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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1320146
審判番号 不服2014-11215  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-12 
確定日 2016-10-05 
事件の表示 特願2012-525844「スマートカードの遠隔制御を行う方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月 3日国際公開、WO2011/022912、平成25年 1月31日国内公表、特表2013-503507〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、2009年12月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年8月28日、中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、平成26年2月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正がなされ、平成27年5月8日付けで当審から拒絶理由が通知され、同年9月14日に意見書が提出されたものである。

本願の請求項1に係る発明は(以下、「本願発明」という。)は、平成26年6月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められる。

(本願発明)
「 スマートカードの遠隔制御を行う方法であって、
スマートカードの管理プラットフォームが、ユーザからのスマートカードに対するロック要求又はロック解除要求を受信した後、モバイルネットワークプラットフォームを介して端末側とインタラクションを行い、スマートカードに対してロック又はロック解除を行うように前記端末側を制御し、
前記端末側は、移動局及びスマートカードを含み、
前記移動局がロック命令又はロック解除命令を実行して、前記スマートカードをロック又はロック解除するステップを含み、当該ステップは、
前記移動局がスマートカードのハードウェアをロックすることによりスマートカードの機能を無効にし、スマートカードのハードウェアをロック解除することによりスマートカードの機能を有効にすること、
あるいは、前記移動局がプリインストールされたソフトウェアコンテンツを実行することによりスマートカードの機能を無効又は有効にすることを含み、
前記方法は、
前記スマートカードが位置する移動局がオフライン状態にある場合に、前記スマートカードをロック待ち状態又はロック解除待ち状態に更新すること、
前記スマートカードがロック待ち状態又はロック解除待ち状態に更新された後、前記スマートカードが位置するオフライン状態の前記移動局が通常の使用状態に戻る場合に、前記モバイルネットワークプラットフォームが、前記スマートカードが位置する移動局にロック命令又はロック解除命令を送信し、前記移動局が前記ロック命令又は前記ロック解除命令を実行することを更に含む
ことを特徴とするスマートカード遠隔制御方法。」

2 引用発明
2(1)引用発明1
当審において通知した平成27年5月8日付けの拒絶理由通知書に引用された特開2004-348475号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「携帯電話端末及びICカード及び管理装置及び決済端末及びICカード管理方法及びプログラム」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ICカードを内蔵する携帯電話端末にかかわる技術に関し、特に、紛失、盗難などにより利用者の手元から離れた携帯電話端末に内蔵されたICカードを利用制限する技術に関するものである。」(4頁)

ロ 「【0012】
図1において、100は携帯電話端末(携帯電話端末の本体)、200は携帯電話端末100に内蔵されたICカードで、このICカード200は、物理的な接点を介して携帯電話端末100とデータの授受を行なう接触インターフェース機能と、ごく短距離の無線通信により外部システムとデータの授受を行なう非接触インターフェース機能とをもつ、デュアルインターフェース型のICカードとなっている。」(5頁)

ハ 「【0017】
図2に示す構成において、携帯電話端末100は基地局300を無線電波301の送受信を行なう。電話会社302の管理装置305は、ネットワーク303と基地局300を介し、携帯電話端末100のICカード200に対し、その利用を制限させることが可能になっている。」(6頁)

ニ 「【0036】
図5は、電話会社302の管理装置305や、クレジットなどの決済時に決済端末とネットワークで繋がっている管理装置(決済サーバー)に備えられている管理装置DB(データベース)550の構成の一具体例を示す図であって、携帯電話番号ごとにセキュリティステータス208の状態を管理、記憶している。図5において、551は携帯電話番号、552はこの携帯番号を持つ携帯電話端末100に内蔵されているICカード200固有のID、553はセキュリティステータス208から得られるICカード自体、各アプリケーション、各データ領域のアクセス許可/禁止状態(図示では簡略化して示してあるが、図4で説明した全ての項目のアクセス許可/禁止状態である)、554はアクセス許可/禁止状態を更新した最新日である。」(8頁)

