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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01H
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01H
管理番号 1319627
審判番号 不服2015-20056  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-09 
確定日 2016-10-04 
事件の表示 特願2011-173716「ヒュージブルリンク」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月21日出願公開、特開2013- 37929、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年8月9日の出願であって、平成27年3月31日付けで拒絶理由が通知され、同年5月14日付けで手続補正がされ、同年9月29日付け(発送日:同年10月6日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)され、これに対し、同年11月9日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その請求と同時に手続補正がされ、平成28年6月9日付けで当審において拒絶理由が通知され、同年8月2日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし3(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)に係る発明は、平成28年8月2日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
長尺状の導体と、前記導体は導電性金属からなる撚り線からなり、前記導体は長手方向の中間部に設けられ圧縮によって長手方向に伸びた状態で前記導体の素線部の断面積より小さい断面積になるように細くなっており所定の値の電流により溶断可能な溶断部と、この溶断部に沿って溶着された前記導体より低融点の低融点金属体と、少なくとも前記溶断部を前記低融点金属体と共に覆う耐火絶縁体とで形成され、
前記耐火絶縁体が、前記溶断部を前記低融点金属体と共に覆うセラミック製の絶縁筒体と、この絶縁筒体と共に前記導体の素線部を覆う絶縁性を有した耐火マイカテープとで形成されていることを特徴とするヒュージブルリンク。
【請求項2】
請求項1記載のヒュージブルリンクであって、
前記絶縁筒体は少なくとも前記導体の融点より高い融点であることを特徴とするヒュージブルリンク。
【請求項3】
請求項2記載のヒュージブルリンクであって、
前記絶縁筒体は、前記低融点金属体が溶着された前記溶断部に非接触状態で、前記溶断部の両側の前記素線部の外周面に固定されていることを特徴とするヒュージブルリンク。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
平成27年5月14日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2005-158352号公報
刊行物2:特開2003-217435号公報
刊行物3:実願昭55-160747号(実開昭57-083050号)のマイクロフィルム
刊行物1の特に図1を参照すると、溶断部に、断面積を小さくするため、偏平部12と穴13を設けたヒューズが記載されている。
また、刊行物2の特に図1を参照すると、溶断部に、断面積を小さくするため、プレス加工を施す技術が記載されており、刊行物1に記載された発明に引用文献2に記載された上記技術を適用して、溶断部に、断面積を小さくするため、プレス加工を施すことは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、刊行物1の特に【0017】を参照すると、溶断部に切り欠きを設けて、切り欠きに低融点合金を溶着する技術も記載されており、穴に代えて切り欠きを採用するかどうかは、当業者が適宜設定し得る設計的事項である。
また、刊行物3の特に図2を参照すると、絶縁筒体(7)をテープ(8)で固定する技術が記載されており、刊行物1に記載された発明に刊行物3に記載された上記技術を適用して、絶縁筒体(17)をテープで固定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物
ア 刊行物1(特に段落【0002】、【0007】ないし【0020】及び【図1】参照)には、本願発明に則って整理すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

[引用発明]
「導体2と、前記導体2が銅からなる単線からなり、前記導体2は長手途中に設けられ穴により導体断面積を減少させており所定の電流によって溶ける溶断部11と、この溶断部11に溶接された前記銅より低融点の低融点金属14と、少なくとも前記溶断部11を前記低融点金属14と共に覆うガラス管17及び樹脂筒18とで形成されているヒューズ付き電線。」

イ 刊行物2には、ヒュージブルリンク11に関して、以下の事項が記載されている。
「【0010】本第1実施形態のヒュージブルリンク11は、図1に示したように、過大電流に対する回路保護の為に、電気機器21の電気回路に挿入されるものである。前記ヒュージブルリンク11は、並設された複数本(本実施形態においては、3本)の導体13a,13b,13cを絶縁樹脂15で絶縁被覆してなるフラット電線17から成り、絶縁被覆の一部を皮むきして露出させた導体13a,13b,13cに、断面積減少部14a,14b,14cをプレス成形することによって、過大電流によって溶断する可溶部14を形成している。
【0011】尚、絶縁被覆の一部が皮むきされて前記導体13a,13b,13cが露出した導体露出部12は、絶縁テープや絶縁ハウジング等の絶縁部材20によって適宜覆われる。そして、前記ヒュージブルリンク11の一端部は、前記電気機器21のヒューズ接続部25に接続される。前記ヒューズ接続部25は、電気機器21に形成された収容溝26a,26bにそれぞれ設けられた圧接刃25a,25bから成る。」

