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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1319631
審判番号 不服2015-18023  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-02 
確定日 2016-10-11 
事件の表示 特願2009-154782「画像表示装置および画像表示装置の駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月20日出願公開、特開2011- 13261、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年6月30日の出願であって、平成25年11月19日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月21日付けで手続補正(以下、「補正1」)という。)がなされたが、平成26年8月27日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対し、平成26年12月2日付けで手続補正がなされたが、平成27年5月27日付けで、平成26年12月2日付けでした手続補正について、補正却下の決定がなされ、該補正却下の決定と同日付けで拒絶査定がなされ(送達日:同年6月2日)、これに対し、平成27年10月2日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正(以下、「補正2」)という。)がなされ、その後、当審において平成28年4月27日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成28年8月26日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(下線は、本件補正による補正箇所である。)。
「【請求項1】
発光ダイオードと、前記発光ダイオードを駆動する第1駆動トランジスタを含み、前記発光ダイオードに接続される第1の導電経路と、前記第1駆動トランジスタに接続される容量素子と、前記発光ダイオードに接続され、前記第1の導電経路とは異なる第2の導電経路と、を備えた複数の画素回路を有する画像表示装置の駆動方法において、
前記容量素子の両端に前記第1駆動トランジスタの閾値電圧より高い第1電圧を印加する電圧印加工程と、
前記第1の導電経路及び前記第2の導電経路を介して前記発光ダイオードに逆バイアスを印加するように電荷を同時に供給し、前記発光ダイオードに電荷を蓄積する電荷蓄積工程と、
前記発光ダイオードと前記容量素子とを電気的に接続し、前記発光素子および前記容量素子に蓄積された電荷を放電することにより、前記容量素子の両端に印加される電圧を前記第1駆動トランジスタの閾値電圧に設定する第1設定工程と、
前記容量素子の両端に印加される電圧を前記第1駆動トランジスタの前記閾値電圧よりも高い第2電圧に設定する第2設定工程と、
前記第2電圧に基づいて前記第1駆動トランジスタを駆動することにより、前記発光ダイオードおよび前記第1の導電経路へ通電を行い、前記発光ダイオードを発光させる発光工程と、
を備え、
前記第1の導電経路及び前記第2の導電経路は、共通の電源線(Lvs)と接続され、 前記第2の導電経路は、第2駆動トランジスタを含み、前記発光ダイオードに対して順方向に電流が流れる際に、該第2駆動トランジスタのゲート電極が該第2駆動トランジスタのソース電極と電気的に接続されており、前記発光ダイオードに対して逆方向に電流が流れる際に、該第2駆動トランジスタのゲート電極が該第2駆動トランジスタのドレイン電極と電気的に接続されており、
前記電荷蓄積工程は、前記発光工程よりも前に実行される、
画像表示装置の駆動方法。」

第3 原査定の拒絶理由について
1 原査定の理由の概要(請求項3、4(補正1による)に対応する請求項(補正2による請求項2)は、本件補正により削除されているので、これらの請求項に対する拒絶の理由の記載は省略する。)
(1)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(3)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由(1)について
請求項1(補正1による)の「該第2駆動トランジスタのゲート電極が該第2駆動トランジスタのソース電極又はドレイン電極と電気的に接続されている」という記載は、
ゲート電極が、いずれの方向に電流が流れる際のソース又はドレインの電極(段落【0023】も参照されたい。)に対して、そのいずれの一方と接続されるのか、明確でない。

理由(3)について
・請求項1-2(補正1による)
・引用例1:特開2002-358048号公報
・引用例2:特開2008-26734号公報

駆動トランジスタを介して有機発光素子に逆バイアスを印加している、引用例2に記載された発明に対して、引用例1に記載された技術事項を用いることは、当業者が容易に想到できたものである。

2 原査定の理由の判断
(1)理由(1)について
請求項1(補正1による)における「前記第2の導電経路は、第2駆動トランジスタを含み、該第2駆動トランジスタのゲート電極が該第2駆動トランジスタのソース電極又はドレイン電極と電気的に接続されている」との記載は、本件補正により、「前記第2の導電経路は、第2駆動トランジスタを含み、前記発光ダイオードに対して順方向に電流が流れる際に、該第2駆動トランジスタのゲート電極が該第2駆動トランジスタのソース電極と電気的に接続されており、前記発光ダイオードに対して逆方向に電流が流れる際に、該第2駆動トランジスタのゲート電極が該第2駆動トランジスタのドレイン電極と電気的に接続されており、」と補正された。
よって、第2駆動トランジスのゲート電極が、他の2つの電極のうち、発光ダイオードに対して順方向に電流が流れる際のソース電極(つまり、発光ダイオードに対して逆方向に電流が流れる際のドレイン電極)と接続されることが明確なものとなった。

(2)理由(3)について
ア 刊行物の記載事項
(引用例1)
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-358048号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する分野】本発明は、有機発光素子を用いた表示装置及びその駆動方法に関する。より詳細には有機発光素子を交流で駆動する表示装置及びその駆動方法に関する。」

「【0017】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら有機発光素子を直流で駆動すると、有機発光素子が発光する光の輝度は経時的に低下する。直流で駆動すると輝度が劣化する原因は、有機化合物層の界面にイオン性不純物が蓄積すること、有機化合物層を構成する分子が電界に沿って一様な方向に分極することなどにより、有機発光素子の画素電極、対向電極から加わる電界と逆方向の電界が有機化合物層の内部に発生するためなどと考えられている。」

「【0019】この輝度劣化を抑えるためには、有機発光素子を交流で駆動する必要がある。有機発光素子を交流で駆動するとは、有機発光素子に極性の異なる電圧を交互に加えることをいう。すなわち、発光に必要な順バイアスの他に、逆バイアスを加えることをいう。順バイアスと逆バイアスとは、強さや印加時間が必ずしも等しくなくてもよい。ごくわずかな逆バイアスしか印加しない場合であっても、交流と称することにする。
【0020】しかしながら、上述した従来の回路では、たとえ交流電源を有機発光素子の対向電極、電源供給線に接続して設けたとしても、有機発光素子に充分な逆バイアスをかけられないことがある。以下、その説明をする。」

「【0026】このように上述した従来の回路構成では、有機発光素子を交流で駆動することは困難であり、直流電圧の印加によって有機発光素子の輝度は経時的に大きく低下するという問題点が生じていた。
【0027】そこで本発明は、有機発光素子に交流電圧を加えて駆動を行い、有機発光素子の輝度の低下を防止して、表示品位の向上を図る構成の表示装置及びその駆動方法を提供することを目的とする。
【0028】
【課題を解決する手段】整流特性を有する素子(以降、整流素子と称する)を、従来の回路に付加することで有機発光素子を交流で駆動することができる。
【0029】整流素子と電流制御用TFTの半導体層とが並列に接続されている回路であれば、整流素子と電流制御用TFTの半導体層との一方が高抵抗化しても、他方が低抵抗であれば、この低抵抗な抵抗に応じた電圧を有機発光素子にかけることができる。」

「【0052】
【発明の実施の形態】[実施形態1]本発明の構成を時分割駆動による階調表示を行う有機発光ディスプレイに適用した例を説明する。時分割駆動による階調表示とは、発光時間の異なる期間を複数組み合わせて、各画素の階調を制御する階調の表示方法である。
【0053】図1(A)は画素の等価回路である。各画素100にゲート信号線(Gj)、ソース信号線(Si)から信号が入力される。各画素はスイッチング用TFT101、電流制御用TFT102、コンデンサー103、整流用TFT104、有機発光素子105を有する。交流電源106は電源供給線(Vi)と有機発光素子105の対向電極に電位を与えている。
【0054】スイッチング用TFT101のゲート電極は、選択信号を入力するゲート信号線(Gj)に接続されている。スイッチング用TFTのソースとドレインとは、一方が「0」または「1」の情報を有するデジタルの画像データ信号(以降、デジタルデータ信号と称する)を入力するソース信号線(Si)に、他方が電流制御用TFT102のゲート電極及び各画素が有するコンデンサー103の一方の電極にそれぞれ接続されている。コンデンサーの他方の電極は電源供給線(Vi)に接続されている。コンデンサー103は、スイッチング用TFT102が非選択状態にあるとき、電流制御用TFT102のゲート電圧を保持するために設けられている。
【0055】電流制御用TFT102は、ソースとドレインとが、一方は電源供給線(Vi)に、他方は有機発光素子105の画素電極にそれぞれ接続されている。
【0056】整流用TFT104のソースとドレインとは、一方が電源供給線(Vi)に、他方が有機発光素子106の画素電極にそれぞれ接続されている。整流用TFT104のゲート電極は電源供給線(Vi)に接続されている。整流用TFT104は、そのゲート電極とソースまたはドレインの一方が接続されているため、一方向へのみ電流が流れる整流特性を有する
【0057】整流用TFT104と、電流制御用TFT102とは導電型を等しくすることが望ましい。本実施の形態では、電流制御用TFTと整流用TFTの導電型はpチャネル型とする。なお、スイッチング用TFT101の導電型はnチャネル型にしてもよいしpチャネル型にしてもよい。
【0058】整流用TFT104の整流特性は、整流用TFTがpチャネル型であり、そのゲートとソースまたはドレインの一方が接続されているため、有機発光素子の側から電源供給線の側へのみ電流が流れやすい特性である。
【0059】有機発光素子105は、有機化合物層と、有機化合物層を挟む陰極と陽極とからなる。本実施の形態では電流制御用TFT102と整流用TFT104とに接続する有機発光素子の画素電極を陽極とし、有機発光素子の対向電極を陰極とし、画素電極から対向電極へと電流を流し、有機発光素子を発光させる構成とする。
【0060】交流電源106は、有機発光素子105の対向電極と、電源供給線(Vi)とに接続されている。本実施の形態では、対向電極の電位と、電源供給線の電位とは双方の電位を同時に変えて交流駆動を行う。対向電極の電位と、電源供給線の電位とは電流制御用TFTがオンの状態になったときに有機発光素子が発光する程度に電位差が設けられている。
【0061】本実施の形態とは逆に、電流制御用TFTと整流用TFTをnチャネル型として用い、有機発光素子の画素電極を陰極とし、対向電極を陽極として対向電極から画素電極へと有機発光素子に電流を流して発光させてもよい。」

