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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1319543
審判番号 不服2015-15840  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-27 
確定日 2016-09-13 
事件の表示 特願2013-120767「適応プロセス重要度」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月26日出願公開,特開2013-257873〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成25年6月7日(パリ条約による優先権主張2012年6月8日 アメリカ合衆国)の外国語書面出願であって,
平成25年8月2日付けで特許法第36条の2第2項の規定による外国語書面,及び,外国語要約書面の日本語による翻訳文が提出されると共に同日付けで審査請求がなされ,平成26年9月1日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成27年3月3日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成27年4月22日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;平成27年4月27日),これに対して平成27年8月27日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成27年12月11日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされたものである。

第2.平成27年8月27日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年8月27日付け手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容
平成27年8月27日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成27年3月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「【請求項1】
1つ以上の処理ユニットが第1のデーモンプロセスの重要度を変更する方法を遂行するようにさせる実行可能なインストラクションを有する非一時的マシン読み取り可能な媒体において,前記方法は,
前記第1デーモンプロセスに向けられたユーザプロセスからの第1メッセージを受け取り,前記第1デーモンプロセスは,前記ユーザプロセスとは独立して実行され,前記第1デーモンプロセスは,他の実行プロセスと他のメッセージを通信し,前記第1メッセージは,前記ユーザプロセスから前記第1デーモンプロセスへの,前記ユーザプロセスへ前記第1デーモンプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求であり,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示するかどうか決定し,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示する場合には,前記第1デーモンプロセスの重要度を変更し,及び
前記第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送する,
ことを含むものである,非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項2】
前記ユーザプロセスは,前記第1デーモンプロセスよりも高い高重要度で実行される,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項3】
前記第1デーモンプロセスの重要度の変更は,前記第1デーモンプロセスの重要度を,前記ユーザプロセスと同じ重要度に変更する,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項4】
前記決定することは,前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できる前記第1メッセージが第1デーモンプロセスに向けられているかどうか決定することを含む,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項5】
前記第1メッセージを転送することは,前記第1デーモンプロセスに対しポートキューにおいて前記第1メッセージをエンキューすることを含む,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項6】
前記第1デーモンプロセスに対するアサーションのカウントを維持し,
前記第1デーモンプロセスに対するドロップアサーションを受け取り,
前記第1デーモンプロセスに対するアサーションのカウントをデクリメントし,及び
前記第1デーモンプロセスに対するアサーションのカウントがゼロである場合には,前記第1デーモンプロセスの重要度をデフォールト重要度へ変更する,
ことを更に含む,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項7】
第2デーモンプロセスに向けられたユーザプロセスからの第2メッセージを受け取り,前記第2デーモンプロセスは,実行されており,前記第2デーモンプロセスは,前記第1デーモンプロセスとは独立して実行され,前記第2デーモンプロセスは,他の実行プロセスとメッセージを通信し,
前記第2デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第2メッセージが指示するかどうか決定し,
前記第2デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第2メッセージが指示する場合には,前記第2デーモンプロセスの重要度を変更し,及び
前記第2メッセージを前記第2デーモンプロセスへ転送する,
ことを更に含む,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項8】
前記第2デーモンプロセスの重要度の変更は,変更される前記第2デーモンプロセスの重要度を,前記ユーザプロセスと同じ重要度に変更する,請求項7に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項9】
前記第1メッセージを,重要度を搬送するものとしてマークすることを更に含む,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項10】
前記第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送することは,前記第1デーモンプロセスの重要度の変更に応答して行われる,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項11】
前記ユーザプロセスは,フォアグラウンドにおいて実行されるユーザアプリケーションのためのプロセスである,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項12】
前記第1デーモンプロセスは,バックグラウンドにおいて実行される,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項13】
プロセス重要度は,ユーザに代わってアクションが必要であることを指示する,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項14】
1つ以上の処理ユニットが適応デーモンプロセスの重要度を変更する方法を遂行するようにさせる実行可能なインストラクションを有する非一時的マシン読み取り可能な媒体において,前記方法は,
前記適応デーモンプロセスに向けられた重要度ドナープロセスからメッセージを受け取り,前記適応デーモンプロセスは,起動されるべきものであり,
前記適応デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記メッセージが指示するかどうか決定し,
前記適応デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記メッセージが指示する場合には,前記適応デーモンプロセスを,前記適応デーモンプロセスに関連したデフォールト重要度と異なる重要度で起動し,及び
前記起動された適応デーモンプロセスへ前記メッセージを転送する,
ことを含む,非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項15】
前記適応デーモンプロセスは,変更可能なプロセス重要度をもつデーモンプロセスである,請求項14に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項16】
前記重要度ドナープロセスは,別のプロセスに重要度を寄贈できるプロセスである,請求項14に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項17】
前記重要度ドナープロセスは,ユーザアプリケーションプロセス,及び重要度が昇格された別の適応デーモンプロセスより成るグループから選択される,請求項16に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項18】
前記適応デーモンプロセスの重要度は,重要度ドナーの重要度へ昇格される,請求項14に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項19】
