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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する C12N
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C12N
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C12N
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C12N
管理番号 1319411
審判番号 訂正2016-390046  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2016-03-25 
確定日 2016-07-22 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5030958号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5030958号の明細書、特許請求の範囲及び図面を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯

本件訂正審判の請求に係る特許第5030958号(以下「本件特許」という。)は、2006年9月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年9月29日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願(特願2008-533486号)の請求項1?19に係る発明について、平成24年7月6日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、平成28年3月25日に本件訂正審判の請求がなされた。

第2 請求の趣旨及び理由

本件訂正審判請求の趣旨は「特許第5030958号の明細書、特許請求の範囲及び図面を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」というものであり、すなわち、本件特許に係る願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)、特許請求の範囲及び図面を下記訂正事項のとおりに訂正することを求めるというものである。
請求人が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。

1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、
「前記ジヌクレオチドが、一般式:
Z-L-G、またはG-L-Z
(式中、Zは5-アザ-シトシンであり、Gはグアニンであり、LはZおよびGに共有結合した化学的リンカーである)
を有する」とあるのを、
「前記ジヌクレオチドアナログが、5’-DpG-3’または5’-GpD-3’であり、ここで、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Gはデオキシグアノシンである」と訂正する。

2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2?10、15および16を削除する。

3 訂正事項3
明細書の【発明の名称】並びに段落【0001】、【0008】、【0011】、【0028】、【0031】、【0034】、【0035】、【0036】、【0039】、【0048】、【0053】、【0054】、【0062】、【0063】、【0068】、【0070】、【0080】、【0088】及び【0092】にそれぞれ記載された「オリゴヌクレオチド」とあるのを、「ジヌクレオチド」と訂正する。

4 訂正事項4
明細書の段落【0001】において、
「5-アザ-2’-デオキシシチジンまたは5-アザ-シチジンの形態」とあるのを、
「5-アザ-2’-デオキシシチジンの形態」と訂正する。

5 訂正事項5
明細書の段落【0008】において、
「5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビン)または5-アザ-シチジンの形態」とあるのを、
「5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビン)の形態」と訂正する。

6 訂正事項6
明細書の段落【0011】及び【0039】において、
「5’-DpG-3’、5’-GpD-3’、5’-DpGpD-3’、5’-GpGpD-3’、5’-GpDpG-3’、5’-GpDpD-3’、5’-DpDpG-3’、5’-DpGpG-3’、5’-GpDpD-3’、5’-DpGpA-3’、5’-DpGpDpG-3’、5’-DpGpGpD-3’、5’-GpDpGpD-3’、5’-GpDpDpG-3’、5’-DpGpDpGpA-3’(式中、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Aは2’-デオキシアデノシンであり、Gは2’-デオキシグアノシン)」であるのを、
「5’-DpG-3’、5’-GpD-3’(式中、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Gは2’-デオキシグアノシンである)」と訂正する。

7 訂正事項7
明細書の段落【0031】において、
「または5-アザ-シチジン(5-アザC)の形態」とあるのを、
「の形態」と訂正する。

8 訂正事項8
明細書の段落【0031】及び【0036】において、
「1つまたは複数の5-アザ-シトシン残基」とあるのを、
「1つの5-アザ-シトシン残基」と訂正する。

9 訂正事項9
明細書の段落【0061】において、
「Z残基とG残基との間またはオリゴヌクレオチドアナログ中の塩基残基のいずれか2つの間のリンカー」とあるのを、
「ジヌクレオチドアナログ中の塩基残基の間のリンカー」と訂正する。

10 訂正事項10
明細書の段落【0061】において、
「2’-デオキシリボースまたはリボースを」とあるのを、
「2’-デオキシリボースを」と訂正する。

11 訂正事項11
明細書の段落【0061】において、
「修飾することができ、リボースの2’-ヒドロキシル基を2’メトキシ基、2’-メトキシエチル基、または2’-フルオロ基となるように修飾することができる。」とあるのを、
「修飾することができる。」と訂正する。

12 訂正事項12
明細書の段落【0061】において、
「同様に任意選択的に、天然の糖ホスホロジエステル骨格を、タンパク質ヌクレオチド(PNA)骨格に置換することができ、この骨格は、ペプチド結合によって結合した反復N-(2-アミノエチル)-グリシン単位からできている。PNA骨格を有するこのようなオリゴヌクレオチドアナログの例を、図24Bに示す。この例は、5-アザ-シトシンがPNA骨格を介してグアニンに結合している。天然のオリゴヌクレオチドよりもヌクレアーゼ分解に対する耐性が高いように設計されたオリゴヌクレオチドのための他のリンカー型は、米国特許第6,900,540号および同第6,900,301号(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。」とあるのを、
「天然のオリゴヌクレオチドよりもヌクレアーゼ分解に対する耐性が高いように設計されたオリゴヌクレオチドのための他のリンカー型は、米国特許第6,900,540号および同第6,900,301号(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。」と訂正する。

13 訂正事項13
明細書の段落【0221】において、
「時ヌクレオチド」とあるのを、
「ジヌクレオチド」と訂正する。

14 訂正事項14
明細書の段落【0221】において、
「2.固相上での・・・・の合成」とあるのを、
「2.固相上での・・・・の合成(テトラヌクレオチドは参考)」と訂正する。

15 訂正事項15
明細書の段落【0230】において、
「3.DpGおよびGpDジ、トリ、およびテトラヌクレオチドによるDNAメチル化の阻害」とあるのを、
「3.DpGおよびGpDジ、トリ、およびテトラヌクレオチドによるDNAメチル化の阻害(トリ及びテトラヌクレオチドは参考)」と訂正する。

16 訂正事項16
明細書の段落【0232】において、
「4.溶液中でのDpGおよびGpDジヌクレオチドおよびトリヌクレオチドの合成」とあるのを、
「4.溶液中でのDpGおよびGpDジヌクレオチドおよびトリヌクレオチドの合成(トリヌクレオチドは参考)」と訂正する。

17 訂正事項17
明細書の段落【0235】において、
「ホスホチオエートジヌクレオチドおよびテトラヌクレオチド誘導体(2e、2f、3e、3f、3g、および3h(図13、14、および15など)も作製する」とあるのを、
「ホスホチオエートジヌクレオチドおよびテトラヌクレオチド誘導体(2e、2f、3e、3f、3g、および3h(図13、14、および15など)も作製する(テトラヌクレオチド誘導体(3e、3f、3g、および3h)は参考)」と訂正する。

18 訂正事項18
明細書の段落【0236】において、
「2g、・・・・および3pなどの誘導体も調製する(図16、17、18、19、20、および21)」とあるのを、
「2g、・・・・および3pなどの誘導体も調製する(図16、17、18、19、20、および21)(3i、3j、3k、3l、3m、3n、3o、および3pは参考)」と訂正する。

19 訂正事項19
明細書の段落【0237】において、
「6.P15(CDKN2B)、・・・・DpGおよびGpDリッチオリゴヌクレオチドの合成」とあるのを、
「6.P15(CDKN2B)、・・・・DpGおよびGpDリッチオリゴヌクレオチドの合成(参考)」と訂正する。

20 訂正事項20
明細書の段落【0239】において、【図24B】を削除する。

21 訂正事項21
明細書の段落【0239】において、
「本発明のオリゴヌクレオオチドアナログの例」とあるのを、
「オリゴヌクレオチドアナログの例」と訂正する。

22 訂正事項22
明細書の段落【0009】、【0010】、【0012】?【0027】、【0037】、【0038】、【0040】?【0047】及び【0055】?【0060】を削除する。

23 訂正事項23
図面の【図24B】を削除する。

第3 当審の判断

1 訂正の目的及び新規事項の追加の有無について

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1について、
「前記ジヌクレオチドが、一般式:
Z-L-G、またはG-L-Z
(式中、Zは5-アザ-シトシンであり、Gはグアニンであり、LはZおよびGに共有結合した化学的リンカーである)
を有する」とあるのを、
「前記ジヌクレオチドアナログが、5’-DpG-3’または5’-GpD-3’であり、ここで、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Gはデオキシグアノシンである」と訂正するものである。
この訂正事項1は、請求項1のジヌクレオチドについて、一方のヌクレオシドの塩基「Z」が5-アザーシトシン、及び、他方のヌクレオシドの塩基「G」がグアニンであり、当該「Z」及び「G」に共有結合した化学的リンカーが「L」である(すなわち、各ヌクレオシドを構成する糖の種類については共に特定がなされておらず、該ヌクレオシドを結合するリンカーの種類も特定されていない)ものを、訂正後の請求項1では、ジヌクレオチドについて、5’側又は3’側のヌクレオシドが「D」であるデシタビン、すなわち、ヌクレオシドを構成する塩基が5-アザーシトシンであり、ヌクレオシドを構成する糖がデオキシリボースであるヌクレオシドであり、他方のヌクレオシドが「G」であるデオキシグアノシン、すなわち、ヌクレオシドを構成する塩基がグアニンであり、ヌクレオシドを構成する糖がデオキシリボースであるヌクレオシドとし、それらヌクレオシドがホスホリンカー「p」で結合されたものとすることで、実質的に前記「L」を限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、特許請求の範囲の請求項1の訂正後の発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項2に記載されていたものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「基準明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2?10、15及び16を削除するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、基準明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件特許明細書の、【発明の名称】、並びに、段落【0001】、【0008】、【0011】、【0028】、【0031】、【0034】、【0035】、【0036】、【0039】、【0048】、【0053】、【0054】、【0062】、【0063】、【0068】、【0070】、【0080】、【0088】及び【0092】に記載された「オリゴヌクレオチド」を、「ジヌクレオチド」とするものである。
前記段落等の記載は、訂正後の請求項1、11?14、17?19に係る発明に関するものであり、訂正事項3は、前記請求項に係る発明との関係で不合理で不明瞭な記載となる前記段落等に記載されていた「オリゴヌクレオチド」を、「ジヌクレオチド」とすることにより、この不合理を解消するものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、基準明細書に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(4)訂正事項4、5、7、10及び11について
訂正事項4は、本件特許明細書の段落【0001】において「5-アザ-2’-デオキシシチジンまたは5-アザ-シチジンの形態」という選択肢から、「または5-アザ-シチジン」を削除して、「5-アザ-2’-デオキシシチジンの形態」とするものであり、訂正事項5は、本件特許明細書の段落【0008】において「5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビン)または5-アザ-シチジンの形態」という選択肢から、「または5-アザ-シチジン」を削除して、「5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビン)の形態」とするものであり、訂正事項7は、本件特許明細書の段落【0031】において、「5-アザ?2’?デオキシシチジン(デシタビンとしも公知)または5?アザ?シチジン(5-アザC)の形態」という選択肢から「または5?アザ?シチジン(5-アザC)」を削除して、「5-アザ?2’?デオキシシチジン(デシタビンとしも公知)の形態」とするものであり、訂正事項10は、本件特許明細書の段落【0061】において、「2’-デオキシリボースまたはリボース」という選択肢から、「またはリボース」を削除して、「2’-デオキシリボース」とするものであり、及び、訂正事項11は、本件特許明細書の段落【0061】において、「修飾することができ、リボースの2’-ヒドロキシル基を2’メトキシ基、2’-メトキシエチル基、または2’-フルオロ基となるように修飾することができる。」という記載を「修飾することができる。」と訂正するものである。
前記段落は、訂正後の請求項1、11?14、17?19に係る発明に関するものであり、前記訂正事項は、訂正後の前記請求項に係る発明との関係で不合理で不明瞭な記載となる前記段落の記載から、ヌクレオシドを構成する糖がリボースである「5-アザ-シチジン」、「5-アザ-シチジン(5ーアザC)」及び「リボース」、並びに、ヌクレオシドを構成する糖がリボースの場合における2’ーヒドロキシル基の修飾である「リボースの2’-ヒドロキシル基を2’メトキシ基、2’-メトキシエチル基、または2’-フルオロ基となるように修飾することができ」を削除して、この不合理を解消するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、基準明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(5)訂正事項6について
訂正事項6は、本件特許明細書の段落【0011】及び【0039】において、「5’-DpG-3’、5’-GpD-3’、5’-DpGpD-3’、5’-GpGpD-3’、5’-GpDpG-3’、5’-GpDpD-3’、5’-DpDpG-3’、5’-DpGpG-3’、5’-GpDpD-3’、5’-DpGpA-3’、5’-DpGpDpG-3’、5’-DpGpGpD-3’、5’-GpDpGpD-3’、5’-GpDpDpG-3’、5’-DpGpDpGpA-3’(式中、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Aは2’-デオキシアデノシンであり、Gは2’-デオキシグアノシンである)」という選択肢から、「5’-DpGpD-3’、5’-GpGpD-3’、5’-GpDpG-3’、5’-GpDpD-3’、5’-DpDpG-3’、5’-DpGpG-3’、5’-GpDpD-3’、5’-DpGpA-3’、5’-DpGpDpG-3’、5’-DpGpGpD-3’、5’-GpDpGpD-3’、5’-GpDpDpG-3’、5’-DpGpDpGpA-3’」及び式中の説明の「Aは2’-デオキシアデノシンであり、」を削除して、「5’-DpG-3’、5’-GpD-3’(式中、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Gは2’-デオキシグアノシンである)」とするものである。
段落【0011】及び【0039】は、訂正後の請求項1、11?14、17?19に係る発明の実施の態様を説明するものであり、訂正事項6は、前記請求項に係る発明との関係で不合理で不明瞭な記載となる前記段落の記載から、トリヌクレオチドアナログ及びテトラヌクレオチドアナログであり、構成するヌクレオシドとして2’ーデオキシアデノシンである「5’-DpGpD-3’、5’-GpGpD-3’、5’-GpDpG-3’、5’-GpDpD-3’、5’-DpDpG-3’、5’-DpGpG-3’、5’-GpDpD-3’、5’-DpGpA-3’、5’-DpGpDpG-3’、5’-DpGpGpD-3’、5’-GpDpGpD-3’、5’-GpDpDpG-3’、5’-DpGpDpGpA-3’」及び式中の説明の「Aは2’-デオキシアデノシンであり、」を削除して、この不合理を解消するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、基準明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(6)訂正事項8について
訂正事項8は、本件特許明細書の段落【0031】及び【0036】において、「1つまたは複数の5?アザ?シトシン残基」いう選択肢から「または複数」を削除して、「1つの5?アザ?シトシン残基」とするものである。
段落【0031】及び【0036】は、訂正後の請求項1、11?14、17?19に係る発明の実施の態様を説明するものであり、訂正事項8は、前記請求項に係る発明との関係で不合理で不明瞭な記載となる前記段落の記載から、「複数の」5?アザ?シトシン残基を有するものを削除して、この不合理を解消するものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、基準明細書に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(7)訂正事項9について
訂正事項9は、本件特許明細書の段落【0061】において、「Z残基とG残基との間またはオリゴヌクレオチドアナログ中の塩基残基のいずれか2つの間のリンカー」という選択肢から「オリゴヌクレオチドアナログ中の塩基残基のいずれか2つの」間のリンカーを削除し、「Z残基とG残基との間」「のリンカー」に限定すると共に、この「Z残基とG残基との間」との特定を「ジヌクレオシドアナログ中の塩基残基の間」とするものである。
段落【0061】は、訂正後の請求項1、11?14、17?19に係る発明の実施の態様を説明するものであり、訂正事項9は、前記請求項に係る発明との関係で不合理で不明瞭な記載となる前記段落の記載から、「オリゴヌクレオチドアナログ中の塩基残基のいずれか2つの」間のリンカーを削除し、「Z残基とG残基との間」との特定を「ジヌクレオシドアナログ中の塩基残基の間」としてこの不合理を解消するものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、基準明細書に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(8)訂正事項12、20及び23について
訂正事項12は、本件特許明細書の段落【0061】において、「同様に任意選択的に、天然の糖ホスホロジエステル骨格を、タンパク質ヌクレオチド(PNA)骨格に置換することができ、この骨格は、ペプチド結合によって結合した反復N-(2-アミノエチル)-グリシン単位からできている。PNA骨格を有するこのようなオリゴヌクレオチドアンログの例を、図24Bに示す。この例は、5-アザ-シトシンがPNA骨格を介してグアニンに結合している。天然のオリゴヌクレオチドよりもヌクレアーゼ分解に対する耐性が高いように設計されたオリゴヌクレオチドのための他のリンカー型は、米国特許第6,900,540号および同第6,900,301号(本明細書中で参考として採用される)に記載されている。」という記載から、「同様に任意選択的に、天然の糖ホスホロジエステル骨格を、タンパク質ヌクレオチド(PNA)骨格に置換することができ、この骨格は、ペプチド結合によって結合した反復N-(2-アミノエチル)-グリシン単位からできている。PNA骨格を有するこのようなオリゴヌクレオチドアンログの例を、図24Bに示す。この例は、5-アザ-シトシンがPNA骨格を介してグアニンに結合している。」という記載を削除して、「天然のオリゴヌクレオチドよりもヌクレアーゼ分解に対する耐性が高いように設計されたオリゴヌクレオチドのための他のリンカー型は、米国特許第6,900,540号および同第6,900,301号(本明細書中で参考として採用される)に記載されている。」とするものであり、訂正事項20は、本件特許明細書の段落【0239】において、【図24B】の説明文である「【図24B】図24Bは、ペプチド骨格を有する-DpG-島を示す。」を削除するものであり、訂正事項23は、本件図面の【図24B】を削除するものである。
段落【0061】は訂正後の請求項1、11?14、17?19に係る発明の実施の態様を説明するものであり、段落【0239】及び【図24B】は前記請求項に係る発明の実施例を図示し説明するものである。前記訂正事項は、前記請求項に係る発明との関係で不合理で不明瞭な記載となる前記段落の記載及び図面から、タンパク質ヌクレオチド(PNA)骨格を有するオリゴヌクレオチドアナログに関する記載及び図面を削除して、この不合理を解消するものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、基準明細書に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(9)訂正事項13について
訂正事項13は、本件特許明細書の段落【0221】において、「時ヌクレオチド」を「ジヌクレオチド」とするものである(審決注:下線は当審が付与した。以下同様。)。
段落【0221】は、訂正後の請求項1、11?14、17?19に係る発明の実施例として、「固相上でのDpGおよびGpD「時ヌクレオチド」・・の合成」方法を説明するものであり、「時ヌクレオチド」の直前に記載の「DpGおよびGpD」は、請求項1及び請求項1を引用して特定されている訂正後の請求項1、11?14、17?19に記載の「ジヌクレオチドアナログ」である「5’-DpG-3’または5’-GpD-3’であり、ここで、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Gはデオキシグアノシン」のことであり、ジヌクレオチドの一種といえる。実際、段落【0221】には「DpGおよびGpDジヌクレオチド・・を、・・合成することができる。」と記載されている。
そうすると、訂正事項13については、本件特許明細書の段落【0221】の「時ヌクレオチド」との記載は、「ジヌクレオチド」と記載すべきものであることが明らかであり、誤記を本来の正しい記載とするものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものであり、また、基準明細書に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(10)訂正事項14?19について
訂正事項14は、本件特許明細書の段落【0221】において、実施例2の標題である「2.固相上でのDpGおよびGpD時ヌクレオチドおよびテトラヌクレオチドの合成」の末尾に「(テトラヌクレオチドは参考)」との記載を追加するものであり、訂正事項15は、本件特許明細書の段落【0230】において、実施例3の標題である「3.DpGおよびGpDジ、トリ、およびテトラヌクレオチドによるDNAメチル化の阻害」の末尾に「(トリ及びテトラヌクレオチドは参考)」との記載を追加するものであり、訂正事項16は、本件特許明細書の段落【0232】において、実施例4の標題である「4.溶液中でのDpGおよびGpDジヌクレオチドおよびトリヌクレオチドの合成」の末尾に、「(トリヌクレオチドは参考)」との記載を追加するものであり、訂正事項17は、本件特許明細書の段落【0235】において、「ホスホチオエートジヌクレオチドおよびテトラヌクレオチド誘導体(2e、2f、3e、3f、3g、および3h(図13、14、および15など)も作製する」の後に、「(テトラヌクレオチド誘導体(3e、3f、3g、および3h)は参考)」との記載を追加するものであり、訂正事項18は、本件特許明細書の段落【0236】において、「2g、・・および3pなどの誘導体も調製する(図16、17、18、19、20、および21)」の後に、「(3i、3j、3k、3l、3m、3n、3o、および3pは参考)」との記載を追加するものであり、訂正事項19は、本件特許明細書の段落【0237】において、実施例6の標題である「6.P15(CDKN2B)、・・DpG及びGpDリッチオリゴヌクレオチドの合成」の末尾に、「(参考)」との記載を追加するものである。
前記段落は、訂正後の請求項1、11?14、17?19に係る発明の実施例を説明するものであり、前記訂正事項は、前記請求項に係る発明との関係で不合理で不明瞭な記載となる前記段落の記載において、トリヌクレオチド及びテトラヌクレオチド[それらのアナログ(類似体)も含む]に関する記載を「参考」とすることにより、この不合理を解消するものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、基準明細書に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(11)訂正事項21について
訂正事項21は、本件特許明細書中【図面の簡単な説明】が記載されている段落【0239】において、【図26】の説明中の「本発明のオリゴヌクレオチドアナログの例」という記載から、「本発明の」を削除して、「オリゴヌクレオチドアナログの例」とするものである。
段落【0239】は、訂正後の請求項1、11?14、17?19に係る発明の実施例に関する図面を説明するものであり、【図26】に配列番号1?6の配列からなるオリゴヌクレオチドアナログ(オクタ、デカ又はドデカヌクレオチドアナログ)が示されている。
訂正後の請求項1、11?14、17?19に係る発明は「ジヌクレオチドアナログ」に関するものであり、訂正事項21は、前記請求項に係る発明との関係で不合理で不明瞭な記載となる段落【0239】の【図26】の説明中の「本発明のオリゴヌクレオチドアナログの例」という記載から「本発明の」を削除することにより、この不合理を解消するものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、基準明細書に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(12)訂正事項22について
訂正事項22は、本件特許明細書の段落【0009】、【0010】、【0012】?【0027】、【0037】、【0038】、【0040】?【0047】及び【0055】?【0060】を削除するものである。
前記段落は、訂正後の請求項1、11?14、17?19に係る発明の実施の態様を説明するものであり、訂正事項22は、前記請求項に係る発明との関係で不合理で不明瞭な記載となる前記段落を削除することにより、この不合理を解消するものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、基準明細書に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(13)以上のとおり、訂正事項1及び2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、訂正事項13は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、訂正事項3?12、14?23は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、いずれも、基準明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項及び同法同条第5項の規定に適合する。

