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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1320641
審判番号 不服2015-12563  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-02 
確定日 2016-11-14 
事件の表示 特願2013-507878「無線通信システムにおける制御情報を送受信する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月 3日国際公開、WO2011/136532、平成25年 6月20日国内公表、特表2013-526208、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成23年4月26日(優先権主張 2010年(平成22年)4月30日 韓国)を国際出願日とする出願であって,平成26年4月23日付けで手続補正書が提出され,同年10月7日付けで拒絶理由が通知され,平成27年1月14日付けで意見書とともに手続補正書が提出され,同年2月24日付けで拒絶査定され,同年7月2日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正され,同年8月14日付けで前置報告書が作成され,平成28年4月5日付けで拒絶理由を当審から通知し,同年8月8日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1から20に係る発明は,平成28年8月8日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1から20に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(請求人の附した下線は省略。)
なお,以下において,請求項に係る発明を,請求項の番号に従って,「本願第1発明」などといい,本願第1発明から本願第20発明を併せて「本願発明」という。

【請求項1】
無線通信システムにおける複数の接続に基づいて自動再送要求(ARQ)リセット手順を初期化する方法であって、
前記複数の接続のうちの前記ARQリセット手順を実行するための接続を識別するフロー識別子(ID)と、前記ARQリセット手順を実行するための接続がダウンリンク(DL)接続であるか又はアップリンク(UL)接続であるかを示すダウンリンク/アップリンク(DL/UL)指示子を含むARQリセットメッセージを生成するステップと、
前記ARQリセットメッセージを送信するステップとを有し、
前記ダウンリンク/アップリンク(DL/UL)指示子は1ビットのビット情報で表現され、前記DL/UL指示子が‘0’であれば、前記DL接続に対するARQリセットを指示し、前記DL/UL指示子が‘1’であれば、前記UL接続に対するARQリセットを指示することを特徴とするARQリセット手順初期化方法。
【請求項2】
前記ARQリセットメッセージは、メッセージタイプ、タイプ、予約されたビットに対する情報のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のARQリセット手順初期化方法。
【請求項3】
前記タイプは、イニシエータからの自動再送要求(ARQ)リセット初期化メッセージ、レスポンダからの自動再送要求リセット確認(ACK)メッセージ、前記イニシエータからの自動再送要求リセット確認メッセージ及び予約された値のうちの1つを示すことを特徴とする請求項2に記載のARQリセット手順初期化方法。
【請求項4】
前記タイプはビット情報で表現され、前記タイプのビット情報が‘0b00’であれば、オリジナルメッセージであることを示し、前記タイプのビット情報が‘0b01’であれば、ACKメッセージであることを示し、前記タイプのビット情報が‘0b10’であれば、確認メッセージであることを示し、前記タイプのビット情報が‘0b11’であれば、予約された値であることを示すことを特徴とする請求項2に記載のARQリセット手順初期化方法。
【請求項5】
前記ARQリセットメッセージは、0に設定された1ビットの予約値とタイプをさらに含み、
前記フロー識別子は4ビットで構成され、前記タイプは2ビットで構成されることを特徴とする請求項1に記載のARQリセット手順初期化方法。
【請求項6】
無線通信システムにおける複数の接続に基づいて自動再送要求(ARQ)リセット手順を初期化する方法であって、
ARQリセットメッセージを受信するステップと、
前記受信したARQリセットメッセージからフロー識別子(ID)と、ダウンリンク/アップリンク(DL/UL)指示子を獲得するステップと、
前記フロー識別子(ID)に基づいて前記複数の接続のうちの前記ARQリセット手順を実行する接続を識別し、前記DL/UL指示子に基づいて前記識別したARQリセット手順を実行する接続がダウンリンク(DL)接続であるか又はアップリンク(UL)接続であるかを識別するステップと、
前記フロー識別子及び前記DL/UL指示子に基づいて識別された一つのUL接続又は一つのDL接続に対するARQリセット手順を実行するステップとを有し、
前記ダウンリンク/アップリンク指示子は1ビットのビット情報で表現され、前記DL/UL指示子が‘0’であれば、前記DL接続に対するARQリセットを指示し、前記DL/UL指示子が‘1’であれば、前記UL接続に対するARQリセットを指示することを特徴とするARQリセット手順初期化方法。
【請求項7】
前記ARQリセットメッセージは、メッセージタイプ、タイプ、予約されたビットに対する情報のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項6に記載のARQリセット手順初期化方法。
【請求項8】
