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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C02F |
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管理番号 | 1319211 |
異議申立番号 | 異議2016-700506 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-06-02 |
確定日 | 2016-09-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5828328号発明「逆浸透膜装置の運転方法、及び逆浸透膜装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5828328号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5828328号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成25年2月20日に特許出願され、平成27年10月30日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 特許業務法人虎ノ門知的財産事務所により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第5828328号の請求項1?5に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものである。 第3 申立理由の概要 特許異議申立人は、証拠として甲1?21号証を提出し、本件請求項1?5に係る発明は、甲1号証記載の発明と甲2、3号証記載の発明との組合せ、又は甲1号証記載の発明と甲4号証記載の発明との組合せ、及び周知技術(甲5?21号証)から当業者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1?5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 甲1号証:「膜の劣化とファウリング対策 膜汚損防止・洗浄法からトラブルシューティングまで」、p.296-301、発行者 吉田隆、発行日 2008年9月5日 初版第一刷発行 甲2号証:Peter Moss, Jose Manrique de Lara y gil, "Twenty-five years of desalination in the Canary Islands : an historical review of the application of reverse osmosis using case studies and operational experience", Desalination 125 (1999), p.17-23 甲3号証:FLUID SYSTEMS TFC-HR8" ELEMENTS, Koch Membrane Systems, Inc.、(2004) 甲4号証:編者 公益社団法人 化学工学会、改訂七版 化学工学便覧、発行所 丸善出版株式会社 平成23年9月20日発行、p.620-625 甲5号証:亀田豊、橘治国、清水達雄、三次元励起・蛍光スペクトルを用いた溶存有機物のキャラクタリゼーション、環境工学研究論文集・第36巻・1999、p.209-215 甲6号証:Xing Zheng et al., Technische Universitat Berlin, Identification and quantification of major organic foulants in treated domestic wastewater affecting filterability in dead-end ultrafiltration, WATER RESEARCH 43 (2009) p.238-244 甲7号証:Guo Jin et al., Beijing University of Technology, Dissolved organic matter in biologically treated sewage effluent (BTSE): Characteristics and comparison, Desalination 278 (2011), p.365-372 甲8号証:DUNCAN J. BARKER et al., Imperial College of Science, A REVIEW OF SOLUBLE MICROBIAL PRODUCT (SMP) IN WASTEWATER TREATMENT SYSTEMS, Water Research, Vol.33, No.14, p.3063-3082, 1999 甲9号証:東レTMLシリーズのスペックシート、2011年7月発行 甲10号証:General Electric Company, Power & Water, AG Series Standard Brackish Water RO Elements, July 2010 甲11号証:C. R. Bartels et al., Hydranautics, Design considerations for wastewater treatment by reverse osmosis, Water Science & Technology, Vol.51, No.6-7, p.473-482 (2005) 甲12号証:LFC Low Fouling Composite Membrane Series, 日東電工、1998年4月 甲13号証:LFC Low Fouling Composite Membrane Technology, 日東電工、2005年6月 甲14号証:M. Thompsona et al. Memcor Australia, Windsor, NSW, Australia, CASE STUDY - KRANJI HIGH GRADE WATER RECLAMATION PLANT, SINGAPORE, IMSTEC '03, September 2003, Sydney, Australia 甲15号証:water-technology.net, Sulaibiya Wastewater Treatment, Kuwait, 印刷日 2006/01/17, http://www.water-technology.net/projects/sulaibiya/specs.html 甲16号証:J. W. Hatt et al., Screening optimisation for indirect potable reuse, Water Science & Technology 63.12, p.2846-2852, (2011) 甲17号証:kuwait's giant membrane plant starts to take shape, Desalination & Water Reuse Vol.13/2, p.30, p.33-34 甲18号証:大熊 那夫紀、(株)日立プラントテクノロジー、「ドバイにおけるMBR-ROを用いた再利用システム」、Bulletin of the Society of Sea Water Science, Japan, 63, p.360-363 (2009) 甲19号証:小越眞佐司他、国土交通省国土技術政策総合研究所下水道研究部下水処理研究室、水循環への膜処理技術の応用、土木技術資料 54-4、p.22-25(2012) 甲20号証:「排水・汚水処理技術集成」、p.153-165、発行者 吉田隆、発行日 2007年5月25日 初版第一刷発行 甲21号証:Guo Jin et al., Beijing University of Technology, Dissolved organic matter in biologically treated sewage effluent (BTSE): Characteristics and comparison, Desalination 278 (2011), p.370 第4 甲1号証の記載 主たる証拠である甲1号証には、「スパイラル型RO膜エレメントのサイズには、2inch、4inch、8inchがある」こと(第297頁第17?20行)、RO膜システムに供給される供給水の水源として、SDI(15分値)が4、TOCが10[mg/L]である「排水」があること(第300頁表3)が記載されている。 