2 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について

上記1で述べたとおり、訂正事項1は、訂正後の請求項1、11?14、17?19に記載されたジヌクレオチドアナログにおける5’側及び3’側ヌクレオシドを構成する糖の種類は共に特定されておらず、該ヌクレオシドを結合するリンカーの種類も特定されていないものを、糖の種類を共にデオキシリボースに限定し、それらヌクレオシドがホスホリンカー「p」で結合されたものと限定するもので、特許請求の範囲を減縮するものであり、訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2?10、15及び16を削除するものであり、訂正事項3?12、14?23は、訂正事項1、2による請求項1?19における特許請求の範囲を減縮することに伴い、訂正後の請求項1、11?14、17?19に係る発明との関係で不合理で不明瞭な記載となる明細書及び図面の記載につきこの不合理を解消し、明瞭な記載とするものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の変更又は拡張はない。また、訂正事項13は誤記の訂正をするものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の変更又は拡張はない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

3 訂正後の発明の独立特許要件について

上記1で述べたとおり、本件審判の請求に係る訂正事項1及び2は「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、訂正事項13は「誤記の訂正」を目的とするものであるから、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許法第126条第7項の規定に適合するかについて検討する。

(1)本件訂正後の請求項1、11?14、17?19に記載された発明(以下「本件訂正発明1、11?14、17?19」という。)について
本件訂正発明1、11?14、17?19は、次に示すとおりの審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、11?14、17?19に記載されている事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】単離または合成ジヌクレオチドアナログ、その塩またはエステルであって、前記ジヌクレオチドアナログ配列中の塩基残基として1つの5-アザ-シトシンを含み、前記ジヌクレオチドアナログが、5’-DpG-3’または5’-GpD-3’であり、ここで、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Gはデオキシグアノシンである、単離または合成ジヌクレオチドアナログ、その塩またはエステル。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】前記塩が、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、カルボン酸、スルホン酸、スルホ酸またはホスホ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、アミノ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-l,5-ジスルホン酸、2-または3-ホスホグリセリン酸塩、グルコース-6-リン酸塩、N-シクロヘキシルスルファミン酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択される酸を使用して形成される、請求項1に記載のジヌクレオチドアナログ。
【請求項12】前記塩が、塩酸塩、メシル酸塩、EDTA、亜硫酸塩、L-アスパラギン酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、L-グルタミン酸塩、(+)-L-酒石酸塩、クエン酸塩、L-乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、ヘキサン酸塩、酪酸塩、またはプロピオン酸塩である、請求項1に記載のジヌクレオチドアナログ。
【請求項13】前記塩が、ナトリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、またはトリアルキルアンモニウム塩である、請求項1に記載のジヌクレオチドアナログ。
【請求項14】前記塩が、トリアルキルアンモニウム塩であって、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、またはトリプロピルアンモニウム塩からなる、請求項13に記載のジヌクレオチドアナログ。
【請求項15】(削除)
【請求項16】(削除)
【請求項17】請求項1に記載のジヌクレオチドアナログまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、および薬学的に許容可能なキャリアを含む薬学的組成物。
【請求項18】請求項1に記載のジヌクレオチドアナログまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルが固体形態である、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】前記ジヌクレオチドアナログが、5’-DpG-3’であり、ここで、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Gはデオキシグアノシンである、請求項1に記載のジヌクレオチドアナログ。」

(2)刊行物及び刊行物に記載された事項
審判請求書において甲第1号証として提示された、本件特許の特許出願前に外国において頒布された刊行物であるNUCLEASES: BIOLOGICAL ROLE AND PRACTICAL USE, Collection of scientfic papers, (1985), p.25-28, (Publisher)Naukova Dumka, KIEV, USSR(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている(日本語訳文にて示す。)。

1a「リボヌクレーゼにより触媒されるヌクレオチド間結合の合成におけるヌクレオシド抗代謝物」(25頁標題)

1b「核酸代謝に関与する酵素の阻害剤での可能性がある抗ウイルス薬剤及び抗腫瘍薬剤の作用機序を研究するためのモデルとして役立ちうるジヌクレオシド一リン酸を得る際、低特異的リボヌクレアーゼであるペニシリウム・ブレビコンパクタム(Pen.brevicompactum)、ピリミジ特異的膵臓リボヌクレアーゼ、またはグアニル特異的リボヌクレアーゼT_(1)及びC_(2)の存在下でのヌクレオシド-2’,3’-シクロリン酸との反応で、ヌクレオチド抗代謝物、すなわち、5-置換の2’-デオキシウリジン及び2’-デオキシシチジン、1-β-アラビノシルシチジン並びにピラゾールをリン酸受容体として使用した。
有望な抗ウイルス剤及び抗腫瘍剤として多くのヌクレオシドアナログの合成が行われてきており、今も行われている。抗ウイルス剤として臨床的に有効であることが証明された最初のヌクレオシド誘導体は、5-置換-2’-デオキシウリジンであった[1]。しかしながら、それらは、抗ウイルス作用と共に、非感染細胞DNAへのこれらの化合物の取込み又はDNA生合成の主要酵素であるチミジル酸シンテターゼの阻害に関連しうる、突然変異原性作用、免疫抑制作用及び他の有害作用を呈する。5-置換2’-デオキシシチジンは、少なくとも2種の酵素、すなわち、デオキシチミジンーデオキシシチジンキナーゼ及びデオキシシチジンデアミナーゼの阻害剤として作用しうるため、抗ウイルス作用の選択性がより大きいと推定される。5-ブロモ-2’-デオキシシチジン(br^(5)C_(d))および5-ヨード-2’-デオキシシチジン(jo^(5)C_(d))は、非感染細胞に対してより低毒性であることも判明した。in vitroで腫瘍細胞に対する非常に強力な細胞傷害剤は、5-アザ-2’-デオキシシチジン(z^(5)C_(d))である[2]。一方、D-リボース又はD一デオキシリボースをD-アラビノースと交換したヌクレオシドアナログは、ウイルス感染に対して非常に有効である。すなわち、その修飾は、ヌクレオシドのヘテロ環部分ではなく炭水化物部分に影響を与える。
・・・・・
核酸代謝に関与する酵素の有望な阻害剤である抗ウイルス薬剤及び抗腫瘍薬剤の作用機序を研究するための非常に興味深い有用なモデルは、ある特定のアナログを含有するオリゴヌクレオチド、特にヌクレオシド一リン酸である。著者等は、さまざまな特異性のリボヌクレアーゼが関与するそのようなジヌクレオシド一リン酸の合成の可能性を研究してきた。ヌクレオシド-2,3-シクロリン酸との反応でヌクレオシド抗代謝物をリン酸受容体として使用した。合成結果は表1?3に示される。」(25頁1行?26頁下から6行)

1c「

」(26頁表1)

1d「

」(26頁表2)

1e「

」(27頁表3)

1f「

」(27頁化学構造式)

(3)刊行物に記載された発明
刊行物1は、「リボヌクレーゼにより触媒されるヌクレオチド間結合の合成におけるヌクレオシド抗代謝物」(1a)に関し記載するものであって、この「ヌクレオシド抗代謝物」を含有するジヌクレオシド一リン酸は、「核酸代謝に関与する酵素の有望な阻害剤である抗ウイルス薬剤および抗腫瘍薬剤の作用機序を研究するための非常に興味深い有用なモデル」(1b)であり、その具体的な合成ジヌクレオシド一リン酸として、刊行物1の表1(1c)には、「Gpz^(5)C」すなわち5’側ヌクレオシドが「G」であるグアノシンと、3’側ヌクレオシドが「z^(5)C」である5-アザ-2’シチジンとが、「p」である一リン酸で結合された合成ジヌクレオシド一リン酸が記載されている。

そうすると、刊行物1には、
「合成したGpz^(5)C、すなわち、5’側ヌクレオシドのグアノシンと3’側ヌクレオシドの5-アザ-2’シチジンとが一リン酸で結合された合成ジヌクレオシド一リン酸」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(4)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と引用発明とを対比する。
本件訂正発明1の「合成ジヌクレオチドアナログ」「であって、前記ジヌクレオチドアナログ配列中の塩基残基として1つの5-アザ-シトシンを含み、前記ジヌクレオチドアナログが、」「5’-GpD-3’であり、ここで、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Gはデオキシグアノシンである」「合成ジヌレオチドアナログ」の「5’-GpD-3’」は、5’側に「G」である「デオキシグアノシン」、すなわち、塩基グアニンがデオキシリボースの2’位炭素に結合したヌクレオシドと、3’側に「D」である「デシタビン」、すなわち、塩基5-アザ-シトシンがデオキシリボースの2’位炭素に結合したヌクレオシドアナログとが、「p」である「ホスホリンカー」で結合、すなわち、リン酸で結合したジヌクレオチドアナログである。
他方、引用発明の「Gpz^(5)C」は、5’側ヌクレオシドが「G」であるグアノシン、すなわち、塩基グアニンがリボースの2’位炭素に結合したヌクレオシドと、3’側ヌクレオシドが「z^(5)C」である5-アザ-2’シチジン、すなわち、塩基5-アザ-シトシンがリボースの2’位炭素に結合したヌクレオシドとが、「p」である一リン酸で結合したジヌクレオシド一リン酸、すなわち、ジヌクレオチドである。これは、ジヌクレオチド配列中の塩基残基として1つの5-アザ-シトシンを含んでおり、5-アザ-シトシンはシトシンアナログであるから、引用発明のジヌクレオシド一リン酸は、ジヌレオチドアナログといえる。
そうすると、本件訂正発明1の「合成ジヌクレオチドアナログ」「であって、前記ジヌクレオチドアナログ配列中の塩基残基として1つの5-アザ-シトシンを含み、前記ジヌクレオチドアナログが、」「5’-GpD-3’であり、ここで、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Gはデオキシグアノシンである」「合成ジヌレオチドアナログ」と、引用発明の「合成したGpz5C」とは、合成ジヌクレオチドアナログであって、ジヌクレオチドアナログ配列中の塩基残基として1つの5-アザ-シトシンを含み、該合成ジヌクレオチドアナログを構成するヌクレオシドの塩基が、5’側グアニン及び3’側5-アザ-シトシンである点で共通する。

したがって、本件訂正発明1と引用発明とは、
「単離または合成ジヌクレオチドアナログ、その塩またはエステルであって、前記ジヌクレオチドアナログ配列中の塩基残基として1つの5-アザ-シトシンを含み、該合成ジヌクレオチドアナログを構成するヌクレオシドの塩基が、5’側グアニン及び3’側5-アザ-シトシンである、単離または合成ジヌクレオチドアナログ、その塩またはエステル」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:合成ジヌクレオチドアナログを構成するヌクレオシドの糖が、本件訂正発明1では、5’側及び3’側共にデオキシリボースであるのに対し、引用発明では、5’側及び3’側共にリボースである点

イ 判断
引用発明は、核酸代謝に関与する酵素の有望な阻害剤である抗ウイルス剤及び抗腫瘍剤の作用機序を研究するための有用なモデルとして、刊行物1の表1?表3(1c?1e)に列記されている合成ジヌクレオシド一リン酸の一具体例であり、引用発明の「Gpz^(5)C」は、5’側ヌクレオシドにグアノシン、すなわち、塩基がグアニン及び糖がリボースであるヌクレオシドと、3’側ヌクレオシドに5-アザ-2’シチジン,すなわち,塩基がシトシンアナログである5-アザ-シトシン及び糖がリボースであるヌクレオシドとが、一リン酸で結合した、合成ジヌクレオシド一リン酸である。
表1?表3に記載されている合成ジヌクレオシド一リン酸をみると、ヌクレオシドアナログが存在するのは全て3’側ヌクレオシドであり、このうち塩基がシトシンアナログであるヌクレオシドの構成を検討すると、
「z^(5)C」(塩基:5?アザ?シトシン、糖:リボース)
「z^(6)C」(塩基:6?アザ?シトシン、糖:リボース)
「m^(5)Cd」(塩基:5?メチル?シトシン、糖:デオキシリボース)
「br^(5)Cd」(塩基:5?ブロモ?シトシン、糖:デオキシリボース)
「jo^(5)Cd」(塩基:5?ヨード?シトシン、糖:デオキシリボース)
であり、塩基がアザ-シトシン(シトシンのピリジミジン環の5位又は6位炭素が窒素に置換したシトシンアナログ)の場合は、糖はリボースのみであり、塩基がシトシンのピリジミジン環の5位炭素に置換基(メチル、ブロモ又はヨード)が存在するものの場合は、糖はデオキシリボースのみである。
それ故、塩基がシトシンアナログのヌクレオシドにおいては、シトシンアナログの種類によって、ヌクレオシドを構成する糖の種類は決まっていることが示唆されているといえ、塩基が5又は6-アザ-シトシンの場合は、糖はリボースが望ましく、この糖をデオキシリボースとすることは望ましくないことが示唆されているといえる。
そうすると、引用発明の3’側ヌクレシドが「z^(5)C」である、塩基が5?アザ?2’シチジン及び糖がリボースで構成されるヌクレシドにおいて、当該糖をデオキシリボースとする動機付けはないから、当該糖についてリボースに代えてデオキシリボースとすることは、当業者といえども容易に想到し得るものではない。

また、表1?表3に記載されている合成ジヌクレオシド一リン酸の5’側ヌクレオシドについては、「G」グアノシン 、「A」アデノシン又は「C」シチジンであり、これらヌクレオシドの構成を検討すると、
「G」(塩基:グアニン、糖:リボース)
「A」(塩基:アデニン、糖:リボース)
「C」(塩基:シトシン、糖:リボース)
であり、糖はリボースのみである。
それ故、5’側ヌクレオシドにおいては、塩基の種類如何にかかわらず、糖はリボースが望ましいことが示唆されているといえる。
そうすると、引用発明の5’側ヌクレシドが「G」グアノシンである、塩基がグアニン及び糖がリボースで構成されるヌクレオシドにおいて、当該糖をデオキシリボースとする動機付けはないから、当該糖につきリボースに代えてデオキシリボースとすることも、当業者といえども容易に想到し得るものではない。

また、本件訂正発明1の効果は、本件特許明細書の段落【0230】及び【0231】の記載より、低濃度でDNAメチル化を有効に阻害できるものであり、この効果は刊行物1に記載された事項から予測し得ないものである。

したがって、本件訂正発明1は、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたのたものではない。
さらに、本件訂正発明1は他に特許出願の際に独立して特許を受けることができないとする新たな理由も見当たらない。
よって、本件訂正発明1は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

(5)本件訂正発明11?14、17?19について
本件訂正発明11?14、17?19は、本件訂正発明1を直接又は間接に引用して特定されているものであり、前記(4)より、本件訂正発明1は特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるから、同様に、本件訂正発明11?14、17?19についても、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

