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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1319447
審判番号 不服2015-21797  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-08 
確定日 2016-09-15 
事件の表示 特願2014-126332「宅配ボックス装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月11日出願公開、特開2014-166924〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成23年2月15日に出願した特願2011-30027号(以下、「原出願」という。)の一部を平成26年6月19日に新たな特許出願としたものであって、平成26年6月19日に上申書が提出され、平成27年5月11日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成27年7月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年9月1日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年12月8日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。


第2 平成27年12月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年12月8日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
平成27年12月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成27年7月21日に提出された手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1ないし3を、下記の(2)に示す請求項1ないし3と補正するものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし3
「 【請求項1】
施錠装置を備え宅配物が入れられる収納空間のサイズの異なる複数種類の大きさの宅配物収納部と、宅配物の発送情報を電子データとして受付ける発送受付手段と、発送情報の受付毎に、対応する宅配物を個々に特定する識別コードを電子データとして生成する識別コード生成部と、宅配物の大きさを自動で計測する自動計測手段と、前記自動計測手段で計測された宅配物の大きさに基づいて自動で一つの前記宅配物収納部を決定する収納部決定手段と、前記発送受付手段で受付けた発送情報及び前記識別コード生成部で生成した識別コード情報を通信ネットワークを介して管理サーバに送信する通信部と、受付確認情報を生成して発送人端末装置に送信する受付確認情報生成部と、を備えて成ることを特徴とする宅配ボックス装置。
【請求項2】
収納空間の高さが異なる複数種類の前記宅配物収納部を備えると共に、宅配物の高さを計測可能な前記自動計測手段を備え、前記収納部決定手段は、収納空間の高さが宅配物の高さよりも高い前記宅配物収納部のうち最小の高さの前記宅配物収納部に決定することを特徴とする請求項1記載の宅配ボックス装置。
【請求項3】
前記自動計測手段は、決定した前記宅配物収納部の前記施錠装置を解錠することを特徴とする請求項1又は2記載の宅配ボックス装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3
「 【請求項1】
施錠装置を備え宅配物が入れられる収納空間のサイズの異なる複数種類の大きさの宅配物収納部と、複数の前記宅配物収納部のサイズ・利用状況を表示する表示手段を有し宅配物のサイズに適応した前記宅配物収納部を選択するための操作部と、宅配物の発送情報を電子データとして受付ける発送受付手段と、発送情報の受付毎に、対応する宅配物を個々に特定する識別コードを電子データとして生成する識別コード生成部と、宅配物の大きさを自動で計測する自動計測手段と、前記自動計測手段で計測された宅配物の大きさに基づいて自動で一つの前記宅配物収納部を決定して前記表示手段に表示する収納部決定手段と、前記発送受付手段で受付けた発送情報及び前記識別コード生成部で生成した識別コード情報を通信ネットワークを介して管理サーバに送信する通信部と、受付確認情報を生成して発送人端末装置に送信する受付確認情報生成部と、を備えて成ることを特徴とする宅配ボックス装置。
【請求項2】
収納空間の高さが異なる複数種類の前記宅配物収納部を備えると共に、宅配物の高さを計測可能な前記自動計測手段を備え、前記収納部決定手段は、収納空間の高さが宅配物のさよりも高い前記宅配物収納部のうち最小の高さの前記宅配物収納部に決定することを特徴とする請求項1記載の宅配ボックス装置。
【請求項3】
前記自動計測手段は、決定した前記宅配物収納部の前記施錠装置を解錠することを特徴とする請求項1又は2記載の宅配ボックス装置。」
(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付したものである。)

2 本件補正の目的要件について
本件補正により、本件補正後の請求項1において、「複数の前記宅配物収納部のサイズ・利用状況を表示する表示手段を有し宅配物のサイズに適応した前記宅配物収納部を選択するための操作部」という発明特定事項(以下、「発明特定事項A」という。)が、本件補正前の請求項1に対して新たに追加された。
そこで、発明特定事項Aを追加する本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものであるかについて検討する。
本件補正前の請求項1においては、「宅配物収納部を選択するための操作部」は明記されていない。
そして、本件補正前の請求項1に係る発明においては、「自動計測手段で計測された宅配物の大きさに基づいて自動で一つの前記宅配物収納部を決定する収納部決定手段」により、「施錠装置を備え宅配物が入れられる収納空間のサイズの異なる複数種類の大きさの宅配物収納部」から、自動で一つの種類の宅配物収納部を決定するものであるところ、本件出願の明細書における段落【0048】の「具体的には、制御部9は、宅配物35の高さが宅配物収納部52の収納空間の高さ以下であれば宅配物収納部52に決定し、宅配物35の高さが宅配物収納部52の収納空間の高さを越えていれば宅配物収納部51に決定する。そして、制御部9は、決定された種類の宅配物収納部5のうち、空いている宅配物収納部5の一つを選択し、施錠装置4を解錠する。また、宅配ボックス装置1が表示手段を備えている場合は表示手段により表示し、宅配ボックス装置1が音声出力手段を備えている場合は音声出力手段により音声が発せられて、選択された宅配物収納部5が発送人に認識される。」(下線は当審で付した。以下、本件審決中における本段落及び次段落において同じ。)との記載によれば、宅配ボックス装置において、表示手段を備えることは必須ではなく、決定された種類の宅配物収納部から空いている宅配物収納部の一つを選択するのに、荷主が手動で行うための操作部を備えず、制御部により自動で選択する態様が想定されていることは明らかであるから、本件補正前の請求項1に係る発明は、「宅配物収納部を選択するための操作部」を備える態様を想定したものとはいえない。
一方、本件補正後の請求項1に係る発明においては、本件出願の明細書における段落【0062】の「前記発送情報の入力の前、又は終了後、操作部10の液晶モニターで該当する宅配ボックス装置1に備えた複数の宅配物収納部5のサイズ・利用状況を表示し、このサイズ・利用状況を表示に基づいて、空いている宅配物収納部5のうち発送しようとする宅配物35のサイズに適応した宅配物収納部5を選択し、操作部10で指定することで、該当する宅配物収納部5の扉7を自動的に開く。」との記載によれば、発明特定事項Aを備えることにより、決定された種類の宅配物収納部から空いている宅配物収納部の一つを荷主により手動で選択されるものとなった。
そうすると、発明特定事項Aを追加する本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明における発明特定事項を限定するものではなく、決定された種類の宅配物収納部から空いている宅配物収納部の一つを荷主が手動により選択できるようにするという新たな概念を追加するものといえるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しない。
また、本件補正が、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる「請求項の削除」、同項第3号に掲げる「誤記の訂正」及び同項第4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」のいずれの目的にも該当しないことは明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。

3 本願補正発明の独立特許要件について
本件補正は、上記2のとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、仮に、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものとして、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成27年12月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記1(2)に示す請求項1を参照。)。

