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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1320138
審判番号 不服2015-10378  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-03 
確定日 2016-10-05 
事件の表示 特願2011-546443「生物組織上の生検用の位置を決定するための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月12日国際公開、WO2010/090837、平成24年 7月12日国内公表、特表2012-515576〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2010年(平成22年)1月20日(パリ条約による優先権主張2009年1月20日、米国、2009年6月4日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月15日付けで拒絶理由が通知され、同年12月19日に意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、平成26年3月19日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年8月25日に意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、平成27年1月28日付けで平成26年8月25日付けの手続補正に対する補正の却下がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月3日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、それと同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年6月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成27年6月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲、すなわち平成25年12月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下のとおり、補正後の特許請求の範囲の請求項1のものに補正する事項を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。

(補正前)
「【請求項1】
生物組織上又は生物組織内の生検用の位置を決定するための装置であって、
光学的撮像技術を用いて取得した生物組織の少なくとも一部の少なくとも一つの画像に関連付けられた情報を受け、
前記情報に基づいて、少なくとも一つの電磁放射を用いて、前記少なくとも一部の少なくとも一つの場所の上又は内部に視覚的変化をもたらして生検の位置がマーキングされるように構成された、少なくとも一つの構成部を含む、装置。」

(補正後)
「【請求項1】
生物組織上又は生物組織内の生検用の位置を決定するための装置であって、
光学的撮像技術を用いて取得した生物組織の少なくとも一部の少なくとも一つの画像に関連付けられた情報を受け、
前記情報に基づいて、少なくとも一つの電磁放射を用いて、前記少なくとも一部の少なくとも一つの場所の上又は内部に視覚的変化をもたらして生検の位置がマーキングされるように構成された、少なくとも一つの構成部を含み、
前記光学的撮像技術は、共焦点顕微鏡技術を含み、
前記共焦点顕微鏡技術は、スペクトル符号化共焦点顕微鏡法(SECM)技術であり、
前記少なくとも一つの構成部は、ダブルクラッドファイバ(DCF)を含むSECM構成部であり、
前記SECM構成部は、撮像光を前記ダブルクラッドファイバ(DCF)のコアに送ることができるSECM構造を備え、
前記ダブルクラッドファイバ(DCF)は、撮像光を送受信でき、マーキングのための少なくとも一つの電磁放射を送ることもできる、装置。」

上記の本件補正による補正は、補正前の請求項1に係る発明のいわゆる限定的減縮を目的としており、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

2 補正の適否

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明

本願補正発明は、上記1の「(補正後)」に記載したとおりのものである。

(2)引用文献とそれに記載された事項

ア 引用文献1
本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原査定の拒絶の理由に引用された、国際公開第2007/084995号(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである)。