(6)小括
以上より、本件訂正は特許法第126条第7項の規定に適合する。

第4 むすび

以上のとおりであるから、本件審判の請求に係る訂正事項1及び2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第5項?第7項に適合するものであり、本件審判の請求に係る訂正事項13は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第5項?第7項に適合するものであり、また、本件審判の請求に係る訂正事項3?12、14?23は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第5項及び第6項に適合するものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
5-アザ-シトシンを組み込んだジヌクレオチドアナログ
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、治療薬、診断薬、および研究試薬として有用なジヌクレオチドアナログの設計、合成、および適用に関する。ジヌクレオチド配列中にシトシンアナログ(5-アザ-シトシン)を組み込んだ、例えば、5-アザ-2’-デオキシシチジンの形態のジヌクレオチドアナログを提供する。このようなアナログを、DNAメチル化の調整、具体的には、C-5位でのシトシンのメチル化の有効な阻害、より具体的には、ヒトゲノムのCpG島のターゲティングのために使用することができる。これらのジヌクレオチドアナログの合成方法およびC-5シトシンメチル化の調整方法を提供する。特に、ホスホラミダイト構成単位(building block)およびデシタビン(5-アザ-2’-デオキシシチジン;D)を含むジヌクレオチド、DpGリッチ(デシタビン-ホスホジエステル結合-グアノシン)島および誘導体を提供する。これらの化合物および組成物を調製し、処方し、そして治療薬として必要とする宿主に投与する方法も提供する。
【0002】
関連技術の説明
デシタビンは、現在、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺(NSCL)癌、鎌状赤血球貧血、および急性骨髄性白血病(AML)の新規の治療薬として開発されている。デシタビンの2つの異性体形態を識別することができる。β-アノマーは活性形態であり、図1に示す。デシタビンは、複数の薬理学的特徴を有する。分子レベルでは、細胞周期のS期のDNAにデシタビンを組み込む。細胞レベルでは、デシタビンは、細胞分解を誘導し、血液学的毒性を発揮し得る。in vivoで半減期が短いにもかかわらず、デシタビンは優れた組織分配を示す。
【0003】
デシタビン機能の1つは、DNAメチル化を特異的且つ潜在的に阻害する能力である。DNAメチル化は、多くの系に共通の後成的効果である。この修飾は、C-5位(1a”)でのシトシンの共有結合性修飾を含む。メチル化パターンは、DNA複製後にヘミメチル化DNAを認識するDNAメチルトランスフェラーゼファミリーによってCpGジヌクレオチドで安定に維持される。細胞内で、デシタビンは、主に細胞周期のS期に合成されるデオキシシチジンキナーゼによって最初にその活性形態(リン酸化5-アザ-デオキシシチジン)に変換される。デオキシシチジンキナーゼの触媒部位に対するデシタビンの親和性は、天然基質であるデオキシシチジンに類似している(Momparler et al.1985 Mol.Pharmacol.30:287-299)。デオキシシチジンキナーゼによるその三リン酸形態への変換後、デシタビンは、天然基質dCTPに類似の速度で複製DNAに組み込まれる(Bouchard and Momparler 1983 Mol.Pharmacol.24:109-114)。
【0004】
ハウスキーピング遺伝子のCpGリッチ配列は、一般に、正常な細胞のメチル化を防御する。癌細胞では、腫瘍抑制遺伝子のプロモーター領域CpG-アイランド中の異常な過剰メチル化は、腫瘍形成表現型の進行に関連する最も一般的な事象の1つである。各分化細胞クラスは、その異なるメチル化パターンを有する。DNA鎖へのデシタビンの組み込みにより、過剰メチル化効果が得られる。染色体重複後、このメチル化パターンを保存するために、親鎖上の5-メチルシトシンは、相補的娘DNA鎖の直接的メチル化に役立つ。シトシンのC-5位での炭素の窒素との置換により、この正常なDNAメチル化過程が妨害される。特定のメチル化部位でのシトシンのデシタビンとの置換により、DNAメチルトランスフェラーゼが不可逆的に不活化される。デシタビンは、DNAメチルトランスフェラーゼ酵素がメチル基を娘細胞のヘミメチル化DNA鎖に移入しようと試みるまで、シトシン残基として忠実に挙動する。この工程では、DNAメチルトランスフェラーゼ酵素は、DNA中のデシタビンによって共有結合的に捕捉され、さらなるシトシン残基をさらにサイレンシングする(メチル化する)ことができない(Juttermann et al.1994 Proc.Natl.Acad.Sci. USA 91:11797-11801)。デシタビンのこの固有の作用機構により、前の細胞分裂ラウンドからサイレンシングされた(一旦メチル化された)遺伝子を再発現することが可能である。デシタビン処理から48時間後までにヘミメチル化DNA中に活性トラップが存在する。さらなるDNA合成および細胞分裂周期後、ヘミメチル化DNA由来の子孫鎖により、これらの部位で完全にメチル化されていないDNA鎖が得られる(Jones P.2001 Nature 409:141,143-4)。DNAメチルトランスフェラーゼ(メチル化に必要な酵素)の特異的阻害により、腫瘍抑制遺伝子の異常なメチル化を逆転させることができる。
【0005】
CML、MDS、およびAMLで抗白血病効果が証明されているにもかかわらず、デシタビンを適用する見込みは、骨髄抑制の遅延および延長によって妨げられている。長期間にわたって投与されるより低いデシタビン用量では、過剰メチル化の影響によって癌抑制能力を妥協することなく管理可能なレベルに骨髄抑制が最小化された。より高い用量は有毒であったので禁止された。しかし、デシタビンの最大耐量での血液の腫瘍および固形腫瘍の治療には無効であった。骨髄抑制の原因は明らかでない。デシタビンが正常な造血に関与するS期細胞(骨髄細胞が含まれる)のDNAに無作為且つ広範に組み込まれるので、デシタビン不能による重篤なDNA損傷によって壊死すると考えるのが尤もらしい。デシタビンの組み込みがCpGリッチ配列のみに制限されるわけではないので、デシタビン不能によってDNAが破壊し、CpGアイランドの外側の多数の部位を修復する必要があり得る。
【0006】
デシタビンおよびアザシチジンは媒質中で不安定であり、加水分解する。酸性媒質中で、デシタビンは、室温で、5-アザシトシンおよび2-デオキシリボースに加水分解する。室温の中性媒質中で、6位でトリアジン環の開環が起こり、一過性中間体であるホルミル誘導体が形成され、アミジノ-尿素誘導体および蟻酸にさらに分解される(Piskala,A.;Synackova,M.;Tomankova,H.;Fiedler,P.;Zizkowsky,V.Nucleic Acids Res.1978,4,s109-s-113)。6位でのこの加水分解は、酸性および塩基性の水性媒質中でなおさらに迅速に起こる。
【0007】
デシタビンに関連する化学的不安定性および毒性を考慮して、できるだけ多数の組み込みがCpGアイランドに局在するか、DNAの完全性に有意に影響を与えることなく過剰メチル化が行われる、より安定なデシタビンの誘導体だけでなく、より優れた低メチル化剤を開発する必要がある。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、ジヌクレオチド配列中に5-アザ-シトシンを組み込んだジヌクレオチドアナログ(例えば、5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビン)の形態)を提供する。
【0009】(削除)
【0010】(削除)
【0011】
特定の実施形態では、ジヌクレオチドアナログは、5’-DpG-3’、5’-GpD-3’(式中、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Gは2’-デオキシグアノシンである)からなる群から選択される。
【0012】(削除)
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【0024】(削除)
【0025】(削除)
【0026】(削除)
【0027】(削除)
【0028】
本発明はまた、ジヌクレオチドアナログを合成し、核酸メチル化を調整する方法を提供する。ジヌクレオチドアナログを合成するためのホスホラミダイト構成単位、癌および血液障害などの容態を治療するためにこれらの化合物または組成物を処方および投与する方法も提供する。
【0029】
引用による補充
本明細書中で言及した全ての刊行物および特許出願は、各刊行物または特許出願が具体的且つ個別に参考として援用されているように示されているのと同一の範囲で本明細書中で参考として援用される。
【0030】
図面の簡単な説明
本発明の新規の特徴は、特に添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の原理を使用した例示的実施形態に記載の以下の詳細な説明および以下の添付の図面を参照して、本発明の特徴および利点がより深く理解される。
【0031】
発明の詳細な説明
本発明は、シトシンのアナログ(5-アザ-シトシン)をジヌクレオチド配列中に組み込んだジヌクレオチドアナログ(例えば、5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビンとしも公知)の形態)を提供する。特定のメチル化部位でのシトシンのデシタビンへの置換によってDNAメチルトランスフェラーゼが不可逆的に不活化されるので、ジヌクレオチドへの1つの5-アザ-シトシン残基の組み込によってDNA過剰メチル化効果が得られると考えられる。好ましくは、デシタビンをグアニン残基に対して5’側に隣接するオリゴヌクレオチドに組み込んで、ヒトゲノムのCPG島をより特異的にターゲティングするためのDpG島を形成する。
【0032】
本発明は、デシタビンおよび5-アザ-シチジンなどの従来の低メチル化剤に関連する潜在的毒性を克服することを目的とする。ゲノム全体に無作為且つ広範に組み込まれる遊離ヌクレオシド形態と比較して、本発明の化合物は、プライマーとして作用し、主に複製中のDNAのCpGリッチアイランドに組み込まれる。好ましくは、本発明の化合物は、プライマーとして作用し、腫瘍抑制遺伝子などの治療的または診断的に重要な遺伝子のプロモーターのCpGリッチアイランドに特異的に組み込まれる。本発明の化合物は、親鎖と一過性にヘミメチル化された鎖を形成し、組み込まれることなくDNAメチルトランスフェラーゼの活性トラップとして機能することができる。本発明の化合物はまた、ゲノムに組み込まれることなくDNAメチルトランスフェラーゼを直接占有および捕捉することができる。本発明の化合物を組み込んだ場合、DNA修飾が腫瘍抑制遺伝子のプロモーター領域中のCpGリッチアイランドに局在するので、活性トラップが最適に配置され、より多数のゲノムの全安定性が犠牲にならない。
【0033】
DNAメチル化の調整により、本発明の化合物を、特に、癌および血液障害領域での治療薬、診断薬、および研究試薬として使用することができる。腫瘍抑制遺伝子などの多数の遺伝子の異常な転写サイレンシングは、癌および他の疾患の病理発生に直接関連する。癌関連遺伝子のメチル化により、これらの遺伝子の発現が抑制されるか完全にサイレンシングされる。一方で、これらの遺伝子の発現は、形質転換細胞の成長停止、分化、および/またはアポトーシス細胞死の誘導に必要である。形質転換細胞中のこれらの遺伝子の不活動により、これらの細胞の増殖が抑制されず、最終的に癌になる。したがって、ゲノムに組み込まないかこれらの遺伝子のCpGリッチアイランドに組み込むことなくDNAメチルトランスフェラーゼを能動的に捕捉するために本発明の化合物を直接使用することにより、プロモーターのメチル化の阻害によって遺伝子の転写を再活性化し、それにより、癌細胞増殖を抑制することができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態が遺伝子の5’非翻訳領域またはプロモーター領域とハイブリッド形成することができ、それにより、この事実を活用するためのサンドイッチアッセイおよび他のアッセイを容易に構築することができるので、本発明の化合物は研究および診断にも有用であり得る。本発明のジヌクレオチドアナログのプロモーター配列とのハイブリッド形成を、当該分野で公知の手段によって検出することができる。このような手段には、酵素のジヌクレオチドアナログとの抱合もしくは非共有結合、ジヌクレオチドアナログの放射性標識、または任意の他の適切な検出手段が含まれ得る。サンプル中の遺伝子のプロモーター活性を調整するためにこのような検出手段を使用するキットも準備することができる。
【0035】
本発明はまた、これらのジヌクレオチドアナログを合成し、C-5シトシンメチル化を調整する方法を提供する。特に、ホスホラミダイト構成単位およびデシタビン(5-アザ-デオキシシチジン;D)を含むジヌクレオチド、DpGリッチ(デシタビン-ホスホジエステル結合-グアノシン)島および誘導体を提供する。これらの化合物および組成物を調製し、処方し、そして治療薬として必要とする宿主に投与する方法も提供する。本発明の化合物、合成方法、薬学的組成物の処方、容器およびキットの調製、ならびに疾患または容態の治療のための化合物または組成物の使用を以下に詳述する。
【0036】
1.本発明のジヌクレオチドアナログ
一般に、本発明のジヌクレオチドアナログは、ジヌクレオチド配列中に組み込まれた1つの5-アザ-シトシン残基(以後、「Z」と省略する)を有する。
【0037】(削除)
【0038】(削除)
【0039】
特定の実施形態では、ジヌクレオチドアナログは、5’-DpG-3’、5’-GpD-3’(式中、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Gは2’-デオキシグアノシンである)からなる群から選択される。
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【0048】
試験ポリヌクレオチドのその標的ポリヌクレオチドとの配列相同性が高いほど、試験ポリヌクレオチドが標的ポリヌクレオチドと依然としてハイブリッド形成することができる条件のストリンジェンシーがより高くなることが核酸分野の当業者に認識される。したがって、特定の遺伝子をターゲティングするように設計された本発明のジヌクレオチドアナログは、非常に低い?非常に高いストリンジェンシー条件下で標的遺伝子とハイブリッド形成するジヌクレオチドアナログである。
【0049】
少なくとも100ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドアナログについて、非常に低い?非常に高いストリンジェンシー条件を、標準的なサザンブロッティング手順にしたがった、42℃、5×SSPE、0.3%SDS、200μg/ml剪断および変性サケ精子DNA、ならびに非常に低ストリンジェンシーおよび低ストリンジェンシーについては25%ホルムアミド、中および中-高ストリンジェンシーについては35%ホルムアミド、または高および非常に高ストリンジェンシーについては50%ホルムアミドのいずれかでのプレハイブリッド形成およびハイブリッド形成と定義する。キャリア物質を、最後に、2×SSC、0.2%SDSを使用して好ましくは少なくとも45℃(非常に低いストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも50℃(低ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも55℃(中ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも60℃(中-高ストリンジェンシー)、さらにより好ましくは少なくとも65℃(高ストリンジェンシー)、最も好ましくは少なくとも70℃(非常に高ストリンジェンシー)で15分ずつ3回洗浄した。
【0050】
約50ヌクレオチド長?約100ヌクレオチド長のより短いオリゴヌクレオチドアナログについて、ストリンジェンシー条件を、標準的なサザンブロッティング手順にしたがった、プレハイブリッド形成、ハイブリッド形成、および0.9M NaCl、0.09M Tris-HCl(pH7.6)、6mM EDTA、0.5%NP-40、1×Denhardt液、1mMピロリン酸ナトリウム、1mMリン酸一ナトリウム、0.1mM ATP、および0.2mgの酵母RNA/ml中でのBolton and McCarthy(1962,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 48:1390)に従った計算を使用して計算したTmより5℃?10℃低いハイブリッド形成後洗浄と定義する。キャリア物質を、6×SCC+0.1%SDSで15分間で1回洗浄し、計算したTmより5℃?10℃低い温度で6×SSCを使用してそれぞれ15分間で2回洗浄する。
【0051】
高ストリンジェンシー条件の別の非限定的な例には、例えば、42℃での約5×SSC、0.5%SDS、100μg/ml変性サケ精子DNA、および50%ホルムアミドが含まれる。ブロットを、例えば、5%bp未満のミスマッチがある可能性のある高ストリンジェンシー条件(例えば、65℃での0.1%SSCおよび0.1%SDSで30分間の2回の洗浄)で洗浄することができる(すなわち、95%またはそれを超える配列が同一な配列を選択する)。
【0052】
高ストリンジェンシー条件のさらに別の非限定的な例には、30mM NaClおよび0.5%SDSを含む水性緩衝液中における65℃で最終洗浄が含まれる。高ストリンジェンシー条件の別の例は、50℃の7%SDS、0.5M NaPO_(4)(pH7)、1mM EDTA中で例えば一晩のハイブリッド形成、およびその後の42℃の1%SDS溶液での1回または複数回の洗浄である。高ストリンジェンシー洗浄によってミスマッチを5%未満にすることができるのに対して、減少したストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件により、20%までのヌクレオチドがミスマッチし得る。低ストリンジェンシーでのハイブリッド形成を上記のように行うが、より低いホルムアミド条件、より低い温度および/またはより低い塩濃度、ならびにより長いインキュベーション時間を使用して行う。
【0053】
好ましい実施形態では、ジヌクレオチドアナログは、低ストリンジェンシー条件下で標的遺伝子とハイブリッド形成することができる。より好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドアナログは、中ストリンジェンシー条件下で標的遺伝子とハイブリッド形成することができる。最も好ましい実施形態では、ジヌクレオチドアナログは、高ストリンジェンシー条件下で標的遺伝子とハイブリッド形成することができる。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ上のアロステリック部位に結合し、それによりDNAメチルトランスフェラーゼを阻害するジヌクレオチドアナログを提供する。DNAメチルトランスフェラーゼの阻害によってDNAのメチルを防止し、それにより、癌および血液障害などの異常なDNAメチル化に関連する障害を治療する。
【0055】(削除)
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【0060】(削除)
【0061】
上記実施形態のいずれかでは、ジヌクレオチドアナログ中の塩基残基の間のリンカーは、糖ホスホロジエステル結合である。好ましくは、リンカーは、DNAおよびRNA中の天然の糖ホスホロジエステル骨格のような2’-デオキシリボースを介したホスホロジエステル結合である。任意選択的に、in vivoでのヌクレアーゼ分解に対する耐性を増強するために、天然のホスホロジエステルリンカー-O-P(=O^(-))-O-CH_(2)-を、ホスホロチオエートリンカー-O-P(=O)(S^(-))-O-CH_(2)-、ボルノホスフェートリンカーまたはメチルホスホネートリンカーになるように修飾することができる。非天然骨格を有するこのようなオリゴヌクレオチドアナログの例を、図24Aに示す。この例は、リボースホスフェート骨格を介してグアノシンに結合している。天然のオリゴヌクレオチドよりもヌクレアーゼ分解に対する耐性が高いように設計されたオリゴヌクレオチドのための他のリンカー型は、米国特許第6,900,540号および同第6,900,301号(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0062】
本発明のジヌクレオチドアナログは、組織、細胞、および体液などの生物源から単離したジヌクレオチドアナログであり、好ましくは、実質的純度、より好ましくは少なくとも純度80%、より好ましくは少なくとも純度95%に精製したジヌクレオチドアナログである。ジヌクレオチドアナログはまた、5-アザ-シトシンを含む天然に存在しないオリゴヌクレオチドである(例えば、in vitroで化学的または酵素的に合成された)合成オリゴヌクレオチドアナログであり得る。
【0063】
本発明のジヌクレオチドアナログは、任意の薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはこのようなエステルの塩、または動物(ヒトが含まれる)に投与した際に生物学的に活性な代謝産物もしくはその残基を(直接または間接的に)得ることができる任意の他の化合物を含む。したがって、例えば、本発明の化合物のプロドラッグおよび薬学的に許容可能な塩、このようなプロドラッグの薬学的に許容可能な塩、および他の生物学的等価物も開示する。
【0064】
用語「プロドラッグ」は、不活性形態で調製され、内因性酵素または他の化学物質および/もしくは条件の作用によって体内またはその細胞内で活性形態に変換される治療薬を示す。特に、本発明のオリゴヌクレオチドアナログのプロドラッグ異形を、1993年12月9日公開のGosselin et al.のWO93/24510号またはWO94/26764号およびImbach et al.の米国特許第5,770,713号に開示の方法にしたがって、カルボキシル基を含む有機化合物を使用して、糖環中の任意のヒドロキシル基との1つまたは複数のエステルの形成によって調製することができる(SATE[(S-アセチル-2-チオエチル)ホスフェート]誘導体)。
【0065】
用語「薬学的に許容可能な塩」は、本発明の化合物の生理学的および薬学的に許容可能な塩(すなわち、親化合物の所望の生物活性を保持するが、望ましくない毒物学的影響を及ぼさない塩)をいう。
【0066】
薬学的に許容可能な塩基付加塩を、金属またはアミン(アルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミンなど)を用いて形成する。陽イオンとして使用される金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムなどである。適切なアミンの例は、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルアニンである(例えば、Berge et al.,″Pharmaceutical Salts,″J.of Pharma Sci.,1977,66,1-19を参照のこと)。前記酸性化合物の塩基付加塩を、従来の様式で遊離酸形態を十分な量の所望の塩基と接触させて酸を生成することによって調製する。従来の様式で塩基形態を酸と接触させ、遊離酸を単離することによって遊離酸形態を再生することができる。遊離酸形態は、その各塩形態と一定の物理的性質(極性溶媒中での溶解性など)がいくらか異なるが、塩はその各遊離酸と本発明の目的について等価である。
【0067】
本明細書中で使用される、「薬学的付加塩」には、本発明の成分の1つの酸形態の薬学的に許容可能な塩が含まれる。これらには、アミンの有機塩または無機塩が含まれる。好ましい酸性塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩、およびリン酸塩である。他の適切な薬学的に許容可能な塩が当業者に周知であり、種々の無機酸および有機酸(例えば、例えば、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸など)、有機カルボン酸、スルホン酸、スルホ酸もしくはホスホ酸、またはN置換スルファミン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸、またはイソニコチン酸)、およびアミノ酸(事実上タンパク質合成に関与する20α-アミノ酸(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸))、また、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン-1、2-ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、2-または3-ホスホグリセリン酸塩、グルコース-6-ホスホネート、N-シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成を伴う)、または他の有機化合物(アスコルビン酸など)など)の塩基性塩が含まれる。薬学的に許容可能な陽イオンを使用して化合物の薬学的に許容可能な塩を調製することもできる。適切な薬学的に許容可能な陽イオンは当業者に周知であり、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類金属陽イオン、アンモニウム陽イオン、および第四級アンモニウム陽イオンが含まれる。炭酸塩、炭酸水素塩も可能である。
【0068】
本発明のジヌクレオチドアナログのために、薬学的に許容可能な塩の好ましい例には、(a)陽イオン(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ポリアミン(スペルミンおよびスペルミジンなど)など)を使用して形成された塩、(b)無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、および硝酸など)を使用して形成された酸付加塩、(c)有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、およびポリガラクツロン酸など)を使用して形成された塩、および(d)元素陰イオン(塩素、臭素、およびヨウ素など)から形成された塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
本発明は、単離化合物も含む。単離化合物は、混合物中の少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは50%、最も好ましくは80%の化合物に相当し、組み合わせ亜硫酸水素制限分析またはCOBRA(Xiong,Z.;Laird,P.W.Nucleic Acids Res.1997,25,2532-2534)および放射性標識メチル組み込みアッセイ(Francis,K.T.;Thompson,R.W.;Krumdieck,C.L.Am.J.Clin.Nutr.1977,30,2028-2032)などの生物学的アッセイで試験した場合にDNAメチル化の検出可能な(すなわち、統計的に有意な)阻害活性を示す化合物をいう。
【0070】
2.本発明の薬学的処方物
本発明によれば、本発明のジヌクレオチドアナログを、種々の疾患および容態の治療のための薬学的に許容可能な組成物に処方することができる。
【0071】
本発明の薬学的に許容可能な組成物は、1つまたは複数の非毒性の薬学的に許容可能なキャリアおよび/または希釈剤および/またはアジュバントおよび/または佐剤および/または賦形剤(集合的に本明細書中で「キャリア」物質という)、および、必要に応じて、他の有効成分を含む。
【0072】
本発明の化合物を、任意の経路で、以下に例証した経路に適合した薬学的組成物の形態で投与し、経路は治療される容態に依存する。化合物および組成物を、例えば、経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸、口腔内、鼻腔内、リポソーム、吸入、膣内、眼内、局所送達(例えば、カテーテルまたはステント)、皮下、脂肪内、関節内、または鞘内に投与することができる。
【0073】
薬学的処方物には、任意選択的に、または本発明の処方物の投与に関連する組成物の安定性の増強、溶液中の生成物の維持、副作用(例えば、潜在的な潰瘍形成、血管の炎症、または管外遊出)の防止に有効な量で添加された賦形剤が含まれ得る。賦形剤の例には、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、デキストロックス(dextrox)、シクロデキストリン(α-、β-、およびγ-シクロデキストリン)、および修飾された無定形シクロデキストリン(ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ヒドロキシエチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン、マルトトリシルシクロデキストリン、カルボキシアミドメチルシクロデキストリン、カルボキシメチルシクロデキストリン、スルホブチルエーテルシクロデキストリン、およびジエチルアミノ置換α、β、およびγ-シクロデキストリン)が含まれるが、これらに限定されない。Janssen Pharmaceuticalsのエンカプシン(登録商標)または等価物などのシクロデキストリンを、この目的のために使用することができる。
【0074】
経口投与のために、薬学的組成物は、例えば、錠剤、カプセル、懸濁液、または液体の形態であり得る。薬学的組成物は、好ましくは、薬学的有効量の有効成分を含む投薬単位の形態で作製される。このような投薬単位の例は、錠剤およびカプセルである。治療を目的として、錠剤およびカプセルは、有効成分に加えて、従来のキャリア(例えば、アカシアガム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、またはトラガカント)、充填剤(例えば、リン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、トウモロコシデンプン、ソルビトール、またはスクロース)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、またはタルク)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン)、香味物質もしくは着色剤、または許容可能な湿潤剤などを含むことができる。経口液体調製物は、一般に、水性または油性の溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、またはエリキシルの形態であり、従来の添加物(懸濁剤、乳化剤、非水性薬剤、防腐剤、着色剤、および香味物質など)を含むことができる。液体調製物のための添加物の例には、アカシア、アーモンド油、エチルアルコール、分留ココナッツ油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、硬化食用油、レシチン、メチルセルロース、メチルもしくはプロピルパラヒドロキシベンゾエート、プロピレングリコール、ソルビトール、またはソルビン酸が含まれる。
【0075】
局所使用のために、本発明の化合物を、皮膚または鼻および喉の粘膜に適用するのに適切な形態で調製することができ、クリーム、軟膏、液体スプレーまたは吸入薬、ロゼンジ、または喉塗布剤の形態を取ることができる。このような局所処方物には、さらに、有効成分の表面浸透を容易にするためのジメチルスルホキシド(DMSO)などの化合物が含まれ得る。
【0076】
目または耳への適用のために、本発明の化合物は、軟膏、クリーム、ローション、塗布剤、または粉末として疎水性または親水性の基剤中に処方された液体または半液体形態で存在し得る。
【0077】
直腸投与のために、本発明の化合物を、従来のキャリア(ココアバター、ワックス、または他のグリセリドなど)と混合した座剤の形態で投与することができる。
【0078】
あるいは、本発明の化合物は、送達時に適切な薬学的に許容可能なキャリア中で再構成するための粉末形態であり得る。
【0079】
本発明の組成物を、注射によって投与することができる。非経口投与のための処方物は、水性または非水性の等張滅菌溶液または懸濁液の形態であり得る。これらの溶液または懸濁液を、経口投与様処方物中での使用のために記載された1つまたは複数のキャリアを有する滅菌粉末または顆粒から調製することができる。化合物を、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、および/または種々の緩衝液中に溶解することができる。
【0080】
本発明のジヌクレオチドアナログを、乳濁液として調製および処方することができる。乳濁液は、典型的には、一方の液体を他方の液体中に含む、通常は直径が0.1μmを超える液滴の形態不均一系である(Idson,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199;Rosoff,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Volume 1,p.245;Block in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 2,p.335;Higuchi et al.,in Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1985,p.301)。乳濁液は、しばしば、不混和性の2つの液相から構成され、十分に混合し、互いに分散した二相系である。一般に、乳濁液は、水-油滴(w/o)型または油-水型のいずれかであり得る。水相を細かく分割し、微小な液滴として大量の油相に分散させた場合、得られた組成物は、水-油型(w/o)乳濁液と呼ばれる。あるいは、油相を細かく分割し、微小な液滴として大量の水相に分散させた場合、得られた組成物は、油-水型(o/w)乳濁液と呼ばれる。乳濁液は、分散相および活性薬に加えてさらなる成分を含むことができ、この成分は、水相または油相としてか、それ自体が個別の相として存在することができる。乳化剤、安定剤、色素、および抗酸化剤などの薬学的賦形剤もまた、必要に応じて乳濁液中に存在することができる。薬学的乳濁液は、2つを超える相から構成される多重乳濁液(例えば、油-水-油(o/w/o)乳濁液および水-油-水(w/o/w)乳濁液の場合)であり得る。このような多重乳濁液により、しばしば、単純な二成分乳濁液では得られない一定の利点が得られる。o/w乳濁液の各油滴が小水滴を取り囲んだ多重乳濁液がw/o/wを構成する。同様に、油性連続相中に安定化された水小球に取り囲まれた油滴の系は、o/w/o乳濁液を構成する。
【0081】
乳濁液は、熱力学的安定性がほとんどないか全くないことによって特徴づけられる。しばしば、乳濁液の分散相または不連続相を、外層または連続相に分散し、乳化剤または処方物の粘度によってこの形態を維持する。乳濁液のいずれかの相は、乳濁液型軟膏基剤およびクリームの場合のように半固体または固体であり得る。乳濁液の他の安定化手段は、乳濁液のいずれかの相に組み込むことができる乳化剤の使用を必要とする。乳化剤を、以下の4つのカテゴリーに大きく分類することができる:合成界面活性剤、天然に存在する乳化剤、吸収基剤、および微粉化固体(Idson,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199)。
【0082】
