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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B22F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B22F
管理番号 1319175
異議申立番号 異議2015-700020  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-09-18 
確定日 2016-07-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5692950号発明「Zr金属粉末の製造方法」の請求項1ないし16に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5692950号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。 特許第5692950号の請求項1、7?10、15?16に係る特許を維持する。 特許第5692950号の請求項2?6、11?14に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第5692950号の請求項1?16に係る特許についての出願は、2004年 6月29日(優先権主張 2003年 7月15日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日として特許出願され、平成27年 2月13日に特許権の設定の登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 トラディウム・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングにより特許異議の申立てがされ、当審において平成27年11月26日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年 2月29日付けで本件特許権者より意見書の提出及び訂正請求がなされ、平成28年 4月28日付けで特許異議申立人より意見書が提出されたものである。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成28年 2月29日付け訂正請求(以下、「本件訂正」という。)による訂正の内容は以下のア?トのとおりである。
ア 特許請求の範囲の請求項1に「50cm当たり4?3000sの燃焼時間、1?8μmの平均粒度、0.2?5m^(2)/gのBET比表面積及び160℃?400℃の発火点を有するZr金属粉末」とあるのを「50cm当たり4?3000sの燃焼時間、1?8μmの平均粒度、0.2?5m^(2)/gのBET比表面積、160℃?400℃の発火点及び0.7%?1.6%の酸素含量を有するZr金属粉末」に訂正する。
イ 特許請求の範囲の請求項1に「Zr酸化物を、アルカリ土類金属及び/又はアルカリ金属を使用する還元剤と混合し、」とあるのを「Zr酸化物を、Mg、Ca又はBaを少なくとも99質量%の含量で使用する還元剤と混合し、」に訂正する。
ウ 特許請求の範囲の請求項1に「これらの混合物を炉中で、還元反応が開始するまで800?1400℃に加熱し、」とあるのを「これらの混合物を炉中で、還元反応が開始するまで1050?1250℃に加熱し、」に訂正する。
エ 特許請求の範囲の請求項1に「使用されるZr酸化物は、0.5?20μmの平均粒度および0.5?20m^(2)/gのBETによる比表面積を有し、」とあるのを「使用されるZr酸化物は、3?6μmの平均粒度および0.5?4.0m^(2)/gのBETによる比表面積を有し、」に訂正する。
オ 特許請求の範囲の請求項1に「酸化物出発化合物中に占める含量が少なくとも94質量%であり、」とあるのを「酸化物出発化合物中に占める含量が少なくとも96質量%であり、」に訂正する。
カ 特許請求の範囲の請求項2を削除する。
キ 特許請求の範囲の請求項3を削除する。
ク 特許請求の範囲の請求項4を削除する。
ケ 特許請求の範囲の請求項5を削除する。
コ 特許請求の範囲の請求項6を削除する。
サ 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1から6までのいずれか1項記載の方法」とあるのを、「請求項1記載の方法」に訂正する。
シ 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1から7までのいずれか1項記載の方法」とあるのを、「請求項1または7記載の方法」に訂正する。
ス 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1から8までのいずれか1項記載の方法」とあるのを、「請求項1、7または8のいずれか1項記載の方法」に訂正する。
セ 特許請求の範囲の請求項10に「請求項1から9までのいずれか1項記載の方法」とあるのを、「請求項1、7、8または9のいずれか1項記載の方法」に訂正する。
ソ 特許請求の範囲の請求項11を削除する。
タ 特許請求の範囲の請求項12を削除する。
チ 特許請求の範囲の請求項13を削除する。
ツ 特許請求の範囲の請求項14を削除する。
テ 特許請求の範囲の請求項15に「請求項1から14までのいずれか1項記載の方法」とあるのを、「請求項1、7、8、9または10のいずれか1項記載の方法」に訂正する。
