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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1320658
審判番号 不服2015-16124  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-01 
確定日 2016-10-20 
事件の表示 特願2012-135665号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月 6日出願公開、特開2012-166104号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年5月8日に特許出願された特願2008-122168号の一部を平成24年6月15日に新たに特許出願されたものであって、平成26年5月28日付けで手続補正がなされたが、平成27年2月19日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し平成27年4月20日付けで手続補正がなされたが、平成27年5月27日付けで補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年9月1日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
平成27年4月20日付けの手続補正は既に補正却下の決定がなされている。そして、本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載を含む補正であり、平成26年5月28日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。なお、「し且つ前記発光表示部とは異なる発光態様で発光可能な発光部を有した」については、平成26年5月28日付け手続補正にない構成であるので、下線部は当審で追加した)。

(補正前:平成26年5月28日付け手続補正)
「【請求項1】
画像を表示する画像表示手段と、
前面に発光表示部を有し且つ前記画像表示手段の前側の演出位置と該演出位置から退避する退避位置との間で出退移動する可動演出体と、
該可動演出体を出退移動可能に支持する発光式の可動アームとを備え、
前記可動演出体は前記発光表示部を裏側から発光させる発光素子を備え、
前記可動演出体の前記演出位置への移動、前記可動アームの発光、前記発光表示部の発光及び前記画像表示手段の演出画像の表示が略同期するようにした
ことを特徴とする弾球遊技機。」

(補正後:本件補正である平成27年9月1日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技盤の裏側の支持枠に装着され且つ画像を表示する画像表示手段と、
前面に発光表示部を有し且つ前記画像表示手段の前側の演出位置と該演出位置から退避する退避位置との間で出退移動する可動演出体と、
該可動演出体を出退移動可能に支持し且つ前記発光表示部とは異なる発光態様で発光可能な発光部を有した可動アームとを備え、
前記可動アームは前記退避位置では前記遊技盤の前側に配置された前飾り体と前記支持枠との間の空間内に退避可能であり、
前記可動演出体は前記発光表示部を裏側から発光させる発光素子を備え、
前記可動演出体の前記演出位置への移動、前記可動アームの発光、前記発光表示部の発光及び前記画像表示手段の演出画像の表示が略同期するようにした
ことを特徴とする弾球遊技機。」

2.補正の適否
審判請求時の補正によって、請求項1の記載は、上記1.の下線部が加わるように補正された。すなわち、補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「画像表示手段」について、「遊技盤の裏側の支持枠に装着され」と限定するとともに、「可動アーム」について、「前記発光表示部とは異なる発光態様で発光可能な発光部を有した」、「前記可動アームは前記退避位置では前記遊技盤の前側に配置された前飾り体と前記支持枠との間の空間内に退避可能であり、」と限定するものである。

そうすると、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下において検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1の補正の概要において示した次のとおりのものである(A?Fは本願補正発明を分説するため当審で付与した。)。

「A.遊技盤の裏側の支持枠に装着され且つ画像を表示する画像表示手段と、
B.前面に発光表示部を有し且つ前記画像表示手段の前側の演出位置と該演出位置から退避する退避位置との間で出退移動する可動演出体と、
C.該可動演出体を出退移動可能に支持し且つ前記発光表示部とは異なる発光態様で発光可能な発光部を有した可動アームとを備え、
D.前記可動アームは前記退避位置では前記遊技盤の前側に配置された前飾り体と前記支持枠との間の空間内に退避可能であり、
E.前記可動演出体は前記発光表示部を裏側から発光させる発光素子を備え、
F.前記可動演出体の前記演出位置への移動、前記可動アームの発光、前記発光表示部の発光及び前記画像表示手段の演出画像の表示が略同期するようにした
ことを特徴とする弾球遊技機。」

(2)刊行物に記載された事項
(2-1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である「CRぱちんこ冬のソナタ2」,パチンコ必勝ガイド2008年5月3日号,株式会社白夜書房,2008年 5月 3日発行,p.4-16(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)第4頁には、パチンコ機「CRぱちんこ冬のソナタ2」を前面から見た図が示されており、遊技盤中央には画像表示装置が備えられ、その右側には星型の装飾体が複数連接されている。

(イ)第5頁左側中央部に星型の装飾体が4つ点灯しているものが図示され、その解説として「メガポラリスが白く点滅すればチャンス!赤ならさらに…!?点滅するタイミングは回転開始時。白よりも赤の方がアツいみたいですね。」と記載されている。

