物を形成する際に,上記アクリル共重合体の有する反応性官能基のモル当量に対して上記架橋剤の官能基のモル当量を多くして,架橋剤の未架橋の官能基が残留した状態の反応生成物を含んで形成された粘着剤皮膜を形成しておき,染料を含浸したポリビニルアルコール系フィルムを延伸乾燥して得られたポリビニルアルコール系偏光子フィルムの片面に,接着剤を用いて偏光子保護フィルムを貼り合わせるのと同時かまたは貼り合わせ後に,偏光子のもう一方の面に,予め形成した上記粘着剤皮膜を貼り合わせて,上記架橋剤の未架橋の官能基を,上記偏光子フィルムの形成成分であるポリビニルアルコールの水酸基と反応させるようにした粘着剤層を形成することを特徴とする粘着剤層付偏光板の製造方法。

【請求項6】
請求項1?4のいずれか1項に記載の粘着剤層付偏光板の製造方法であって,予め剥離フィルム上に,反応性官能基を有するアクリル共重合体と,該反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤とを用いて反応生成物を形成する際に,上記アクリル共重合体の有する反応性官能基のモル当量に対して上記架橋剤の官能基のモル当量を多くして,架橋剤の未架橋の官能基が残留した状態の反応生成物を含んで形成された粘着剤皮膜を形成しておき,染料を含浸したポリビニルアルコール系フィルムを延伸乾燥して得られたポリビニルアルコール系偏光子フィルムの両面に,予め形成した上記粘着剤皮膜を貼り合わせて,上記架橋剤の未架橋の官能基を,上記偏光子フィルムの形成成分であるポリビニルアルコールの水酸基と反応させるようにした粘着剤層をそれぞれ形成することを特徴とする粘着剤層付偏光板の製造方法。」

2 取消理由の概要
当合議体が通知した取消理由の概要は,以下のとおりである。
比較例2は,本件特許発明の目的課題効果を達成しないものであるにも関わらず,本件特許発明の要旨に含まれる。
したがって,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしてない。また,特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしてない。さらに,特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

3 取消理由について
(1) 当合議体の判断
本件訂正により,本件特許の発明の詳細な説明から,取消理由の前提となる比較例2が削除された。
当合議体の取消理由は,解消した。

(2) 特許異議申立人の意見について
本件訂正に対する特許異議申立人の意見は,概略,以下のとおりである。
本件特許の発明の詳細な説明には,イソシアネート化合物であるコロネートL-45についての詳細な記載及びイソシアネート基のモル当量/反応性官能基のモル当量を計算するための詳細な記載がなされていない。
本件特許に記載されている実施例である粘着剤1及び粘着剤2の「イソシアネート基のモル当量/反応性官能基のモル当量」が以下に計算されたものであるか不明である。

しかしながら,モル当量の計算方法,及びコロネートL-45等の組成は,いずれも,当業者が心得る技術水準の範囲内の事項であり,粘着剤1及び粘着剤2に関する表1に誤記があることは,当業者ならば容易に理解可能な事項である。
また,本件特許の請求項1には,「該反応生成物の形成の際に,上記アクリル共重合体の反応性官能基のモル当量に対して上記架橋剤の官能基のモル当量を多くして,粘着剤層内に架橋剤の未架橋の官能基を残留させて」と記載されているところ,この記載が,(A)粘着剤層内のアクリル共重合体の未架橋の反応性官能基の量をA,(B)粘着剤層内の架橋剤の未架橋の官能基の量をBとしたとき,(C)粘着剤層内においてA<Bの関係が成立している構成を意味することは,本件特許の発明の詳細な説明の記載から明らかである。他の請求項についても同様である。
そうしてみると,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件特許発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

4 むすび
以上のとおりであるから,取消理由によっては,本件特許を取り消すことはできない。また,他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
粘着剤層付偏光板およびその製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の偏光子保護フィルムとしても機能する粘着剤層を有する粘着剤層付偏光板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、偏光板は、ポリビニルアルコール系フィルムを染色して延伸した偏光子のフィルムの両面に、セルロース系フィルム、オレフィン系フィルム、アクリル系フィルム等の偏光子保護フィルムを接着剤等により貼り合わせて製造されている。また、上記のようにして製造された偏光板を用いた液晶パネル等は、該偏光子保護フィルムのもう一方の面に粘着剤を塗布等し形成した粘着剤層によって、液晶セルや位相差フィルムに貼り合わせて製造されている。