ト 特許請求の範囲の請求項16に「請求項1から15までのいずれか1項記載の方法」とあるのを、「請求項1、7、8、9、10または15のいずれか1項記載の方法」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記アの訂正は、還元法により得られる金属粉末には、酸素が含まれるところ(本願明細書【0004】)、訂正前の請求項1、並びに訂正前の請求項1を引用する請求項7、請求項8、請求項9、請求項10、請求項15、及び請求項16に記載された「Zr金属粉末」について「0.7%?1.6%の酸素含量を有する」ことを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正は、【0004】、【0020】、及び【0022】の記載に基づくものといえるので、願書に添付した明細書の範囲内においてしたものであり、新規事項の追加に該当しないし、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記イの訂正は、訂正前の請求項1、並びに訂正前の請求項1を引用する請求項7、請求項8、請求項9、請求項10、請求項15、及び請求項16に記載された、「アルカリ土類金属及び/又はアルカリ金属を使用する還元剤」の還元剤として、「アルカリ土類金属及び/又はアルカリ金属」を含量を特定せず使用するものから「Mg、Ca又はBa」を「少なくとも99質量%の含量」で使用するものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正は、訂正前の請求項13、請求項14、【0015】、【0019】、及び【0021】の記載に基づくものといえるので、願書に添付した明細書、及び、特許請求の範囲の範囲内においてしたものであり、
新規事項の追加に該当しないし、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記ウの訂正は、訂正前の請求項1、並びに訂正前の請求項1を引用する請求項7、請求項8、請求項9、請求項10、請求項15、及び請求項16に記載された「これらの混合物を炉中で、還元反応が開始するまで800?1400℃に加熱し、」の加熱温度を、「800?1400℃」から「1050?1250℃」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正は、訂正前の【0019】、及び【0021】の記載に基づくものといえるので、願書に添付した明細書の範囲内においてしたものであり、新規事項の追加に該当しないし、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記エの訂正は、訂正前の請求項1、並びに訂正前の請求項1を引用する請求項7、請求項8、請求項9、請求項10、請求項15、及び請求項16に記載された「使用されるZr酸化物は、0.5?20μmの平均粒度および0.5?20m^(2)/gのBETによる比表面積を有し、」の、平均粒度を、「0.5?20μm」から「3?6μm」に限定し、比表面積を、「0.5?20m^(2)/g」から「0.5?4.0m^(2)/g」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正は、訂正前の【0019】、及び【0021】の記載に基づくものといえるので、願書に添付した明細書の範囲内においてしたものであり、新規事項の追加に該当しないし、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記オの訂正は、訂正前の請求項1、並びに訂正前の請求項1を引用する請求項7、請求項8、請求項9、請求項10、請求項15、及び請求項16に記載された「使用されるZr酸化物」の酸化物出発化合物中に占める含量を、「少なくとも94質量%」から「少なくとも96質量%」とするもの、すなわち、その含量の数値範囲を減らし縮める訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正は、訂正前の請求項5、【0012】、【0019】、及び【0021】の記載に基づくものといえるので、願書に添付した明細書、及び特許請求の範囲の範囲内においてしたものであり、新規事項の追加に該当しないし、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記カの訂正は請求項2を、上記キの訂正は請求項3を、上記クの訂正は請求項4を、上記ケの訂正は請求項5を、上記コの訂正は請求項6を、上記ソの訂正は請求項11を、上記タの訂正は請求項12を、上記チの訂正は請求項13を、そして上記ツの訂正は請求項14を、それぞれ削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記サ、シ、ス、セの訂正は、上記カ、キ、ク、ケ、コの訂正に伴い、請求項7?10について、請求項2、3、4、5を引用しないものに訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記テ、トの訂正は、上記カ、キ、ク、ケ、コ、ソ、タ、チ、ツの訂正に伴い、請求項15、16について、請求項2、3、4、5、11、12、13、14を引用しないものに訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