前記メッセージは,前記重要度ドナープロセスから前記適応デーモンプロセスへのサービス要求である,請求項14に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項20】
第1デーモンプロセスの重要度を変更するための装置において,
第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを第1メッセージが指示するかどうか決定する手段であって,前記第1デーモンプロセスはユーザプロセスから独立して実行され,前記第1デーモンプロセスは他の実行プロセスと他のメッセージを通信し,前記第1メッセージは,前記ユーザプロセスから前記第1デーモンプロセスへの,前記ユーザプロセスへ前記第1デーモンプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求である,手段と,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示する場合には,前記第1デーモンプロセスの重要度を変更する手段と,
前記第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送する手段と,
を備えた装置。
【請求項21】
第1デーモンプロセスの重要度を変更するための方法であって,
前記第1デーモンプロセスに向けられたユーザプロセスからの第1メッセージを受け取るステップであって,前記第1デーモンプロセスは,前記ユーザプロセスから独立して実行され,前記第1デーモンプロセスは,他の実行プロセスと他のメッセージを通信し,前記第1メッセージは,前記ユーザプロセスから前記第1デーモンプロセスへの,前記ユーザプロセスへ前記第1デーモンプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求である,ステップと,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示するかどうか決定するステップと,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示する場合には,前記第1デーモンプロセスの重要度を変更するステップと,
前記第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送するステップと,を有する方法。
【請求項22】
適応デーモンプロセスの重要度を変更するための方法であって,
前記適応デーモンプロセスに向けられた重要度ドナープロセスからメッセージを受け取るステップであって,前記適応デーモンプロセスは,起動されるべきものである,ステップと,
前記適応デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記メッセージが指示するかどうか決定するステップと,
前記適応デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記メッセージが指示する場合には,前記適応デーモンプロセスを,前記適応デーモンプロセスに関連したデフォールト重要度と異なる重要度で起動するステップと,
前記起動された適応デーモンプロセスへ前記メッセージを転送するステップと,を有する方法。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】
1つ以上の処理ユニットが第1のデーモンプロセスの重要度を変更する方法を遂行するようにさせる実行可能なインストラクションを有する非一時的マシン読み取り可能な媒体において,前記方法は,
前記第1デーモンプロセスに向けられたユーザプロセスからの第1メッセージを受け取り,前記第1デーモンプロセスは,前記ユーザプロセスとは独立して実行され,前記第1デーモンプロセスは,他の実行プロセスと他のメッセージを通信し,前記第1メッセージは,前記ユーザプロセスから前記第1デーモンプロセスへの,前記ユーザプロセスへ前記第1デーモンプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求であり,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示するかどうか決定し,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示する場合には,前記第1デーモンプロセスの重要度を低重要度から高重要度へ変更し,
前記第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送し,前記第1デーモンプロセスは,前記高重要度で前記サービス要求をサービスし,
前記第1デーモンプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記第1デーモンプロセスの重要度を前記低重要度に変更する,
ことを含むものである,非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項2】
前記ユーザプロセスは,前記第1デーモンプロセスよりも高い高重要度で実行される,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項3】
前記第1デーモンプロセスの重要度の変更は,前記第1デーモンプロセスの重要度を,前記ユーザプロセスと同じ重要度に変更する,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項4】
前記決定することは,前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できる前記第1メッセージが第1デーモンプロセスに向けられているかどうか決定することを含む,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項5】
前記第1メッセージを転送することは,前記第1デーモンプロセスに対しポートキューにおいて前記第1メッセージをエンキューすることを含む,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項6】
第2デーモンプロセスに向けられたユーザプロセスからの第2メッセージを受け取り,前記第2デーモンプロセスは,実行されており,前記第2デーモンプロセスは,前記第1デーモンプロセスとは独立して実行され,前記第2デーモンプロセスは,他の実行プロセスとメッセージを通信し,
前記第2デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第2メッセージが指示するかどうか決定し,
前記第2デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第2メッセージが指示する場合には,前記第2デーモンプロセスの重要度を変更し,及び
前記第2メッセージを前記第2デーモンプロセスへ転送する,
ことを更に含む,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項7】
前記第2デーモンプロセスの重要度の変更は,変更される前記第2デーモンプロセスの重要度を,前記ユーザプロセスと同じ重要度に変更する,請求項6に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項8】
前記第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送することは,前記第1デーモンプロセスの重要度の変更に応答して行われる,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項9】
前記ユーザプロセスは,フォアグラウンドにおいて実行されるユーザアプリケーションのためのプロセスである,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項10】
前記第1デーモンプロセスは,バックグラウンドにおいて実行される,請求項1に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項11】
1つ以上の処理ユニットが適応デーモンプロセスの重要度を変更する方法を遂行するようにさせる実行可能なインストラクションを有する非一時的マシン読み取り可能な媒体において,前記方法は,
前記適応デーモンプロセスに向けられたプロセスからメッセージを受け取り,前記適応デーモンプロセスは,起動されるべきものであり,
前記適応デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記メッセージが指示するかどうか決定し,
前記適応デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記メッセージが指示する場合には,前記適応デーモンプロセスを,前記適応デーモンプロセスに関連したデフォールト重要度と異なる重要度で起動し,
前記起動された適応デーモンプロセスへ前記メッセージを転送し,前記適応デーモンプロセスは,高重要度でサービス要求をサービスし,
前記適応デーモンプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記適応デーモンプロセスの重要度を前記デフォールト重要度に変更する,
ことを含む,非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項12】
前記適応デーモンプロセスは,変更可能なプロセス重要度をもつデーモンプロセスである,請求項11に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項13】
前記プロセスは,別のプロセスに重要度を寄贈できるプロセスである,請求項11に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項14】
