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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1320736
審判番号 不服2015-19509  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-29 
確定日 2016-10-19 
事件の表示 特願2012-129302「透過型X線管及び反射型X線管」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月20日出願公開、特開2013- 98168〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年(2012年)6月6日(パリ条約による優先権主張 2011年10月28日 台湾)に出願された特願2012-129302号であって、平成25年11月12日付けで拒絶理由が通知され、平成26年5月19日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで誤訳訂正書が提出され、同年11月28日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成27年5月29日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年6月23日付けで同年5月29日付けの手続補正に対する補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年10月29日付けの手続補正についての補正の却下の決定について

[補正の却下の決定の結論]
平成27年10月29日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項5に係る発明は、平成26年5月19日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項7に記載の、

「X線を発生させる少なくとも一つの元素を有し、該元素は励起されるとX線を発生させ、発生した該X線には、該X線の衝突により物体の画像を形成するための該元素の特性Kα放射線及び特性Kβ放射線のエネルギーが含まれる、ターゲット材料と、
前記X線が通過し、前記元素から放射されるKα放射線のエネルギーよりも高く、Kβ放射線のエネルギーよりも低い、K吸収端エネルギーを有するフィルタ材料、とを備え、
前記ターゲット材料は、電子線が前記ターゲット材料に直接衝突することによって、特性Kα放射線及び特性Kβ放射線のエネルギーを含む前記X線を発生させるものであり、かつ前記フィルタ材料の厚みが、少なくとも10ミクロン、3ミリメートル未満である反射型X線管。」が

「X線を発生させる少なくとも一つの元素を有し、該元素は励起されるとX線を発生させ、発生した該X線には、該X線の衝突により物体の画像を形成するための該元素の特性Kα放射線及び特性Kβ放射線のエネルギーが含まれる、ターゲット材料と、
前記X線が通過し、前記元素から放射されるKα放射線のエネルギーよりも高く、Kβ放射線のエネルギーよりも低い、K吸収端エネルギーを有するフィルタ材料、とを備え、
前記ターゲット材料は、電子線が前記ターゲット材料に直接衝突することによって、特性Kα放射線及び特性Kβ放射線のエネルギーを含む前記X線を発生させるものであり、かつ前記フィルタ材料の厚みが、少なくとも10ミクロン、3ミリメートル未満であり、
前記ターゲット材料と前記フィルタ材料との組み合わせが、
前記ターゲット材料がイットリウムで、前記フィルタ材料がルビジウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がニオブで、前記フィルタ材料がイットリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がルテニウムで、前記フィルタ材料がモリブデンである組み合わせ、
前記ターゲット材料がロジウムで、前記フィルタ材料がテクネチウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がパラジウムで、前記フィルタ材料がルテニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料が銀で、前記フィルタ材料がロジウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がアンチモンで、前記フィルタ材料がカドミウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がテルルで、前記フィルタ材料がスズである組み合わせ、
前記ターゲット材料がランタンで、前記フィルタ材料がセシウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がガドリニウムで、前記フィルタ材料がサマリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がガドリニウムで、前記フィルタ材料がネオジムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がテルビウムで、前記フィルタ材料がユーロピウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がテルビウムで、前記フィルタ材料がサマリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がディスプロシウムで、前記フィルタ材料がガドリニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がディスプロシウムで、前記フィルタ材料がサマリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がホルミウムで、前記フィルタ材料がガドリニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がホルミウムで、前記フィルタ材料がテルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がエルビウムで、前記フィルタ材料がディスプロシウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がエルビウムで、前記フィルタ材料がテルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がエルビウムで、前記フィルタ材料がガドリニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がツリウムで、前記フィルタ材料がホルミウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がツリウムで、前記フィルタ材料がディスプロシウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がツリウムで、前記フィルタ材料がテルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がイッテルビウムで、前記フィルタ材料がエルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がイッテルビウムで、前記フィルタ材料がホルミウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がイッテルビウムで、前記フィルタ材料がディスプロシウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がルテチウムで、前記フィルタ材料がツリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がルテチウムで、前記フィルタ材料がエルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がルテチウムで、前記フィルタ材料がホルミウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がハフニウムで、前記フィルタ材料がイッテルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がハフニウムで、前記フィルタ材料がツリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がハフニウムで、前記フィルタ材料がエルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がタンタルで、前記フィルタ材料がルテチウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がタンタルで、前記フィルタ材料がイッテルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がタンタルで、前記フィルタ材料がツリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がタングステンで、前記フィルタ材料がルテチウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がタングステンで、前記フィルタ材料がイッテルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がタングステンで、前記フィルタ材料がツリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がレニウムで、前記フィルタ材料がタンタルである組み合わせ、
前記ターゲット材料がレニウムで、前記フィルタ材料がハフニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がレニウムで、前記フィルタ材料がルテチウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がイリジウムで、前記フィルタ材料がタングステンである組み合わせ、
前記ターゲット材料がイリジウムで、前記フィルタ材料がタンタルである組み合わせ、
前記ターゲット材料がイリジウムで、前記フィルタ材料がハフニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料が白金で、前記フィルタ材料がレニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料が白金で、前記フィルタ材料がタングステンである組み合わせ、
前記ターゲット材料が白金で、前記フィルタ材料がタンタルである組み合わせ、
前記ターゲット材料が金で、前記フィルタ材料がイリジウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料が金で、前記フィルタ材料がレニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料が金で、前記フィルタ材料がタングステンである組み合わせ、および前記ターゲット材料がウランで、前記フィルタ材料がトリウムである組み合わせ
のうちのいずれかである反射型X線管。」と補正されたものである。(下線は補正箇所を示す。)