そして、これら訂正は一群の請求項1?16に対し請求されたものである。

3.むすび

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正を認める。

第3.本件発明について

上記「第2.訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1、7?10、15?16に係る発明(以下、「本件特許発明1、7?10、15?16」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、7?10、15?16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
50cm当たり4?3000sの燃焼時間、1?8μmの平均粒度、0.2?5m^(2)/gのBET比表面積、160℃?400℃の発火点及び0.7%?1.6%の酸素含量を有するZr金属粉末の製造方法であって、Zr酸化物を、Mg、Ca又はBaを少なくとも99質量%の含量で使用する還元剤と混合し、これらの混合物を炉中で、還元反応が開始するまで1050?1250℃に加熱し、反応生成物を浸出させ、引き続いて洗浄し、乾燥させることによる製造方法であり、
使用されるZr酸化物は、3?6μmの平均粒度および0.5?4.0m^(2)/gのBETによる比表面積を有し、酸化物出発化合物中に占める含量が少なくとも96質量%であり、かつ、
酸化物出発化合物中のFe-不純物の割合が0.2質量%未満(酸化物として計算)であり、酸化物出発化合物中のSi-不純物の割合が1.5質量%未満(SiO_(2)として計算)であり、1000℃での酸化物出発化合物の強熱減量が1質量%未満であることを特徴とする、Zr金属粉末の製造方法。
…(略)…
【請求項7】
酸化物出発化合物中のAl-不純物の割合が0.2質量%未満である(酸化物として計算)、請求項1記載の方法。
【請求項8】
酸化物出発化合物中のFe-及びAl-不純物の割合がそれぞれ0.1質量%未満である(酸化物として計算)、請求項1または7記載の方法。
【請求項9】
酸化物出発化合物中のSi-不純物の割合が0.3質量%未満である(SiO_(2)として計算)、請求項1、7または8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
酸化物出発化合物中のNa-不純物の割合が0.05質量%未満である(Na_(2)Oとして計算)、請求項1、7、8または9のいずれか1項記載の方法。
…(略)…
【請求項15】
反応を保護ガス下に実施する、請求項1、7、8、9または10のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
塩酸で反応生成物の浸出を実施する、請求項1、7、8、9、10または15のいずれか1項記載の方法。」

第4.取消理由の概要

当審において平成27年11月26日付けで通知した取消理由の概要は、以下の(1)、(2)に記載したとおりのものである。

(1)
本件特許の請求項1?16に係る発明は、本件の優先日前に日本国内または外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

甲第1号証:H.Baumgart,Degussa,
SPECIAL METALS,
Characteristics and handling
of pyrotechnical zirconium,
published at the 15th
ITC-congress Karlsruhe,
June 26-29 1984
甲第2号証:http://web.archive.org/web/
20030424042528/http://
ashine.comのサイト中にある酸化ジルコニウム粉末
の成分表,2003年4月24日公開
甲第3号証:Цветные металлы
(ISSN 0372-2929),No.8,1991年,
p71-72
甲第4号証:А.Ш.ВАКС,Е.А.ПЕПЕЛЯЕВА,
Л.А.ВЕДЯШКИНА,
СБОРНИК НАУЧНЫХ ТРУДОВ
(1931-1956гг)Том1ТЕХНОЛОГИЯ,
1959年,p518-528
甲第5号証:特開2003-119506号公報
甲第6号証:独英和活用大辞典、1984年10月28日,第1刷,
廣川書店,527ページ
甲第7号証:Zircoa社の二酸化ジルコニウムのカタログ,2011年

(2)
請求項11、12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、その特許は特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものである。

第5.当審の判断

1.甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の記載がある(ここにおいて、翻訳は当審が作成したものである。)。

(1-1)
「The pyrotechnical zirconium powders usually have an average particle size of less than 10 microns, and are produced by the reduction of fine zirconium oxides with alkaline earth metals. The characteristics depend on the raw materials used and on the reduction conditions. Finest zirconium oxides reduced with magnesium produce powders of the greatest fineness and shortest burning time. The reduction with calcium leads to a higher metal content.」(「1.Introduction」の右欄1行?11行)
「パイロテクニクスのジルコニウム粉末は、通常、10ミクロン未満の平均粒度を有し、そして微細な酸化ジルコニウムをアルカリ土類金属で還元することによって製造される。その特性は使用された原料及び還元条件に依存する。非常に微細な酸化ジルコニウムをマグネシウムで還元することにより、最も微細で、かつ、燃焼時願が最も短い粉末が製造される。カルシウムで還元した場合、金属含有量がより高いものとなる。」

(1-2)
「In Table 2, the most important characteristics of commercial zirconium powders are complied. …(略)…The specific surface of commercial powders lies between 0.3 and 4 m^(2)/g.」(「2.Characteristics」の第1頁目の左欄1行?44行)
「表2に、市販のジルコニウム粉末の最も重要な特性をまとめる。…(略)…市販の粉末の比表面積は、0.3?4m^(2)/gである。」

(1-3)






当審註:表2には、ジルコニウム粉末(「Zr CX」?「Zr ZT」)が50cm当たり7?425sの燃焼時間、1.7?5.5μmの平均粒度、及び180?285℃の発火点を有することが記載されている。