(2)引用刊行物
ア 刊行物1
(ア)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の原出願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-285932号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
a 「【0001】本発明は、配送ボックス及び配送システムに関し、荷物の収受、送付用紙の作成、伝票処理を自動化した配送ボックス及び配送システムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の配送システムは、荷物の差出人が配送を依頼する際に、送付用紙に宛名、住所等を手書きで記入していた。また、受取人が留守の場合には、荷物がある旨を示したメモを残して、荷物を持ちかえり一時保管していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような配送システムは、荷物の配送を依頼する際に送付用紙を手書きするのが面倒であった。また、自宅を留守がちにしている場合には、荷物を円滑に受け取ることが難しいという問題があった。
【0004】そこで、本発明は、荷物の送り主に関する情報が読取り処理され、また荷物の収受が簡便な配送ボックス及び配送システムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による配送ボックス1は、例えば図1、図3に示すように、荷物の配送を委託しようとする利用者に対して該荷物の収受を行なう配送ボックスにおいて;前記荷物を収納可能な収納部11と;前記利用者が提示する記録媒体であって、前記荷物の送り主に関する情報が記録された記録媒体3から前記情報の読取り処理をする記録媒体処理手段21とを備えている。
【0006】このように構成すると、荷物を収納部11に収納でき、前記荷物の送り主に関する情報を記録媒体3から記録媒体処理手段21により読取ることができるので、前記荷物の送り主に関する情報に基づいて例えば送付用紙を容易に作成できるだけでなく、簡便に利用できる配送ボックス1とすることができる。
【0007】請求項2に係る発明による配送ボックス1は、請求項1に記載の配送ボックス1において、前記荷物の配送先に関する情報を印刷媒体に印刷する印刷手段22を備えるとよい。
【0008】このように構成すると、印刷手段22により、前記荷物の配送先に関する情報を印刷媒体に印刷するので、例えば送付用紙に前記荷物の配送先に関する情報を手書きする必要がなく、簡便である。
【0009】請求項3に係る発明による配送ボックス1は、請求項2に記載の配送ボックス1において、例えば図5に示すように、印刷手段22により印刷された前記情報を読み取る情報読取手段25を備えるとよい。
【0010】このように構成すると、印刷手段22により印刷された前記情報を情報読取手段25で読み取ることで、配送ボックス1の運用が簡便である。
【0011】請求項4に係る発明による配送ボックス1は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の配送ボックス1において、例えば図3に示すように、前記利用者からの前記荷物の配送先に関する情報の入力を受け付ける入力手段23aを備えるとよい。
【0012】このように構成すると、入力手段23aにより前記利用者からの前記荷物の配送先に関する情報の入力を受け付けることができるので、例えば、利用者からの前記荷物の配送先に関する情報の入力を受け付けることで、前記荷物の送り主に関する情報に加え、さらに利用者からの情報を得ることができる。
【0013】請求項5に係る発明による配送ボックス1は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の配送ボックス1において、前記利用者に表示により情報を伝える表示手段23を備えるとよい。
【0014】このように構成すると、表示手段23により前記利用者に表示により情報を伝えることで、例えば利用者が表示に従って操作することができるので、簡単に操作できる。
【0015】上記目的を達成するために、請求項6に係る発明による配送システム100は、例えば図7に示すように、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の配送ボックス1と;利用者に前記荷物の配送の状態を案内する案内手段102とを備えている。
【0016】このように構成すると、配送ボックス1を備えているので、例えば送付用紙を容易に作成できる。さらに、案内手段102により、利用者に前記荷物の配送の状態を案内することで、例えば案内手段102を通過する利用者が前記荷物の配送の状態を知ることができるので、簡便に利用できる配送システムを提供することができる。
【0017】また、上記案内手段102は、利用者に情報を伝えるための表示部102bを備えるようにしてもよい。このように構成すると、例えば前記荷物の配送の状態を表示部102bにより表示により案内できるので、利用者が判りやすい。
【0018】また、上記配送システム100は、前記配送ボックス1に通信回線2を介して接続され、配送ボックス1を管理する管理手段としての駅サーバ101を備えるとよい。」(段落【0001】ないし【0018】)

b 「【0020】図1は、本発明の実施の形態に係る配送ボックス1を説明する概略正面図である。本実施の形態では、配送ボックス1は、鉄道の駅に設置されている場合で説明する。そしてこの場合には、配送ボックス1は、例えば駅のコインロッカースペースに設置するとよい。また、ここでの配送は、例えば配送ボックス1間での配送であるが、その他、例えば配送ボックス1からオフィスや個人宅に配送する宅配も含むものとする。
【0021】配送ボックス1は、筐体10と、荷物を収納可能な収納部としての荷物ロッカー11と、利用者等が操作する操作部20とを含んで構成される。筐体10は、直方体の形状をしている。また、操作部20は、筐体10正面のおよそ中央部上方に配置されている。操作部20は、その接客面20aを筐体10の正面に形成している。荷物ロッカー11は、筐体10内に、例えば隔壁で区切られて形成されている。言い換えれば、荷物ロッカー11は、筐体10と一体に構成されている。また、荷物ロッカー11は、例えば予め箱型に形成したものを、筐体10内に設置するようにしてもよい。本実施の形態では、荷物ロッカー11は、筐体10に複数設置されている。さらに複数の荷物ロッカー11には、複数種類の大きさがある。さらに荷物ロッカー11には、それぞれに異なる番号を付すとよい。このようにすることで、例えば複数の荷物ロッカー11の中から1つの荷物ロッカー11を指定する場合でも、この番号を用いることで、容易に指定された荷物ロッカー11を確認できるので、簡便である。
【0022】荷物ロッカー11の大きさは、2種類以上とするのが好ましく、さらに好ましくは3種類以上とするのがよい。本実施の形態では、荷物ロッカー11には、Sサイズの荷物ロッカー11aと、Sサイズより大きいMサイズの荷物ロッカー11bと、Mサイズより大きいLサイズの荷物ロッカー11cとの3種類の大きさがある。これらは基本的に配送する荷物の大きさにより使い分けられる。以下、これらを特に区別しないときは、単に荷物ロッカー11という。さらに、Sサイズの荷物ロッカー11aは、比較的上方に、Mサイズの荷物ロッカー11b、Lサイズの荷物ロッカー11cは、比較的下方に配置するとよい。これは、荷物が大きい程、上方に持ち上げるのが困難であるためである。即ちこのように荷物ロッカー11を配置することで、利用者が利用しやすい配送ボックス1とすることができる。
【0023】また、荷物ロッカー11は、開閉可能な扉13を有している。扉13は、荷物ロッカー11の筐体10の正面側に取り付けられている。さらに、荷物ロッカー11は、扉13を開閉不能にするロック機構14(図2参照)を有している。そしてロック機構14は、必要に応じて後述の操作部20の制御装置40(図2参照)によりロックを解除できるように構成されている。即ち、荷物ロッカー11は、制御装置40により制御されている。
【0024】図2、図3を参照して、操作部20について説明する。図2は、配送ボックス1の構成の概略を示したブロック図であり、図3は、操作部20の接客面20aの平面図である。操作部20は、利用者が提示する記録媒体であって、荷物の送り主に関する情報が記録された記録媒体から荷物の送り主に関する情報の読取り処理をする記録媒体処理手段としてのカードリーダライタ21と、荷物の配送先に関する情報を印刷媒体としての送付用紙に印刷する印刷手段としての送付用紙印刷部22と、送付用紙印刷部22により印刷された情報を読み取る情報読取手段としてのバーコードリーダ25と、利用者に表示により情報を伝える表示手段としての表示モニタ23と、利用者からの荷物の配送先に関する情報の入力を受け付ける入力手段としてのタッチパネル23aとを含んで構成される。以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0025】ここで、記録媒体は、例えばカード媒体であり、カード媒体はICカード3(図3中破線で表示)が好ましい。また、カード媒体は、その他のもの、例えばクレジットカードのような磁気カードであってもよい。ICカード3については図4で後述する。本実施の形態では、記録媒体としてICカード3を用いる。また、ICカード3を提示するとは、例えば、配送ボックス1の場合には、カード収納装置30に挿入することである。ICカード3は、カード収納装置30に挿入されるとカードリーダライタ21にかざされる位置に収納される。また、後述の自動改札機102の場合には、カードリーダライタ102cにかざす、又は軽く接触させる即ち1タッチすることである。
【0026】また、荷物の送り主に関する情報は、例えば、図4で後述するカード情報3aである。荷物の配送先に関する情報は、荷物の配送先の情報、例えば配送先の駅名や住所等である。以下、荷物の配送先に関する情報を配送先情報という。送付用紙は、例えばカード情報3aに記録された荷物の送り主の氏名、電話番号、カードID番号等情報や配送先情報、さらにこれらの情報を変換して生成したバーコード情報を含む情報を印刷するものである。以下、送付用紙に印刷された情報を単に荷物情報という。送付用紙は、例えば紙、タックシール等である。荷物情報の印刷のされた送付用紙は、例えば荷物に標識として貼付される。また同時に、利用者に控えとして発行するものであってもよい。本実施の形態では、送付用紙は、宅配に一般的に用いられる複数枚が綴られたものを用いる。また、利用者に表示により伝える情報は、例えば操作案内の情報や、荷物が配送ボックスに届いているかの情報である。
【0027】ここで、図4を参照して、ICカード3について説明する。ICカード3は、およそクレジットカードと同じ形状をした無線式のICカードである。本実施の形態では、ICカード3は、鉄道を利用する際に用いられるものである。このICカード3は、定期券、ストアードフェアカード(以下SFカードという)のどちらか一方または両方の機能を持ったものである。ここでは、ICカード3は、少なくとも定期券の機能を持ったものとする。以下、ICカード3は、定期券とSFカードの両方の機能を持ったもので説明する。
【0028】ICカード3には、カード情報3aを含む情報が記録されている。情報は、例えばビット列で記録される。また、ICカード3は、これらの情報を、電波を用いて非接触で読出し又は書込みできるものである。ICカード3は、カードリーダライタ21により、情報が読出し又は書込みされる。
【0029】カード情報3aは、例えばカードID番号と、定期券情報と、SFカード情報とを含んでいる。さらに、定期券情報は、利用区間、有効期限(期間)、利用者情報(氏名、性別、生年月日、電話番号等)等を含んでいる。また利用者情報に含まれる生年月日は年齢であってもよい。またSFカード情報は、残高金額を含んでいる。残高金額は、ICカード3に入金(積み増し)されている金額から利用した金額(精算した金額)を差し引いた金額である。
【0030】図2、図3に戻って操作部20について説明する。操作部20は、制御装置40を備えている。制御装置40は、各構成が接続され、配送ボックス1全体を制御するものである。制御装置40には、例えばパソコン、マイコンを用いるとよい。また、制御装置40には、前述の荷物ロッカー11が複数接続されている。
【0031】カードリーダライタ21は、カード収納装置30に取り付けられている。カード収納装置30は、図中接客面20aの右下方部分に配置されている。カード収納装置30については、図6を参照して後述する。また、カードリーダライタ21は、ICカード3に対して、情報の読取りの他、書込みが可能であることが好ましい。
【0032】送付用紙印刷部22は、送付用紙に荷物情報を印刷して利用者に放出口22aから受け渡すものである。送付用紙印刷部22は、図中左下方部分に、放出口22aを接客面20aに露出して配置される。また、送付用紙印刷部22は、放出口22aに挿入された紙類に対して領収印を押下する領収印押下部22bを有している。紙類は、例えば複数枚綴られた送付用紙の1枚としての宅配業者控の紙である。
【0033】バーコードリーダ25は、荷物情報としてのバーコード情報を読取るものである。バーコードリーダ25は、接客面20aのカード収納装置30の上方に形成されたバーコードリーダ収納部25a内に収納されている。図5に示すように、バーコードリーダ25は、通常のときにはバーコードリーダ収納部25a内に収納されており、必要なときに扉25bが自動的に開放され、取出せるように構成されている。
【0034】表示モニタ23は、操作案内等の情報を表示により利用者に伝えるものである。表示モニタ23は、例えばカラー液晶ディスプレイ(LCD)である。さらに、表示モニタ23の表示面には、タッチパネル23aが取り付けられている。これにより、利用者は、表示モニタ23の案内に従い、表示面をタッチすることで、荷物情報を入力できるので利用し易い。
【0035】また、操作部20は、通信インタフェース26を有している。通信インタフェース26は、制御装置40に接続されている。通信インタフェース26は、通信回線2を介して情報を外部装置に送信または外部装置から受信するためのものである。また、外部装置は、例えば図7で後述する駅サーバ101である。」(段落【0020】ないし【0035】)