前記タイプは、イニシエータからの自動再送要求(ARQ)リセット初期化メッセージ、レスポンダからの自動再送要求リセット確認(ACK)メッセージ、前記イニシエータからの自動再送要求リセット確認メッセージ及び予約された値のうちの1つを示すことを特徴とする請求項7に記載のARQリセット手順初期化方法。
【請求項9】
前記タイプはビット情報で表現され、前記タイプのビット情報が‘0b00’であれば、オリジナルメッセージであることを示し、前記タイプのビット情報が‘0b01’であれば、ACKメッセージであることを示し、前記タイプのビット情報が‘0b10’であれば、確認メッセージであることを示し、前記タイプのビット情報が‘0b11’であれば、予約された値であることを示すことを特徴とする請求項8に記載のARQリセット手順初期化方法。
【請求項10】
前記ARQリセットメッセージは、0に設定された1ビットの予約値とタイプをさらに含み、
前記フロー識別子は4ビットで構成され、前記タイプは2ビットで構成されることを特徴とする請求項8に記載のARQリセット手順初期化方法。
【請求項11】
無線通信システムにおける複数の接続に基づいて自動再送要求(ARQ)リセット手順を初期化する装置であって、
前記複数の接続のうちの前記ARQリセット手順を実行するための接続を識別するフロー識別子(ID)と、前記ARQリセット手順を実行するための接続がダウンリンク(DL)接続であるか又はアップリンク(UL)接続であるかを示すダウンリンク/アップリンク(DL/UL)指示子を含むARQリセットメッセージを生成する制御器と、
前記ARQリセットメッセージを送信する送信器とを有し、
前記ダウンリンク/アップリンク(DL/UL)指示子は1ビットのビット情報で表現され、前記DL/UL指示子が‘0’であれば、前記DL接続に対するARQリセットを指示し、前記DL/UL指示子が‘1’であれば、前記UL接続に対するARQリセットを指示することを特徴とするARQリセット手順初期化装置。
【請求項12】
前記ARQリセットメッセージは、メッセージタイプ、タイプ、予約されたビットに対する情報のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項11に記載のARQリセット手順初期化装置。
【請求項13】
前記タイプは、イニシエータからの自動再送要求(ARQ)リセット初期化メッセージ、レスポンダからの自動再送要求リセット確認(ACK)メッセージ、前記イニシエータからの自動再送要求リセット確認メッセージ及び予約された値のうちの1つを示すことを特徴とする請求項12に記載のARQリセット手順初期化装置。
【請求項14】
前記タイプはビット情報で表現され、前記タイプのビット情報が‘0b00’であれば、オリジナルメッセージであることを示し、前記タイプのビット情報が‘0b01’であれば、ACKメッセージであることを示し、前記タイプのビット情報が‘0b10’であれば、確認メッセージであることを示し、前記タイプのビット情報が‘0b11’であれば、予約された値であることを示すことを特徴とする請求項12に記載のARQリセット手順初期化装置。
【請求項15】
前記ARQリセットメッセージは、0に設定された1ビットの予約値とタイプをさらに含み、
前記フロー識別子は4ビットで構成され、前記タイプは2ビットで構成されることを特徴とする請求項12に記載のARQリセット手順初期化装置。
【請求項16】
無線通信システムにおける複数の接続に基づいて自動再送要求(ARQ)リセット手順を初期化する装置であって、
ARQリセットメッセージを受信する受信器と、
前記受信したARQリセットメッセージからフロー識別子(ID)と、ダウンリンク/アップリンク(DL/UL)指示子を獲得し、前記フロー識別子(ID)に基づいて前記複数の接続のうちの前記ARQリセット手順を実行する接続を識別し、前記DL/UL指示子に基づいて前記識別したARQリセット手順を実行する接続がダウンリンク(DL)接続であるか又はアップリンク(UL)接続であるかを識別し、
前記フロー識別子及び前記DL/UL指示子に基づいて識別された一つのUL接続又は一つのDL接続に対するARQリセット手順を実行する制御器とを有し、
前記ダウンリンク/アップリンク指示子は1ビットのビット情報で表現され、前記DL/UL指示子が‘0’であれば、前記DL接続に対するARQリセットを指示し、前記DL/UL指示子が‘1’であれば、前記UL接続に対するARQリセットを指示することを特徴とするARQリセット手順初期化装置。
【請求項17】
前記ARQリセットメッセージは、メッセージタイプ、タイプ、予約されたビットに対する情報のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項16に記載のARQリセット手順初期化装置。
【請求項18】
前記タイプは、イニシエータからの自動再送要求(ARQ)リセット初期化メッセージ、レスポンダからの自動再送要求リセット確認(ACK)メッセージ、前記イニシエータからの自動再送要求リセット確認メッセージ及び予約された値のうちの1つを含むことを特徴とする請求項17に記載のARQリセット手順初期化装置。
【請求項19】
前記タイプはビット情報で表現され、前記タイプのビット情報が‘0b00’であれば、オリジナルメッセージであることを示し、前記タイプのビット情報が‘0b01’であれば、ACKメッセージであることを示し、前記タイプのビット情報が‘0b10’であれば、確認メッセージであることを示し、前記タイプのビット情報が‘0b11’であれば、予約された値であることを示すことを特徴とする請求項17に記載のARQリセット手順初期化装置。
【請求項20】
前記ARQリセットメッセージは、0に設定された1ビットの予約値とタイプをさらに含み、
前記フロー識別子は4ビットで構成され、前記タイプは2ビットで構成されることを特徴とする請求項17に記載のARQリセット手順初期化装置。