2.甲第2号証の記載
甲第2号証には、以下の表が記載されている。








3.甲第3号証の記載
甲第3号証には、以下の記載がある。

(3-1)


」(第71頁左欄第3?4段落)
「カルシウムサーマルプロセスは1,100℃までの温度で行われる。該条件下では、カルシウムを除いて、ジルコニウム粉末を含む全ての成分が固体状態にある。カルシウムサーマル還元の間におけるジルコニウム粉末の粉末度に影響を及ぼす主要な要因には、使用したZrO_(2)の粒度及び成分が融合する間の高温における金属粉末の滞留時間が含まれる。これらの要因を、次のフローチャートに従って実験室プラントで調査した。
二酸化ジルコニウム及び金属カルシウムのチップのそれぞれを化学量論量の50%ずつを交互に層状に反応器に仕込んだ;その仕込んだ層状物を加圧により圧縮した;装置を密閉し、アルゴンを充填し、そして1,100℃までの温度に90分間維持した。冷却後、内容物を反応器から取り除き、そして塩酸及び蒸留水で処理してCaOを除去した。」

(3-2)


」(第71頁右欄第3?4段落)
「図は、酸化ジルコニウムの粒度がジルコニウム粉末の粉末度に及ぼす効果について得られた試験結果を示す。還元は、粒子寸法の再分布によって達成され、その際、ジルコニウム粒子の還元は、その後の融合よりもはるかに速く起こる。
明らかなように、一次分布関数とは無関係に、最大がRk=5μmにある万能関数へ向かう傾向がある。実際には、還元前に、粒度分布の最大が、Rk=5μmの左側であった場合、還元後にはその右側に移行する(図а参照);還元前にピークが、Rk=5μmの右側であった場合、分布曲線は左側に移行する(図б参照)。図bで最大にあるその移行は、>10μmのZrO_(2)粒子が、還元の間により小さい粒子になるという事実によって明らかに説明できる。最大がRk=5μm付近であった場合、曲線のピークは同じ位置に留まる(図в参照)。」

(3-3)
「図а



(3-4)
「図б



(3-5)
「図в



4.甲第4号証の記載
甲第4号証には、以下の記載がある。

(4-1)


」(第522頁)
「得られた、精製された二酸化ジルコニウムは、0.08?0.01%のFe_(2)O_(3)、0.08?0.1%のTiO_(2)、0.04%のCaO及び0.05?0.08%のSiO_(2)を含有していた。
文献は、二酸化ジルコニウムをマグネシウムで還元する方法[5?6]を用いたジルコニウム粉末の製造に言及しているが、技術的なプロセスに関する正確な情報が欠如している。このため、次の観点について検証することが極めて重要であった:混合物の組成、還元条件、純粋なジルコニウムの形態等。試験を行うに際し、二酸化ジルコニウム(粒度<80メッシュ)に、以下の式において理論的に要求される量と比較して10?50%過剰にマグネシウム粉末を加えて混合した:
ZrO_(2)+2Mg→Zr+2MgO
還元プロセスのために層間の接触をより良好にするという目的で、二酸化ジルコニウムとマグネシウム粉末をロットに圧縮した。
900?1,150℃の温度で、しっかりと密閉された鋼製シリンダー中で還元を行った。還元後、該ロットを1%塩酸で処理し;得られた化合物を200メッシュの箭にかけ、そしてその後、マグネシウム、鉄及びその他付随して生じた成分を浸出させるために、18%塩酸で加工した。得られたジルコニウム粉末から塩素を洗い落としてからその粉末を圧縮し、そして60?75℃で乾燥させた。」

(4-2)


」(第523?524頁)



図7:二酸化ジルコニウムをマグネシウムで還元することによってジルコニウムを製造するための技術的なシーケンス

1,000℃での還元温度で得られたジルコニウム粉末は、1,150℃より高い自己発火能を示すことに注意。1,150℃のこの還元温度を、理論的に要求される量に対して150%の割合のマグネシウムと組み合わせることは、技術的なプロセス(図7)に最適な条件であると考えられる。試験から得られたその知見を、以下に列挙する特性を示すジルコニウム粉末を製造するのに使用した。

粉末の色: 暗黄色
発火温度(℃): 200?225
ジルコニウム含有量(%): 97?98
付随して生じた成分の含有量(%):
Fe 0.12
Ca 0.02
Si 0.2
C1 0.4
Ti 0.3
Mg 0.5」