(ア)「Screening for diseases is a process whereby a person who is not known to have one or more possible diseases undergoes a test to determine whether or not the person has any such diseases. Screening is often conducted on a large population, and therefore is likely to be inexpensive and minimally-invasive. Surveillance of a patient with a particular disease is a test that is conducted on a person with the disease to determine the severity of such disease, e.g., a degree of dysplasia in a patient with a known pre-cancerous condition. Effective screening and surveillance for the disease (e.g., dysplasia, cancer, etc.) of epithelial luminal organs systems, such as that of the gastrointestinal tract, urinary tract, pancreatobiliary system, gynecologic tract, oropharynx, pulmonary system, etc. utilize a comprehensive evaluation of a substantial portion of the mucosa. Certain beam scanning optical techniques, including time-domain optical coherence tomography ("OCT"), spectral-domain optical coherence tomography ("SD-OCT"), optical frequency domain imaging ("OFDI"), Raman spectroscopy, reflectance spectroscopy, confocal microscopy, light- scattering spectroscopy, etc. techniques have been demonstrated to provide critical information usable for diagnosis of a mucosal disease, including dysplasia and early cancer. However, these techniques are considered point-scanning methods, which are generally capable of obtaining image data only at one location at a time. In order to comprehensively screen large luminal organs, a focused beam can be rapidly scanned across the organ area of interest, e.g., over a large area, while optical measurements are obtained. Catheters, probes, and devices capable of performing this beam scanning function, are therefore generally used for an appropriate application of these and other optical technologies for screening large mucosal areas.」(第1頁第17行-第2頁第15行)
(疾病のスクリーニングは、1以上の可能性のある疾病を有しているか不明な個人が、そのような疾病を有しているか否かを判定するために受けるテストの一過程である。スクリーニングはしばしば大きな集団に対して行われるものであり、それ故廉価であり侵襲は最小となると見込まれる。特定の疾病を有する患者のサーベイランスとして、その疾病の過程において、疾病の重篤性を決定するテスト、例えば前癌状態が知られている患者では異形性の程度を決定するためのテストを行う。上皮性管腔器管、例えば消化管、尿管、胆嚢腺、婦人科関連器官管腔、中咽頭・肺系統などの疾病(例えば異形成症、癌など)に対する効果的なスクリーニング及びサーベイランスには、広範囲にわたる粘膜の総合的な評価を用いる。これまでに、時間領域光コヒーレンストモグラフィー(OCT)、スペクトル領域光コヒーレンストモグラフィー(SD-OCT)、光周波数領域撮像(OFDI)、ラマン分光法、反射分光法、共焦点顕微鏡検査法、光散乱分光法などの技術を含む、ビームスキャニング光学技術は、異形成症、初期癌などの粘膜性疾病の診断に利用可能な決定的な情報を提供することが実証されている。しかしながら、これらの技術は一般的に一度に一箇所の画像データのみを取得することができる、点スキャン方法であると考えられる。大きな管腔性器官を全体的にスクリーニングする場合、目的とする器官の領域、例えば、広い領域にわたって、集光ビームで高速にスキャンし、光学的な測定値を得る。それ故、カテーテル、プローブおよびこのビームスキャニング機能を実行できる機器は、これらの光学技術およびその他の光学技術を広い粘膜領域のスクリーニングに適切に応用して利用されている。)

(イ)「An exemplary embodiment of an apparatus for performing large-area imaging of epithelial luminal organs by beam scanning according to the present invention can be provided. Such exemplary embodiment of the apparatus can include an imaging system, an imaging catheter, and catheter scanner. The imaging system delivers light to the imaging catheter and recovers the light returning from the catheter to generate the image. The imaging catheter directs the light generated by the imaging system to the luminal organ, and focuses this light as a beam directed at the organ luminal surface. The catheter scanner is used to direct the scanning of this beam across a large area of the luminal surface.」(第14頁第8行-第16行)
(本発明のビームスキャニングによる上皮性管腔器官の大領域撮像を実行する代表的な実施の形態の装置を提供することができる。このような代表的な実施の形態の装置は、撮像システム、撮像用カテーテルおよびカテーテルスキャナーを含むことができる。撮像システムは、光を撮像用カテーテルへ伝達し、カテーテルから戻る光を回収して、画像を生成する。撮像用カテーテルは、撮像システムで生成した光を管腔器官へ導き、この光をビームとして集光させて器官の管腔表面へ導く。カテーテルスキャナーを用いて、このビームによって管腔表面の広い領域を横断してスキャニングする。)