(ウ)第12頁上部中央部には「メガポラリス」として星型の装飾体4つが図示されており、一番下の星型の装飾体は他の3つの星型の装飾体と異なる発光をしている様子が図示されている。そして、4つの星型の装飾体からなる「メガポラリス」は、第4頁のものと比べると、画像表示装置の右側から画像表示装置の前側を一部覆うように移動している。
また、図面の解説として、「発展時にミニョンのカットインと共にメガポラリスが激しくフラッシュすれば、信頼度が通常よりも格段にアップするスペシャルバージョン(SP)へと発展する。」、「様々な場面から実写系SPへと導く激アツ発展出 メガポラリス」、「メガポラリス発動&ミニョンカットインで実写系SPへ!」、「発展時にメガポラリスが作動すれば、実写系SPへと発展する。通常では見ることのできないムービーが流れ、信頼度が大幅にアップするぞ。」と記載されている。

(エ)上記(ア)、(イ)における「星型の装飾体」は上記(ウ)でいう「メガポラリス」であり、「メガポラリス」は4つの「星型の装飾体」が連接されて構成されている。

(オ)上記(ウ)において、4つの星型の装飾体からなる「メガポラリス」の一番下の星型の装飾体は連接された他の3つの星型の装飾体と異なる発光を可能とし、激しくフラッシュするものである。そして、メガポラリスの作動、発動は、一番下の星型の装飾体を激しくフラッシュするとともに画像表示手段を一部覆うように移動可能とすることを意味することは明らかである。また、移動時においてミニョンカットインが画像表示装置に表示されることは明らかである。

(カ)第4頁、第5頁、第12頁の図面におけるメガポラリスの各星型の装飾体は、上記(イ)のような点滅、(ウ)のようなフラッシュをするから、その表面に発光部を備えることは発光演出する上で当然の構成である。そして、点滅制御等のためには各装飾体の裏側に発光素子を備えることは遊技機の演出装飾体として技術常識である。

以上の(ア)?(カ)における記載内容、認定事項を総合すると、上記刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(a?fは引用発明を分説するため当審で付与した。)。

「a 遊技盤中央には画像表示装置が備えられ、
b 表面に発光部を有し、画像表示装置の前側と右側との間を移動可能な連接された4つの星型の装飾体からなるメガポラリスを備え、
c メガポラリスの一番下の星型の装飾体は連接された他の3つの星型の装飾体と移動時に異なる発光(激しくフラッシュ)を可能とし、
e メガポラリスの各星型の装飾体は表面の発光部を裏側から発光させる発光素子を備え、
f メガポラリスの画像表示装置の前側への移動時に、メガポラリスの発光、一番下の星型の装飾体の激しいフラッシュをし、ミニョンカットインを画像表示装置に表示するようにしたパチンコ機。」

(2-2)刊行物2
本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2007-195810号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)

(ア)「【0036】
図1に示すように、遊技領域1aの略中央に配されるセンターケース11は、中央に画像表示装置15の表示領域を区画する矩形状の表示窓部12を有するとともにその周囲に装飾が施され、遊技盤1に形成された開口(図示略)に前面側から嵌め込まれている。また、図2に示すように、センターケース11の中央であって表示窓部12が形成された部分は、所定の前後幅を有する筒状の空間となっており、この筒状の空間の後端部が画像表示装置15の前面によって閉鎖されている。すなわち、センターケース11の中央には、後方に窪んだ凹室16が形成されている。
・・・
【0041】
図3に示すように、センターケース11は前側に配される前側構成ユニット200と、後側に配される後側構成ユニット300から構成されている。・・・」

(イ)「【0052】
また、前側ベース部材201の前面側には鎧部材212が取り付けられている。この鎧部材212は、センターケース11の上部および側部において、前方に向かって遊技領域1a内に突出するように配され、鎧部材212の前端が遊技領域1aの前側を覆うガラス枠の内側のガラス板の裏面近傍に配置される。そして、鎧部材212は、遊技領域1aを流下する遊技球が、センターケース11の上側および側部から凹室16内に進入するのを防止し、画像表示装置15の視認性を確保するとともにステージ17上への遊技球の流入数を制限するようになっている。
・・・
【0060】
図5に示すように、後側構成ユニット300は、枠状の後側ベース部材301を有し、この後側ベース部材301に各種の部材が取り付けられている。この後側ベース部材301は、センターケース11の後端部に位置するものであって、中央に矩形状の開口である表示窓部12を有しており、この後側ベース部材301の裏面に画像表示装置15の前面が当接した状態で固定されることで、画像表示装置15の表示領域が区画されるようになっている。また、この表示窓部12の周囲であって、後側ベース部材301の前面および裏面には、ねじ穴やねじ止め部、位置決めのためのボス、ボスを受け入れる凹部やリブなどが形成され、各種部材を適切な位置に固定できるようになっている。」