そして、この補正は、補正前の「ターゲット材料」と「フィルタ材料」について、その具体的組合せを例示して特定する補正事項からなり、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正であるといえる。
すなわち、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項5に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(1)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願平1-13445号(実開平2-104564号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下記「イ 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

a「3、考案の詳細な説明
(イ)産業上の利用分野
本考案は、X線回折装置に用いる回転陽極X線管の改良に関する。
(ロ)従来の技術
従来における回転陽極X線管は、電子放出フィラメントと、その電子放出フィラメントに相対するように周面が位置してその周面に複数のターゲット金属が付設された回転ターゲットとを備える構成となっている。
そして使用に際しては、回転ターゲットにおける分析対象試料に対する特定のターゲット金属が選択的に用いられるようなっている。
(ハ)考案が解決しようとする課題
しかしながら、上記のような構成の回転陽極X線管においては、下記のような使用上の問題点があった。
すなわち、X線回折によりX線回折パターンを得るにはターゲット金属から発生する特性X線のうち強度が大であるKα線が用いられ、これ対しKβ線は障害となる。従って、このKβ線を取り除くように従来においては特性X線の取り出し部にKβ線フィルターを用いているが、回転陽極X線管の場合、選択するターゲット金属それぞれに対応するKβ線フィルターを用いる必要があり、そのKβ線フィルターの取り替えに非常に手間がかかる問題点があった。
本考案は、このような事情に鑑みてなされたものであって、Kβ線フィルターの取り替えを必要せず、容易に使用できる回転陽極X線管を提供することを目的とする。
(ニ)課題を解決するための手段
本考案は、このような目的を達成するために、電子放出フィラメントと、前記電子放出フィラメントに相対するように周面が位置して当該周面に複数の異なるターゲット金属が付設された回転ターゲットとを備える回転陽極X線管において、前記各ターゲット金属からの特性X線の取り出し方向に位置する部位のそれぞれに、対応する前記各ターゲット金属から発生する特性X線中のKβ線を除去するKβ線フィルターのそれぞれが、前記回転ターゲットと一体に回転するように設けられてなる構成とした。」(明細書第1ページ第16行?第3ページ第18行)
b「(ヘ)実施例
以下、本考案の実施例を図面を参照して詳細に説明する。第1図は回転陽極X線管の構成を示す部分断面図、第2図は回転ターゲットの構成を示す正面図である。
これらの図において符号1は電子銃、2は回転ターゲットである。電子銃1は内部に電子放出フィラメント3を備えている。回転ターゲット2は円盤形状で、その周囲の立ち上がり部4の外周面が電子銃1に相対するよう配置され、その外周面には所定の幅にCr,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ag,W,Pt等のターゲット金属6のそれぞれが付設されている。7は回転ターゲット2の回転軸であり、その回転軸7の端部には、プーリー8が取り付けられている。9は電子銃1と回転ターゲット2とを真空雰囲気に保つケーシングであり、そのケーシング9に設けられた軸受け部10に上記の回転軸7が受けられ、またケーシング9の特性X線の取り出し位置にはX線取り出し窓11が設けられている。
そして本考案の回転陽極X線管においては、回転ターゲット2の周縁位置に各ターゲット金属6に対応するようにKβ線フィルター12のそれぞれが一体に設けられている。それぞれのKβ線フィルター12は回転ターゲット2が所定の回転位置においてX線の取り出し窓11の相対するように設けられ、すなわち各ターゲット金属6からの特性X線の取り出し方向に位置するように設けられている。それぞれのKβ線フィルター12は各種金属薄膜よりなり、対応する各ターゲット金属6から発生する特性X線中のKβ線を除去するように機能する。
このように回転ターゲット2に一体に各ターゲット金属6に相対するようにKβ線フィルター12のそれぞれを設けることにより、X線回折装置使用の際各ターゲット金属6から発生する特性X線におけるKβ線が除去され、Kα線のみがX線取り出し窓11通って試料側に至る。」(明細書第4ページ第6行?第6ページ第3行)