c 「【0043】図7の概略図を参照して、配送ボックス1を備えた配送システム100について説明する。配送ボックス1と同様に、配送システム100は、鉄道の駅に設置されている場合で説明する。配送システム100は、配送ボックス1と、通信回線2を介して接続され、配送ボックス1を管理する管理手段としての駅サーバ101と、配送ボックス1とは別体であり、特に配送ボックス1から離れた遠隔地点に設置された、利用者に荷物の配送の状態を案内する案内手段としての自動改札機102とを含んで構成される。配送ボックス1、駅サーバ101、自動改札機102は、それぞれ通信回線2で接続されている。通信回線2は、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、電話回線等を含む通信回線である。通信のプロトコルには、TCP/IPを用いるとよい。また、駅サーバ101は、例えば設置駅の駅舎内の関係者以外の立ち入りを禁止できる場所に設置され、自動改札機102は、利用者が日常的に通過する地点、例えば設置駅の改札口に設置される。管理とは、例えば、荷物の配送の状態の監視、配送ボックス1の配送費用の決済等である。荷物の配送の状態とは、例えば、配送ボックス1に荷物が届いているか否か、あるいは荷物が現在どこにあるのかである。本実施の形態では、案内手段は、自動改札機102即ち外部の装置としたが、案内装置として配送ボックス1に取り付けて一体に構成してもよい。
【0044】また、駅サーバ101は、宅配業者のサーバとしての宅配業者サーバ105に通信回線2を介して接続されている。また、駅サーバ101は、他の駅に設置された駅サーバ101と通信回線2を介して接続される。さらに、配送システム100は、複数の配送ボックス1を備えるように構成してもよい。駅サーバ101、宅配業者サーバ105は、例えばパソコンであるが、ワークステーション、メインフレームなど、種々のコンピュータで実施可能である。
【0045】自動改札機102は、改札口に設置され、利用者の入出場を管理している。自動改札機102は、利用者のICカード3が駅構内への入出場を許可できるか否かを判断し、備えられた扉102aの開閉を行なうことで、利用者の入出場の許可又は規制を行なうものである。また、自動改札機102は、利用者に情報を伝えるための表示手段としてのディスプレイ102bを有している。さらに、自動改札機102は、ICカード3を所定の場所に1タッチすることで、カードリーダライタ102cにより、カード情報3aを読み書き処理できるように構成されている。自動改札機102は、ディスプレイ102bの表示により、利用者に荷物の配送の状態を案内する。
【0046】以上では、駅サーバ101は、配送ボックス1の設置駅毎に設置し、設置駅に設置された配送ボックス1を管理する場合で説明したが、1箇所に設置した1つの駅サーバ101で、複数の駅に設置された配送ボックス1を管理するように構成してもよい。このようにすると、配送システム100を単純化することができる。
【0047】図8を適宜参照して、配送システム100の動作工程について説明する。ここでは、動作の一例として、配送システム100が設置されている鉄道の駅間での配送について説明する。
【0048】まず図9を参照して、利用者が荷物を発送する際のステップ工程を説明する。利用者は、駅の配送ボックス1に荷物を持ち込み、配送ボックス1のカード収納装置30にICカード3を挿入する(ステップ1(以下単にS1という))。配送ボックス1は、カードリーダライタ21により、ICカード3のカード情報3aを読み出す(S3)。そして、表示モニタ23に、発送か受取かの選択画面を表示する(表示901)。利用者は、表示モニタ23の「発送」をタッチすることで、発送を選択する(S5)。
【0049】そして、配送ボックス1は、ICカード3のカード情報3aより、定期券の利用区間の配送ボックス1が設置されている駅を表示パネル23に表示する(S7、表示903)。このとき、表示する駅は、例えば、発駅、着駅、経由駅等を優先的に表示する。また、利用者は、表示されている駅の中に配送先駅が無い場合には、表示モニタ23に表示された「他駅」をタッチし、配送先駅を表示させる。さらに、「他駅」をタッチした場合には、まず路線が表示され、そして路線を選択すると、その路線の駅が表示されるようにする。そして利用者は、表示された駅の中から、配送先駅をタッチすることで、配送先駅を選択する(S9)。このようにすることで、利用者は、多数存在する駅から配送先駅を容易に選択することができる。
【0050】配送ボックス1は、利用者により配送先駅が選択されると、表示モニタ23に荷物の大きさの選択画面を表示する(表示905)。ここでは、S、M、Lの3種類の中から選択する。そして、利用者は、持ち込んだ荷物の大きさに合わせて、荷物の大きさを選択する(S11)。
【0051】そして、配送ボックス1は、入力された利用者情報例えば氏名、電話番号(図4参照)、配送先駅、荷物の大きさを表示モニタ23に表示し、利用者に表示された内容で正しいかの確認を求める(S13、表示907)。利用者は、表示された内容を確認し、表示モニタ23に表示された「確認」をタッチする(S15)。また、表示された内容に修正がある場合には、表示モニタ23に表示された「修正」をタッチし、内容の修正を行なう。
【0052】利用者による確認が行なわれると、配送ボックス1は、荷物の配送先、荷物の大きさ、氏名、電話番号、ICカード3のカードID番号等の情報即ち荷物情報を送付用紙印刷部22により送付用紙に印刷する。また、同時に、配送ボックス1は、上記の荷物情報を変換して生成したバーコードを送付用紙に印刷する。印刷された送付用紙は、送付用紙印刷部22の放出口22aより利用者に受け渡される。そして、同時に配送ボックス1は、選択された荷物の大きさの荷物ロッカー11の扉13のロックを解除する(S17)。さらに、配送ボックス1は、送付用紙を荷物に貼ってロックを解除した荷物ロッカー11に入れ、扉13を閉めるように案内する案内表示を表示モニタ23により表示する(表示909)。ロックを解除した荷物ロッカー11は、例えばそれぞれの荷物ロッカー11に付された番号により案内される。
【0053】利用者は、表示モニタ23の案内表示に従って、荷物に送付用紙を貼り付け、指定された荷物ロッカー11に入れて扉13を閉める(S19)。そして、扉13は、ロック機構14によりロックされる。配送ボックス1は、利用者に対して、表示モニタ23により、荷物の発送手続きが終了した旨例えば「ありがとうございました」と表示する(表示911)。
【0054】そして、配送ボックス1は、利用者より発送を委託された荷物情報を駅サーバ101に伝送する(図8中801)。駅サーバ101は、配送ボックス1から荷物情報が伝送されると、必要に応じて宅配業者に荷物の宅配を依頼する。この場合、駅サーバ101は、宅配業者サーバ105へ、配送ボックス1に宅配を委託したい荷物がある旨と、配送ボックス1の設置された駅名を送信する(図8中802)。」(段落【0043】ないし【0054】)