「【0066】次に、図1の画素部の回路を有する有機発光ディスプレイの駆動方法について説明する。まず、図2を用いて本実施の形態の時分割駆動による階調表示の一例について説明する。
【0067】1フレーム期間(F)は、n個のサブフレーム期間(SF1?SFn)に分割される。説明を簡略にするため、第1のサブフレーム期間(F1)と第2のサブフレーム期間(F2)だけを図示する。1フレーム期間とは、階調制御された1つの画像を形成する期間をいう。本実施形では、1秒間に60以上のフレーム期間が設けられている。1秒間に表示される画像の数が60より少なくなると、視覚的にフリッカ等の画像が目立ち始める。
【0068】サブフレーム期間(SF1?SFn)は、1フレーム期間をさらに分割した期間である。階調数が多くなるにつれて1フレーム期間の分割数も増え、駆動回路を高い周波数で駆動しなければならない。
【0069】1つのサブフレーム期間はアドレス期間(Ta)とサブフレーム期間(Ts)とに分けられる。アドレス期間とは、1つのサブフレーム期間において全画素にデータを入力するのに要する期間であり、サステイン期間とは、画素に入力されたデータに応じて有機発光素子に一定の電流を流して表示を行う期間である。」

「【0073】第1のサブフレーム期間(SF1)は、第1のアドレス期間(Ta1)と第1のサステイン期間(Ts1)とからなる。アドレス期間は、第1のライン期間(L1)?第nのライン期間(Ln)に分割される。
【0074】第1のライン期間(L1)は、ゲート信号線(G1)に選択信号が入力され、ゲート信号線(G1)に接続されているスイッチング用TFTのすべてがオンの状態になる期間である。
【0075】ゲート信号線(G1)に接続されているスイッチング用TFTがオンの状態で、ソース信号線(S1?Sm)に順にデジタルデータ信号が入力される。デジタルデータ信号は、オン状態になったスイッチング用TFTを介して電流制御用TFTのゲート電極に入力される。
【0076】そして、ソース信号線(S1?Sm)に入力されたデジタルデータ信号は、オンの状態のスイッチング用TFTを介して電流制御用TFTのゲート電極に入力される。また、コンデンサーにもデジタルデータ信号が入力され保持される。
【0077】コンデンサーにデジタルデータ信号が保持されているため、電流制御用TFTのゲート電極の電位は、ゲート信号線(G1)に接続されているスイッチング用TFTがオフの状態になっても保持される。」
「【0080】上述した動作を第nのライン期間まで繰り返し、すべての画素にデジタルデータ信号が入力される。すなわち、すべての画素にデジタルデータ信号が入力されるまでの期間が、アドレス期間である。なお、すべての画素にデジタルデータ信号が入力される期間と垂直帰線期間とを合わせてアドレス期間としてもよい。
【0081】アドレス期間は電源供給線(V1?Vn)の電位が、電流制御用TFTのゲート電極の電位に比べて低電位に保たれている。このため、電流制御用TFTはオフの状態となる。しかし、整流用TFTには順方向に電圧がかかり、整流用TFTを介して、有機発光素子には逆バイアスがかかる。このとき、有機発光素子には電流が流れないため、有機発光素子は非発光の状態に保たれる。
【0082】第1のアドレス期間(Ta1)が終了すると第1のサステイン期間(Ts1)が始まる。サステイン期間が始まると、交流電源から出力される電圧の極性が変わる。交流電源から入力される波形が変わることで、電源供給線の電位(V1?Vn)が対向電極の電位(C)に比べて高電位になる。
【0083】サステイン期間に電流制御用TFTがオンの状態になり、有機発光素子にしきい値以上の電圧がかかると有機発光素子は発光する。ただし、電流制御用TFTのゲートに非発光のデジタルデータ信号が書きこまれていた画素においてはオフの状態が維持される。いずれにしても、アドレス期間に印加されていた有機発光素子の逆バイアスは除かれる。
【0084】こうして、有機発光素子が発光する任意のサブフレーム期間においてアドレス期間とサステイン期間とで極性の異なる電圧が有機発光素子にかかる交流の駆動がされる。なお、本発明の回路を用いた交流の駆動の方法は、これに限定されるものではない。
【0085】第1のサステイン期間が終わると、交流電源から出力される電圧の極性が変わり、第1のサブフレーム期間が終わる。第1のサブフレーム期間が終わると、第2のサブフレーム期間が始まる。
【0086】第1のサステイン期間が終わり、交流電源から出力される電圧の極性が変わると、電源供給線の電位より電流制御用TFTのゲートの電位がしきい値以上低くなり、オフの状態になる。すると、整流用TFTがオンの状態になり、すべての画素の有機発光素子は逆バイアスがかかることで非発光の状態になる。」

「【0091】本実施の形態によれば、整流用TFTを各画素に設け、交流電源を用いて電源供給線、対向電極の電位の双方を変えるだけの簡便な手段で、有機発光素子に加える電圧の極性を変えて、交流駆動をすることができる。」

上記記載から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる(括弧内に、認定に用いた引用箇所を記載した。)。
「有機発光素子に交流電圧を加えて駆動を行い、有機発光素子の輝度の低下を防止して、表示品位の向上を図る構成の有機発光ディスプレイの駆動方法( 【0027】、【0066】)であって、
各画素100には、ゲート信号線(Gj)、ソース信号線(Si)から信号が入力され、各画素はスイッチング用TFT101、電流制御用TFT102、コンデンサー103、整流用TFT104、有機発光素子105を有し、交流電源106は電源供給線(Vi)と有機発光素子105の対向電極に電位を与えており(【0053】)、
スイッチング用TFT101のゲート電極は、選択信号を入力するゲート信号線(Gj)に接続され、スイッチング用TFTのソースとドレインとは、画像データ信号(以降、デジタルデータ信号と称する)を入力するソース信号線(Si)に、他方が電流制御用TFT102のゲート電極及び各画素が有するコンデンサー103の一方の電極にそれぞれ接続され、コンデンサーの他方の電極は電源供給線(Vi)に接続され、コンデンサー103は、スイッチング用TFT102が非選択状態にあるとき、電流制御用TFT102のゲート電圧を保持するために設けられ(【0054】)、
電流制御用TFT102は、ソースとドレインとが、一方は電源供給線(Vi)に、他方は有機発光素子105の画素電極にそれぞれ接続され(【0055】)、
整流用TFT104のソースとドレインとは、一方が電源供給線(Vi)に、他方が有機発光素子106の画素電極にそれぞれ接続され、整流用TFT104のゲート電極は電源供給線(Vi)に接続され、整流用TFT104は、pチャネル型であり、そのゲート電極とソースまたはドレインの一方が接続されているため、有機発光素子の側から電源供給線の側へのみ電流が流れやすい特性であり(【0056】、【0058】)、
交流電源106は、有機発光素子105の対向電極と、電源供給線(Vi)とに接続され、対向電極の電位と、電源供給線の電位とは双方の電位を同時に変えて交流駆動を行い、電流制御用TFTがオンの状態になったときに有機発光素子が発光し、(【0060】)、
1フレーム期間(F)は、n個のサブフレーム期間(SF1?SFn)に分割され(【0067】)、1つのサブフレーム期間はアドレス期間(Ta)とサブフレーム期間(Ts)とに分けられ(【0069】)、
すべての画素にデジタルデータ信号が入力されるまでの期間が、アドレス期間であって(【0080】)、デジタルデータ信号は、スイッチング用TFTを介して電流制御用TFTのゲート電極に入力され、また、コンデンサーにもデジタルデータ信号が入力され保持され(【0079】)、アドレス期間は電源供給線(V1?Vn)の電位が、電流制御用TFTのゲート電極の電位に比べて低電位に保たれており、このため、電流制御用TFTはオフの状態となるが、しかし、整流用TFTには順方向に電圧がかかり、整流用TFTを介して、有機発光素子には逆バイアスがかかり、このとき、有機発光素子には電流が流れず(【0081】)、
アドレス期間(Ta1)が終了するとサステイン期間(Ts1)が始まり、サステイン期間が始まると、交流電源から出力される電圧の極性が変わり(【0082】)、サステイン期間に電流制御用TFTがオンの状態になり、有機発光素子にしきい値以上の電圧がかかると有機発光素子は発光し(【0083】)、
サステイン期間が終わり、交流電源から出力される電圧の極性が変わると、電源供給線の電位より電流制御用TFTのゲートの電位がしきい値以上低くなり、オフの状態になり、すると、整流用TFTがオンの状態になり、すべての画素の有機発光素子は逆バイアスがかかることで非発光の状態になる(【0086】)、
有機発光ディスプレイの駆動方法 。」