【0003】
しかしながら、このように製造した液晶パネル等は、製造工程が多く、また、使用するフィルムも多種類であるため製造コストがかかるという経済上の課題がある。中でも特に偏光板は、多数のフィルムを積層しているため、その厚みは厚く、また、積層して形成されていることに起因する光学的な問題も発生しやすい。このような背景から、近年、液晶パネルに対する薄型化・軽量化が求められるのみならず、偏光板の薄型化・軽量化も要望されている。
【0004】
偏光板に使用されているポリビニルアルコール系の偏光子のフィルムは、それ自体に偏光性能を有しているが、力学的性質や耐久性に乏しいため、上述したように、両面に酢酸セルロール系等の偏光子保護フィルムを貼り合わせることが必要である。この偏光子保護フィルムの少なくとも一方を粘着剤フィルムで代替することで、粘着剤付の偏光板の薄型化・軽量化と製造工程の大幅な合理化を行うことが検討され、これまでに、偏光子フィルムの両面にある偏光子保護フィルムを片面に省略することが試みられてきた。
【0005】
しかしながら、例えば、片面のみに偏光子保護フィルムを有している粘着剤付の偏光板は、偏光子の表裏の構成が非対称になるために、形成した偏光板の「そり」が大きくなり易い。そのため、粘着剤の表面に貼り合わせてある剥離フィルムが剥がれる等の問題が生じてしまうだけでなく、液晶パネルに貼り合わせるときにも問題が生じやすい。また、延伸された偏光子のフィルムには収縮しようとする力がかかるため、通常の偏光板用粘着剤を使用した場合、光学的な問題が生じる場合がある。
【0006】
上記課題を解決すべく、種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、偏光板の片面の偏光子保護フィルムをなくしたものに、特定の引っ張り強度と伸度を有するフィルムを、一定以上の張力を加えて偏光板の表面に貼り付けることにより、偏光板のそりを改良することが提案されている(特許文献1参照)。また、特許文献2には、偏光板の保護フィルムの厚さを大きくすることによりそりを改良することが提案されている(特許文献2参照)。さらに、特許文献3には、偏光板の保護層を1層少なくすることにより、内部応力および光弾性を1層分軽減して光学歪を軽減させることが提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1?3のいずれにおいても、偏光子フィルムに直接貼り合わされる粘着剤について十分な検討はなされていなかった。そのため、上記に記載の従来技術に従って粘着剤付の偏光板を作製しても、偏光板のそりや剥離フィルムのはがれ、液晶パネルに貼り合せた時の耐久性や光学適性が十分なものではなく、いまだ課題が多いのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-186133号公報
【特許文献2】特開2001-108830号公報
【特許文献3】特開2002-014226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、ポリビニルアルコール系偏光子の片面または両面に貼り付けられる従来のセルロース系、オレフィン系、アクリル系等の偏光子保護フィルムに代替し得る特定の粘着剤皮膜を用いることで、低コストでかつ薄く、光学適性にも優れた粘着剤層付偏光板、さらには、このような粘着剤層付偏光板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、ポリビニルアルコール系偏光子の片面または両面に貼り付けられる従来のセルロース系、オレフィン系、アクリル系等の偏光子保護フィルムに代わり得る粘着剤層を有する粘着剤層付偏光板およびその製造方法を提供する。具体的な本発明の構成は以下の通りである。
【0011】
1.ポリビニルアルコール系偏光子フィルムの少なくとも一方の面に、偏光子保護フィルムとしても機能する粘着剤層が設けられてなり、該粘着剤層が、少なくとも、反応性官能基を有するアクリル共重合体と、該反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤との反応生成物を含んで形成されており、該反応生成物の形成の際に、上記アクリル共重合体の反応性官能基のモル当量に対して上記架橋剤の官能基のモル当量を多くして、粘着剤層内に架橋剤の未架橋の官能基を残留させて、該官能基を上記偏光子フィルムの形成成分であるポリビニルアルコールの水酸基と反応させるようにしたことを特徴とする粘着剤層付偏光板。
