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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1319827
審判番号 不服2015-10514  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-03 
確定日 2016-09-21 
事件の表示 特願2013-128547号「電子装置のバッテリ充電方法及びその電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月9日出願公開、特開2014-3889号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月19日(パリ条約による優先権主張2012年6月19日、韓国)の出願であって、平成27年1月29日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成27年6月3日に本件審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正(請求項の削除)がなされたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1?8に係る発明は、平成27年6月3日(受付日)の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「電子装置であって、
バッテリと、
前記バッテリの電源をUSBポートに接続された第1の外部装置に提供する第1充電回路と、ここで、前記第1充電回路は、前記電子装置が第3の外部装置の電源ソースから電源を受信するように構成された経路の逆経路を利用して前記第1の外部装置に電源を提供し、
前記第1充電回路が前記第1の外部装置に電源を提供する間、前記バッテリに電源を提供するための電源を無線で接続された第2の外部装置の電源ソースから受信する第2充電回路とを有し、
前記第2充電回路は、前記第2の外部装置の電源ソースから受信した電源を前記バッテリに供給し、
前記第1充電回路は、前記電子装置から前記第1の外部装置との接続が解除されて第3の外部装置が接続されると、前記第3の外部装置の電源ソースから供給される電源で前記バッテリを充電し、
前記第1充電回路を利用して前記バッテリに電源を提供する動作と前記第2充電回路を利用して前記バッテリに電源を提供する動作は同時に行われることを特徴とする電子装置。」

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2012-65537号公報(以下「刊行物1」という。)には、電池内蔵機器と充電装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている(なお、下線は当審で付与。)。
(ア)「【0001】
本発明は、パック電池や携帯電話などの電池内蔵機器と、この電池内蔵機器に電磁誘導作用で電力を搬送して、電池内蔵機器の内蔵電池を充電する充電装置に関する。
【背景技術】・・・
【0004】ところで、電池内蔵機器は、無接点充電台によらず、充電アダプターを接続して内蔵電池を充電する充電端子を設けたものがある。この電池内蔵機器が、充電アダプターを接続して無接点充電台に載せられると、充電アダプターと無接点充電台の両方で内蔵電池が充電される。無接点充電台は、単独で内蔵電池を最適な電流や電圧で充電するように設計され、さらに、充電アダプターも、単独で内蔵電池を最適な電流と電圧で充電するように設計されている。したがって、無接点充電台と充電アダプターの両方で内蔵電池が充電されると、内蔵電池を正常な状態で充電できなくなる。」
(イ)「【0082】
次に、電池内蔵機器として、出力コネクタを備えるバッテリパック210について、説明する。上述と同じ構成については、同様の名称を利用し、説明を省略する。
バッテリパック210は、図15に示すように、電磁誘導作用で電力を搬送して充電する送電コイル11を有する充電装置10(充電台)に載せられて、送電コイル11から電力を受け取る受電コイル205と、この受電コイル205に誘導される電力で充電される内蔵電池201と、この内蔵電池201の出力を外部に出力する電源用の出力コネクタ208と、受電コイル205に誘導される電力で内蔵電池1を充電する充電回路250を実装する回路基板(図示せず)と、この回路基板と受電コイル205と内蔵電池201とを内蔵するケーシング2とを備える。さらに、バッテリパック210は、外部電源220に接続されて充電されるサブ充電回路257も内蔵している。
【0083】
図15、図16に記載されるバッテリパック210の回路構成(ブロック図)は、慣用技術として、プラスチック製のケーシング(図示せず)に収納される。受電コイル205は、図示しないが、ケーシングの底面内側に配置され、送電コイル11と接近して、配置することができる。」
(ウ)「【0085】
(出力コネクタ、入力コネクタ)