(引用例2)
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-26734号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0026】
図4は、例えば図1に示した画像表示装置の発光部に設けられる画素回路(1画素)の構成を示す図である。同図に示す画素回路は、マトリックス状に配列されており、各画素回路は、有機EL素子の一つである有機発光素子OLED、駆動トランジスタTd、閾値電圧検出用トランジスタTsおよび閾値電圧(Vth)や画像信号電位を保持する容量Csを備えるように構成されている。
【0027】
図4において、駆動トランジスタTdは、ゲート電極・ソース電極間に与えられる電位差に応じて有機発光素子OLEDに流れる電流量を制御するためのドライバ素子である。また、閾値電圧検出用トランジスタTsは、オン状態となったときに、駆動トランジスタTdのゲート電極とドレイン電極とを電気的に接続することにより、駆動トランジスタTdのゲート電極からドレイン電極に向かって電流を流し、駆動トランジスタTdのゲート電極・ソース電極間の電位差を駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthに近づけ、結果的に、駆動トランジスタTdのゲート電極・ソース電極間の電位差を閾値電圧Vthに近づけるもしくは閾値電圧Vthとする機能(以下、「Vth検出機能」という)を有している。」

「【0030】
第1電源線11および第2電源線12は、有機EL素子OLEDや駆動トランジスタTdに電圧を供給するためのものであり、供給電圧は可変可能となっている。走査線13は、閾値電圧検出用トランジスタTsを制御するための信号を供給する。画像信号線14は、有機発光素子OLEDの発光輝度に対応する画像信号を容量Csに供給する。
【0031】
つぎに、図4に示す画素回路の動作について、図5?図11を参照して説明する。ここで、図5は、図4に示した画素回路の動作を説明するためのシーケンス図であり、図1に示した駆動IC5の制御下で行われる。また、図6?図11は、図5において区分された6つの期間であるCsリセット期間(図6)、準備期間(図7)、Vth検出期間(図8)、書き込み期間(図9)、Coledリセット期間(図10)および発光期間(図11)の各区間の動作を説明するための図である。なお、図6?図11において、有機発光素子OLEDに並列に接続されるColedは、有機発光素子OLEDが固有に有している素子容量である。
【0032】
(Csリセット期間)
Csリセット期間の動作については、図5および図6を参照して説明する。Csリセット期間では、第1電源線11が高電位(VDD)、第2電源線12が高電位(VDD)、走査線13が高電位(VgH)、画像信号線14がゼロ電位(GND)とされる。これにより、図5に示すように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオン、駆動トランジスタTdがオフとされ、第1電源線11→有機発光素子OLED→閾値電圧検出用トランジスタTs→容量Csという経路で電流が流れ、容量Csが充電されることにより、容量Csの電荷がリセットされる。なお、このCsリセット期間で容量Csを充電する理由は、容量Csに書き込まれている1フレーム前の画像信号電位をリセットするためである。
【0033】
ここで、駆動トランジスタTdのゲート(A点)および駆動トランジスタTdのドレイン(B点)の各電位をVa,Vbとするとき、このCsリセット期間開始直後およびCsリセット期間終了時におけるVa,Vbは、つぎのように表すことができる。なお、有機発光素子OLEDの両端の電圧をVoledとする。
【0034】
・Csリセット期間の開始直後
Va=VDD+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
Vb=VDD-Voled
…(1)
・Csリセット期間の終了時
Va=Vb=VDD
…(2)
【0035】
なお、実際のトランジスタには、一般的にゲート・ソース間およびゲート・ドレイン間に寄生容量が存在し、駆動トランジスタTdのゲート(A点)、ドレイン(B点)の各電位は、これらの寄生容量の影響を若干受ける。しかしながら、本発明にかかる画像表示装置の駆動方法を説明する上で、これらの寄生容量の影響は無視することができる。そこで、上記式およびこれ以降に示す式においては、トランジスタに存在する寄生容量を含まない式を提示する。
【0036】
(準備期間)
準備期間の動作については、図5および図7を参照して説明する。準備期間では、第1電源線11がマイナス電位(-VE)、第2電源線12がゼロ電位(GND)、走査線13が低電位(VgL)、画像信号線14が高電位(VgH)とされる。これにより、図7に示すように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオフ、駆動トランジスタTdがオンとされ、第2電源線12→駆動トランジスタTd→素子容量Coledという経路で電流が流れ、素子容量Coledに電荷が蓄積される。なお、この準備期間で素子容量Coledに電荷を蓄積する理由は、後述するVth検出期間に駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧を閾値電圧に近づける際に、素子容量Coledを駆動トランジスタTdのドレイン・ソース間に流す電流の供給源として作用させるためである。
【0037】
なお、Csリセット期間と同様に、この準備期間における開始直後および終了時におけるVa,Vbを示すと、以下のように表すことができる。
【0038】
・準備期間の開始直後
Va=VDD+VdH
Vb=-VE
…(3)
・準備期間の終了時
Va=VDD+VdH
Vb=GND
…(4)
【0039】
(Vth検出期間)
つぎに、Vth検出期間の動作について図5および図8を参照して説明する。Vth検出期間では、第1電源線11がゼロ電位(GND)、走査線13が高電位(VgH)とされる。一方で、画像信号線14が高電位(VdH)に、第2電源線12がゼロ電位(GND)に維持される。これにより、図8に示すように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオンとなり、駆動トランジスタTdのゲートとドレインとが接続される。
【0040】
また、容量Csおよび素子容量Coledに蓄積されていた電荷が放電され、容量Cs→閾値電圧検出用トランジスタTs→駆動トランジスタTd→第2電源線12および素子容量Coled→駆動トランジスタTd→第2電源線12という経路で電流が流れる。そして、駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vthに達すると、駆動トランジスタTdがオフとされるため、結果的に、駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthが検出される。
【0041】
また、Vth検出期間の開始直後および終了時におけるVa,Vbは、以下のとおりである。
【0042】
・Vth検出期間の開始直後
Va=VDD+VdH
Vb=GND
…(5)
・Vth検出期間の終了時
Va=Vb=Vth
…(6)
【0043】
(書き込み期間)
さらに、書き込み期間の動作について図5および図9を参照して説明する。書き込み期間では、画像信号電位(-Vdata)を容量Csに反映させることにより、駆動トランジスタTdのゲート電位を所望電位に変化させることが行われる。より詳細には、第1電源線11がゼロ電位(GND)に、第2電源線12がゼロ電位(GND)にそれぞれ維持される。また、画像信号線14は、Vth検出期間時の印加電位(VdH)から画像信号電位(Vdata)を差し引いた分の電位(VdH-Vdata)とされ、走査線13は、書き込み期間内の所定期間において、高電位(VgH)とされる。
【0044】
これにより、図9に示したように、閾値電圧検出用トランジスタTsがオン、素子容量Coledに蓄積された電荷が放電され、素子容量Coled→閾値電圧検出用トランジスタTs→容量Csという経路で電流が流れる。すなわち、素子容量Coledに蓄積されていた電荷が容量Csに移動する。この結果、容量Csには、画像信号電位(Vdata)に基づいて決定される所定の電荷が蓄積される。
【0045】
また、書き込み期間の開始直後および終了時におけるVa,Vbは、以下のとおりである。
【0046】
・書き込み期間の開始直後
Va=Vth-Vdata
Vb=Vth
…(7)
・書き込み期間の終了時
Va=Vb=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
…(8)
【0047】
なお、書き込み期間では、容量Csと素子容量Coledとが直列に接続されるので、容量Csの一端(駆動トランジスタTdのゲートに接続される端)の電位(すなわちA点)の低下量は、画像信号線14の電位低下量Vdataとはならず、上式のように容量Csと素子容量Coledとの容量比の影響を受ける。」