(ウ)「【0118】
次に、以上のように構成される可動演出機構における演出動作について説明する。
演出動作は、遊技を制御する遊技制御手段からのコマンドに基づき、表示制御手段の制御の下で行われるようになっており、変動表示ゲームの変動開始時、リーチ状態となった場合、特別遊技状態中などに、画像表示装置15の表示態様に関連して第1可動演出部材320、第2可動演出部材321を動作させることで行われる。
【0119】
可動演出機構による演出が行われていない非動作時には、図11に示すように、第1可動演出部材320、第2可動演出部材321は、表示窓部12の前面から退避した常態位置に存在するようになっている。」

(エ)「【0126】
なお、図13(b)示すように、第3歯車365の第1係合部365aは、図12(b)に示す状態よりも、さらに第1被係合部353cを上方向に押し上げた状態となる。よって、図13(a)に示すように、第1可動演出部材320は、図12(a)に示す状態よりもより大きく下方に回動することとなる。また、図13(b)に示すように、第1被係合部353cが上方向に押し上げられることで、伝達部材収納部356に形成されたボス356bに当接し、この位置で上方向への回動が規制される。すなわち、図13(a)に示す状態が、第1可動演出部材320、第2可動演出部材321の下限位置となる。」

(オ)【図7】には、前側構成ユニット200と、後側に配される後側構成ユニット300から構成されているセンターケース11と鎧部材212の間に第1可動演出部材320が配置されることが図示されている。そして、【図11】には、第1可動演出部材320、第2可動演出部材321は、センターケース11と鎧部材212の間に退避したことが図示され、【図12】?【図13】には、第1可動演出部材320、第2可動演出部材321は、画像表示装置15の前に移動していることが図示されている。

以上より、刊行物2には以下の技術事項が記載されているものと認められる。
(カ)画像表示装置15は遊技盤1の開口にセンターケース11を介して取り付けられること。
(キ)第1可動演出部材320、第2可動演出部材321は、鎧部材212とセンターケース11の間に退避可能としたこと。

(2-3)刊行物3
本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2007-312973号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)

(ア)「【0014】
次に、遊技盤41上の遊技領域42の構成について図3に基づいて説明する。
図3に示すように、この遊技領域42は、所定厚さの板材をなした遊技盤41上に入賞口などの各構造物が配設され、それを囲むように環状のレール43が立設されて構成されている。このレール43は、発射されたパチンコ球を遊技領域42内に案内する重複して形成した案内路44を構成し、右肩部にはレール43に沿って打ち込まれるパチンコ球の進行を制限するための段差部45を有する。
遊技領域42のほぼ中央には、開口部が開設され、この開口部の前面側に図柄表示装置としての特別図柄表示装置48が配設されている。この特別図柄表示装置48は、遊技盤41の前面側に装着される前面側装飾部材46と、遊技盤41の裏面側に装着されて、前面側装飾部材46の背面側に配置される裏側装飾部材47(図4参照)と、裏側装飾部材47の背面部に取り付けられる液晶表示器(LCD)52と、裏側装飾部材47の前面部の液晶表示器52の略右下角部近傍位置に回転中心が配置されて、通常時は前面側装飾部材46に覆われる細長形状のスイングライト68と、前面側装飾部材46の右下端縁部に配置される本特図表示装置53等から構成されている。この液晶表示器52には、後述のように始動口57への入賞に基づいて左、中、右に上下方向に変動する3列の識別図柄(以下、「特別図柄」という。)が変動表示される。また、液晶表示器52の左下角部には、左右に2分割された普通図柄を表示する普通図柄表示部50が構成されている。また、この本特図表示装置53は、3個の7セグメントLEDで構成され、後述のように始動口57への入賞に基づいて3個の識別図柄が変動表示される(図27参照)。」