さらに、バッテリパック210は、図15、図16に示すように、外部に接続される携帯電子機器230に電力を供給する出力コネクタ208を備えている。図のバッテリパック210は、出力コネクタ208としてUSBコネクタ208Aを備える。出力コネクタ208であるUSBコネクタ208Aは、標準USBコネクタであり、操作部を押圧したとき操作される押しボタンスイッチ216が動作して、電力を出力する。ただ、出力コネクタはUSBコネクタには特定されない。出力コネクタには、外部に接続される携帯電子機器に電力を供給できる、USBコネクタ以外のコネクタ、例えば、携帯電話に接続される電源端子を接続するコネクタ等を使用することもできる。さらに、図のバッテリパック210は、内蔵電池201を充電するための入力コネクタ218も備える。図の出力コネクタ208と入力コネクタ218は、回路基板に固定されて、定位置に配置している。
【0086】
回路基板は、図15に示すように、受電コイル205に誘導される交流を直流に変換して内蔵電池201を充電する充電回路250と、外部電源220から入力される電力で内蔵電池201を充電するサブ充電回路257(上述の実施例の充電回路71に相当する)と、充電された内蔵電池201の電圧を一定の電圧に安定化して出力するDC/DCコンバータ258と、内蔵電池201の充電状態と出力コネクタ208への放電状態とを制御する制御回路240(上述の実施例のマイコン64に相当する)とを実装している。」
(エ)「【0089】
サブ充電回路257は、入力コネクタ218に外部電源220(上述の実施例の充電アダプター80に相当)が接続されると、このことを入力電流、または入力電圧から検出できる。外部電源220が接続されると、外部電源220から電力が供給されるからである。サブ充電回路257は、外部電源220から電力が入力される状態において、外部電源220から供給される電力で内蔵電池201を充電する。ただ、バッテリパックは、充電専用の入力コネクタを設けることなく、出力コネクタを、外部から電力を入力するコネクタと外部に電力を出力するコネクタとに併用することもできる。このバッテリパックは、たとえば、出力コネクタを、切換スイッチを介してサブ充電回路とDC/DCコンバータに接続し、この切換スイッチを制御して出力コネクタをサブ充電回路とDC/DCコンバータのいずれかに接続する。」
(オ)「【0090】・・図15の制御回路240は、バッテリパック210が充電装置10にセットされたことを検出する充電台検出部41(上述の実施例の充電装置検出部61に相当)と、外部電源220の接続又は充電を検出する外部電源検出部242(上述の実施例のアダプター検出部62に相当)と、充電台検出部241と外部電源検出部242の検出信号で、内蔵電池201の充電を充電装置10と外部電源220のいずれかに選択する充電選択部243(上述の実施例の充電選択部63に相当)を備える。
【0091】
制御回路240は、バッテリパック210が充電装置10にセットされ、かつ外部電源220の接続状態において、充電選択部243でもって、充電装置10と外部電源220のいずれか一方で内蔵電池201を充電するように制御する。制御回路240は、好ましくは、バッテリパック210が充電装置10にセットされて、外部電源220が接続される状態、すなわち、充電装置10と外部電源220の両方で内蔵電池201を充電できる状態にあっては、充電装置10から電力搬送される電力で内蔵電池201を充電することなく、外部電源220から供給される電力のみで内蔵電池201を充電する。」
(カ)「【0093】・・このような構成により、外部電源220が接続されると、接続による印加電圧により、トランジスターTrのベース電位が高レベルとなり、トランジスターTrのコレクターとエミッター間が導通状態となって、入力ポートIの電位が、高レベルから低レベル(低電位、低電圧、接地状態)になる。そして、このような入力ポートの低電位状態が、接続信号として、外部電源検出部242に送信され、外部電源検出部242がこれを検出して、外部電源220の接続を検出する。」

(キ)記載事項(イ)の「内蔵電池201の出力を外部に出力する電源用の出力コネクタ208」は、(ウ)の「外部に接続される携帯電子機器230に電力を供給する出力コネクタ208」、「バッテリパック210は、出力コネクタ208としてUSBコネクタ208Aを備える」ものであるので、「内蔵電池201の出力を外部に接続される携帯電子機器230に電力供給する出力コネクタとしてのUSBコネクタ208A」といえる。
さらに、記載事項(エ)の「出力コネクタを、外部から電力を入力するコネクタと外部に電力を出力するコネクタとに併用することもできる」ことを考慮すると、記載事項(ウ)?(エ)の「出力コネクタ」及び「入力コネクタ」も、「USBコネクタ208A」といえる。

すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものと認める。
「出力コネクタを備えるバッテリパック210であって、
電磁誘導作用で電力を搬送して充電する送電コイル11を有する充電装置10に載せられて、送電コイル11から電力を受け取る受電コイル205と、
この受電コイル205に誘導される電力で充電される内蔵電池201と、
この内蔵電池201の出力を外部に接続される携帯電子機器230に電力供給する出力コネクタとしてのUSBコネクタ208Aと、
受電コイル205に誘導される電力で内蔵電池1を充電する充電回路250を実装する回路基板と、