(ウ)「An advantageous additional functionality for an epithelial luminal organ imaging system can be a capability to direct subsequent inspection to a region of interest identified in the imaging dataset. For example, if an area of dysplasia is detected in a region of the esophagus, one might want to direct an endoscope to take a tissue biopsy in that area to confirm that diagnosis. A method and system can be used for placing a visible mark on the tissue at a location of interest identified in the image dataset. Figure 21 shows a block diagram of still another exemplary embodiment of the arrangement according to the present invention for achieving this by the coupling of an ablation laser 1700 through a fiber optic wavelength division multiplexer 1710 to the imaging catheter. The ablation laser 1700 can be configured to include an optical power and wavelength sufficient to create superficial lesions on the luminal organ. These lesions can be seen endoscopically, and may be used as markers for further investigation, e.g., biopsy. As shown in Figure 21, the catheter can point to an area to be marked and made stationary. The ablation laser is then turned on for a duration sufficient to create the visible lesion.」(第23頁第21行-第24頁第11行)
(上皮管腔器官撮像システムにとって有利な更なる機能性として、撮像データセットで同定された関心領域を直接に続けて精密に検査することができる点にある。例えば、食道領域内に異形成部分を検出した場合、その診断を確かめるために直接内視鏡によってその部分の組織生検を要望する場合がある。方法及びシステムを用いて画像データセットで同定した関心部位の組織に可視マークを付すことができる。さらに、図21に、アブレーション用レーザ1700を光ファイバー波長分割マルチプレクサ1710を介して撮像用カテーテルに結合してこれを実現する、本発明の他の代表的な実施の形態の構成のブロック図を示す。アブレーション用レーザ1700は、管腔器官上に表面変異を生じるに十分な光学パワーと波長を有するように構成することができる。これらの変異は内視鏡検査で見ることができ、さらなる検査、例えば生体検査用のマーカとして使用してよい。図21に示すように、このカテーテルはマーキングを付すべき領域に向けて固定できる。次いで、可視の変異を生じるに十分な時間このアブレーション用レーザを作動する。)

(エ)Fig.21




(オ)上記(イ)の記載、及び、上記(ウ)における「アブレーション用レーザ1700を光ファイバー波長分割マルチプレクサ1710を介して撮像用カテーテルに結合してこれを実現する」との記載を勘案すると、「撮像用カテーテル」への「光」の「伝達」、及び、「カテーテルから戻る光」の「回収」は「光ファイバー」により行われており、また、「アブレーション用レーザ」も「光ファイバー」を介して伝達されることは明らかである。

(カ)上記(ウ)において、「the imaging dataset」(撮像データセット)と「the image dataset」(画像データセット)は、特に区別されて用いられていないことから、同一の意味の単語であると認められる。

上記(ア)ないし(オ)を含む引用文献1全体の記載を総合すると、上記引用文献1には、

「ビームスキャニングによる上皮性管腔器官の大領域撮像を実行する装置であって、該装置は、撮像システム、撮像用カテーテルおよびカテーテルスキャナーを含み、
撮像システムは、光ファイバーを用いて光を撮像用カテーテルへ伝達するとともにカテーテルから戻る光を回収して、画像を生成し、
撮像用カテーテルは、撮像システムで生成した光を管腔器官へ導き、この光をビームとして集光させて器官の管腔表面へ導き、
カテーテルスキャナーを用いて、このビームによって管腔表面の広い領域を横断してスキャニングするものであり、
画像データセットで同定された関心領域を、組織生検を要望する場合に、直接に続けて組織生検をすることができるために、管腔器官上に表面変異を生じるに十分な光学パワーと波長を有するアブレーション用レーザを、光ファイバー波長分割マルチプレクサを介して撮像用カテーテルに結合し、光ファイバーを用いて伝達し、画像データセットで同定した関心部位の組織に可視マークを付すことができる、装置」

の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

イ 引用文献2
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された、特表2005-510323号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである)。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
注目する人体領域に移動させることができるプローブを有する共焦点顕微鏡システムにおいて、前記プローブが、実質的に横断方向の一次元に沿って延びる共焦点光スペクトルにより前記領域を照明する手段及び、別の次元に沿って前記スペクトルを移動させ、反射された前記共焦点光スペクトルを測定することにより、前記人体領域の画像を得る手段を有することを特徴とするシステム。」

(イ)「【背景技術】
【0003】
医用画像化技術は、患者の巨視的な解剖学的構造に関する不可欠な情報を医師に提供するため、この20年にわたり進歩してきた。X線撮影法、磁気共鳴画像化法、コンピュータ連動断層撮影法及び超音波法のような画像化法は、100μmから1mmの範囲の分解能で人体の大規模構造の非侵襲的検査を可能にする。」

(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ガンの初期段階の検出のような疾病過程の多くでは、適切な診断のためにさらに高い分解能が必要である。さらに、ガンのスクリーニング及び腫瘍縁の外科的検出のような臨床的処置にはさらに分解能の高い診断用画像化方法が必要である。」