d 「【0071】さらに、以上では、配送システム100は、駅から駅への配送について説明したが、例えば、駅サーバ101に、配送先の住所例えば自宅の住所等を事前に登録保存しておくことにより、通常の宅急便(登録商標)(料金後払い)と同様に、自宅等に直接荷物を配送することも可能である。住所を登録した場合には、前述の利用者による配送先駅の選択の際に、登録した住所を表示し、利用者が選択できるように構成するとよい。また、ICカード3のカード情報3aに、利用者の住所を記録するようにしてもよい。さらに、利用者の住所以外の住所を記録できるように構成してもよい。この場合には、上記のように駅サーバ101に住所を保存しておく必要がなく、配送システム1をより単純化できるだけでなく、簡便に利用できるものとすることができる。」(段落【0071】)

(イ)上記(ア)及び図面の記載から分かること
a 上記(ア)aないしd(特に、段落【0001】)並びに図1、2及び7ないし9の記載によれば、刊行物1には、配送ボックス1が記載されていることが分かる。

b 上記(ア)b及びc(特に、段落【0021】、【0022】及び【0050】)並びに図1の記載によれば、配送ボックス1は、ロック機構14を備え荷物が入れられる収納空間のサイズの異なる2種類以上の大きさの荷物ロッカー11を備えていることが分かる。

c 上記(ア)b及びc(特に、段落【0024】、【0034】及び【0050】)並びに図1、2及び9の記載によれば、配送ボックス1は、荷物の大きさの選択画面を表示する表示モニタ23を有し荷物の大きさに適応した前記荷物ロッカー11を選択するためのタッチパネル23aを備えていることが分かる。

d 上記(ア)a及びb(特に、段落【0005】、【0006】、【0024】ないし【0026】及び【0052】)並びに図2ないし4及び9の記載によれば、配送ボックス1は、荷物の配送先、荷物の大きさ、氏名、電話番号、ICカード3のカードID番号等の荷物情報を電子データとして受付ける受付手段を備えていることが分かる。
ここで、荷物情報を電子データとして受付ける受付手段は、明細書中に明記されていないが、荷物情報が、カードリーダライタ21により読み取られたICカード3のカード情報3aである荷物の送り主に関する情報とタッチパネル23aより入力された荷物の配送先情報とからなり、荷物情報が変換されてバーコード情報が生成され、また、荷物情報が送付用紙に印刷されていることから、配送ボックス1が、荷物情報を電子データとして受付ける受付手段を備えていることは明らかである。

e 上記(ア)b及びc(特に、段落【0026】及び【0052】)並びに図2ないし4及び9の記載によれば、配送ボックス1は、荷物情報の受付毎に、対応するバーコード情報を生成するバーコード生成部を備えていることが分かる。

f 上記(ア)c(特に、段落【0054】)並びに図2及び7ないし9の記載によれば、配送ボックス1は、受付手段で受付けた荷物情報を通信回線2を介して駅サーバ101に送信する通信部を備えていることが分かる。

(ウ)引用発明
上記(ア)及び上記(イ)を総合して、本願補正発明の表現に倣って整理すると、刊行物1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「ロック機構14を備え荷物が入れられる収納空間のサイズの異なる2種類以上の大きさの荷物ロッカー11と、荷物の大きさの選択画面を表示する表示モニタ23を有し荷物の大きさに適応した前記荷物ロッカー11を選択するためのタッチパネル23aと、荷物の配送先、荷物の大きさ、氏名、電話番号、ICカード3のカードID番号等の荷物情報を電子データとして受付ける受付手段と、荷物情報の受付毎に、対応するバーコード情報を生成するバーコード生成部と、前記受付手段で受付けた荷物情報を通信回線2を介して駅サーバ101に送信する通信部と、を備えて成る配送ボックス1。」

イ 刊行物2
(ア)刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の原出願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-219742号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
a 「【0004】
しかしながら、従来のロッカーシステムにおいては、貨物を受け取って保管するのみで、発送することができない。また、保管する貨物の大きさに対応できるように収納容積の異なる複数のロッカーで構成する場合があるが、このような構成のままで仮に発送できるようにした場合、利用者が差し出す貨物の大きさが小さいにも拘わらず大きな収納容積のロッカーを不用意に選択し、ロッカー収納スペースの効率を下げてしまう虞が考えられる。
【0005】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、貨物を発送するための引受けができるとともに、差し出された貨物の大きさに見合った収納容積の空きボックスを選択することができるロッカーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は下記構成により達成される。
本発明のロッカーシステムは、貨物を収納する収納容積の異なる複数の収納ボックスと、少なくとも貨物の寸法を測定する測定手段と、前記測定手段で測定された前記貨物の寸法から該貨物を収納できる最小容積の空き収納ボックスを前記複数の収納ボックスの中から選択し該収納ボックスを開錠する制御手段と、を備える。
【0007】
上記ロッカーシステムにおいて、前記制御手段は、前記測定手段による少なくとも前記貨物の寸法の測定が終了するまでは選択された前記収納ボックスに対する開錠制御を行わない。
【0008】
上記ロッカーシステムにおいて、前記測定手段は、前記貨物の形状や寸法及び重量を測定し、前記制御手段は、前記測定手段で測定された前記貨物の形状や寸法及び重量のうちの少なくとも1つと、前記制御手段に入力された受取人情報から前記貨物の発送に関する料金を計算し、前記料金及び前記受取人情報を印刷する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のロッカーシステムでは、持ち込まれた貨物の少なくとも寸法を測定できるので、配送料金の算出が可能となり、貨物を発送するための引受けが可能となる。また、少なくとも貨物の寸法の測定結果から該貨物を収納できる最小の容積の空き収納ボックスを選択するので、利用者が差し出す貨物の大きさが小さいにも拘わらず、大きな空き収納ボックスを不用意に選択してしまうのを防止することができ、ロッカー収納スペースの効率を向上させることができる。」(段落【0004】ないし【0009】)