この回路基板と受電コイル205と内蔵電池201とを内蔵するケーシング2とを備え、
さらに、外部電源220に接続されて充電されるサブ充電回路257も内蔵し、
回路基板は、受電コイル205に誘導される交流を直流に変換して内蔵電池201を充電する充電回路250と、外部電源220から入力される電力で内蔵電池201を充電するサブ充電回路257と、充電された内蔵電池201の電圧を一定の電圧に安定化して出力するDC/DCコンバータ258と、内蔵電池201の充電状態と出力コネクタへの放電状態とを制御する制御回路240とを実装し、
制御回路240は、バッテリパック210が充電装置10にセットされ、かつ外部電源220の接続状態において、充電選択部243でもって、充電装置10と外部電源220のいずれか一方で内蔵電池201を充電するように制御し、
バッテリパックは、充電専用の入力コネクタを設けることなく、出力コネクタを、外部から電力を入力するコネクタと外部に電力を出力するコネクタとに併用することもでき、
このバッテリパックは、出力コネクタを、切換スイッチを介してサブ充電回路とDC/DCコンバータに接続し、この切換スイッチを制御して出力コネクタをサブ充電回路とDC/DCコンバータのいずれかに接続するものであって、
サブ充電回路257は、USBコネクタ208Aに外部電源220が接続されると、このことを入力電流、または入力電圧から検出でき、外部電源220から電力が入力される状態において、外部電源220から供給される電力で内蔵電池201を充電する
バッテリパック210。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平5-64376号公報(以下「刊行物2」という。)には、充電器の並列運転方法に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている(なお、下線は当審で付与。)。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、整流器からなり畜電池を充電する複数の充電器を並列運転する場合の運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の運転方法としては、任意分担方式とするものや並列冗長方式とするものが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そのため、負荷に対し容量が足りかったりあるいはオーバしたりして、負荷容量に見合った最適な運転ができないという問題がある。また、高調波電流に対する考慮も何らなされていないという問題もある。したがって、この発明の課題は負荷容量に見合った最適な運転を可能にするとともに高調波電流の抑制を図ることにある。」
(イ)「【0006】
【実施例】図1にこの発明の実施例を示す。・・負荷電力P0を供給するためには充電器1を必要最低限何台投入すれば良いかを計算し、それに応じて充電器1を選択して投入(オン)することにより負荷に応じた電力を供給することができる。このとき、対となる充電器は互いに容量の等しいものを複数ペア用意しても良く、容量の互いに異なるものを複数ペア用意するようにしても良い。」


3.本願発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
ア.引用発明の「出力コネクタを備えるバッテリパック210」は、「受電コイル205」「内蔵電池201」「USBコネクタ208A」「充電回路250を実装する回路基板」を備えるものであるので、本願発明の「電子装置」に相当する。
イ.引用発明の「内蔵電池201」は、本願発明の「バッテリ」に相当する。
ウ.引用発明の「外部に接続される携帯電子機器230」は、本願発明の「第1の外部装置」に相当する。
エ.引用発明の「内蔵電池201の出力を外部に接続される携帯電子機器230に電力供給する出力コネクタとしてのUSBコネクタ208A」は、本願発明の「USBポート」に相当する。
また、引用発明の「充電された内蔵電池201の電圧を一定の電圧に安定化して出力するDC/DCコンバータ258」、「外部電源220から入力される電力で内蔵電池201を充電するサブ充電回路257」、及び「出力コネクタをサブ充電回路とDC/DCコンバータのいずれかに接続する」切換スイッチは、全体でUSBコネクタ208Aに接続される機器との間で電力を充放電する回路を構成するものであって、その「出力」が「内蔵電池201の出力を外部に接続される携帯電子機器230に電力供給する出力コネクタとしてのUSBコネクタ208A」によりなされるものであり、「サブ充電回路257」の「・・充電する」機能も備えるものであるので、本願発明の「バッテリの電源をUSBポートに接続された第1の外部装置に提供する第1充電回路」に相当する。
オ.引用発明の「電磁誘導作用で電力を搬送して充電する送電コイル11を有する充電装置10」は、本願発明の「バッテリに電源を提供するための電源を無線で接続された第2の外部装置」に相当する。