前記プロセスは,ユーザアプリケーションプロセス,及び重要度が昇格された別の適応デーモンプロセスより成るグループから選択される,請求項13に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項15】
前記適応デーモンプロセスの重要度は,前記プロセスの重要度へ昇格される,請求項11に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項16】
前記メッセージは,前記プロセスから前記適応デーモンプロセスへのサービス要求である,請求項11に記載の非一時的マシン読み取り可能な媒体。
【請求項17】
第1デーモンプロセスの重要度を変更するための装置において,
第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを第1メッセージが指示するかどうか決定する手段であって,前記第1デーモンプロセスはユーザプロセスから独立して実行され,前記第1デーモンプロセスは他の実行プロセスと他のメッセージを通信し,前記第1メッセージは,前記ユーザプロセスから前記第1デーモンプロセスへの,前記ユーザプロセスへ前記第1デーモンプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求である,手段と,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示する場合には,前記第1デーモンプロセスの重要度を低重要度から高重要度へ変更する手段と,
前記第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送する手段と,を備え,
前記第1デーモンプロセスは,前記高重要度で前記サービス要求をサービスし,
前記第1デーモンプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記第1デーモンプロセスの重要度を前記低重要度に変更する,装置。
【請求項18】
第1デーモンプロセスの重要度を変更するための方法であって,
前記第1デーモンプロセスに向けられたユーザプロセスからの第1メッセージを受け取り,前記第1デーモンプロセスは,前記ユーザプロセスから独立して実行され,前記第1デーモンプロセスは,他の実行プロセスと他のメッセージを通信し,前記第1メッセージは,前記ユーザプロセスから前記第1デーモンプロセスへの,前記ユーザプロセスへ前記第1デーモンプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求であり,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示するかどうか決定し,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示する場合には,前記第1デーモンプロセスの重要度を低重要度から高重要度へ変更し,
前記第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送し,
前記第1デーモンプロセスは,前記高重要度で前記サービス要求をサービスし,
前記第1デーモンプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記第1デーモンプロセスの重要度を前記低重要度に変更する,ことを含む方法。
【請求項19】
適応デーモンプロセスの重要度を変更するための方法であって,
前記適応デーモンプロセスに向けられた重要度ドナープロセスからメッセージを受け取り,前記適応デーモンプロセスは,起動されるべきものであり,
前記適応デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記メッセージが指示するかどうか決定し,
前記適応デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記メッセージが指示する場合には,前記適応デーモンプロセスを,前記適応デーモンプロセスに関連したデフォールト重要度と異なる重要度で起動し,
前記起動された適応デーモンプロセスへ前記メッセージを転送し,前記適応デーモンプロセスは,高重要度で前記サービス要求をサービスし,
前記適応デーモンプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記適応デーモンプロセスの重要度を前記デフォールト重要度に変更する,ことを含む方法。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否
本件手続補正は,
(1)補正前の請求項1に記載の「第1デーモンプロセスの重要度を変更し」を,
「第1デーモンプロセスの重要度を低重要度から高重要度へ変更し」と補正し,
同じく,補正前の請求項1に記載の「第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送する」を,
「第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送し,前記第1デーモンプロセスは,前記高重要度で前記サービス要求をサービスし,
前記第1デーモンプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記第1デーモンプロセスの重要度を前記低重要度に変更する」と補正して,
補正後の請求項1とし,
(2)補正前の請求項14に記載の「重要度ドナープロセス」を,
「プロセス」と補正し,
同じく,補正前の請求項14に記載の「起動された適応デーモンプロセスへ前記メッセージを転送する」を,
「起動された適応デーモンプロセスへ前記メッセージを転送し,前記適応デーモンプロセスは,高重要度でサービス要求をサービスし,
前記適応デーモンプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記適応デーモンプロセスの重要度を前記デフォールト重要度に変更する」と補正して,補正後の請求項11とし,
(3)補正前の請求項20に記載の「第1デーモンプロセスの重要度を変更する手段」を,
「第1デーモンプロセスの重要度を低重要度から高重要度へ変更する手段」と補正し,
補正前の請求項20に係る発明における発明特定事項である「第1デーモンプロセス」に対して,
「第1デーモンプロセスは,前記高重要度で前記サービス要求をサービスし,前記第1デーモンプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記第1デーモンプロセスの重要度を前記低重要度に変更する」
という限定事項を附加して,補正後の請求項17とし,
(4)補正前の請求項21に記載の「ユーザプロセスへ前記第1デーモンプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求である,ステップと」を,
「ユーザプロセスから前記第1デーモンプロセスへの,前記ユーザプロセスへ前記第1デーモンプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求であり」と補正し,
同じく,補正前の請求項21に記載の「第1デーモンプロセスの重要度を変更するステップ」を,
「第1デーモンプロセスの重要度を低重要度から高重要度へ変更し」と補正し,
同じく,補正前の請求項21に記載の「第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送するステップと,を有する方法」を,
「第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送し,
前記第1デーモンプロセスは,前記高重要度で前記サービス要求をサービスし,
前記第1デーモンプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記第1デーモンプロセスの重要度を前記低重要度に変更する,ことを含む方法」と補正して,補正後の請求項18とし,
(5)補正前の請求項22において,「ステップ」を用いた表現を止め,
補正前の請求項22に係る発明特定事項である「適応デーモンプロセス」に対して,
「適応デーモンプロセスは,高重要度で前記サービス要求をサービスし,
前記適応デーモンプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記適応デーモンプロセスの重要度を前記デフォールト重要度に変更する」という限定事項を附加して,補正後の請求項19とし,
(6)補正前の請求項6,請求項9,及び,請求項13を削除して,請求項の項番号の整理を行ったものである。
(7)以上,上記(1)?(5)において指摘した,補正前の請求項に係る発明の発明特定事項を限定する内容は,何れも,平成25年8月2日付けで提出された,特許法第36条の2第2項の規定による外国語書面の日本語による翻訳文の範囲内のものであるので,当該補正事項請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであり,そして,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
そして,上記(6)において指摘した補正事項は,請求項の削除を目的としたものであり,他の補正事項は,上記指摘の特許請求の範囲の減縮を目的としたもの,及び,請求項の削除を目的としたものに関連して表現の整理を行ったものであるから,
本件手続補正は,特許法第17条の2第3項の規定,及び,同法第17条の2第5項の規定を満たすものである。
そこで,本件手続補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際,独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。