ホ 「【0038】
次に、本第1実施形態の携帯電話システムの動作について説明する。
図6は、電話会社302の管理装置305からネットワーク303と基地局300を介し、携帯電話端末100に対してICカード200の利用制限を要求した場合における、携帯電話端末100の処理手順の一具体例を示すフローチャートである。
【0039】
以下では、利用者が携帯電話端末100を紛失または盗まれた場合を例にして説明する。まず、携帯電話端末100を紛失または盗まられた利用者は、利用者が契約を結んでいる電話会社302に、携帯電話端末100を紛失または盗まれたこと、あるいは、携帯電話端末100を紛失または盗まれたので、紛失または盗まれた携帯電話端末100のICカード200の利用を制限するよう連絡する。これを受けて、電話会社302は、契約内容に応じて、あるいは、利用者が求めたICカード200の利用制限内容に応じて、携帯電話端末100に対してICカード200の利用制限(ICカード自体や、各アプリケーションや、各データ領域へのアクセスを禁止状態とする)を処理を実行するように通信する。
【0040】
利用者からの連絡を受けた電話会社302の管理装置305は、紛失または盗まれた携帯電話端末100に対し、ネットワーク303と基地局300を介し、利用禁止電文400を送出し、これに対する携帯電話端末100からの応答を待つ。携帯電話端末100は、ステップS600で電源が入っている場合、基地局300からの電文待ちの待機状態(ステップS601)となり、ステップS602で基地局300から利用禁止電文400を受信すると、演算処理部101は電文識別符号401に付加されている禁止情報403の内容を判定する(ステップS603)。
【0041】
そして、禁止内容(利用制限内容)の判定結果がICカード200へのアクセス禁止の場合には、携帯電話端末100の外部からICカード200へアクセスすることを禁止させる処理を行なう(アクセス禁止電文405を送出する;ステップS604)。また、禁止内容の判定結果がICカード200内のアプリケーション利用の禁止の場合には、ICカード200内のアプリケーションへアクセスすることを禁止させる処理を行なう(アプリケーション利用禁止要求電文407を送出する;ステップS605)。また、禁止内容の判定結果がICカード200内のデータ領域へのアクセス禁止の場合には、ICカード200内のデータ領域へアクセスすることを禁止させる処理を行なう(データアクセス禁止電文410を送出する;ステップS606)。
【0042】
上記の処理の後、ICカード200より禁止完了電文413が返って来たことを確認し、電話会社302の管理装置305に対し禁止処理完了電文403を送出する(ステップS607)。禁止処理完了電文403を受信した電話会社302の管理装置305は、管理装置305に備えられている管理装置DB550より該電文403に付加されている端末情報206から該当する電話番号を照会し、セキュリティステータスの禁止状態553と更新日554を更新する。」(9頁)

上記摘記事項の記載及び図面並びにこの技術分野における技術常識を考慮すると、

a 上記摘記事項イの【0001】の「紛失、盗難などにより利用者の手元から離れた携帯電話端末に内蔵されたICカードを利用制限する技術に関するものである。」の記載によれば、引用文献1に記載された発明は、「利用者の手元から離れた携帯電話端末に内蔵されたICカードの利用制限を行う方法」に関するものであると認められる。

b 上記摘記事項ロの【0012】の「このICカード200は、物理的な接点を介して携帯電話端末100とデータの授受を行なう接触インターフェース機能と、ごく短距離の無線通信により外部システムとデータの授受を行なう非接触インターフェース機能とをもつ、デュアルインターフェース型のICカードとなっている。」の記載によれば、引用文献1の「ICカード」は、「携帯電話端末100とデータの授受を行なう接触インターフェース機能と、ごく短距離の無線通信により外部システムとデータの授受を行なう非接触インターフェース機能とをもつ」と認められる。

