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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1320726 |
審判番号 | 不服2015-8147 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-01 |
確定日 | 2016-10-19 |
事件の表示 | 特願2012-525703「検査システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年2月24日国際公開、WO2011/022573、平成25年1月24日国内公表、特表2013-502586〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2010年8月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年8月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年12月20日付けで拒絶理由が通知され、平成26年7月7日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年12月26日付けで拒絶査定がなされたのに対し、平成27年5月1日に拒絶査定不服審判が請求され、それと同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成27年5月1日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年5月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである(下線は補正箇所を示す。)。 「基板の画像を生成するための検査システムであって、 前記基板上に入射光を方向付けるための光源と、 前記入射光のパルスタイミングを制御するための光源タイミング制御装置と、 前記基板を保持し、前記入射光下において前記基板を移動させるためのステージであって、これにより、前記基板は、前記入射光を反射光として反射する、ステージと、 前記ステージの位置を記録するためのステージ位置センサーと、 前記ステージの位置を制御するためのステージ位置制御装置と、 前記反射光を受信するための時間遅延統合センサーと、 前記時間遅延統合センサーの線シフトを制御するための時間遅延統合センサータイミング制御装置と、 前記ステージ位置制御装置および前記時間遅延統合センサータイミング制御装置と通信する制御システムであって、前記制御システムは、前記ステージの位置と、前記時間遅延統合センサーの線シフトとを設定し、前記ステージと前記時間遅延統合センサーとは、前記光源からの前記入射光の1つより多くのパルスからの反射光を単一の線シフト内において統合して画像を形成する、制御システムと、 を備え、 前記光源のパルスタイミングは、前記時間遅延統合センサーの線シフトのタイミングの整数の倍数であり、 前記制御システムは、前記パルスごとのエネルギーを監視し、前記監視したエネルギーに基づいて、前記画像を、相対的変動を補償するようにスケーリングする、 検査システム。」 2 本件補正の目的 本件補正は、補正前の請求項1における「制御システム」について、「前記パルスごとのエネルギーを監視し、前記監視したエネルギーに基づいて、前記画像を、相対的変動を補償するようにスケーリングする」ものであることを追加して限定するものである。 したかって、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的するものに該当するものといえる。 3 独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、本件の特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 (1)刊行物の記載事項 本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-311608号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面の図示と共に、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 ア 「【0010】 【発明の実施の形態】図1乃至図6をそれぞれ参照しながら本発明による実施の形態について説明する。図1は、本発明の1つの実施の形態に係る検査装置の概略的構成を示す図である。260nm以下の波長を持つ光を供給するパルス光源(光源)として、例えば248nmの波長λの光を発振するKrFエキシマレーザ1からのパルス光(以下、レーザ光と呼ぶ。)