b 「【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係るロッカーシステムの外観を示す斜視図である。また、図2は、本実施の形態に係るロッカーシステムの概略構成を示すブロック図である。図1において、本実施の形態のロッカーシステム1は、測定部2と、引受ボックス3と、決済・操作部4とを備えて構成されている。測定部2は、図3に示す3次元寸法測定部(測定手段)21と、モータコントロール部22と、3次元測定台動作コントロール部23と、重量測定部24とを備えているとともに、図2に示す格納指示表示部26を備えている。3次元寸法測定部21は、貨物の形状、寸法(貨物の3辺=縦・横・奥行寸法)及び重量を自動測定するものであり、その測定結果をロッカーシステム1の決済・操作部4に送る。3次元寸法測定部21とその他の各部の詳細については後述する。引受ボックス3は、収納容積の異なる複数の収納ボックス31,32,33及び34から構成されている。
【0012】
収納ボックス31,32,33及び34は、31<32<33<34の順で収納容積が大きくなっている。各収納ボックス31?34には施錠機構(図示略)が内蔵されており、CPU10(図2参照、制御手段)によって施錠と開錠の制御が行われる。決済・操作部4は、測定部2で測定された貨物の形状、寸法及び重量と、該貨物を持ってきた利用者が入力した発送先の住所とを元に料金計算を行い、現金、カード(クレジットカード)又はICカード機能を内蔵した携帯電話で決済処理を行う。決済処理後は、貨物の寸法測定結果から該貨物を収納できる最小容積の空き収納ボックスの1つを選択しそれを開錠する。例えば書状のような小物では、最小容積の収納ボックス31が開錠対象となり、そのうちの1つが開錠される。
【0013】
また、決済・操作部4は、決済終了後、図4に示すような「お預り証兼領収書」を2枚発行する。このうちの1枚は利用者が受け取り、残りの1枚は発送伝票の代わりとなり貨物とともに収納ボックス内に入れる。図1に戻り、決済・操作部4の本体前面には、液晶パネル等のディスプレイを使用した表示部41と、表示部41上に設けられたタッチパネル部42と、カメラ43と、帳票印字部44と、紙幣投入口45と、硬貨投入口46と、カード挿入口47と、赤外線通信部48と、電波通信部49と、人体検知センサ50と、つり銭排出口51とが設けられている。また、カメラ43にて撮像した画からパターン認識等で人物を検出するようにすれば、人体感知センサ50を省いても良い。
【0014】
測定部2の本体前面には格納指示表示部26が設けられている。また、測定部2には、大小2つの貨物測定ボックス28及び29と、各貨物測定ボックス28及び29内に設けられる3次元寸法測定部21(図3参照)とが設けられている。この場合、貨物測定ボックス28には「書状」用の3次元寸法測定部21が設けられており、貨物測定ボックス29には「書籍・荷物」用の3次元寸法測定部21が設けられている。格納指示表示部26は、貨物の測定開始を指示するものであり、利用者はこの指示を確認することで、発送しようとする貨物の大きさに応じた貨物測定ボックス28又は貨物測定ボックス29を選択して該貨物をその中に入れる。」(段落【0011】ないし【0014】)