c 上記摘記事項ハの【0017】の「電話会社302の管理装置305は、ネットワーク303と基地局300を介し、携帯電話端末100のICカード200に対し、その利用を制限させることが可能になっている。」の記載によれば、引用文献1の「電話会社の管理装置」が、「携帯電話端末のICカードに対し、その利用を制限させる」制御を行うと認められる。

d 上記摘記事項ニの【0036】の「電話会社302の管理装置305・・(略)・・に備えられている管理装置DB(データベース)550」、「図5において、551は携帯電話番号、552はこの携帯番号を持つ携帯電話端末100に内蔵されているICカード200固有のID、553はセキュリティステータス208から得られるICカード自体、各アプリケーション、各データ領域のアクセス許可/禁止状態を更新した」の各記載と図5によれば、「ICカード」毎の、「ICカード自体、各アプリケーション、各データ領域のアクセス許可/禁止状態を」、「管理装置DB(データベース)550」において、「更新し」ていると認められる。

e 上記摘記事項ホの【0038】?【0042】の記載と図6によれば、引用文献1の「携帯電話システム」における「電話会社302の管理装置305からネットワーク303と基地局300を介し、携帯電話端末100に対してICカード200の利用制限を要求した場合」の「処理手順」について、
「利用者が携帯電話端末100を紛失または盗まれた場合、携帯電話端末100を紛失または盗まられた利用者は、利用者が契約を結んでいる電話会社302に、・・(略)・・携帯電話端末100を紛失または盗まれたので、紛失または盗まれた携帯電話端末100のICカード200の利用を制限するよう連絡する。」(【0039】)、「これを受けて、電話会社302は、・・(略)・・、携帯電話端末100に対してICカード200の利用制限(ICカード自体や、各アプリケーションや、各データ領域へのアクセスを禁止状態とする)を処理を実行するように通信する」(【0039】)、「利用者からの連絡を受けた電話会社302の管理装置305は、紛失または盗まれた携帯電話端末100に対し、ネットワーク303と基地局300を介し、利用禁止電文400を送出し、これに対する携帯電話端末100からの応答を待つ。」(【0040】)、「禁止処理完了電文403を受信した電話会社302の管理装置305は、管理装置305に備えられている管理装置DB550より該電文403に付加されている端末情報206から該当する電話番号を照会し、セキュリティステータスの禁止状態553と更新日554を更新する。」(【0042】)の各記載から、
引用文献1の「電話会社の管理装置」は、「携帯電話端末を紛失または盗まれた利用者が、紛失または盗まれた携帯電話端末のICカードの利用を制限するよう連絡すると、利用者からの連絡を受け、紛失または盗まれた携帯電話端末に対し、ネットワークと基地局を介し、利用禁止電文を送出し、ICカードの利用制限の処理を実行するように通信する」と認められ、

「携帯電話端末100は、ステップS600で電源が入っている場合、基地局300からの電文待ちの待機状態(ステップS601)となり、ステップS602で基地局300から利用禁止電文400を受信すると、演算処理部101は電文識別符号401に付加されている禁止情報403の内容を判定する(ステップS603)。」(【0040】)、「禁止内容の判定結果がICカード200内のアプリケーション利用の禁止の場合には、ICカード200内のアプリケーションへアクセスすることを禁止させる処理を行なう(アプリケーション利用禁止要求電文407を送出する;ステップS605)。」(【0041】)、「ICカード200より禁止完了電文413が返って来たことを確認し、電話会社302の管理装置305に対し禁止処理完了電文403を送出する(ステップS607)」(【0042】)の各記載から、
引用文献1の「携帯電話端末」は、「電源が入っている場合、基地局から利用禁止電文を受信すると、演算処理部は電文識別符号に付加されている禁止情報の内容を判定し、禁止内容の判定結果がICカード内のアプリケーション利用の禁止の場合には、ICカード内のアプリケーションへアクセスすることを禁止させる処理を行ない、電話会社の管理装置に対し禁止処理完了電文を送出する」と認められる。