(エ)「【0008】
簡単に説明すれば、本発明を具現化している共焦点顕微鏡法システムは、プローブを挿入することができる人体の注目する領域を、1つの次元に沿って延びる共焦点スペクトルで照明する。プローブの光学系または(光ファイバとすることができる)可撓性導光部材のプローブへの取付けにより可能となるプローブの物理的運動により、さらに1つまたは2つの次元に沿うスペクトルの走査が可能になり、よって前記領域の2次元または3次元の画像化が提供される。反射された共焦点スペクトルは、好ましくは干渉計法により実施することができるヘテロダイン検波機構により、分光法を用いて検出またはデコードすることができる。」

(オ)「【0024】
前述したように、スペクトルコード化共焦点顕微鏡法(“SECM”)により、カテーテルまたは内視鏡のような小型プローブを介した反射率共焦点顕微鏡法の実施が可能になる。SECMは、試料から反射される1次元空間情報をコード化するために波長分割多重化(“WDM”)を用いる。それぞれの位置が光の相異なる波長で表される一連の集束点で高速走査軸が置き換えられる。反射光のスペクトルを測定することにより空間位置の関数としての反射強度が求められる(図8)。プローブの低速の機械的運動によって波長コード化軸を走査することにより2次元画像がつくられる。すなわち、本発明を具現化している内視鏡法装置により、標準的な内視鏡と一体化されるかまたはスタンドアローン装置として、様々な組織及び器官のSECM画像化が可能になる。

ウ 引用文献3
本願の優先日前に頒布され、平成27年1月28日付け補正の却下の決定において引用された米国特許出願公開第2007/0179487号明細書(以下、「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「[0142] In a further exemplary embodiment of the imaging system/arrangement 900 according to the present invention shown in FIG. 18 , light may be combined with the therapy light 905 using a cladding mode coupler that couples the imaging system 900 light from the single mode fiber 901 to the single mode core of a dual-clad fiber 911 and the therapy light from a multimode fiber 906 to the cladding mode of a dual-clad fiber 911 . 」
(当審仮訳:さらに、図18に示される、本発明に係る撮像システム/装置900の模範的な実施例のように、光はクラッディングモールドカプラーを使うことにより治療光905とまとめられ、シングルモードファイバ901からの撮像システム900の光は、デュアルクラッドファイバ911のシングルモードコアへ、マルチモードファイバ906からの治療光は、デュアルクラッドファイバ911のクラッディングモードへと、一対にしてまとめられる。)

(イ)Fig.18




(3)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「組織生検を要望する場合に、」「関心部位の組織に位置マークを付す」装置は、本願補正発明の、「生物組織上又は生物組織内の生検用の位置を決定するための装置」に相当する。

イ 引用発明の「画像データセット」は、「光を撮像用カテーテルへ伝達し、カテーテルから戻る光を回収して、画像を生成」する「撮像システム」により得られる「画像」に基づくものであることは明らかであるから、光学的撮像技術を用いて取得したものであると認められる。
また、引用発明は、「管腔表面」を「スキャニング」し、「画像を生成」するものであるから、「画像データセット」が「管腔表面」の画像に関連づけられたものであることも当業者にとって明らかである。
よって、本願補正発明と、引用発明とは、「光学的撮像技術を用いて取得した生物組織の少なくとも一部の少なくとも一つの画像」を用いる点で一致する。

ウ 引用発明の「画像データセットで同定した関心部位の組織」は、「関心部位の組織」の「同定」を「画像データセット」に基づいて行うものであるから、その「同定」に「画像データセット」の何らかの情報が用いられることは、当業者にとって明らかである。
よって、本願補正発明と、引用発明とは、「生物組織の少なくとも一部の少なくとも一つの画像に関連付けられた情報」を用いる点で一致する。