は、ビーム整形光学系としてのビームエキスパンダ2を介して所定のビーム断面形状に整形される。ビームエキスパンダ2を介したレーザ光は、偏向ミラー3を介して照明光学系4に導かれ、被検物としての観察基板(レチクル、マスク等)6を照明する。」 イ 「【0017】さて、図1に戻って、照明光学系4によって照明されて、観察基板6を介した光は、結像光学系7によって集光されて、観察基板6の像がTDI型検出器81の受光面上に形成される。」 ウ 「【0019】…信号処理部82(又は検出系8)から出力された画像信号に基づいて、画像処理系9は被検物に生じている傷、欠陥、ゴミ等の異物等を検出する。このとき、信号処理部82は、観察基板6を載置する移動ステージ6の2次元移動とTDI型検出器81からの光電変換信号の取り込みとを同期させて観察基板6の像に関する2次元的な画像情報を得るために、制御系10は、信号処理部82に対して駆動系11に関する駆動信号あるいはタイミング信号等を出力する。これと同時に、制御系10は、駆動系11を介して移動ステージ5を所定の走査方向(例えば、図1の紙面方向)へ移動させる。」 エ 「【0022】ところで、次に、図1に示したパルス光源1とTDI型検出器81を含む処理系8との関係について述べる。まず、撮像素子の1種であるTDI型検出器(TDIセンサー)のTDIとは、Time Delay Integrationの略であり…」 オ 「【0023】ここで、TDI型検出器81を含む処理系8での信号処理について具体的に説明する。例えば、観察基板6上に図6に示すパターンが形成されているものとし、パルス光源1から発振される光の1パルス毎に移動ステージ5がTDI型検出器81の1画素分だけ(像走査方向での1画素分)移動するように、図1に示す制御系10は駆動系11の移動量を制御しているものとする。」 カ 「【0032】…また、以上では、TDI型検出器(TDIセンサー)の動作原理について、1つのラインにおいて像信号を取り込む際に、1発だけのパルス光が被検物を照明する条件とした説明をしたが、この時の照射パルス数は複数回行っても良く、照射パルス数は多ければ多いほど良い。」 キ 「【0038】なお、以上にて述べた例では、観察基板6を透過照明する照明光学系を示したが、これに限ることはなく、観察基板6を落射照明する照明光学系を用いても良いことは言うまでもない。」 上記の記載事項ア?キから、刊行物には、以下の発明が記載されていると認められる。 「パルス光源1から発振される光が、照明光学系4に導かれ、観察基板6を照明するものであり、 照明光学系4によって照明されて、観察基板6を介した光が、結像光学系7によって集光されて、観察基板6の像がTDI(Time Delay Integration)型検出器81の受光面上に形成されるものであり、 信号処理部82が、観察基板6を載置する移動ステージ6の2次元移動とTDI型検出器81からの光電変換信号の取り込みとを同期させて観察基板6の像に関する2次元的な画像情報を得るために、制御系10が、信号処理部82に対して駆動系11に関する駆動信号あるいはタイミング信号等を出力すると同時に、制御系10が、駆動系11を介して移動ステージ5を所定の走査方向へ移動させるものであり、 TDI型検出器の1つのラインにおいて像信号を取り込む際に、この時の照射パルス数を複数回行うものであり、 パルス光源1から発振される光の複数パルス毎に移動ステージ5がTDI型検出器81の1画素分だけ(像走査方向での1画素分)移動するように、制御系10が駆動系11の移動量を制御しているものであり、 観察基板6を落射照明する照明光学系を用いるものである、 検査装置。」(以下「引用発明」という。) (2)補正発明と引用発明との対比 ア 引用発明の「観察基板6の像がTDI(Time Delay Integration)型検出器81の受光面上に形成されるものであ」る「検査装置」は、補正発明の「基板の画像を生成するための検査システム」に相当する。 イ 引用発明の「照明光学系4に導かれ、観察基板6を照明する」「光」を「発振」する「パルス光源1」は、補正発明の「前記基板上に入射光を方向付けるための光源」に相当する。 ウ 引用発明の「観察基板6を載置する移動ステージ」は、そ「の2次元移動とTDI型検出器81からの光電変換信号の取り込みとを同期させて観察基板6の像に関する2次元的な画像情報を得る」ものであるから、入射光下において観察基板6を移動させるものであることは自明である。 また、引用発明は、「観察基板6を落射照明する照明光学系を用いるものである」から、観察基板6は、入射光を反射光として反射するものであることも自明である。 したがって、引用発明の「観察基板6を載置する移動ステージ」であって、「観察基板6を落射照明する照明光学系を用いるもの」は、補正発明の「前記基板を保持し、前記入射光下において前記基板を移動させるためのステージであって、これにより、前記基板は、前記入射光を反射光として反射する、ステージ」に相当する。 