「【0015】そこで、前記断面積減少部14a,14b,14cがプレス成形された導体13a,13b,13cには、過大電流によって溶断する可溶部14が形成される。尚、本実施形態における導体13a,13b,13cは、円形断面を有する単線であるが、矩形断面を有する単線や撚り線等の各種の導体を利用可能であることは勿論であり、導体の本数も本実施形態の3本に限定されない。」

刊行物2(特に段落【0010】、【0015】参照)には、プレス成形における技術常識に照らして、次の事項(以下、「刊行物2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。

「導体が撚り線からなり、可溶部14が圧縮によって長手方向に伸びた状態で前記導体の素線部の断面積より小さい断面積になるように細くなっているヒュージブルリンク。」

ウ 刊行物3には、ヒュージブルリンクに関して、次の事項が記載されている。
「このヒュージブルリンク部分にガラス編組チューブ等の耐熱性絶縁チューブ7を被せ、両端をテープ8で巻き付け固定することにより、電線とヒュージブルリンクとが一体化される。」(第4ページ第12ないし15行)

(2)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「導体2」は、本願発明1の「長尺状の導体」に相当し、以下同様に、「銅」は「導電性金属」に、「長手途中」は「長手方向の中間部」に、「導体断面積を減少させて」は「導体の素線部の断面積より小さい断面積にな」っていることに、「溶ける」は「溶断可能」に、「溶接」は「溶着」に、「低融点金属14」は「低融点金属体」に、「ヒューズ付き電線」は「ヒュージブルリンク」に、それぞれ相当する。

また、本願の明細書の、「耐火絶縁体12はセラミック製の絶縁筒体17(図1(c))と、絶縁筒体17を導体10の素線部15に固定する耐火絶縁テープ18(図2)とによって形成されている。」(段落【0023】)との記載、「導体10に対し、絶縁筒体17は低融点金属体13が溶着されている溶断部11を覆うように配置され、溶断部11からの熱を絶縁筒体17の内部に封じ込めて外部に逃げることを防止する。」(段落【0024】)との記載及び「耐火絶縁テープ18は絶縁筒体17の外周面及び導体10の素線部15の外周面に巻き付けられることにより、溶断部11を覆うように絶縁筒体17を導体10の素線部15に固定する。この耐火絶縁テープ18はヒュージブルリンク1を覆う絶縁被覆として機能する。」(段落【0027】)との記載に照らせば、引用発明の「ガラス管17及び樹脂筒18」は絶縁筒16を構成するから、本願発明1の「耐火絶縁体」とは、「絶縁体」という限りで共通する。

したがって、本願発明1と引用発明とを対比すると、次の一致点で一致し、相違点1ないし3で相違する。

[一致点]
「長尺状の導体と、前記導体は導電性金属からなり、前記導体は長手方向の中間部に設けられ導体の素線部の断面積より小さい断面積になっており所定の値の電流により溶断可能な溶断部と、この溶断部に溶着された前記導体より低融点の低融点金属体と、少なくとも溶断部を低融点金属体と共に覆う絶縁体とで形成されているヒュージブルリンク。」

[相違点1]
本願発明1は、素線部の導体が「撚り線からなり」、溶断部が「圧縮によって長手方向に伸びた状態で前記導体の素線の断面積より小さい断面積になるように細くなって」いるのに対し、引用発明は、導体が単線からなり、溶断部がかかる構成となっていない点。

[相違点2]
本願発明1の低融点金属体は、溶断部に「沿って」配置されるのに対し、引用発明の低融点金属14は、かかる構成となっていない点。

[相違点3]
絶縁体について、本願発明1は「耐火絶縁体」であり「前記溶断部を前記低融点金属体と共に覆うセラミック製の絶縁筒体と、この絶縁筒体と共に前記導体の素線部を覆う絶縁性を有した耐火マイカテープとで形成されている」のに対し、引用発明の耐火絶縁体は、「ガラス管17及び樹脂筒18」である点。

(3)判断
次に、相違点1ないし3について検討する。

[相違点1]についての検討
引用発明のヒューズ付き電線と、刊行物2に記載された事項のヒュージブルリンクとは、同一の技術分野に属すると認められるから、引用発明に刊行物2に記載された事項を適用し、上記相違点1の本願発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。

[相違点2]についての検討
溶断部に低融点金属を配置する場合、溶断部に沿って配置することは特開平7-130277号公報(以下、「刊行物4」という。段落【0022】、【0023】、【図3】、【図4】)及び特開2010-67475号公報(以下、「刊行物5」という。段落【0037】、【図1】)に記載されており、ヒューズの技術分野では周知の技術手段である。
そうすると、引用発明に上記周知の技術手段を適用し、上記相違点2の本願発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。