したがって、上記摘記した引用文献1の記載及び図面を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明1)
「利用者の手元から離れた携帯電話端末に内蔵されたICカードの利用制限を行う方法であって、
電話会社の管理装置は、携帯電話端末を紛失または盗まれた利用者が、紛失または盗まれた携帯電話端末のICカードの利用を制限するよう連絡すると、
利用者からの連絡を受け、紛失または盗まれた携帯電話端末に対し、ネットワークと基地局を介し、利用禁止電文を送出し、ICカードの利用制限の処理を実行するように通信し、
携帯電話端末は、電源が入っている場合、基地局から利用禁止電文を受信すると、演算処理部が電文識別符号に付加されている禁止情報の内容を判定し、
禁止内容の判定結果がICカード内のアプリケーション利用の禁止の場合には、ICカード内のアプリケーションへアクセスすることを禁止させる処理を行ない、
電話会社の管理装置に対し禁止処理完了電文を送出し、
禁止処理完了電文を受信した電話会社の管理装置は、管理装置に備えられている管理装置DBより該電文に付加されている端末情報から該当する電話番号を照会し、セキュリティステータスの禁止状態と更新日を更新する、
利用者の手元から離れた携帯電話端末に内蔵されたICカードの利用制限を行う方法。」

2(2)引用発明2
当審において通知した平成27年5月8日付けの拒絶理由通知書に引用された特開2002-378001号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「携帯通信端末、及びそれを用いた移動通信システムとその通信機能の遠隔制御方法」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ヘ 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は携帯通信端末、及びそれを用いた移動通信システムとその通信機能の遠隔制御方法に関し、特に無線通話のサービスエリア対応の基地局と、前記基地局を介した端末間の通信を制御する交換機を備えて成る移動通信システムと、それに用いられる携帯通信端末と、その通信機能の遠隔制御方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の携帯通信端末は、紛失・盗難等により他者の手に渡った場合、使用者の手によって電源OFF・通信機能の停止等を行うことが不可能であり、通常、通信事業者へのサービス停止依頼により通信機能の停止をする場合が多い。通信業者内の交換機では各加入者(携帯通信端末)単位に通信制御状態情報を持ち、それぞれの加入者に対して通信機能の起動/停止を行っている。
【0003】また、携帯通信端末の電源をOFFされていた場合には、外部からの制御を行うことはできず、電源ON状態になるまで待つ必要性があった。」(3頁左欄)

ト 「【0024】次に、図1,2とともに図3,4のシーケンス図を参照して本システムの動作を詳細に説明する。図3は、通信端末4の発呼時に携帯通信端末1が通話サービスエリア21内にいたときの通信端末4,移動加入者交換機3,及び携帯通信端末1間の信号・メッセージの送受信シーケンス、図4は、通信端末4の発呼時に携帯通信端末1が通話サービスエリア21内にいないときの送受信シーケンスをそれぞれ示す。」(5頁左欄)