表面活性剤としても公知の合成界面活性剤は、乳濁液の処方で広い適用性を有することが見出されており、文献に概説されている(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.285;Idson,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,volume 1,p.199)。界面活性剤は、典型的には両親媒性であり、親水性部分および疎水性部分を含む。界面活性剤の親水性と疎水性との比は親水親油バランス(HLB)と呼ばれ、処方物の調製における界面活性剤の分類および選択における有益なツールである。界面活性剤を、親水基の性質(非イオン性、陰イオン性、容易温性、および両性)に基づいて異なるクラスに分類することができる(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.285)。
【0083】
乳濁液処方で使用される天然に存在する乳化剤には、ラノリン、蜜蝋、リン脂質、レシチン、およびアカシアが含まれる。吸収基剤は、水を吸い上げてw/o乳濁液を形成するが、その半固体の一貫性を保持するような親水性を有する(無水ラノリンおよび親水性ワセリンなど)。微粉化固体はまた、特に、界面活性剤と組み合わせた良好な乳化剤として粘性調製物中で使用されている。これらには、極性無機固体(重金属水酸化物など)、非膨潤性粘土(ベントナイト、アタパルジャイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイトなど)、コロイド状ケイ酸アルミニウム、およびコロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム、色素、および非極性固体(炭素またはトリステアリン酸グリセリルなど)が含まれる。
【0084】
多種多様の非乳化物質も乳濁液処方物中に含まれ、乳濁液の性質に寄与する。これらには、脂肪、油、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、保湿剤、親水コロイド、防腐剤、および抗酸化剤が含まれる(Block,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.335;Idson,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199)。
【0085】
親水コロイドまたはハイドロコロイドには、天然に存在するゴムおよび合成ポリマー(多糖類(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸,カラギーナン,グアールガム,カラヤゴム,およびトラガカント)、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)、および合成ポリマー(例えば、カルボマー、セルロースエーテル、およびカルボキシビニルポリマー)が含まれる。これらは水に分散または膨潤して、分散相液体周囲の強い界面薄膜の形成および外相粘度の増加によって乳濁液を安定化させるコロイド溶液を形成する。
【0086】
乳濁液がしばしば微生物成長を容易に補助し得る炭水化物、タンパク質、ステロール、およびリン脂質などの多数の成分を含むので、これらの処方物は、しばしば、防腐剤を組み込む。乳濁液処方物に含まれる一般的に使用される防腐剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン、第四級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p-ヒドロキシ安息香酸のエステル、およびホウ酸が含まれる。一般に、処方物の変性を防止するために、乳濁液処方物に抗酸化剤も添加する。使用される抗酸化剤は、フリーラジカルスカベンジャー(トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなど)、または還元剤(アスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムなど)、および抗酸化共力剤(クエン酸、酒石酸、およびレシチンなど)であり得る。
【0087】
皮膚科学的経路、経口経路、および非経口経路を介した乳濁液処方物の適用およびその製造方法は、文献に概説されている(Idson,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199)。経口送達のための乳濁液処方物は、処方の容易さ、吸収および生物学的利用能の観点からの有効性のために、非常に広く使用されている(Rosoff,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245;Idson,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199)。鉱物油ベースの緩下薬、油溶性ビタミン、および高脂肪栄養調製物は、一般的にo/w乳濁液として経口投与される物質の1つである。
【0088】
本発明の1つの実施形態では、ジヌクレオチドアナログをマイクロエマルジョンとして処方する。マイクロエマルジョンを、単一の光学的に等方性で熱力学的に安定な溶液である水系、油系、および両親媒性の系と定義することができる(Rosoff,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245)。典型的には、マイクロエマルジョンは、水性界面活性剤溶液中で油を最初に分散させ、その後に十分な量の第4の成分(一般に、中鎖アルコール)を添加して、透明な系を形成させることによって調製される系である。したがって、マイクロエマルジョンを、表面活性分子の界面薄膜によって安定化された2つの不混和性液体の熱力学的に安定な等方性の透明な分散液とも説明されている(Leung and Shah,in:Controlled Release of Drugs:Polymers and Aggregate Systems,Rosoff,M.,Ed.,1989,VCH Publishers,New York,pages 185-215)。マイクロエマルジョンを、一般に、3?5つの成分(油、水、界面活性剤、共界面活性剤、および電解質が含まれる)の組み合わせによって調製する。マイクロエマルジョンが水-油(w/o)型または油-水(o/w)型のいずれであるかは、使用した油および界面活性剤の性質ならびに界面活性分子の極性ヘッドおよび炭化水素テールの構造および幾何学的充填に依存する(Schott,in Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1985,p.271)。
【0089】
状態図を使用した現象論的アプローチが広く研究されており、当業者はどのようにしてマイクロエマルジョンを処方するのかについての包括的知識を得ている(Rosoff,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245;Block,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.335)。従来の乳濁液と比較して、マイクロエマルジョンにより、自発的に形成される熱力学的に安定な液滴の処方において水不溶性薬物が可溶化されるという利点が得られる。
【0090】
マイクロエマルジョンの調製で使用される界面活性剤には、単独または共界面活性剤と組み合わせたイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、モノラウリン酸テトラグリセロール(ML310)、モノオレイン酸テトラグリセロール(MO310)、モノオレイン酸ヘキサグリセロール(PO310)、ペンタオレイン酸ヘキサグリセロール(PO500)、モノカプリン酸デカグリセロール(MCA750)、モノオレイン酸デカグリセロール(MO750)、セキオレイン酸デカグリセロール(SO750)、デカオレイン酸デカグリセロール(DAO750)が含まれるが、これらに限定されない。共界面活性剤(通常、エタノール、1-プロパノール、および1-ブタノールなどの短鎖アルコール)は、界面活性剤フィルムを貫通し、その結果として不規則なフィルムを作製することによってその界面活性剤分子間に作製された空隙のために界面流動性を高めるのに役立つ。しかし、マイクロエマルジョンを、共界面活性剤を使用することなく調製することができ、無アルコール自己乳化マイクロエマルジョン系は、当該分野で公知である。水相は、典型的には、水、薬物、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコール誘導体の水溶液であり得るが、これらに限定されない。油相には、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8?C12)モノ、ジ、およびトリグリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C8?ClOグリセリド、植物油、およびシリコーン油が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0091】
マイクロエマルジョンは、薬物の溶解性および薬物吸収の増強の観点から特に興味深い。脂質ベースのマイクロエマルジョン(o/wおよびw/oの両方)は、薬物(ペプチドが含まれる)の経口生物学的利用能を増強すると提案されている(Constantinides et al.,Pharmaceutical Research,1994,11,1385-1390;Ritschel,Meth.Find.Exp.Clin.Pharmacol.,1993,13,205)。マイクロエマルジョンにより、薬物可溶化、酵素的加水分解からの薬物の防御、膜の流動性および浸透性の界面活性剤誘導性変化による薬物吸収の増強可能性、調製の容易さ、固体投薬形態を超える経口投与の容易さ、臨床有効性の改善、毒性の減少の利点が得られる(Constantinides et al.,Pharmaceutical Research,1994,11,1385;Ho et al.,J.Pharm.Sci.,1996,85,138-143)。しばしば、マイクロエマルジョンは、その成分が周囲温度で集まった場合に自発的に形成され得る。これは、熱不安定性薬物、ペプチド、またはオリゴヌクレオチドを処方する場合に特に有益であり得る。マイクロエマルジョンはまた、美容的および薬学的適用の両方での有効成分の経皮送達のいて有効であった。本発明のマイクロエマルジョン組成物および処方物は胃腸管からのオリゴヌクレオチドおよび核酸の体内吸収の増加を容易にし、胃腸管、膣、口腔、および他の投与領域内でのオリゴヌクレオチドおよび核酸の局所細胞取り込みを改善すると予想される。
【0092】
本発明のマイクロエマルジョンはまた、本発明の処方物の性質を改善し、本発明のジヌクレオチドおよび核酸の吸収を増強するためのモノステアリン酸ソルビタン(Grill 3)、ラブラソール(Labrasol)、および浸透増強剤などのさらなる成分および添加物を含むことができる。本発明のマイクロエマルジョン中で使用される浸透増強剤を、5つの大きなカテゴリー(界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸、キレート剤、および非キレート化非界面活性剤)のうちの1つに分類することができる(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92)。これらの各クラスは、上記で考察されている。
【0093】
マイクロエマルジョンに加えて、薬物の処方のために研究および使用されている界面活性剤構造が多数まとめられている。これらには、単層、ミセル、二重層、および小胞が含まれる。リポソームなどの小胞は、その特異性および作用持続時間のために非常に魅力的であり、薬物送達の観点から提案される。本発明で使用されるように、用語「リポソーム」は、球状二重層に配置された両親媒性脂質から構成される小胞を意味する。
【0094】
リポソームは、親油性物質から形成された膜および水性の内部を有する単層または多重層小胞である。水性部分は、送達すべき組成物を含む。陽イオン性リポソームは、細胞壁と融合することができるという利点を有する。非陽イオン性リポソームは、細胞壁と効率的に融合することができないが、in vivoでマクロファージによって取り込まれる。
【0095】
無傷の哺乳動物の皮膚を横断するために、脂質小胞は、適切な経皮勾配の影響下でそれぞれ直径50nm未満の一連の細孔を通過しなければならない。したがって、高度に変形可能でこのような細孔を通過することができるリポソームを使用することが望ましい。
【0096】
リポソームのさらなる利点には、以下が含まれる:天然のリン脂質から得たリポソームが生体適合性および生分解性を示すこと、リポソームが広範な水溶性および脂溶性薬物を組み込むことができること、リポソームがその内部区画中にカプセル化した薬物を代謝および分解から防御することができること(Rosoff,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245)。リポソーム処方物の調製における重要な検討材料は、脂質表面の電荷、小胞サイズ、およびリポソームの水中での体積である。
【0097】
リポソームは、作用部位への有効成分の運搬および送達に有用である。リポソーム膜は生体膜と構造的に類似しているので、リポソームを組織に適用した場合、リポソームは細胞膜に融合され始める。リポソームと細胞とが融合されるにつれて、リポソーム成分が細胞に流入し、活性成分が作用し得る。
【0098】
リポソーム処方物は、多数の薬物の送達様式として広範に調査されている。局所投与について証拠が得られつつあり、リポソームは他の処方物を超えるいくつかの利点が存在する。このような利点には、投与薬物の高い体内吸収に関連する副作用の軽減、所望の標的への投与薬物の蓄積の増加、ならびに広範な種々の薬物(親水性および疎水性の両方)の皮膚への投与が可能であることが含まれる。
【0099】
リポソームは、2つの大きなクラスに分類される。陽イオン性リポソームは、負電荷のDNA分子と相互作用して安定な複合体を形成する正電荷のリポソームである。正電荷のDNA/リポソーム複合体は、負電荷の細胞表面と結合し、エンドソームに内在化する。エンドソーム内の酸性pHにより、リポソームが破壊され、細胞質に内容物が放出される(Wang et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,1987,147,980-985)。
【0100】
pH感受性であるか負電荷のリポソームは、DNAと複合体化するよりもむしろDNAを捕捉する。DNAおよび脂質の両方が同様に荷電しているので、複合体形成よりも反発が起こる。それにもかかわらず、いくつかのDNAは、これらのリポソームの水性内部に捕捉される。pH感受性リポソームを使用して、チミジンキナーゼ遺伝子をコードするDNAが培養物中の細胞単層に送達されている。外因性遺伝子の発現を、標的細胞中で検出した(Zhou et al.,Journal of Controlled Release,1992,19,269-274)。
【0101】
1つの主なリポソーム組成物型には、天然由来ホスファチジルコリン以外のホスファチジルコリンが含まれる。中性リポソーム組成物を、例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトリホスファチジルコリン(DPPC)から形成することができる。陰イオン性リポソーム組成物を、一般に、ジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成する一方で、陰イオン性融合誘導性リポソームを、主にジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成する。別の組成物型を、例えば、ダイズPCおよび卵PCなどのホスファチジルコリン(PC)から形成する。別の型を、リン脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物から形成する。
【0102】
皮膚への薬物の送達におけるその有用性を決定するために、非イオン性リポソーム系(特に、非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含む系)も試験されている。ノバソーム(Novasome)(商標)I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびノバソーム(商標)II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム処方物を使用して、シクロスポリン-Aを真皮およびマウスの皮膚に送達させた。結果は、このような非イオン性リポソーム系が異なる皮膚層へのシクロスポリン-Aの沈積の促進に有効であることを示した(Hu et al.S.T.P.Pharma.Sci.,1994,4,6,466)。
【0103】
リポソームには、「立体的に安定化された」リポソームが含まれる。本明細書中で使用されるこの用語は、リポソームに組み込まれた場合にこのような特殊化した脂質を欠くリポソームと比較した場合に循環寿命が増加する1つまたは複数の特殊化脂質を含むリポソームをいう。立体的に安定化されたリポソームの例は、(A)リポソームの小胞形成脂質部分が1つまたは複数の糖脂質(モノシアロガングリオシドGM1など)を含むリポソーム、または(B)1つまたは複数の親水性ポリマー(ポリエチレングリコール(PEG)部分など)を使用して誘導体化されたリポソームである。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、少なくともガングリオシド、スフィンゴミエリン、またはPEG由来脂質を含む立体的に安定化されたリポソームについて、これらの立体的に安定化されたリポソームの循環半減期の増強により、細網内皮系(RES)の細胞への取り込みが減少すると当該分野で考えられる(Allen et al.,FEBS Letters,1987,223,42;Wu et al.,Cancer Research,1993,53,3765)。
【0104】
1つまたは複数の糖脂質を含む種々のリポソームは、当該分野で公知である。Papahadjopoulos et al.(Ann.N.Y.Acad.Sci.,1987,507,64)は、モノシアロガングリオシドG_(M1)、硫酸カラクトセレブロシドおよびホスファチジルイノシトールのリポソームの血中半減期を改善する能力を報告した。これらの所見は、Gabizon et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1988,85,6949)に詳述されている。米国特許第4,837,028号およびWO88/04924号(共に、Allen et al.)は、(1)スフィンゴミエリンおよび(2)ガングリオシドG_(M1)またはカラクトセレブロシドの硫酸エステルを含むリポソームを開示している。米国特許第5,543,152号(Webb et al.)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示している。1,2-sn-ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは、WO97/13499号(Lim et al.)に開示されている。
【0105】
1つまたは複数の親水性ポリマーを使用して誘導した脂質を含む多数のリポソームおよびその調製方法は、当該分野で公知である。Sunamoto et al.(Bull.Chem.Soc.Jpn.,1980,53,2778)は、PEG部分を含む非イオン性界面活性剤(2C_(12) 15G)を含むリポソームを記載していた。Illum et al.(FEBS Lett.,1984,167,79)は、重合グリコールでのポリスチレン粒子のコーティングによって血中半減期が有意に増加することに留意した。ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)のカルボキシル基の結合によって修飾された合成リン脂質は、Searsによって記載されている(米国特許第4,426,330号および同第4,534,899号)。Klibanov et al.(FEBS Lett.,1990,268,235)は、PEGまたはステアリン酸PRGを使用して誘導したホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリポソームの血中循環半減期が有意に増加することを証明する実験を記載している。Blume et al.(Biochimica et Biophysica Acta,1990,1029,91)は、このような所見をジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)とPEGとの組み合わせから形成された他のPEG誘導リン脂質(例えば、DSPE-PEG)に拡大した。その外面に共有結合したPEGを有するリポソームは、Fisherの欧州特許第EP0445131B1号およびWO90/04384号に記載されている。1?20モル%のPEGを使用して誘導したPEを含むリポソーム組成物およびその使用方法は、Woodle et al.(米国特許第5,013,556号および同第5,356,633号)およびMartin et al.(米国特許第5,213,804号および欧州特許第0496813B1号)に記載されている。多数の他の脂質-ポリマー複合物を含むリポソームは、WO91/05545号および米国特許第5,225,212号(共にMartin et al.)ならびにWO94/20073号(zalipsky et al.)に開示されている。PEG修飾セラミド脂質を含むリポソームは、WO96/10391号(Choi et al.)に記載されている。米国特許第5,540,935号(Miyazaki et al.)および同第5,556,948(Tagawa et al.)は、その表面の機能的部分を使用してさらに誘導することができるPEG含有リポソームを記載している。
【0106】
核酸を含む限定された数のリポソームは、当該分野で公知である。Thierry et al.のWO96/40062号は、高分子量の核酸のリポソームへの捕捉方法を開示している。Tagawa et al.の米国特許第5,264,221号は、タンパク質結合リポソームを開示し、リポソームの内容物にはアンチセンスRNAが含まれ得ることを強く主張している。Rahman et al.の米国特許第5,665,710号は、リポソームへのオリゴデオキシヌクレオチドの一定の捕捉方法を記載している。Love et al.のWO97/04787号は、raf遺伝子をターゲティングするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むリポソームを開示している。
【0107】
トランスフェルソーム(transfersome)は、さらに別のリポソーム型であり、薬物送達小胞のための魅力的な候補である高度に変形可能な凝集体である。トランスフェルソームは、非常に高度に変形可能であり、液滴よりも小さな孔を容易に突き抜けることができる脂質液滴と説明することができる。トランスフェルソームは、使用される環境に適合することができ(例えば、(皮膚の孔の形状に適合させて)自己至適化する)、自己修復により、断片化することなくその標的に頻繁に到達し、しばしば自己負荷する。トランスフェルソームを作製するために、表面縁部活性因子(通常、界面活性剤)を標準的なリポソーム組成物に添加することが可能である。トランスフェルソームを使用して、血清アルブミンを皮膚に送達させた。血清アルブミンのトランスフェルソーム媒介性送達は、血清アルブミンを含む溶液の皮下注射と同等の有効性を示した。
【0108】
界面活性剤は、乳濁液(マイクロエマルジョンが含まれる)およびリポソームなどの処方物で広範に適用される。多数の異なる界面活性型(天然および合成の療法)の性質の最も一般的な分類および順位付け方法は、親水親油バランス(HLB)の使用による。親水基(「ヘッド」としても公知」)の性質により、処方物中で使用される異なる界面活性剤の最も有用な分類手段が得られる(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,p.285)。
【0109】
界面活性剤分子がイオン化されていない場合、非イオン性界面活性剤として分類する。非イオン性界面活性剤は、薬学的生成物および美容生成物で広範に適用され、広範なpH値にわたって使用可能である。一般に、そのHLB値は、その構造に応じて2?約18の範囲である。非イオン性界面活性剤には、非イオン性エステル(エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびエトキシル化エステルなど)が含まれ得る。非イオン性アルカノールアミドおよびエーテル(脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコール、およびエトキシル化/プロポキシル化ブロック重合体など)もこのクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤クラスの最も一般的なメンバーである。
【0110】
界面活性分子が水に溶解または分散された場合に負電荷を有する場合、この界面活性剤は陰イオン性に分類される。陰イオン性界面活性剤には、セッケン、乳酸アシル、アミノ酸のアシルアミド、硫酸エステル(硫酸アルキルおよびエトキシル化硫酸アルキルなど)、スルホン酸塩(アルキルベンゼンスルホン酸など)、イセチオン酸アシル、アシルタウレート、およびスルホコハク酸塩、およびリン酸塩などのカルボン酸塩が含まれる。最も重要な陰イオン性界面活性剤クラスのメンバーは、スルホン酸アルキルおよびセッケンである。
【0111】
界面活性分子が水に溶解または分散された場合に正電荷を有する場合、この界面活性剤は陽イオン性に分類される。陽イオン性界面活性剤には、第四級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが含まれる。第四級アンモニウム塩は、このクラスのメンバーで最も使用されている。
【0112】
界面活性剤分子が正電荷または負電荷のいずれかを保有する能力を有する場合、この界面活性剤は両性に分類される。両性界面活性剤には、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N-アルキルベタイン、およびホスファチドが含まれる。
【0113】
製剤、処方物、および乳濁液中の界面活性剤の使用は、概説されている(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,p.285)。
【0114】
特定の実施形態では、本発明の化合物を、非水性溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはその組み合わせが含まれる)中に溶媒和した化合物を含む薬学的に許容可能な組成物中に配合することができる。このような薬学的処方物中で化合物が安定であり、その結果、薬学的処方物を使用前に長期間保存することができると考えられる。
【0115】
デシタビンを使用した現在の臨床治療では、薬物の分解を最少にするために、デシタビンを凍結乾燥粉末として供給し、投与前に少なくとも40体積%の溶媒(WFIなど)中に水を含む冷水溶液中で再構成し、冷輸液で希釈する。このような処方および治療計画には、いくつかの欠点がある。第1に、デシタビンの冷溶液中での冷却が不可欠となり、より高い温度で保存することができる処方物より取り扱いが困難であり、経済的に望ましくない。第2に、水溶液中でのデシタビンの急速な分解により、再構成したデシタビン溶液を、7時間未満冷蔵室で保存した場合、最長で3時間以内でしか患者に注入することができない。さらに、低温流動物の注入は、患者にとって非常に不快で痛みがあり得、このような計画に患者が抵抗する原因となる。
【0116】
デシタビンのトリアジン環および/またはリボース環の修飾ならびに化合物の非水性溶媒の配合により、薬学的処方物は、デシタビンを使用した現在の臨床治療に関連する上記問題を回避することができる。本発明の化合物のこれらの処方物は、少なくとも40体積%の溶媒中に水を含む水溶液中で処方したデシタビンよりも化学的に安定であると考えられる。
【0117】
好ましい実施形態では、本発明の処方物は、溶媒中に40%未満、任意選択的に溶媒中に20%未満、任意選択的に溶媒中の10%未満、任意選択的に溶媒中に1%未満の水を含む。1つの変形形態では、薬学的処方物を、実質的に無水形態で保存する。任意選択的に、水を吸収させるために乾燥剤を処方物に添加することができる。
【0118】
安定性が増強されたために、本発明の処方物を周囲温度で保存および輸送することができ、それにより、薬物の取り扱い費用を有意に減少させることができる。さらに、本発明の処方物を、患者への投与前に長期間都合よく保存することができる。さらに、本発明の処方物を、標準的な輸液で希釈して(冷却なし)室温で患者に投与することができ、それにより、低温流動物の注入に関連する患者の不快感を回避することができる。
【0119】
別の実施形態では、本発明の化合物を、グリセリン中に異なる濃度で溶解する。例えば、処方物は、任意選択的に、1mlのグリセリンあたり0.1mgと200mgとの間、1mgと100mgとの間、1mgと50mgとの間、2mgと50mgとの間、2mgと100mgとの間、5mgと100mgとの間、10mgと100mgとの間、または20mgと100mgとの間の本発明の化合物を含み得る。グリセリン濃縮物あたりの本発明の化合物の特定の例には、2、5、10、20、22、25、30、40、および50mg/mlが含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
異なる等級のグリセリン(同義語:1,2,3-プロパントリオール、グリセロール、グリコールアルコール、無水グリセロール)を使用して、処方物を調製することができる。好ましくは、化学的純度が90%を超えるグリセリンを使用して、処方物を調製する。
【0121】
別の実施形態では、本発明の化合物を、プロピレングリコール中に異なる濃度で溶解する。例えば、処方物は、任意選択的に、1mlのプロピレングリコールあたり0.1mgと200mgとの間、0.1mgと100mgとの間、0.1mgと50mgとの間、2mgと50mgとの間、2mgと100mgとの間、5mgと100mgとの間、10mgと100mgとの間、または20mgと100mgとの間の本発明の化合物を含み得る。プロピレングリコール濃縮物あたりのデシタビンの特定の例には、2、5、10、20、22、25、30、40、および50mg/mlが含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
さらに別の実施形態では、本発明の化合物を、グリセリンおよびプロピレングリコールを含む溶媒中に異なる濃度で溶解する。溶媒中のプロピレングリコールは、0.1?99.9%、任意選択的に1?90%、10?80%、または50?70%である。
【0123】
さらに別の実施形態では、本発明の化合物を、グリセリンとポリエチレングリコール(PEG)(PEG300,PEG400、およびPEG1000など)とを組み合わせた溶媒中に異なる濃度で溶解する。溶媒中のポリエチレングリコールの濃度は、0.1?99.9%、任意選択的に1?90%、10?80%、または50?70%である。
【0124】
さらに別の実施形態では、本発明の化合物を、プロピレングリコールと、ポリエチレングリコールと、グリセリンとを組み合わせた溶媒中に異なる濃度で溶解する。溶媒中のプロピレングリコールの濃度は、0.1?99.9%、任意選択的に1?90%、10?60%、または20?40%であり、溶媒中のポリエチレングリコールの濃度は、0.1?99.9%、任意選択的に1?90%、10?80%、または50?70%である。
【0125】
プロピレングリコールの添加によって化学的安定性を改善し、処方物の粘度が減少し、本発明の化合物の溶媒中の溶解を容易にすることができる。
【0126】
薬学的処方物は、さらに、処方物が約pH4と8との間になるような比率で処方物中に添加した酸性化剤を含み得る。酸性化剤は、有機酸であり得る。有機酸の例には、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、蟻酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、マレイン酸、グルタミン酸、コハク酸、アスパラギン酸、ジアトリゾ酸、および酢酸が含まれるが、これらに限定されない。酸性化剤はまた、塩酸、硫酸、リン酸、および硝酸などの無機酸であり得る。
【0127】
比較的中性のpH(例えば、pH4?8)を維持するための処方物への酸性化剤の添加により、溶媒中の本発明の化合物の溶解が容易になり、処方物の長期安定性が増強されると考えられる。アルカリ溶液中では、デシタビンがN-(ホルミルアミジノ)-N’-β-D-2-デオキシリボフラノシル尿素に急速に可逆的に分解し、不可逆的に分解すると1-β-D-2’-デオキシリボフラノシル-3-グアニル尿素を形成する。加水分解の第1段階は、N-アミジニウム-N’-(2-デオキシ-β-D-エリスロペントフラノシル)尿素ホルメート(AUF)の形成を含む。高温での分解の第2段階は、グアニジンの形成を含む。酸性溶液中では、N-(ホルミルアミジノ)-N’-β-D-2-デオキシリボフラノシル尿素およびいくつかの未確認の化合物が形成される。強酸性溶液(pH<2.5)中では、5-アザシトシンが生成される。したがって、比較的中性のpHの維持は、デシタビンのアナログおよび誘導体を含む処方物に有利であり得る。
【0128】
変形形態では、酸性化剤は、0.01?0.2mg/ml溶媒、任意選択的に0.04?0.1mg/ml溶媒、または0.03?0.07mg/ml溶媒の濃度のアスコルビン酸である。
【0129】
薬学的処方物のpHを、pH4とpH8との間、好ましくはpH5とpH7との間、より好ましくはpH5.5とpH6.8との間になるように調整することができる。
【0130】
薬学的処方物は、好ましくは、25℃で7日、14日、21日、28日、またはそれを超えて保存した場合、少なくとも80%、90%、95%、またはそれを超えて安定である。薬学的処方物はまた、好ましくは、40℃で7日、14日、21日、28日、またはそれを超えて保存した場合、少なくとも80%、90%、95%、またはそれを超えて安定である。
【0131】
1つの実施形態では、本発明の薬学的処方物を、グリセリンを使用し、グリセリン中に本発明の化合物を溶解することによって調製する。これを、例えば、グリセリンへの本発明の化合物の添加またはデシタビンへのグリセリンの添加によって行うことができる。その混合により、薬学的処方物が形成される。
【0132】
任意選択的に、本方法は、さらに、本発明の化合物がグリセリンによって溶媒和される速度を増加させるためのさらなる工程を含む。実施することができるさらなる工程には、震盪、加熱、溶媒和期間の延長、および微粉末化した本発明の化合物の適用、およびその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
1つの変形形態では、震盪を適用する。震盪の例には、機械的震盪、超音波処理、従来の混合、従来の撹拌、およびその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。例えば、処方物の機械的震盪を、製造者のプロトコールにしたがって、Silverson Machines Inc.,(East Longmeadow,MA)によって製造されたSilversonホモジナイザーによって行うことができる。
【0134】
別の変形形態では、加熱を適用することができる。任意選択的に、処方物を、水浴中で加熱することができる。好ましくは、加熱処方物の温度は、70℃未満、より好ましくは35℃と40℃との間であり得る。例として、処方物を、37℃に加熱することができる。
【0135】
さらに別の変形形態では、本発明の化合物を、長期間にわたってグリセリン中で保存する。
【0136】