【0012】
2.前記反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤が、イソシアネート架橋剤である上記1に記載の粘着剤層付偏光板。
3.前記反応生成物の30℃における貯蔵弾性率が、1MPa以上である上記1または2に記載の粘着剤層付偏光板。
【0013】
4.前記反応性官能基を有するアクリル共重合体が、(メタ)アクリル酸の炭素数1?18のアルキルエステルモノマー(A)と、水酸基またはカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー(B)とを主モノマーとしてなる、反応性官能基として水酸基またはカルボキシル基を有する分子量が50万?200万のアクリル共重合体である前記1?3のいずれか1に記載の粘着剤層付偏光板。
【0014】
5.前記1?4のいずれか1に記載の粘着剤層付偏光板の製造方法であって、予め剥離フィルム上に、反応性官能基を有するアクリル共重合体と、該反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤とを用いて反応生成物を形成する際に、上記アクリル共重合体の有する反応性官能基のモル当量に対して上記架橋剤の官能基のモル当量を多くして、架橋剤の未架橋の官能基が残留した状態の反応生成物を含んで形成された粘着剤皮膜を形成しておき、染料を含浸したポリビニルアルコール系フィルムを延伸乾燥して得られたポリビニルアルコール系偏光子フィルムの片面に、接着剤を用いて偏光子保護フィルムを貼り合わせるのと同時かまたは貼り合わせ後に、偏光子のもう一方の面に、予め形成した上記粘着剤皮膜を貼り合わせて、上記架橋剤の未架橋の官能基を、上記偏光子フィルムの形成成分であるポリビニルアルコールの水酸基と反応させるようにした粘着剤層を形成することを特徴とする粘着剤層付偏光板の製造方法。
【0015】
6.前記1?4のいずれか1つに記載の粘着剤層付偏光板の製造方法であって、予め剥離フィルム上に、反応性官能基を有するアクリル共重合体と、該反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤とを用いて反応生成物を形成する際に、上記アクリル共重合体の有する反応性官能基のモル当量に対して上記架橋剤の官能基のモル当量を多くして、架橋剤の未架橋の官能基が残留した状態の反応生成物を含んで形成された粘着剤皮膜を形成しておき、染料を含浸したポリビニルアルコール系フィルムを延伸乾燥して得られたポリビニルアルコール系偏光子フィルムの両面に、予め形成した上記粘着剤皮膜を貼り合わせて、上記架橋剤の未架橋の官能基を、上記偏光子フィルムの形成成分であるポリビニルアルコールの水酸基と反応させるようにした粘着剤層をそれぞれ形成することを特徴とする粘着剤層付偏光板の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明を特徴づける、反応性官能基を有するアクリル共重合体と、該反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤との反応生成物を含んで形成した粘着剤層は、偏光子の保護機能と液晶セルへの貼り付け機能の両方を持つため、これを利用することで、本発明によれば、従来必須としていた偏光子保護フィルムをなくすことができ、しかも前記したような「そり」の発生の問題等が解消されるので、機能性を損なうことなく偏光板の製造コストダウンができる。また、本発明によれば、偏光子保護フィルムをなくすことにより、偏光板を、薄く・軽くすることができるので、偏光板の薄型化・軽量化も達成可能になる。さらに、上記した粘着剤層を利用する本発明によれば、偏光板保護フィルムでの複屈折の発生によって起こる液晶パネルのムラ現象の改善が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の偏光板の一例を説明するための模式断面図である。
【図2】本発明の偏光板の別の一例を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明の明細書および特許請求の範囲における「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」および「メタクリル」の双方を意味し、また、「(メタ)アクリレート」という用語は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方を意味する。
【0019】
本発明の偏光板は、従来用いられていると同様に偏光子保護フィルムとしても機能する特定の材料からなる粘着剤層を用いることを特徴とする。該粘着剤層は、偏光子保護と液晶セルへの貼り付けの両方の機能を持つため、従来の偏光板の製造方法を大幅に簡略化することが可能となる。以下、これらについて詳述する。