(8)補正後の請求項18に係る発明
補正後の請求項18に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「第2.平成27年8月27日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正後の請求項18として引用した,次のとおりのものである。

「第1デーモンプロセスの重要度を変更するための方法であって,
前記第1デーモンプロセスに向けられたユーザプロセスからの第1メッセージを受け取り,前記第1デーモンプロセスは,前記ユーザプロセスから独立して実行され,前記第1デーモンプロセスは,他の実行プロセスと他のメッセージを通信し,前記第1メッセージは,前記ユーザプロセスから前記第1デーモンプロセスへの,前記ユーザプロセスへ前記第1デーモンプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求であり,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示するかどうか決定し,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示する場合には,前記第1デーモンプロセスの重要度を低重要度から高重要度へ変更し,
前記第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送し,
前記第1デーモンプロセスは,前記高重要度で前記サービス要求をサービスし,
前記第1デーモンプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記第1デーモンプロセスの重要度を前記低重要度に変更する,ことを含む方法。」

(9)引用刊行物に記載の事項
ア.原審が,平成26年9月1日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)において引用した,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2010-044703号公報(2010年2月25日公開,以下,これを「引用刊行物」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「(57)【要約】
【課題】マルチタスクオペレーティングシステムにおけるタスク切替え時の優先度制御技術に関し,緊急に処理を実行して欲しい要求を,他の待ち要求に妨げられることなく,その優先度のみを上げて動作可能とする。
【解決手段】実行中の発行元タスクから発行先タスクと必要に応じて依頼優先度を指定して要求データが発行される(S301)。その発行された要求データの依頼優先度と発行先タスクに設定されている優先度と発行先タスクの要求待ち行列に格納されている各要求データの依頼優先度とが比較されることにより,発行先タスクの要求待ち行列中の格納位置が決定される(S303?S308)。要求データの発行時に,実行中の発行元タスクの実行優先度と発行された要求データの依頼優先度又は依頼優先度の指定がない場合には発行先タスクの実行優先度とが比較されることにより,タスクの切替えが制御される(S310?S313)。
【選択図】図3」

B.「【0017】
1.要求を発行するタスク(発行元タスク)が,要求を受けるタスク(発行先タスク)に送る要求データに依頼優先度が付加されて,オペレーティングシステム(以下,「OS」という)の要求データ受付・振分け部101に送信される。
【0018】
2.要求データ受付・振分け部101は,この要求データを受け付ける。これに基づいて,タスク切替え部102は,発行先タスクの優先度,依頼優先度,及び他に現在待ちとなっているその他の要求データの優先度が比較して,タスクのスケジューリングを行う。このスケジューリングの際,要求データの発行先の優先度は依頼優先度に読み替えられて,スケジューリングされる。」

C.「【0030】
1.発行元タスク(実行中タスク)の優先度
2.格納された要求データの依頼優先度(依頼優先度の指定がない場合は,発行先タスクの優先度)
タスク切替え部102は,上記1.及び2.のうちで優先度が高い方を選択する。
【0031】
上記2.の優先度のほうが高い場合には,タスク切替え部102は,タスクの切り替え処理を行い,選択されたタスクを実行し,それまで実行中であったタスクを休止する(図3のステップS311→S312)。
【0032】
また,この場合,タスク切替え部102は,新たに実行中となったタスクの優先度を一時的に依頼優先度に変更し,処理が終わり休止するまでそれを維持する。
上記1.の優先度のほうが高い場合には,タスク切替え部102は,実行中のタスクを継続して動作させる(図3のステップS311→S313)。」

イ.本願の第1国出願前に既に公知である,特表2004-526257号公報(公表日;2004年8月26日,以下,これを「周知技術文献1」という)には,関連する図面と共に,次の周知技術が記載されている。