c 「【0017】
次に、図2において、CPU(中央処理装置)10は、ロッカーシステム1全体を制御するものであり、メモリ11に書き込まれたプログラムに従って動作する。記憶部12は、カメラ43で撮像された撮像データを記憶する。通信部13は、インターネットなどのネットワークや公衆電話網(一般回線8)を通じてCPU10と外部装置との間の双方向通信を行い、外部装置による遠隔制御を可能とする。すなわち、ロッカーシステム1のCPU10は、外部装置からの指令に従って動作し、測定処理、決済処理、伝票作成処理、各種ボックスの施錠・開錠処理などを行う。決済・操作部4の表示部41は、ロッカーシステム1を使用して貨物7を発送するための手順を説明するためのメッセージの表示に使用される。該メッセージは予めメモリ11に格納されており、CPU10によって読み出され表示される。
【0018】
扉制御部35は、CPU10からの指令に従って、引受ボックス3の収納ボックス31?34それぞれの扉の開閉を制御する。格納物検知部36は、引受ボックス3の収納ボックス31?34それぞれにおける貨物の有無を検知する。この検知結果はCPU10に送られる。タッチパネル部42は、決済・操作部4を操作するための各種入力を行うものである。カメラ43は、ロッカーシステム1の利用者を撮像するためのものである。カメラ43で撮像して得られた画像データは記憶部12に記憶される。人体検知センサ50は、ロッカーシステム1の利用者を検知するものである。CPU10は、人体検知センサ50の出力に基づいて利用者を検知し、引受処理を開始する。帳票印字部44は、お預り証兼領収書を印字するものである。この場合、上述したように、利用者控え用と運送業者発送用の2枚印字する。赤外線通信部48は、赤外線通信機能を内蔵した携帯電話と赤外線を使用した双方向通信を行うためのものである。電波通信部49は、ICカード機能を内蔵した携帯電話と電波を使用した双方向通信を行うためのものである。
【0019】
次に、上記構成のロッカーシステム1の動作について説明する。図5及び図6は、本実施の形態に係るロッカーシステムの動作を示すフロー図である。まず、利用者がロッカーシステム1に近づくと人体検知センサ50で検知し、表示部41の画面を「初期画面」に切り替えて、画面表示(あるいは音声など)でシステムの利用方法をガイダンス(案内)する(ステップST100)。なお、利用者がいない場合には表示(あるいは音声など)で「広告・宣伝など」に利用しても良い。初期画面から「利用種別選択」が可能であり、「利用種別すなわち書状を送るか荷物を送るか」のいずれかが選択されると、危険物投げ込みやいたずら防止などを目的とし、利用者の顔を中心とした画像をカメラ43で撮像し、記憶部12に保存する。顔写真画像は、利用時間、利用場所情報と一緒に保存することにより、利用者を特定する場合の重要な情報とすることができる。
【0020】
次いで、利用者(差出人)を特定するため、利用者の氏名、住所、電話番号(携帯電話番号)などの個人情報と貨物(書状又は荷物)の送付先を特定するため、携帯電話に予め登録してある差出人及び受取人の個人情報を赤外線通信部48又は電波通信部49によって取り込む(ステップST101)。ここで、例えば、ICカード機能内蔵の携帯電話を使用して個人情報をロッカーシステム1へデータ転送する場合、利用者の携帯電話のアドレス画面から「サブメニュー」、「赤外線送信」、「実行」ボタン押下?「送信終了」を操作する。これにより携帯電話に登録されている個人情報がロッカーシステム1へ転送される。次に、受取人情報をロッカーシステム1へ転送するために、携帯電話の受取人アドレスから差出人情報同様の手段で受取人特定情報をロッカーシステム1へ転送する。これまでの操作を行うことにより差出人情報と受取人情報が特定できる。
【0021】
次に、何を送付するかを特定することが必要となり、利用者は操作表示画面から書状・荷物などの種別を選択する。ロッカーシステム1には書状(軽量)用と書籍・荷物(中・重量)用の2つの3次元寸法測定部21が設けられており、これらの3次元寸法測定部21で書状、書籍・荷物の形状や寸法及び重量を測定する。例えば、種別選択画面の中から「書籍・荷物」が選択されると、2つの3次元寸法測定部21のうち「書籍・荷物」用の3次元寸法測定部21を選択し、それが設けられた貨物測定ボックス29を開錠して扉を開ける(ステップST102)。利用者が、差出する「書籍・荷物」(以下、貨物7)を貨物測定ボックス29内の指定範囲に置くと、「手を離してください」などの表示(あるいは音声出力)を行う。この表示を行った後、タッチパネル部42にある確認ボタン(図示略)が押下されたかどうかを判定し(ステップST103)、確認ボタンが押下されなければ、押下されるまでこの処理を繰り返し、確認ボタンが押下されれば、貨物測定ボックス29の扉を閉めた後、「書籍・荷物」用の3次元寸法測定部21を動作させて、貨物7の形状や寸法及び重量を測定する(ステップST104)。なお、手を離したかどうかはロッカーシステム1内のタイマ(図示略)で行っても良いが、測定部2内の重量測定部24からの重量データの上下変動値を検出して判断することが望ましい。
【0022】
配送する貨物7の形状や寸法及び重量の測定を行った後、受取人特定情報から送り先エリアを確認し決定する(ステップST105)。送り先エリアを選択・決定した後、料金を計算する。すなわち、利用者の携帯電話から転送された差出人特定情報及び受取人特定情報と、3次元寸法測定部21で測定した貨物7の形状や寸法及び重量と、予め定められた利用料金テーブルとから利用料金を算出する(ステップST106)。そして、算出した利用料金を差出人特定情報と受取人特定情報及び荷物情報などともに表示部41に表示する(ステップST107)。これらの情報を利用者が確認すると、貨物測定ボックス29の扉を開き、3次元寸法測定部21から荷物を取り出すように表示(あるいは音声)で案内する。
【0023】
次いで、決済を行うための案内を行う。すなわち、現金決済、カード決済、ICカード内蔵の携帯電話による決済のうち、希望するサービスを選択するよう表示(あるいは音声)で案内する(ステップST108)。そして、現金が投入されたかどうか判定し(ステップST109)、現金が投入された場合は利用料金以上かどうかを判定する(ステップST110)。利用料金未満であれば料金不足情報を表示し(ステップST111)、利用料金以上であれば決済処理を行う(ステップST116)。一方、現金が投入されていない場合は、カードが挿入されたかどうか判定し(ステップST112)、カードが挿入された場合はカードの読み取りを行う(ステップST113)。カードの読み取りを行った後、決済処理を行う(ステップST116)。また、カードが挿入されていない場合はICカード機能を内蔵した携帯電話かどうか判定し(ステップST114)、ICカード機能を内蔵した携帯電話であれば決済処理を行う(ステップST116)。現金でもカードでも携帯電話でもなければ利用サービスを中止する(ステップST115)。
【0024】
決済処理を行った後、空ボックス情報表示・選択を行う(ステップST117)。すなわち、貨物7の形状や寸法及び重量測定結果に基づき、預り貨物7が収納可能な最もサイズの小さい空収納ボックスの扉を開けるとともに、選択した収納ボックスを表示(あるいは音声)で案内する。ここで、該当する扉の近くに設けたランプ(図示略)を点滅させるようにしても良い。利用者はこの案内により、扉が開いた収納ボックスに貨物7を収納して扉を閉める。空ボックス情報表示・選択を行った後、帳票印字部44からお預り証兼領収書を印字出力する(ステップST118)。ロッカーシステム1で預かった証として、引き受けた貨物7の形状、寸法(貨物の3辺=縦・横・奥行寸法)及び重量、利用料金、利用日時、利用場所、問い合わせ情報や利用者を特定する氏名、住所、電話番号などや、受取人を特定する氏名、住所、電話番号などを印字出力する。前述したように、1つの引受処理において同じ内容の2枚の帳票(お預り証兼領収書と荷物用帳票)を印刷し、1枚は貨物と一緒に収納ボックスに入れるものであり、1枚は預り利用者の控えとして保管するものである。なお、利用者が預り控えが不要な場合には、印字枚数を選択するようにしても良い。また、これらの個人特有情報をさらに特定するために、利用者の顔写真を同帳票上に印字することも可能であり、個人情報保護を考慮し、2次元コード化、暗証コード化して印字出力することも可能であるようにシステム内で考慮しておくことが望ましい。
【0025】
お預り証兼領収書を印字出力した後、現金決済かどうかを判定し(ステップST119)、現金決済であってつり銭があればつり銭排出口51から排出する(ステップST120)。現金決済、カード決済又は携帯電話決済が終わった後、貨物7が入れられたロッカーの扉を施錠するために、暗証番号入力指示を表示(あるいは音声)で案内する(ステップST121)。暗証番号は、例えば印字出力したお預り証兼領収書に印字された荷物番号(図4の場合、A963852)である。暗証番号が入力されたかどうか判定し(ステップST122)、暗証番号が入力された場合、確認ボタンが押下されたかどうか判定する(ステップST123)。暗証番号が入力された後、確認ボタンが押下された場合、扉を施錠する(ステップST124)。以上により、これで引受測定処理?お預り証兼領収書発行処理?ロッカーへの収納が終了する。
【0026】
このように本実施の形態のロッカーシステム1によれば、貨物7を収納する収納容積の異なる複数の施錠機構を有する収納ボックス31?34を備えるとともに、貨物7の形状や寸法及び重量を測定するための3次元寸法測定部21を備え、3次元寸法測定部21の測定結果から貨物7を収納できる最小容積の空き収納ボックスを選択するので、貨物7を発送するための引受けが可能となる。また、利用者が差し出す貨物7の大きさが小さいにも拘わらず、大きな空き収納ボックスを不用意に選択してしまうのを防止できるので、ロッカー収納スペースの効率を向上させることができる。また、持ち込まれた貨物7の形状や寸法及び重量の測定が終了するまでは、選択された収納ボックスを開錠しないので、貨物7を勝手に収納ボックスに入れられるのを防止できる。」(段落【0017】ないし【0026】)

d 「【0028】
本発明は、貨物を発送するための引受けができるとともに、差出された貨物の大きさに見合った収納容積の空き収納ボックスを選択することができるといった効果を有し、駅構内、駅構内移動通路、団地の集会所、マンションの入口などの共有スペースあるいは無人販売所等の場所に設置するロッカーなどへの適用が可能である。」(段落【0028】)

(イ)上記(ア)及び図面の記載から分かること
a 上記(ア)a、b、c及びd(特に、段落【0005】、【0011】、【0020】及び【0028】)並びに図1の記載によれば、刊行物2には、貨物7を発送するためのロッカーシステム1が記載されていることが分かる。

b 上記(ア)a、b及びc(特に、段落【0004】、【0005】、【0011】、【0012】及び【0026】)並びに図1の記載によれば、貨物7を発送するためのロッカーシステム1は、収納容積の異なる複数の収納ボックス31?34を備えていることが分かる。

c 上記(ア)a、b及びc(特に、段落【0006】、【0011】及び【0021】)並びに図1ないし3の記載によれば、貨物7を発送するためのロッカーシステム1は、貨物7の寸法を自動で計測する3次元寸法測定部21を備えていることが分かる。

d 上記(ア)a、b及びc(特に、段落【0006】、【0012】、【0017】及び【0024】)並びに図1、2、5及び6の記載によれば、貨物7を発送するためのロッカーシステム1は、3次元寸法測定部21で計測された貨物7の寸法に基づいて自動で一つの貨物7が収納可能な最もサイズの小さい空収納ボックスを選択して表示手段に表示する収納ボックスの選択手段を備えていることが分かる。