[相違点3]についての検討
刊行物1には「絶縁筒16は、溶断部11を囲うガラス管17とこのガラス管17の外側に配置する樹脂筒18とを組み合わせたものが好ましい。」(段落【0019】)との記載及び「樹脂筒18は、本体部18aと、この本体部18aの開口を閉じる蓋18bとから成るものを示した。本体部18aと蓋18bは、接着するなどして両者の継ぎ目と絶縁体3との間の界面を気密に封止する。」(段落【0020】)との記載があり、刊行物2には「絶縁被覆の一部が皮むきされて前記導体13a,13b,13cが露出した導体露出部12は、絶縁テープや絶縁ハウジング等の絶縁部材20によって適宜覆われる。」(段落【0011】)との記載があり、刊行物3には「ガラス編組チューブ等の耐熱性絶縁チューブ7を被せ、両端をテープ8で巻き付け固定する」(第4ページ第12ないし14行)との記載がある。
しかしながら、刊行物1ないし3には、耐火絶縁体が「前記溶断部を前記低融点金属体と共に覆うセラミック製の絶縁筒体と、この絶縁筒体と共に前記導体の素線部を覆う絶縁性を有した耐火マイカテープとで形成されている」ことについて記載されていない。
また、耐火絶縁体が「前記溶断部を前記低融点金属体と共に覆うセラミック製の絶縁筒体と、この絶縁筒体と共に前記導体の素線部を覆う絶縁性を有した耐火マイカテープとで形成されている」ことが通常のこととも認められない。
そして、本願発明1は、上記相違点3の本願発明1の構成によって「絶縁被膜が燃える危険性が少ないヒュージブルリンクを提供する」(段落【0006】)という課題を解決するものである。
そうすると、上記相違点3の本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

(4)小括
したがって、本願発明1は、引用発明、刊行物1ないし3に記載された事項並びに周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明2及び3は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、本願発明1と同様に、引用発明、刊行物1ないし3に記載された事項並びに周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(1)本願は、特許請求の範囲の記載が下記アないしウの点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 請求項1には、「この溶断部に沿って覆うように配置された前記導体より低融点の低融点金属体」との記載がある。
しかしながら、明細書には、「覆うように配置」という用語について、段落【0024】に「絶縁筒体17は低融点金属体13が溶着されている溶断部11を覆うように配置され、」との記載があるものの、低融点金属体が溶断部を覆うことについての記載がない。
このため、請求項1に係る発明において、「低融点金属体」と「溶断部」は、どのような関係にあるのか不明確である。

イ 請求項1に係る発明は、「ヒュージブルリンク」(物の発明)であるが、当該請求項1には、「圧縮されて伸ばされることにより」という、その物の製造方法が記載されているものと認められる。
したがって、請求項1に係る発明は明確でない。

ウ 請求項1に係る発明の「耐火絶縁体」及び請求項2に係る発明の「耐火絶縁テープ」における「耐火」は、どのような物理量あるいは規格で判別すれば良いのか不明確である。

(2)平成27年11月9日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物AないしDに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物A:特開2005-158352号公報
刊行物B:特開2003-217435号公報
刊行物C:特開平7-130277号公報
刊行物D:特開2010-67475号公報

2 当審拒絶理由の判断
(1)平成28年8月2日付けの手続補正により、本願の請求項1「この溶断部に沿って覆うように配置された前記導体より低融点の低融点金属体」との記載は「この溶断部に沿って溶着された前記導体より低融点の低融点金属体」となり、「圧縮されて伸ばされることにより」との記載は「圧縮によって長手方向に伸びた状態で」となった。また、同手続補正により請求項1に「前記耐火絶縁体が、前記溶断部を前記低融点金属体と共に覆うセラミック製の絶縁筒体と、この絶縁筒体と共に前記導体の素線部を覆う絶縁性を有した耐火マイカテープとで形成されている」との事項が記載された。このことにより、請求項1に係る発明は明確になった。
よって、上記1(1)アないしウの拒絶理由は解消した。

(2)当審拒絶理由の刊行物A及びBは、原査定の刊行物1及び2であり、当審拒絶理由の刊行物C及びDは、上記「第3の2(3)」の周知の技術手段を示すための刊行物4及び5である。
そうすると、上記「第3の2」からみて、本願発明1ないし3は、刊行物AないしDに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。

(3)そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-09-20 
出願番号 特願2011-173716(P2011-173716)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01H)
P 1 8・ 121- WY (H01H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 段 吉享  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 内田 博之
中川 隆司
発明の名称 ヒュージブルリンク  
代理人 三好 秀和  
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