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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1320779
審判番号 不服2015-12540  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-02 
確定日 2016-10-21 
事件の表示 特願2012-507321号「動脈瘤治療システム、デバイスおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月28日国際公開、WO2010/123911、平成24年10月18日国内公表、特表2012-524620号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年4月20日(パリ条約による優先権主張 2009年4月22日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成26年2月5日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年8月11日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年2月25日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し、平成27年7月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1?24に係る発明は、上記平成26年8月11日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?24に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「円筒状の血管内動脈瘤治療デバイスにおいて、
拡大可能なスリーブを有し、該スリーブは、
流体流制限パッチを備え、該パッチは、スリーブが血管内に配備されたときにスリーブの一部を通る流体流を阻止するようにスリーブ上に周方向および軸線方向の一部に配置され、前記デバイスは更に、
スリーブ上に配置された放射線不透過性マーカを有し、該マーカは、血管系内のスリーブの配備がパッチの位置を決定するように、パッチに対して一定の関係を有することを特徴とするデバイス。」


第3 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献2の事項事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特表2007-530213号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付与したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。以下同じ。)

(ア)
「【請求項1】
動脈瘤を処置するために身体の脈管中に挿入される医療用デバイスであって:
第1の位置から第2の位置に拡大可能な機械的に拡大可能なデバイスであって、該第2の位置に、該機械的に拡大可能なデバイスの外面が、該脈管を通る流体経路を維持するように該脈管の内面と係合するように半径方向の外方に拡大される機械的に拡大可能なデバイス;および
該機械的に拡大可能なデバイスの拡大に応答して第1の位置から第2の位置に拡大可能な膜であって、該第2の位置に拡大されるとき、該動脈瘤の血液循環を妨害し、そして該膜の少なくとも一部分が該機械的に拡大可能なデバイスに固定され、該第2の位置に拡大されるとき、該機械的に拡大可能なデバイスに対する該膜の位置を維持する膜、を備える、デバイス。」(請求項1)

(イ)
「【請求項11】
前記膜が、前記デバイスの一部分を覆う、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記膜が、非多孔性および非透過性であり、前記動脈瘤への血液循環を防ぐ、請求項1に記載のデバイス。」(請求項11?12)

(ウ)
「【請求項26】
前記機械的に拡大可能なデバイスが、ステントである、請求項1に記載のデバイス。」(請求項26)

(エ)
「【請求項31】
少なくとも1つの放射線不透過性マーカーが前記機械的に拡大可能なデバイス上に提供され、挿入の間またはその後に該デバイスの可視性を改善する、請求項1に記載のデバイス。
・・・
【請求項33】
中央放射線不透過性マーカーおよび端部放射線不透過性マーカーが、前記機械的に拡大可能なデバイス上に提供される、請求項31に記載のデバイス。」(請求項31?33)

(オ)
「【0001】
(発明の分野)
本発明は、動脈瘤を処置するために身体の血管中に挿入されるための医療用デバイスに関する。」(0001段落)

(カ)
「【0042】
・・・代表的なステント202は、複数の相互連結されたストラットであって、それらの間に介在空間を有するストラットによって規定される外面を有するほぼ管状の構造物である。・・・」(0042段落)

(キ)
「【0048】
1つの実施形態では、上記移植可能な医療用デバイスは、狭窄症損傷および動脈瘤201のための頭蓋内ステント202および送達システムである。・・・この頭蓋内ステントの放射線不透過性は、金または白金から作製される放射線不透過性マーカー205を含むこと、またはステント202を白金/イリジウム/タングステン合金から作製することにより提供され得る。動脈瘤201を処置するためのステント202は、それらの本体の中央に特別のタイプの白金「スターマーカー」204を有し、動脈瘤頸部201に対するステント202の正確な指標および整列を支援し、そして動脈瘤201とのさらなる操作を可能にする。
【0049】
図3Aに示されるように、頭蓋内ステント202は、動脈瘤201の位置に配置される。膜203はステント202を部分的に被覆し、そして動脈瘤201の頸部をシールするように位置決めされる。放射線不透過性マーカー204は、ステント202の中央に位置され、操作および操作後の検査の間にステント202の可視性を提供する。図3Bを参照して、ステント202の一部分は、開いたセル205から形成される。この設計は、穿孔をブロックすることを避ける。これら穿孔は、重要および別個の血液供給機能を有する小毛細管をいう。管状ステントは、穿孔をブロックし得、そしてこれらの重要な機能を阻害する可能性がある。」(0048?0049段落)