(ウ)刊行物2記載の技術事項
上記(ア)及び(イ)を総合すると、刊行物2には、次の事項からなる技術(以下、「刊行物2記載の技術事項」という。)が記載されていると認める。
「貨物7を発送するためのロッカーシステム1において、収納容積の異なる複数の収納ボックス31?34と、貨物7の寸法を自動で計測する3次元寸法測定部21と、前記3次元寸法測定部21で計測された貨物7の寸法に基づいて自動で一つの貨物7が収納可能な最もサイズの小さい空収納ボックスを選択する収納ボックスの選択手段を備える技術。」

(3)対比
本願補正発明(以下、「前者」ともいう。)と引用発明(以下、「後者」ともいう。)とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者における「ロック機構14」は、前者における「施錠装置」に相当し、以下同様に、「2種類以上の大きさ」は「複数種類の大きさ」に、「表示モニタ23」は「表示手段」に、「タッチパネル23a」は「操作部」に、「受付手段」は「発送受付手段」に、「駅サーバ101」は「管理サーバ」に、「通信部」は「通信部」に、それぞれ相当する。

・後者における「荷物」は、刊行物1の段落【0071】の記載によれば、通常の宅急便と同様に、直接荷物を配送することも想定されているから、前者における「宅配物」に相当する。
そして、後者における「荷物ロッカー11」は、前者における「宅配物収納部」に相当する。
また、後者における「荷物の大きさ」は、前者における「宅配物のサイズ 」に相当する。
また、後者における「荷物の配送先、荷物の大きさ、氏名、電話番号、ICカード3のカードID番号等の荷物情報」は、前者における「宅配物の発送情報」に相当し、後者における「荷物情報」は、前者における「発送情報」に相当する。
さらに、後者における「配送ボックス1」は、前者における「宅配ボックス装置」に相当する。

・後者における「通信回線2」は、刊行物1の段落【0043】の記載によれば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、電話回線等を含むのであるから、前者における「通信ネットワーク」に相当する。

・後者における「荷物の大きさの選択画面を表示する表示モニタ23を有し荷物の大きさに適応した前記荷物ロッカー11を選択するためのタッチパネル23a」は、荷物の大きさの選択画面が、複数のサイズの荷物ロッカー11から一のサイズの荷物ロッカー11を選択させるための画面といえるから、前者における「複数の前記宅配物収納部のサイズ・利用状況を表示する表示手段を有し宅配物のサイズに適応した前記宅配物収納部を選択するための操作部」に、「複数の宅配物収納部のサイズを表示する表示手段を有し宅配物のサイズに適応した前記宅配物収納部を選択するための操作部」という限りにおいて一致する。

・後者における「荷物情報の受付毎に、対応するバーコード情報を生成するバーコード生成部」は、前者における「発送情報の受付毎に、対応する宅配物を個々に特定する識別コードを電子データとして生成する識別コード生成部」に、「発送情報の受付毎に、所定の識別コードを生成する識別コード生成部」という限りにおいて一致する。

・後者における「前記受付手段で受付けた荷物情報を通信回線2を介して駅サーバ101に送信する通信部」は、前者における「前記発送受付手段で受付けた発送情報及び前記識別コード生成部で生成した識別コード情報を通信ネットワークを介して管理サーバに送信する通信部」に、「前記発送受付手段で受付けた発送情報を通信ネットワークを介して管理サーバに送信する通信部」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「施錠装置を備え宅配物が入れられる収納空間のサイズの異なる複数種類の大きさの宅配物収納部と、複数の前記宅配物収納部のサイズを表示する表示手段を有し宅配物のサイズに適応した前記宅配物収納部を選択するための操作部と、宅配物の発送情報を電子データとして受付ける発送受付手段と、発送情報の受付毎に、所定の識別コードを生成する識別コード生成部と、前記発送受付手段で受付けた発送情報及び前記識別コード生成部で生成した識別コード情報を通信ネットワークを介して管理サーバに送信する通信部と、を備えて成る宅配ボックス装置。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点1]
「複数の宅配物収納部のサイズを表示する表示手段を有し宅配物のサイズに適応した前記宅配物収納部を選択するための操作部」に関し、本願補正発明においては、「複数の前記宅配物収納部のサイズ・利用状況を表示する表示手段を有し宅配物のサイズに適応した前記宅配物収納部を選択するための操作部」であるのに対して、引用発明においては、「荷物の大きさの選択画面を表示する表示モニタ23を有し荷物の大きさに適応した前記荷物ロッカー11を選択するためのタッチパネル23a」である点(以下、「相違点1」という。)。

[相違点2]
「発送情報の受付毎に、所定の識別コードを生成する識別コード生成部」に関し、本願補正発明においては、「発送情報の受付毎に、対応する宅配物を個々に特定する識別コードを電子データとして生成する識別コード生成部」であるのに対して、引用発明においては、「荷物情報の受付毎に、対応するバーコード情報を生成するバーコード生成部」である点(以下、「相違点2」という。)。

[相違点3]
本願補正発明においては、「宅配物の大きさを自動で計測する自動計測手段」と、「前記自動計測手段で計測された宅配物の大きさに基づいて自動で一つの前記宅配物収納部を決定して前記表示手段に表示する収納部決定手段」と、を備えているのに対して、引用発明においては、そのような手段を備えていない点(以下、「相違点3」という。)。

[相違点4]
「前記発送受付手段で受付けた発送情報を通信ネットワークを介して管理サーバに送信する通信部」に関し、本願補正発明においては、「前記発送受付手段で受付けた発送情報及び前記識別コード生成部で生成した識別コード情報を通信ネットワークを介して管理サーバに送信する通信部」であるのに対して、引用発明においては、「前記受付手段で受付けた荷物情報を通信回線2を介して駅サーバ101に送信する通信部」である点(以下、「相違点4」という。)。

[相違点5]
本願補正発明においては、「受付確認情報を生成して発送人端末装置に送信する受付確認情報生成部」を備えているのに対して、引用発明においては、そのような構成を有しているか否か不明である点(以下、「相違点5」という。)。