チ 「【0032】これらのメッセージに応答して、通信端末4から暗証番号及び通信機能制御(起動/停止)信号の入力後、移動加入者交換機3は、着信側の携帯通信端末1が通話サービスエリア21内(通話圏内)に入るまで、これら通信機能の制御情報(通信機能制御要求信号、暗証番号、通信機能制御(起動/停止)信号等)を信号保持メモリ31に一時保持し、携帯通信端末1が通話圏内に入った際に信号保持メモリ31に保持していた通信機能の制御情報の携帯通信端末1への送信処理を行う。すなわち、通信機能制御要求信号を携帯通信端末1に送信し、所定時間以内に通信機能制御要求受信信号の返信を受けると、暗証番号及び通信機能制御(起動/停止)信号を携帯通信端末1に送信する。
【0033】なお、携帯通信端末1が通話圏内に入ったかどうかは、携帯通信端末1からの位置登録要求により判定することができる。すなわち、通信機能制御回路13の位置認識制御部131は、基地局2の発信する基地局識別情報(番号)を監視し、新たに受信できるようになると、その通話サービスエリア21に入ったと認識して、基地局2を介して移動加入者交換機3に対してこの基地局識別情報と共に自端末の位置登録を要求する信号を送信する。移動加入者交換機3は、この位置登録要求に基づいて位置登録データベースに携帯通信端末1の位置登録(基地局識別番号の登録)を行う。
【0034】着信側の携帯通信端末1内の通信機能制御回路13で暗証番号・通信機能制御(起動/停止)信号を受信すると、自端末内のあらかじめ設定された暗証番号と受信した暗証番号との認証を行う。
【0035】認証において一致した場合は、通信機能制御回路13内の通信起動・停止制御部133において、ダイヤルされた通信機能制御信号の起動または停止の情報に従い、自携帯通信端末1(音声・データ通信回路11)の通信機能の起動または停止を行い、発信側の通信端末4に対して通信機能制御完了メッセージの送信を行う。」(6頁左欄)

上記摘記事項の記載及び図面並びにこの技術分野における技術常識を考慮すると、

e 上記摘記事項への【0001】?【0003】より、「紛失・盗難等により、他者の手に渡った場合、」、「携帯通信端末の電源をOFFされていた場合には、外部からの制御を行うことはできず、電源ON状態になるまで待つ必要性があった。」等の記載から、「紛失・盗難された携帯通信端末の電源がOFFされていた場合には、外部からの制御を行うことはできず、電源ON状態になるまで待つ必要性があった」と認められる。

f 上記摘記事項トとチの記載と図4より、引用文献2の前記「携帯通信端末」の前記「外部からの制御」は、「紛失・盗難された携帯通信端末が、通話サービスエリア内にいないとき、
移動加入者交換機は、紛失・盗難された携帯通信端末が、通話サービスエリア内(通話圏内)に入るまで、制御情報(通信機能制御要求信号、暗証番号、通信機能制御(起動/停止)信号等)を信号保持メモリに一時保持し、
紛失・盗難された携帯通信端末は、通話サービスエリア内に入ったときは、基地局を介して、移動加入者交換機に、基地局識別情報と共に自端末の位置登録を行い、
移動加入者交換機は、一時保持していた制御情報を、紛失・盗難された携帯通信端末へ送信し、
紛失・盗難された携帯通信端末は、暗証番号の認証が一致した場合には、通信機能の停止を行う」と認められる。

したがって、上記摘記した引用文献2の記載及び図面を総合すると、引用文献2には、以下のような発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明2)
「紛失・盗難された携帯通信端末が、通話サービスエリア内(通話圏内)にいないとき、移動加入者交換機は、前記携帯通信端末が、前記通話サービスエリア内に入るまで、制御情報(通信機能制御要求信号、暗証番号、通信機能制御(起動/停止)信号等)を、信号保持メモリに一時保持し、
該携帯通信端末が、該通話サービスエリア内に入ったときに、前記移動加入者交換機は、一時保持していた前記制御情報を、前記携帯通信端末へ送信し、 前記携帯通信端末は、通信機能の停止を行う、移動通信システム。」

3 対比

本願発明と引用発明1とを対比する。

(1)本願発明の「スマートカード」は、本願明細書の【0008】の記載より、「移動局」と合わせて、「端末側」を構成するものであるし、本願明細書の【0109】に「スマートカードには、simカード、R-UIMカード、usimカード、csimカード、UICCカード、javaカード、クレジットカード、交通カード、プリペイドカード及び上記カード類の組み合わせが含まれるが、これに限らない。」と記載されているように、本願発明の「スマートカード」は、移動局とともに用いられる各種カード類を含むので、引用発明1の(携帯電話端末に内蔵された)「ICカード」は、本願発明の「スマートカード」に含まれる。