【0020】
<粘着剤層>
まず、本発明の偏光板を特徴づける粘着剤層は、反応性官能基を有するアクリル共重合体と、反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤とを含む粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤」という場合がある)を塗工し、形成した皮膜よりなる。そして、この皮膜は、上記アクリル共重合体と、該アクリル共重合体の反応性官能基のモル当量に対して上記架橋剤の官能基のモル当量を多くして、皮膜内に架橋剤の官能基を残留させたことを特徴とする。以下詳細に各構成成分について説明する。
【0021】
(アクリル共重合体)
上記反応性官能基を有するアクリル共重合体としては、下記のものが好適である。すなわち、分子量が50万?200万であり、(メタ)アクリル酸の炭素数1?18のアルキルエステルモノマーA(以下、単にモノマーAとする)と、反応性官能基として水酸基またはカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーB(以下、単にモノマーBとする)とを主モノマーとした、反応生成物の共重合体である。
【0022】
本発明で使用するモノマーAとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独でも或いは組み合わせてもよい。
【0023】
本発明で使用するモノマーBとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートなどの水酸基含有モノマーや、また、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有モノマーが挙げられる。これらのモノマーBはいずれも粘着剤の分野において公知であり、いずれのものも本発明で使用することができる。
【0024】
モノマーBの好ましい使用量は、モノマーAを100質量部としたときに、モノマーBが0.1?10質量部である。前記モノマーBの使用割合が0.1質量部未満であると少なすぎて、共重合体を架橋剤で架橋させたときに、架橋後の共重合体のゲル分率が低く、粘着剤層の耐久性が劣り、粘着剤層の剥がれが発生したり、粘着剤層に発泡が生じたりする場合があるので好ましくない。一方、前記モノマーBの使用割合が10質量部を超えると、耐久性試験において粘着剤層が剥がれ易くなるため好ましくない。
【0025】
上記で説明した本発明に用いるアクリル共重合体は、さらに、芳香族モノマー単位を含有し得る。ここで、芳香族モノマーとは、構造中に芳香族基を含むモノマーであり、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。これら芳香族モノマーを共重合させることによって粘着剤層の屈折率を上昇させることができるだけでなく、光学部材間の全反射を少なくして、粘着剤層の透過率を上昇させるなどの効果が得られるので、好ましい。芳香族モノマーの使用量は、前記モノマーA100質量部あたり1?30質量部の範囲とすることが好ましい。
【0026】
また、本発明で用いるアクリル共重合体は、さらに、ジメチルメタクリルアミド、ジメチルアクリルアミドなどのジアルキル置換アクリルアミドモノマー単位を含有し得る。これらアクリルアミドモノマーを共重合することによって光学用粘着剤としての耐久性を向上させる効果が得られる。上記アクリルアミドモノマーの使用量は、前記モノマーA100質量部あたり1?10質量部の範囲が好ましい。
【0027】
上記モノマーA、Bおよびその他のモノマーを共重合して得られるアクリル共重合体の重量平均分子量(GPC測定、標準ポリスチレン換算)としては、50万?200万程度のものが好ましい。より好ましくは、100万?150万である。アクリル共重合体の重量平均分子量が50万未満であると、形成される粘着剤層の耐久性が不十分となる。一方、アクリル共重合体の重量平均分子量が200万を超えると、粘度調整のための溶剤量が粘着剤中に増えてしまい、必然的に粘着剤の蒸発残分が低くなり、塗工乾燥時に発泡しやすくなるので好ましくない。
【0028】
本発明で使用するアクリル共重合体は、溶液重合でも乳化重合の何れでも製造できるが、溶液重合が好ましい。重合方法としては、例えば、ラジカル共重合、イオン共重合、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などが挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