第3 当審拒絶理由に関する判断

1.当審拒絶理由の概要
平成28年4月5日付けで,当審から通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は,次のとおりである。

[理由](進歩性)
本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

本願の請求項1から20に係る発明は,平成27年7月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1から20に記載された事項により特定されるとおりのものである。
○ 請求項1に対して
本願の優先権主張日前に公知であった「IEEE 802.16 Broadband Wireless Access Working Group,IEEE C802.16m-09/2026r1,Management message for ARQ operation (15.2.6)」(以下「引用例」という。)には,「Table xxx-AAI_ARQ-Reset message format」(以下「引用テーブル」という。)として次の記載がある。

***引用文献
1.IEEE 802.16 Broadband Wireless Access Working Group,IEEE C802.16m-09/2026r1,Management message for ARQ operation (15.2.6)(2009年(平成21年)9月28日公開)

2.引用例及び記載事項
当審拒絶理由で引用した「引用例」には,次の事項が記載されている。

(1) 記載事項1
1 Introduction
In the current IEEE P802.16m/D1 document [1], the messages for proper ARQ operation does not specified. To support exact ARQ operation, this contribution proposes the message format for ARQ. All message contents are almost similar in IEEE P802.16-2009.
(当審訳
1 はじめに
現在のIEEE P802.16m/D1文書[1]には,適切なARQ動作のためのメッセージが明記されていない。正確なARQ動作を支援するために,この文献は,ARQのメッセージ形式を提案している。全てのメッセージ内容は,IEEE P802.16-2009のものとほぼ類似している。)

(2) 記載事項2
5.2.6.x+3. AAI_ARQ-Reset message

The transmitter or receiver may send this message. The message is used in a dialog to reset the parent connection's ARQ transmitter and receiver state machines. The detail ARQ reset procedure is described in the 15.3.8.7.4.
(当審訳
5.2.6.x+3. AAI_ARQ-リセットメッセージ
送信器又は受信器はこのメッセージを送信することができる。メッセージは,親接続のARQ送信器と受信器との状態マシンをリセットするようなダイアログにおいて使用される。詳しいARQリセット手順は,15.3.8.7.4に記載されている。)