(イ)「【0018】
次に、特別図柄表示装置48の構成について図4に基づいて説明する。
図4に示すように、特別図柄表示装置48を構成する前側装飾部材46は、遊技盤41の中央部に開設される開口部の周囲に前面側から各取付孔110を介してビス止め等によって取り付けられ、この開口部の周囲を閉塞すると共に装飾している。
また、特別図柄表示装置48を構成する裏側装飾部材47は、遊技盤41の中央部に開設される開口部に裏側から嵌入されて、遊技盤41の背面部にビス止め等によって取り付けられている。また、裏側装飾部材47の中央部には、液晶表示器(LCD)52の表示画面にほぼ等しい大きさの略横長四角形の開口部111が開設され、背面側から液晶表示器52が取り付けられている。」

(ウ)「【0132】
以上説明した通り、本実施例に係るパチンコ機1によれば、液晶表示器52の略右下角部近傍位置に回転中心が配置されて、通常時は前面側装飾部材46に覆われる細長形状のスイングライト68を、リーチ状態の際に、最大中心角度θ1で揺動させるように駆動制御すると共に、このスイングライト68の長手方向に列設された20個の発光ダイオード68Aを所定タイミングで点灯駆動させることによって、液晶表示器52の表示画面上に「KO!」等のメッセージ103を表示することが可能となり、大当たりに発展する信頼度等を報知することが可能となる。・・・」

(エ)【図39】、【図41】、【図42】には、スイングライト68が液晶表示器52の前方まで移動することが図示されている。

以上より、刊行物3には以下の技術事項が記載されているものと認められる。
(オ)液晶表示器(LCD)52は遊技盤41の背面部に裏側装飾部材47を介して取り付けられること。
(カ)スイングライト68は前面側装飾部材46と裏側装飾部材47の間に退避可能としたこと。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「遊技盤中央に」「備えられた画像表示装置」と、本願補正発明の「遊技盤の裏側の支持枠に装着され且つ画像を表示する画像表示手段」とを対比すると、引用発明の「画像表示装置」は、本願補正発明の「画像を表示する画像表示手段」に相当する。そして、「遊技盤中央には備えられ」は「遊技盤に装着され」を意味する。
したがって、両者は「遊技盤に装着され且つ画像を表示する画像表示手段」である点で共通する。

(イ)引用発明の4つの星型の装飾体からなるメガポラリスは画像表示装置の前側と右側との間を移動可能であるから、画像表示装置の表示に邪魔にならない右側(退避位置)と、演出が行われる画像表示装置の前側(演出位置)との間で移動可能である。
そして、「メガポラリスの一番下の星型の装飾体」は移動時に他の星型の装飾体と異なる発光を可能とするものであるから、他の星型の装飾体と異なる演出を可能とするものである。
そうすると、引用発明のメガポラリスの「一番下の星型の装飾体」は、本願補正発明の画像表示手段の前側の演出位置と該演出位置から退避する退避位置との間で出退移動する「可動演出体」に相当するといえる。

(ウ)上記(イ)を踏まえると、引用発明のメガポラリスの「他の星型の装飾体」は、一番下の星型の装飾体(可動演出体)を出退移動可能に支持するものといえる。また、引用発明のメガポラリスの「連接された他の星型の装飾体」と「一番下の星型の装飾体」は異なる発光を可能とするものである。
そうすると、引用発明の「連接された他の星型の装飾体」は、本願補正発明の可動演出体を出退移動可能に支持し且つ前記発光表示部とは異なる発光態様で発光可能な発光部を有した「可動アーム」に相当する。

(エ)引用発明のメガポラリスの各星型の装飾体は表面の発光部を裏側から発光させる発光素子を備えているから、星型の装飾体の1つである「一番下の星型の装飾体」(可動演出体)も、本願補正発明の可動演出体と同様に発光表示部を裏側から発光させる発光素子を備えている。

(オ)引用発明の「メガポラリスの画像表示装置の前側への移動時に、メガポラリスの発光、一番下の星型の装飾体の激しいフラッシュをし、ミニヨンカットインを画像表示装置に表示するようにした」と、本願補正発明の「前記可動演出体の前記演出位置への移動、前記可動アームの発光、前記発光表示部の発光及び前記画像表示手段の演出画像の表示が略同期するようにした」を対比する。
引用発明のメガポラリスの移動時には一番下の星型の装飾体(可動演出体)の移動もあり、「画像表示装置の前側への移動」は「演出位置への移動」に相当する。そして、引用発明のメガポラリスの発光には「他の星型の装飾体」である可動アームの発光も含まれる。また、引用発明の「一番下の星型の装飾体の激しいフラッシュ、ミニョンカットインを画像表示装置に表示」は、本願補正発明の「発光表示部の発光及び前記画像表示手段の演出画像の表示」に相当する。
そうすると、引用発明の「メガポラリスの画像表示装置の前側への移動時に、メガポラリスの発光、一番下の星型の装飾体の激しいフラッシュをし、ミニョンカットインを画像表示装置に表示するようにした」は、本願補正発明の「前記可動演出体の前記演出位置への移動、前記可動アームの発光、前記発光表示部の発光及び前記画像表示手段の演出画像の表示が略同期するようにした」と、「前記可動演出体の前記演出位置への移動、前記可動アームの発光、前記発光表示部の発光及び前記画像表示手段の演出画像の表示」をするようにしたこと点で共通する。
また、引用発明の「パチンコ機」は本願補正発明の「弾球遊技機」に相当するものである。