本発明の溶液重合に使用可能な溶剤としては、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、脂環式炭化水素類、ハロゲン炭化水素類、ケトン類、アミン類、アルコール類、エーテル類、エステル類、グリコールエーテル類、グリコールエステル類、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、トリメット酸エステル類、リン酸エステル類、ピロメット酸エステル類、セバシン酸エステル類などが挙げられる。
【0030】
また、重合に使用する重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウリルパーオキシドなどの過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリルなどのアゾビス化合物または高分子アゾ重合開始剤などを挙げることができ、これらは単独でもまたは組み合わせても使用することができる。また、上記重合においては、アクリル共重合体の分子量を調整するために従来公知の連鎖移動剤を使用することができる。
【0031】
(架橋剤)
本発明の偏光板の粘着剤層を形成する粘着剤には、上述したアクリル共重合体と共に、該共重合体の反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤を含むものを使用することを特徴とする。上記架橋剤としては、従来の1分子中にグリシジル基を2個以上有するポリグリシジル化合物、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物、1分子中にアジリジニル基を2個以上有するポリアジリジン化合物、1分子中にオキサゾリン基を2個以上有するポリオキサゾリン化合物、金属キレート化合物、またはブチル化メラミン化合物などが挙げられ、いずれも使用することができる。好ましくは、ポリイソシアネート化合物、ポリアジリジン化合物、ポリグリシジル化合物、金属キレート化合物などを使用するとよい。これらは、単独もしくは2種類以上の併用で使用することが可能である。
【0032】
本発明で使用する粘着剤中における上記架橋剤の使用量は、前記アクリル共重合体の反応性官能基(モノマーB由来)と反応する架橋剤の官能基のモル当量が、該共重合体中の反応性官能基のモル当量以上となるようにすることを要す。具体的には、アクリル共重合体の官能基のモル当量に対する、架橋剤の有する官能基のモル当量の比率(架橋剤の有する官能基のモル当量/官能基のモル当量)が、1.2倍以上となるように設計することが好ましい。さらに好ましくは、上記比率が1.5倍以上とするとよい。
【0033】
すなわち、本発明では、架橋剤の有する反応性官能基が、アクリル共重合体の有する反応性官能基のモル当量以上となる範囲で使用するため、アクリル共重合体を架橋剤で架橋し、反応生成物としての粘着剤皮膜を形成した場合に、該皮膜中には未架橋の反応性官能基が存在することとなる。偏光子を形成する場合には、通常、染料を含浸したポリビニルアルコール系フィルムを延伸乾燥して得られた偏光子フィルムが使用される。本発明者らの検討によれば、このようなフィルムの少なくとも一方の面に、上記した材料で粘着剤層を形成すると、形成した粘着剤層中に存在する未架橋の反応性官能基(例えば、イソシアネート基等)が、偏光子フィルムの成分であるポリビニルアルコールの水酸基と反応することで、偏光子フィルムと形成された粘着剤層との密着性がよくなる。この結果、優れた偏光板を得ることができる。
【0034】
これに対し、偏光子フィルムの少なくとも一方の面に形成した粘着剤層中に存在する未架橋の反応性官能基の量が十分でない場合には、より優れた密着性が得られ難くなるので好ましくない。例えば、上記比率が1.2倍未満である場合は、形成した粘着剤層の偏光子フィルム(例えば、ポリビニルアルコール系の偏光子フィルム)に対する良好な密着性が十分に達成できないため、好ましくない。
【0035】
さらに上記粘着剤には、粘着付与樹脂および酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含むことができる。また、シランカップリング剤を含むことができ、粘着剤の分野において公知のシランカップリング剤であれば、いずれも使用することができる。
【0036】
また、上記粘着剤には、さらに粘着力を調整する目的など、必要な特性に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、種々の添加剤が配合されていてもよい。例えば、テルペン系、テルペン-フェノール系、クマロンインデン系、スチレン系、ロジン系、キシレン系、フェノール系または石油系などの粘着付与樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料などが配合されていてもよい。本発明で粘着剤層を形成するための各成分を、配合する方法自体は公知の方法でよく特に限定されない。