(4)判断
ア 相違点の検討
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
複数の荷物収納部を有する荷物収納装置において、複数の前記荷物収納部の利用状況を表示する表示手段を有し前記宅配物収納部を選択するための操作部を備えることは、本件出願の原出願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。必要であれば、特開平8-273051号公報(特に、段落【0033】及び図10)及び特開平8-232517号公報(特に、段落【0006】及び【0020】ないし【0022】並びに図4)を参照。)であり、周知技術1により、荷主は空いている荷物収納部のうち都合のよいものを選択することができ、サービス向上が図れることは明らかである。
そうすると、引用発明において、周知技術1を適用することにより、複数の荷物ロッカー11(本願補正発明の「宅配物収納部」に相当。以下、括弧内同様。)のサイズ・利用状況を表示する表示モニタ23(表示手段)を有し荷物(宅配物)のサイズに適応した前記荷物ロッカー11を選択するためのタッチパネル23a(操作部)を備え、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)相違点2及び4について
配送業務において、荷物の配送の受付時に、受付番号等の荷物を特定する識別コードを付与し、当該識別コードを用いて配送の管理を行うことは、本件出願の原出願の出願前にごく普通に行われていること(必要であれば、特開2004-83148号公報(特に、段落【0021】、【0031】、【0036】、【0046】ないし【0048】及び【0051】)及び特開2005-240375号公報(特に、段落【0110】及び【0117】)を参照。以下、「慣用手段」という。)である。
そうすると、引用発明に、配送業務の技術分野において共通する慣用手段を適用し、配送する荷物を受付ける配送ボックス1(本願補正発明の「宅配ボックス装置」に相当。以下、括弧内同様。)において、荷物情報の受付毎に、対応する荷物(宅配物)を個々に特定する識別コードを電子データとして生成する識別コード生成部と、受付手段(発送受付手段)で受付けた荷物情報(発送情報)及び前記識別コード生成部で生成した識別コード情報を通信回線2(通信ネットワーク)を介して駅サーバ101(管理サーバ)に送信する通信部を備え、上記相違点2及び4に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(ウ)相違点3について
引用発明、刊行物2記載の技術事項及び本願補正発明は、何れも、宅配ボックス装置の技術分野に属するものである。
そこで、上記相違点3の検討に先立ち、刊行物2記載の技術事項を本願補正発明の用語又はその上位概念の用語で表現するために、本願補正発明と刊行物2記載の技術事項(以下、「後者2」ともいう。)との対応関係について検討する。
・後者2における「貨物7」は前者における「宅配物」に相当し、以下同様に、「ロッカーシステム1」は「宅配ボックス装置」に、「収納容積の異なる複数の収納ボックス31?34」は「宅配物が入れられる収納空間のサイズの異なる複数種類の大きさの宅配物収納部」に、「寸法」は「大きさ」に、「3次元寸法測定部21」は「自動計測手段」に、「収納ボックスの選択手段」は「収納部決定手段」に、それぞれ相当する。
・後者2の「自動で一つの貨物7が収納可能な最もサイズの小さい空収納ボックスを選択する」は、自動で一つの種類の大きさの収納ボックスを決定し、決定した種類の大きさの収納ボックスの空収納ボックスから自動で一つの収納ボックスを選択しているといえるから、前者の「自動で一つの前記宅配物収納部を決定」するに、相当する。
そうすると、刊行物2記載の技術事項は、本願補正発明の用語又はその上位概念の用語で表現すると、次のとおりの技術(以下、「刊行物2記載の技術」という。)ということができる。
「宅配物を発送するための宅配ボックス装置において、宅配物が入れられる収納空間のサイズの異なる複数種類の大きさの宅配物収納部と、宅配物の大きさを自動で計測する自動計測手段と、前記自動計測手段で計測された宅配物の大きさに基づいて自動で一つの前記宅配物収納部を決定する収納部決定手段を備える技術。」
そして、刊行物2記載の技術は、宅配ボックス装置における収納スペースの効率を向上するものである(刊行物2の段落【0009】を参照。)ところ、引用発明においても、収納スペースの効率の向上は、当然に内在する課題であるといえるから、引用発明において、刊行物2記載の技術を適用し、自動計測手段で計測された宅配物の大きさに基づいて自動で一つの前記宅配物収納部を決定する収納部決定手段を備えることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、上記(ア)で述べたとおり、引用発明において、周知技術1に基づき、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たことであるところ、表示手段には荷主が選択可能な宅配物収納部が表示されることになるのであるから、引用発明において、収納部決定手段を備える際、収納部決定手段により、決定した一つの種類の大きさの宅配物収納部を表示手段に表示させることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そうすると、引用発明において、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、刊行物2記載の技術及び周知技術1に基づき、当業者が容易に想到し得たことである。

(エ)相違点5について
宅配ボックス装置において、宅配物の発送を受け付けた際に、受付確認情報を生成して発送人端末装置に送信する手段を備えることは、本件出願の原出願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。必要であれば、特開2002-367029号公報(特に、段落【0021】ないし【0023】を参照。)であり、これにより宅配物の配送についての契約上のトラブルを未然に防げることは明らかである。
一方、引用発明においても、宅配物の配送についての契約上のトラブルを未然に防ぐことは当然に内在する課題といえるから、引用発明において、周知技術2を適用し、受付確認情報を生成して発送人端末装置に送信する受付確認情報生成部を備え、上記相違点5に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 効果について
そして、本願補正発明は、全体としてみても、引用発明、刊行物2記載の技術、周知技術1、周知技術2及び慣用手段から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

ウ まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2記載の技術、周知技術1、周知技術2及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反し、仮にそうでないとしても、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成27年7月21日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(「第2[理由]1(1)」を参照。)

2 引用刊行物
原査定の理由に引用された刊行物1及びその記載事項、並びに、引用発明は、前記「第2[理由]3(2)ア」に記載したとおりであり、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2及びその記載事項、並びに、刊行物2記載の技術事項は、前記「第2[理由]3(2)イ」に記載したとおりであり、刊行物2記載の技術は、前記「第2[理由]3(4)ア(ウ)」に記載したとおりである。

3 対比
本願発明と引用発明とを、前記「第2[理由]3(3)」の検討を踏まえて対比すると、両者は、
「施錠装置を備え宅配物が入れられる収納空間のサイズの異なる複数種類の大きさの宅配物収納部と、宅配物の発送情報を電子データとして受付ける発送受付手段と、発送情報の受付毎に、所定の識別コードを生成する識別コード生成部と、前記発送受付手段で受付けた発送情報及び前記識別コード生成部で生成した識別コード情報を通信ネットワークを介して管理サーバに送信する通信部と、を備えて成る宅配ボックス装置。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点1’]
「発送情報の受付毎に、所定の識別コードを生成する識別コード生成部」に関し、本願発明においては、「発送情報の受付毎に、対応する宅配物を個々に特定する識別コードを電子データとして生成する識別コード生成部」であるのに対して、引用発明においては、「荷物情報の受付毎に、対応するバーコード情報を生成するバーコード生成部」である点(以下、「相違点1’」という。)。

[相違点2’]
本願発明においては、「宅配物の大きさを自動で計測する自動計測手段」と、「前記自動計測手段で計測された宅配物の大きさに基づいて自動で一つの前記宅配物収納部を決定する収納部決定手段」と、を備えているのに対して、引用発明においては、そのような手段を備えていない点(以下、「相違点2’」という。)。

[相違点3’]
「前記発送受付手段で受付けた発送情報を通信ネットワークを介して管理サーバに送信する通信部」に関し、本願発明においては、「前記発送受付手段で受付けた発送情報及び前記識別コード生成部で生成した識別コード情報を通信ネットワークを介して管理サーバに送信する通信部」であるのに対して、引用発明においては、「前記受付手段で受付けた荷物情報を通信回線2を介して駅サーバ101に送信する通信部」である点(以下、「相違点3’」という。)。

[相違点4’]
本願発明においては、「受付確認情報を生成して発送人端末装置に送信する受付確認情報生成部」を備えているのに対して、引用発明においては、そのような構成を有しているか否か不明である点(以下、「相違点4’」という。)。

4 判断
(1)相違点の検討
上記相違点について検討する。
ア 相違点1’及び3’について
相違点1’及び3’は、前記「第2[理由]3(3)」で挙げた相違点2及び4と同様の内容であり、前記「第2[理由]3(4)ア(イ)」の検討を踏まえると、引用発明において、慣用手段を適用することにより、上記相違点1’及び3’に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2’について
相違点2’は、本願発明において、「前記表示手段に表示」という特定がないこと以外、前記「第2[理由]3(3)」で挙げた相違点3と同様の内容であり、前記「第2[理由]3(4)ア(ウ)」の検討を踏まえると、引用発明において、刊行物2記載の技術を適用することにより、上記相違点2’に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点4’について
相違点4’は、前記「第2[理由]3(3)」で挙げた相違点5と同様の内容であり、前記「第2[理由]3(4)ア(エ)」の検討を踏まえると、引用発明において、周知技術2を適用することにより、上記相違点4’に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、刊行物2記載の技術、周知技術2及び慣用手段から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の技術、周知技術2及び慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-07-13 
結審通知日 2016-07-19 
審決日 2016-08-01 
出願番号 特願2014-126332(P2014-126332)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
P 1 8・ 572- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮下 浩次  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 槙原 進
梶本 直樹
発明の名称 宅配ボックス装置  
代理人 木村 豊  
代理人 西川 惠清  
代理人 北出 英敏  
代理人 水尻 勝久  

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