そして、引用発明の「受電コイル205に誘導される交流を直流に変換して内蔵電池201を充電する充電回路250」は、その「充電回路250」が、DC/DCコンバータ258(本願発明の「第1充電回路」の一部分に相当するもの)と独立した、DC/DCコンバータ258の出力中(本願発明の「前記第1充電回路が前記第1の外部装置に電源を提供する間」に対応する期間)も充電動作が可能な構成のものであり、その「受電コイル205」が「電磁誘導作用で電力を搬送して充電する・・送電コイル11から電力を受け取る受電コイル205」であるので、本願発明の「前記第1充電回路が前記第1の外部装置に電源を提供する間、前記バッテリに電源を提供するための電源を無線で接続された第2の外部装置の電源ソースから受信する第2充電回路」に相当する。
カ.引用発明の「充電回路250」が「受電コイル205に誘導される交流を直流に変換して内蔵電池201を充電する」ことは、本願発明の「前記第2充電回路は、前記第2の外部装置の電源ソースから受信した電源を前記バッテリに供給」することに相当する。
キ.引用発明の「外部電源220」は、本願発明の「第3の外部装置」に相当する。
そして、引用発明の「DC/DCコンバータ258」「サブ充電回路257」、及び「出力コネクタをサブ充電回路とDC/DCコンバータのいずれかに接続する」切換スイッチで構成される、USBコネクタ208Aに接続される機器との間で電力を充放電する回路の「サブ充電回路257」が、「USBコネクタ208Aに外部電源220が接続されると、このことを入力電流、または入力電圧から検出でき、外部電源220から電力が入力される状態において、外部電源220から供給される電力で内蔵電池201を充電」することと、本願発明の「前記第1充電回路は、前記電子装置から前記第1の外部装置との接続が解除されて第3の外部装置が接続されると、前記第3の外部装置の電源ソースから供給される電源で前記バッテリを充電」することとは、「前記第1充電回路は、第3の外部装置が接続されると、前記第3の外部装置の電源ソースから供給される電源で前記バッテリを充電」する点で共通する。

(2)両発明の一致点
「電子装置であって、
バッテリと、
前記バッテリの電源をUSBポートに接続された第1の外部装置に提供する第1充電回路と、
前記第1充電回路が前記第1の外部装置に電源を提供する間、前記バッテリに電源を提供するための電源を無線で接続された第2の外部装置の電源ソースから受信する第2充電回路とを有し、
前記第2充電回路は、前記第2の外部装置の電源ソースから受信した電源を前記バッテリに供給し、
前記第1充電回路は、第3の外部装置が接続されると、前記第3の外部装置の電源ソースから供給される電源で前記バッテリを充電する電子装置。」

(3)両発明の相違点
ア.相違点1
第1充電回路が、本願発明では、「前記第1充電回路は、前記電子装置が第3の外部装置の電源ソースから電源を受信するように構成された経路の逆経路を利用して前記第1の外部装置に電源を提供し」、「前記電子装置から前記第1の外部装置との接続が解除されて第3の外部装置が接続されると、」前記第3の外部装置の電源ソースから供給される電源で前記バッテリを充電するものであるのに対して、引用発明は、「充電された内蔵電池201の電圧を一定の電圧に安定化して出力するDC/DCコンバータ258」、「外部電源220から入力される電力で内蔵電池201を充電するサブ充電回路257」、及び「出力コネクタをサブ充電回路とDC/DCコンバータのいずれかに接続する」切換スイッチである点。

イ.相違点2
本願発明は「前記第1充電回路を利用して前記バッテリに電源を提供する動作と前記第2充電回路を利用して前記バッテリに電源を提供する動作は同時に行われる」のに対して、引用発明は、「バッテリパック210が充電装置10にセットされ、かつ外部電源220の接続状態において、充電選択部243でもって、充電装置10と外部電源220のいずれか一方で内蔵電池201を充電するように制御」する点。

4.本願発明の容易推考性の検討
(1)相違点1について
(a)充放電を行う装置において、充電及び放電を同じ回路で行うものは、例えば、原査定において周知例として示した特開2007-157355号公報に「【0025】・・充電回路54は、電子機器本体に標準装備されるものであるが、単純にバッテリ53の充放電を行うだけでなく・・バッテリ53から得られる電力を用いてDMFC電源ユニット12を駆動するための電力をDMFC電源ユニット12側へ供給したりすることもできる。」と、同じく特開2010-41819号公報に「【0024】双方向インバータ2は、太陽光発電装置11からの電力を系統電力線90側に出力する場合(放電モード)と、系統電力線90側からの電力を第2の変換器3側に出力して、電気自動車13を急速充電する場合(充電モード)との2つの異なるモードで動作する。」と記載されているように、従来周知慣用のものである。
そして、当該充電及び放電を同じ回路で行う場合に、充電経路と放電経路が逆経路となることは自明のことである。
そうすると、引用発明の「DC/DCコンバータ258」「サブ充電回路257」、及び「出力コネクタをサブ充電回路とDC/DCコンバータのいずれかに接続する」切換スイッチで構成される、USBコネクタ208Aに接続される機器との間で電力を充放電する回路を、該周知慣用の1つの充電回路により具現化することは、当業者が適宜選択し得る設計事項である。