(2)本願発明の「スマートカードの遠隔制御を行う方法」は、本願明細書の【0045】の記載から、「電子決済機能を搭載した携帯電話を紛失した場合」に「スマートカードの管理プラットフォームが当該要求に応じて端末側とインタラクションを行うことで、端末側にスマートカードに対してロック又はロック解除を行うようにさせる」ものであるから、引用発明の「利用者の手元から離れた携帯電話端末に内蔵されたICカードの利用制限を行う方法」は、後述する相違点を除いて、本願発明の「スマートカードの遠隔制御を行う方法」に相当する。

(3)引用発明1の「電話会社の管理装置」、「ネットワークと基地局」は、それぞれ、本願発明の前記「スマートカードの管理プラットフォーム」、「モバイルネットワークプラットフォーム」に相当することから、引用発明1の「電話会社の管理装置が、携帯電話端末を紛失または盗まれた利用者が、紛失または盗まれた携帯電話端末のICカードの利用を制限するよう連絡すると、利用者からの連絡を受けた電話会社の管理装置は、紛失または盗まれた携帯電話端末に対し、ネットワークと基地局を介し、利用禁止電文を送出し、ICカードの利用制限の処理を実行するように通信し、」は、本願発明と、後述する相違点は別として、「スマートカードの管理プラットフォームが、ユーザからのスマートカードに対するロック要求を受けた後、モバイルネットワークプラットフォームを介して端末側とインタラクションを行い、スマートカードに対してロックを行うように前記端末側を制御し、」で共通する。

(4)引用発明1の「携帯電話端末」は、本願発明の「移動局」に相当することは明らかであるし、引用発明1の「携帯電話端末」及び携帯電話端末に内蔵された「ICカード」を総称して「端末側」と呼ぶことは任意である。
また、引用発明1の「利用禁止電文」は、利用者からの連絡を受けた電話会社の管理装置が、紛失または盗まれた携帯電話端末に対し、ネットワークと基地局を介し送出され、ICカードの利用制限の処理を実行するものなので、本願発明の「ロック命令」に相当する。
引用例1の図6に記載された、ICカードに対する各種制限はソフト的に実行されることは明らかである。

引用発明1の「携帯電話端末は、電源が入っている場合、基地局から利用禁止電文を受信すると、演算処理部は電文識別符号に付加されている禁止情報の内容を判定し、禁止内容の判定結果がICカード内のアプリケーション利用の禁止の場合には、ICカード内のアプリケーションへアクセスすることを禁止させる処理を行ない、」は、本願発明の「前記端末側は、移動局及びスマートカードを含み、前記移動局がロック命令を実行して、前記スマートカードをロックするステップを含み、当該ステップは、前記移動局がプリインストールされたソフトウェアコンテンツを実行することによりスマートカードの機能を無効にすることを含み、」に相当する。

本願発明と引用発明1とを対比すると、以下の点で一致し、相違する。

(一致点)
「 スマートカードの遠隔制御を行う方法であって、
スマートカードの管理プラットフォームが、ユーザからのスマートカードに対するロック要求を受けた後、モバイルネットワークプラットフォームを介して端末側とインタラクションを行い、スマートカードに対してロックを行うように前記端末側を制御し、
前記端末側は、移動局及びスマートカードを含み、
前記移動局がロック命令を実行して、前記スマートカードをロックするステップを含み、当該ステップは、
前記移動局がプリインストールされたソフトウェアコンテンツを実行することによりスマートカードの機能を無効にすることを含む、
ことを特徴とするスマートカード遠隔制御方法。」

(相違点1)一致点の、「スマートカードの管理プラットフォームが、ユーザからのスマートカードに対するロック要求を受けた後、モバイルネットワークプラットフォームを介して端末側とインタラクションを行い、スマートカードに対してロックを行うように前記端末側を制御し、」について、本願発明では、ロック要求を「受信」するのに対して、引用発明1では、(ICカードの利用を制限するよう)「連絡する」のであって、(ロック要求の)「受信」(信号を受けること)とは異なる点。