(ク)
「【図面の簡単な説明】
・・・
【図3A】図3Aは、動脈瘤の位置に配置されるステントの概略図である。
【図3B】図3Bは、ステントのポートが開いたセルから形成される点を除き、図3Aのような概略図である。
・・・」(図面の簡単な説明)


2 引用文献2に記載された発明
「動脈瘤を処置するために身体の脈管中に挿入される医療用デバイスであって:・・・機械的に拡大可能なデバイス;・・・を備える、デバイス。」(記載事項(ア))、「前記機械的に拡大可能なデバイスが、ステントである・・・」(記載事項(ウ))、「少なくとも1つの放射線不透過性マーカーが前記機械的に拡大可能なデバイス上に提供され・・・」(記載事項(エ))とあるところ、記載事項(キ)には、実施形態として「・・上記移植可能な医療用デバイスは、狭窄症損傷および動脈瘤201のための頭蓋内ステント202および送達システムである。・・・放射線不透過性マーカー204は、ステント202の中央に位置され・・」とあるから、
(ケ)動脈瘤を処置するために身体の脈管中に挿入される医療用デバイスは、拡大可能なステント202を有し、更に、ステント202上に配置された放射線不透過性マーカー204を有する、
ということができる。

「代表的なステント202は、・・・ほぼ管状の構造物・・・」(記載事項(カ))とあるところ、図3Aの図示内容を参酌すると、
(コ)動脈瘤を処置するために身体の脈管中に挿入される医療用デバイスは、ほぼ管状である、
と認められる。

「膜203はステント202を部分的に被覆し、そして動脈瘤201の頸部をシールするように位置決めされる。」(記載事項(キ))ものであるところ、図3Aの図示内容によれば、
(サ)膜203が、ステント202上に周方向および軸線方向の一部に配置されていること、
が看取できる。ここで、当該図3Aは、「動脈瘤の位置に配置されるステントの概略図」(記載事項(ク))であり、また、膜203は「該動脈瘤の血液循環を妨害」(記載事項(ア))するものであるところ、「動脈瘤の血液循環を妨害」することは、ステント202の一部を通る流体流を阻止することといえるから、認定事項(サ)と併せ考えると、
(シ)膜203は、ステント202が動脈瘤201の位置に配置されるときにステント202の一部を通る流体流を阻止するようにステント202上に周方向および軸線方向の一部に配置されている、
と認められる。

「放射線不透過性マーカー204は、ステント202の中央に位置され、操作および操作後の検査の間にステント202の可視性を提供する。」(記載事項(キ))ものであるところ、技術常識を参酌すれば、ステント202の中央に位置する放射線不透過性マーカー204は、ステント202に対して一定の関係を有するということができ、また、そのような放射線不透過性マーカー204がステント202の可視性を提供することにより、ステント202の位置が決定されると理解できるから、
(ス)放射線不透過性マーカー204は、ステント202の位置を決定するように、ステント202に対して一定の関係を有する、
と認められる。

上記記載事項(ア)?(ク)、上記認定事項(ケ)?(ス)を、技術常識を踏まえつつ本願発明に照らして整理すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ほぼ管状の動脈瘤を処置するために身体の脈管中に挿入される医療用デバイスであって、
拡大可能なステント202を有し、該ステント202は、
動脈瘤の血液循環を妨害する膜203を備え、該膜203は、ステント202が動脈瘤201の位置に配置されるときにステント202の一部を通る流体流を阻止するようにステント202上に周方向および軸線方向の一部に配置され、前記医療用デバイスは更に、
ステント202上に配置された放射線不透過性マーカー204を有し、該放射線不透過性マーカー204は、ステント202の位置を決定するように、ステント202に対して一定の関係を有する医療用デバイス。」