(b)また、引用発明の「出力コネクタ」は「外部から電力を入力するコネクタと外部に電力を出力するコネクタとに併用する」ものであって、コネクタが併用される以上、引用発明の「USBコネクタ208Aに外部電源220が接続されると、このことを入力電流、または入力電圧から検出でき、外部電源220から電力が入力される状態において、外部電源220から供給される電力で内蔵電池201を充電」する動作は、実質的に「携帯電子機器230」(本願発明の「第1の外部装置」に相当するもの)との接続が解除された状態でなされることは自明である。
(c)そうすると、引用発明の「DC/DCコンバータ258」「サブ充電回路257」、及び「出力コネクタをサブ充電回路とDC/DCコンバータのいずれかに接続する」切換スイッチで構成される、USBコネクタ208Aに接続される機器との間で電力を充放電する回路を、上記周知慣用の充電及び放電を同じ回路で行うものとして具現化して、本願発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
(a)バッテリ充電装置において、複数の電力供給回路から同時充電することは、例えば、刊行物2記載事項(ア)(イ)に「整流器からなり畜電池を充電する複数の充電器を並列運転する場合の運転方法に関する。・・従来・・一般的である。」「充電器1を必要最低限何台投入すれば良いかを計算し・・負荷に応じた電力を供給する」と記載されており、また、前記特開2010-41819号公報にも「【0033】一方、太陽光発電装置11の出力が急速充電用に不足する場合のステップS3Bでは、・・双方向インバータ2は、発電出力PAと充電設定出力値PBとの差に相当する不足分の電力(PB-PA)を、系統電力線90側から補い、ノードX側(充電方向)に出力する」と記載されているように従来周知慣用の技術である。
(b)そして、引用発明においても同時充電は、多くの電力を供給でき短時間での充電が可能という観点で望ましいことでもある。
(c)引用発明は、刊行物1記載事項(ア)の「無接点充電台は、単独で内蔵電池を最適な電流や電圧で充電するように設計され、さらに、充電アダプターも、単独で内蔵電池を最適な電流と電圧で充電するように設計されている。したがって、無接点充電台と充電アダプターの両方で内蔵電池が充電されると、内蔵電池を正常な状態で充電できなくなる。」という従来の課題を解決する為に、「バッテリパック210が充電装置10にセットされ、かつ外部電源220の接続状態において、充電選択部243でもって、充電装置10と外部電源220のいずれか一方で内蔵電池201を充電するように制御」する制御態様を選択したものであるが、当該課題は上記(a)の周知慣用の技術においても解消されているものであるので、「無接点充電台と充電アダプターの両方で内蔵電池が充電されると、内蔵電池を正常な状態で充電できなくなる」ことに対処する為の引用発明の「バッテリパック210が充電装置10にセットされ、かつ外部電源220の接続状態において、充電選択部243でもって、充電装置10と外部電源220のいずれか一方で内蔵電池201を充電するように制御」する制御内容を、短時間での充電が可能であり、かつ「・・正常な状態で充電できなくなる」という問題の存在しない従来周知慣用の技術に置換することは当業者が容易になし得ることである。
(d)さらに、刊行物1記載事項(ア)でも「【背景技術】・・・充電アダプターを接続して無接点充電台に載せられると、充電アダプターと無接点充電台の両方で内蔵電池が充電される。」とあり、記載事項(オ)にも「充電装置10と外部電源220の両方で内蔵電池201を充電できる状態にあっては・・・」とあるように、引用発明を同時充電する回路とすることに回路構成上の困難性が存在するものでもない。
そうすると、引用発明の「外部電源220から供給される電力で内蔵電池201を充電」と「受電コイル205に誘導される交流を直流に変換して内蔵電池201を充電」とを、該周知慣用の技術である同時充電するものとして、本願発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)総合判断
本願発明の効果は、引用発明、刊行物2記載の事項、及び、本願優先日前に周知の技術から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の事項、及び、本願優先日前に周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の事項、及び、本願優先日前に周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-25 
結審通知日 2016-04-26 
審決日 2016-05-09 
出願番号 特願2013-128547(P2013-128547)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 淳関口 明紀  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 矢島 伸一
中川 真一
発明の名称 電子装置のバッテリ充電方法及びその電子装置  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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