そうすると、両者は、
A’遊技盤に装着され且つ画像を表示する画像表示手段と、
B 前面に発光表示部を有し且つ前記画像表示手段の前側の演出位置と該演出位置から退避する退避位置との間で出退移動する可動演出体と、
C 該可動演出体を出退移動可能に支持し且つ前記発光表示部とは異なる発光態様で発光可能な発光部を有した可動アームとを備え、
E 前記可動演出体は前記発光表示部を裏側から発光させる発光素子を備え、
D’前記可動アームは退避位置に退避可能であり、
F’前記可動演出体の前記演出位置への移動、前記可動アームの発光、前記発光表示部の発光及び前記画像表示手段の演出画像の表示をするようにした弾球遊技機。」
である点で一致しており、次の点で相違する。

(相違点1)
画像表示手段について、本願補正発明は遊技盤の裏側の支持枠に装着されているが、引用発明は遊技盤に装着した点。

(相違点2)
前記可動アームの退避について、本願補正発明は、前記遊技盤の前側に配置された前飾り体と前記支持枠との間の空間内に退避可能としたのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。

(相違点3)
前記可動演出体の前記演出位置への移動、前記可動アームの発光、前記発光表示部の発光及び前記画像表示手段の演出画像の表示について、本願補正発明は略同期するようにしたのに対し、引用発明はそのような特定が定かでない点。

(4)判断
そこで、まず前記相違点1について検討する。
刊行物3には、上記(2-3)(オ)のように、液晶表示器(LCD)52は遊技盤41の背面部に裏側装飾部材47を介して取り付けられることが記載されている。ここで、「液晶表示器(LCD)52」、「遊技盤41の背面部」、「裏側装飾部材47」は、それぞれ、「画像表示手段」、「遊技盤の裏側」、「支持枠」に言い換えることができるから、刊行物3には、「遊技盤の裏側の支持枠に装着された画像表示手段」が記載されているといえる。
そして、遊技機において画像表示手段をどのように装着するかは設計事項であるところ、引用発明において、刊行物3に記載された記載事項を適用し、前記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に行い得ることである。

次に前記相違点2について検討する。
一般に、遊技機における可動演出体、可動アームの移動において、演出時には表示画面上に接近させ、通常時には表示画面から離れた位置、見えない位置に退避させることは周知慣用事項といえる。

そして、前記刊行物2には、上記(2-2)(キ)において、第1可動演出部材320、第2可動演出部材321は、鎧部材212とセンターケース11の間に退避可能としたことが記載されている。ここで、「第1可動演出部材320」、「第2可動演出部材321」は、「可動アーム」を含んでおり、「鎧部材212」は「遊技盤の前側に配置された前飾り体」ということができ、「センターケース11」は「支持枠」ということができる。したがって、刊行物2には、「可動アームは遊技盤の前側に配置された前飾り体と支持枠との間の空間内に退避可能であること」が記載されているといえる。
また、上記刊行物3には、上記(2-3)(カ)において、スイングライト68は前面側装飾部材46と裏側装飾部材47の間に退避可能としたことが記載され、同様に表現を変えれば、「可動アームは遊技盤の前側に配置された前飾り体と支持枠との間の空間内に退避可能であること」が記載されているといえる。
このように、前飾り体と支持枠との間の空間内に可動アームを退避させることは刊行物2、3に記載のとおり遊技機において本願の出願遡及日前に周知技術である。
そして、引用発明において、可動アームの退避場所として上記刊行物2、3に記載の周知技術を適用して、前記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に行い得ることである。