エ 引用発明の「駆動系11を介して移動ステージ5を所定の走査方向へ移動させる」「制御系10」であって、「駆動系11の移動量を制御している」「制御系10」は、補正発明の「前記ステージの位置を制御するためのステージ位置制御装置」に相当する。 オ 引用発明の「観察基板6を落射照明する照明光学系を用いるもの」であって、「観察基板6を介した光が、結像光学系7によって集光されて、観察基板6の像が受光面上に形成される」「TDI(Time Delay Integration)型検出器81」は、補正発明の「前記反射光を受信するための時間遅延統合センサー」に相当する。 カ TDI(Time Delay Integration)型検出器において、1ラインの光電変換信号の取り込んだ後、次のラインの光電変換信号の取り込みのためにラインシフトを行うことが技術常識であることに鑑みれば、引用発明の「観察基板6を載置する移動ステージ6の2次元移動とTDI型検出器81からの光電変換信号の取り込みとを同期させて観察基板6の像に関する2次元的な画像情報を得るために、制御系10」により「駆動系11に関する駆動信号あるいはタイミング信号等」が「出力」される「信号処理部82」は、ラインシフトを制御していることは自明であり、補正発明の「前記時間遅延統合センサーの線シフトを制御するための時間遅延統合センサータイミング制御装置」に相当する。 キ 引用発明の「信号処理部82が、観察基板6を載置する移動ステージ6の2次元移動とTDI型検出器81からの光電変換信号の取り込みとを同期させて観察基板6の像に関する2次元的な画像情報を得るために」、「信号処理部82に対して駆動系11に関する駆動信号あるいはタイミング信号等を出力する」「制御系10」と、補正発明の「前記ステージ位置制御装置および前記時間遅延統合センサータイミング制御装置と通信する制御システム」とは、「前記時間遅延統合センサータイミング制御装置と通信する制御システム」の点で共通する。 また、引用発明は「TDI型検出器の1つのラインにおいて像信号を取り込む際に、この時の照射パルス数を複数回行うものであ」るから、引用発明の「信号処理部82が、観察基板6を載置する移動ステージ6の2次元移動とTDI型検出器81からの光電変換信号の取り込みとを同期させて観察基板6の像に関する2次元的な画像情報を得るために」、「信号処理部82に対して駆動系11に関する駆動信号あるいはタイミング信号等を出力する」「制御系10」は、補正発明の「前記制御システムは、前記ステージの位置と、前記時間遅延統合センサーの線シフトとを設定し、前記ステージと前記時間遅延統合センサーとは、前記光源からの前記入射光の1つより多くのパルスからの反射光を単一の線シフト内において統合して画像を形成する、制御システム」に相当する。 そうすると、両者は 「基板の画像を生成するための検査システムであって、 前記基板上に入射光を方向付けるための光源と、 前記基板を保持し、前記入射光下において前記基板を移動させるためのステージであって、これにより、前記基板は、前記入射光を反射光として反射する、ステージと、 前記ステージの位置を制御するためのステージ位置制御装置と、 前記反射光を受信するための時間遅延統合センサーと、 前記時間遅延統合センサーの線シフトを制御するための時間遅延統合センサータイミング制御装置と、 前記時間遅延統合センサータイミング制御装置と通信する制御システムであって、前記制御システムは、前記ステージの位置と、前記時間遅延統合センサーの線シフトとを設定し、前記ステージと前記時間遅延統合センサーとは、前記光源からの前記入射光の1つより多くのパルスからの反射光を単一の線シフト内において統合して画像を形成する、制御システムと、 を備える検査システム。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 補正発明では「前記入射光のパルスタイミングを制御するための光源タイミング制御装置」を備えるのに対し、引用発明ではそのようなものか否か不明な点。 (相違点2) 補正発明では「前記ステージの位置を記録するためのステージ位置センサー」を備えるのに対し、引用発明ではそのようなものではない点。 (相違点3) 制御システムが、補正発明では「前記ステージ位置制御装置」「と通信する」ものであるのに対し、引用発明ではそのようなものではない点。 (相違点4) 補正発明では、「前記光源のパルスタイミングは、前記時間遅延統合センサーの線シフトのタイミングの整数の倍数であ」るのに対し、引用発明ではそのようなものであるか否か不明な点。 (相違点5) 制御システムが、補正発明では「前記パルスごとのエネルギーを監視し、前記監視したエネルギーに基づいて、前記画像を、相対的変動を補償するようにスケーリングする」ものであるのに対し、引用発明ではそのようなものではない点。 (3)相違点についての検討・判断 (相違点1について) 半導体のマスクやレチクルの検査装置において、光源のパルスタイミングを制御するための光源タイミング制御装置を備えることは、例えば、 ア 特開2005-241290号公報 (「【0027】…同期制御信号に基づいて蓄積段数/Nスキャン毎にパルス光源31の発光制御信号を有効にするパルス光源発光間隔制御器45」)、 イ 特開2010-91552号公報 (「【0020】…パルス光源103の発光タイミング(周期)は、パルスコントローラ140によって制御される。」) に記載されているように周知技術である。 そして、引用発明において、「TDI型検出器の1つのラインにおいて像信号を取り込む際に、この時の照射パルス数を複数回行」いながら、「信号処理部82が、観察基板6を載置する移動ステージ6の2次元移動とTDI型検出器81からの光電変換信号の取り込みとを同期させて観察基板6の像に関する2次元的な画像情報を得る」には、照射パルスのタイミングを適切に設定しなければならないことは必然であり、その具体化のために、上記周知技術を採用することは当業者の設計的事項であるといえるから、上記周知技術を採用して相違点1に係る補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たというべきである。 (相違点2について) ステージとTDIセンサの取り込みとを同期させるために、ステージ位置センサーを用いることは、例えば、 ア 特開2005-241290号公報 (【0022】同期制御回路40は、レーザ干渉計23によって得られたステージ21の位置データを元に、TDIセンサ24の同期制御信号を発生するとともに、パルス光源31の発光間隔を制御する発光制御信号を発生する。」)、 イ 特許第3190913号公報 (「【0033】…試料の移動速度と画像検出器のライン転送速度との間で正確な同期をとる必要がある。このため、本例では、レーザ干渉計のようなステージ位置検出装置44を用いて、試料ステージ4の位置を検出し、その結果を同期信号発生回路40に供給する。」 ウ 特許第3708929号公報 「【0066】…実施形態における画像取得方法では、光束の走査,ステージ移動,TDIセンサの蓄積時間との同期を取る必要があるが…ステージが正確に目標値に来たときに(多くはレーザ干渉計の位置座標を基に行われる)同期させて、他の2つ(光束の走査、センサ蓄積)との同期を取っても良い。」 に記載されているように周知技術である。 そして、引用発明において、「観察基板6を載置する移動ステージ6の2次元移動とTDI型検出器81からの光電変換信号の取り込みとを同期させ」るために、引用発明のように、「信号処理部82に対して駆動系11に関する駆動信号あるいはタイミング信号等を出力する」ようにするか、上記周知技術のようにステージ位置センサーを用いるかは、コストや必要な精度等を考慮して当業者が適宜選択し得る設計的事項であり、後者のようにして相違点2に係る補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たというべきである。 (相違点3について) 引用発明において、「駆動系11を介して移動ステージ5を所定の走査方向へ移動させる」ために、引用発明のように「制御系10」が直接制御するようにするか、駆動系11を制御する制御装置をさらに備えてそれを介して「制御系10」が制御するようにするかは、制御系10の負担等を考慮して当業者が適宜選択し得る設計的事項であり、後者のようにして相違点3に係る補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たというべきである。 (相違点4について) 引用発明の「TDI型検出器の1つのラインにおいて像信号を取り込む際に、この時の照射パルス数を複数回行う」とき、ライン間で光量差が生じないようにライン間の照射パルス数を一定にすべきであることは当業者が容易に想起し得るものであり、このようにして、パルスタイミングをラインシフトのタイミングの照射パルス数分に相当する整数の倍数として、相違点4に係る補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たというべきである。 (相違点5について) パルスごとのエネルギーを監視し、監視したエネルギーに基づいて、画像を、相対的変動を補償するようにスケーリングすることは、例えば、 ア 特開2005-241290号公報 (「【0033】光量モニタ36は、パルス光源31からの光量を発光制御信号に同期した間隔で測定して、ウエハWに照射する光量を光量補正回路50に出力する。光量補正回路50では、光量モニタ34からの光量データを元にTDIセンサ24の蓄積段数内の発光回数分の積算平均値を求め、TDIセンサ24の出力データを補正して、パルスレーザ光の光量変動によるセンサの出力変動を補正する。」) イ 特開2010-91552号公報 (「【0024】…パルス毎にTDIセンサ105が受光するパルス光の光量を光量センサ172及び光量モニタ回路142で測定する。