「【0052】
(発光期間)
最後に、発光期間の動作について図5および図11を参照して説明する。発光期間では、第1電源線11が高電位(VDD)、第2電源線12がゼロ高電位(GND)とされる。一方、走査線13が低電位(VgL)に、画像信号線14が高電位(VdH)に維持される。これにより、図11に示したように、駆動トランジスタTdがオン、閾値電圧検出用トランジスタTsのオフが継続されるとともに、有機発光素子OLEDに順バイアスの電圧が印加されるので、有機発光素子OLED→駆動トランジスタTd→第2電源線12という経路で電流が流れ、有機発光素子OLEDが発光する。
【0053】
また、発光期間におけるVa,Vbは、以下のとおりである。
・発光期間の開始直後および終了時
Va=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata
Vb=VDD-Voled
…(11)」

上記記載から、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる(括弧内に、認定に用いた引用箇所を記載した。)。
「画像表示装置の発光部に設けられる画素回路は、マトリックス状に配列されており、各画素回路は、有機EL素子の一つである有機発光素子OLED、駆動トランジスタTd、閾値電圧検出用トランジスタTsおよび閾値電圧(Vth)や画像信号電位を保持する容量Csを備えるように構成され(【0026】)、
駆動トランジスタTdは、ゲート電極・ソース電極間に与えられる電位差に応じて有機発光素子OLEDに流れる電流量を制御するためのドライバ素子であり、また、閾値電圧検出用トランジスタTsは、オン状態となったときに、駆動トランジスタTdのゲート電極とドレイン電極とを電気的に接続することにより、駆動トランジスタTdのゲート電極からドレイン電極に向かって電流を流し、駆動トランジスタTdのゲート電極・ソース電極間の電位差を駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthに近づけ、結果的に、駆動トランジスタTdのゲート電極・ソース電極間の電位差を閾値電圧Vthに近づけるもしくは閾値電圧Vthとする機能(以下、「Vth検出機能」という)を有し(【0027】)、
第1電源線11および第2電源線12は、有機EL素子OLEDや駆動トランジスタTdに電圧を供給するためのものであり、画像信号線14は、有機発光素子OLEDの発光輝度に対応する画像信号を容量Csに供給し(【0030】)、
画素回路の動作は、Csリセット期間、準備期間、Vth検出期間、書き込み期間、および発光期間の各区間の動作を含み、有機発光素子OLEDに並列に接続されるColedは、有機発光素子OLEDが固有に有している素子容量であり(【0031】)、

(Csリセット期間)
Csリセット期間では、容量Csが充電されることにより、容量Csの電荷がリセットされ(【0032】)、ここで、駆動トランジスタTdのゲート(A点)の電位をVaとするとき、Csリセット期間終了時におけるVaは(【0033】)、
Va=VDD (【0034】)であり、

(準備期間)
準備期間では、第1電源線11がマイナス電位(-VE)、第2電源線12がゼロ電位(GND)、駆動トランジスタTdがオンとされ、第2電源線12→駆動トランジスタTd→素子容量Coledという経路で電流が流れ、素子容量Coledに電荷が蓄積され(【0036】)、

(Vth検出期間)
Vth検出期間では、閾値電圧検出用トランジスタTsがオンとなり、駆動トランジスタTdのゲートとドレインとが接続され(【0039】)、また、容量Csおよび素子容量Coledに蓄積されていた電荷が放電され、容量Cs→閾値電圧検出用トランジスタTs→駆動トランジスタTd→第2電源線12および素子容量Coled→駆動トランジスタTd→第2電源線12という経路で電流が流れ、そして、駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vthに達すると、駆動トランジスタTdがオフとされるため、結果的に、駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthが検出され(【0040】)、Vth検出期間の終了時におけるVaは(【0041】)、
Va=Vth (【0042】)であり、

(書き込み期間)
書き込み期間では、画像信号電位(-Vdata)を容量Csに反映させることにより(【0043】)、容量Csには、画像信号電位(Vdata)に基づいて決定される所定の電荷が蓄積され(【0044】)、書き込み期間の終了時におけるVaは(【0045】)、
Va=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata (【0046】)であり、

(発光期間)
発光期間では、駆動トランジスタTdがオンされるとともに、有機発光素子OLEDに順バイアスの電圧が印加されるので、有機発光素子OLED→駆動トランジスタTd→第2電源線12という経路で電流が流れ、有機発光素子OLEDが発光し(【0052】)、発光期間におけるVaは、
Va=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata(【0053】)である、
画像表示装置の発光部に設けられる画素回路の動作。」

イ 対比
本願発明1と、引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1における「有機発光素子105」が、本願発明1における「発光ダイオード」に相当する。
(イ)引用発明1における「電流制御用TFT102」は、「電流制御用TFTがオンの状態になったときに有機発光素子が発光」するから本願発明1における「発光ダイオードを駆動する第1駆動トランジスタ」に相当する。
(ウ)引用発明1において「電流制御用TFT102は、ソースとドレインとが、一方は電源供給線(Vi)に、他方は有機発光素子105の画素電極にそれぞれ接続され」ているから、引用発明1における、「電源供給線(Vi)」から「電流制御用TFT102」の「ソースとドレイン」を介して「有機発光素子105の画素電極」に至る経路が、本願発明1における「発光ダイオードに接続される第1の導電経路」に相当する。
(エ)引用発明1において「スイッチング用TFTのソースとドレインとは」、「他方が電流制御用TFT102のゲート電極及び各画素が有するコンデンサー103の一方の電極にそれぞれ接続され」ているから、「コンデンサー103の一方の電極」が「電流制御用TFT102のゲート電極」に接続されていることがわかる。
よって、引用発明1における「コンデンサー103」が、本願発明1における「第1駆動トランジスタに接続される容量素子」に相当する。
(オ)引用発明1において「整流用TFT104のソースとドレインとは、一方が電源供給線(Vi)に、他方が有機発光素子106の画素電極にそれぞれ接続され、整流用TFT104のゲート電極は電源供給線(Vi)に接続され、整流用TFT104は、そのゲート電極とソースまたはドレインの一方が接続されている」から、引用発明1における、「電源供給線(Vi)」から「整流用TFT104のソースとドレイン」(整流用TFT104は、そのゲート電極とソースまたはドレインの一方が接続されている)を介して「有機発光素子106の画素電極」に至る経路が、本願発明1における「発光ダイオードに接続され、前記第1の導電経路とは異なる第2の導電経路」に相当する。
(カ)引用発明1において、「各画素100」を有する「有機発光ディスプレイ」が、本願発明1における「複数の画素回路を有する画像表示装置」に相当する。
(キ)引用発明1における「アドレス期間」では、「デジタルデータ信号」(画像データ信号)は、「スイッチング用TFTを介して電流制御用TFTのゲート電極に入力され、また、コンデンサーにもデジタルデータ信号が入力され保持され」工程が、本願発明1における「前記容量素子の両端に印加される電圧を前記第1駆動トランジスタの前記閾値電圧よりも高い第2電圧に設定する第2設定工程と、」に相当する。
(ク)引用発明1では「電流制御用TFTがオンの状態になったときに有機発光素子が発光」するものであるから、「コンデンサー103」が「保持」する「電流制御用TFT102のゲート電圧」すなわち、「画像データ信号(以降、デジタルデータ信号と称する)」は、「電流制御用TFT102」の閾値電圧よりも高い電圧であることは明らかである。
よって、引用発明1における「アドレス期間」は、上述のとおり、「電流制御用TFT102」の閾値電圧よりも高い電圧の「デジタルデータ信号」(画像データ信号)が「スイッチング用TFTを介して電流制御用TFTのゲート電極に入力され、また、コンデンサーにもデジタルデータ信号が入力され保持され」ているから、本願発明1における「前記容量素子の両端に印加される電圧を前記第1駆動トランジスタの前記閾値電圧よりも高い第2電圧に設定する第2設定工程」に相当する。
(ケ)引用発明1における「コンデンサー103は、スイッチング用TFT102が非選択状態にあるとき、電流制御用TFT102のゲート電圧を保持するために設けられ」ているから、「アドレス期間(Ta1)が終了」し「サステイン期間(Ts1)が始ま」っても、「サステイン期間」における「電流制御用TFT102のゲート電圧」は、「電流制御用TFT102」の閾値電圧よりも高い電圧の「デジタルデータ信号」(画像データ信号)に保持されていることは明らかである。
そして、 引用発明1における「サステイン期間」では、「交流電源から出力される電圧の極性が変わり、サステイン期間に電流制御用TFTがオンの状態になり、有機発光素子にしきい値以上の電圧がかかると有機発光素子は発光」しており、また、そのとき「電源供給線(Vi)」から、「オンの状態」の「電流制御用TFT102」の「ソースとドレイン」を介して「有機発光素子105の画素電極」に至る経路へ通電されていることは明らかであるから、引用発明1における「サステイン期間」が、本願発明1における「前記第2電圧に基づいて前記第1駆動トランジスタを駆動することにより、前記発光ダイオードおよび前記第1の導電経路へ通電を行い、前記発光ダイオードを発光させる発光工程」に相当する。
(コ)引用発明1において、「電流制御用TFT102は、ソースとドレインとが、一方は電源供給線(Vi)に」「接続され」、「整流用TFT104のゲート電極は電源供給線(Vi)に接続され」ていることは、「電源供給線(Vi)」から「電流制御用TFT102」の「ソースとドレイン」を介して「有機発光素子105の画素電極」に至る経路と、「電源供給線(Vi)」から「整流用TFT104のソースとドレイン」(整流用TFT104は、そのゲート電極とソースまたはドレインの一方が接続されている)を介して「有機発光素子106の画素電極」に至る経路とが、共通の「電源供給線(Vi)」と接続されていることを意味するから、本願発明1における「前記第1の導電経路及び前記第2の導電経路は、共通の電源線(Lvs)と接続され」ることに相当する。
(サ)引用発明1の「電源供給線(Vi)」から「整流用TFT104のソースとドレイン」(整流用TFT104は、そのゲート電極とソースまたはドレインの一方が接続されている)を介して「有機発光素子106の画素電極」に至る経路が「整流用TFT104」を含み、該「整流用TFT104は、pチャネル型であり、そのゲート電極とソースまたはドレインの一方が接続されているため、有機発光素子の側から電源供給線の側へのみ電流が流れやすい特性であ」ること(接続関係に言い換えれば、「有機発光素子の側から電源供給線の側へ」電流を流すときには、整流用TFT104のゲート電極がドレインと接続され、電源供給線の側から有機発光素子の側へ電流を流すときには、整流用TFT104のゲート電極がソースと接続されること)が、本願発明1の「前記第2の導電経路は、第2駆動トランジスタを含み、前記発光ダイオードに対して順方向に電流が流れる際に、該第2駆動トランジスタのゲート電極が該第2駆動トランジスタのソース電極と電気的に接続されており、前記発光ダイオードに対して逆方向に電流が流れる際に、該第2駆動トランジスタのゲート電極が該第2駆動トランジスタのドレイン電極と電気的に接続されて」いることに相当する。
(シ)引用発明1の「アドレス期間」において、「電源供給線(Vi)」から「電流制御用TFT102」の「ソースとドレイン」を介して「有機発光素子105の画素電極」に至る経路については、「電流制御用TFTはオフの状態とな」り、「電源供給線(Vi)」から「整流用TFT104のソースとドレイン」(整流用TFT104は、そのゲート電極とソースまたはドレインの一方が接続されている)を介して「有機発光素子106の画素電極」に至る経路については、「整流用TFTには順方向に電圧がかかり、整流用TFTを介して、有機発光素子には逆バイアスがかか」ることと、本願発明1における「前記第1の導電経路及び前記第2の導電経路を介して前記発光ダイオードに逆バイアスを印加するように電荷を同時に供給し、前記発光ダイオードに電荷を蓄積する電荷蓄積工程」とは、「前記第2の導電経路を介して前記発光ダイオードに逆バイアスを印加する工程」の点で共通する。
(ス)引用発明1において「アドレス期間(Ta1)が終了するとサステイン期間(Ts1)が始まり」、「有機発光素子は発光」することと、本願発明1における「前記電荷蓄積工程は、前記発光工程よりも前に実行される」こととは、「前記逆バイアスを印加する工程は、前記発光工程よりも前に実行される」点で共通する。