(3) 記載事項3
引用テーブル(「Table xxx-AAI_ARQ-Reset message format」)として次の記載がある。

(4) 引用発明
上記記載事項1から3によると,引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

送信器又は受信器がARQリセットメッセージを送信する方法であって,
前記ARQメッセージは,
ARQリセット手順を実行する通信の接続ID(connection ID)であるフローID(Flow ID)と,
アップリンク(UL)であるか又はダウンリンク(DL)であるかを示す方向(Direction)と を含み,
前記方向のサイズ(Size)は,2ビットのビット情報で表現される,
方法。

3.当審拒絶理由に関する判断
(1) 本願第1発明について
ア 対比
本願第1発明と引用発明を比較すると,少なくとも次の相違があるということができる。

本願第1発明においては,「ダウンリンク/アップリンク(DL/UL)指示子」は,「1ビットのビット情報で表現され」,そして該「指示子」が,「‘0’であれば、前記DL接続に対するARQリセット」を指示しまた「‘1’であれば、前記UL接続に対するARQリセット」を指示するのに対して,引用発明には,「1ビットのビット情報で表現され」るような「指示子」であって,「‘0’であれば、前記DL接続に対するARQリセット」を指示し、「‘1’であれば、前記UL接続に対するARQリセット」を指示する「指示子」の特定がない点。

イ 当審の判断
上記相違について検討するに,引用発明を基にし,上記相違のように構成するには,まず,(a)引用発明における「2ビットのビット情報」で表現される「方向(Direction)」を,「1ビットのビット情報」で表現するように変更しなければならない。
そして,(b)引用発明における「方向(Direction)」が,「アップリンク」方向及び「ダウンリンク」方向以外を示す機能が予定されていることは,「引用テーブル」における記載から明らかである。
このように,引用発明には,上記「アップリンク」方向及び「ダウンリンク」方向以外を示す機能が予定されている以上,引用発明に対し,「ARQリセット手順を実行するための接続がダウンリンク(DL)接続であるか又はアップリンク(UL)接続であるか」を示す「ダウンリンク/アップリンク(DL/UL)指示子」を「1ビットのビット情報」で表現するように構成する動機は,当業者に生じ得ない。

したがって,引用発明に基づいて,当業者が,本願第1発明を容易に発明をすることができたということはできない。

ウ 本願第1発明に関するまとめ
以上のとおりであるから,引用発明に基づいて,本願第1発明が,特許法第29条第2項に該当するということはできない。

(2) 本願第2発明から本願第5発明について
本願第2発明から本願第5発明は,本願第1発明を,直接的若しくは間接的に引用するものであるから,上記「(1) 本願第1発明について」に述べたのと同様の事情を有する。

したがって,引用発明に基づいて,当業者が,本願第2発明から本願第5発明を容易に発明をすることができたということはできない。
よって,引用発明に基づいて,本願第2発明から本願第5発明が,特許法第29条第2項の規定に該当するということはできない。

(3) 本願第6発明について
本願第6発明と引用発明についても,上記「(1) 本願第1発明について」に述べたのと同様の相違がある。
そうすると,本願第6発明についても,上記「(1) 本願第1発明について」に述べたのと同様であって,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

よって,引用発明に基づいて,本願第6発明が,特許法第29条第2項に該当するということはできない。

(4) 本願第7発明から本願第10発明について
本願第7発明から本願第10発明は,本願第6発明を,直接的若しくは間接的に引用するものであるから,上記「(3) 本願第6発明について」に述べたのと同様の事情を有する。

したがって,引用発明に基づいて,当業者が,本願第7発明から本願第10発明を容易に発明をすることができたということはできない。
よって,引用発明に基づいて,本願第7発明から本願第10発明が,特許法第29条第2項の規定に該当するということはできない。

(5) 本願第11発明について
本願第11発明と引用発明についても,上記「(1) 本願第1発明について」に述べたのと同様の相違がある。
そうすると,本願第11発明についても,上記「(1) 本願第1発明について」に述べたのと同様であって,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

よって,引用発明に基づいて,本願第11発明が,特許法第29条第2項に該当するということはできない。

(6) 本願第12発明から本願第15発明について
本願第12発明から本願第15発明は,本願第11発明を,直接的若しくは間接的に引用するものであるから,上記「(5) 本願第11発明について」に述べたのと同様の事情を有する。