D.「【0006】
ディスク駆動装置とプリンタはその性質上シリアルである。このことは一度に1つの要求しか実行できないということを意味している。複数のユーザがこれらのリソースを一度に利用できるようにするために,オペレーティング・システムはそれらをキューを使って管理している。各シリアル装置はキューに関連付けられている。あるプログラムが装置(たとえばディスク駆動装置)にアクセスする必要がある場合,そのプログラムは当該装置に関連付けられたキューに要求を送る。UNIX(R)オペレーティング・システムは(デーモンと呼ばれる)バックグラウンド・タスクを実行しており,そのデーモンが上記キューをモニタするとともにそのキュー用の要求を処理する。上記要求はデーモンが処理し,その結果はユーザ・プログラムに返される。」

ウ.同じく,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2004-118334号公報(公開日;2004年4月15日,以下,これを「周知技術文献2」という)には,関連する図面と共に,次の周知技術が記載されている。

E.「【0030】
1.発行元タスク(実行中タスク)の優先度
2.格納された要求データの依頼優先度(依頼優先度の指定がない場合は,発行先タスクの優先度)
タスク切替え部102は,上記1.及び2.のうちで優先度が高い方を選択する。
【0031】
上記2.の優先度のほうが高い場合には,タスク切替え部102は,タスクの切り替え処理を行い,選択されたタスクを実行し,それまで実行中であったタスクを休止する(図3のステップS311→S312)。
【0032】
そして,システム系で使用する上位の優先度に対して,それ以外の優先度に複数のグループを設け,ユーザアプリケーションを構成するユーザタスクで使用できるようにしている。
図2の例では,ユーザタスクが使用する優先度に3つのグループを設け,その中で上位の方の優先度(図2中のグループ2)は,各ユーザアプリケーションを構成するタスクの中で,リアルタイム処理が要求されるデーモンと呼ばれるタスクなどが使用できる優先度とする。
なお,デーモンと呼ばれるタスクは,バックグラウンドで常駐して外部(携帯端末,上位装置など)からの要求(割り込み)に対して,常に応答できる状態にしておき,要求を受信すると,それを処理するタスクを起動して処理させるようにし,また要求待ちに入るようになっているタスクである。
【0033】
そして,下位の優先度(図2中のグループ4)は,各ユーザアプリケーションを構成するタスクの中で,リアルタイムに処理が必要でないタスク(図2では,アプリと記載)などが使用できる優先度とし,中位の優先度(図2中のグループ3)は,各ユーザアプリケーションを構成するタスクの中で,グループ2のタスクよりはリアルタイムに処理が必要でないが,グループ4のタスクよりはリアルタイムに処理が必要なタスク(図2では,アプリと記載)が使用できる優先度とする。
つまり,グループ3,4のタスク(アプリ)は,グループ2のデーモンが受けた要求を処理するタスクや要求毎に個別に起動されるタスク等である。
尚,通常保守監視タスク3は,装置内の保守監視を行っており,リアルタイムに処理が必要でないタスクであるから,グループ3又はグループ4に属する優先度が設定されていると考えて良い。」

(10)引用刊行物に記載の発明
ア.上記Aの「マルチタスクオペレーティングシステムにおけるタスク切替え時の優先度制御技術に関し」という記載から,引用刊行物は,
“マルチタスクオペレーティングシステムにおけるタスク切替え時の優先度制御方法”に関するものであることが読み取れ,
同じく,上記Aの「実行中の発行元タスクから発行先タスクと必要に応じて依頼優先度を指定して要求データが発行される」という記載,及び,上記Bの「要求を発行するタスク(発行元タスク)が,要求を受けるタスク(発行先タスク)に送る要求データに依頼優先度が付加されて,オペレーティングシステム(以下,「OS」という)の要求データ受付・振分け部101に送信される」という記載から,引用刊行物においては,
“要求を発行する発行元タスクから,要求を受け付ける発行先タスクに送る要求データに依頼優先度を付加して,OSの要求データ受付・振分け部に送信される”ものであることが読み取れる。

イ.上記Bの「要求データ受付・振分け部101は,この要求データを受け付ける。これに基づいて,タスク切替え部102は,発行先タスクの優先度,依頼優先度,及び他に現在待ちとなっているその他の要求データの優先度が比較し」という記載,上記Cの「2.格納された要求データの依頼優先度(依頼優先度の指定がない場合は,発行先タスクの優先度)」という記載,及び,同じく,上記Cの「上記2.の優先度のほうが高い場合には,タスク切替え部102は,タスクの切り替え処理を行い,選択されたタスクを実行」という記載と,上記ア.において検討した事項から,引用刊行物においては,
“要求データを受信した要求データ受付・振分け部は,発行先タスクの優先度と,前記要求データに付加された依頼優先度を比較し,前記依頼優先度が高い場合には,前記要求データの送信先である発行先タスクにおいて,前記要求データによる依頼が実行される”ものであることが読み取れる。