以上のことから、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「発光ダイオードと、前記発光ダイオードを駆動する第1駆動トランジスタを含み、前記発光ダイオードに接続される第1の導電経路と、前記第1駆動トランジスタに接続される容量素子と、前記発光ダイオードに接続され、前記第1の導電経路とは異なる第2の導電経路と、を備えた複数の画素回路を有する画像表示装置の駆動方法において、
前記第2の導電経路を介して前記発光ダイオードに逆バイアスを印加する工程と、
前記容量素子の両端に印加される電圧を前記第1駆動トランジスタの前記閾値電圧よりも高い第2電圧に設定する第2設定工程と、
前記第2電圧に基づいて前記第1駆動トランジスタを駆動することにより、前記発光ダイオードおよび前記第1の導電経路へ通電を行い、前記発光ダイオードを発光させる発光工程と、
を備え、
前記第1の導電経路及び前記第2の導電経路は、共通の電源線(Lvs)と接続され、
前記第2の導電経路は、第2駆動トランジスタを含み、前記発光ダイオードに対して順方向に電流が流れる際に、該第2駆動トランジスタのゲート電極が該第2駆動トランジスタのソース電極と電気的に接続されており、前記発光ダイオードに対して逆方向に電流が流れる際に、該第2駆動トランジスタのゲート電極が該第2駆動トランジスタのドレイン電極と電気的に接続されており、
前記逆バイアスを印加する工程は、前記発光工程よりも前に実行される、
画像表示装置の駆動方法。」

(相違点1)
本願発明1では、「前記容量素子の両端に前記第1駆動トランジスタの閾値電圧より高い第1電圧を印加する電圧印加工程」を備えているのに対し、引用発明1では、そのような工程を備えていない点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記発光ダイオードと前記容量素子とを電気的に接続し、前記発光素子および前記容量素子に蓄積された電荷を放電することにより、前記容量素子の両端に印加される電圧を前記第1駆動トランジスタの閾値電圧に設定する第1設定工程」を備えているのに対し、引用発明1では、そのような工程を備えていない点。

(相違点3)
本願発明1では、発光ダイオードに逆バイアスを印加する工程が、「前記第1の導電経路及び前記第2の導電経路を介して前記発光ダイオードに逆バイアスを印加するように電荷を同時に供給し、前記発光ダイオードに電荷を蓄積する電荷蓄積工程」であるのに対し、
引用発明1では、「電源供給線(Vi)」から「整流用TFT104のソースとドレイン」(整流用TFT104は、そのゲート電極とソースまたはドレインの一方が接続されている)を介して「有機発光素子106の画素電極」に至る経路(本願発明1における「第2の導電経路」に相当する。)については、「整流用TFTには順方向に電圧がかかり、整流用TFTを介して、有機発光素子には逆バイアスがかか」っているものの、このとき「アドレス期間」において、「電源供給線(Vi)」から「電流制御用TFT102」の「ソースとドレイン」を介して「有機発光素子105の画素電極」に至る経路(本願発明1における「第1の導電経路」に相当する。)については、「電流制御用TFTはオフの状態とな」り、該経路は、有機発光素子に逆バイアスをかけるのに寄与しておらず、また、「有機発光素子には逆バイアスがかか」ることが、前記有機発光素子に電荷を供給、蓄積する電荷蓄積工程であるか、明らかでない点。

ウ 判断
上記相違点について検討するにあたり、まず、(相違点3)について検討する。
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された引用例2(特開2008-26734号公報)には、上記「ア 刊行物の記載事項」「(引用例2)」に記載したとおりの発明(引用発明2)が記載されている。

(イ)引用発明1は、「アドレス期間」において「有機発光素子に逆バイアスをかける」際、「電源供給線(Vi)」から「電流制御用TFT102」の「ソースとドレイン」を介して「有機発光素子105の画素電極」に至る経路(本願発明1における「第1の導電経路」に相当する。)の「電流制御用TFT102」が、回路の構成上、「オフの状態とな」り、電流制御用TFTを介してでは有機発光素子には十分な逆バイアスがかからないため、「整流用TFT」を「ソースとドレインとが、一方は電源供給線(Vi)に、他方は有機発光素子105の画素電極にそれぞれ接続され」、「そのゲート電極とソースまたはドレインの一方が接続されている」ように設け(本願発明1における「第2の導電経路」に相当する。)、「電流制御用TFTはオフの状態とな」っても、整流用TFTには順方向に電圧がかかり、整流用TFTを介して、有機発光素子には逆バイアスがかか」るようにした発明である。
これに対し、引用発明2は、「第1電源線11がマイナス電位(-VE)、第2電源線12がゼロ電位(GND)、駆動トランジスタTdがオンとされ」、「第2電源線12→駆動トランジスタTd→素子容量Coledという経路」(本願発明1における「第1の電流経路」)を導通させて有機発光素子OLEDに逆バイアスを印加する発明である。
よって、引用発明1に、引用発明2における構成を採用し、引用発明1の「アドレス期間」において「有機発光素子に逆バイアスをかける」際、引用発明1における「電流制御用TFT」が「オン」するようにしたのでは、引用発明1の解決課題自体が失われる結果となり、引用発明1が「電流制御用TFTはオフの状態となるが、しかし、整流用TFTには順方向に電圧がかかり、整流用TFTを介して、有機発光素子には逆バイアスがかか」るようにしたことの技術的意義が無意味なものとなる。