【0037】
本発明の偏光板を構成する粘着剤層は、上述した粘着剤組成物を、通常使用されている塗布装置、例えば、ロール塗布装置などを用いて下記の方法で形成することができる。すなわち、上記のような装置を用い、シリコーン樹脂などの剥離剤を表面にコートしたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)などの剥離フィルムの片面或いは両面に、上述した粘着剤を塗工し、該塗工層を乾燥することによって粘着剤層を形成することができる。また、必要に応じて、上記塗工層を加熱架橋または紫外線などの光による硬化をすることによっても粘着剤層を形成することができる。こうして得られた粘着剤層は、上述したアクリル共重合体と架橋剤との反応生成物を含み、さらに架橋剤中の反応性官能基が残留した状態の皮膜を形成している。
【0038】
本発明で使用する粘着剤組成物の塗布量は、乾燥後の粘着剤層の厚さが、10?100μmとなる程度であることが好ましい。上記粘着剤層の厚さを上記範囲内とすることにより、気泡の発生のない粘着剤層となる。
【0039】
(粘着剤層の物性)
上記のような方法で得られるアクリル共重合体及び架橋剤との反応生成物の30℃における貯蔵弾性率が、1MPa以上であることが好ましい。これは、本発明の偏光板を形成する場合、上記反応生成物を含む粘着剤層(以下、単に粘着剤層という)を貼り合わせる偏光子フィルムは延伸されているため、収縮する場合があるが、粘着剤層の貯蔵弾性率が1MPa以上であれば、この収縮を抑えることが可能となるからである。
【0040】
また、本発明で用いる粘着剤組成物は、該粘着剤によって形成した粘着剤層の90℃における粘性係数が、10MPa以上であることが好ましい。これは、本発明の偏光板を形成する場合、通常、延伸した偏光子フィルムが使用されるため、該偏光板を液晶セルに貼り合わせた際に、温度により偏光子が収縮する場合があり、これを抑えることが必要となるからである。粘着剤層の粘性係数が10MPa以上であれば、この収縮をより良好に抑えることができる。
【0041】
また、本発明で用いる粘着剤は、該粘着剤によって形成した粘着剤層の23℃における剥離フィルム保持力が荷重500g、貼り付け面15×25mmにおいて、40℃で60分以上落下しないことが好ましい。これは、本発明の粘着剤層付偏光板は、場合によっては偏光子の表裏の構成が非対称になるために、形成した偏光板に「そり」が生じ、粘着剤層の表面に貼り合わせてある剥離フィルムが剥がれるおそれがあるが、上記のように構成することでこの問題を抑制することができる。すなわち、この保持力が上記要件を満たすようにすれば、粘着剤層付偏光板が剥離フィルムから剥がれてしまうといった問題の発生が抑制される。なお、上記において「剥離フィルム保持力」とは、剥離フィルムと該剥離フィルムに張り合わせてある粘着剤層付偏光板の間の保持力をいい、上記荷重を粘着剤層付偏光板にかけて測定する。
【0042】
以上のような粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成する工程を含む、以下に説明する製造方法により本発明の粘着剤層付偏光板を得ることができる。
【0043】
<偏光板の製造方法>
本発明の粘着剤層付偏光板の製造方法について説明する。本発明の粘着剤層付偏光板は、以下の1)または2)のいずれかの方法で製造できる。
1)予め剥離フィルム上に、反応性官能基を有するアクリル共重合体と、該反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤とを用いて反応生成物を形成する際に、上記アクリル共重合体の有する反応性官能基のモル当量に対して上記架橋剤の官能基のモル当量を多くして、架橋剤の上記官能基が残留した状態の反応生成物を含んで形成された粘着剤皮膜を形成しておき、染料を含浸したポリビニルアルコール系フィルムを延伸乾燥して得られた偏光子の片面に、接着剤を用いて偏光子保護フィルムを貼り合わせるのと同時かまたは貼り合わせ後に、偏光子のもう一方の面に、予め形成した上記粘着剤皮膜を貼り合わせて粘着剤層を形成することを特徴とする製造方法。
【0044】
2)予め剥離フィルム上に、反応性官能基を有するアクリル共重合体と、該反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤とを用いて反応生成物を形成する際に、上記アクリル共重合体の有する反応性官能基のモル当量に対して上記架橋剤の官能基のモル当量を多くして、架橋剤の上記官能基が残留した状態の反応生成物を含んで形成された粘着剤皮膜を形成しておき、染料を含浸したポリビニルアルコール系フィルムを延伸乾燥して得られた偏光子の両面に、予め形成した上記粘着剤皮膜を貼り合わせて粘着剤層をそれぞれ形成することを特徴とする製造方法。