エ(ア)引用発明の「アブレーション用レーザ」は、「管腔器官上に表面変異を生じるに十分な光学パワーと波長を有する」ものであり、「可視マークを付す」ものであるから、「少なくとも一つの電磁放射」であり、「前記少なくとも一部の少なくとも一つの場所の上又は内部に視覚的変化をもたら」すものであると認められる。
(イ)引用発明の「可視マークを付」されることは、本願補正発明の「マーキングされる」ことに相当する。
(ウ)引用発明の「撮像用カテーテル」は、「アブレーション用レーザ」が結合され、「画像データセットで同定した関心部位の組織に可視マークを付す」ものであり、一方、本願補正発明の「少なくとも一つの構成部」は、「少なくとも一つの電磁放射を用いて、前記少なくとも一部の少なくとも一つの場所の上又は内部に視覚的変化をもたらして生検の位置がマーキングされるように構成された」ものである。
(エ)したがって、本願補正発明と、引用発明とは、「少なくとも一つの電磁放射を用いて、前記少なくとも一部の少なくとも一つの場所の上又は内部に視覚的変化をもたらして生検の位置がマーキングされるように構成された少なくとも一つの構成部を含」む点で共通する。

オ 引用発明の「撮像用カテーテル」は、「画像データセット」によって「同定した関心領域の組織に可視マークを付す」ものであるから、「画像データセット」によって「同定した」「関心部位の組織」の情報を受けていることは明らかである。
よって、本願補正発明と、引用発明とは、「少なくとも一つの構成部」が、「生物組織の少なくとも一部の少なくとも一つの画像に関連付けられた情報を受け、」「前記情報に基づいて、」「生検の位置がマーキングされる」点で共通する。

カ(ア)引用発明の「撮像用カテーテル」は、「光ファイバーを用いて」「光」が伝達され、また「光」が「回収」されるものであるから、「撮像用カテーテル」には「光ファイバー」が接続されることは明らかであり、「撮像用カテーテル」とその周辺の構成は、「光ファイバー」を含むといえる。一方、本願補正発明の「前記少なくとも一つの構成部」は、「ダブルクラッドファイバ(DCF)を含む」「構成部」である。
(イ)「ダブルクラッドファイバ(DCF)」が光ファイバーの一種類であることは、当業者にとって明らかである。
(ウ)したがって、引用発明の「撮像用カテーテル」とその周辺の構成は、本願補正発明の「少なくとも一つの構成部」に相当し、本願補正発明と、引用発明とは、「前記少なくとも一つの構成部は、」光ファイバー「を含む」「構成部であ」る点で共通する。

キ 引用発明の「撮像用カテーテル」は、「光ファイバーを用いて」「光」が伝達され、また「光」が「回収」されるものであるから、「撮像用カテーテル」とその周辺の構成は、光を、光ファイバーに送ることができる構造を備えていることは当業者にとって明らかである。一方、本願補正発明は、「SECM構成部」である「少なくとも一つの構成部」は、「撮像光を前記ダブルクラッドファイバ(DCF)のコアに送ることができる」「構造」を備えている。そして、引用発明の「光ファイバーを用いて」「撮像用カテーテル」に伝達される光は、「撮像光」といえるから、本願補正発明と、引用発明とは、「前記少なくとも一つの構成部は、」「撮像光を」光ファイバー「に送ることができる」「構造」を備える点で共通する。

ク 引用発明は「光ファイバーを用いて光を撮像用カテーテルへ伝達するとともにカテーテルから戻る光を回収して、画像を生成」するものであり、また、「アブレーション用レーザを、光ファイバー波長分割マルチプレクサを介して撮像用カテーテルに結合し、光ファイバーを用いて伝達」するものである。一方、本願補正発明は、「前記ダブルクラッドファイバ(DCF)は、撮像光を送受信でき、マーキングのための少なくとも一つの電磁放射を送ることもできる」ものである。
したがって、本願補正発明と、引用発明とは、「光ファイバーは、撮像光を送受信ができ」、また、「光ファイバーは、マーキングのための少なくとも一つの電磁放射を送ることもできる」点で共通する。