(ウ)さらに、引用発明2の「(準備期間)」において「駆動トランジスタTd」を「オン」とする理由は、駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthを検出する準備を行うためであるから、引用発明1に引用発明2を適用し、引用発明1において「電流制御用TFT102」の閾値電圧Vthの検出の準備のための「(準備期間)」を新たに設け、「電流制御用TFT」を「オン」の状態とする構成を採用したとしても、当該「(準備期間)」は、引用発明1の「アドレス期間」(引用発明2おける「(書き込み期間)」に相当する。)より以前に実行すべき期間であるから、引用発明1の「アドレス期間」内に、引用発明2の(準備期間)に倣って「電流制御用TFT」をオンとすべき技術的理由はないものといえる。

(エ)よって、引用発明1において、(相違点3)に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。

エ まとめ
本願発明1は、上記「(2)」「イ 対比」の(相違点1)及び(相違点2)について判断するまでもなく、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)小括
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
請求項1(補正2による)に対する当審拒絶理由の概要は、次のとおりである(なお、当審拒絶理由の対象とされた請求項2(補正2による)は、本件補正により削除された。また、当審における拒絶理由通知で引用した「引用例1」、「引用例2」を、以下、混乱の生じないよう、それぞれ「引用例A」、「引用例B」と言い換える。)。
「理由2
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例A:特開2008-26734号公報
引用例B:特開2007-179021号公報

・請求項1に係る発明について
トランジスタに流れる電流が少ないほどトランジスタの劣化が少ないことは、いうまでもないことであるから、引用例Aに記載された発明において、引用例Bに記載された発明のように、「交流用トランジスタ103」を、その交流用トランジスタ103のソース電極もしくはドレイン電極を、一方が電源線V(引用例Aに記載された発明における「第2電源線12」)に、もう一方が発光素子104(引用例Aに記載された発明における「有機発光素子OLED」)の画素電極に接続し、引用例Aに記載された発明の「準備期間」において、「第2電源線12→駆動トランジスタTd→素子容量Coledという経路」(つまり本願発明1でいう「第1の導電経路」)だけでなく、「第2電源線12→交流用トランジスタ103→素子容量Coledという経路」(つまり、本願発明1でいう「第2の導電経路」)でも同時に電流が流れるようにし、本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。」

2 当審拒絶理由の判断
(1)刊行物の記載事項
(引用例A)
引用例Aの記載事項及び引用例Aに記載された発明(以下、「引用発明A」という。)は、引用例2について、前記「第3」「2」「(2)」「ア」「(引用例2)」に記載したとおりである。

(引用例B)
本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2007-179021号公報(以下、「引用例B」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0003】
また、画素を発光ダイオード(LED)などの発光素子で形成した、いわゆる自発光型の表示装置が注目を浴びている。このような自発光型の表示装置に用いられる発光素子としては、有機発光ダイオード(OLED(Organic Light Emitting Diode)、有機EL素子、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)素子などとも言う)が注目を集めており、有機ELディスプレイなどに用いられるようになってきている。発光素子は自発光型であるため、液晶表示装置と違いバックライト等の光源を必要としない。このため表示装置の軽量化や薄型化を実現する手段として有望視され、近年液晶テレビに追随して大画面ELディスプレイの開発も行われている。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また画素電極と対向電極が短絡してしまい、画素領域に発光しない領域が形成されてしまう初期不良がある。短絡は、発光素子の形成前に異物(ゴミ)が付着することによって起こる場合と、陽極の形成時に、該陽極に微細な突起が生じてしまったために電界発光層にピンホールが生じて起こる場合と、電界発光層の膜厚が薄いために電界発光層が均一に成膜されずにピンホールが生じて起きる場合などがある。このような初期不良が発生した画素では、信号に応じた点灯及び非点灯が行われず、電流のほとんどすべてが短絡部を流れて素子全体が消光する現象が生じたり、特定の画素が点灯又は非点灯しない現象が生じたりして、画像の表示が良好に行われない。
【0008】
また上述の初期不良とは別に、時間の経過に伴って、新たに発生した陽極と陰極の短絡
に起因する進行性不良(経時劣化ともいう)が生じることがある。時間の経過に伴って新たに発生した陽極と陰極の短絡は、陽極の形成時に生じた微細な突起により発生する。つまり、一対の電極間に電界発光層が挟まれた積層体には、潜在的な短絡箇所が存在しており、時間の経過に伴って短絡箇所が露顕する。また進行性不良は、陽極と陰極の短絡の他に、電界発光層と陰極の間の微少な空隙が、時間と共に広がることで、電界発光層と陰極の間の接触不良を引き起こすことにより生じるとも言われている。
【0009】
逆方向の駆動電圧を印加することで、初期不良については、短絡箇所を炭化または酸化することで絶縁化し、更に進行するのを抑えることができる。進行性不良についても、短絡箇所を炭化または酸化することで絶縁化させたり、電界発光層と陰極の間の空隙の広がりを抑制させたりすることで、その発生及び進行を抑えることが可能である。
【0010】
不良の進行を抑えるためには、発光素子を交流で駆動する必要がある。発光素子を交流で駆動するとは、発光素子に極性の異なる電圧を交互に加えることをいう。すなわち、発光に必要な順方向の電圧の他に、逆方向の電圧を加えることをいう。順方向の電圧と逆方向の電圧とは、強さや印加時間が必ずしも等しくなくてもよい。ごくわずかな逆方向の電圧しか印加しない場合であっても、交流と称することにする。本発明は発光素子に逆方向の電圧を印加し、逆方向バイアスの電流を流すことで交流駆動を行い、発光素子の不良を抑制する。
【0011】
なお、短絡箇所を絶縁化するためには、短絡箇所を絶縁化するのに十分な大電流を流す必要がある。通常短絡箇所に絶縁化するのに十分な電流の値は、発光素子を発光させるために順方向に流れる電流値よりもはるかに大きいことが望ましいとされる。」

「【発明の効果】
【0032】
上記構成によって、発光素子に順方向の電圧を印加する際には、発光素子に一定の電流を流すことが可能であるとともに、発光素子に逆方向の電圧を印加する際には、短絡箇所を絶縁化するのに十分な電流を短絡箇所に流すことができ、発光素子の寿命を延ばすことが可能である。つまり、発光素子に逆方向の電圧を印加することで、該発光素子の初期不良や進行性不良を抑制し、電界発光層の劣化による輝度の低下を防ぐことができる。」

「【0052】
なお、本明細書中では、発光素子(EL素子)は、電界が生じると発光する電界発光層(EL層)を、陽極及び陰極で挟んだ構造を有する素子を示すものとして説明するが、これに限定されない。」

「【0089】
表示装置は、ディスプレイと、ディスプレイに信号を入力する周辺回路によって構成されている。
【0090】
ディスプレイの構成について、図5にブロック図を示す。図5において、ディスプレイ300は、信号線駆動回路301と、走査線駆動回路302と、画素部303とによって構成されている。画素部303は、マトリクス状に画素が配置された構成となっている。」

「【0272】
(実施の形態8)
(回路構成7)
本実施の形態においては、実施の形態1で述べた図1の回路構成とは別の構成について述べる。
【0273】
図26に示す画素を構成する回路は、発光素子104と、映像信号の画素への入力を制御するためのスイッチング素子として用いるトランジスタ(スイッチング用トランジスタ101)と、発光素子104に流れる電流値を制御するトランジスタ(駆動用トランジスタ102)と、発光素子104に逆方向の電圧を印加する際、発光素子104に逆方向のバイアス電流を流すトランジスタ(交流用トランジスタ103)とを有している。スイッチング用トランジスタ101、駆動用トランジスタ102及び交流用トランジスタ103は同じ極性を有し、本発明の特徴として、それらのトランジスタにN型のトランジスタを用いるものとする。さらに本実施の形態には容量素子を設けていないが、映像信号の電位を保持するための容量素子として設けても良い。
【0274】
図26に示すように、スイッチング用トランジスタ101のゲート電極は、走査線Gに接続されている。また、スイッチング用トランジスタ101のソース電極もしくはドレイン電極は、一方が信号線Sに、もう一方が駆動用トランジスタ102のゲート電極に接続されている。そして、駆動用トランジスタ102のソース電極もしくはドレイン電極は、一方が電源線Vに、もう一方が発光素子104の画素電極に接続されている。
【0275】
また、本実施の形態では、交流用トランジスタ103のソース電極もしくはドレイン電極は、一方が電源線Vに、もう一方が発光素子104の画素電極に接続される。また、交流用トランジスタ103のゲート電極は、発光素子104の画素電極と接続される交流用トランジスタ103のソース電極もしくはドレイン電極と接続される。
【0276】
また、スイッチング用トランジスタ101が非選択状態(オフの状態)にある時、駆動用トランジスタ102のゲート容量によって駆動用トランジスタ102のゲート電位が保持される。なお、図26では容量素子を設けず、駆動用トランジスタのゲート容量によってゲート電位を保持させる構成を示したが、本発明はこの構成に限定されず、容量素子を設けた構成にしても良い。」