ウ.上記Aの「緊急に処理を実行して欲しい要求を,他の待ち要求に妨げられることなく,その優先度のみを上げて動作可能とする」という記載,及び,同じく,上記Cの「タスク切替え部102は,新たに実行中となったタスクの優先度を一時的に依頼優先度に変更し,処理が終わり休止するまでそれを維持する」という記載と,上記イ.において検討した事項から,引用発明においては,
“実行において依頼優先度が,発行先タスクの優先度より高い場合には,前記発行先タスクの優先度を一時的に前記依頼優先度に変更し,処理が終わり休止するまでそれを維持し,処理が終了すると,変更した優先度を前記依頼優先度から,前記発行先タスクの優先度戻す”ものであることが読み取れる。

エ.以上,ア.?ウ.において検討した事項から,引用刊行物には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。

「マルチタスクオペレーティングシステムにおけるタスク切替え時の優先度制御方法であって,
要求を発行する発行元タスクから,要求を受け付ける発行先タスクに送る要求データに依頼優先度を付加して,OSの要求データ受付・振分け部に送信され,
前記要求データを受信した要求データ受付・振分け部は,前記発行先タスクの優先度と,前記要求データに付加された依頼優先度を比較し,前記依頼優先度が高い場合には,前記要求データの送信先である発行先タスクにおいて,前記要求データによる依頼が実行されるものであって,
前記実行において,前記依頼優先度が,前記発行先タスクの優先度より高い場合には,前記発行先タスクの優先度を一時的に前記依頼優先度に変更し,処理が終わり休止するまでそれを維持し,前記処理が終了すると,変更した優先度を前記依頼優先度から,前記発行先タスクの優先度に戻す,方法。」

(11)本件補正発明と引用発明との対比
ア.引用発明においては,「依頼優先度」は付加された「要求データ」が,「発行元タスク」から,「発行先タスク」へ発行され,前記「発行先タスク」に設定されている「優先度」を,前記「依頼優先度」に変更することを行っているから,
引用発明における「マルチタスクオペレーティングシステムにおけるタスク切替え時の優先度制御方法」は,
“発行先タスクの優先度を変更するための方法”であるとも言い得るものである。
ここで,引用発明における「優先度」は,当該「優先度」が高い方が,より早く「要求」が,「タスク」によって処理されることになるので,当該「優先度」が高い「タスク」は,引用発明における処理において,より重要であると言え,
また,引用発明における「タスク」とは,「プロセス」とほぼ同義で用いられていることは明らかであるから,
引用発明における「優先度」が,本件補正発明における「重要度」に相当し,
引用発明における「発行先タスク」と,本件補正発明における「第1デーモンプロセス」とは,“要求を受け付けるプロセス”である点で共通する。
よって,引用発明における“発行先タスクの優先度を変更するための方法”と,
本件補正発明における「第1デーモンプロセスの重要度を変更するための方法」とは,
“要求を受け付けるプロセスの重要度を変更するための方法”である点で共通する。

イ.上記ア.においても指摘したとおり,引用発明においては,「発行元タスク」が,「発行先タスク」に対して,「依頼優先度」が付加された「要求データ」を発行し,「発行先タスク」によって,「要求データ」による「依頼」が処理され,その“処理結果”が,「発行元タスク」に返されるのであるから,
引用発明における「発行元タスク」,「要求データ」,及び,「依頼」が,
本件補正発明における「ユーザプロセス」,「第1メッセージ」,及び,「サービス」に相当し,
引用発明においては,「要求を発行する発行元タスクから,要求を受け付ける発行先タスクに送る要求データに依頼優先度を付加して,OSの要求データ受付・振分け部に送信され」るのであるから,「OSの要求データ受付・振分け部」が,“依頼優先度を付加された要求データを受信する”していることは明らかであるから,
引用発明において,“依頼優先度を付加された要求データを受信する”ことと,
本件補正発明における「第1デーモンプロセスに向けられたユーザプロセスからの第1メッセージを受け取」ることとは,
“要求を受け付けるプロセスに向けられたユーザプロセスからの第1メッセージを受け取”る点で共通し,
更に,上記において検討した事項を踏まえると,
引用発明における“発行元タスクから,発行先タスクへの依頼を発行する,要求メッセージ”と,
本件補正発明における「第1メッセージは,前記ユーザプロセスから前記第1デーモンプロセスへの,前記ユーザプロセスへ前記第1デーモンプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求」とは,
“第1メッセージは,前記ユーザプロセスから要求を受け付けるプロセスへの,前記ユーザプロセスへ前記要求を受け付けるプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求”である点で共通する。

ウ.引用発明においては,「要求データを受信した要求データ受付・振分け部は,前記発行先タスクの優先度と,前記要求データに付加された依頼優先度を比較」し,該比較の結果,「依頼優先度」の方が,「発行先タスク」の「優先度」より高ければ,該「発行先タスク」の「優先度」を,該「依頼優先度」に変更するのであるから,
引用発明において,「要求データを受信した要求データ受付・振分け部は,前記発行先タスクの優先度と,前記要求データに付加された依頼優先度を比較」することと,
本件補正発明における「第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示するかどうか決定」することとは,
“要求を受け付けるプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示するかどうか決定”することである点で共通し,
引用発明における「依頼優先度が,前記発行先タスクの優先度より高い場合」と,
本件補正発明における「第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示する場合」とは,
“要求を受け付けるプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示する場合”である点で共通し,
引用発明における「発行先タスクの優先度を一時的に前記依頼優先度に変更」することと,
本件補正発明における「第1デーモンプロセスの重要度を低重要度から高重要度へ変更」することとは,
“要求を受け付けるプロセスの重要度を低重要度から高重要度へ変更”することである点で共通する。