さらに別の変形形態では、微粉末化形態の本発明の化合物を使用して、溶媒和速度を増加させることもできる。任意選択的に、磨砕過程によって微粉末化することができる。例として、IncFluid Energy Aljet Inc.(Boise,IDTelford,PA)製のMastersizerusing an Air Jet Millで行った磨砕過程によって微粉末化することができる。
【0137】
任意選択的に、本方法は、さらに、一般的に使用される方法によって薬学的処方物のpHを調製する工程を含む。1つの変形形態では、pHを、酸(アスコルビン酸など)または塩基(水酸化ナトリムなど)の添加によって調整する。別の変形形態では、緩衝液((エチレンジニトリロ)四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)溶液など)の添加によってpHを調整し、安定化させる。デシタビンはpH感受性を示すことが公知であるので、薬学的処方物の約pH7へのpHの調整により、治療成分の安定性を増加させることができる。
【0138】
任意選択的に、本発明は、さらに、薬学的処方物からの不溶性の本発明の化合物の分離を含む。任意の適切な技術によって分離することができる。例えば、適切な分離方法は、薬学的処方物の濾過、沈殿、および遠心分離を含み得る。本発明の化合物の不溶性粒子によって目詰りが生じ、薬学的処方物の投与の障害になり、患者に対して潜在的に危険である。薬学的処方物からの不溶性の本発明の化合物の分離により、投与が容易になり、治療生成物の安全性が向上し得る。
【0139】
任意選択的に、本方法は、さらに、薬学的処方物の滅菌を含む。任意の適切な技術によって滅菌することができる。例えば、適切な安定化方法は、薬学的処方物に対する1つまたは複数の滅菌濾過、化学物質、照射、加熱、および化学的殺菌剤の添加を含み得る。
【0140】
留意のように、デシタビンは水中で不安定であり、したがって、本発明の化合物の処方のために使用されるグリセリンの含水量を減少させることが望ましいかもしれない。したがって、溶解および/または滅菌工程前に、グリセリンを乾燥させることができる。このようなグリセリンまたはグリセリン中の本発明の化合物溶液の乾燥を、グリセリンへの薬学的に許容可能な乾燥剤の添加によって行うことができる。グリセリンまたは本発明の処方物を、例えば、乾燥剤を含む層による濾過によって乾燥させることができる。
【0141】
任意選択的に、本方法は、さらに、乾燥剤、緩衝化剤、抗酸化剤、安定剤、抗菌薬、および薬学的に不活性な薬剤から選択される群の1つまたは複数のメンバーの添加を含み得る。1つの変形形態では、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、およびその混合物などの抗酸化剤を添加することができる。別の変形形態では、グリコールのような安定剤を添加することができる。
【0142】
3.本発明の化合物または処方物を含む容器またはキット
本発明に記載の薬学的処方物を、種々のサイズおよび容量のシリンジ、バイアル、またはアンプルなどの滅菌容器に含めることができる。滅菌容器は、任意選択的に、1?50ml、1?25ml、または1?20mlの処方物を含み得る。滅菌容器は、薬学的処方物の滅菌状態を保持し、輸送および保存を容易にし、事前に滅菌することなく薬学的処方物を投与することが可能である。
【0143】
本発明はまた、必要とする宿主に本発明の化合物を投与するためのキットを提供する。1つの実施形態では、キットは、固体、好ましくは粉末形態の本発明の化合物およびグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはその組み合わせを含む非水性希釈剤を含む。固体デシタビンと希釈剤の混合により、好ましくは、本発明の薬学的処方物が処方される。例えば、キットは、固体形態の本発明の化合物を含む第1の容器およびグリセリンを含む希釈剤を含む容器を含み得る。この固体の本発明の化合物への希釈剤の添加によって本発明の化合物を投与するための薬学的処方物が形成される。固体の本発明の化合物と希釈剤との混合により、任意選択的に、1mlの希釈剤あたり0.1mgと200mgとの間の本発明の化合物、任意選択的に、1mlの溶媒あたり0.1mgと100mgとの間、2mgと50mgとの間、5mgと30mgとの間、10mgと25mgとの間の本発明の化合物を含む薬学的処方物を形成することができる。
【0144】
実施形態によれば、希釈剤は、プロピレングリコールとグリセリンとの混合物であり、溶媒中のプロピレングリコール濃度は、0.1?99.9%、任意選択的に1?90%、10-60%、または20?40%である。
【0145】
また、実施形態によれば、希釈剤は、ポリエチレングリコールとグリセリンとの混合物であり、溶媒中のポリエチレングリコール濃度は、0.1?99.9%、任意選択的に1?90%、10?60%、または20?40%である。
【0146】
また、実施形態によれば、希釈剤は、プロピレングリコールと、ポリエチレングリコールと、グリセリンとの混合物であり、溶媒中のプロピレングリコール濃度は、0.1?99.9%、任意選択的に1?90%、10?60%、または20?40%であり、溶媒中のポリエチレングリコール濃度は、0.1?99.9%、任意選択的に1?90%、10?60%、20?40%である。
【0147】
希釈剤はまた、任意選択的に、40%,20%,10%,5%,2%、またはそれ未満の水を含む。1つの変形形態では、希釈剤は無水であり、任意選択的に、乾燥剤をさらに含む。希釈剤はまた、任意選択的に、1つまたは複数の乾燥剤、グリコール、抗酸化剤、および/または抗菌薬を含み得る。
【0148】
キットは、任意選択的に、説明書をさらに含む。説明書は、どのようにして固体の本発明の化合物および希釈剤を混合して薬学的処方物を形成すべきであるのかを記載することができる。説明書はまた、どのようにして得られた薬学的処方物を患者に投与するのかを記載することができる。説明書は、任意選択的に、本発明の投与方法を記載することができる。
【0149】
希釈剤および本発明の化合物を、個別の容器に含めることができる。容器は、異なるサイズで供給することができる。例えば、容器は、1mlと50ml、1mlと25ml、1mlと20ml、または1mgと10mlの間の希釈剤を含み得る。
【0150】
容器またはキット中に提供された薬学的処方物は、直接投与に適切な形態であり得るか、何を患者に投与するかに対して希釈が必要な濃縮形態であり得る。例えば、本発明に記載の薬学的処方物は、注入を介した直接投与に適切な形態である。
【0151】
本明細書中に記載の方法およびキットは、本発明の化合物を含む薬学的処方物の安定性および治療効果をさらに増強するか補足することができる柔軟性がある。
【0152】
4.本発明の化合物/処方物の投与方法
本発明の化合物/処方物を、任意の経路で、以下に例証した経路に適合した薬学的組成物の形態で投与することができ、経路は治療される容態に依存する。化合物または処方物を、例えば、経口、非経口、局所、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸、口腔内、鼻腔内、リポソーム、吸入、膣内、眼内、局所送達(例えば、カテーテルまたはステント)、皮下、脂肪内、関節内、または鞘内に投与することができる。本発明の化合物および/または組成物を、遅延放出投薬形態で投与または同時投与することもできる。
【0153】
本発明の化合物および/または組成物を、任意の従来の投薬形態で投与または同時投与することができる。本発明の文脈中の同時投与を、改良された臨床結果を達成するための調和した治療過程における1つを超える治療薬の投与を意味すると定義する。このような同時投与は、同一の広がりを有し得る(すなわち、重複した期間に起こり得る)。
【0154】
本発明の化合物を含む本発明の化合物または組成物を、0.1?1000mg/m^(2)、任意選択的に1?200mg/m^(2)、任意選択的に1?50mg/m^(2)、任意選択的に1?40mg/m^(2)、任意選択的に1?30mg/m^(2)、任意選択的に1?20mg/m^(2)、または任意選択的に5?30mg/m^(2)、の用量で患者などの宿主に投与することができる。
【0155】
例えば、本発明の化合物/組成物を、二水素カリウムなどの緩衝液の塩および水酸化ナトリウムなどのpH調整剤と共に注射用滅菌粉末として供給することができる。この処方物を、好ましくは28℃で保存し、薬物の安定性を少なくとも2年間保持すべきである。この粉末処方物を、10mlの注射用滅菌水で再構成することができる。溶液を、当該分野で公知の輸液(0.9%塩化ナトリウム注射液、5%デキストロース注射液、および乳酸加リンゲル液など)でさらに希釈することができる。再構成液および希釈液を、最大の有効性で送達するために4?6時間以内に使用することが好ましい。
【0156】
好ましい実施形態では、本発明の化合物/組成物を、注射(皮下注射、ボーラスi.v.注射、連続的i.v.注入、および1時間にわたるi.v.注入など)によって患者に投与する。任意選択的に、本発明の化合物/組成物を、1日あたり1?24時間、治療サイクルあたり3?5日間で0.1?1000mg/m^(2)/日の用量、任意選択的に1?100mg/m^(2)/日の用量、任意選択的に2?50mg/m^(2)/日の用量、任意選択的に10?30mg/m^(2)/日の用量、任意選択的に5?20mg/m^(2)/日の用量のi.v.注入によって患者に投与する。
【0157】
デシタビンまたはアザシチジンについて、50mg/m^(2)未満の投薬量は、従来の癌化学療法で使用されるよりもはるかに低いと見なされる。このような低用量のデシタビンまたはアザシチジンのアナログ/誘導体の使用により、異常なメチル化による癌細胞中でサイレンシングされた遺伝子の転写活性を活性化して下流シグナル伝達を誘発し、細胞成長を停止させ、分化、およびアポトーシスが起こり、最終的にこれらの癌細胞が死滅し得る。しかし、この低投薬量は、正常細胞に対してより低い全身細胞傷害効果を有するべきであり、したがって、治療を受ける患者に対する副作用がより低い。
【0158】
薬学的処方物を、輸液、治療化合物、栄養補助液、抗菌液、緩衝剤、および安定剤からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーと共に任意の従来の形態で同時投与することができる。
【0159】
上記のように、本発明の化合物を、グリセリンなどの非水性溶媒への本発明の化合物の溶媒和によって液体形態で処方することができる。薬学的液体処方物は、直接投与可能である(例えば、さらに希釈しない)というさらなる利点があり、したがって、投与まで安定な形態で保存することができる。さらに、グリセリンは水と容易に混合することができるので、処方物を投与前にさらに容易に希釈することができる。例えば、患者への投与の180分前、60分前、40分前、30分前、20分前、10分前、5分前、2分前、1分前、またはそれ以前に、薬学的処方物を水で希釈することができる。
【0160】
薬学的処方物を、患者に静脈内投与することができる。好ましい投与経路は、静脈内注入である。任意選択的に、本発明の薬学的処方物を、事前に再構成することなく直接注入することができる。
【0161】
1つの実施形態では、薬学的処方物を、コネクタ(3つのアームを有し、それぞれが管に接続されたY型コネクタなど)によって注入する。例として、種々のサイズのバクスター(登録商標)Yコネクタを使用することができる。薬学的処方物を含む容器を管に取り付け、これをさらにコネクタのアームの1つに取り付ける。0.9%塩化ナトリウム、5%デキストロース、5%グルコース、または乳酸加リンゲル液などの輸液を、Y型コネクタの別のアームに取り付けた管によって注入する。輸液および薬学的処方物を、Y型コネクタ内で混合する。得られた混合物を、Y型コネクタの第3のアームに接続した管から患者に注入する。この投与アプローチの先行技術を超える利点は、本発明の化合物を、患者の体内に入れる前に輸液と混合し、それにより、本発明の化合物が水との接触によって分解され得る時間が減少されるという点である。例えば、本発明の化合物を、患者の体内に入れる10分、5分、2分、または1分より以前に混合する。
【0162】
処方物の安定性が向上した結果として、患者に薬学的処方物を、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、またはそれ以上の期間注入することができる。注入が長期であることにより、治療処方物の投与計画を融通することができる。
【0163】
あるいはまたはさらに、患者の必要性に応じて、注入の速度および体積を調節することができる。薬学的処方物の注入を、既存のプロトコールにしたがって調節することができる。
【0164】
薬学的処方物を、輸液、治療化合物、栄養補助液、抗菌液、緩衝剤、および安定剤からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーと共に任意の従来の形態で同時投与することができる。任意選択的に、治療成分(抗新生物薬、アルキル化剤、レチノイドスーパーファミリーのメンバーである薬剤、抗生物質製剤、ホルモン剤、植物由来作用因子、生物学的作用因子、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節薬、およびモノクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない)を、本発明の処方物と同時注入することができる。
【0165】
本発明の文脈における同時注入を、改良された臨床結果を達成するための調和した治療過程における1つを超える治療薬の投与を意味すると定義する。このような同時注入は、同時、重複、または連続的であり得る。1つの特定の例では、薬学的処方物および輸液の同時注入を、Y型コネクタによって行うことができる。
【0166】
静脈内投与した薬学的処方物の薬物動態学および代謝は、静脈内投与した本発明の化合物の薬物動態学および代謝に類似している。
【0167】
ヒトでは、デシタビンは、バイオアッセイによって測定したところ、7分間の半減期および薬10?35分間の終末半減期の分布相を示した。分布容積は、約4.6L/kgである。短い血漿半減期は、肝臓シチジンデアミナーゼによる脱アミノ化によるデシタビンの急速な不活化に起因する。ヒトにおけるクリアランスは高く、約126mL/分/kgである。全部で5人の患者における平均血漿曲線下面積は、408μg/時/Lであり、ピーク血漿濃度は2.01μMであった。患者では、3時間注入として100mg/m^(2)で投与した場合のデシタビン濃度は、約0.4μg/ml(2μM)であった。より長い注入時間(40時間まで)で、血漿濃度は約0.1?0.4μg/mLであった。40?60時間の注入時間および1mg/kg/時の注入速度を使用して、0.43?0.76μg/mLの血漿濃度が達成された。1mg/kg/時の注入速度での定常状態の血漿濃度は、0.2?0.5μg/mLと推定される。注入中断後の半減期は、12?20分である。100mg/m^(2)で6時間の注入の間のデシタビンの定常状態の血漿濃度は、0.31?0.39μg/mLと推定された。600mg/m^(2)の注入の間の濃度範囲は、0.41?16μg/mLであった。男性の脳脊髄液へのデシタビンの浸透は、36時間の静脈内注入の終了時に血漿濃度の14?21%に達する。非負荷デシタビンの尿排出量は低く、総用量が0.01%?0.9%未満の範囲であり、排出量と用量または血漿薬物レベルとは相関しない。高クリアランス値および投与した用量の1%未満の総尿排出量により、デシタビンが代謝過程によって急速且つ広範に消失することが示唆される。
【0168】
デシタビンと比較して向上した安定性のために、本発明の化合物/組成物は、保存時により長い貯蔵寿命を享受し、デシタビンの臨床用途に関連する問題を回避することができる。例えば、本発明の化合物を、任意選択的に、賦形剤(例えば、シクロデキストリン)、酸(例えば、アスコルビン酸)、アルカリ(水酸化ナトリウム)、緩衝液の塩(リン酸二水素カリウム)を含む凍結乾燥粉末として適用することができる。凍結乾燥粉末を、注射用(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、または皮下)の滅菌水で再構成することができる。任意選択的に、粉末を、水混和性溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、エタノール、およびPEGなど)を含む水性または非水性溶媒で再構成することができる。得られた溶液を、患者に直接投与するか、輸液(0.9%塩化ナトリウム、5%デキストロース、5%グルコース、および乳酸加リンゲル液など)でさらに希釈することができる。
【0169】
本発明の化合物/組成物を、周囲条件化または制御された環境下(冷却下(2?8℃、36?46°F)など)で保存することができる。デシタビンと比較したその優れた安定性により、本発明の化合物/組成物を、室温で保存し、輸液で再構成し、薬物溶液を冷却することなく患者に投与することができる。
【0170】
さらに、化学的安定性の向上により、本発明の化合物/組成物は、デシタビンと比較してより長い血漿半減期を有するはずである。したがって、本発明の化合物/組成物を、デシタビンより低い用量および/または頻度で患者に投与することができる。
【0171】
5.本発明の薬学的処方物を使用した併用療法
本発明の化合物または組成物を、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)のインヒビターと組み合わせて使用して、遺伝子の転写をさらに調整する(例えば、相乗的様式で過剰メチル化およびアセチル化によってサイレンシングされた遺伝子の転写を再確立する)ことができる。
【0172】
HDACは、遺伝子の転写サイレンシングで重要な役割を果たす。ヒストンのアセチル化量を、2つの酵素型(ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)活性の妨害によって調節する。これらの酵素の基質には、ヒストンH3、H4、H2A、およびH2Bのアミノ末端テール中に存在するリジン残基のe-アミノ基が含まれる。これらのアミノ酸残基を、HATによってアセチル化し、HDACによって脱アセチル化する。HDACによるヒストンリジンからのアセチル基の除去により、正電荷がリジン残基を修復し、それにより、ヌクレオソームの構造が凝縮し、ヌクレオソーム内に含まれる遺伝子がサイレンシングされる。したがって、ヒストンの脱アセチル化によってサイレンシングされたこれらの遺伝子を活性化するために、HADCの活性を阻害すべきである。HDACの阻害を使用してヒストンをアセチル化し、脱アセチル化ヒストンコア周囲を強固に包むDNAが弛緩する。DNA高次構造が開くことにより、特定の遺伝子が発現する。
【0173】
ヒストンの脱アセチル化に加えて、HDACは、p53(腫瘍抑制遺伝子)、GATA-1、TFIIE、およびTFIIFなどの転写因子の脱アセチル化によって遺伝子発現を調節することもできる。Gu and Roeder(1997)Cell 90:595-606(p53)およびBoyes et al.(1998)Nature 396:594-598(GATA-1)。HDACはまた、例えば、RB腫瘍抑制タンパク質循環HDACによって媒介される転写抑制によって細胞周期の調節に関与する。Brehm et al.(1998)Nature 391:597-601。したがって、HDACの阻害は、p53およびRBの腫瘍抑制遺伝子の発現を活性化し、その結果として、これらの遺伝子によって誘導される細胞成長の停止、分化、およびアポトーシスを促進するはずである。
【0174】
上記のように、腫瘍抑制遺伝子などの多数の遺伝子の異常な転写サイレンシングは、癌および他の疾患の病理発生に直接関連する。DNA中のシトシン残基のメチル化およびヒストンからのアセチル基の除去は、遺伝子サイレンシングのための2つの主な機構である。癌関連遺伝子のメチル化および/またはヒストンデアセチラーゼにより、これらの遺伝子の発現が抑制されるか完全にサイレンシングされる。一方で、これらの遺伝子の発現は、形質転換細胞の成長の停止、分化、および/またはアポトーシス細胞死の誘導に必要である。形質転換細胞中のこれらの遺伝子の不活動により、これらの細胞の増殖が抑制されず、最終的に癌になる。
【0175】
本発明の化合物/組成物とHDACインヒビターとの組み合わせにより、形質転換細胞の成長の停止、分化、および細胞死を効率的に再活性化することができる。本発明の化合物/組成物は、特に、調節領域の遺伝子のDNAのメチル化を阻害し、したがって、遺伝子の転写が活性化される。一方で、HDACインヒビターは、遺伝子のヌクレオソームコア中のヒストンのデアセチラーゼを阻害し、したがって、ヒストンの正味のアセチル化が増加し、それにより、遺伝子の転写が活性化される。これら2つの相補的機構の活用により、併用療法は、理想的には、相乗的様式で遺伝子転写をより有効に再確立することができる。相乗効果を有する併用療法は、各インヒビターの必要量が単独使用よりも少ないはずであり、したがって、高投薬量のインヒビターの全身投与に関連する潜在的副作用が軽減され、治療指数が改善される。
【0176】
多数の抗癌薬は、これらの腫瘍抑制遺伝子によってコードされたタンパク質を含むシグナル伝達カスケードの誘発によってその抗癌効果を発揮する。癌細胞中のこれらの細胞の不十分な発現により、これらの抗新生物薬の抗癌効果が非常に減少するか、完全に根絶し得る。DNAメチル化およびヒストンデアセチラーゼによってエピジェネティックにサイレンシングされるこれらの遺伝子の再活性化または再発現により、身体の内因性防御機構を動員し、投与された抗癌薬によって送られたシグナルに応答した癌細胞に対する腫瘍抑制機能の修復によって疾患に対処する。このような身体の腫瘍抑制機構の刺激により、より低い抗癌薬の用量しか必要とせず、したがって、薬剤の治療指数(すなわち、より高い有効性およびより低い毒性)がより高くなる。
【0177】
HDACの阻害には、以下の構造クラスが含まれるが、これらに限定されない:1)ヒドロキサム酸、2)環状ペプチド、3)ベンズアミド、および4)短鎖脂肪酸。
【0178】
ヒドロキサム酸およびヒドロキサム誘導体の例には、トリコスタチンA(TSA)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、オキサムフラチン、スベリン酸ビスヒドロキサム酸(SBHA)、m-カルボキシ-桂皮酸ビスヒドロキサム酸(CBHA)、およびピロキサミドが含まれるが、これらに限定されない。TSAは、抗真菌抗生物質として単離され(Tsuji et al(1976)J.Antibiot(Tokyo)29:1-6)、哺乳動物HDACの強いインヒビターであることが見出された(Yoshida et al.(1990)J.Biol.Chem.265:17174-17179)。TSA耐性細胞株のHDACが変化しているという所見は、この酵素がTSAの重要な標的であることを証明している。他のヒドロキサム酸ベースのHDACインヒビター(SAHA、SBHA、およびCBHA)は、μモル濃度またはそれ未満の濃度にてin vitroおよびin vivoでHDACを阻害することができる合成化合物である。Glick et al.(1999)Cancer Res.59:4392-4399。これらのヒドロキサム酸ベースのHDACインヒビターは全て、以下の不可欠な構造の特徴を有する:疎水性メチレンスペーサー(例えば、6炭素長)を介して、末端疎水性部分(例えば、ベンゼン環)に結合した別の極性部位に結合した極性ヒドロキサム酸末端。このような不可欠な性質を有する構築された化合物もヒドロキサム酸の範囲内に含まれ、HDACインヒビターとして使用することができる。
【0179】
HDACとして使用される環状ペプチドは、主に環状テトラペプチドである。環状ペプチドの例には、トラポキシンA、アピシジン、およびFR901228が含まれるが、これらに限定されない。トラポキシンAは、2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシ-デカノイル(AOE)分子を含む環状テトラペプチドである。Kijima et al.(1993)J.Biol.Chem.268:22429-22435。アピシジンは、強い広範な抗原虫活性を示し、ナノモル濃度でHDAC活性を阻害する真菌代謝産物である。Darkin-Rattray et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.93;13143-13147。FR901228は、クロモバクテリウム・ビオラセウムから単離され、マイクロモル濃度でHDAC活性を阻害することが示されているデプシペプチドである。
【0180】
ベンズアミドの例には、MS-27-275が含まれるが、これらに限定されない。Saito et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.96:4592-4597。短鎖脂肪酸の例には、ブチラート(例えば、酪酸、アルギニンブチラート、およびフェニルブチラート(PB))が含まれるが、これらに限定されない。Newmark et al.(1994)Cancer Lett.78:1-5およびCarducci et al.(1997)Anticancer Res.17:3972-3973。さらに、マイクロモル濃度でHDACを阻害することが示されたデピュデシン(depudecin)(Kwon et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.95:3356-3361)はまた、本発明のヒストンデアセチラーゼインヒビターの範囲内に含まれる。
【0181】
本発明の化合物または薬学的処方物を、他の治療成分(抗新生物薬、アルキル化剤、レチノイドスーパーファミリーのメンバーである薬剤、抗生物質製剤、ホルモン剤、植物由来作用因子、生物学的作用因子、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節薬、およびモノクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない)と組み合わせて使用することもできる。
【0182】
1つの実施形態では、アルキル化剤を、本発明の化合物/組成物と組み合わせて使用し、そして/または本発明の化合物/組成物に添加する。アルキル化剤の例には、ビスクロロエチルアミン(ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード))、アジリジン(例えば、チオテパ)、アルキルアルコンスルホネート(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾトシン)、非古典的アルキル化剤(アルトレタミン、ダカルバジン、およびプロカルバジン)、プラチナ化合物(カルボプラチンおよびシスプラチン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0183】
別の実施形態では、シスプラチン、カルボプラチン、またはシクロホスファミドを、本発明の化合物/組成物と組み合わせて使用し、そして/または本発明の化合物/組成物に添加する。
【0184】
別の実施形態では、レチノイドスーパーファミリーのメンバーを、本発明の化合物/組成物と組み合わせて使用し、そして/または本発明の化合物/組成物に添加する。レチノイドは、ビタミンA(オールトランスレチノール)に由来するか関連する構造的および機能的に関連した分子のファミリーである。レチノイドの例には、オールトランスレチノール、オールトランスレチノイン酸(トレチノイン)、13-シスレチノイン酸(イソトレチノイン)、および9-シス-レチノイン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0185】
さらに別の実施形態では、ホルモン剤を、本発明の化合物/組成物と組み合わせて使用し、そして/または本発明の化合物/組成物に添加する。このようなホルモン剤の例は、合成エストロゲン(例えば、ジエチルスチベストロール)、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロール、およびラロキシフェン)、抗アンドロゲン(ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド)、アロマターゼインヒビター(例えば、アミノグルテチミド、アナストロゾール、およびテトラゾール)、ケトコナゾール、ゴセレリンアセテート、ロイプロリド、メゲストロール、およびミフェプリストンである。
【0186】
さらに別の実施形態では、植物由来作用因子を、本発明の化合物/組成物と組み合わせて使用し、そして/または本発明の化合物/組成物に添加する。植物由来作用因子の例には、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン(vinzolidine)、およびビノレルビン)、カンプトセシン(20(S)-カンプトセシン、9-ニトロ-20(S)-カンプトセシン、および9-アミノ-20(S)-カンプトセシン)、ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP-16)およびテニポシド(VM-26))、およびタキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0187】
さらに別の実施形態では、生物学的作用因子を、本発明の化合物/組成物と組み合わせて使用し、そして/または本発明の化合物/組成物に添加する(免疫調節タンパク質(サイトカイン、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体)、腫瘍抑制遺伝子、および癌ワクチンなど)。
【0188】
本発明の化合物/組成物と組み合わせて使用し、そして/または本発明の化合物/組成物に添加することができるインターロイキンの例には、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン4(IL-4)、およびインターロイキン12(IL-12)が含まれるが、これらに限定されない。デシタビン-グリセリン処方物と組み合わせて使用することができるインターフェロンの例には、インターフェロンα、インターフェロンβ(線維芽細胞インターフェロン)、およびインターフェロン γ(線維芽細胞インターフェロン)が含まれるが、これらに限定されない。このようなサイトカインの例には、エリスロポエチン(エポエチン)、顆粒球-CSF(フィルグラスチム)、および顆粒球マクロファージ-CSF(サルグラモスチム)が含まれるが、これらに限定されない。サイトカイン以外の免疫調節薬には、カルメット・ゲラン桿菌、レバミソール、およびオクトレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0189】
本発明の処方物中で使用することができる腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体の例には、ハーセプチン(登録商標)(トラストルツマブ)、リツキサン(登録商標)(リツキシマブ)、マイロターグ(登録商標)(抗CD33)、およびキャンパス(登録商標)(抗CD52)が含まれるが、これらに限定されない。
【0190】
6.本発明の化合物または薬学的組成物の適応症
本発明の薬学的処方物を使用して、デシタビンを使用した治療に感受性を示す広範な種々の疾患を治療することができる。
【0191】
本発明の薬学的処方物を使用して治療することができる好ましい適応症には、望ましくないか無制御の細胞増殖を含む適応症が含まれる。このような適応症には、良性腫瘍、種々の癌型(原発性腫瘍および腫瘍転移など)、再狭窄(例えば、冠状動脈、頸動脈、および脳の病変)、血液障害、内皮細胞の異常な刺激(アテローム性動脈硬化症)、手術、異常な創傷治癒に起因する体内組織の傷害、異常な血管形成、組織に線維症を引き起こす疾患、反復運動障害、高度に脈管化していない組織の障害、臓器移植に関連する増殖応答が含まれる。
【0192】
一般に、良性腫瘍中の細胞は、その分化した外観を保持し、完全に無制御の様式で分割しない。良性腫瘍は、通常、局在し、転移しない。本発明を使用して治療することができる特定の良性腫瘍型には、血管腫、肝細胞腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経線維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞腺腫(bile duct cystanoma)、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生性過形成、トラコーマ、および化膿性肉芽腫が含まれる。
【0193】
悪性腫瘍では、細胞は分化しないようになり、身体成長調節シグナルに応答せず、無制御様式で増殖する。悪性腫瘍は、浸潤性であり、離れた部位に拡大し得る(転移)。悪性腫瘍は、一般に、以下の2つのカテゴリーに分類される:原発性および続発性。原発性腫瘍は、この腫瘍が見出された組織から直接生じている。続発性腫瘍(すなわち、転移)は、体内の他の場所に由来するが、現時点で離れた器官に拡大している腫瘍である。一般的な転移経路は、隣接構造への直接的成長であり、血管またはリンパ系を介して拡大し、組織平面および体腔(腹水、脳脊髄液など)に沿って移動する。
【0194】
本発明を使用して治療することができる特定の癌または悪性腫瘍型(原発性または続発性のいずれか)には、乳癌、皮膚癌、骨の癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、脳腫瘍、喉頭癌、胆嚢癌、膵臓癌、直腸癌、副甲状腺癌、甲状腺癌、副腎癌、神経組織の癌、頭頸部癌、結腸癌、胃癌、気管支癌、腎臓癌、基底細胞癌、潰瘍型および乳頭型の扁平上皮癌、転移性皮膚癌、骨肉種、ユーイング肉腫、細網肉腫(veticulum cell sarcoma)、骨髄腫、巨細胞腫、小細胞肺癌、胆石、島細胞腫、原発性脳腫瘍、急性および慢性のリンパ球性腫および顆粒球性腫、毛様細胞腫、腺腫、過形成、髄様癌、黒色細胞腫、粘膜神経腫、腸神経質細胞腫、過形成性角膜神経腫瘍、マルファン症候群様体質腫瘍、ウィルムス腫瘍、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫瘍、子宮頸部形成異常および上皮内癌、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、軟組織肉腫、悪性カルチノイド、局所皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性肉腫および他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫、真性赤血球増加症、腺癌、多形性膠芽細胞腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮癌、ならびに他の腺腫および肉腫が含まれる。
【0195】
血管疾患には、血球が異形成変化し得る血球の異常な成長および種々の白血病などの血液悪性腫瘍が含まれる。血液疾患の例には、急性骨髄性白血病、急性前骨髄急性白血病、急性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、および鎌状赤血球貧血が含まれるが、これらに限定されない。
【0196】
急性骨髄性白血病(AML)は、成人が発症する急性白血病の最も一般的な型である。いくつかの遺伝性障害および免疫不全状態は、AMLリスクの増加に関連する。これらには、DNA安定性が欠損し、無作為な染色体破壊が起こる障害(ブルーム症候群、ファンコニー貧血、リ・フラウメニ症候群家族(Li-Fraumeni kindreds)、毛細管拡張性失調症、およびX連鎖無ガンマグロブリン血症など)が含まれる。
【0197】
急性前骨髄球性白血病(APML)は、AMLの異なる亜群に相当する。このサブタイプは、15;17染色体転座を含む骨髄球芽細胞によって特徴づけられる。この転座により、レチノイン酸受容体および配列PMIから構成される融合転写物が生成される。
【0198】