以上のことから、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「生物組織上又は生物組織内の生検用の位置を決定するための装置であって、
光学的撮像技術を用いて取得した生物組織の少なくとも一部の少なくとも一つの画像に関連付けられた情報を受け、
前記情報に基づいて、少なくとも一つの電磁放射を用いて、前記少なくとも一部の少なくとも一つの場所の上又は内部に視覚的変化をもたらして生検の位置がマーキングされるように構成された、少なくとも一つの構成部を含み、
前記少なくとも一つの構成部は、光ファイバーを含み、
前記少なくとも一つの構成部は、撮像光を前記光ファイバーに送る構造を備え、
光ファイバーは、撮像光を送受信ができ、また、光ファイバーは、マーキングのための少なくとも一つの電磁放射を送ることもできる、装置。」

<相違点1>
光学的撮像技術が、本願補正発明は、共焦点顕微鏡技術を含み、前記共焦点顕微鏡技術は、スペクトル符号化共焦点顕微鏡法(SECM)技術であり、前記少なくとも一つの構成部は、SECM構成部であり、前記SECM構成部は、撮像光を、光ファイバーに送ることができるSECM構造を備えるのに対して、引用発明は、その点が不明である点。

<相違点2>
光ファイバーが、本願補正発明は、ダブルクラッドファイバ(DCF)であり、前記少なくとも一つの構成部は、撮像光をダブルクラッドファイバ(DCF)のコアに送ることができる構造を備え、ダブルクラッドファイバ(DCF)によって撮像光を送受信ができ、マーキングのための少なくとも一つの電磁放射を送ることもできるように構成されているのに対して、引用発明は、その点が不明である点。

(4)当審の判断

上記相違点について、以下に検討する。

ア 相違点1について
上記「(2)」「イ」を参照すると、引用文献2には、適切な診断のために分解能のより高い診断用画像化方法が求められている旨が記載されており、スペクトルコード化共焦点顕微鏡法(“SECM”)により、カテーテルまたは内視鏡のような小型プローブを介した反射率共焦点顕微鏡法の実施が可能になった旨も記載されている。そして、スペクトルコード化共焦点顕微鏡法(“SECM”)を採用するのであれば、「少なくとも一つの構成部」は、当然に「SECM構成部」となるものと認められる。
一方、上記「(2)」「ア」「(ア)」を参照すると、引用文献1には、上皮性管腔器管の撮像に、共焦点顕微鏡を用いることも記載されている。
してみれば、引用発明において、適切な診断のために分解能のより高い診断用画像化方法を実現するという動機付けのもと、引用文献2に記載された事項を適用し、上記相違点1に係る構成を成すことは、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について
上記「(2)」「ウ」を参照すると、引用文献3には、デュアルクラッドファイバ911を用い、イメージングシステム900の光と、治療光905を組合わせて送受信する旨が記載されているとともに、シングルモードファイバ901からの撮像システム900の光は、デュアルクラッドファイバ911のシングルモードコアに送られる点も記載されている。
そして、引用文献3に記載された事項における「デュアルクラッドファイバ911」、「イメージングシステム900の光」及び「シングルモードコア」は、それぞれ本願補正発明の「ダブルクラッドファイバ(DCF)」、「撮像光」及び「コア」に相当する。
なお、一般に、ダブルクラッドファイバを用いて撮像光を送信する場合に、撮像光を前記ダブルクラッドファイバ(DCF)のコアに送るように構成することは、例えば、特開2008-506426号公報の段落【0007】、【0008】、【0038】-【0040】、【0051】、図4A、図4Bに記載されているように、従来周知の技術である。そして、その公報には、デュアルクラッドファイバのコアに送る撮像光がSECM共焦点顕微鏡の撮像光であることも記載されている。
また、引用文献3に記載された事項における「治療光905」は電磁放射といえ、本願補正発明の「マーキングのための少なくとも一つの電磁放射」と引用文献3に記載された事項における「治療光905」とは、「撮像光と異なる少なくとも一つの電磁放射」である点で共通する。
そして、引用発明において、撮像光を送受信に加えて、「撮像光と異なる少なくとも一つの電磁放射」である「アブレーション用レーザ」を送ることもできるようにするために、引用文献3に記載された事項を参照し、ダブルクラッドファイバ(DCF)を採用するとともに、撮像光をダブルクラッドファイバ(DCF)のコアに送ることができる構造を備えるように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