エ.引用発明において,「要求データ」は,「発行先タスク」に発行される,即ち,送信されるものであることは,明らかであるから,
本件補正発明における「第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送」することと,
“第1メッセージを要求を受け付けるプロセスへ転送”することである点で共通する。

オ.上記イ.において検討した事項を踏まえると,
引用発明において,「要求データの送信先である発行先タスクにおいて,前記要求データによる依頼が実行される」ことと,
本件補正発明において,「第1デーモンプロセスは,前記高重要度で前記サービス要求をサービス」することとは,
“要求を受け付けるプロセスは,高重要度でサービス要求をサービス”する点で共通する。

カ.引用発明においては,「処理が終了すると,変更した優先度を前記依頼優先度から,前記発行先タスクの優先度に戻す」ことを行っており,上記ウ.において検討した事項を踏まえると,このことは,「発行先タスク」の「優先度」を,“高い優先度”から,“低い優先度”に変更することに他ならない。
よって,引用発明における「処理が終了すると,変更した優先度を前記依頼優先度から,前記発行先タスクの優先度に戻す」ことと,
本件補正発明における「第1デーモンプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記第1デーモンプロセスの重要度を前記低重要度に変更する」こととは,
“要求を受け付けるプロセスがサービス要求をサービスした後に,前記要求を受け付けるプロセスの重要度を前記低重要度に変更する”ものである点で共通する。

キ.以上,ア.?カ.において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
要求を受け付けるプロセスの重要度を変更するための方法であって,
前記要求を受け付けるプロセスに向けられたユーザプロセスからの第1メッセージを受け取り,前記第1メッセージは,前記ユーザプロセスから前記要求を受け付けるプロセスへの,前記ユーザプロセスへ前記要求を受け付けるプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求であり,
前記要求を受け付けるプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示するかどうか決定し,
前記要求を受け付けるプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示する場合には,前記要求を受け付けるプロセスの重要度を低重要度から高重要度へ変更し,
前記第1メッセージを前記要求を受け付けるプロセスへ転送し,
前記要求を受け付けるプロセスは,前記高重要度で前記サービス要求をサービスし,
前記要求を受け付けるプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記要求を受け付けるプロセスの重要度を前記低重要度に変更する,方法。

[相違点1]
“要求を受け付けるプロセス”に関して,
本件補正発明においては,「第1デーモンプロセス」であるのに対して,
引用発明においては,「発行先タスク」である点。

[相違点2]
本件補正発明においては,「第1デーモンプロセスは,前記ユーザプロセスから独立して実行され」るものであるのに対して,
引用発明においては,「発行先タスク」が,「独立して実行され」る点についての明言がない点。

[相違点3]
本件補正発明においては,「第1デーモンプロセスは,他の実行プロセスと他のメッセージを通信」するものであるのに対して,
引用発明における「発行先タスク」が,「他の実行プロセスと他のメッセージを通信」する点についての言及がない点。

(12)相違点についての当審の判断
ア.[相違点1]について
「デーモン」が,「タスク」の一種であることは,例えば,上記Dとして引用した,周知技術文献1の記載内容に,「UNIX(R)オペレーティング・システムは(デーモンと呼ばれる)バックグラウンド・タスクを実行しており,そのデーモンが上記キューをモニタするとともにそのキュー用の要求を処理する。上記要求はデーモンが処理し,その結果はユーザ・プログラムに返される」とあり,或いは,上記Eとして引用した,周知技術文献2の記載内容に,「デーモンと呼ばれるタスクは,バックグラウンドで常駐して外部(携帯端末,上位装置など)からの要求(割り込み)に対して,常に応答できる状態にしておき,要求を受信すると,それを処理するタスクを起動して処理させるようにし,また要求待ちに入るようになっているタスクである」とあるように,当業者には周知の技術事項であるから,引用発明においても,「発行先タスク」を,“発行先デーモンプロセス”とすることは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点1]は,格別のものではない。

イ.[相違点2]について
また,引用発明は,「マルチタスクオペレーティングシステム」に関するものであるから,異なる複数の「タスク」が,それぞれ,“独立”に動作し得ることは,当業者にとって周知の技術事項である。
よって,[相違点2]は,格別のものではない。

ウ.[相違点3]について
上記イ.において検討したとおり,引用発明は,「マルチタスクオペレーティングシステム」に関するものであるから,複数の異なるタスク間で,メッセージの通信が行われることは,当業者にとって周知の技術事項である。
また,「デーモンプロセス」が,他の「プロセス」と通信を行う点については,上記Eにおいて引用した,周知技術文献2の記載内容に,「グループ3,4のタスク(アプリ)は,グループ2のデーモンが受けた要求を処理するタスクや要求毎に個別に起動されるタスク等である」とあるように,「デーモン」が,他の「タスク」,即ち,「プロセス」に,“処理の依頼”を行うことは,当業者には周知の技術事項であり,当該“処理の依頼”に際して,当該「デーモン」より,依頼先の「プロセス」に対して,“依頼メッセージの送信”が行われることも,当業者には周知の技術事項である。
従って,引用発明においても,上記ア.において検討したように,「発行先タスク」を,「デーモンプロセス」とした場合,該「デーモンプロセス」が,他の「プロセス」と通信するよう構成することは,当業者が必要に応じて適宜なし得る事項である。
よって,[相違点3]は,格別のものではない。