急性リンパ球性白血病(ALL)は、種々のサブタイプによって示される異なる臨床的特徴を有する異種疾患である。ALLにおいて細胞遺伝学的異常が証明されている。最も一般的な細胞遺伝学的異常は、9;22転座である。得られたフィラデルフィア染色体は、患者の不良な予後を示す。
【0199】
慢性骨髄性白血病(CML)は、多能性幹細胞のクローン性骨髄増殖性障害である。CMLは、フィラデルフィア染色体が作製される染色体9;22転座を含む特異的染色体異常によって特徴づけられる。電離放射線がCMLの発症に関与する。
【0200】
骨髄異形成症候群(MDS)は、1つまたは複数の造血系列の異形成変化(骨髄、赤血球、および巨核球系の異形成変化が含まれる)の存在によって分類された異種クローン性造血幹細胞障害である。これらの変化により、3つの系統のうちの1つまたは複数で血液減少が起こる。MDS患者は、典型的には、貧血、好中球減少症(感染症)、または血小板減少症(出血)に関連する合併症を発症する。一般に、約10%?約70%のMDS患者が急性白血病を発症する。
【0201】
手術における体内組織の障害に起因する異常な細胞増殖の治療は、種々の外科的手順(関節手術、腸手術、およびケロイド瘢痕化が含まれる)が可能であり得る。線維性組織が生成される疾患ないは、気腫が含まれる。本発明を使用して治療することができる反復運動障害には、手根管症候群が含まれる。本発明を使用して治療することができる細胞増殖性疾患の例は、骨腫瘍である。
【0202】
本発明を使用して治療することができる臓器移植に関連する増殖反応には、潜在的な臓器拒絶または関連する合併症に寄与する増殖反応が含まれる。具体的には、これらの増殖反応は、心臓、肺、肝臓、腎臓、および他の体器官または臓器系の移植時に起こり得る。
【0203】
本発明を使用して治療することができる異常な血管形成には、関節リウマチ、虚血性再潅流関連脳浮腫および脳損傷、皮質虚血、卵巣の過形成および血管像過多、(多能胞性卵巣症候群)、子宮内膜症、乾癬、糖尿病性網膜症、および他の眼の血管形成疾患(未熟児の網膜症(水晶体後線維増殖)、筋肉変性、角膜移植片拒絶、神経瘢痕性緑内障(neuroscular glaucoma)およびオスター・ウェバー症候群など)を伴う異常な血管形成が含まれる。
【0204】
異常な血管形成に関連する疾患は、血管成長が必要であるか血管成長を誘導する。例えば、網膜血管形成は、以下の3つの期を含む:血管潜伏期、活発な新血管形成、ならびに血管の成熟および後退。種々の血管因子(炎症反応の要素(白血球、血小板、サイトカイン、およびエイコサノイド)または未確認の血漿構成要素が含まれる)の同一性および機構は依然として明らかにされていない。
【0205】
別の実施形態では、本発明の薬学的処方物を、望ましくないか異常な血管形成に関連する障害の治療のために使用することができる。方法は、望ましくないか異常な血管形成を罹患した患者に本発明の薬学的処方物を単独で投与するか、in vivoにおける抗新生物薬としての活性が高レベルのDNAメチル化によって悪影響を受ける抗新生物薬と組み合わせて投与する工程を含む。血管形成および/または血管形成疾患の阻害に必要なこれらの薬剤の特定の投薬量は、病態の重症度、投与経路、および担当医によって決定することができる関連要因に依存し得る。一般に、許容された有効1日量は、血管形成および/または血管形成疾患を有効に阻害するのに十分な量である。
【0206】
この実施形態によれば、本発明の薬学的処方物を使用して、望ましくない血管形成に関連する種々の疾患(網膜/脈絡膜の新血管形成および角膜新血管形成など)を治療することができる。網膜/脈絡膜の新血管形成の例には、ベスト病、近視、視窩、スタルガルド病、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾力線維性偽性黄色腫、頸動脈閉塞性疾患(carotid abostructive diseases)、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎、マイコバクテリア感染、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟児の網膜症、イールス病、糖尿病性網膜症、黄斑変性、ベーチェット病、網膜炎または脈絡膜炎を発症する感染、推定眼ヒストプラズマ症、毛様体扁平部炎、慢性網膜剥離、過粘稠血症候群、トキソプラズマ症、外傷およびレーザー後合併症、皮膚潮紅に関連する疾患(角(angle)の新血管形成)、および線維性血管組織または線維組織の異常な増殖によって生じる疾患(全ての増殖性硝子体網膜症型が含まれる)が含まれるが、これらに限定されない。角膜新血管形成の例には、流行性角結膜炎、ビタミンA欠損症、コンタクトレンズの装着時間超過、アトピー性角膜炎、上方輪部角膜炎(superior limbic keratitis)、翼状片乾燥角膜炎(pterygium keratitis sicca)、シェーグレン病、紅斑性座瘡、フィレクテヌロシス(phylectenulosis)、糖尿病性網膜症、未熟児の網膜症、角膜移植片拒絶、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁表皮剥脱、多発性動脈炎、ウェゲナーサルコイドーシス、強膜炎、類天疱瘡放射状角膜切除術(periphigoid radial keratotomy)、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖、梅毒、マイコバクテリア感染、脂質変性、化学熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状ヘルペス感染、原虫感染、およびカポジ肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0207】
さらに別の実施形態では、本発明の薬学的処方物を、異常な血管形成に関連する慢性炎症性疾患の治療のために使用することができる。方法は、異常な血管形成に関連する慢性炎症性疾患を罹患した患者に本発明の薬学的処方物を単独で投与するか、in vivoにおける抗新生物薬としての活性が高レベルのDNAメチル化によって悪影響を受ける抗新生物薬と組み合わせて投与する工程を含む。慢性炎症は、炎症細胞の流入を維持する毛細管の芽の連続的形成による。炎症細胞の流入および存在によって肉芽腫を発症し、それにより、慢性炎症状態が維持される。本発明の薬学的処方物を使用した血管形成の阻害により、肉芽腫の形成が防止され、それにより、疾患を緩和することができる。慢性炎症性腸疾患の例には、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、乾癬、サルコイドーシス、および関節リウマチが含まれるが、これらに限定されない。
【0208】
クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は、胃腸管中の種々の部位の慢性炎症および血管形成によって特徴づけられる。例えば、クローン病は、通常、遠位回腸に発症するが、口から肛門および周辺領域に至るまでの任意の胃腸管部分にも発症し得る慢性貫壁性炎症性疾患として発症する。クローン病患者は、一般に、腹痛を伴う下痢、発熱、食欲不振、体重減少、および腹部膨満を示す。潰瘍性大腸炎はまた、結腸粘膜に発症する慢性で非特異性の炎症性潰瘍性疾患であり、出血性下痢の存在によって特徴づけられる。これらの炎症性腸疾患は、一般に、胃腸管全体にわたる慢性肉芽腫性炎症によって発症し、この炎症は、炎症細胞の円柱によって取り囲まれた新規の毛細管の芽を含む。本発明の薬学的処方物による血管形成の阻害により、芽の形成が阻害され、肉芽腫の形成が防止される。炎症性腸疾患はまた、皮膚病変などの腸外徴候を示す。このような病変は、炎症および血管形成によって特徴づけられ、他の胃腸管の多くの部位で発症し得る。本発明の薬学的処方物による血管形成の阻害により、炎症細胞の流入が軽減し、病変形成が防止されるはずである。
【0209】
サルコイドーシス(別の慢性炎症性疾患)は、多系肉芽腫性障害として特徴づけられる。この疾患の肉芽腫は、体内のどこにでも形成され得るので、症状は、肉芽腫部位および疾患が活性であるかどうかに依存する。肉芽腫は、炎症細胞が絶え間なく供給される血管形成性の毛細管の芽によって生成される。血管形成を阻害するための本発明の薬学的処方物の使用により、このような肉芽腫を阻害することができる。乾癬(慢性および再発性の炎症性疾患でもある)は、種々のサイズの丘疹およびプラークによって特徴づけられる。本発明の薬学的処方物を使用した治療により、慢性病変の維持に必要な新規の血管の形成を防止し、患者の症状を軽減するはずである。
【0210】
関節リウマチ(RA)はまた、末梢関節の非特異性炎症によって特徴づけられる慢性炎症性疾患である。関節の滑膜表層中の血管が血管形成を受けると考えられる。新規の血管網の形成に加えて、内皮細胞は、パンヌス成長および軟骨破壊を引き越す因子および活性酸素種を放出する。血管形成に関与する因子は、関節リウマチの慢性炎症状態に能動的に寄与するか、その維持を補助し得る。本発明の薬学的処方物を単独で使用するか、他の抗RA薬と組み合わせて使用した治療により、慢性炎症の維持に必要な新規の血管の形成を防止し、RA患者のこの症状を軽減することができる。
【0211】
さらに別の実施形態では、本発明の薬学的処方物を、異常なヘモグロビン合成に関連する疾患の治療のために使用することができる。方法は、本発明の薬学的処方物を異常なヘモグロビン合成に関連する疾患を罹患した患者に投与する工程を含む。DNAへの組み込み機構がDNA低メチル化に関連するので、処方物を含むデシタビンは、胎児ヘモグロビン合成を刺激する。異常なヘモグロビン合成に関連する疾患の例には、鎌状赤血球貧血およびβ-サラセミアが含まれるが、これらに限定されない。
【0212】
さらに別の実施形態では、本発明の薬学的処方物を使用して、細胞内遺伝子発現を調節することができる。方法は、本発明の薬学的処方物を、異常な遺伝子発現レベルに関連する疾患を罹患した患者に投与する工程を含む。DNAメチル化は、遺伝子発現の調節に関連する。具体的には、プロモーター中またはプロモーター付近のメチル化によって転写が阻害される一方で、脱メチル化によって発現が修復される。記載の機構の可能な適用の例には、治療的に調整された成長阻害、アポトーシスの誘導、および細胞分化が含まれるが、これらに限定されない。
【0213】
本発明の薬学的処方物によって促進された遺伝子活性化により、治療するために細胞の分化を誘導することができる。細胞分化を、低メチル化機構によって誘導する。形態学的および機能的分化の例には、筋肉細胞、筋管、赤血球およびリンパ球系統の細胞を形成する分化が含まれるが、これらに限定されない。
【0214】
本発明の例示的実施形態を説明および記載しているが、本発明の精神から逸脱することなく、本発明の多数の変更形成、修正形態、または変形形態を得ることができることが当業者に明らかである。したがって、このような変更形成、修正形態、および変形形態の全てを、本発明の範囲内と見なすべきである。
【0215】
実施例
1.ホスホラミダイト構成単位および3’-0-キャッピング誘導体の合成
本発明はまた、以下の新規のホスホラミダイト構成単位の有効な化学合成方法を提供する(図2A)。
【0216】
1aの4-アミン官能基を、種々の保護基(R_(1))(メチル、エチル、9-フルオレニルメチル、9-(2-スルホ)フルオレニルメチル、9-(2、7-ジブロモ)フルオレニルメチル、17-テトラベンゾ[a,c,g,i]フルオレニルメチル、2-クロロ-3-インデニルメチル、ベンズ[f]インデン-3-イルメチル、2,7-ジ-tert-[9-(10,10-ジオキソ-10,10,10,10-テトラヒドロチオキサンチル)メチル、1,1-ジオキソベンゾ[b]チオフェン-2-イルメチル、2,2,2-トリクロロエチル、2-トリメチルシリルエチル、2-フェニルエチル、1-(1-アダマンチル)-1-メチルエチル、2-クロロエチル、1,1,-ジメチル-2-ハロエチル、1,1-ジメチル-2,2-ジブロメチル、1,1-ジメチル-2,2,2-トリクロエチル、1-メチル-1-(4-ビフェニルイル)エチル、1-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-1-メチルエチル、2-(2’-および4’-ピリジル)エチル、2,2-ビス(4’-ニトロフェニル)エチル、N-(2-ピバロイルアミノ)-1,1-ジメチルエチル、2-[(2-ニトロフェニル)ジジチオ]-1-フェニルエチル、2-(N,N-ジシクロヘキシルカルボキシアミド)エチル、t-ブチル、1-アダマンチル、2-アダマンチル、ビニル、アリル、1-イソプロピルアリル、シンナミル、4-ニトロシンナミル、3-(3’-ピリジル)プロプ-2-エニル、8-キノリル、N-ヒドロキシピペリジニル、アルキルジチオ、ベンジル、p-メトキシベンジル、p-ニトロベンジル、p-ブロモベンジル、p-クロロベンジル、2,4-ジクロロベンジル、4-メチルスルフィニルベンジル、9-アントリルメチル、ジフェニルメチル、2-メチルチオエチル、2-メチルスルホニルエチル、2-(p-トルエンスルホニル)エチル、[2-(1,3-ジチアニル)]メチル、4-メチルチフェニル、2,4-ジメチルチフェニル、2-ホスホニオエチル、1-メチル-1-(トリフェニルホスホニオ)エチル、1,1-ジメチル-2-シアノエチル、2-ダンシルエチル、4-フェニルアセトキシベンジル、4-アジドベンジル、4-アジドメトキシベンジル、m-クロロ-p-アシルオキシベンジル、p-(ジヒドロキシボリル)ベンジル、5-ベンズイソキサゾリルメチル、2-(トリフルオロエチル)-6-クロモニルメチル、m-ニトロフェニル、3,5-ジメトキシベンジル、1-メチル-1-(3,5-ジメトキシフェニル)エチル、α-メチルニトロピペロニル、o-ニトロフェニル、3,4-ジメトキシ-6-ニトロベンジル、フェニル(o-ニトロフェニル)エチル、2-(2-ニトロフェニル)エチル、6-ニトロベラトリル、4-メトキシフェナシル、3’,5’-ジメトキシベンゾイン、t-アミル、S-ベンジルチオ、ブチニル、p-シアノベンジル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロプロピルメチル、p-デシルオキシベンジル、ジイソプロピルメチル、2,2-ジメトキシカルボニルビニル、o-(N、N-ジメチルカルボキシアミド)ベンジル、1,1-ジメチル-3-(N,N-ジメトキシカルボキシアミド)プロピル、1,1-ジメチルプロピニル、2-フラニルメチル、2-ヨードエチル、イソボルニル、イソブチル、イソニコチニル、p-(p-メトキシフェニルアゾ)ベンジル、1-メチルシクロブチル、1-メチルシクロヘキシル、1-メチル-1-シクロプロピルメチル、1-メチル-1-(p--フェニルアゾフェニル)エチル、1-メチル-1-フェニルエチル、1-メチル-1-(4’-ピリジル)エチル、フェニル、p-(フェニルアゾ)ベンジル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェニル、4-(トリメチルアンモニウム)ベンジル、2,4,6-トリメチルベンジル;フェノチアジニル-(10)-カルボニル、N’-p-トルエンスルホニルアミノカルボニル、N’-フェニルアミノチオカルボニルを有する尿素;ホルムアミド、アセトアミド、フェノキシアセトアミド、トリクロロアセトアミド、トリフルオロアセトアミド、フェニルアセトアミド、3-フェニルプロパアミド、ペント-4-エンアミド、o-ニトロフェニルアセトアミド、o-ニトロフェノキシアセトアミド、3-(o-ニトロフェニル)プロパンアミド、2-メチル-2-(o-ニトロフェノキシ)プロパンアミド、3-メチル-3-ニトロブタンアミド、o-ニトロシンナミド、3-(4-t-ブチル-2,6-ジニトロフェニル)-2,2-ジメチルプロパンアミド、o-(ベンゾイルオキシメチル)ベンズアミド、2-[(t-ブチルジフェニルシロキシ)メチル)メチル]ベンズアミド、3-(3’,6’-ジオキソ-2’,4’,5’-トリメチルシクロヘキサ-1’,4’-ジエン)-3,3-ジメチルプロピオンアミド、o-ヒドロキシ-トランス-シンナミド、アセトアセトアミド、p-トルエンスルホンアミド、およびベンズスルホンアミドなどのアミドを有するカルバメートなど)への変換によって保護することができる。デシタビンの4-O-メトキシ(1b)および4-S-メチルチオ(1c)アナログを、1-(2-デオキシ-3,5-ジ-O-p-クロロベンゾイルまたはベンゾイル-D-リボフラノシル)-4-メトキシまたはメチルチオ-1,3,5-トリアジン-2(H)-オンのαアノマーおよびβアノマーの分離およびメタノール性アンモニアでの処理を使用することなく3,5-保護基を除去することによるデシタビン合成のための公開された手順の修正によって得ることができる。 Pliml and Sorm(1964)Collect.Czech.Chem.Commun.29:2576-2577;Piskala and Sorm(1978)Nucleic Acid Chemistry(by Towsend and Tipson,Wiley,1978),pp.443-449。
【0217】
無水ピリジン(5mL/mmol)に4-アミノ保護デシタビン、4-メトキシ、および4-メチルチオアナログ(1b、1c)を溶解し、その後にジメトキシトリチルクロリド(1.1当量)を添加することによって5’-OHを保護する。
【0218】
例えば、デシタビン(1.2g)を、無水ピリジンと共蒸留し、20ml乾燥DMFに溶解した。ヘキサメチルジシラザン(2.8mL)を添加した。溶液を撹拌し、一晩放置した。溶媒を真空蒸発させ、残渣をトルエンに溶解し、2回蒸発させた。3’,5’-ジトリメチルシリル5-アザ-2’-デオキシシチジン(R_(f)=0.67、4:1ジクロロメタン/メタノール)を、乾燥ピリジンピリジン(約10mL)と共蒸発させ、乾燥ピリジン(20mL)に溶解した。無水フェノキシ酢酸(1.5g)を添加し、得られた溶液を1時間撹拌した。反応混合物を真空下で蒸発させて乾燥し、トルエンで共蒸留した(3回)。さらに、0.18gの無水フェノキシ酢酸(0.18g)を添加し、さらに1時間撹拌した。残渣を、ジクロロメタン(約50mL)に溶解し、1MNaHCO_(3)水溶液(約50mL)で抽出し、ジクロロメタン(約20mL)で再抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で還元して、粗3’,5’-ジトリメチルシリル-N-フェノキシアセチル5-アザ-2’-デオキシシチジン(3g;R_(f)=0.82、9:1ジクロロメタン/メタノール)を得た。粗物質を、無水DMF(20mL)に溶解し、50mLのプラスチック製のファルコン管に移し、TAS-F(2.4g)を添加した(ガスが発生した)。反応を22℃で4時間進行させた(減圧するためにバイアルを完全に密封しなかった)。DMFを真空蒸発させ、得られた残渣を、カラムクロマトグラフィ(30gシリカゲル、2.5cmカラム、99:1?9:1ジクロロメタン/メタノール)に供した。白色固体のN-フェノキシアセチル5-アザ-2’-デオキシシチジン(0.81g;R_(f)=0.26、9:1ジクロロメタン/メタノール)が得られた。この化合物(0.6g)を、無水ピリジンと共蒸留し、無水ピリジンピリジン(20mL)に溶解し、その後、ジメトキシトリチルクロリド(0.9g)を添加し、22℃で2時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、トルエンと共蒸留した(3回)。残渣をジクロロメタン(50mL)に溶解し、1M NaHCO_(3)水溶液(約50mL)で抽出し、ジクロロメタン(約20mL)で再抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で還元した。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィ(ジクロロメタン-100%?95:5ジクロロメタン/メタノール)に供し、5’-ジメトキシトリチル-N-フェノキシアセチル5-アザ-2’-デオキシシチジン(0.35g、0.53mmol、32%;R_(f)=0.49、9:1ジクロロメタン/メタノール)を得た。中間体(0.3g)を乾燥アセトニトリル(2mL)に溶解し、その後、0.3Mベンジルチオテトラゾール(0.9mL)溶液を含む乾燥アセトニトリルおよびシアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミジド(0.17mL)を添加した。混合物を、22℃で1.5時間撹拌した。TLC(2:1酢酸エチル/ヘキサン+2%TEA)は、R_(f)=0.27および0.36のジアステレオ異性体混合物を示した。溶媒を真空下で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(20gシリカゲル、2.5cmカラム、9:1ヘキサン/酢酸エチル+2%TEA(300mL)、1:1ヘキサン/酢酸エチル+1%TEA(200mL)、1:2ヘキサン/酢酸エチル+0%TEA(250mL))に供した。デシタビンホスホラミダイト構成単位(R_(1)=フェノキシアセチル(0.297g、0.34mMol、76%)を、1:2ヘキサン/酢酸エチルで溶離した。1dのESI-MS(C_(46)H_(53)N_(6)O_(9)Pの精密質量は864.36である)は、m/z864.1および966.4を示した[M+NEt_(3)+H^(+)]^(+)。^(31)P NMR(CDCl_(3),500MHz)は、149.17ppmおよび149.0ppmを示した。^(1)H NMR(CDCl_(3),500MHz)は、以下の化学シフト(ppm)を示した:8.63および8.59(1H,ダブレット,H-6),7.4-6.6(18H,マルチプレット,芳香族DMTr/Pac),6.05(1H,トリプレット,H-1’),4.79(2H,シングレット,PacのCH_(2)),4.59(1H,シングレット,H-4’)、4.25-4.20(1H,ダブレット,H-3’),3.8-3.7(1H,マルチプレット,P-O-CH_(2)),3.70(3H,シングレット,DMTrのCH_(3)O),3.68(3H,シングレット,DMTrのCH_(3)O),3.6-3.48(3H,マルチプレット,イソプロピルの2つのCH’および1つのP-O-CH_(2)),3.36-3.27(2H,マルチプレット,H-5’),2.80(1H,シングレット,H-2’),2.53(1H,シングレット,H-2’),2.40(2H,マルチプレット,CH_(2)CN),1.1(12H,イソプロピルのCH_(3))。
【0219】
さらに、公開された手順のわずかな修正により、3’および5’-Oキャッピング誘導体(図3A、1g、1H、1i、1j、1k、1l)(Bagnall,Bell and Pearson(1978)J.of Fluorine Chem.11:93-107)(キャップはアルキル基、エステル、および脂肪酸エステル、グリコール誘導体(エチレングリコールおよびプロピレングリコールなど)であり得る)および細孔制御型ガラス支持体に3’結合した保護デシタビン(図3Bの1m、1n、1o)(AM,Singman,Zhan and Letsinger(1991)19:1527-1532)を利用することが可能である。
【0220】
他のデシタビン誘導体は、図4に示すように、エステル(アセチル,ベンゾイル、ハロベンゾイル、および脂肪酸が含まれるが、これらに限定されない)およびエーテル(p-ニトロフェニルエチル、メトキシメチル、メチルチオメチル、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、p-メトキシベンジルオキシメチル、p-ニトロベンジルオキシメチル、o-ニトロベンジルオキシメチル、(4-メトキシフェノキシ)メチル、t-ブトキシメチル、4-ペンテニルオキシメチル、シロキシメチル、2-メトキシエトキシメチル、2,2,2-トリクロロエトキシメチル、ビス(2-クロロエトキシ)メチル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル、メトキシメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、および1-(2-フルオロフェニル)-4-メトキシピペリジン-4-イルが含まれるが、これらに限定されない)、グリコール誘導体(エチレングリコールおよびプロピレングリコール)で保護した3’-OHを有する。
【0221】
2.固相上でのDpGおよびGpDジヌクレオチドおよびテトラヌクレオチドの合成(テトラヌクレオチドは参考)
DpGおよびGpDジヌクレオチドおよびテトラヌクレオチドを、カップリング時間を増加させる(2分を超える)ためにわずかに修正した標準的手順(図5)によって合成することができる。Beaucage and Caruthers(1981)Tet.Lett.22:1859-1862;McBride and Caruthers(1983)Tet.Lett.24:245-248。図6Aに示すように、GpDジヌクレオチド2aおよびDpGpGpDテトラヌクレオチド3aの合成を、同様の保護された5’-O-DMTr2’-デオキシグアノシン-3’-O-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホラミダイトおよび5’-O-DMTr2’-デオキシ-5-アザ-シチジン-3’-O-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホラミダイト(1d、1e、または1f)との1m、1n、または1oのカップリングから開始することができる。その後の固相(細孔制御型ガラス、CPGなど)からの放出およびDBU/ピリジン(またはアセトニトリル)などの塩基でのカルバメート保護基の除去、ならびに4-O-メトキシおよび4-O-メチルチオ保護基の除去のためのメタノール性アンモニアにより、最後のDMTr基を含むか含まない所望のオリゴヌクレオチドが得られる。DpGpGpD(3b)を同様に得ることができる(図7)。
【0222】
例えば(図6Aおよび6B)、Amersham AKTA Oligopilot10システムを、保護したデシタビン結合CPG固体支持体1m(ここでR_(1)=フェノキシアセチル)と共に負荷し、60%の0.3Mベンジルチオテトラゾールアクチベーター(アセトニトリル中)の存在下で2.5分間2?2.5当量のtert-ブチルフェノキシアセチル2’-デオキシグアノシンホスホラミダイトとカップリングする。保護GpDジヌクレオチドを含むCPG固体支持体を、20mLの50mM K_(2)CO_(3)を含むメタノールで1時間20分処理する。カップリングした生成物を、2M tert-ブチルヒドロペルオキシドを含む乾燥アセトニトリル(tert-ブチルヒドロペルオキシドの80%tert-ブチルペルオキシドへの溶解によって調製)で5分間酸化した。ジメトキシトリチル保護基を、3%ジクロロ酢酸を含むトルエンで除去する。CPG固体支持体を、乾燥メタノールで洗浄し、濾過物を、2mLの1M酢酸を含むメタノールの添加によって中和する。溶液を、回転蒸発によって濃縮し、残渣を、200mM酢酸トリエチルアンモニウム(pH6.9)に取り、アセトニトリル(500μLの50%アセトニトリル水溶液)で洗浄し、シリンジフィルターによって濾過する。GpDジヌクレオチドを、次に、Gemini C18分離カラム(Phenomenex)(250×21.2mm、10μm)およびガードカラム(Phenomenex)(50x21.2mm、10μm)を備えたAKTA Explorer 100 HPLCによって、50mM酢酸トリエチルアンモニウム(pH 7)を含むMilliQ水(移動相A)および80%アセトニトリルを含むMilliQ水(移動相B)を使用して、カラム体積の2%?20/25%の移動相Bで精製する。GpDジヌクレオチド2a(X^(+)=トリエチルアンモニウム)のESI-MS(-ve)(中性化合物C_(18)H_(24)N_(9)O_(10)Pの精密質量は557.14である)は、m/z556.1[M-H]^(-)および[2M-H]^(-)について1113.1であった(図30のマススペクトルを参照のこと)。
【0223】
60%の0.3Mベンジルチオテトラゾールアクチベーター(アセトニトリル中)の存在下で2?2.5当量のtert-ブチルフェノキシアセチル2’-デオキシグアノシンまたはフェノキシアセチル5-アザ-2’-デオキシシチジンホスホラミダイトを使用して、それぞれ2.5分間および10分間サイクルを繰り返した場合(図6bおよび7)、DpGpGpDテトラヌクレオチド3b(X^(+)=トリエチルアンモニウム(中性化合物C_(36)H_(47)N_(18)O_(22)P_(3)の精密質量は1176.23である))が得られ、[M-2H]^(2-)についてm/z587.2および1175.2[M-H]^(-)であった(図32)。
【0224】
さらに、DpGジヌクレオチド2bおよびGpDpGpD(3c)を、1s(R_(1)=カルバメート保護基)のホスホラミダイト構成単位1d、1e、または1fとのカップリングによって合成することができる(図8)。GpDpDpGおよびGpDpG(3c’)を、同様に得ることができる(図9)。
【0225】
例えば、保護した2’-デオキシグアノシン結合CPG固体支持体1s(R_(1)=tert-ブチルフェノキシアセチル)を、60%の0.3Mベンジルチオテトラゾールアクチベーター(アセトニトリル中)の存在下で、2?2.5当量のフェノキシアセチルデシタビンホスホラミダイト(図2A、1d)(R_(1)=フェノキシアセチル、図38の精密質量を参照のこと)で10分間カップリングする。保護DpGジヌクレオチドを含むCPG固体支持体を、20mLの50mM K_(2)CO_(3)を含むメタノールで1時間20分間処理する。カップリングした生成物を、GpDジヌクレオチドについて記載のように、酸化し、保護基を除去し、洗浄し、濾過し、精製する。DpGジヌクレオチド2b(X^(+)=トリエチルアンモニウム(中性化合物の精密質量は、557.14である)のESI-MS(-ve)は、m/z556.1[M-H]^(-)および[2M-H]^(-)については1113.1であてた(図31中のマススペクトルを参照のこと)。4ml水、0.2ml 2M NaClO_(4)溶液へのトリエチルアンモニウム塩の再溶解によって、DpGジヌクレオチド2b(X^(+)=ナトリウム)が得られる。36mLアセトンを添加した場合、ジヌクレオチドが沈殿する。溶液を、-20℃で数時間保持し、4000rpmで20分間遠心分離する。上清を破棄し、固体を30mLアセトンで洗浄し、その後、4000rpmで20分間さらに遠心分離する。沈殿を水に溶解し、凍結乾燥させ、m/z556.0[M-H]^(-)を示した(図36中のマススペクトルを参照のこと)。
【0226】
60%の0.3Mベンジルチオテトラゾールアクチベーター(アセトニトリル中)の存在下で、2?2.5当量のtert-ブチルフェノキシアセチル2’-デオキシグアノシンまたはフェノキシアセチル5-アザ-2’-デオキシシチジンホスホラミダイトを使用してサイクルをそれぞれ2.5分間および10分間で2回繰り返した場合、GpDpGトリヌクレオチド3c’(X^(+)=トリエチルアンモニウム(中性化合物C_(28)H_(36)N_(14)O_(16)P_(2)の精密質量は886.2である))が得られ、m/z885.16[M-H]^(-)を示した(図33中のマススペクトルを参照のこと)。
【0227】
サイクルを3回繰り返した場合、DpGpDpGテトラヌクレオチド3c(X^(+)=トリエチルアンモニウム(中性化合物C_(36)H_(47)N_(18)O_(22)P_(3)の精密質量は1176.23である))が得られ、[M-2H]^(2-)についてはm/z 587.4および1175.4[M-H]^(-)を示した(図34中のマススペクトルを参照のこと)。
【0228】
カップリング工程中に新たに形成された亜リン酸トリエステルを、5%フェニルアセチルジスルフィド(PADS)を含むジクロロエタン/symコリジン4/1(v/v)(4.3mL溶液)(3.6カラム体積)、流速50cm/h(接触時間は3カラム体積)を使用して、対応するホスホロチオエートトリエステルに変換した場合、2bのホスホロチオエート誘導体を得ることができる。3分以内硫化を完了し、その時点で、アセトニトリルでの洗浄によって過剰な試薬を反応容器から除去する。その後に2aについて記載のように脱保護および精製して、ホスホロチオエートDpG(SpおよびRp、図13、2e)(X^(+)=トリエチルアンモニウム(中性化合物にC_(18)H_(24)N_(9)O_(9)PSの精密質量は、573.12である)が得られ、[M-H]^(-)についてm/z571.9であった(図35中のマススペクトルを参照のこと)。
【0229】
2aについて記載のようにDMTヘキサエチレングリコールホスホラミダイト(60%アクチベーター、カップリング時間は7分)を使用して1回サイクルを繰り返し、その後に標準的な酸化および精製を行った場合、HEG-DpGジヌクレオチド2d(X^(+)=トリエチルアンモニウムおよびCap=ヘキサエチレングリコールホスフェート(中性化合物C_(30)H_(49)N_(98)O_(19)P_(2)の精密質量は901.71である)が得られ(図12)、m/z900.4[M-H]^(-)であった(図37中のマススペクトルを参照のこと)。
【0230】
3.DpGおよびGpDジ、トリ、およびテトラヌクレオチドによるDNAメチル化の阻害(トリ及びテトラヌクレオチドは参考)
DpGおよびGpDジ、トリ、およびテトラヌクレオチドの脱メチル化活性を、細胞ベースのGFP(緑色蛍光タンパク質)アッセイで試験した。図25に概略的に示されているこのアッセイは、CMVプロモーターによって調節されるGFP遺伝子を有し、プロモーター内のCpG部位のメチル化に感受性を示す。メチル化インヒビターへの曝露に起因するメチル化の減少により、GFPが発現し、これは容易にスコアリングされる。具体的には、エピジェネティックにサイレンシングされたGFP導入遺伝子を含むCMV-EE210細胞株を使用して、フローサイトメトリーによってGFP発現の再活性化についてアッセイした。CMV-EE210を、pTR-UF/UF1/UF2プラスミド(Zolotuhin et al.,1996)(哺乳動物細胞中での発現に適合したヒト化GFP遺伝子を駆動するサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含むpBS(+)(Stratagene,Inc.)から構成される)でのNIH3T3細胞のトランスフェクションによって作製した。トランスフェクション後、高レベルでGFPを発現する細胞を、FACS分析によって最初に選択し、MoFlo血球計算器(Cytomation,Inc.)を使用して分取した。デシタビン(哺乳動物DNMT1の強力なインヒビター)を、ポジティブコントロールとして使用した。CMV-EE210の再活性化をスクリーニングするために、デシタビン(1μM)または試験化合物(濃度30?50μM)を、10%ウシ胎児血清(Hyclone)を補足した完全培地(無フェノールレッドDMEM(Gibco,Life Technologies)に添加した。次いで、細胞を、試験化合物を含む96ウェルプレート中に30%コンフルエンス(約5000細胞/ウェル)に播種し、5%CO_(2)中、37℃で3日間成長させた。プレートを、450?490励起フィルター(13フィルターキューブ、Leica,Deerfield IL)を使用した蛍光顕微鏡化で試験した。ウェルを、(10%)の生細胞がGFPを発現する場合にg1陽性とスコアリングし、30%の生細胞がGFPを発現する場合にg2陽性とスコアリングし、75%を超える生細胞がGFPを発現する場合にg3とスコアリングした。GFP50は、(IC_(50)のように)GFP発現レベルがg3からg1/2になる用量であるインヒビターの濃度である。表1は、DNAメチル化インヒビターとしてのデシタビン、DpG、GpD、GpDpG、DpGpGpD、およびDpGpDpGについての試験結果を列挙する。表1に示すように、試験した5つのオリゴヌクレオチドアナログの全てが低濃度でDNAメチル化を有効に阻害することができ、それにより、GFP遺伝子の転写を再活性化することができた。
【0231】
【表1】