c「第1図


d「第2図



イ 引用例1に記載された発明の認定
上記「ア」のcの第1図における「電子銃1」、「ターゲット金属6」及び「Kβ線フィルター12」の位置関係から、引用例1に記載の回転陽極X線管が反射型であることは明らかである。よって、上記「ア」のa?dの記載から、引用例1には、
「電子放出フィラメント3と、前記電子放出フィラメント3に相対するように周面が位置して当該周面に複数の異なるターゲット金属6が付設された回転ターゲット2とを備える反射型の回転陽極X線管において、
回転ターゲット2は円盤形状で、その周囲の立ち上がり部4の外周面が電子銃1に相対するよう配置され、その外周面には所定の幅にCr,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ag,W,Pt等のターゲット金属6のそれぞれが付設され、
回転ターゲット2の周縁位置に各ターゲット金属6に対応するようにKβ線フィルター12のそれぞれが一体に設けられ、
Kβ線フィルター12は各種金属薄膜よりなり、
このように回転ターゲット2に一体に各ターゲット金属6に相対するようにKβ線フィルター12のそれぞれを設けることにより、X線回折装置使用の際各ターゲット金属6から発生する特性X線におけるKβ線が除去され、Kα線のみがX線取り出し窓11通って試料側に至る、反射型の回転陽極X線管。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(2)本願補正発明と引用発明との対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「電子放出フィラメントに相対するように周面が位置して当該周面に複数の異なるターゲット金属が回転ターゲット」の「外周面」の「所定の幅に」「付設された」「Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ag,W,Pt等のターゲット金属6」は、「X線回折装置使用の際」「Kβ線が除去され、Kα線のみがX線取り出し窓11通って試料側に至る」「特性X線」を「発生する」のであって、励起されるとKα線とKβ線を放射することは明らかであるから、本願補正発明の「X線を発生させる少なくとも一つの元素を有し、該元素は励起されるとX線を発生させ、発生した該X線には、該X線の衝突により物体の画像を形成するための該元素の特性Kα放射線及び特性Kβ放射線のエネルギーが含まれる、ターゲット材料」に相当する。
そして、引用発明の「回転ターゲット2は円盤形状で、その周囲の立ち上がり部4の外周面が電子銃1に相対するよう配置され」る構成により、電子線が「回転ターゲット2の周縁位置に各ターゲット金属6」に照射されてKα線及びKβ線を含むX線を発生することは明らかであるから、引用発明の「回転ターゲット2の周縁位置に各ターゲット金属6」は、本願補正発明の「電子線」が「直接衝突することによって、特性Kα放射線及び特性Kβ放射線のエネルギーを含む前記X線を発生させるものであ」る「ターゲット材料」に相当する。