光量モニタ回路142(光量測定回路)は、パルスコントローラ140から発光タイミング(周期)の情報を得て、パルス光の周期に同期させて、光量センサ172により検知された光量を取り込む(入力する)。そして、光量モニタ回路142は、パルス毎の光量を測定の上、光量データをデジタルデータに変換する。測定されたパルス毎の光量は、センサ回路106に出力される。そして、センサ回路106内で、光学画像の画素毎に、該当するパルス光の光量和(総光量)でTDIセンサ105から出力された累積値を補正する。」) ウ 特開2007-93317号公報 (「【0002】図6に従来のパターン欠陥検査装置の構成例を示す。…【0006】ビームスプリッター7によって分岐された他方の光は、光量検出器11によって検出される。光量検出器11からの光量信号は感度補正回路17に供給される。」) に記載されているように周知技術である。 そして、引用発明の「パルス光源1から発振される光」について、その光量変動を補正して高精度の画像情報を得ようとして、上記周知技術を適用して、相違点5に係る補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たというべきである。 また、補正発明の効果も、当業者であれば引用発明及び周知技術から予測し得る範囲内のものであり、格別顕著なものとはいえない。 (4)小括 以上のとおり、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 まとめ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明に対する判断 1 本願発明の認定 平成27年5月1日付けの手続補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、平成26年7月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであると認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「基板の画像を生成するための検査システムであって、 前記基板上に入射光を方向付けるための光源と、 前記入射光のパルスタイミングを制御するための光源タイミング制御装置と、 前記基板を保持し、前記入射光下において前記基板を移動させるためのステージであって、これにより、前記基板は、前記入射光を反射光として反射する、ステージと、 前記ステージの位置を記録するためのステージ位置センサーと、 前記ステージの位置を制御するためのステージ位置制御装置と、 前記反射光を受信するための時間遅延統合センサーと、 前記時間遅延統合センサーの線シフトを制御するための時間遅延統合センサータイミング制御装置と、 前記ステージ位置制御装置および前記時間遅延統合センサータイミング制御装置と通信する制御システムであって、前記制御システムは、前記ステージの位置と、前記時間遅延統合センサーの線シフトとを設定し、前記ステージと前記時間遅延統合センサーとは、前記光源からの前記入射光の1つより多くのパルスからの反射光を単一の線シフト内において統合して画像を形成する、制御システムと、 を備え、 前記光源のパルスタイミングは、前記時間遅延統合センサーの線シフトのタイミングの整数の倍数である、 検査システム。」 2 刊行物 原査定の拒絶理由で引用された刊行物、及び、その記載事項は、前記「第2」の「3」の「(1)」に記載したとおりである。 3 判断 本願発明は、補正発明における「検査システム」について、「前記制御システムは、前記パルスごとのエネルギーを監視し、前記監視したエネルギーに基づいて、前記画像を、相対的変動を補償するようにスケーリングする」という構成を省いたものである。 そうすると、本願発明と引用発明を比較すると、前記「第2」の「3」の「(2)補正発明と引用発明との対比」において述べたように、両者は、補正発明と同様に相違点1?4にて相違するが、その余の点では一致するといえる。 そして、相違点1?4については、前記「第2」の「3」の「(3)」の「(相違点1について)」?「(相違点4について)」において述べたとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-05-23 |
結審通知日 | 2016-05-24 |
審決日 | 2016-06-06 |
出願番号 | 特願2012-525703(P2012-525703) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森口 正治 |
特許庁審判長 |
郡山 順 |
特許庁審判官 |
小川 亮 藤田 年彦 |
発明の名称 | 検査システム |
代理人 | 特許業務法人明成国際特許事務所 |