5.甲第5号証の記載
甲第5号証には、以下の記載がある。

(5-1)
「【請求項1】
次の各工程からなるニオブおよび/またはタンタルの粉末の製造法。
(1)ニオブおよび/またはタンタルの酸化物をアルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれた1種以上で還元して、(NbTa)Ox、但し式中x=0.06?0.35、で表される低級酸化物粉末を得る第1段階還元工程、
(2)第1段階還元工程で生成したアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の酸化物を除去する工程、
(3)第1段階還元工程で得られた低級酸化物粉末をアルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれた1種以上の融液を用いて400?1200℃の温度範囲で還元して、ニオブおよび/またはタンタルの粉末を得る第2段階還元工程。」

(5-2)
「【実施例】

【0032】
ニオブ製反応容器2に蓋2aをして、該蓋2aに設けたガス供給孔からアルゴンガスを100ml/minの割合で供給しつつ、電気炉1の発熱体に1aにより反応容器2内を1000℃の温度に保持して、6時間反応させた。冷却後、トレイ6内の低級酸化物粉末を取り出して、1規定の塩酸に浸漬してマグネシウム酸化物を溶解除去し、さらに水洗及び乾燥を行った。得られた低級酸化物粉末は、NbO_(0.3)の組成で、360gであった。
【0033】
低級酸化物粉末をそのまま前記ニオブ製反応容器2のトレイ6に挿入し、マグネシウム(関東化学社製、切削片状、純度99%以上)を0.9モル当量、トレイ6内の低級酸化物粉末に添加混合し、800℃、2時間保持して融解反応させた。」

6.甲第6号証の記載
甲第6号証には、「ドイツ語の『Gluehverlust』が、甲第2号証に記載の『Ignition loss』と対応すること」(当審註:下線部の箇所はドイツ語原文のuのウムラウトであり、ueで代替表記した。)が記載されている。

7.甲第7号証の記載
甲第7号証には、以下の記載がある。

「Zircoa A-grain (zirconium oxide, ZrO_(2), or zirconia) is synthesized from zircon sand (ZrO_(2) ・SiO_(2)) using a solid-state reaction process. The Zircoa A Grain process yields a consistently high purity zirconia composed of monoclinic phase particles. Mean particle size is 2.1 microns by Microtrac analysis. Surface area is 1 m^(2)/g by BET analysis method.」(第1頁)
「Zircoa A-grain(二酸化ジルコニウム、ZrO_(2)、又はジルコニア)は、固体反応プロセスを用いてジルコンサンド(ZrO_(2)・SiO_(2))から合成される。Zircoa A-Grainプロセスは、単斜相粒子からなるジルコニアを一貫して高い純度で生成する。マイクロトラック(Microtrac)分析による平均粒度は2.1ミクロンである。BET分析法による比表面積は1m^(2)/gである。」

8.判断

請求項2?6、11?14は、訂正により削除された。
これにより、取消理由(1)の対象とした、請求項2?6、11?14に係る特許、及び、取消理由(2)の対象とした、請求項11?12に係る特許は存在しなくなった。
そこで、以下においては、本件特許発明1、7?10、15?16に係る特許についてのみ、取消理由(1)及び証拠により取り消すべきか否かを検討する。

(1)本件特許発明1に係る特許についての検討

(ア)
記載事項(1-1)?(1-3)の内容を本件特許発明1の記載ぶりに則して整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「50cm当たり7?425sの燃焼時間、1.7?5.5μmの平均粒度、0.3?4m^(2)/gのBET比表面積及び180?285℃の発火点を有するジルコニウム粉末の製造方法であって、微細な酸化ジルコニウム粉末を、マグネシウムやカルシウムで還元する方法。」

(イ)
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「50cm当たり7?425sの燃焼時間」、「1.7?5.5μmの平均粒度」、「0.3?4m^(2)/gのBET比表面積」、「180?285℃の発火点」、「ジルコニウム粉末」、「微細な酸化ジルコニウム粉末」及び「マグネシウムやカルシウム」は、それぞれ本件特許発明1の「50cm当たり4?3000sの燃焼時間」、「1?8μmの平均粒度」、「0.2?5m^(2)/gのBET比表面積」、「160℃?400℃の発火点」、「Zr金属粉末」、「Zr酸化物」及び「Mg、Ca又はBaを少なくとも99質量%の含量で使用する還元剤」に相当する。