また、甲1号証の第301頁図2には、スパイラル型8inchエレメントにおけるRO膜供給水のFI値が2又は3のときの、エレメント1本あたりの設計膜ろ過水量が記載されている。 そして、異議申立人は、「排水のSDI(15分値)は4である」こと、「FI(SDI)値で表される水質が、FI≒3のときのスパイラル型8inchエレメント1本あたりの設計膜ろ過水量は、10?16(m^(3)/d/本)である」こと、及び「8インチエレメントの膜面積は、34?41m^(3)が主流である」こと(甲9、10号証)から、甲1号証に記載の発明における透過流束は0.24(=10/41)?0.47(=16/34)[m/d]と導出できるとしている。 ここで、水質を表す指標である「FI(Fouling Index)」と「SDI(Silt Density Index)」とは略等価であることが当業者の技術常識であるが(要すれば、財団法人 日本規格協会編『JIS工業用語大辞典【第5版】』(2001年発行)の第2315頁、「汚れ指標」の項を参照)、図2に記載されたFI値と、表3に記載された「排水」のSDI(15分値)とは値が異なるから、図2に記載された膜ろ過水量を、表3に記載された「排水」の膜ろ過水量として採用することはできず、該膜ろ過水量に基づいて透過流束を導出することもできない。 したがって、甲1号証には、「スパイラル型8inchエレメントを用い、SDI(15分値)が4、TOCが10[mg/L]である排水を処理するRO膜システム」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているにとどまる。 第5 判断 1.請求項4に係る本件特許発明について (1)請求項4に係る本件特許発明と甲1発明とを対比すると、請求項4に係る本件特許発明は、膜面積(m^(2))≧n^(2)×(11/16)、ここでエレメントの直径nは8インチと特定されているから、すなわち膜面積が44m^(2)以上のスパイラル型逆浸透膜エレメントを有するのに対し、甲1発明はエレメントの膜面積が不明である点で少なくとも相違する。 ここで、異議申立人は、上記相違点について、甲2、3号証に記載された発明、又は甲4号証に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易に想到し得るものであると主張している。 (2)甲1発明と同様のRO膜システムについて記載された甲2、3号証をみると、甲3号証の「SPECIFICATIONS」には、Membrane Area(当審訳:膜面積)が53.4m^(2)の8インチROエレメント「8832 HR-575 Magnum」が記載されている。 しかしながら、該ROエレメントは、甲3号証の「PRODUCT DESCRIPTION」に記載のとおり、「High rejection for brackish water treatment(当審訳:塩水処理における高い阻止率)」を目的とするものである。 また、「Fluid Systems TFC 8832 HR Magnum elements」を使用したことが記載されている(第20頁右欄第10?12行)甲2号証の記載を参酌しても、その「Abstract」第2行には、「to desalinate brackish water and seawater(当審訳:塩水及び海水の脱塩のため)」と記載されているにすぎず、甲2、3号証のいずれも、膜面積が53.4m^(2)の上記ROエレメントを、高分子有機物を含む原水に適用することについて示唆するものではない。 したがって、甲1発明の、「TOCが10[mg/L]である排水」が高分子有機物を含む原水に相当するものであったとしても、甲3号証に記載された8インチROエレメントを、甲1発明の「排水」に適用する動機付けがない。 (3)次に、甲4号証には、脱塩/海水淡水化プロセス設計において、所要膜エレメント本数が、プラント規模/(設計平均透過流束×膜面積)で求められること、及び、一般的な8インチスパイラル膜エレメントとして、膜面積が35m^(2)のものが記載されている。(第621頁右欄?第622頁左欄、12・2・3 a.(ii)(3)) しかしながら、甲4号証も、脱塩/海水淡水化プロセス設計に関するものであって、膜エレメントを高分子有機物を含む原水に適用することについて記載も示唆もなく、更に膜面積が44m^(2)以上のスパイラル型逆浸透膜エレメントを用いることについても、何ら記載がない。 (4)甲5?21号証にも、膜面積が44m^(2)以上のスパイラル型逆浸透膜エレメントを用いることについて、何ら記載されていない。 (5)したがって、請求項4に係る本件特許発明は、甲1号証記載の発明と甲2、3号証記載の発明との組合せ、又は甲1号証記載の発明と甲4号証記載の発明との組合せ、及び甲5?21号証に例示される周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2.請求項1?3及び5に係る本件特許発明について 請求項1?3に係る本件特許発明は、請求項4に係る逆浸透膜装置の運転方法の発明であるから、上記請求項4に係る本件特許発明についての判断と同様の理由により、甲1号証記載の発明と甲2、3号証記載の発明との組合せ、又は甲1号証記載の発明と甲4号証記載の発明との組合せ、及び甲5?21号証に例示される周知技術から当業者が容易になし得るものではない。 また、請求項5に係る本件特許発明は、請求項4に係る逆浸透膜装置を用いた生物処理水の処理方法の発明であるから、同様に甲1号証記載の発明と甲2、3号証記載の発明との組合せ、又は甲1号証記載の発明と甲4号証記載の発明との組合せ、及び甲5?21号証に例示される周知技術から当業者が容易になし得るものではない。 第6 むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-09-13 |
出願番号 | 特願2013-31032(P2013-31032) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C02F)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 富永 正史 |
特許庁審判長 |
大橋 賢一 |
特許庁審判官 |
永田 史泰 中澤 登 |
登録日 | 2015-10-30 |
登録番号 | 特許第5828328号(P5828328) |
権利者 | 栗田工業株式会社 |
発明の名称 | 逆浸透膜装置の運転方法、及び逆浸透膜装置 |
代理人 | 重野 剛 |