したがって,引用発明に基づいて,当業者が,本願第12発明から本願第15発明を容易に発明をすることができたということはできない。
よって,引用発明に基づいて,本願第12発明から本願第15発明が,特許法第29条第2項の規定に該当するということはできない。

(7) 本願第16発明について
本願第16発明と引用発明についても,上記「(1) 本願第1発明について」に述べたのと同様の相違がある。
そうすると,本願第16発明についても,上記「(1) 本願第1発明について」に述べたのと同様であって,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

よって,引用発明に基づいて,本願第16発明が,特許法第29条第2項に該当するということはできない。

(8) 本願第17発明から本願第20発明について
本願第17発明から本願第20発明は,本願第16発明を,直接的若しくは間接的に引用するものであるから,上記「(7) 本願第16発明について」に述べたのと同様の事情を有する。

したがって,引用発明に基づいて,当業者が,本願第17発明から本願第20発明を容易に発明をすることができたということはできない。
よって,引用発明に基づいて,本願第17発明から本願第20発明が,特許法第29条第2項の規定に該当するということはできない。

4.当審拒絶理由のまとめ
以上のとおり,引用発明に基づいて,本願発明を,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

したがって,引用発明を基に,本願発明が,特許法第29条第2項の規定に該当するということはできない。


第4 原査定の理由に関する判断

1.原査定の理由の概要
原査定の理由は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項:1,7,13,19
・引用文献等:1
・備考
引用文献1(特にFig.4及び段落[0022]参照)には、ARQリセットメッセージが、そのフォーマットとして、ARQリセット手順を実行するための接続がダウンリンク接続であるかアップリンク接続であるかを示す識別子と、接続を示すコネクション識別子とを備えること、及び、当該フォーマットを備えたARQリセットメッセージを通信装置間で送受信することが記載されている。
ここで、本願の上記請求項に係る発明と、引用文献1に記載の発明とを対比すると、本願の上記請求項に係る発明は、フロー識別子を用いている点で、コネクション識別子を用いる引用文献1に記載の発明とは相違している。
しかしながら、フロー識別子及びコネクション識別子はともに接続を識別する識別子であり、どちらを用いるかは当業者が必要に応じて適宜決定すべき事項である。

・請求項:2-6,8-12,14-18,20-24
・引用文献等:1
・備考
引用文献1に記載のARQリセットメッセージのフォーマットには、当該ARQリセットメッセージのタイプを示す領域、方向を示す領域及び予約領域が含まれることが記載されている。そして、各領域のビット数を何ビットとするかは、技術思想の具体化の際に適宜決定できる事項である。

引用文献等一覧
1.米国特許出願公開第2007/0277072号明細書

2.引用文献の記載事項
原査定の理由における「引用文献1」には,次の記載(以下「引用文献記載事項」という。)がある。

3.原査定の理由に関する当審の判断
本願第1発明と引用文献記載事項とを比較すると,上記「第3」の「3.(1)ア 対比」に述べたのと同じ相違が少なくとも有るということができる。

そうすると,上記「第3」の「3.(1)イ 当審の判断」に述べたのと同様であり,引用文献1の記載に基づく発明を基にして,本願第1発明を,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

また,本願第2発明から本願第20発明についても,上記「第3」の「3.(2) 本願第2発明から本願第5発明について」から「同(8) 本願第17発明から本願第20発明について」に述べたのと同様である。

4.原査定の理由に関するまとめ
以上のとおりであるから,引用文献1における記載を基に,本願発明が,特許法第29条第2項の規定にに該当するということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであるから,原査定の理由によっても,また当審拒絶理由によっても,本願を拒絶することはできない。
そして,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-10-28 
出願番号 特願2013-507878(P2013-507878)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石田 紀之  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 近藤 聡
吉田 隆之
発明の名称 無線通信システムにおける制御情報を送受信する方法及び装置  
代理人 木内 敬二  
代理人 実広 信哉  
代理人 崔 允辰  
代理人 阿部 達彦  

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