【0232】
4.溶液中でのDpGおよびGpDジヌクレオチドおよびトリヌクレオチドの合成(トリヌクレオチドは参考)
これらのオリゴヌクレオチドを大量に合成するために、可溶性高分子支持体を使用することが望ましい。Bayer and Mutter,(1972)Nature 237:512-513;Bonora(1995)Appl.Biochem.Biotechnol.54:3-17。高分子支持体であるポリ(エチレングリコール)またはPEGにより、均一相で合成過程を実施することが可能であり、簡潔な沈殿および濾過手順によって容易に中間体の精製工程が確保される。Harris Poly(ethylene glycol)Chemistiy.Biotechnical and Biomedical Applications,J.M.Harris(Ed.),Plenum Press,New York(USA),1992,pp.1-14(書籍の引用)。例えば、3’結合誘導体(1t、1u、または1v(図10))を、先行する固相手順で使用した標準的なホスホラミダイトベースの化学に容易に適合させて、DpGおよびGpDジヌクレオチドおよびテトラヌクレオチド2a、2b、3a、3b、3c、3dを得ることができる。
【0233】
あるいは、新規のDpGジヌクレオチド2aについては、溶液中で、誘導体1p、1q、または1rの基本的に同様の保護5’-O-DMTr2’-デオキシグアノシン-3’-O-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホラミダイトとのカップリング、GpDについては、同様に、アセトニトリルおよび/またはジクロロメタン中での3’保護2’-デオキシグアノシンの5’-O-DMTr2’-デオキシ-5-アザ-シチジン-3’-O-シアノエチル-N,N--ジイソプロピルホスホラミダイト(1d、1e、または1f)とのカップリング、その後のヨウ化物/水での酸化、塩基保護基の脱保護、およびDMTr基の除去(オリゴヌクレオチド合成についての標準的サイクルなど)によって調製することができる。
【0234】
さらに、メチル基でキャッピングされた末端3’-OHおよび5’-OHを有する新規のDpG(2c)ジヌクレオチドを、2’-デオキシグアノシン-3’-O-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホラミダイト1wの3’-O-メチル誘導体1g、1h、または1iの5’-O-メチル誘導体(図11)とのカップリング、その後のヨウ化物/水での酸化、塩基保護基の脱保護、およびDMTr基の除去(オリゴヌクレオチド合成についての標準的サイクルなど)によって調製することができる。ジヌクレオチドGpD(2d)を、同様に、2’-5-アザシチジン-3’-O-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホラミダイト1j、1k、または1lの3’-O-メチル2’-デオキシグアノシン誘導体1の5’-O-メチル誘導体(図12)とのカップリングによって調製することができる。
【0235】
5.シチジンデアミナーゼおよびヌクレアーゼに対するDpGおよびGpDオリゴヌクレオチドの合成
一般に、生体液中のオリゴヌクレオチドを、ヌクレアーゼ分解に供する。Stein and Cheng(1993)Science 261:1004-1012;Cohen(1994)Adv.Pharmacol.25:319-339。ヌクレアーゼ分解に対する安定性および耐性を増加させるために、ヌクレオチド間の非架橋酸素が硫黄に置換されたホスホチオエートジヌクレオチドおよびテトラヌクレオチド誘導体(2e、2f、3e、3f、3g、および3h(図13、14、および15など)も作製する(テトラヌクレオチド誘導体(3e、3f、3g、および3h)は参考)。酸化工程中のヨウ素のビス(O,O-ジイソプロポキシホスフィノチオイル)ジスルファイト(S-テトラ)への置換以外は標準的なホスホラミダイトプロコールを使用する。Zon and Stec(1991)In Eckstein,F.(ed.),’Phosphorothioate Analogues’ in Oligonucleotides and Their Analogs:A Practical Approach.IRL Press,pp.87-108;Zon,G.(1990)In Hancock,W.S.(ed.),High Performance Liquid Chromatography in Biotechnology.Wiley,New York,Ch.14,pp.310-397(書籍の引用);Stec,Uznanski,Wilk,Hirschbein,Fearon,and Bergot(1993)Tet.Lett.34:5317-5320;Iyer,Phillips,Egan,Regan,and Beaucage(1990)J.Org.Chem.55:4693-4699。
【0236】
デシタビンの脱アミノ化によって全活性が喪失するので、医薬品としてのこれらのオリゴヌクレオチドの適用を妨害する可能性のある別の要因は、シチジンデアミナーゼ(CDA)の遍在である。Momparler,Cote and Eliopoulos(1997)Leukemia 11(Suppl.1):1-6;Chabot,Bouchard and Momparler(1983)Biochem.Pharmacol.32:1327-1328;Laliberte,Marquez and Momparler(1992)Cancer Chemother.Pharmacol.30:7-11。この問題に取り組むために、4-NH_(2)を4-NR_(3)R_(4)(R_(3)およびR_(4)は、アルキル、アルキルアミド、およびアルキルアルコールであり得る)に置換されたデシタビン誘導体を含むオリゴヌクレオチドを調製して、2g、2h、2i、2j、2k、2l、2m、2n、3i、3j、3k、3l、3m、3n、3o、および3pなどの誘導体も調製する(図16、17、18、19、20、および21)(3i、3j、3k、3l、3m、3n、3o、および3pは参考)。4-メトキシおよび4-メチルチオの除去中のメタノール中でのアルキルアミン、アルキルジアミン、およびヒドロキシルアミンにアンモニアを置換すること以外は、標準的なホスホラミダイトプロトコールを使用する。第二級および第三級アミン、ジアミン、およびヒドロキシルアミンはアンモニアよりも基を遊離させてしまうので、これらの誘導体は、脱アミノ化がより困難である。
【0237】
6.P15(CDKN2B)、BRCA1、およびP16(CDKN2A)などの癌関連遺伝子のプロモーター領域のCpGアイランドに基づいたDpGおよびGpDリッチオリゴヌクレオチドの合成(参考)
5?100塩基長の範囲のDpGおよびGpD島(Dはデシタビンまたはデシタビンアナログであり得る)が豊富なオリゴヌクレオチドアナログを調製することができる。上記DpGおよびGpDジヌクレオチドおよびテトラヌクレオチドと異なり、これらの比較的長いDpGおよびGpDリッチオリゴヌクレオチドアナログは、プロモーター領域のCpGアイランド内で厳格に機能するだけでなく、癌関連遺伝子(P15(CDKN2B)、P16(CDKN2A)、およびBRAC1など)のプロモーター領域配列内のセグメントに特異的である。例えば、P15、P16、およびBRCA1プロモーター領域配列(ぞれぞれ、図27、28、および29)に基づいた8量体、10量体、および12量体のDpGおよびGpDリッチオリゴヌクレオチドアナログ(図26)を、標準的な固相オリゴヌクレオチド合成におけるホスホラミダイト構成単位1d、1e、または1fの使用によって調製することができる。5-アザ-シトシンが組み込まれるように修飾することができるオリゴヌクレオチドのさらなる例を、図27、28、および29に列挙する。これらのオリゴヌクレオチドアナログは、プロモーターのように機能し、P15、P16、またはBRCA1のプロモーター領域配列の特定のセグメントのみで複製DNAに組み込まれ、したがって、プロモーター領域のメチル化を効率的且つ選択的に阻害することができる。
【0238】
本発明の好ましい実施形態を本明細書中に表示および説明しているが、このような実施形態は例示のみのために提供されていることが当業者に明らかであろう。本発明を逸脱することなく、多数の変形形態、変更形態、および置換形態が得られるであろう。本明細書中に記載の発明の実施形態に対する種々の代替物を、本発明の実施で使用することができると理解すべきである。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにその等価物を対象とすることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】図1は、デシタビン(D(1a))、シトシン(1a’)、および5-メチルシトシン(mC(1a”))の構造を示す。
【図2A】図2Aは、デシタビンホスホラミダイト構成単位の例を示す。
【図2B】図2Bは、デシタビンホスラミダイト構成単位1d(式中、R1=フェノキシアセチル)を示す。
【図3A】図3Aは、3’および5’-Oキャッピングしたデシタビン誘導体およびさらに細孔制御型ガラスを3’結合したデシタビン誘導体を示す。
【図3B】図3Bは、細孔制御型ガラス支持体に3’結合した保護デシタビンを示す。
【図4】図4は、3’-Oキャッピングしたデシタビン誘導体の例を示す。
【図5】図5は、標準的なオリゴヌクレオチド合成サイクルを示す。
【図6A】図6Aは、GpDジヌクレオチドおよびテトラヌクレオチド(X^(+)は対イオンをである)の合成スキームを示す。
【図6B】図6Bは、GpDジヌクレオチド(2a)およびDpGpGpDテトラヌクレオチド(3b)のモデル合成サイクルを示す。
【図7】図7は、DpGpGpDテトラヌクレオチドを示す。
【図8】図8は、GpDジヌクレオチドおよびテトラヌクレオチドの合成スキームを示す。
【図9】図9は、GpDpGトリヌクレオチドおよびGpDpDpGテトラヌクレオチドを示す。
【図10】図10は、ポリ(エチレングリコール)上に3’結合した保護デシタビンを示す。
【図11】図11は、3’および5’-OキャッピングしたGpDジヌクレオチドの合成スキームを示す。
【図12】図12は、3’および5’-OキャッピングしたGpDジヌクレオチドの合成スキームを示す。
【図13】図13は、ヌクレアーゼ耐性ホスホチオエート結合を有するGpDおよびDpGを示す。
【図14】図14は、ヌクレアーゼ耐性ホスホチオエート結合を有するGpDpGpDおよびDpGpGpDテトラヌクレオチドを示す。
【図15】図15は、ヌクレアーゼ耐性ホスホチオエート結合を有するDpGpDpGおよびGpDpDpGテトラヌクレオチドを示す。
【図16】図16は、シチジンデアミナーゼア耐性4-アミノ基を有するGpDおよびDpGジヌクレオチドを示す。
【図17】図17は、シチジンデアミナーゼア耐性4-アミノ基およびヌクレアーゼ耐性ホスホチオエート結合を有するGpDおよびDpGジヌクレオチドを示す。
【図18】図18は、シチジンデアミナーゼア耐性4-アミノ基を有するGpDpGpDおよびDpGpGpDテトラヌクレオチドを示す。
【図19】図19は、シチジンデアミナーゼア耐性4-アミノ基およびヌクレアーゼ耐性ホスホチオエート結合を有するGpDpGpDおよびDpGpGpDテトラヌクレオチドを示す。
【図20】図20は、シチジンデアミナーゼア耐性4-アミノ基を有するCap-O-GpD-O-CapおよびCap-O-DpG-O-Capジヌクレオチドを示す。
【図21】図21は、シチジンデアミナーゼア耐性4-アミノ基およびヌクレアーゼ耐性ホスホチオエート結合を有するCap-O-GpD-O-CapおよびCap-O-DpG-O-Capジヌクレオチドを示す。
【図22】図22は、シチジンデアミナーゼア耐性4-アミノ基を有するDpGpGpGおよびGpDpDpGテトラヌクレオチドを示す。
【図23】図23は、シチジンデアミナーゼア耐性4-アミノ基およびヌクレアーゼ耐性ホスホチオエート結合を有するDpGpGpGおよびGpDpDpGテトラヌクレオチドを示す。
【図24A】図24Aは、天然のホスホジエステル骨格または修飾骨格を有する-DpG-島を示す。
【図24B】(削除)
【図25】図25は、DNAメチル化についての細胞ベースのGFPアッセイを概略的に示す。パネルa)は、コントロール細胞を示す。パネルb)は本発明のオリゴヌクレオチドで処置し、GFPを発現する細胞を示す。
【図26】図26は、P15、BRAC1、またはP16のプロモーター領域を特異的にターゲティングするオリゴヌクレオチドアナログの例を列挙する。Dはデシタビンまたはデシタビンアナログであり得る。天然のリン酸結合についてはpx=p、ホスホロチオエート結合についてはpx=ps、ボラノホスフェートについてはpx=bp、メチルホスホネート結合についてはpx=mp。
【図27】図27は、P15プロモーター領域の配列およびそのセグメントの例を示し、これに基づいて、DpGおよびGpDリッチオリゴヌクレオチドアナログを作製することができる。
【図28】図28は、P16プロモーター領域の配列およびそのセグメントの例を示し、これに基づいて、DpGおよびGpDリッチオリゴヌクレオチドアナログを作製することができる。
【図29】図29は、BRCA1プロモーター領域の配列およびそのセグメントの例を示し、これに基づいて、DpGおよびGpDリッチオリゴヌクレオチドアナログを作製することができる。
【図30】図30は、GpD(2a)トリエチルアンモニウム塩のマススペクトルである。
【図31】図31は、DpG(2b)トリエチルアンモニウム塩のマススペクトルである。
【図32】図32は、DpGpGpD(3b)トリエチルアンモニウム塩のマススペクトルである。
【図33】図33は、GpDpG(3c’)トリエチルアンモニウム塩のマススペクトルである。
【図34】図34は、DpGpDpG(3c)トリエチルアンモニウム塩のマススペクトルである。
【図35】図35は、ホスホロチオエート結合DpG(2f)トリエチルアンモニウム塩のマススペクトルである。
【図36】図36は、DpG(2b)ナトリウム塩のマススペクトルである。
【図37】図37は、HRG-DpG(2d)トリエチルアンモニウム塩のマススペクトルである。
【図38】図38は、デシタビンホスホラミダイト構成単位(1d;R_(1)=フェノキシアセチル)のマススペクトルである。
【配列表】