ウ 本願補正発明の奏する作用効果
本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2に記載された事項、及び、引用文献3に記載された事項から当業者が予測し得る程度のものである。

(5)小括

よって、本願補正発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2に記載された事項、及び、引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成27年6月3日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成25年12月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」「[理由]」「1」の「(補正前)」に記載のとおりものである。

2 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献、及び、その記載事項は、上記「第2」「[理由]」「2」「(2)」に記載したとおりである。

3 対比・判断

そこで、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、以下の点で一致する。

<一致点>
「生物組織上又は生物組織内の生検用の位置を決定するための装置であって、
光学的撮像技術を用いて取得した生物組織の少なくとも一部の少なくとも一つの画像に関連付けられた情報を受け、
前記情報に基づいて、少なくとも一つの電磁放射を用いて、前記少なくとも一部の少なくとも一つの場所の上又は内部に視覚的変化をもたらして生検の位置がマーキングされるように構成された、少なくとも一つの構成部を含む、装置。」

そして、両者には、相違点が存在しない。
してみれば、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。

第4 補足(平成27年11月18日付け上申書に記載された補正案についての検討)

参考のため、平成27年11月18日付け上申書に記載された補正案についても以下に検討する。

1 補正案発明

審判請求人は上申書を提出し、さらなる補正の意志を示し、特許請求の範囲について、以下に示す補正案を提示した。

「[請求項1]
生物組織上又は生物組織内の生検用の位置を決定するための装置であって、
光学的撮像技術を用いて取得した生物組織の少なくとも一部の少なくとも一つの画像に関連付けられた情報を受け、
前記情報に基づいて、前記少なくとも一部の上又は内部に視覚的変化をもたらさずに、少なくとも一つの電磁放射を用いて前記少なくとも一部の外側で前記少なくとも一部に隣り合う少なくとも一つの場所の上又は内部に視覚的変化をもたらして生検の位置がマーキングされるように構成された、少なくとも一つの構成部を含み、
前記光学的撮像技術は、共焦点顕微鏡技術を含み、
前記共焦点顕微鏡技術は、スペクトル符号化共焦点顕微鏡法(SECM)技術であり、
前記少なくとも一つの構成部は、ダブルクラッドファイバ(DCF)を含むSECM構成部であり、
前記SECM構成部は、撮像光を前記ダブルクラッドファイバ(DCF)のコアに送ることができるSECM構造を備え、
前記ダブルクラッドファイバ(DCF)は、撮像光を送受信でき、マーキングのための少なくとも一つの電磁放射を送ることもできる、装置。」
(以下、「補正案発明」という。)

2 補正案発明についての検討

補正案発明は、本願補正発明における「少なくとも一つの電磁放射を用いて」「少なくとも一つの場所の上又は内部に視覚的変化をもたらして」「マーキングされる」「生検の位置」が、「前記情報に基づいて、」「前記少なくとも一部の上又は内部に視覚的変化をもたらさずに、」「前記少なくとも一部の外側で前記少なくとも一部に隣り合う」「少なくとも一つの場所」である点が限定されたものである。
そして、請求人は、上記上申書において、「上記の補正案の下線部の記載は、本願明細書の段落0064および0065、および図12-15から自明であると思料致します。新規事項は追加されていないと思料致します。」と主張している。
しかしながら、請求人が示す上記箇所を参酌しても、上記の点は記載も示唆もされておらず、また、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書、及び、図面(以下、「当初明細書等」という。)における他の箇所の記載を精査しても、上記の点の根拠となる記載は存在しない。
したがって、補正案発明への補正を含む手続補正は、当初明細書等に記載された範囲内においてするものとはいえないものであり、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしていない。
よって、仮に、本願補正発明から補正案発明への補正を含む手続補正がなされた場合であっても、本願は拒絶すべきものであるとの結論を覆すに足る根拠は見出せない。

第5 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-26 
結審通知日 2016-05-10 
審決日 2016-05-23 
出願番号 特願2011-546443(P2011-546443)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 113- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 樋熊 政一濱本 禎広大塚 裕一  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
田中 洋介
発明の名称 生物組織上の生検用の位置を決定するための装置  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  
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