「【0285】
次に、図26の回路構成における動作について、図27を用いて説明する。
【0286】
まず図27(A)の書き込み期間において、走査線Gが選択されると、走査線Gにゲート電極が接続されているスイッチング用トランジスタ101がオンの状態になる。そして、信号線Sに入力された映像信号の電位Vsigが、スイッチング用トランジスタ101を介して駆動用トランジスタ102のゲート電極に入力され、駆動用トランジスタ102のゲート容量によってゲート電位が保持される。」

「【0290】
次に図27(B)の表示期間では、走査線Gの電位を制御することでスイッチング用トランジスタ101をオフの状態する。そして、書き込み期間において書き込まれた映像信号の電位Vsigを駆動用トランジスタ102のゲート容量によって保持しているため、駆動用トランジスタ102はオンの状態となる。
【0291】
また、電源線Vの電位Vdd1は発光素子104の対向電極の電位Vssよりも高い(つまり、Vdd1>Vssを満たす)電位に設定されるため、発光素子104へ順方向のバイアス電流が流れ、発光素子104は発光する。
【0292】
一方、電源線Vの電位Vdd1は発光素子104の対向電極の電位Vssよりも高く設定されるため、電源線Vと接続される交流用トランジスタ103の電極はドレイン電極となり、発光素子104の画素電極と接続される電極はソース電極となる。さらに、該ソース電極と交流用トランジスタ103のゲート電極とが接続されるため、交流用トランジスタ103はオフの状態となる。
【0293】
なお、書き込み期間において、映像信号の電位Vsigにより駆動用トランジスタ102がオンになる場合について説明したが、映像信号の電位Vsigにより駆動用トランジスタ102がオフの状態になる場合、発光素子104への順方向のバイアス電流の供給は行なわれないため、表示期間においても、発光素子104への順方向のバイアス電流の供給は行われない。
【0294】
次いで、図27(C)の逆方向バイアス期間(非点灯期間)において、走査線Gの電位を制御することでスイッチング用トランジスタ101をオフの状態する。
【0295】
また、電源線Vの電位Vss1’を発光素子104の対向電極の電位Vssよりも低い(つまり、Vss>Vss1’を満たす)電位に設定する。それにより、電源線Vと接続される交流用トランジスタ103の電極はソース電極となり、発光素子104の画素電極と接続される電極はドレイン電極となる。さらに、該ドレイン電極と交流用トランジスタ103のゲート電極とが接続されるため、交流用トランジスタ103はオンの状態となる。これにより、発光素子104に逆方向の電圧が印加され、発光素子104、及び交流用トランジスタ103において、逆方向のバイアス電流が流れる。
【0296】
なお、書き込み期間及び表示期間において、映像信号の電位Vsigにより駆動用トランジスタ102がオンの状態となる場合、逆バイアス期間においても、映像信号の電位Vsigをゲート容量が保持しているため、駆動用トランジスタはオンの状態となる。それにより、駆動用トランジスタ102に逆方向のバイアス電流が流れる。しかし、前述したように駆動用トランジスタ102のL/Wを、交流用トランジスタ103のL/Wよりも大きくすることで、交流用トランジスタ103に流れる電流値に比べて、駆動用トランジスタ102に流れる電流値は小さくなる。勿論、書き込み期間及び表示期間において、駆動用トランジスタ102がオフの状態となる場合は、駆動用トランジスタ102に電流は供給されない。」

「【0300】
以上により、本発明の構成では、逆方向の電圧を印加する際に、短絡箇所を絶縁化するのに十分な電流を流すことができ、発光素子の寿命を延ばすことが可能である。また、回路構成において単極性のトランジスタで構成することができるため安価に製造することが可能となる。」

上記記載から、引用例Bには、次の発明(以下、「引用発明B」という。)が記載されているものと認められる(括弧内に、認定に用いた引用箇所を記載した。)。
「画素を構成する回路構成における動作(【0273】、【0285】)であって、
画素を構成する回路は、発光素子104と、映像信号の画素への入力を制御するためのスイッチング素子として用いるトランジスタ(スイッチング用トランジスタ101)と、発光素子104に流れる電流値を制御するトランジスタ(駆動用トランジスタ102)と、発光素子104に逆方向の電圧を印加する際、発光素子104に逆方向のバイアス電流を流すトランジスタ(交流用トランジスタ103)とを有し(【0273】)、
交流用トランジスタ103のソース電極もしくはドレイン電極は、一方が電源線Vに、もう一方が発光素子104の画素電極に接続され(【0275】)、
回路構成における動作について(【0285】)は、書き込み期間(【0286】)の次の表示期間(【0290】)では、発光素子104へ順方向のバイアス電流が流れ、発光素子104は発光し、(【0291】)、
次いで、発光素子に逆方向の電圧を印加し、逆方向バイアスの電流を流すことで交流駆動を行い、発光素子の不良を抑制する(【0010】)ため、逆方向バイアス期間(非点灯期間)において、電源線Vの電位Vss1’を発光素子104の対向電極の電位Vssよりも低い(つまり、Vss>Vss1’を満たす)電位に設定し、それにより、電源線Vと接続される交流用トランジスタ103の電極はソース電極となり、発光素子104の画素電極と接続される電極はドレイン電極となり、さらに、該ドレイン電極と交流用トランジスタ103のゲート電極とが接続されるため、交流用トランジスタ103はオンの状態となり、これにより、発光素子104に逆方向の電圧が印加され、発光素子104、及び交流用トランジスタ103において、逆方向のバイアス電流が流れ(【0295】)、
書き込み期間及び表示期間において、映像信号の電位Vsigにより駆動用トランジスタ102がオンの状態となる場合、逆バイアス期間においても、映像信号の電位Vsigをゲート容量が保持しているため、駆動用トランジスタはオンの状態となり、それにより、駆動用トランジスタ102に逆方向のバイアス電流が流れる(【0296】)、
画素を構成する回路構成における動作(【0273】、【0285】)。」