(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離または合成ジヌクレオチドアナログ、その塩またはエステルであって、前記ジヌクレオチドアナログ配列中の塩基残基として1つの5-アザ-シトシンを含み、前記ジヌクレオチドアナログが、5’-DpG-3’または5’-GpD-3’であり、ここで、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Gはデオキシグアノシンである、単離または合成ジヌクレオチドアナログ、その塩またはエステル。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】
前記塩が、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、カルボン酸、スルホン酸、スルホ酸またはホスホ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、アミノ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-l,5-ジスルホン酸、2-または3-ホスホグリセリン酸塩、グルコース-6-リン酸塩、N-シクロヘキシルスルファミン酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択される酸を使用して形成される、請求項1に記載のジヌクレオチドアナログ。
【請求項12】
前記塩が、塩酸塩、メシル酸塩、EDTA、亜硫酸塩、L-アスパラギン酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、L-グルタミン酸塩、(+)-L-酒石酸塩、クエン酸塩、L-乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、ヘキサン酸塩、酪酸塩、またはプロピオン酸塩である、請求項1に記載のジヌクレオチドアナログ。
【請求項13】
前記塩が、ナトリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、またはトリアルキルアンモニウム塩である、請求項1に記載のジヌクレオチドアナログ。
【請求項14】
前記塩が、トリアルキルアンモニウム塩であって、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、またはトリプロピルアンモニウム塩からなる、請求項13に記載のジヌクレオチドアナログ。
【請求項15】(削除)
【請求項16】(削除)
【請求項17】
請求項1に記載のジヌクレオチドアナログまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、および薬学的に許容可能なキャリアを含む薬学的組成物。
【請求項18】
請求項1に記載のジヌクレオチドアナログまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルが固体形態である、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記ジヌクレオチドアナログが、5’-DpG-3’であり、ここで、Dはデシタビンであり、pはホスホリンカーであり、Gはデオキシグアノシンである、請求項1に記載のジヌクレオチドアナログ。
【図面】










































 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-06-29 
結審通知日 2016-07-01 
審決日 2016-07-12 
出願番号 特願2008-533486(P2008-533486)
審決分類 P 1 41・ 851- Y (C12N)
P 1 41・ 852- Y (C12N)
P 1 41・ 856- Y (C12N)
P 1 41・ 853- Y (C12N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉森 晃  
特許庁審判長 中田 とし子
特許庁審判官 冨永 保
齊藤 真由美
登録日 2012-07-06 
登録番号 特許第5030958号(P5030958)
発明の名称 5-アザ-シトシンを組み込んだジヌクレオチドアナログ  
代理人 弟子丸 健  
代理人 浅井 賢治  
代理人 西島 孝喜  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 山崎 一夫  
代理人 箱田 篤  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 山崎 一夫  
代理人 西島 孝喜  
代理人 箱田 篤  
代理人 市川 さつき  
代理人 市川 さつき  
代理人 浅井 賢治  
代理人 弟子丸 健  

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