【0045】
上記1)?2)の製造方法により得られる偏光板の構成の一例を、図1、2の模式図にそれぞれ示した。
【0046】
本発明は、従来の偏光板の製造に用いられる偏光子保護フィルムに代替して、特定の粘着剤組成物によって形成された粘着剤層を用いることを特徴とするものである。そのため、それ以外の点においては、従来の偏光板の製造と差異なく、よって、他の接着剤や基材等は、従来の偏光板の製造で使用されるものであれば、特に問題なく使用することができる。上記の方法によって得られた粘着剤層付偏光板は、片面または両面に有する剥離フィルムを剥がして、液晶パネルや各種光学フィルムを貼り合わせることが可能となる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。勿論、本発明は、以下の実施例にのみ限定されるものではない。また、以下において、「部」あるいは「%」とあるのは、質量基準である。
【0048】
<製造例1> ポリビニルアルコール系偏光子フィルム(1)の作製
厚さ80μmのケン化度99.7%のポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸(延伸倍率5倍)し、これを緊張状態に保ったまま、よう素、よう化カリウム水溶液に浸漬し、次いで、ほう酸水溶液で処理、水洗、乾燥を行ってポリビニルアルコール系偏光子フィルム(1)を得た。
【0049】
<製造例2> 粘着剤の作製
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、この反応装置内の空気を窒素ガスに置換した。その後、この反応装置中に、ブチルアクリレートを90部、メチルアクリレートを10部、アクリル酸を2部、酢酸エチルを150部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、これを攪拌させながら、窒素ガス気流中において、65℃で5時間反応させ、重量平均分子量150万のアクリル共重合体1の溶液を得た。
【0050】
上記と同様にして、表1に記載の組成で、共重合体2を得た。
【0051】

【0052】
<実施例1> 構成1の偏光板の作製
製造例1で得た偏光フィルム(1)(厚み:18μm)の一方に、偏光子保護フィルム(2)として、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを、接着剤(3)としてポリビニルアルコール(クラレポバール217)の5重量%水溶液を用いて貼合し、60℃で20分乾燥させた。次いで、剥離フィルム(4)(三菱化学製36ミクロンPET剥離フィルム;MRF35)にアクリル系粘着剤(5)として、製造例2で得た表1に示す粘着剤1を、厚さ25μmになるように塗布乾燥し、上記の偏光子フィルム(1)のもう一方に貼合して、構成1の偏光板を得た。表2に構成をまとめて示した。
【0053】
<実施例2> 構成2の偏光板の作製
製造例1で得た偏光フィルム(1)(厚み:18μm)の両面に、剥離フィルム(4)にアクリル系粘着剤(5)として、製造例2で得た表1に示す粘着剤2を、厚さ25μmになるように塗布乾燥したものを貼合して、偏光板を得た。その後、一方の剥離フィルムをはがし、位相差フィルム(6)を貼合して、位相差フィルム付きの構成2の偏光板を得た。
【0054】
<比較例1>
実施例1の偏光子フィルム(1)の両面に偏光子保護フィルム(2)として、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを貼合した以外は実施例1と同様にして、構成3の偏光板を作製した。
【0055】

【0056】
(削除)
【0057】
<評価>
上記で得られた実施例および比較例の偏光板のそれぞれについて、後述する試験方法にて評価した。具体的には、偏光板の、そり、剥離フィルムのはがれ、耐久性、光学的ムラ、貯蔵弾性率(MPa)、ゲル分率(%)、90℃粘性係数(Pa・s)、および剥離フィルム保持力の評価を行った。この結果、実施例の評価結果は全ての項目で良好であった。評価結果を表3に示した。
【0058】
[貯蔵弾性率]
実施例及び比較例の偏光板を作製する際にそれぞれ使用した粘着剤を剥離フィルムに塗布乾燥し、25μm皮膜を作成し、試験用の粘着剤層とした。該粘着剤層を固体剪断治具に挟み、(株)ユービーエム製Rheogel-E4000を用いて、30℃の時の貯蔵弾性率(G’)を周波数1Hzで測定した。
【0059】
[ゲル分率]
架橋後の粘着剤層を0.2g正確に秤量(W1)した後、酢酸エチル50mlに1日間浸漬した。その後、200メッシュの金網を秤量(W2)し、ろ過をして可溶分を抽出した。その後、乾燥させて不溶部分の重量(W3)を求めた。これら測定値から以下の式を使いゲル分率(重量%)を算出した。