更に相違点3について検討する。
引用発明は「メガポラリスの画像表示装置の前側への移動時に、メガポラリスの発光、一番下の星型の装飾体の激しいフラッシュをし、ミニョンカットインを画像表示装置に表示する」について、発光、フラッシュ、画面表示の一連の演出は「メガポラリス」の移動時に行うことを示しており、移動も含めこれら一連の演出を略同期させて行うことは、遊技機において特定タイミングでの演出効果の向上を考慮すれば当業者が容易に行えることである。
したがって、引用発明から前記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に行い得ることである。

そして、本願補正発明の効果について、引用発明、刊行物3に記載された事項、周知技術からみて格別なものではない。

(5)審判請求人の主張について
審判請求人は請求書第4頁において以下のような主張をしている。
「3)そこで、本願発明と引用文献1のメガロポリスとを対比するに当たって、引用文献1のメガロポリスの「下端の装飾部材」が本願発明の可動演出体に、引用文献1のメガロポリスの「下端の装飾部材以外の部分」が本願発明の可動アームに夫々相当すると仮定しましても、本願発明の可動アームは前飾り体と支持枠との間の空間内に退避可能であるのに対して、引用文献1のメガロポリスの「下端の装飾部材以外の部分」は退避位置でも前飾り体の前側に露出状態にあります。
4)従って、本願発明は、可動アームが退避位置では遊技盤の前側に配置された前飾り体と支持枠との間の空間内に退避可能である点において、引用文献1に記載の発明とは構成が大きく相違するものであります。」

しかしながら、上記(4)において前記相違点2として検討したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

また、平成28年4月28日付けの上申書において、次のように補正の用意がある旨主張している。
『遊技盤の裏側の支持枠に装着され且つ画像表示部に画像を表示する画像表示手段と、
前面に発光表示部を有し且つ前記画像表示部の前中央側の演出位置と該演出位置から退避する退避位置との間で出退移動する可動演出体と、
該可動演出体を出退移動可能に支持し且つ前記発光表示部とは異なる発光態様で発光可能な発光部を有した可動アームと、を備え、
前記可動アームは前記退避位置では前記遊技盤の前側に配置された前飾り体と前記支持枠との間の空間内に退避可能であり、
前記可動演出体は前記発光表示部を裏側から発光させる発光素子を備え、
前記可動演出体の前記演出位置への移動と、前記可動アームの発光と、前記発光表示部の発光と、前記発光表示部の周辺で前記画像表示部に表示される演出画像の表示とが略同期するようにした
ことを特徴とする弾球遊技機。』

そこで、前記補正箇所について一応検討を加える。
まず、可動演出体を画像表示部の前中央側まで移動させることは、先の刊行物2の【図13】、刊行物3の【図42】をはじめ、可動演出体を備えた遊技機において本願の遡及出願日前に周知技術といえる。
また、可動演出体の発光部周辺と画面表示部に表示される演出画像の表示を略同期させるようにすることについて検討すると、引用発明の可動演出体は星型の装飾体であるから周辺を目立つように発光させることは当然のことである。したがって、可動演出体の発光部周辺と画面表示部に表示される演出画像の表示を略同期させることは刊行物1に記載の事項から当業者が容易になし得ることである。
したがって、上記補正が仮になされたとしても、補正をされた本願補正発明が引用発明、刊行物3に記載された事項、周知技術から当業者が容易に想到し得るものである。

(6)小括
よって、本願補正発明は引用発明及び刊行物3に記載された事項、周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年5月28日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で示した特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
画像を表示する画像表示手段と、
前面に発光表示部を有し且つ前記画像表示手段の前側の演出位置と該演出位置から退避する退避位置との間で出退移動する可動演出体と、
該可動演出体を出退移動可能に支持する発光式の可動アームとを備え、
前記可動演出体は前記発光表示部を裏側から発光させる発光素子を備え、
前記可動演出体の前記演出位置への移動、前記可動アームの発光、前記発光表示部の発光及び前記画像表示手段の演出画像の表示が略同期するようにした
ことを特徴とする弾球遊技機。」

1.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、上記第2の3.(2)に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、基本的に本願補正発明の発明特定事項から、上記第2の1.の下線部の構成を省いたものである。
本願発明と先の引用発明を対比すると、上記第2の3.(3)における相違点3で相違し、残余の点で一致する。
そして、相違点3については上記第2の3.(4)において、検討・判断したとおり当業者が容易に行い得ることである。

そうすると、本願発明は原査定のとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-18 
結審通知日 2016-08-23 
審決日 2016-09-05 
出願番号 特願2012-135665(P2012-135665)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大浜 康夫  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 本郷 徹
山崎 仁之
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 特許業務法人谷藤特許事務所  

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