(2)対比
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と、引用発明Aとを対比する。
(ア)引用発明Aにおける「画像表示装置の発光部に設けられる画素回路の動作」において、「マトリックス状に配列され」た「画素回路」が、本願発明1における「複数の画素回路」に相当する。
(イ)引用発明Aにおける「有機EL素子の一つである有機発光素子OLED、駆動トランジスタTd」が、それぞれ本願発明1における「発光ダイオードと、前記発光ダイオードを駆動する第1駆動トランジスタ」に相当する。
(ウ)引用発明Aの「(準備期間)」における「第2電源線12→駆動トランジスタTd→素子容量Coledという経路で電流が流れ」る電流経路が、本願発明1における「前記発光ダイオードに接続される第1の導電経路」に相当する。
(エ)引用発明Aにおける「画像信号電位を保持する容量Cs」は、引用例Aの図4に記載されているとおり、駆動トランジスタTdのゲート(A点)に接続されているから、本願発明1における「前記第1駆動トランジスタに接続される容量素子」に相当する。
(オ)引用発明Aにおける「VDD」が、「駆動トランジスタTd」の「閾値電圧Vth」より高いことは明らかであるから、引用発明Aの「(Csリセット期間)」において「Csリセット期間では、容量Csが充電されることにより、容量Csの電荷がリセットされ、ここで、駆動トランジスタTdのゲート(A点)の電位をVaとするとき、Csリセット期間終了時におけるVaは、Va=VDDであ」ることが、本願発明1における「前記容量素子の両端に前記第1駆動トランジスタの閾値電圧より高い第1電圧を印加する電圧印加工程」に相当する。
(カ)引用発明Aにおける「(準備期間)」において、「準備期間では、第1電源線11がマイナス電位(-VE)、第2電源線12がゼロ電位(GND)、駆動トランジスタTdがオンとされ、第2電源線12→駆動トランジスタTd→素子容量Coledという経路で電流が流れ、素子容量Coledに電荷が蓄積され」ることと、本願発明1における「前記第1の導電経路及び前記第2の導電経路を介して前記発光ダイオードに逆バイアスを印加するように電荷を同時に供給し、前記発光ダイオードに電荷を蓄積する電荷蓄積工程」とは、「前記第1の導電経路を介して前記発光ダイオードに逆バイアスを印加するように電荷を同時に供給し、前記発光ダイオードに電荷を蓄積する電荷蓄積工程」の点で共通する。
(キ)引用発明Aにおける「(Vth検出期間)」において、「Vth検出期間では、閾値電圧検出用トランジスタTsがオンとなり、駆動トランジスタTdのゲートとドレインとが接続され、また、容量Csおよび素子容量Coledに蓄積されていた電荷が放電され、容量Cs→閾値電圧検出用トランジスタTs→駆動トランジスタTd→第2電源線12および素子容量Coled→駆動トランジスタTd→第2電源線12という経路で電流が流れ、そして、駆動トランジスタTdのゲート・ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vthに達すると、駆動トランジスタTdがオフとされるため、結果的に、駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthが検出され、Vth検出期間の終了時におけるVaは、Va=Vth (【0042】)であ」ることが、本願発明1における「前記発光ダイオードと前記容量素子とを電気的に接続し、前記発光素子および前記容量素子に蓄積された電荷を放電することにより、前記容量素子の両端に印加される電圧を前記第1駆動トランジスタの閾値電圧に設定する第1設定工程」に相当する。
(ク)引用発明Aにおける「(書き込み期間)」において、「書き込み期間では、画像信号電位(-Vdata)を容量Csに反映させることにより、容量Csには、画像信号電位(Vdata)に基づいて決定される所定の電荷が蓄積され、書き込み期間の終了時におけるVaは、Va=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdata であ」ることが、本願発明1における「前記容量素子の両端に印加される電圧を前記第1駆動トランジスタの前記閾値電圧よりも高い第2電圧に設定する第2設定工程」に相当する。
(ケ)引用発明Aにおける「(発光期間)」において、「発光期間では、駆動トランジスタTdがオンされるとともに、有機発光素子OLEDに順バイアスの電圧が印加されるので、有機発光素子OLED→駆動トランジスタTd→第2電源線12という経路で電流が流れ、有機発光素子OLEDが発光し、発光期間におけるVaは、Va=Vth+Coled/(Coled+Cs)×Vdataである」ことが、本願発明1における「前記第2電圧に基づいて前記第1駆動トランジスタを駆動することにより、前記発光ダイオードおよび前記第1の導電経路へ通電を行い、前記発光ダイオードを発光させる発光工程」に相当する。
(コ)引用発明Aの「(準備期間)」における「第2電源線12→駆動トランジスタTd→素子容量Coledという経路で電流が流れ」る電流経路が、「第2電源線12」から始まることと、本願発明1における「前記第1の導電経路及び前記第2の導電経路は、共通の電源線(Lvs)と接続され」ることとは、「前記第1の導電経路は電源線(Lvs)と接続され」る点で共通する。
(サ)引用発明Aの「(準備期間)」は、引用発明Aにおける「(発光期間)」より前に実行される「(Vth検出期間)」の準備期間であるから、「(発光期間)」よりも前に実行されていることは明らかである。よって、引用発明Aの「(準備期間)」が「(発光期間)」よりも前に実行されることが、本願発明1における「前記電荷蓄積工程は、前記発光工程よりも前に実行される」ことに相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明Aとの一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「発光ダイオードと、前記発光ダイオードを駆動する第1駆動トランジスタを含み、前記発光ダイオードに接続される第1の導電経路と、前記第1駆動トランジスタに接続される容量素子と、を備えた複数の画素回路を有する画像表示装置の駆動方法において、
前記容量素子の両端に前記第1駆動トランジスタの閾値電圧より高い第1電圧を印加する電圧印加工程と、
前記第1の導電経路を介して前記発光ダイオードに逆バイアスを印加するように電荷を同時に供給し、前記発光ダイオードに電荷を蓄積する電荷蓄積工程と、
前記発光ダイオードと前記容量素子とを電気的に接続し、前記発光素子および前記容量素子に蓄積された電荷を放電することにより、前記容量素子の両端に印加される電圧を前記第1駆動トランジスタの閾値電圧に設定する第1設定工程と、
前記容量素子の両端に印加される電圧を前記第1駆動トランジスタの前記閾値電圧よりも高い第2電圧に設定する第2設定工程と、
前記第2電圧に基づいて前記第1駆動トランジスタを駆動することにより、前記発光ダイオードおよび前記第1の導電経路へ通電を行い、前記発光ダイオードを発光させる発光工程と、
を備え、
前記第1の導電経路は電源線(Lvs)と接続されており、
前記電荷蓄積工程は、前記発光工程よりも前に実行される、
画像表示装置の駆動方法。」

(相違点)
本願発明1では、「発光ダイオードに接続され、第1の導電経路とは異なる第2の導電経路」を備え、「前記発光工程よりも前に実行される」、「前記発光ダイオードに電荷を蓄積する電荷蓄積工程」において、「前記第1の導電経路及び前記第2の導電経路を介して」、前記発光ダイオードに逆バイアスを印加するように電荷を同時に供給し、「前記第1の導電経路及び前記第2の導電経路は、共通の電源線(Lvs)と接続され」、「前記第2の導電経路は、第2駆動トランジスタを含み、前記発光ダイオードに対して順方向に電流が流れる際に、該第2駆動トランジスタのゲート電極が該第2駆動トランジスタのソース電極と電気的に接続されており、前記発光ダイオードに対して逆方向に電流が流れる際に、該第2駆動トランジスタのゲート電極が該第2駆動トランジスタのドレイン電極と電気的に接続されている」のに対し、
引用発明Aでは、「(発光期間)」よりも前に実行される「(準備期間)」において、「第1電源線11がマイナス電位(-VE)、第2電源線12がゼロ電位(GND)、駆動トランジスタTdがオンとされ」(本願発明1における「前記発光ダイオードに逆バイアスを印加」することに相当する。)、「第2電源線12→駆動トランジスタTd→素子容量Coledという経路」(本願発明1における「第1の電流経路」に相当する。以下同様。)で電流が流れ、「素子容量Coledに電荷が蓄積され」ることは示されているものの、「第2電源線12→駆動トランジスタTd→素子容量Coledという経路」(第1の電流経路)とは異なる「第2の導電経路」を備えることも、「(発光期間)」よりも前に実行される「(準備期間)」において、「第2電源線12→駆動トランジスタTd→素子容量Coledという経路」(第1の導電経路)だけでなく「第2の導電経路」を介して電流が流れ、「素子容量Coledに電荷が蓄積され」ることも、示されていない点。

(3)判断
そこで、上記相違点について検討すると、引用発明Bには、「交流用トランジスタ103のソース電極もしくはドレイン電極は、一方が電源線Vに、もう一方が発光素子104の画素電極に接続され」、「発光素子104、及び交流用トランジスタ103において、逆方向のバイアス電流が流れ」、「逆バイアス期間においても」、「駆動用トランジスタはオンの状態となり、それにより、駆動用トランジスタ102に逆方向のバイアス電流が流れる」ことが示されている。
従って、引用発明Bの「交流用トランジスタ103」は、「逆方向バイアス期間(非点灯期間)」において、「駆動用トランジスタ」とともに、「発光素子104」に「逆方向のバイアス電流」を流していている点で、本願発明1における「第2駆動トランジスタ」に相当するといえる。
しかし、引用発明Bの「交流用トランジスタ103」は、「発光素子に逆方向の電圧を印加し、逆方向バイアスの電流を流すことで交流駆動を行い、発光素子の不良を抑制する」ために設けられたトランジスタであって、より具体的には、「短絡箇所を絶縁化するためには、短絡箇所を絶縁化するのに十分な大電流を流す必要があ」(引用例Bの段落【0011】)り、このため、「発光素子を発光させるために順方向に流れる電流値」(同段落【0011】)(つまり、「第2駆動トランジスタ」が供給できる電流値)よりも「はるかに大きい」(同段落【0011】)電流値を逆方向バイアスの電流として流すことを可能にする必要から設けられたトランジスタである。
これに対し、引用発明Aには、「発光素子に逆方向の電圧を印加し、逆方向バイアスの電流を流すことで交流駆動を行い、発光素子の不良を抑制する」ことは課題として挙げられていないから、引用発明Aに引用発明Bを適用する動機付けがない。
また、引用発明Aにおける「第2電源線12→駆動トランジスタTd→素子容量Coledという経路」(本願発明1における「第1の導電経路」)で通電がなされる「(準備期間)」と、引用発明Bのように、交流用トランジスタ103→発光素子104という経路(本願発明1における「第2の導電経路」)において逆方向のバイアス電流が流れる該期間(非発光期間)とは、「発光期間」の前後の別々の期間なのであるから、仮に、引用発明Aに引用発明Bに記載された技術を適用し、引用発明Aにおいて引用発明Bにおける「交流用トランジスタ103」を、第2電源線12と有機発光素子OLEDの電極との間に設けたとしても、引用発明Aにおける「(準備期間)」に、引用発明Bにおける「発光素子に逆方向の電圧を印加し、逆方向バイアスの電流を流す」「交流駆動」を実行することにはならない。

3 小括
したがって、本件補正により、本願発明1は当業者が引用発明A及び引用発明Bに基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。
そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由、及び当審で通知した拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-09-27 
出願番号 特願2009-154782(P2009-154782)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09G)
P 1 8・ 537- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 清水 稔
酒井 伸芳
発明の名称 画像表示装置および画像表示装置の駆動方法  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  

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