ゲル分率(重量%)=((W3-W2)/W1)×100
【0060】
[粘性係数]
実施例および比較例の各偏光板について、JIS Z-0237の保持力測定法に準じてズレ量を測定した。すなわち、吸収軸が偏光板長辺に対して90°になるように25mm×55mmに裁断して、接着面積が25mm×10mmになるようにガラス板に50℃中で5Kg/cm^(2)の圧力をかけ、18分間保持して貼り付けた試験試料を作製した。そして、得られた試料をそれぞれ、90℃の雰囲気中で9.8Nの荷重をつるし、1時間後のズレを測定した。次に、保持力測定法に準じて測定されたズレ量より以下の[式1]に従い粘着剤層の粘性係数を算出した。
[式1]
ズレ応力(N/m^(2))=荷重/接着面積=9.8N/0.025m×0.01m
ズレ速度(1/s)=ズレ量/時間/厚さ=ズレ量(m)/3600秒/0.000025m
粘性係数(Pa・s)=ズレ応力/ズレ速度
【0061】
[剥離フィルム保持力]
剥離フィルムに貼り合わされている粘着剤層付偏光板の貼り合わせ面積が、幅25mm長さ15mmになるように加工し、荷重500gをかけて、40℃×60分の剥離フィルムと粘着剤間での保持力を測定した。
【0062】
[耐久性試験]
実施例および比較例の各偏光板を、それぞれ200mm×300mmに断裁し、PETフィルムを剥離した後、ガラス基板上に貼り付け、オートクレーブ処理を行い、評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、それぞれ下記項目の試験を行った。
(1)80℃
上記評価用サンプルを、80℃(DRY)の雰囲気下に500時間放置した後、発泡および剥がれの発生状態ついて目視により確認した。評価基準は下記の通りである。
(2)60℃/90%RH
上記評価用サンプルを、60℃/90%RHの雰囲気下に500時間放置した後、発泡および剥がれの発生状態ついて目視により確認した。評価基準は下記の通りである。
・評価基準
○:偏光板に発泡、剥がれが確認されない。
△:偏光板に発泡、剥がれが僅かに確認された。
×:偏光板に発泡、剥がれが確認された。
【0063】
[白抜け試験]
実施例および比較例の各偏光板を用いた80℃耐久試験後の同試料を2枚クロスニコルにして貼り合わせた後、液晶モニターのバックライト上に置き、白抜けの状態を目視で観察した。
・評価基準
○:偏光板に白抜けが観察されなかった。
△:偏光板に白抜けが僅かに観察された。
×:偏光板に白抜けが観察された。
【0064】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明で提供される、反応性官能基を有するアクリル共重合体と、該反応性官能基と反応する官能基を有する架橋剤との反応生成物を含んで形成した粘着剤層は、偏光子の保護機能と液晶セルへの貼り付け機能の両方を持つため、これを利用することで、従来必須としていた偏光子保護フィルムをなくすことができ、しかも前記したような「そり」の発生の問題等が解消されるので、機能性を損なうことなく偏光板の製造コストダウンの達成が期待できる。また、本発明によれば、偏光子保護フィルムをなくすことが可能になるため、偏光板を、薄く・軽くすることができるので、偏光板の薄型化・軽量化も達成できる。さらに、上記した粘着剤層を利用する本発明によれば、偏光板保護フィルムでの複屈折の発生によって起こる液晶パネルのムラ現象の改善が可能になり、より有用な偏光板の提供が可能になる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-04-26 
出願番号 特願2010-278334(P2010-278334)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (G02B)
P 1 651・ 537- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 池田 博一竹村 真一郎  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 樋口 信宏
鉄 豊郎
登録日 2015-02-20 
登録番号 特許第5697023号(P5697023)
権利者 サイデン化学株式会社
発明の名称 粘着剤層付偏光板およびその製造方法  
代理人 竹山 圭太  
代理人 岡田 薫  
代理人 近藤 利英子  
代理人 竹山 圭太  
代理人 菅野 重慶  
代理人 近藤 利英子  
代理人 菅野 重慶  
代理人 岡田 薫  

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