(相違点2)「スマートカード遠隔制御方法」について、本願発明が、「前記方法は、前記スマートカードが位置する移動局がオフライン状態にある場合に、前記スマートカードをロック待ち状態に更新すること、前記スマートカードがロック待ち状態に更新された後、前記スマートカードが位置するオフライン状態の前記移動局が通常の使用状態に戻る場合に、前記モバイルネットワークプラットフォームが、前記スマートカードが位置する移動局にロック命令を送信し、前記移動局が前記ロック命令を実行することを更に含む」のに対して、引用発明1は、オフライン状態にある場合に関するこのような構成を有さない点。

上記相違点について検討する。

(相違点1)について、
「スマートカードの管理プラットフォームが、ユーザからのスマートカードに対するロック要求を受けた後、モバイルネットワークプラットフォームを介して端末側とインタラクションを行い、スマートカードに対してロックを行うように前記端末側を制御し、」について、引用発明1の(ICカードの利用を制限するよう)「連絡する」ことに代えて、(連絡を伝えるための)信号に置き換えて、スマートカードの管理プラットフォームに送り、スマートカードの管理プラットフォームが、(ロック要求の)「受信」(信号を受けること)をするように構成することは、当業者にとってなんら困難性のないことである。

(相違点2)について、
引用発明2は、「紛失・盗難された携帯通信端末」に、「制御情報」を送るという点で、引用発明1と同じ技術分野に属する発明であって、さらに、「通話サービスエリア内にいないとき、」の「制御情報」に関して、「紛失・盗難された携帯通信端末が、通話サービスエリア内(通話圏内)にいないとき、移動加入者交換機は、前記携帯通信端末が、前記通話サービスエリア内に入るまで、制御情報(通信機能制御要求信号、暗証番号、通信機能制御(起動/停止)信号等)を、信号保持メモリに一時保持し、
該携帯通信端末が、該通話サービスエリア内に入ったときに、前記移動加入者交換機は、一時保持していた前記制御情報を、前記携帯通信端末へ送信し、 前記携帯通信端末は、通信機能の停止を行う、移動通信システム。」である。
引用発明1の「利用者の手元から離れた携帯電話端末に内蔵されたICカードの利用制限を行う方法」において、「利用者からの連絡を受けた電話会社の管理装置は、紛失または盗まれた携帯電話端末に対し、ネットワークと基地局を介し、利用禁止電文を送出し、ICカードの利用制限の処理を実行するように通信」する際に、携帯電話端末がオフラインになったとき、通話サービスエリア内にいないこととして、引用発明2を単に用いて、基地局で利用禁止電文を一時保持し、携帯電話端末が、通話サービスエリア内に入ったときに、基地局から、携帯電話端末に対して、一時保持していた利用禁止電文を送信し、ICカードの機能を無効にするようにすること、すなわち、本願発明のように、「前記方法は、前記スマートカードが位置する移動局がオフライン状態にある場合に、前記スマートカードをロック待ち状態に更新すること、前記スマートカードがロック待ち状態に更新された後、前記スマートカードが位置するオフライン状態の前記移動局が通常の使用状態に戻る場合に、前記モバイルネットワークプラットフォームが、前記スマートカードが位置する移動局にロック命令を送信し、前記移動局が前記ロック命令を実行することを更に含む」構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明1、2から当業者が容易に予測できる範囲のものである。


4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1、2より、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願はその余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-08 
結審通知日 2016-03-15 
審決日 2016-05-26 
出願番号 特願2012-525844(P2012-525844)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
P 1 8・ 536- WZ (H04M)
P 1 8・ 537- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丸山 高政白川 瑞樹  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 大塚 良平
山中 実
発明の名称 スマートカードの遠隔制御を行う方法及びシステム  
代理人 金子 彩子  
代理人 中村 哲平  
代理人 大森 純一  
代理人 金山 慎太郎  
代理人 吉田 望  
代理人 折居 章  

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