エ.以上,ア.?ウ.において検討したとおり,[相違点1]?[相違点3]はいずれも格別のものではなく,そして,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。
よって,本件補正発明は,引用発明,及び,周知技術文献1,周知技術文献2に開示の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際,独立して特許を受けることができない。

3.補正却下むすび
したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
平成27年8月27日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項21に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成27年3月3日付けの手続補正により補正された,上記「第2.平成27年8月27日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項21として引用した,次の記載のとおりのものである。

「第1デーモンプロセスの重要度を変更するための方法であって,
前記第1デーモンプロセスに向けられたユーザプロセスからの第1メッセージを受け取るステップであって,前記第1デーモンプロセスは,前記ユーザプロセスから独立して実行され,前記第1デーモンプロセスは,他の実行プロセスと他のメッセージを通信し,前記第1メッセージは,前記ユーザプロセスから前記第1デーモンプロセスへの,前記ユーザプロセスへ前記第1デーモンプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求である,ステップと,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示するかどうか決定するステップと,
前記第1デーモンプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示する場合には,前記第1デーモンプロセスの重要度を変更するステップと,
前記第1メッセージを前記第1デーモンプロセスへ転送するステップと,を有する方法。」

第4.引用刊行物に記載の発明
原審拒絶理由において引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2010-044703号公報(2010年2月25日公開)には,上記「第2.平成27年8月27日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(10)引用刊行物に記載の発明」において認定したとおりの,次の発明が記載されている。

「マルチタスクオペレーティングシステムにおけるタスク切替え時の優先度制御方法であって,
要求を発行する発行元タスクから,要求を受け付ける発行先タスクに送る要求データに依頼優先度を付加して,OSの要求データ受付・振分け部に送信され,
前記要求データを受信した要求データ受付・振分け部は,前記発行先タスクの優先度と,前記要求データに付加された依頼優先度を比較し,前記依頼優先度が高い場合には,前記要求データの送信先である発行先タスクにおいて,前記要求データによる依頼が実行されるものであって,
前記実行において,前記依頼優先度が,前記発行先タスクの優先度より高い場合には,前記発行先タスクの優先度を一時的に前記依頼優先度に変更し,処理が終わり休止するまでそれを維持し,前記処理が終了すると,変更した優先度を前記依頼優先度から,前記発行先タスクの優先度に戻す,方法。」

第5.本願発明と引用発明との対比
本願発明は,上記「第2.平成27年8月27日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」において検討した,本件補正発明における,
「第1デーモンプロセスの重要度を低重要度から高重要度へ変更」することを,
「第1デーモンプロセスの重要度を変更するステップ」とし,
同じく,本件補正発明における「第1デーモンプロセスは,前記高重要度で前記サービス要求をサービスし,前記第1デーモンプロセスが前記サービス要求をサービスした後に,前記第1デーモンプロセスの重要度を前記低重要度に変更する」という事項を削除したものであるから,
本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
要求を受け付けるプロセスの重要度を変更するための方法であって,
前記要求を受け付けるプロセスに向けられたユーザプロセスからの第1メッセージを受け取るステップであって,前記第1メッセージは,前記ユーザプロセスから前記要求を受け付けるプロセスへの,前記ユーザプロセスへ前記要求を受け付けるプロセスによって提供されるサービスを要求するサービス要求であるステップと,
前記要求を受け付けるプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示するかどうか決定するステップと,
前記要求を受け付けるプロセスの重要度を変更できることを前記第1メッセージが指示する場合には,前記要求を受け付けるプロセスの重要度を変更するステップと,
前記第1メッセージを前記要求を受け付けるプロセスへ転送するステップ,を有する方法。

[相違点a]
“要求を受け付けるプロセス”に関して,
本願発明においては,「第1デーモンプロセス」であるのに対して,
引用発明においては,「発行先タスク」である点。

[相違点b]
本願発明においては,「第1デーモンプロセスは,前記ユーザプロセスから独立して実行され」るものであるのに対して,
引用発明においては,「発行先タスク」が,「独立して実行され」る点についての明言がない点。

[相違点c]
本願発明においては,「第1デーモンプロセスは,他の実行プロセスと他のメッセージを通信」するものであるのに対して,
引用発明における「発行先タスク」が,「他の実行プロセスと他のメッセージを通信」する点についての言及がない点。

第6.相違点についての当審の判断
本願発明と,引用発明との,[相違点a]?[相違点c]は,本件補正発明と,引用発明との,[相違点1]?[相違点3]と同じものであるから,上記「第2.平成27年8月27日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(12)相違点についての当審の判断」において検討したとおり,何れも,格別のものでない。
そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。

第7.むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-23 
結審通知日 2016-03-28 
審決日 2016-05-02 
出願番号 特願2013-120767(P2013-120767)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 幸雄  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 石井 茂和
戸島 弘詩
発明の名称 適応プロセス重要度  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 大塚 文昭  
代理人 西島 孝喜  
代理人 弟子丸 健  
代理人 岩崎 吉信  
代理人 須田 洋之  

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