本願補正発明の「前記X線が通過し、前記元素から放射されるKα放射線のエネルギーよりも高く、Kβ放射線のエネルギーよりも低い、K吸収端エネルギーを有するフィルタ材料」により、Kα放射線及びKβ放射線のうちKβ放射線が除去されることは明らかであるから、引用発明の「各ターゲット金属6に相対するように」設けられ、「X線回折装置使用の際各ターゲット金属6から発生する特性X線におけるKβ線が除去され、Kα線のみがX線取り出し窓11通って試料側に至る」ように機能する「各種金属薄膜」の「Kβ線フィルター12」と、本願補正発明の「前記X線が通過し、前記元素から放射されるKα放射線のエネルギーよりも高く、Kβ放射線のエネルギーよりも低い、K吸収端エネルギーを有するフィルタ材料」とは、「前記X線が通過し、前記元素から放射されるX線のKα放射線及びKβ放射線のうちKβ放射線を除去するフィルタ材料」である点で一致する。

引用発明の「反射型の回転陽極X線管」が、本願補正発明の「反射型X線管」に相当する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と引用発明とは、
「X線を発生させる少なくとも一つの元素を有し、該元素は励起されるとX線を発生させ、発生した該X線には、該X線の衝突により物体の画像を形成するための該元素の特性Kα放射線及び特性Kβ放射線のエネルギーが含まれる、ターゲット材料と、
前記X線が通過し、前記元素から放射されるX線のKα放射線及びKβ放射線のうちKβ放射線を除去するフィルタ材料、とを備え、
前記ターゲット材料は、電子線が前記ターゲット材料に直接衝突することによって、特性Kα放射線及び特性Kβ放射線のエネルギーを含む前記X線を発生させるものである反射型X線管。」
の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

ウ 相違点
(ア)相違点1
「元素から放射されるX線のKα放射線及びKβ放射線のうちKβ放射線を除去するフィルタ材料」が、本願補正発明においては「元素から放射されるKα放射線のエネルギーよりも高く、Kβ放射線のエネルギーよりも低い、K吸収端エネルギーを有する」のに対して、引用発明においてはその点の特定がない点。

(イ)相違点2
本願補正発明の「フィルタ材料」は、「厚みが、少なくとも10ミクロン、3ミリメートル未満」であるのに対し、引用発明の「Kβ線フィルター12」は、「(金属)薄膜」であることは特定されているものの、その具体的な厚さについては特定がない点。

(ウ)相違点3
「ターゲット材料」と「フィルタ材料」との組み合わせが、
本願補正発明においては、
「前記ターゲット材料がイットリウムで、前記フィルタ材料がルビジウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がニオブで、前記フィルタ材料がイットリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がルテニウムで、前記フィルタ材料がモリブデンである組み合わせ、
前記ターゲット材料がロジウムで、前記フィルタ材料がテクネチウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がパラジウムで、前記フィルタ材料がルテニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料が銀で、前記フィルタ材料がロジウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がアンチモンで、前記フィルタ材料がカドミウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がテルルで、前記フィルタ材料がスズである組み合わせ、
前記ターゲット材料がランタンで、前記フィルタ材料がセシウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がガドリニウムで、前記フィルタ材料がサマリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がガドリニウムで、前記フィルタ材料がネオジムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がテルビウムで、前記フィルタ材料がユーロピウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がテルビウムで、前記フィルタ材料がサマリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がディスプロシウムで、前記フィルタ材料がガドリニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がディスプロシウムで、前記フィルタ材料がサマリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がホルミウムで、前記フィルタ材料がガドリニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がホルミウムで、前記フィルタ材料がテルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がエルビウムで、前記フィルタ材料がディスプロシウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がエルビウムで、前記フィルタ材料がテルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がエルビウムで、前記フィルタ材料がガドリニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がツリウムで、前記フィルタ材料がホルミウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がツリウムで、前記フィルタ材料がディスプロシウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がツリウムで、前記フィルタ材料がテルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がイッテルビウムで、前記フィルタ材料がエルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がイッテルビウムで、前記フィルタ材料がホルミウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がイッテルビウムで、前記フィルタ材料がディスプロシウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がルテチウムで、前記フィルタ材料がツリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がルテチウムで、前記フィルタ材料がエルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がルテチウムで、前記フィルタ材料がホルミウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がハフニウムで、前記フィルタ材料がイッテルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がハフニウムで、前記フィルタ材料がツリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がハフニウムで、前記フィルタ材料がエルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がタンタルで、前記フィルタ材料がルテチウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がタンタルで、前記フィルタ材料がイッテルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がタンタルで、前記フィルタ材料がツリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がタングステンで、前記フィルタ材料がルテチウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がタングステンで、前記フィルタ材料がイッテルビウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がタングステンで、前記フィルタ材料がツリウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がレニウムで、前記フィルタ材料がタンタルである組み合わせ、
前記ターゲット材料がレニウムで、前記フィルタ材料がハフニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がレニウムで、前記フィルタ材料がルテチウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料がイリジウムで、前記フィルタ材料がタングステンである組み合わせ、
前記ターゲット材料がイリジウムで、前記フィルタ材料がタンタルである組み合わせ、
前記ターゲット材料がイリジウムで、前記フィルタ材料がハフニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料が白金で、前記フィルタ材料がレニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料が白金で、前記フィルタ材料がタングステンである組み合わせ、
前記ターゲット材料が白金で、前記フィルタ材料がタンタルである組み合わせ、
前記ターゲット材料が金で、前記フィルタ材料がイリジウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料が金で、前記フィルタ材料がレニウムである組み合わせ、
前記ターゲット材料が金で、前記フィルタ材料がタングステンである組み合わせ、および前記ターゲット材料がウランで、前記フィルタ材料がトリウムである組み合わせ
のうちのいずれかである」
のに対して、引用発明においては、
「Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ag,W,Pt等」の「金属」(の「ターゲット材料」)と、「各種金属(薄膜)」(の「フィルタ材料」)であることは特定されているといえるものの、上記の本願補正発明におけるような具体的な組み合せの特定はない点。