してみると、両者は、
「50cm当たり4?3000sの燃焼時間、1?8μmの平均粒度、0.2?5m^(2)/gのBET比表面積、160℃?400℃の発火点を有するZr金属粉末の製造方法であって、Zr酸化物を、Mg、Ca又はBaを少なくとも99質量%の含量で使用する還元剤と反応させる、Zr金属粉末の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:本件特許発明1においては、Zr金属粉末が「0.7%?1.6%の酸素含量」を有するものであるのに対して、甲1発明はかかる事項を有していない点。

相違点2:本件特許発明1においては、Zr酸化物を「還元剤と混合し、これらの混合物を炉中で、還元反応が開始するまで1050?1250℃に加熱し、反応生成物を浸出させ、引き続いて洗浄し、乾燥させる」のに対して、甲1発明はかかる事項を有していない点。

相違点3:本件特許発明1においては、Zr酸化物が「3?6μmの平均粒度および0.5?4.0m^(2)/gのBETによる比表面積を有し、酸化物出発化合物中に占める含量が少なくとも96質量%であり、かつ、酸化物出発化合物中のFe-不純物の割合が0.2質量%未満(酸化物として計算)であり、酸化物出発化合物中のSi-不純物の割合が1.5質量%未満(SiO^(2)として計算)であり、1000℃での酸化物出発化合物の強熱減量が1質量%未満である」ものであるのに対して、甲1発明はかかる事項を有していない点。

そこで、上記相違点について検討する。

(ウ)相違点1について
例えば本件明細書【0004】に「金属粉末の製造は還元法により行われることができる。…(略)…得られた金属粉末の酸素含量はこの方法の場合に1?5%である。」と記載されているように、還元法により製造された金属粉末は「1?5%」の酸素を含み得るから、甲1発明に係るZr金属粉末も同程度の酸素を含むと解される。
そうすると、本件特許発明1に係るZr金属粉末の酸素含量と、甲1発明に係るZr金属粉末の酸素含量とは、1?1.6%の範囲で重複しており、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。

(エ)相違点2について
甲1発明は、「Zr酸化物」を、「マグネシウムやカルシウム」を「還元剤」として反応させる「Zr金属粉末の製造方法」に係るものである。

また、甲第3号証には、記載事項(3-1)?(3-2)に開示されるように、「二酸化ジルコニウム」及び「金属カルシウム」のチップを「1,100℃までの温度」に維持し、冷却後、内容物を「塩酸」及び「蒸留水」で処理し、「ジルコニウム粉末」を得ることが、記載されている。

さらに、甲第4号証、及び甲第5号証には、記載事項(4-1)、記載事項(5-2)にそれぞれ開示されるように、金属酸化物を還元して金属粉末を得る際に、洗浄された金属粉末を乾燥することが、記載されている。

そして、Zr酸化物を還元してZr金属粉末を得る際の製造条件として、公知の製造条件を採用することは慣用手段であるから、甲1発明に係るZr金属粉末の製造方法において、例えば甲第3号証に記載されているように、「Zr酸化物」を還元する際の温度を「1,100℃までの温度」に維持し、冷却後、内容物を「塩酸」及び「蒸留水」で処理し、「ジルコニウム粉末」を得ること、及び得られた「ジルコニウム粉末」を乾燥させることは、それぞれ当業者が適宜なし得る設計的事項である。

(オ)相違点3について

本件発明は、「50cm当たり4?3000sの燃焼時間及び160℃?400℃の発火点及び個々の場合にこれを上回り有する、Zr金属粉末を提供すること」(【0007】)を課題として、本件発明1に記載されているように、Zr酸化物を還元してZr金属粉末を得る際に用いるZr酸化物を、「3?6μmの平均粒度および0.5?4.0m^(2)/gのBETによる比表面積を有し、酸化物出発化合物中に占める含量が少なくとも96質量%であり、かつ、酸化物出発化合物中のFe-不純物の割合が0.2質量%未満(酸化物として計算)であり、酸化物出発化合物中のSi-不純物の割合が1.5質量%未満(SiO_(2)として計算)であり、1000℃での酸化物出発化合物の強熱減量が1質量%未満である」ものとすることによって、上記課題を解決するものである(【0012】)。