第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「ほぼ管状の動脈瘤を処置するために身体の脈管中に挿入される医療用デバイス」は、その機能及び構成からみて、本願発明における「円筒状の血管内動脈瘤治療デバイス」に相当し、以下同様に、「拡大可能なステント202」は「拡大可能なスリーブ」に、「動脈瘤の血液循環を妨害する膜203」は「流体流制限パッチ」に、「ステント202が動脈瘤201の位置に配置されるとき」は「スリーブが血管内に配備されたとき」に、「放射線不透過性マーカー204」は「放射線不透過性マーカ」にそれぞれ相当する。

してみると、本願発明と引用発明とは、

(一致点)
「円筒状の血管内動脈瘤治療デバイスにおいて、
拡大可能なスリーブを有し、該スリーブは、
流体流制限パッチを備え、該パッチは、スリーブが血管内に配備されたときにスリーブの一部を通る流体流を阻止するようにスリーブ上に周方向および軸線方向の一部に配置され、前記デバイスは更に、
スリーブ上に配置された放射線不透過性マーカを有する、デバイス。」

である点で一致し、次の点で相違している。

(相違点)
スリーブ上に配置された放射線不透過性マーカについて、本願発明は、「該マーカは、血管系内のスリーブの配備がパッチの位置を決定するように、パッチに対して一定の関係を有する」のに対し、引用発明は、放射線不透過性マーカー204は、ステント202の位置を決定するように、ステント202に対して一定の関係を有するものの、血管系内のスリーブの配備がパッチの位置を決定するように、パッチに対して一定の関係を有するか否か明らかでない点。


第5 相違点についての検討
引用文献2における「動脈瘤201を処置するためのステント202は、それらの本体の中央に特別のタイプの白金「スターマーカー」204を有し、動脈瘤頸部201に対するステント202の正確な指標および整列を支援し、そして動脈瘤201とのさらなる操作を可能にする。・・・放射線不透過性マーカー204は、ステント202の中央に位置され、操作および操作後の検査の間にステント202の可視性を提供する。」(記載事項(キ))との記載によれば、放射線不透過性マーカー204は、操作および操作後の検査の間にステント202の可視性を提供し、動脈瘤頸部201に対するステント202の正確な指標および整列を支援するためのものであることが理解できる。
そして、引用文献2には、「図3Aに示されるように、頭蓋内ステント202は、動脈瘤201の位置に配置される。膜203はステント202を部分的に被覆し、そして動脈瘤201の頸部をシールするように位置決めされる。」(記載事項(キ))と記載されており、技術常識を参酌すれば、膜203を「動脈瘤201の頸部をシールするように位置決め」するには、ステント202上に配置された膜203の周方向及び軸線方向の位置決めが必要となることは明らかである。
そうすると、動脈瘤頸部201に対するステント202の正確な指標および整列を支援するにあたり、ステント202の位置に加えて、ステント202上に配置された膜203の周方向及び軸線方向の位置を決定する必要のあることは、当業者であれば当然に認識し得る技術的課題である。
また、引用文献2には、「ステントのポートが開いたセルから形成される点を除き、図3Aのような概略図」(記載事項(ク))である図3Bに関連して、「・・・ステント202の一部分は、開いたセル205から形成される。この設計は、穿孔をブロックすることを避ける。これら穿孔は、重要および別個の血液供給機能を有する小毛細管をいう。」(記載事項(キ))と記載されており、当該記載からも、ステント202を配置する際、穿孔をブロックすることを避けるためには、ステント202の位置に加えて、ステント202上に配置された膜203の周方向及び軸線方向の位置を決定する必要のあることは明らかである。

ここで、放射線不透過性マーカーを、いずれの部材に対して一定の関係を有するように配置するかは、位置を決定する必要がある部材に応じて適宜決定し得ることであるから、引用発明における放射線不透過性マーカー204について、ステント202の位置に加えて、ステント202上に配置された膜203の周方向及び軸線方向の位置を決定するという上記技術的課題のもと、血管系内のステント202(スリーブ)の配備が膜203(パッチ)の位置を決定するように、膜203(パッチ)に対して一定の関係を有する構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-26 
結審通知日 2016-05-30 
審決日 2016-06-10 
出願番号 特願2012-507321(P2012-507321)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 玲子  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 平瀬 知明
土田 嘉一
発明の名称 動脈瘤治療システム、デバイスおよび方法  
代理人 井野 砂里  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 弟子丸 健  
代理人 西島 孝喜  
代理人 松下 満  

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