(3)当審の判断
ア 上記各相違点について検討する。
(ア)相違点1及び3について
「元素から放射されるX線のKα放射線及びKβ放射線のうちKβ放射線を除去するフィルタ材料」として、「元素から放射されるKα放射線のエネルギーよりも高く、Kβ放射線のエネルギーよりも低い、K吸収端エネルギーを有する」ものを採用することは、当業者の技術常識である(この点、必要とあらば、例えば、特開平7-243996号公報第2ページ右欄第3?7行の記載参照。)から、引用発明の「Kβ線フィルタ-12」が、「各ターゲット金属6」のKα線のエネルギーよりも高く、Kβ線のエネルギーよりも低い、K吸収端エネルギーを有する「金属薄膜」よりなるとすることは、当業者には自明のことである。したがって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
そして、各金属元素の「Kα放射線のエネルギー」、「Kβ放射線のエネルギー」及び「K吸収端エネルギー」のそれぞれの値は、周知(ないしは公知)の事項であるから、ターゲット材料の金属元素とフィルタ材料の金属元素として、各ターゲット材料の金属元素の「Kα放射線のエネルギー」の値と「Kβ放射線のエネルギー」の値の間の値の「K吸収端エネルギー」を有する金属元素をフィルタ材料として選択し、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項のターゲット材料とフィルタ材料の組み合わせを得ることは当業者が適宜設計し得たことである。

(イ)相違点2について
引用発明の「Kβ線フィルター12」は、できる限り「各ターゲット金属6から発生する特性X線におけるKβ線」を「除去」し、「Kα線のみ」を「取り出」すことを目的とするものであるから、その厚みは、上記の目的から、Kβ線の低減量とKα線の透過量を最適にするように適宜設定し得るものである。
したがって、引用発明においても、Kβ線フィルター12の上記の目的に鑑み、Kβ線の低減量とKα線の透過量を最適にするように、その厚さを、「少なくとも10ミクロン、3ミリメートル未満」とすることは、当業者が容易になし得たことにすぎない。

イ 本願補正発明の奏する作用効果
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年10月29日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年5月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成27年10月29日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成27年10月29日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(1)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記「第2 平成27年10月29日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」に記載したように、本願発明に対して、補正前の「ターゲット材料」と「フィルタ材料」について、その具体的組合せを例示して特定することにより限定したものが本願補正発明である。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、本願発明をさらに限定しものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成27年10月29日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)本願補正発明と引用発明との対比」及び「(3)当審の判断」において記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-12 
結審通知日 2016-05-17 
審決日 2016-05-31 
出願番号 特願2012-129302(P2012-129302)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01J)
P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 仁美桐畑 幸▲廣▼  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 森林 克郎
井口 猶二
発明の名称 透過型X線管及び反射型X線管  
代理人 酒匂 健吾  
代理人 杉村 憲司  

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