一方、記載事項(1-1)の「パイロテクニクスのジルコニウム粉末は、…(略)…その特性は使用された原料及び還元条件に依存する。…」(下線部は当審にて付与した。)という記載から、還元条件を上記(エ)で検討したとおり、甲第3号証記載の条件に限定したとしても、甲1発明に係るZr金属粉末の特性は、原料であるZr酸化物に依存することがわかる。

そして、甲第1号証の記載をみても、甲第3号証記載の還元条件で所望のZr金属粉末を得るにあたり原料としてどのようなZr酸化物を用いるか、例えば、用いるZr酸化物の、平均粒度、BETによる比表面積、酸化物出発化合物中に占める含量、酸化物出発化合物中のFe-不純物の割合、酸化物出発化合物中のSi-不純物の割合、1000℃での酸化物出発化合物の強熱減量については、記載も示唆もされていない。

そうすると、仮に甲1発明において、それ自体は公知である、甲第2?4号証のいずれかに記載されたZr酸化物を原料として用い、ジルコニウム粉末を製造したとしても、本件発明の上記課題を解決できることを当業者が予測可能であるとはいえない。

してみると、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明と、甲第2号証?甲第5号証に記載された発明及び周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。

(2)本件特許発明7?10、15?16に係る特許についての検討

本件特許発明7?10、15?16は、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、上記(1)にて示した判断と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明と、甲第2号証?甲第7号証に記載された発明及び周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。

第6.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、7?10、15?16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項請求項1、7?10、15?16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項2?6、11?14に係る特許は存在しなくなったので、これらの特許に対しては、特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50cm当たり4?3000sの燃焼時間、1?8μmの平均粒度、0.2?5m^(2)/gのBET比表面積、160℃?400℃の発火点及び0.7%?1.6%の酸素含量を有するZr金属粉末の製造方法であって、Zr酸化物を、Mg、Ca又はBaを少なくとも99質量%の含量で使用する還元剤と混合し、これらの混合物を炉中で、還元反応が開始するまで1050?1250℃に加熱し、反応生成物を浸出させ、引き続いて洗浄し、乾燥させることによる製造方法であり、
使用されるZr酸化物は、3?6μmの平均粒度および0.5?4.0m^(2)/gのBETによる比表面積を有し、酸化物出発化合物中に占める含量が少なくとも96質量%であり、かつ、
酸化物出発化合物中のFe-不純物の割合が0.2質量%未満(酸化物として計算)であり、酸化物出発化合物中のSi-不純物の割合が1.5質量%未満(SiO_(2)として計算)であり、1000℃での酸化物出発化合物の強熱減量が1質量%未満であることを特徴とする、Zr金属粉末の製造方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
酸化物出発化合物中のAl-不純物の割合が0.2質量%未満である(酸化物として計算)、請求項1記載の方法。
【請求項8】
酸化物出発化合物中のFe-及びAl-不純物の割合がそれぞれ0.1質量%未満である(酸化物として計算)、請求項1または7記載の方法。
【請求項9】
酸化物出発化合物中のSi-不純物の割合が0.3質量%未満である(SiO_(2)として計算)、請求項1、7または8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
酸化物出発化合物中のNa-不純物の割合が0.05質量%未満である(Na_(2)Oとして計算)、請求項1、7、8または9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
反応を保護ガス下に実施する、請求項1、7、8、9または10のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
塩酸で反応生成物の浸出を実施する、請求項1、7、8、9、10または15のいずれか1項記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-06-30 
出願番号 特願2006-519794(P2006-519794)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B22F)
P 1 651・ 121- YAA (B22F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 米田 健志  
特許庁審判長 鈴木 正紀
特許庁審判官 小川 進
河野 一夫
登録日 2015-02-13 
登録番号 特許第5692950号(P5692950)
権利者 ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
発明の名称 Zr金属粉末の製造方法  
代理人 篠 良一  
代理人 久野 琢也  
代理人 二宮 浩康  
代理人 虎山 一郎  
代理人 神谷 雪恵  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 星 公弘  
代理人 高橋 佳大  
代理人 篠 良一  
代理人 星 公弘  
代理人 来間 清志  
代理人 江崎 光史  
代理人 来間 清志  
代理人 久野 琢也  
代理人 上西 克礼  
代理人 神谷 雪恵  
代理人 高橋 佳大  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  
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